【ごちうさ×中二病】もふもふの…兎喫茶店(ラビットハウス) (32)

途中まで書いてあったものを投下します。今回は小説形式です。

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「うぐっ……!」

突然、六花は右目に手を当てた。

「どうした?」

勇太が振り向く。

「駄目だ…この路地には結界が…」
「またか」

勇太は、六花が体調でも悪くなったのかと一瞬心配したことを後悔しながら言った。

「…そんなもの無いです」

コン、と六花の脳天に勇太のチョップが落ちる。

「あぅ…」

もはや二人の間ではお約束の流れである。

「せっかく遠くまで来たのになあ……」

休日。勇太と六花は、デートに来ていた。

行先は木組みの町。

近場にしなかったのは友人(主に一色たちのことだろう)に絡まれると厄介だから、という理由なのだが、絶対他に何か理由があるはず――とは森夏の弁である。

そんな楽しそう(ただし勇太は疲れ気味)の二人をこっそり追いかける人影が。

勿論、丹生谷森夏である。

ーーーー

「あれじゃあまだまだね・・・。 」

森夏が双眼鏡を下ろしながら言った。

「どこが駄目なの? 」

くみんがきょとんとした顔をして訊く。

「あれじゃ手を繋いでいるだけじゃない!それにそろそろ腕を組んでもいいぐらいよ!」

森夏が熱弁をふるう。

さすがに知らない町とはいっても、いきなり腕を組むのは恥ずかしいよ~」

くみんが返す。森夏は再び双眼鏡を目に当てた。

「まったく、付き合い始めて何ヵ月よ・・・で、何であんたたちがここにいるのよ!」

森夏が後ろを振り返る。

「行こうって言ったのはモリサマちゃんだよ~」
「凸守はマスターのサーヴァント。こんな野次馬ニセサマーとは違う、重要な任務があるのデース!」

「誰が野次馬ニセサマーよ!」

そう、そこにはくみんと凸守がいた。

3人とも帽子などで擬装している上、双眼鏡を首に掛けており、どう見ても町から浮いているのだが、3人ともそこに考えが至らないらしい。

「全く、腐れニセサマーは腐った野次馬根性だけは一級品デスね」

「あんたもやってること変わらないでしょうが!!」

「いつも仲良しだね~」

こちらの会話もいつも通りである。

「そろそろお昼時ね」

森夏が腕時計を見ながらぽつりと言うと、

「あ、何かあそこに入っていったよ」

双眼鏡を見ていたくみんが、前方を指差す。

「早速行くデース!」

飛び出す凸守。

「あいつが一番野次馬じゃないの…!」

それを森夏が歯軋りしながら追いかけていく。

「待ってよモリサマちゃ~ん」

くみんも慌てて二人を追いかけていった。

「勇太ぁ、お腹空いた・・・」

「そうだな、もう昼か。どこか店に入ろうか。 」

六花がこくりと頷く。

10分くらい歩くと、喫茶店が見つかった。

今日はここまでです。

「ここでいいか?」

「うん。 」

六花が不意に店の看板を見上げる。

「ラビットハウス…」

店に入ろうとしていた勇太が足を止める。

「この町はうさぎがシンボルだから、それに因んでいるんだろうな。 ほら、行くぞ」

勇太が店に入ろうとすると、

「防御力33000…攻撃、あぅ!」

勇太が六花にチョップする。

「店に防御力も何もないだろ…」

二人は店に入って行った。

ドアベルが鳴った。チノとリゼが顔を上げる。ココアは倉庫にコーヒー豆を取りにいった。

「いらっしゃいませ」

「いらっしゃいませー」

入ってきたのは高校生ぐらいのカップル。

「あら、お客さんがきた。 」

バイトの合間に遊びに来ていたシャロが言う。

「シャロさんはまだ時間大丈夫ですか?」

チノがカップを拭きながら言う。

「まだもう少しあるわ。」

因みにシャロはラビットハウスに長居し過ぎると、カフェインハイテンションが発動するらしい。

またベルが鳴り、ドアが開いた。

「いらっ・・・ああ、千夜さん。」

入ってきたのは千夜だった。

「こんにちは、チノちゃん。ココアちゃんいる?」

「今丁度倉庫に・・・」

チノがそう言いかけたとき、

「うああああ、助けてくれえ!」

注文を取っていたリゼが慌てた様子でカウンターに飛び込んできた。

「お客さんの女の子の方が中二病で、何を言ってるか分からない!」

リゼが接客でここまで動転しているのも珍しい。

「中二病なら任せて! 」

中二病センスのある千夜が見得を切る。

「千夜!」
「千夜さん!」

希望に満ちた顔でリゼとチノが千夜の方を振り返った。が、

「ね、シャロちゃん。」

千夜がそっとシャロの肩に手を置く。

「やめてえええええええ!!」

シャロが首を振って悲鳴を上げる。リゼとチノは驚いた様子だ。

「もしかして、まさかシャロさんが・・・」

チノが言いかけたとき、

「どうしたの~?」

都合よくココアが現れた。

「シャロちゃんの中学生時代のは」
「それ以上言うなぁぁぁ!」

シャロが千夜の口を塞ぐ。が、千夜も負けてはいない。

「え~と、暗黒邪神の遣い魔だっけ?」

シャロの必死の攻撃を難なくかわす。

「千夜ぁぁぁぁぁぁ!」

シャロの絶望と怒りの交じった叫びがこだまする。

「て、店内で喧嘩はやめてください!」

我にかえったチノの制止もむなしい。

「暗黒邪神の遣い魔!ここにいたのか!私は邪王真眼・・・」

ついには六花も暴走しだしたが、

「お前は関係ないだろ」
「あぅ・・・」

勇太のチョップでしぶしぶ黙る。一方、

「ほら、何だっけ、『甦れ、暗黒邪神の力!デュンケル・デア・マハト!』だったっけ?」

「ああああああああああああやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめて!」

止まらない千夜の暴露トークに、シャロがついに床をのたうち回りだした。

「へぇー、シャロちゃんにもそんな時代が・・・」

ココアが意外そうな顔でぼそっと言うと、

「バッ、バイト行ってくるっ!」

シャロは真っ赤な顔のまま店を飛び出していった。

「シャロ・・・」

リゼは少し寂しそうだ。

「何してるのよ…お昼ごはん食べに入ったんでしょ?」

窓の外からその一部始終を見ていた森夏が、苛立ちを隠さずに呟く。

「うーん、この光景、どこかで見たことある気がするデスね…」

凸守が双眼鏡を目に当てたまま言うと、

「何だか楽しそうだね~」

くみんが笑顔でそう言った。

「すいません、お騒がせしてしまって…」

勇太がチノとリゼに謝る。六花も勇太に頭を掴まれ、強制的に頭を下げさせられている。

「いえ、こちらこそ、失礼しました」

チノとリゼも謝る。あまり事情の分かっていないココアはカウンターでキョトンとしている。

千夜はいつの間にか帰ってしまったようだ。

ーーーー

「勇太、これ美味しいっ」

ナポリタンをひと口食べた六花が目を見開き、興奮気味に言う。六花が最初に富樫家で食べた料理がだったからか、ナポリタンには思い入れがあるらしい。

「どれどれ…ほんとだ、美味しい!」

勇太も六花に食べさせてもらっている。ちなみに勇太の注文はミックスサンドだ。

「そしてこの闇の飲料…」
「コーヒーな」

「これで魔翌力100倍!」

テンションの上がった六花がポーズを決める。

「ミルク入れすぎだろ…」

勇太が六花のコーヒーを見て、げんなりしながら言った。

「いいなあ、ラブラブだ~」

ココアが勇太と六花の方を見て言った。

「私とチノちゃんもあんなふうに…」

ココアの目が怪しく輝き出す。

「はっ…な、何を!?」

動揺したチノが顔を真っ赤にする。

「な…それは…!」

リゼも頭から湯気が出そうな勢いだ。

「冗談だよ」

ココアはそう言ったが、チノの顔はまだ赤い。

「にしても、シャロが元中二病だったとはなあ……」

リゼが皿を拭きながら、ぽつりと呟いた。

ーーーー

「ありがとうございました~」

店を出る勇太と六花。

「魔翌力補給完了!」

六花は相変わらずテンションが高い。

「美味しかったな」

勇太も楽しそうだ。

「次はどこへ行く?」

勇太が六花に地図を渡しながら訊いた。

「この暗黒波動の集積地へ行ってみようと思う」
「展望台か」

二人は手を繋いで道を歩いていった。

ーーーー

「にしてもこいつ…」

森夏が凸守を睨む。

「腐れニセサマーにやる分は無いのデース!」

凸守は森夏に自分の注文した『黄金の鯱スペシャル』を見せびらかした。唇を噛む森夏。

ちなみに森夏とくみんの注文は『花の都三つ子の宝石』だ。

「家が金持ちだからって調子に乗って…!」

「早く食べようよ~」

三人は甘兎庵に寄っていた。

「あむ…美味しい!」
「うん、美味しい!」
「美味しいデス!」

三人が口々に称賛する。

「ありがとう。ちなみに今は中二病キャンペーン中なのよ~」

「おお、中二病!」

千夜の言葉に凸守が反応する。

「確かにメニュー名も中二病っぽいわね」

森夏がメニューを見ながら呟く。

「私はミョルニョルハンマーの使い手、凸守早苗!そしてあちらが偽モリサマー」
「偽言うな!」

何だか今日は中二病が多いな、と思った千夜だった。

ーーーー

「おお~!」

「街並みがきれいだな」

展望台から町を眺める二人。勿論後ろには甘兎庵から出た来た三人がスタンバイしている。

六花の目が輝いている。

「ここから……」
(ギューン…チュドーン!)

「…大体考えていることは分かるな」



「なあ、六花…」

「何…」

ーーーー

「あああ~!」

双眼鏡を覗き込んでいた森夏が、突然叫んだ。

「五月蠅いデスね、ニセサマーは」

凸守が顔をしかめる。

「だって今、キスしてたじゃない!」

「騒ぐなデス」

顔を真っ赤にしている森夏に対して、凸守の反応は冷たい。

「青春だね~」

くみんは少し複雑な表情をしている。

ーーーー

「別にシャロちゃんが元中二病だったからって、誰も咎めないわよ」

千夜の暴露トークの次の日。シャロは、部屋で三角座りをして膝に顔を埋めていた。

「分かってるけど…うう、リゼ先輩に顔合わせ出来ない…」

シャロの首がさらに下がったそのとき、勢いよく部屋の扉が開いた。

入ってきたのはココア、顔がひきつっている。

「チ、チノちゃんが中二病に…」

「ええ~っ!」

ーーーー

「暗黒魔法の力を感じる…」

「誰か助けてくれ~!」

ーー完ーー

完結です。どちらも三期が来てほしいですね~

シャロちゃんの中学時代に関しては、本編で一切触れられていない上に本人が『黒歴史』と発言しているのですごく気になるんですよね。

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