向日葵「杉浦先輩!櫻子の事で相談があります!」綾乃「短篇集よ!」 (24)

①向日葵「櫻子がバレンタインでチョコを……」綾乃「……そう」


向日葵「その相談があるのですが……、今お時間の方よろしいでしょうか?」

綾乃「え? 大丈夫だけど、どうかしたの?」

向日葵「実は櫻子が……その……」

綾乃「大室さんが?」

向日葵「櫻子がチョコレートを作っているみたいで!」

綾乃「大室さんがチョコを?」

向日葵「はい、今朝撫子さんが 「櫻子がチョコレートを作ってるんだ。何度も失敗してさ。まったく頑張っちゃって……。一体誰の為に頑張ってるんだろうね」ニヤッ と」

綾乃「へぇー。それはバレンタインが楽しみね」


向日葵「……」

綾乃「ん? 古谷さん? どうかしたの? 私の顔をジーっと……怖い顔をして……」


向日葵「……ま、まさか、櫻子がチョコをプレゼントするのは杉浦先輩!??!?」

綾乃「へ? い、いやいや。どう考えても私じゃないでしょ!」

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向日葵「じゃあ、誰なんですの!? 櫻子がチョコをプレゼントする相手なんて他に……ま、まさか吉川さんに!? そういえば単行本最新刊で二人っきりでデートに!」

綾乃「はぁ……違うと思うわ。……うーん、そうね。古谷さんよく考えてみて」

向日葵「え?」


綾乃「大室さんだったら、失敗が続いたらすぐに古谷さんを頼ると思うの。でも、今回のチョコ作りは古谷さんに頼らずに作ってるんでしょ? それはなぜかしら?」

向日葵「そ、そういわれると。撫子さんは『何度も失敗して』と言ってましたわ。そういう時はいつも私を頼ってくれるのに……」

綾乃「うん、そうそう。そういう事…………って、古谷さん!? なんで泣いているの!?」

向日葵「うっ……うぅ……櫻子に頼ってもらえないなんて……私嫌われちゃったんですのね……」

綾乃「違うでしょ! 古谷さんにプレゼントしたいからでしょ!」

向日葵「------へ?」

綾乃「古谷さんにプレゼントしたいから、びっくりさせたいから、喜んで欲しいから古谷さんに頼れないんだと思うわ」

向日葵「な、なるほど……確かに。なるほど」

綾乃「ふふっ。よかったわね。楽しいバレンタインになりそうね」


向日葵「櫻子は私にバレンタインチョコをプレゼントしたい……と」


向日葵「まったく櫻子は仕方ありませんわね。バレンタインに気合いを入れた手作りなんて、まるで特別なチョコみたいですわ」

綾乃(古谷さん、すっごくうれしそう……チョコが熱で溶けたみたいに、古谷さんの表情がとろけてるわ)

向日葵「まぁ、仕方ありませんから、櫻子のチョコを受け取ってあげますわ。ええ、せっかく手作りなのを受け取らないなんてできませんし」

綾乃「相思相愛でよかったわね」

向日葵「っ~~~~~~//」カァー

綾乃(ふふっ。りんごみたいに真っ赤になって可愛いわね)

向日葵「違います! 私は別に櫻子が好きとかじゃありませんから!」

綾乃「えっ」

向日葵「勘違いされては困ります! まったく! なぜ私が櫻子のチョコで喜んだり……」

綾乃「じゃあ、いらないの?」

向日葵「いるに決まってるじゃないですか! すっごく嬉しいに決まってるじゃないですか!」


綾乃「そ、そうなの。あっ、もしかして相手が誰であれ、チョコを貰うという行為が嬉しいって事ね?」

向日葵「違います! 櫻子からのプレゼントなんて嬉しいに決まってますわ!」

綾乃「そ、そうよね」

綾乃(え、えーと、「貰って良かったわね」と言っても「じゃあ、欲しくないの?」と言っても全否定。私どうすればいいのかしら……)

向日葵「それにしても櫻子が手作りチョコなんて……。ふふっ楽しみですわ」

綾乃「……」

綾乃(ま、まぁ、嬉しそうだし、古谷さんが落ち着くまで話に付き合ってあげましょう)

綾乃「ねぇ、古谷さん?」

向日葵「はい?」



ガラララッ



櫻子「こんにちはーーー」

向日葵「あっ、櫻子」

綾乃「大室さん、こんにちは」

櫻子「チョコの話が聞こえました! もしかして、ここにチョコがあるんですか! 食べたいです!」

向日葵「あ、あなた……どういう聴覚しているのよ……」

綾乃「チョコ? 今日はお菓子はないと思うわ。何かの聞き間違いじゃないかしら?」

櫻子「そうですか……」シューン

綾乃「ごめんなさいね」

向日葵(シュンってしてる櫻子可愛い//)キュンキュン

櫻子「まっいっか。どうせ家に沢山チョコレートあるし」

綾乃「え?」

櫻子「ふふふふ、実はチョコのウエディングケーキ作ろうと頑張ってるんです!」

向日葵「!」


櫻子「そして、今流行のYURITUBEに動画投稿しようと思いまして!」

綾乃「そ、そうなの……」

櫻子「そうだ! 材料が足りないから買いに行くんでした! じゃあ、帰ります。お疲れ様でしたー」

綾乃「お、お疲れ様ー……」

綾乃「え、えーと、古谷さん?」

向日葵「櫻子ったら……結婚まで考えて。もうっ、私達まだ恋人繋ぎもやっていないのに……」

向日葵「まったく常識知らずにもほどがありますわ! ここは妻がビシッと常識を!」

向日葵「って誰が妻なんですのよ!」キャー

綾乃「∵」



向日葵「それでは、さくひま、ひまさく短篇集、始まりますわー」

あかり「それあかりのセリフだよ!?」


① 終わり

②:向日葵「そんな……人生終わり……」綾乃「古谷さん!?」


綾乃「古谷さん!? どうかしたの!? 人生が終わったみたいな顔をして!」

向日葵「もういいんですの。私なんて生きる価値もないような人間で……」

綾乃「何を言っているの! 価値がないなんて言わないで。あなたが生徒会で頑張ってくれているお陰で、どれだけ私が助かっているか」

向日葵「杉浦先輩……」

綾乃「悩みがあるならいつでも相談していいのよ。可愛い後輩からの相談、生徒会副会長 杉浦綾乃は逃げも隠れもしないわよ」

向日葵「……先輩」

綾乃「ほら、言ってごらんなさい」

向日葵「実は……実は!」





向日葵「櫻子が赤座さんのジュースを飲んだのですわ!」


綾乃「……………………………………へ?」

向日葵「赤座さんが口を付けたコップに……櫻子が!」

綾乃「え、えーと?」

向日葵「関節キス……いいえ、これは唾液の交換みたいなものですわ! なんて嫌らしい! きっと赤座さんが櫻子に自分の唾液を飲ませるために!」

向日葵「って、杉浦先輩?」

綾乃「∵」




② 終わり

③:向日葵「櫻子が浮気しないようにするには……」綾乃「へ?」


向日葵「まったく櫻子は! 誰にでも犬みたいに懐いて! だから友達が多すぎるんですわ! これでは心配で夜も眠れません! まぁ、そこが櫻子の良い所でもあるんですけど!」

綾乃「……」

向日葵「杉浦先輩! 櫻子が浮気しない為にはどうすれば良いと思いますか!?」

綾乃「え、えーと、まだ古谷さんと大室さんは付き合ってないのよね?」

向日葵「当り前ですわ。櫻子と結婚するなんて……考えただけで、頭が熱くなるくらい大変な事です」

綾乃「そ、そう……。じゃあ、浮気の心配とかする必要は……ないわよね? ほら、そもそも浮気って恋人関係とかになった後の事でしょ?」

向日葵「……?」

綾乃「いや、キョトンと不思議そうな顔をされても……わかったわ! 浮気をしない方法を考えましょう」

向日葵「はい!」

  *  *  *


■1.GPS

綾乃「ネットで調べてみましょう」

向日葵「えーと、浮気防止っと……」



YURIGLE先生「恋人の場所を常にGPSで確認しよう」


綾乃「えぇ!? GPS!? 常識的に考えてこれはおかしいわ!」

向日葵「そうですわよね。常識的に考えて、GPSを埋め込むのは既にやっていますわ。常識的に考えてやらないなんておかしいですわ。常識的に考えて」

綾乃「…………ぇ」ガクブル

■2.おいしい料理を作る

綾乃「まぁ、これは問題ないわよね」

向日葵「ええ、朝食~夕食、夜食、おやつまで最近は全部作ってますわ! ……でも、櫻子に渡すのが恥ずかしくて……作ってるだけで……//」カァー

綾乃(怖っ)

■3.束縛をあまりしない

向日葵「当り前ですわ。度が過ぎる束縛は嫌われます。常識的に考えて」

綾乃(でも、GPSは埋め込むのね……)

■4.本命の存在をアピールする

向日葵「これは問題ありませんわ。櫻子の本命は、わ・た・く・しです」

綾乃(うざっ)

向日葵「それ以外ありえませんわね」

綾乃「告白もしてないから、本当に本命かわからないのよねー」ボソッ

向日葵「え?」

綾乃「ううん、なんでもないの」

向日葵「でも確かに櫻子が告白をしないから、いまいちおかしな関係になっているのは事実ですわ」

綾乃(あっ、聞こえちゃってたわね)

向日葵「ぐぐぐぐ。これもあれも告白しない櫻子のせいですわ!」

綾乃「じゃあ、古谷さんから告白してみたら?」

向日葵「なっ! 私が告白!? そんな事をしたらまるで私が櫻子を好きみたいじゃないですか!」

綾乃「え? 好きじゃないの?」

向日葵「好きなんかじゃありません! 幼馴染だから仕方なく一緒にいてあげてるだけでして」

綾乃「じゃあ、私が大室さんに告白しちゃおうかなー……なんて」

向日葵「……ぇ」

綾乃「冗談! 冗談だから泣かないで! ごめんなさい! 謝るから!」

向日葵「ほ、本当に冗談ですの?」

綾乃「冗談よ。そもそも大室さんは可愛い後輩というか妹みたいな感じで……。そうよ、おこちゃまだから恋愛対象じゃないの!」

向日葵「……」

綾乃「え? どうしたの? 憐れんだような眼をして……?」

向日葵「はぁ……。櫻子の魅力がわからないなんて杉浦先輩もまだまだですわね」

綾乃「ねぇ、私そろそろ怒っていいかしら?」ゴゴゴゴゴ

向日葵「すみません、調子に乗りました。でも、櫻子の事は好きとかじゃないんです。わかってください」

綾乃「ふぅ……で、なんの話だったかしら?」

向日葵「どうやったら櫻子が告白するかという話ですわ」

綾乃「そ、そんな話だったかしら?」

向日葵「というわけで次回に続きますわ」

綾乃「続かないからね!」



③ 終わり

④:向日葵「櫻子が……櫻子が……」綾乃「はいはい」

向日葵「杉浦先輩……ご相談が……」

綾乃「暗い顔をしてどうかしたの?」


■回想シーン------------------------

向日葵「あら? 髪にゴミがついてますわよ」

櫻子「ひゃっ//」

向日葵「え?」

櫻子「か、勝手に触るなし!」

向日葵「顔真っ赤にして怒ってるのよ。ちょっとゴミを取っただけじゃない」

櫻子「っ//」


 バーカ! バーカ! 真っ赤になんてなってねーし!!!!


■回想終了--------------------------


向日葵「その後、話しかけても……顔を真っ赤にさせて怒ってきて。杉浦先輩……私どうしたら?」

綾乃「∵」


④ 終わり

⑤:向日葵「私、そろそろ死ぬかもしれませんわ」綾乃「え!?」

ガララッ

綾乃「ど、どうしたの? 生徒会室の扉を勢いよく開けて……」

向日葵「杉浦先輩! 聞いてください!!」

綾乃「え? 相談なの? ちょっと待って今は……」


向日葵「昨日、櫻子がこたつの中で猫みたいに丸くなってましたの!」

向日葵「なんですのこれ! 可愛すぎるんですけど!!」

向日葵「可愛すぎて心拍数がすっごい事になってしまいましたわ!」

向日葵「私、死ぬ所だったんですのよ!」

綾乃「え?あっ……はい」


⑤ 終わり


向日葵「え!? 終わりなんですの!?」

綾乃「いや、実は……その……私、ちょっと今は……」

向日葵「杉浦先輩! ちゃんと聞いてください! 私は真面目なんです!」

綾乃「ふ、古谷さん落ち着いて」

向日葵「これが落ち着いていられますか! だって、櫻子が櫻子が可愛すぎるんです!」

綾乃「そ、そうなの?」


■回想シーン------------------------

櫻子「じゃじゃーん。新しいマフラー櫻子様ー」

向日葵「手を広げてクルクル回ったら危ないわよ」

櫻子「ふふーん。この櫻子様の可愛さがわからないなんて、向日葵もまだまだだね」

■回想終了--------------------------


向日葵「可愛すぎですわよ!! バッカじゃないの!!! 妖精みたいにクルクル回って!! 可愛すぎなんですけど! バッカじゃないの! 天使なんですけど!」バンバン

綾乃「あっ、うん。わかったから。机をたたかないでね? えーと、落ち着いて聞いて欲しい事があるんだけど……」

向日葵「ちょっと待ってください! 実はもっと聞いて欲しい事が!」

綾乃「へ?」

■回想シーン------------------------

櫻子「ケーキを作りすぎちゃってさ……」

向日葵「ケーキ? ああ、この前のチョコのウェディングケーキの事かしら?」

櫻子「うん」

向日葵「はぁ……。あんな大きいケーキを作って一体どうしますの? 食べるにしても一人だと体に悪いんですのよ。普段栄養に気を遣えとあれほど----」

櫻子「だ、だから、向日葵も食べろ! 一緒に!」

向日葵「へ?」

櫻子「今度の水曜日にうちに来いよ! わかったな! バーカ!」

■回想終了--------------------------


向日葵「水曜日って2月14日じゃないですのーーーー!!!!!!!」

向日葵「バレンタインにチョコのウェディングケーキとか愛が重すぎなんですけどーーーー!!!」

綾乃「で、でも、嬉しそうにみえるわよ?」

向日葵「嬉しいに決まってるじゃないですかーーーー!!!」


向日葵「もうっ! 櫻子ったら『2月14日にうちに来い』と言わない辺り、サプライズのつもりなんでしょうか? ふふっ。まぁ、櫻子が考える程度のサプライズ、驚きもしませんがね」

綾乃「えーと、その……実は私からもサプライズがあるんだけど……」

向日葵「え?」


綾乃「じゃ、じゃじゃーん。実はここに大室さんが隠れています」

向日葵「……………………………………………………………………………………………………………へ?」

櫻子「……」

向日葵「…………」

櫻子「…………」

向日葵「……………………いや、これはその……」


櫻子「……向日葵のバカ」ボソッ

向日葵「え?」


櫻子「向日葵のバーーーーーーーーカーーーーーーー!!!!!!!!」

向日葵「櫻子!? 全速力でどこに行きますの!? ちょっと待ってーーーーー!!!!」


向日葵「杉浦先輩! どうしましょう!? 私櫻子を怒らせて!」

向日葵「…………あれ? でもあの子なんで怒っているのかしら?」

綾乃「ほら、いいから追いかけなさい。追いかけて自分の気持ちを伝えれば大室さんも許してくれるわ」

向日葵「え? 気持ち? な、なんて言えば……」

綾乃「じゃあ、逆の立場だったらなんて言って貰えたら嬉しいのか考えなさい。追いかけながら考えれば、古谷さんなら答えを見つける事ができると思うわ」

向日葵「……逆の立場で……わかりました。頑張ってみます」

綾乃「ええ、またね」


ダダダダダダ


綾乃「行ったわね」

綾乃「……」

綾乃「ふふ」クスッ

綾乃(大室さん、顔真っ赤にしてニヤけながら走っていったわ。きっと嬉しくて嬉しくて。でも古谷さんにそんな顔を見られたくないから逃げ出したのね)

綾乃「まったく素直じゃないんだから……私はああならないように頑張らなきゃね」



綾乃「……」




綾乃「頑張ってね。古谷さん。それに大室さんも」

  *  *  *




綾乃「で? なんで大室さんは古谷さんのパンツを被っているのかしら?」

櫻子「幸せな香りがするからです!」キリッ

向日葵「もうっ。櫻子ったら//」キャー






綾乃「極端すぎなのよーーーーー!!! あなたたちはーーーーー!!!!」









       終わり

これにて終わりになります。
読んでくださった方ありがとうございました!
また機会があればよろしくお願いします!

いつ以来の短編集だろう。
かなり久々のような。

おつ

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