【バンドリ】羽沢つぐみがお世話してくれるディスク (26)


※キャラ崩壊してます。

 戸山香澄「沙綾とデートしてる気分になれるCD」と同じ世界の話です。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1517352495

――休日 つぐみとの同棲部屋――

羽沢つぐみ「……おーい、おーい……」ユサユサ

つぐみ「朝ですよー、起きてくださーい……」

つぐみ「……起きない」

つぐみ「困ったなぁ……気持ちよさそうに寝てるし、このまま眠らせてあげたいんだけど……うーん……」

つぐみ「あんまり強く揺さぶったりしたら痛いかもしれないし……」

つぐみ「あ、そうだ。モカちゃんが居眠りしてる巴ちゃんを起こす時、耳に息を吹きかけてたっけ」

つぐみ「あれなら痛くないだろうし、巴ちゃんもすぐに目が覚めてたから……ちょっとやってみようかな」

つぐみ「ちょっとお耳、失礼しますね……ふー」

つぐみ「あ、身悶えてる……効果あるみたいだね。もうちょっとで起きるかな……」

つぐみ「ふー、ふー……」

つぐみ「…………」

つぐみ「起きそうで起きない……。どうしよう……」

つぐみ「……モカちゃん、巴ちゃんがそれで起きないなら耳たぶを甘噛みするつもりだったって言ってたっけ……」

つぐみ「耳たぶを甘噛み……」

つぐみ「そ、それはやっぱり恥ずかしいな……」

つぐみ「でもそれでちゃんと起こせるなら……恥ずかしいけど……」

つぐみ「あ、あー……」

つぐみ「わっ!? あ、えーっと、おはようございます」

つぐみ「起きてた……?」

つぐみ「あ、今起きたところなんだね、うん。良かった」

つぐみ「私の顔が近い? あ、これはちょっとね、あなたを起こそうとしてて……」

つぐみ「その、耳に息を吹きかけるとすぐに起きるって友達が言ってたからちょっと試してみたんだ」

つぐみ(よかった……甘噛みしようとしてたのは分かってないみたい……)

つぐみ「うん? 今は朝の7時だよ。朝早くに起こしちゃってごめんね?」

つぐみ「今日はちょっと気合入れて掃除をしなくちゃって日だったから……早めに起きてくれると、お布団も干せて助かるなって思って……」

つぐみ「あ、でもまだ寝てたいなら全然気にしないで――え、起きてくれるの?」

つぐみ「ちょうど早く起きようと思ってたから助かるって? ……そう言ってくれると……嬉しいな」

つぐみ「そしたら顔洗ってきなよ。私はその間にお布団干して、朝食の仕上げしちゃうね」


……………………

――トントントン、カチャカチャ...

つぐみ「あの日見た黄昏の空ー照らすー光は燃えるすかーれーっと♪」

――ガチャ

つぐみ「あ、顔は洗い終わった? もうすぐご飯できるから、テーブルでもうちょっと待っててね」

つぐみ「ふんふんふーん♪」

つぐみ「……んー? どうしたのー?」

つぐみ「……エプロン付けた後ろ姿が可愛い?」

つぐみ「あはは、可愛いって言ってくれるのは嬉しいよ」

つぐみ「今すごく幸せだって? うん、私も幸せ」

つぐみ「……はい、それじゃあお待たせ」

つぐみ「今日のご飯は……白いご飯にお味噌汁、卵焼き、鮭の塩焼き、納豆、ベーコンエッグ、ホウレン草のおひたし……」

つぐみ「……うん、ごめんね。あなたの言いたいことは分かってる」

つぐみ「喜んで食べてくれるかな、美味しいって言ってくれるかな……って考えてたら……つい張り切って作り過ぎちゃって……えへへ……」

つぐみ「あ、でも、無理して全部食べなくていいからね? 私が勝手に盛り上がって作り過ぎちゃっただけだから」

つぐみ「……え? 全部食べ切るって?」

つぐみ「作り過ぎちゃった私が言うのもなんだけど、本当に無理はしないでね……?」

つぐみ「……昨日の夜からお腹が減ってたから平気? 2食分でも3食分でも食べきるから任せろ?」

つぐみ「う、うん、それじゃあ、どうぞ召し上がれ」


……………………

つぐみ「すごい……本当に全部食べちゃった……」

つぐみ「……すごく苦しそうだけど……無理させちゃってごめんね……?」

つぐみ「え……美味しすぎて食べ過ぎただけだから気にしないでって?」

つぐみ「……そう言ってくれるのは嬉しいんだけど……」

つぐみ「あ、でも苦しいからってすぐ横になるのはダメだよ、体に悪いんだから。……いや、でもそんなこと言ったら一番悪いのは私だよね……」

つぐみ「こんなんじゃ……お嫁さん失格……だよね」

つぐみ「……そんなことはない? 幸せだから平気?」

つぐみ「…………」

つぐみ「……ありがとう。あなたは本当にいつも優しいね」

つぐみ「あなたの優しさにいつまでも甘えないように、私、頑張るねっ!」


――――――――――――

つぐみ「ふぅ……これでお布団も洗濯物も干したし、掃除機もかけたし……お掃除は一段落かな」

つぐみ「色々手伝ってくれてありがと」

つぐみ「……これくらいお安い御用? もっと頼ってくれって?」

つぐみ「…………」

つぐみ「それじゃあ……お買い物、付き合って貰ってもいい?」

つぐみ「うん、お夕飯の材料とか、そういうのの……荷物持ち……かな」

つぐみ「……だめ?」

つぐみ「……どこまででもお供するしなんでも持つ? あはは、ありがと」

つぐみ「それじゃあ、一緒にお買い物、行こっか」


……………………

つぐみ「……ふぅ、これでお買い物は終わりだね」

つぐみ「え? 思ったよりも荷物が少ない?」

つぐみ「うん、今日はあんまり買い足さなきゃいけないものもなかったから……」

つぐみ「……もっと力になりたい?」

つぐみ「うーん、それじゃあ……えいっ」

つぐみ「……えへへ、左手に買い物袋、空いた右手は私……で、どうかな?」

つぐみ「幸せで涙が出そう? ふふ、私もかも」

つぐみ「……せっかくだし、ちょっと公園の方までこのまま散歩しよっか?」

つぐみ「えへへ、ありがと。それじゃあ一緒にお散歩だね♪」


……………………

つぐみ「うーん、ここの公園も昔から変わらないな~」

つぐみ「うん、昔からよく、アフターグロウのみんなで遊んだりしてたんだよ」

つぐみ「何にもない小さな公園だけどね……私たちの大事な思い出があるところなんだ」

つぐみ「……せっかくのいいお天気だし、ちょっとベンチで日向ぼっこでもしてこっか」

つぐみ「……ふぅ」

つぐみ「…………」

つぐみ「なんていうか……平和なお休みだね」

つぐみ「こうやって暮らすようになってからずっとバタバタしてたもんね」

つぐみ「うん……引っ越したりなんだりで、色々忙しかったね」

つぐみ「だからこうやって、あなたと2人でのんびりしてられると……やっと実感が湧いてくるなぁ」

つぐみ「あなたは……幸せ?」

つぐみ「……うん。私も幸せだよ。えへへ」

つぐみ「あ、そうだ。朝早く起こしちゃったし、お掃除に荷物まで持ってもらっちゃって……疲れてない?」

つぐみ「そんなに疲れてない? うん、そっか……」

つぐみ「え? あ、ううん、なんでもないよ。ただ、疲れてるなら……私が膝枕してあげよっかなって……」

つぐみ「ええ? 急激に疲れが押し寄せてきた? 今すぐ横にならないと死ぬかもしれない?」

つぐみ「くすくす……そっか、あなたに死なれたら私も困るなぁ……」

つぐみ「じゃあ私の膝、使う?」

つぐみ「うん……はい。どうぞ」

つぐみ「……ふふ。今まで何度もこうしたけど……あなたの頭の重みって本当に癖になりそうだね」

つぐみ「きっとこれが幸せの重みなんだなぁー……って思うな」

つぐみ「ん、なぁに? 頭を撫でてくれないと再起不能になるかもしれないレベルで疲れてるの?」

つぐみ「ふふ、しょうがないなぁ」ナデナデ

つぐみ「甘えん坊さんなあなたも……私は大好きだよ」ナデナデ


――――――――――――

つぐみ「んーよし。これであとは焼き上がるのを待つだけだね……クッキー」

つぐみ「お昼はちゃんと分量考えて作ったし、おやつはクッキーくらいがちょうどいいよね」

つぐみ「あの人はお風呂掃除してるし……ちょうど終わるくらいに焼き上がるかな」

TV<アーオクサン、ソレハカンゼンニウワキダネェ

つぐみ「あ……そういえばテレビつけっぱなしだった」

つぐみ「電気代がもったいないから消さないと……」

つぐみ「…………」

TV<ウタガウノハワルイコトダケドネェ、スマホノチェッククライハシナキャ...

つぐみ「ワイドショーで浮気の実態みたいな特集やってる……」

つぐみ「昔は少しも興味なかったけど……あの人は……そんなことしないよね?」

TV<テイシュガウワキシナイヨウチェックスルノモリョウサイノシゴトダヨ...

つぐみ「……スマホのチェック……良妻の仕事……」

つぐみ「…………」

つぐみ(テーブルの上にはあの人のスマホが無造作に置かれてる)

つぐみ(きっとやましいことがないからああして置いてあるんだろうから、私はそれを信じなきゃ……信じなきゃ……)

つぐみ「……か、確認するだけ……ちょっと見るだけだから……」

つぐみ「あの人はロックもかけてないから……何もないって信用できるんだけど……」

つぐみ「でも万が一があったら……早いうちなら軽傷で済むから……」

つぐみ「ごめんなさい……ちょっとトークアプリの履歴……見させてください……」


トーク履歴
美竹蘭【つぐみ泣かせたらころす】
青葉モカ【つぐ悲しませたら埋める】
宇田川巴【つぐ傷付けたら吊るす】
上原ひまり【つぐ不安がらせたら沈める】


つぐみ「」

つぐみ「え」

つぐみ「…………」

つぐみ「……3日に1回のペースでそんなメッセージが届いてる」

つぐみ「…………」

つぐみ「これ……冗談だよね……?」

つぐみ「ひゃぅ!?」

つぐみ「あ、お、お風呂掃除終わったの?」

つぐみ「あ、えっと、これは……その……ごめんなさい!」

つぐみ「あなたのことを信じてない訳じゃないけど、テレビでそんな特集やってて……少し不安になっちゃって……」

つぐみ「……え!? 沈められる!? だ、誰に!?」

つぐみ「ひまりちゃんに!? え、このメッセージって冗談じゃ……」

つぐみ「……1回本気で巴ちゃんに吊るされかけたの?」

つぐみ「えぇ……私初耳だよそれ……」

つぐみ「だ、大丈夫だよ。私の方こそ……こんなくだらないテレビに流されて……あなたのことを疑ってごめんなさい」

つぐみ「うん……ありがとう。あ、お互いさまって言ったら変だけど……私のスマホも……見る?」

つぐみ「……え? 待ち受け……あっ!」

つぐみ「……違うの、これは違うの」

つぐみ「ほら、1週間前に……ね? あなたの寝顔がすごく可愛かったから……つい出来心で……撮影しちゃっただけなんです」

つぐみ「待ち受けにしてるのは……思ったよりベストショットになったから……いいかなって……」

つぐみ「も、もう! そんなに笑わないでよぉー!」

つぐみ「っ……そんな、急に愛してるって言われたって……私だってあなたのこと……愛してるもん」

つぐみ「…………」

――ピーピー

つぐみ「あ、そ、そうだ、クッキー焼いてたんだ! ほら、あなたの大好きなキャロットクッキー、もうすぐ出来るから一緒に食べよ?」


――――――――――――

つぐみ「ふぅ……お風呂あがったよ~」

つぐみ「綺麗にしてくれてありがとね。おかげで気持ちよく入れたよ」

つぐみ「んー? どうしたの――ひゃ!?」

つぐみ「ちょ、ちょっといきなり……ひゃんっ」

つぐみ「……え? いつも……お疲れ様?」

つぐみ「私が疲れてると思って……マッサージ?」

つぐみ「そ、それは嬉しいけど……私は言葉だけでも十分嬉し――きゃっ」

つぐみ「あ、ぅぅん……あぁ……」

つぐみ「んっ、え? 肩……けっこう凝ってる?」

つぐみ「そ、そうかな……私はそんなに疲れてる気がしないけど……んんっ!」

つぐみ「か、体は正直だなって……こういう時にいうセリフじゃ……あぅっ」

つぐみ「うう……ひゃ、やぁ……!」


……………………

つぐみ「……うぅ、汚された……」

つぐみ「人聞きが悪いこと言うなって……もう、いきなり無理やり揉みしだかれたって……蘭ちゃんに言うよ?」

つぐみ「えっ、ど、土下座して命乞いするほどのことなの!?」

つぐみ「私関係で下手な冗談を言うと死を覚悟する目で睨め付けられるって……それも初耳なんだけど……私……」

つぐみ「もう……みんな大げさなんだから」

つぐみ「それだけみんなから愛されてるって?」

つぐみ「……うん。そうだと嬉しいな」

つぐみ「小さな頃からずっと一緒の幼馴染だもん。みんな、私の大切で大好きな仲間だよ」

つぐみ「え、あなたは……そうだなぁ、どれくらいだろう?」

つぐみ「たまに意地悪するし、えっちだし、あんまり高い評価じゃないかなぁ」

つぐみ「……なんて、冗談だよ」

つぐみ「あなたもみんなも、比べることなんて出来ない大切な人だよ」

つぐみ「……うん。これからもずっと、よろしくねっ」


―――――――――――――

つぐみ「もう寝る時間だね」

つぐみ「久しぶりにゆっくり出来たお休みだったけど、気付けばあっという間だったね」

つぐみ「明日はいつも通りの時間に起こせばへーき?」

つぐみ「……うん、分かった」

つぐみ「それじゃあ今日も1日、お疲れさまでした」

つぐみ「……うん、あなたも私も……ね?」

つぐみ「…………」

つぐみ「……ふふ」

つぐみ「ああ、ごめんなさい。こうやって一緒に寝るの、すっかり慣れたなぁって思って」

つぐみ「最初の頃は全然眠れなかったよね、お互い」

つぐみ「今じゃ安心してすぐに寝付けるようになったけどね」

つぐみ「……どうしたの? ……なんだか寝付けない?」

つぐみ「うーんそっかぁ……」

つぐみ「それじゃあ――」

つぐみ「ねーんねん ころーりーよー おころーりーよー」

つぐみ「……うん? 子守歌だよ?」

つぐみ「そんな子供じゃない? えー、でも公園で膝枕されてた時は、頭も撫でてくれないと死ぬ―って言ってよね?」

つぐみ「はーい、それじゃあ頭も撫でながら歌ってあげよっか」

つぐみ「ねーんねん ころーりーよー おころーりーよー」ナデナデ

つぐみ「ぼーやはー よいーこーだー ねんねーしーなー」ナデナデ

つぐみ「……どう? 寝れそ?」

つぐみ「予想外に心地よくてすぐ眠れそう?」

つぐみ「そっか。それならよかった」

つぐみ「うん。それじゃあおやすみなさい」

つぐみ「お互い、いい夢を見ようね。……あなた」


――――――――――
―――――――
――――
……

――CiRCLE カフェテリア――

モカ「っていうお嫁さんになったつぐがお世話してくれるディスクをCDのオマケに付けたいな~ってモカちゃんは思います」

蘭「賛成」

巴「賛成」

ひまり「賛成」

モカ「賛成多数によりこの議案を可決しま~す」

蘭「胸が熱くなるね」

巴「ああ……久々に燃えてきたぜ!」

ひまり「最っ高のモノを作ろうね!」

巴「よし、そうしたらまずどこで収録するかだな!」

蘭「パスパレのスタジオ借りよう。楽曲提供したよしみできっと快く貸してくれるはず」

ひまり「じゃあ私、ちょっと彩さんに確認とってみるね!」

モカ「あとー、全部のCDに付けたらありがたみが薄れると思うんだよね~。だから初回限定盤の20枚だけに付けよっか」

巴「だな。最初の20枚さえ買えない馬の骨につぐの言葉は聞かせられねぇ」

蘭「まったくだね」

ひまり「あ、彩さーん、今時間ダイジョブですか~!?」

蘭「つぐみの都合がいい日は……来週の月曜だっけ」

ひまり「はい! CDのオマケで……むしろこっちが本命? みたいな? あはは!」

モカ「その日だねー、練習もお店の手伝いもない日は」

巴「じゃあそこだな。ひまり、そこで頼む」

ひまり(オッケー!)

ひまり「はい。なんで、来週の月曜日に……ええ、ありがとうございます! え? 千聖さんが演技指導までしてくれるんですか? はい、ありがとうございます!」

蘭「これでバッチリ」

モカ「不備なっしーん」

巴「完璧だな」

ひまり「来週月曜でOKだって! 千聖さんが演技まで見てくれるってさ!」

蘭「怖いほど順調だね」

モカ「すーぱーツグってるね~」

巴「ああ、ツグってるぜ」

ひまり「ぃよーし、みんなでがんばろー!」

ひまり「えいえい、おー!」

蘭「…………」

モカ「…………」

巴「…………」

ひまり「そこは乗らないの!?」


……………………

――同時刻 羽沢珈琲店――

つぐみ「今日もお疲れさまでした、イヴちゃん」

若宮イヴ「はいっ、お疲れさまでした、ツグミさん!」

つぐみ「最近、元気なイヴちゃんの接客のおかげでお客さんが増えてるってお母さんが言ってたよ」

イヴ「ホントですか!? みなさんのお役に立てているようで嬉しいです!」

つぐみ「ふふ、私も負けないようにしなくちゃね」ピピピ

つぐみ「あれ……ひまりちゃんだ」

つぐみ「もしもし?」

ひまり『あ、つぐー! おつかれー!』

つぐみ「うん、お疲れさま、ひまりちゃん」

ひまり『今度ね、CDの収録をパスパレのスタジオでやることになったから!』

つぐみ「あ、そうなんだ。みんなでコーラス入れる曲だよね」

ひまり『そうそう、それに似たようなやつ!』

つぐみ「……似たようなやつ?」

ひまり『ううん、こっちの話! それで、来週の月曜収録になったけど、つぐはそこで大丈夫だったよね?』

つぐみ「うん、大丈夫だよ」

ひまり『良かったぁー! それじゃあそんな感じだから! また明日学校でね!』

つぐみ「うん、また明日。ばいばい」

イヴ「ヒマリさんですか?」

つぐみ「うん。次の曲、来週の月曜にパスパレのスタジオで録音することになったみたい」

イヴ「そうなんですか? それじゃあみなさんをお待ちしてますね!」

つぐみ「よろしくね、イヴちゃん」

つぐみ(みんなで歌う曲だもんね……私もしっかり喉の調子を整えて練習しなくちゃ)


……………………

つぐみ(なんて考えて整えたコンディションは別の方面で使われました)

つぐみ(くだんの月曜日、パスパレのスタジオに着くと、いの1番に千聖さんに捕まりました)

つぐみ(困惑する私をアフターグロウのみんなは『頑張れよ、つぐなら出来る』と訳知り顔で送り出してくれました)

つぐみ(千聖さんに連れてこられたのはパスパレのレッスンルーム、そこで渡されたのは台本)

つぐみ(表紙には『羽沢つぐみがお世話してくれるディスク』の文字)

つぐみ(より一層困惑する私に追い打ちをかけるように、千聖さんのものすごく厳しいレッスンが始まりました)

つぐみ(『1人の演者として半端な演技は見過ごすことは出来ない』と豪語する千聖さんのレッスンは泣きそうなくらい激しくて怖かったです)

つぐみ(みっちり2時間のレッスンを終えると、今度はスタジオに連れていかれました)

つぐみ(楽器なんかが置いてあるスタジオじゃなく、声優さんが収録するようなスタジオでした)

つぐみ(そこで目の端に引っかかった利用者履歴の中に、『山吹沙綾』の文字が書いてあって、そういえば最近元気がなかった沙綾ちゃんの事情がなんとなく察せました)

つぐみ(そして始まった収録ではたくさんの恥ずかしいセリフを気持ちを込めて喋らされました)

つぐみ(相変わらず鬼教官となった千聖さんに随時ダメ出しをくらって泣きそうになりながらなんとか収録を終えました)

つぐみ(やっと千聖さんの恐怖から解放される、と思うとすごく嬉しかったような記憶があります)

つぐみ(そしてそんな収録が終わってから1週間後……)


……………………

――羽沢珈琲店――

蘭「ついに出来たね……通常盤と、つぐみがお世話してくれるディスクが入った初回限定盤15枚……」

巴「ああ……こうしてカタチになったものを見ると感慨深いな……」

モカ「料金設定も悩んだねぇ……つぐのボイスドラマが入るーってなると」

ひまり「まぁね? そこはやっぱり、早さという誠意を見せていただくということで、お値段据え置き税抜き¥1,300でご提供するしかないよね」

モカ「でもそれを買う人にはこれがある~」

つぐみ「……うぅ」

蘭「まるで新婚さんな純白のエプロンをまとったつぐみからの手渡し販売」

巴「衣装も悩んだなぁ……」

ひまり「お帰りなさいませご主人様なメイドさん派と初々しい新婚さんな普段着にエプロン派……激しい戦いだったね……」

モカ「まー今回は趣旨が趣旨だからね……エプロン派に譲るよー」←メイド派

蘭「だね。……ただ、次は譲らないから」←メイド派

巴「へっ、いつでもかかってくるんだな」←エプロン派

ひまり「次も返り討ちだよ~!」←エプロン派

つぐみ「……どうしてこんなことに……」

つぐみ(一戦終えた宿敵と書いて友と読む関係のように、いっそ清々しささえ感じられる4人がどこか遠い存在になっちゃったような気がする……気付いたら残り15枚になってるのって絶対みんなが買ってるよね……)

つぐみ(ていうかなんでウチのお店でCDの販売するんだろ……お父さんもどうして許可を……まさか限定盤で買収とか……されてないよね……?)

巴「おっと、そろそろ開店だな……」

つぐみ(それよりも、20枚も刷ったって私なんかのCDは売れないんじゃ……)

つぐみ(売れたら売れたで恥ずかしいけど売れなかったら売れなかったでそれもなんかヤだな……)

蘭「つぐみ、もう開店だよ」

つぐみ「あ、うん」

ひまり「気合入れてこー!」

モカ「ひーちゃんは大人しく静かにしててね~」

――カランコロン

??「…………」

つぐみ(開店時刻と同時にお店に入ってきた方……サングラスに大きなマスクと、平常時なら通報待ったなしな恰好の方です)

??「…………」

つぐみ(その方はまっすぐこちらへ向かってきて――)

??「限定盤、すべて頂けるかしら」

蘭「へぇ……」

巴「なんと……」

モカ「おー……」

ひまり「すごーい……」

つぐみ「…………」

つぐみ(アフターグロウのみんなは感嘆というかそんな感じの反応だけど……え、まさか……?)

つぐみ「……1枚1,404円ですので……合計15点で21,060円です……」

??「3万円で」

つぐみ「はい、3万円お預かりしますので、お返しが――」

??「結構よ。素晴らしいものを頂いたのだから、それはチップとしてあなたに差し上げるわ」

つぐみ「あ、はい」

蘭「やるじゃん」

巴「すげーな」

モカ「かっくいー」

ひまり「大人だ」

つぐみ「じゃあこちら……限定盤を……すいません、規則ですので1枚ずつ手渡しさせていただきます」

??「大いに結構です」

つぐみ(その方は私からの1枚ずつの手渡しにもとても丁寧に応じ、15枚すべてを受け取るととても満足そうに頷きました)

??「では、これで……」

つぐみ(そして颯爽と、淡い水色をしたウェーブのかかっている髪を靡かせて、その方は退店されました)

つぐみ(……あれってどう見ても……)

蘭「まさか大人買いされるなんてね……」

巴「まぁ可能性は考えていたけど、1番最初に来た客に全てを持ってかれるとはな」

モカ「ひゅー、これは次回作は増版も視野に入れないとっすね~」

ひまり「風貌は怪しかったけどすごく丁寧ないい人だったね!」

つぐみ「…………」

つぐみ(みんな気付いてないってことはきっと私の人間違いなんだろうな。きっとそうだよねそうに違いないよね)

つぐみ「……はぁ」

つぐみ(次回作へ向けての意気込みを語るみんなを尻目に、私は1つため息をついて呟きます)

つぐみ「あとで沙綾ちゃんと悲しみを分かち合おう……」


このあと家の神棚に例の限定盤が飾ってあるのを見たつぐみが山吹家へプチ家出をするのはまた別のお話。


おわり

調子にのってすいませんでした。
Hey-day狂騒曲の発売日だし大目にみてくれないかなって気持ちですごめんなさい。
いつか、届く、あの空に。ってアフロの歌詞でありそうだと思いました。


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