【艦これ】凍てついた海 (16)

己の目を疑う光景であった

普段は白波を立て、寄せては引き引いては寄せるはずの海が微動だにしない
視界に入るのは極大の氷塊

鎮守府を囲む一面の海
その全てが固く凍り付いていた

確かに昨晩は寒かったとはいえいくらなんでも…

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不安げにこちらを見る艦娘たち
その視線に耐えかね
提督「最近寒いよな~こないだこたつ出したじゃん そしたら多摩がさぁ」

と、笑みを浮かべ雑談を試みるが応じるものは皆無
皆思い出しているのだろう 
謎の声そして赤い海を

提督「アイアムボトムサウンドのような現象であると?」
あの作戦に参加していた数人が頷く

怯えた目を向けてくる睦月 震える如月
私が不在の間に起きた異常事態。それは多くの者の心に傷を残しているようだ

静まり返る中、唐突に吹雪が呟いた
「聞こえます」

「声が…聞こえます」

「寂しそうな…声が」

提督「……」

提督「総員 ミーティングルームに集まれ!」

号令と共に駆け足 会議を始める
誰もが厳しい事態であると感じていた

事実
この数日の間に6名もの艦娘が死の境を彷徨い、2名が心に大きなダメージを負うこととなる

提督「潜水艦隊と第六戦隊を偵察に出す」

19・鳥海「はい!」

提督「偵察地点は……吹雪 声はどちらの方角から?」

吹雪「……北北西」

提督「では第六戦隊は北北西に 潜水艦隊は氷の下を通って近域を探索」

大淀「氷面に爆雷で侵入口をあけます」

提督「皆…無事に帰って来いよ」

この超常現象の前では生きて帰れる保証はない
悲壮な覚悟を決め出撃する12名

提督「敵の目的が分かり次第全力で出撃する!!」

「はい!!!」


~そして6時間後~

大淀「潜水艦隊が戻りました」

提督「成果は」

大淀「それが…」

提督「どうした なぜ口ごもる」

大淀「あの…なんと言えばいいか」

脳内に浮かんだのは傷ついた人数の揃わない潜水艦隊の姿

大淀「あっ 待って」

大淀の静止を振り切り走り出す
そして ドアを開けた時そこにいたのは…

港湾棲姫「アッ」
集積地棲姫「タ」
戦艦棲姫「カ」
北方棲姫「イイ~」

コタツでゴロゴロする4人の姫であった

バタン



ガチャリ



バタン


大淀「戸を開け閉めしたところで中身は変わらないと思われます」

提督「なにがあった」

19「海中で身を寄せ合って凍えてたのね」

提督「なんでそこで魚雷を打たない」

19「だって…身動きできないなんて…」

提督「同情か だがそんな甘いことで「いーひひっひっひ 捕虜で情報拷問尋問なのね」

提督「なるほど」

提督「敵首脳陣を捕虜にできるとは大金星だぞ」

19「じゃ獣を解き放つといいの!」

提督「へっへっへっ その豊満なボディをむさぼりつくしてやる」

港湾棲姫「キャア」

大淀「提督 目的を見失っています」

提督「……魅了の術を使うとは」

提督「では尋問を開始する!!」

提督「海を凍らすなど! いったいどんな作戦だ!!」

集積地棲姫「モッチー ゲームヤロ」

望月「へいよー」

提督「聞けよ!」

戦艦棲姫「オ前達ガ凍ラセタノデハナイノカ?」

提督「何?」

戦艦棲姫「我ラハソレヲ探リニキタノダガ」

北方棲姫「探シテイタモノハココニアッタ…」ヌクヌク

港湾棲姫「デレナイ…」ヌクヌク

提督「……」ソワソワ

提督「とりあえずちょっと詰めてくんない?」

北方棲姫「イヤ…」

提督「いいからいいからお前が一番ちっちゃいからねー」

北方棲姫「モチアゲルナ…」

北方棲姫「ヒザ…カタイ…」

提督「お子様の定位置定位置…ん? なんか中に柔らかいものが」

提督:ゲシゲシ

「ニャッ」

提督「?」ゲシゲシ

「ミギャ」

提督「なにやってんだ多摩」

多摩「……て、提督にゃ?」

多摩「よ、よかったにぁ 多摩はてっきり皆全滅…って姫…っ」

提督「ビビるのはわかるが多分安全だ」

集積地棲姫「ハメ技…スルナヨォ…」ピコピコ

望月「お前の腕がないだけさー」ピコピコ

提督「な?」

多摩「ううう なんだか分からないけど皆無事でよかったにゃ」

多摩「オコタでぬくぬくしてたら四方から深海棲艦の足」

多摩「皆やられたと思って隠れてた」

提督「無理もない」


多摩「寿命が10年は縮んだにゃ」

多摩「ところで結局どういうこと?」

提督「俺が聞きたい」

戦艦棲姫「コノ器具ヲ貸与スルナラバ我ラ戦力トシテハタラコウ」

提督「聞いてもわからん はよカエレ」

港湾棲姫「カ、カエサナイデ…」ヌクヌク

提督「まぁコタツこそが最強の武器であるということだな」

多摩「あっ 提督のお膝は多摩の場所にゃ 返すにゃ」

北方棲姫「コタツノナカニカエレ」

提督「というわけで今日から艦娘が4人増えた」

4人「ヨロシクー」

大淀「そんなんでいいんですか」


19「後輩たちよく聞くのね 艦娘の一番大切な仕事は提督の性欲処理で…」

港湾棲姫「ソ、ソンナッ」

戦艦棲姫「マァシカタナイワネ」

提督「…いいんじゃないかな?」

大淀「こら」

多摩「どうでもいいにゃ 多摩はおこたがトラウマにゃ」

吹雪「…」


提督「ところでなんか忘れてる気がするんだけど気のせいかな?」

北方棲姫「ミカン…ムイテ…」

提督「はいはい」

~鎮守府より北北西に32キロ海上~

古鷹「加古っ 寝ないで 寝ちゃだめぇ!」

天龍「フフフ…吹雪がガガガガ」

鳥海「横殴りのブリザード もはや帰る道する」

衣笠「あの子は一体何の声を聴いたんだろう…」

青葉「ふ、吹雪ワレェ…」バタリ


~おしまい~

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