飛鳥「4分33秒を歌うよ」 (22)
飛鳥「 」
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飛鳥「 」
飛鳥「 」
>イヌノキモチニナルデスヨー、ワンワーン!
>ワー、ニナチャンカワイー
飛鳥「 」
飛鳥「 」
P「あの……飛鳥さん?」
飛鳥「 」
P「おーい」ツンツン
飛鳥「 ……///」
P「かわいい」
P「何か喋らないともっとつんつんするぞ」
飛鳥「 ……///」
P「まさかの受け入れ態勢」
奈緒「あ、プロデューサーさんに飛鳥じゃないか。って、何やってるんだ?」
比奈「抵抗できない飛鳥ちゃんを一方的にツンツンしてるのを見たっス」
奈緒「うわっ……」
P「違うんだ」
P「なんか『4分33秒を歌うよ』って言ったきりこのままなんだ」
比奈「ハハーン、なるほど」
P「何か知ってるのか、比奈」
比奈「いいッスか。『4分33秒』っていうのは」
P「うん」
飛鳥「 」
比奈「こういう歌なんス」
P「全然わからん」
奈緒「これ歌ってるのか!?」
比奈「あー、百聞は一見にしかずッス。まずはこの動画を見てください」
P「YouTube?」
《4分33秒 ver.オーケストラ》
ワァーパチパチパチ
奈緒「おおっ、なんかよくわからないけど凄い歓声だ!」
比奈「拍手の音が静まって、指揮者がタクトを振り上げる瞬間っていいっスよね」
P「わかりみ」
指揮者<スッ......
P「おい、こいつ動かないぞ」
比奈「観客までみんな真顔で黙ってるのがシュールっスね」
奈緒「だからなんなんだよこれは!」
P「楽譜をめくる音が虚しいな」
比奈「まぁ、最後までこのまま何も起きないんでスキップするっス」
P「マジか」
ポチッ
ワァァァァァアアアアアパチパチパチパチパチ
指揮者>ペコリ
P「なんか大ウケだぞ」
奈緒「この人達は本当にこれでいいのか……?」
比奈「とまぁ、『4分33秒』ってのは」
飛鳥「 」
比奈「その名の通り4分33秒黙り続けるという曲っス」
P「よーくわかった」
比奈「ちなみに、デスメタルアレンジなんてものもあるんスけど」
P「一体どういうことだ」
スマホポチー
ゾロゾロ……
奈緒「なんかすごい外人達が出てきた!」
P「彼らならやってくれそうだ」
ギュイーンギュイーンギュイー……
ボンボンッ
P「ちゃんとチューニングとかマイクテストしてるぞ」
奈緒「どうせ使わないんだろ……」
P「なんかめっちゃアイコンタクト送ってる」
ダカダカダカダカダカダカダカ!!!
ギャギャギャギャン!!!
ダカダカダカダカダカダカダカ!!!
ギャギャギャギャン!!!
奈緒「うわ、演奏が始まった!」
P「俺は信じてたぞ」
ダカダカダカダカダカダカダカ!!!
奈緒「もしかして、本当にやってくれるんじゃないか!?」
カンッカンッカンッ、フォーーウ!!
……シーン
奈緒「やっぱりダメじゃないかー!」
……
奈緒「ちょっと期待しちゃったけど静かだー!」
P「流石のツッコミスキルだ、奈緒」
比奈「ンフッw」
比奈「これも最後までこのままっスね」
P「やっぱりな」
奈緒「プロデューサーは彼らのこと信じてるんじゃなかったのか?」
比奈「ところでプロデューサー、なんか新しいアイデアが欲しいって言ってたっスよね?」
P「ああそうだな。今度のライブでは斬新なパフォーマンスを……」チラッ
飛鳥「 」
P「……新しい!」
奈緒「いやダメだろ!」
P「アイドルが歌うと思ったら急に黙って動かなくなったら面白いだろ?」
奈緒「アイドルにそんな面白さは求められてないから!」
P「まぁまぁ、ちょっと想像してみろって。例えばニュージェネレーションズとかでさ」
【奈緒の脳内】(舞台袖)
凛「みんな、最高のステージにするよ」
卯月「私、笑顔で頑張ります!」
未央「お、2人ともやる気だねー!それじゃ、いくぞー!」
フラ......イド......
チキーーーン!!
-(ホワイトアウト)-
凛「 」
卯月「 」
未央「 」
【現実】
奈緒「いや事故だろこれは!!」
P「びっくりした」
奈緒「ちょっと想像してみたけど3人が真顔で立ってる画しか想像できなかったよ!」
比奈「想像はしたんスね......」
P「いやまて奈緒。卯月はちゃんと笑顔だぞ」
【脳内】
卯月「ニッコリ」
【現実】
P「ほら」
比奈「アイドルの鏡っスね」
奈緒「あーもー、そういう問題じゃなーい!」
奈緒「そもそもこの曲のどこがいいんだよ?」
比奈「正直アタシもよくわかんないっス」
P「革新性だな。今までこの曲をうたったアイドルはいないだろう」
奈緒「当たり前だろっ」
飛鳥「 ふぅ。ボクの全力の歌唱、どうだったかな。プロデューサー」
P「良かったぞ。飛鳥の新しい可能性が見られて面白かった」
飛鳥「そうかい、喜んでもらえたのなら嬉しいよ。魂が共鳴したね......その、キミさえ良ければまた歌っても......」
P「もちろんいいぞ」
飛鳥「フフッ......そうか、やった。キミにもう一度、フフフ......」
比奈「健気萌えっス」
P「わかる」
奈緒「なぁ飛鳥。これはどういう曲なんだ?」
飛鳥「概要を説明するだけなら容易い。けど、上辺だけの言葉で本当に理解したとは言えないだろうね」
飛鳥「奈緒さん、比奈さん、プロデューサー。何も話さず、耳を澄ますんだ」
奈緒「あ、おお......!」
シン......
シュゴーーー......
>スゲー!オモチノビノビダー!
>モチオイシイネ、ニナチャン!
飛鳥「ほら、理解るだろう? 耳を澄ますことで静寂の瞬間や、空調のノイズ。子供たちが遊ぶ声が遠くから聞こえてくる」
比奈「ああー、確かに聞こえるっス」
飛鳥「意識していなければ何の印象にも残らないような環境音。けど、音自体は常にそこに存在しているんだ」
P「あっ......! なっ、なっ......」
飛鳥「そう、ボク達は4分33秒静かに耳を傾けることで、セカイが奏でる音をありのままに再認識することができる」
P「なるほどーーーー!」
奈緒「うわびっくりした」
比奈「なんかそういう抽象的なのも結構面白いっスね」
奈緒「でもなんか、申し訳ないな。ほら、あたし達ここですごい騒いじゃったし......」
P「あすちゃんほんとごめん」
飛鳥「問題ないさ。ボクはただ此処でボクから見えるセカイの全てを聴いていたからさ」
比奈「......はっ!」
飛鳥「気が付いたようだね。さすがは比奈さんだ。そう、キミ達の漫才もセカイが奏でる......」
P「あっ、あっ......!」
飛鳥「音楽の一部だったのさ」
P「あっー!」
P・比奈「「面白いっ!!」」
奈緒「いやそうかな......?」
P「飛鳥」
飛鳥「なんだい。プロデューサー」
P「一緒に歌おう」
奈緒「歌じゃないって」
飛鳥「構わないよ。今のボクはシンパサイザーだからね。フフッ......」
比奈「あの、飛鳥ちゃん。アタシも興味あるー......なんて」
飛鳥「ああ、共に旋律を奏でよう。そしてボク達でデトネイターになろう」
比奈「やった、ありがとうっス! いやー、これでアタシも仲間入りっスね」
奈緒「あれ、もしかしてノれてないのはあたしだけなのか!?」
薫「あれー、なにしてるのー?」
比奈「これからみんなで4分33秒を歌うんスよ」
みりあ「わーい、みりあもやるー!」
仁奈「ジョン・ケージの気持ちになるですよー!」
奈緒「なんで子どもが知ってるんだ!?」
飛鳥「布教したのさ」
奈緒「小さい子になんてもの教えてるんだー!」
ワイワイ、ガヤガヤ......
加蓮「ちょっと奈緒ー、そんな面白い事してるならアタシも呼んでよねー」
凛「行くよ。蒼い風が駆け抜けるように」
奈緒「あれ!?どうして2人がここに!」
飛鳥「ヒトはココロのどこかで繋がっていたいものなのさ」
奈緒「嘘だろー!」
笑美「ちょーっとまったー! そんな面白いこと、この難波笑美抜きでやったらあかんでー!」
鈴帆「鈴帆もおるよ~!」
幸子「カワイイボクの音を聴かせてあげましょうかねぇ!」
友紀「プレイボール前に静かにするのは得意だよ!」
紗枝「雅な試みどすなぁ」
奈緒「飛鳥、この人たちも」
飛鳥「布教済みさ」
奈緒「あぁもうめちゃくちゃだよ......」
美優「今晩の居酒屋はここですかね」
奈緒「いや違うから」
心「最初から最後まで、しゅがっていくぞ~☆」
奈緒「張り切らなくていいからー!」
P「皆いいかー、それじゃあ俺の合図で始めるぞ」
P「さん、はいっ」
飛鳥「 」
比奈「 」
薫「 」
みりあ「 」
仁奈「 」
加蓮「 」
凛「 」
笑美「 」
鈴帆「 」
幸子「 」
友紀「 」
紗枝「 」
美優「 」
心「 」
P「 」
奈緒「......」
…...シン
シュゴーーー......
奈緒「なんなんだこの事務所はー!!」
~ 完 ~
以上になります。
ありがとうございました。
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