―マクドナルド―

男「ホントにやってるんだ。『マック定食始めました』って書いてある」

友人「どんな感じなんだろうな？」

男「どうせ、ご飯の代わりにハンバーガー、味噌汁の代わりにマックシェイク」

男「おかずはポテトって感じだろ」

友人「それただのセットメニューじゃん！」

ｱﾊﾊ…

店員「ご注文をお伺いいたします」

男「おお、結構種類あるな」

男「えーと……じゃあ、俺は焼き魚定食で」

友人「オレは生姜焼き定食！」

店員「かしこまりました。少しずれてお待ち下さい」

男（どんなのが出てくるんだろ）

友人（楽しみだな……）

店員「お待たせしましたー！」

男「おお！」

友人「結構本格的！」

男「じゃあ……席に座って食べようか」

友人「ああ」

男「ま、いくら見た目がそれなりでも、味がよくなきゃな」

友人「結局それよ。奇をてらっただけじゃ意味なし」

男「焼き魚は……アジみたいだな。じゃ、いただきます」ﾓｸﾞｯ

友人「いただきます」ﾓｸﾞｯ



男「おお！？」

友人「んん！？」

男「このアジ、脂がしっかりのっててうまい！」

友人「生姜焼きもめっちゃうまいぜ！」

男「ご飯も柔らかいし……」ﾓｸﾞｯ

友人「味噌汁もダシがよくきいてる！」ｽﾞｽﾞ…

男「アジの白身をちょっと口に含んで……ご飯をかき込む！」ｶﾞｯｶﾞｯ

男「くぅ～、幸せ～！」

友人「よくあのスピードでこんな定食出せるもんだ」ﾊｸﾞﾊｸﾞ

男「いやぁ～、まさかマクドナルドでこんな本格定食が食えるとはな！」

友人「ビックリだぜ！」

店員「ありがとうございましたー！」



男「ふう……よかったな」

友人「ああ、想像以上だった」

男「これからも和風定食食いたくなったら、マクドナルド来ようかな」

友人「オレもそうしよっと！」

……

社員A「むむむ、このままではまずいぞ」

社員B「マクドナルドが“ウチの領域”に踏み込んでくるとはな……ノーマークだった」

社員A「どうする？　ウチではハンバーガーを始めるか？」

社員B「バカ、それだと対抗しようとしてるのが見え見えだろう。みっともない」

社員A「それもそうか……ならば、どうする？」

社員B「だったらウチは――」

……

男「今日はメシどうする？」

友人「こってり中華で決めたいとこだな」

男「こってり！　いいねえ！」

友人「ここらへんで中華料理屋というと……」

男「すぐそこにある、やよい軒はどうだ？」

友人「やよい軒は中華というより和食だろ」

男「いや、やよい軒が本格的に中華料理始めたんだってよ」

友人「ええ！？」

……

社員C「おのれ、やよい軒……！」

社員D「しかし、敵もなかなかやります。和食のノウハウをそのまま中華に生かしている」

社員D「このままでは、手強い競合相手になりますよ」

社員C「勢いに乗るやよい軒と、今のまま中華でぶつかり合うのは賢明ではないな……」

社員C「こうなったら、ウチも他のジャンルに挑戦するしかないか」

社員D「でしたら、こういうのはどうでしょう？」

……

男「おお！？」

友人「どうした？」

男「バーミヤンってあるじゃん」

友人「ああ、中華のファミレスだろ？　たまに行くよ」

男「そのバーミヤンが……フライドチキン始めたんだってよ」

友人「マジで！？」

―ケンタッキーフライドチキン―

店員「いらっしゃいませー！」

男「カーネル牛丼ください。つゆだくで」

友人「オレもそれで！」

店員「かしこまりました」

ﾓｸﾞﾓｸﾞ…　ﾊｸﾞﾊｸﾞ…

男「カーネル牛丼めっちゃうまいな！」

友人「自分の名を冠する牛丼を作ってもらえて、カーネル・サンダースも天国で喜んでるだろうな」

男「そういや知ってるか？　ココイチもケーキ類の販売始めるらしいぜ」

友人「辛口から甘口への転身か。思い切ったもんだな」

友人「だけどオレも、リンガーハットが日本そば始めるって聞いたな」

男「へえ～」

男「はなまるうどんはパスタ始めるらしいし……」

友人「ドミノピザは主力商品を焼き鳥に切り替え……」

男「スターバックスは本格的に日本茶の販売に乗り出して……」

友人「ミスタードーナツはたこ焼き屋になったし……」

男「どの飲食店も、他の領域にどんどんチャレンジする風潮が出来てきてるな」

友人「まあ、いいことじゃないか？　ずっと同じことやってたらマンネリになるし」

男「そうだな。なんにでもチャレンジしていく精神ってのは、俺も見習いたいね！」

……

……

ﾜｲﾜｲ…　ｶﾞﾔｶﾞﾔ…

学生A「二郎にカレー食いに行こうぜ！」

学生B「いいねぇ～！」



会社員A「いきなりステーキに、ラーメン食いに行くか！」

会社員B「あの野菜たっぷりのギトギトラーメンが時々恋しくなるよな」



イケメン「今夜はジョナサンで、最高級フルコースを堪能しようじゃないか」

美女「ステキ！」

ﾜｲﾜｲ…　ｶﾞﾔｶﾞﾔ…





男「ちーっす！」

友人「オーッス！」