【彼岸島ss】 ケーキ (29)

オ オ オ オ オ ォ ォ ォ ォ ォ

勝治「なあまだ東京に着かないのかよ」

精二「アト...少シ...」ハシューハシュー

勝治「それ3時間前にも聞いたぜ。ほんとにこっちであってるのかよ」

鮫島「箱根から東京にすぐに着く訳ねえだろクソガキ!黙って精二を信頼しやがれ!」

勝治「こんなエロホッケーを信頼できるわけねえだろクソハゲ!もうかれこれ連日で半日以上歩きっぱなしじゃねえか!!」

ネズミ「そうですよ鮫島様ぁ、もう足が棒になりそうですよぉ。とりあえず休みましょうよォ」ハァハァ



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鮫島「ったく、これだから最近の若いやつらは...なあ明、精二。お前らなら平気だろ」

明「ん...まあな」

精二「」ハシューハシュー

鮫島「ホレ見ろ。こいつらに出来てお前らが頑張れねェとは言わさねーぞ」

ネズミ「あんたらを基準で考えるなよ!なあガキィ!?」

勝治「...明が休まないなら俺もがんばるよ」

ネズミ「ハァ!?なにあの化け物どもと張り合ってるんだよ!?わあああああやだやだやだ休みたい腹が減った~!!」

鮫島「喚くんなら置いていくぞ」

ネズミ「イヤアアアア!置いていかないでェ――!!」



明「!」

明「シッ」

鮫島「どうした明。ん...ありゃ町の灯りか?」

明「どうやらそうらしい。それにあんなに無防備に灯してるってことは...」

ネズミ「ひいい、また吸血鬼ィ!?」ガタガタ

明「ちょうどいい。ここで食糧を調達していこう」

精二「」コクリ


ガヤガヤ

吸血鬼「ガハハハハハ!!」

吸血鬼B「おっ、中々似合ってるじゃねえか!」

吸血鬼C「ガキ騙くらかすならこれくらい気合入れていかねえとな!」

精二「ウガアアアアア!」

ガンッ

吸血鬼「はぷぼっ!?」

吸血鬼B「なっ、なんだ何事だ?」

ザンッ

明「」ハァ ハァ

吸血鬼C「ひ、ヒイイイィィィ!人間だァ!人間が攻めてきたぁ!」

ワーワー

鮫島「へっ、相も変わらずぞろぞろと。よし、これでお前は用済みだ」

ゴキッ

吸血鬼C「ヒギィ!」

吸血鬼D「吉岡が殺られた!」

吸血鬼E「テメェ!クソ人間!」

ワ ア ア ァ ァ


シーン

明「」ハァ ハァ カチリ

ネズミ「も...もう終わり?」ブルブル

鮫島「これで全員片付いたな」

勝治「よし。食糧を探そうぜ」

鮫島「しかしこいつら派手な格好してやがるな。ってことは飯の方も期待できそうだ」

漢字間違えてた

勝治→勝次


精二「ア...兄貴...」スッ

鮫島「どうしたんだその袋」

精二「最初ニ倒シタ奴ガ...持ッテタ...」ハシュー ハシュー

鮫島「どれ、中身は...おっ!」

勝次「なんだよ急に目を輝かせやがって」

鮫島「見ろよ、ケーキだ。ケーキが入ってやがった!丁度5ホール!ついでにシャンパンも!」

明「さっきのあの吸血鬼の格好にケーキ...そうか。今日はクリスマスだったか」

鮫島「さしずめコイツはサンタからのクリスマスプレゼントってところだな」


民家

ムシャムシャ

精二「ハフッハフッ」

ネズミ「かーうめェ!久しぶりの糖分が身に染みるゥーー!!」

鮫島「こんなところで聖夜の恩恵にあずかるとはな」モグモグ

明「確かに」モグモグ

鮫島「どうだクソガキ。こんなウメェもんにありつけたのも精二の案内あってこそだぞ」

勝次「ヘ、ヘンッ。毎年母ちゃんが作ってくれたケーキの方が上だっての」モグモグ

鮫島「その割には美味そうに食うじゃねえか。ん?」

勝次「からかうんじゃねぇよクソハゲ!」

明「...今日はこの辺りで休むとしよう。変に意地を張って動けなくなられても困るからな」

鮫島「だとよ。よかったなクソガキ。見張りは俺達に任せて、子供は腹が膨れたら寝ておけよ」

勝次「ガキ扱いすんなよハゲ。見張りくらい俺もできらぁ!」


勝次「」クークー

鮫島「寝ちまったなあいつ」

明「仕方ないさ。あの子はこれまでひどく辛い目にあってきた。こんな日くらいゆっくりと寝かせてやるべきだろう」

鮫島「それもそうだな。ったく、こうして黙ってりゃ、まだ可愛い子供じゃねェか」

ネズミ「うーんむにゃむにゃ...」ゴロゴロ

精二「」スー スー

明「意外に寝相がいいんだな、精二は」

鮫島「言ってるだろ、人見知りだって」


鮫島「明、お前もちゃんと寝ておけよ。見張りは俺がやっておくから」

明「いや、いい。見張りは俺がやる」

鮫島「んなこと言っても、お前はまだ金剛との戦いの傷も癒えていないだろ。あまり無茶すんなよ」

明「...すまんな。お前の気遣いは嬉しいが、コイツは癖みたいなものだ。彼岸島では、常に気を抜けなかったからな」

鮫島「彼岸島...お前が追ってる雅とかいう奴の出身地だったか?」

明「ああ」

鮫島「んじゃ、お言葉に甘えて...気が済んだら俺だけ起こしてくれよ。見張り交代してやるから」ゴロリ

明「わかった」


ネズミ「ウヒヒ...」クカークカー

鮫島「」ゴロゴロ

精二「」スースー

勝次「んん...クソハゲ...ケーキ食いすぎだっての...むにゃ,,,」

明「......」ハァ ハァ

明(ケーキ、か...)

――――――

回想

TV『街中はクリスマスムードで溢れています!!』

明「......」ピッ

TV『ご覧ください、雪が恋人たちを祝福するかのように降り注いでいます。綺麗ですねぇー」

明「」ピッ

明「ふんっ」ゴロリ


明(僕はクリスマスが嫌いになった)

明(元々はそこまで意識していなかったし、どちらかといえば好きだったかもしれない)

明(サンタはあまりきたことがなかったけれど、兄貴がいてくれたお陰で家族でのパーティは楽しかったし、この夜にユキと恋人になる甘い妄想もしたことがある)

明(けれど、兄貴がいなくなってからは、両親の僕に対する八つ当たりが横行し、家の中は常に電灯が切れているような状態だった)

明(当然、そんな中でクリスマスパーティどころか年内の行事なんてまともにできるはずもなく)

明(ユキはケンちゃんと付き合ってるから妄想が少しでも現実に近付くこともなく)

明(テレビで流れる、みんなが幸せな夜を過ごせるなんて謳い文句が異様に憎たらしく聞こえてしまう)

明(だから僕はクリスマスが嫌いになった)



ゴロリ

明(みんなからのクリスマスパーティの誘いもあったけれど、家族と過ごすという名目で断った)

明(皆との時間が嫌なわけじゃない。むしろ自分の居場所がここにあると思えて大好きなくらいだ)

明(ただ、クリスマスの夜にユキとケンちゃんというカップルをあまり見たくはなかった)

明(そんな自分勝手で子供じみた我侭で、みんなとの時間をふいにしてしまった)

明(だから僕は―――クリスマスの夜だというのに、それ自体に嫉妬してこうして一人で無味に過ごすハメになっている)


ドタドタドタ

明「?」

ユキ「明!」ガチャリ

明「わっ、ゆ、ユキ?なんでウチに?」

ユキ「」キョロキョロ

ユキ「...明ッ!急いで、ケンちゃんが困ってるの、助けてあげて!」

明「え?え?」

ユキ「おばさん、明君借りて行きますね!」


ハァハァ

明「な、なんなんだよ。みんなでパーティしてたんじゃないのか、ケンちゃんがどうしたんだ?」

ユキ「えっと、私も西山くんからの又聞きだから事情はよくわからないの」

ユキ「トイレから帰ったら、いきなり西山くんがすぐに明を連れてきてくれって」

明(ケンちゃん...なにがあったんだ!?)


プレパブ小屋

明「ケンちゃん!」

ガヤガヤ

ケン「おっ、来たか。てことは、家族で過ごすってのは嘘だったみたいだな」

明「あ、あれ...なんともない...?」

ケン「悪いな。こうでもしないとお前が来てくれなさそうだったからよ。お前もやろうぜ、クリスマスパーティ」

ユキ「ごめんね明。騙すようなことしちゃって」

明「え?」

ケン「その、なんだ。お前の家のことで色々と慌しいんだろうが、それで気を遣われちゃたまらねぇからよ」

加藤「素直じゃねえなぁケンちゃん」

西山「そうそう。ハッキリ言っちゃえよ、明にもいてほしいって」

ポン「」クスッ

ケン「茶化すなてめえら///」

ゴゴゴン

西山&加藤「「イテッ」」

ポン「なんで僕まで」


ケン「コホン...まあそういう訳で、だ。ケーキもまだみんな手をつけてねえからよ、明も一緒にパーティ楽しもうぜ」

明「......」

ユキ「急なことだし、迷惑だったかな...?」

明「いや、そんなことはないけど...」

明(俺なんか自分のことしか考えてなかったのに...)

明「...ありがとうみんな。俺も、クリスマスパーティに参加するよ」

ケン「そうこなくちゃな。よっしゃお前ら飲むぞ!もちろん明もな!」

明「いいよ」

明(それから僕は、みんなのクリスマスパーティに混ぜてもらった)

明(ユキとケンちゃんの二人が恋人らしくハシャいでいる時はどこか苦い思いだったけれど)

明(でも、二人や西山たちが無茶苦茶をしてまでここにいてほしいと言ってくれたこと、僕の居場所がここにあると示してくれたことはとても嬉しかった)

明(僕にはサンタも甘い夜も縁はない。けれど、嫌いだったクリスマスは、彼らといる時間のぶんだけは好きになれたようだった)


回想終わり


――――――

明「......」

明(あの時のケーキもこんな味だったな)

明「クッ...!」

明「チクショウ...ケンちゃん、ユキ、西山、ポン...なんで死んじまったんだよ...」ポロリ


鮫島「やっぱりな」

明「!」

鮫島「今朝まであれだけピンピンしてたお前が急に休もうだなんて妙だと思ったんだ」

明「起きてたのか」ゴシ

鮫島「お前が気になって寝付けなくてよ。...さっき漏らしてたケンちゃんとかユキっていうのはお前の友達なのか?」

明「...ああ。俺が彼岸島へ渡る前からの最高の仲間達だ」


鮫島「ハッ。それなりにお前とツルんだつもりだったが、俺はお前のことをまだなんにも知らないんだな」

キュポッ

シャンパン「」トクッ トクッ トクッ

鮫島「聞かせてくれよ。お前の最高の仲間達ってやつらのこと」

明「...そうだな」クイッ

グラス「」トンッ

明「こいつは酒代わりだ。クリスマスくらい、浮かれて口が軽くなることもある」

鮫島「違いねえ」


――――――

翌朝

勝次「んー、よく寝た」

精二「」ハシュー ハシュー

ネズミ「ハァ...また怖いところへ向かうのか」ブツブツ

勝次「おーいハゲェ、早速準備して...」

鮫島「シィー」



勝次「なんだよどうした...あっ」

明「」スースー

勝次「明...こんな穏やかな顔で寝ることもあるんだ」

鮫島「出発は明に合わせよう。いいなお前ら」

精二「」コクリ

ネズミ(ラッキー、まだだいぶ休めそうだ)

勝次「ヘヘッ、ハゲはケーキがクリスマスプレゼントだって言ってたけど、こんな明を見れたほうが俺にはクリスマスプレゼントに思えるよ」

明「むにゃ...ケンちゃん...ユキ...」

終わり

終わりです。
クリスマスからは少し遅れてしまいましたがクリスマスSSです

燃え盛る金剛様が表紙の14巻は1月5日(金曜日)に発売予定です。

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