幸子「うおおおおお!!!」 (23)

モバマスSSです。

夕美「うおおおおお!!!」
夕美「うおおおおお!!!」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1492222941/)
未央「うおおおおお!!!」
未央「うおおおおお!!!」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1496141259/)
と若干の繋がりがあります。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1511582676

――トレーニングルーム



幸子「おはようございまーす……」

拓海「おっ、来たか。プロデューサーから話は聞いてるぜ」

幸子「あ、どうも。よろしくお願いします。あの……ちなみに拓海さんはどんなふうに聞いてます?」

拓海「幸子にケンカの仕方を教えろってことだろ? そーいや理由は聞いてねえな、護身用か?」

幸子「うーん……少し誤解があるようですね」

拓海「あん?」

幸子「ええとですね……まずボクのプロデューサーさんが、ひとつ企画を通したんですよ。テレビ番組の企画なんですが」

拓海「へえ、テレビか。すげーじゃねえか」

幸子「ボクがよその事務所のアイドルとボクシング対決をする、という内容で」

拓海「……おう」

幸子「収録はもう1週間後なんですが、『やるからには勝たねばならない、特訓してくるんだ幸子!』とプロデューサーさんが言いまして」

拓海「なるほど……」

幸子「…………」

拓海「……なあ、こんなこと言っていいのかわかんねえけど」

幸子「言わないでください、わかってますから! もう決まっちゃってるんですよ! 仕方がないんです!」

拓海「アタシはそれでも構わねえが、アタシでよかったのか? そういうのは亜季の役目じゃなかったか?」

幸子「亜季さんは地方でのお仕事でしばらく留守にしているそうで」

拓海「そういやそんなこと言ってたっけか……、まあボクシングならちょうどいいわな、ここならひと通りの道具はそろってるし」

幸子「噂には聞いてましたが、本当にリングがあるんですね」

拓海「ああ、しかもだんだん設備が充実してってんだよな、いつの間にかサンドバッグふたつになってやがる」

幸子「はあ……」

拓海「今は両方とも使われてっから、とりあえず軽くスパーでもやってみるか?」

幸子「え……スパーってスパーリングですよね? いきなり拓海さんとですか?」

拓海「なんだよ? アタシじゃ不満か?」

幸子「いえ、その……ちゃんと手加減してくれるんですよね?」

拓海「安心しろよ、一発で気持ちよく沈めてやんぜ」

幸子「遠慮しておきます!!」

拓海「冗談だって……まあ、他のヤツがいいってんならそれでもいいけどよ、そこらに暇そうなのがゴロゴロいるし、適当に頼んでみたらどうだ?」

幸子「そ、そうしましょうかね」

幸子(なるべく穏やかで、強すぎない人がいいですね。えっと……)キョロキョロ



きらり「きらりーん☆ぱわー!!」ドッゴォン!!

幸子(……違いますね)



裕子「サイキック!!」ズドォ!

早苗「ハイキックね、それは」

雫「脚、すごい上がりましたね~」

幸子(……ここも違う)



時子「ちょっと、誰かミット持ってくれない?」ギロォ

幸子(怖すぎる)



未央「お、さっちーじゃん! 珍しいね、トレーニング?」

幸子「惜しい」

未央「えっ?」



夕美「あっ、幸子ちゃんに未央ちゃん、どうしたの?」

幸子「夕美さんっ!」

未央「なんか納得いかないな!!」

夕美「へえ、スパーリングの相手ね。いいよ、私でよかったら」

幸子「ありがとうございます!」

拓海「おーい、決まったか? って、なんだ夕美かよ」

夕美「せっかくだからお手伝いするよっ」

拓海「未央はどうしたよ?」

未央「通りがかっただけなんだけどね、ちょっと心配だから私も見てるよ」

夕美「じゃあ私は準備してるから、ふたりで幸子ちゃんの手伝ってあげて」

未央「ほいほい、さっちー手出して、グローブ着けるから」

幸子「あ、ハイ、どうも」

拓海「あとヘッドギアを……どうだ? ゆるくねえか?」

幸子「んー、大丈夫だと思います」

拓海「じゃあリングに上がんな。夕美はもう準備できてる」

未央「次のゴングで開始にしよっか」

幸子「あれ……? 夕美さんはヘッドギア着けないんですか?」

拓海「オイオイ、夕美に当てられる気でいんのかよ? 自信過剰にも程があるだろ」

幸子「へ?」

未央「ゆーみん本気出しちゃダメだよ! さっちー死んじゃうからね!」

幸子「え? え?」



『カーン!』



幸子「――え?」

 なんの因果か、ボクは他のアイドルと比べて、危ないお仕事をさせられることが多い。
 高いところから飛び降りるなんて日常茶飯事。鉄格子越しとはいえ、ツキノワグマやライオンの頭をなでさせられたこともある。

 ……夕美さんは、明るく穏やかで優しいと、評判のアイドルだ。お花が好きで人当たりがよく、年少組の面倒なんかもよく見てくれている。あまりお話をしたことはないけど、事務所で見かけたときは、いつだってひまわりのような笑顔を咲かせている。

 だけど、なぜだろう。
 リング上で対峙したその瞬間、ほがらかな微笑みを浮かべるその人が、ボクには、檻の中の熊やライオンなんかよりも遥かに恐ろしい、猛獣のように見えた。

未央「そういえばさ、たくみんとゆーみんて意外と仲いいよね、やっぱり同郷だから?」

拓海「そんなに意外か?」

未央「世間的なイメージだと正反対のタイプなんじゃないかな」

拓海「夕美は別にそんないい子ちゃんじゃねえぞ? よく世界を花で埋め尽くすとかテロリストみてーなこと言ってるし」

未央「反社会的な意図はないと思うな」

拓海「まあ、なにかと助かってはいるけどな。アタシと打ち合えるやつなんてそうそういねえし」

未央「うん、かなり今更なんだけどさ、ゆーみん、なんで強いのかな?」

拓海「お花たちがパワーをくれるそうだ」

未央「誰が納得するの? その説明で」

拓海「よく土とか肥料とか詰まった袋を運んだりしてるからかもな。少し手伝ったことあるけど、かなりキツイぜ、あれは力もつく」

未央「ああ、そういう……でも土の入れ替えなんてそうそうやらないでしょ?」

拓海「ボランティアで公園の植物の世話してるって聞いたことねえか? アイツ、その手の話があったら全部引き受けて、片っ端から改造して回ってるんだよ」

未央「……へえ」

拓海「なんだよ?」

未央「いや、仲いいねって」

拓海「うるせえよ」




『カーン!』



未央「あっ、全然見てなかった! さっちーだいじょうぶ!? 息はある!?」

拓海「おめーは夕美をなんだと思ってんだよ」

夕美「最初だし、このぐらいにしておこっか」

幸子「ハァ、ハァ…………はい」ヨロヨロ



幸子(一発も当てられなかった……、それに……)

幸子(夕美さんのパンチは、明らかに手加減してくれていた。力なんて全然入ってない、本当にただ触れただけみたいなもの)

幸子(なのに、全くよけられなかった)



夕美「えっと……落ち込まないでね、幸子ちゃん見込みあると思うよ」

幸子「……どこが、ですか。手も足も出ませんでしたよ」

夕美「手は出てたよ。だから、すごいなって思ったの」

幸子「?」

夕美「空振りすると疲れるでしょ。最後のほうはふらふらになってたよね。でも幸子ちゃんは、最後まで手を出し続けてたから」

幸子「当たってませんけど……」

夕美「それは技術の問題だよね。技術とか筋力なんてのは、誰だって練習すればつくからね。そこまで重要じゃないよ」

幸子「……そうでしょうか」

夕美「最初から強い人なんていないもの。幸子ちゃんはまだつぼみ、これから大きく咲くんだよ。今は小さくても、あきらめないで挑み続ける、その気持ちの方がよっぽど大事だって、私は思うな」

幸子「…………はい。ありがとう、ございます」



拓海「つっても、それで勝てるかは別のハナシだよな」

未央「台無し」

拓海「いや、勝負なんだから、勝たなきゃなんにもならねえだろ」

未央「そうかもしれないけどさ、ここはもうちょっとロマンに浸ろうよ」

拓海「幸子だってどうせなら勝ちてえよな?」

幸子「それは…………あっと」フラッ

夕美「幸子ちゃん、だいじょうぶ?」

拓海「ボコったやつがそれを言うのか」

夕美「ボコってないよ!」

幸子「あ……はい、だいじょうぶです」

拓海「ちょっと休憩ついでに作戦会議でもするか」

未央「そうだね、ここで話してるとジャマかもしれないし、移動する?」

夕美「あ、だったら私いいところ知ってるんだ、ついてきて」

未央「お? なになに? どこ?」

夕美「ここだよっ」ガラガラ

未央「引き戸? おお和室! これなんの部屋?」

拓海「あー、ここか。たしか応接室ってことになってるんだったか」

未央「勝手に使っちゃっていいものなの?」

拓海「実際に客通してんのは見たことねえし、平気だろ。よく京都組がたまり場にしてるとか聞いたような」

夕美「適当に座ってていいよ、いまお茶淹れるから」

拓海「だったら、アタシはそのあいだ席外してるぜ」

未央「ん? たくみんトイレ? 私の分もしてきてくれない?」

拓海「便所じゃねーよ、自分で行ってこい」

未央「ふう、ただいまっと」ガラッ

夕美「おかえり、お茶入ってるよ」

未央「あれ? たくみんはまだ?」ピシャ

幸子「いま後ろに……」

拓海「目の前で閉めんなよ、ケンカ売ってんのかコラ」ガラッ

未央「うわっと! ごめんごめん、ホントに気付かなかっただけだから」

幸子「拓海さんはどちらへ?」

拓海「幸子のプロデューサーんとこ行って、資料もらってきた。対戦相手は16歳で、アイドルになるまでは学校の部活で陸上やってたそうだ」

未央「たくみんって、実は真面目だよね……」

夕美「拓海ちゃんは前からずっと真面目だよ?」

拓海「うるせえ。相手を知らなきゃ作戦の立てようもねえだろが」

幸子「作戦、ですか」

拓海「ああ、この相手、部活はけっこうガチでやってたみてえだな。だとするとスタミナじゃまず勝ち目はねえから、長期戦になったら不利だろ? だからここは1ラウンドからアクセル全開で――」



美世「いま車の話!!」ガラッ

拓海「してねーよ」ピシャン

幸子「……えっと?」

拓海「気にすんな」

夕美「つまり、開幕からブッコんでそのまま倒しちゃえってことだね」

未央「ブッコむとは」

拓海「そういうことだ。正直、1週間程度じゃ鍛えるにしても限界がある。ここは奇襲で一気に決めちまうしかねえ」

幸子「それ、作戦って言いますか? そんなにうまくいきますかね?」

未央「うーん……いや、けっこうイケるかも。さっちーは小さいし、どう見ても強そうには見えないから、たぶん相手の眼鏡も曇ると――」



春菜「眼鏡の話!!」ガラッ

未央「気のせいだよ」ピシャン

幸子「……その」

拓海「資料によると相手は身長165センチ、なかなかデカい。こんだけガタイに差があったら、未央の言う通り油断するだろ」

幸子「アッハイ。……いや、相手そんなに大きいんですか? ボク聞いてないんですけど」

未央「なんで当事者のさっちーが聞かされてないんだろうね?」

幸子「むう……少し不安になってきますね……」

夕美「体格差なんて大した問題じゃないよ」

未央「ゆーみんにとってはそうだろうけどさ……いや、この認識もなんかおかしいな」

夕美「ねえ、幸子ちゃんは、勝ちたい?」

幸子「もちろん、勝ちたいに決まってますよ」

夕美「どうして?」

幸子「それは……テレビに出ればたくさんの人がボクを見てくれますから、強くてカワイイボクを、もっと世の中に広めたいから……」

拓海「そうやってプロデューサーに言いくるめられたんだろうな」

未央「たくみん、ちょっと黙ろうか」

夕美「だったら、きっと勝てるよ。だって、幸子ちゃんはカワイイもの」

未央「謎理論」

拓海「黙るんじゃなかったのかよ」

幸子「フ……フフーン! 当然ですよ! ここで勝利を収めて、ボクのカワイさを世界に知らしめ――」



ヘレン「ヘーイ!!」ガラッ

夕美「ヘーイ」ピシャン



幸子「…………」

夕美「私もできる限り協力するから、いっしょにがんばろうねっ!」

幸子「……………………はいっ!」

――試合当日、本番前



幸子(とうとうこの時が来てしまいましたか)

幸子(だいじょうぶ、この1週間、夕美さん相手にずっと特訓してきたんですから)

幸子(……何回か、死ぬかと思いましたが)

幸子(相手は……さすがに引き締まった体をしていますね)

幸子(たしか身長165センチでしたか。拓海さんが163センチ、それより少し大きい。……だけど)

幸子(なんだか、相手が小さく見える)

幸子(……余計なことを考えてはいけませんね、ボクは作戦通りやるだけです。開幕から速攻、そして――)

~~~~~~



拓海「ひとつコツを教える。声を出せ、できるだけ大きく」

幸子「声を?」

未央「掛け声ってこと? でも実際に声なんか出してたら動き悪くなるんじゃないかな。プロの格闘家で漫画みたいに声出してる人いないでしょ?」

拓海「動きは確かに鈍るだろうな、だけどそれよりも重要なことがある……本番の撮影だと、ヘッドギアはないんだよな?」

夕美「着けないみたいだね。グローブも10オンス、ウチのトレーニングルームのより小さいね」

拓海「ってことは、プロの試合とほとんど変わらない条件なわけだ」

未央「それが?」

拓海「ふつう人間ってな、人間を全力で殴れないもんなんだよ」

未央「そう――かな? そうかも。どうだろう……」

夕美「できないと思うよ。殴られたら痛いって、知ってるからね」

拓海「できるのは、よっぽど頭の悪いヤツか、頭のおかしいヤツだ」

未央「たくみん……その自虐は笑えない」

拓海「ちげーよ。できるようになる方法がある。ひとつは慣れることだな、殴り慣れれば本気で殴れる」

未央「ひどい話だよ」

夕美「でも今から慣れるのは無理だから、声ってことだね」

拓海「そう、大声を出すと、そっちに気を取られてリミッターが外れるんだ。そしたら素人でも全力で――」



美世「リミッター!!」ガラッ

拓海「うるせえ!!!」ピシャン



~~~~~~

幸子(……本当ですかね?)



<ホンバンカイシシマース

<ハーイ

幸子「あ、はーい」



<アカコーナー、ナンタラァーカンタラァー!

<ワーワー、キャーキャー



<アオコーナー、コシミズゥサチィーコー!

<ワーワー、ヒャッハァ!!



幸子(……相手の方に恨みはありませんが)

<カーン!

幸子「行きますよ!! うおおおおお!!!」

――翌日



未央「見事にKO勝ちしたんだって?」

夕美「うん、1ラウンド13秒、早かったね」

拓海「一発目が綺麗にアゴに入ったからな、アレは立てねえな」

未央「おーすごい、特訓の成果だね!」

夕美「幸子ちゃん、泣きそうになりながら倒れた対戦相手にすがりついて『だいじょうぶですか!?』って繰り返してたけどね」

未央「あー……なんか目に浮かぶ」



『ガチャ』

幸子「ふふーん、やはりなにをしてもボクが一番ですね!」

拓海「で、わざわざ相手の精密検査にまで付いていって、異常がないことを確認してきたのがアレだ」

幸子「なんです? ボクの話をしてたんですか?」

夕美「幸子ちゃんはカワイイってね」

未央「うん、さっちーはカワイイ」

幸子「な、なんですか!? ボクがカワイイのは確かですけど……」

『ガチャ』

亜季「おはようございます!」

拓海「おっ、亜季帰ってきてたのか」

亜季「うむ、つい昨夜戻ってきたところです。そして聞きましたぞ幸子! 試合で完全勝利をおさめたそうですな!」

幸子「カワイイボクにとっては当然のことですよ」

亜季「ふむ、しかしプロデューサー殿の話によると、次の相手はムエタイ経験者。今回ほど簡単にはいかないでしょう」

幸子「…………はい?」

亜季「なんでもタイ人のアイドルだそうで。幸子との試合はボクシングルールになりますからキックはありませんが、強敵であることは変わりませんな」

夕美「アイドルってなんだろうね?」

未央「ウチの事務所がそれを言っていいのかどうか」

亜季「次の試合まではまだ期間があります。私も帰ってきたことですし、この際、徹底的に鍛え上げましょう! 幸子、筋トレはいいぞ!!」ガシィ

幸子「え……待って。ちょっと、放してくだ――」

<フギャアアアア!!!



未央「……連れてかれちゃったね」

夕美「でも次の試合って、幸子ちゃんは聞いてないんだよね? 受けるのかな?」

拓海「幸子はなんだかんだでチョロいからな。また適当に言いくるめられてやることになるんじゃねえか?」

未央(……それ、たくみんが言うとブーメランだよなあ、と)

夕美「拓海ちゃんもいつもそんな感じだよね」

未央「言わなかったのに!」

拓海「オウ、夕美……最近幸子の相手ばっかでなまってるんじゃねえか? 久々にアタシが揉んでやろうか?」

夕美「スパーリング? いいよ、相手になるよっ!」



未央「…………ほーんと、仲いいよね」

――廊下



ヘレン「世界レベルのケーキでも食べに行きましょうか、私がおごるわ」

美世「えっ、いいんですか?」

春菜「わあ、ありがとうございます!」



美穂(あっ、珍しい組み合わせ。なにつながりなのかな?)



   ~Fin~

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