市原仁奈「みんなのきもちになれるですよ!」 (118)



※キャラ崩壊

※誤字脱字

※親の顔より見たネタ

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仁奈(みなさん、へいそよりおせわになってるでごぜーます!)

仁奈(市原仁奈でごぜーますよ!)

仁奈(突然でごぜーますけど仁奈、みんなの『きもち』が分かるようになりやがりました!)

仁奈(相手の手をにぎると、その人の考えてることが読めるんだー!)

仁奈(これでキグルミアイドルとしてもっと活躍できるでごぜーますよ!)



堀裕子「聞きましたよ仁奈ちゃん!」にゅっ

仁奈「あ、ユッコおねーさん!」

裕子「他者の『きもち』が読み取れる――それは紛れもない超能力!」

裕子「つまりはサイキックです!」

仁奈「さいきっく!? ユッコおねーさんとおんなじでごぜーますか!」

裕子「恐らくこの前、仁奈ちゃんの前で披露した私のサイキックが共鳴し、あなたの力を呼び起させたのでしょう……!」

裕子「仁奈ちゃん! これはもうサイキック修行しかありません!」

仁奈「しゅぎょー……?」



裕子「そう。鍛錬、修練、トレーニングです!」

裕子「仁奈ちゃん。これからあなたはサイキックトレーニングを積み、その身に覚醒した能力を自分のものとしなければならないのです!」

仁奈「自分の……? 今の仁奈のさいきっくは仁奈のもんじゃねーですか?」

裕子「サイキックイヤーで聞いたところによれば、あなたの能力はまだ目覚めて間もない状態――つまりまだ力が不安定な状態にあります」

裕子「超能力とは文字通り超常の力。とても大きなパワーです」

裕子「それはあらゆる奇跡、神秘をもたらす一方で――使い方を誤れば、大きな災厄と悲劇を引き起こすこともできる諸刃の剣」

仁奈「さ、さいあく……! 悪いことでごぜーますか……!」ガクブル

裕子「大きな力には大きな影響と――なにより責任が伴うもの」

裕子「――仁奈ちゃん。仁奈ちゃんは自分の力でそんな不幸を起こしたいと思いますか?」

裕子「人々に悲しみをもたらすことを良しとしますか……?」

仁奈「そ、そんなのイヤですよ!」

仁奈「仁奈、みんなには笑っていてほしいでごぜーます」





裕子「仁奈ちゃんは優しいですね」

仁奈「ユッコおねーさん……、仁奈は、どうしたらいいですか……?」

仁奈「そんなかなしいこと、おこさねーためには、どうしたら――」

裕子「ご安心ください!」

裕子「そのための堀裕子! そのためのエスパーユッコですよ!」

裕子「私とのサイキックトレーニングで、その力をコントロールできるように練習しましょう!」

裕子「それによって、サイキックの正しい使い方、付き合い方を――」

裕子「そしてなにより、自らがエスパーであるという心構え、責任感を身に着けるのです!」

仁奈「せきにんでごぜーますか! 留美おねーさんとかがよく言ってるでごぜーますね!」

裕子「私は桃華ちゃんから聞きましたね! カッコよく言うとノースリーブオブリージュです!」

仁奈「おおー! なんかパッションぽいでごぜーます! えいごでごぜーますか!?」

裕子「ずばり――フランス語ですっ!」

仁奈「ぼんじょるのー!」キャッキャッ



裕子「さあ仁奈ちゃん! ついてきてください!」

裕子「このエスパーユッコ――いえ、あなたの師匠、マスターユッコが、仁奈ちゃんを立派な美少女サイキックキグルミアイドルへと導いてみせましょう!」

仁奈「頑張るでごぜーます!」


「あら、なんだか楽しそうね?」


裕子「ムムッ!? この声は――」



兵藤レナ「おはよう、二人とも」

仁奈「あ、レナおねーさん!」

裕子「おやレナさん。丁度いい時に来ましたね!」

レナ「んー?」



裕子「仁奈ちゃん! 早速、修行開始です!」

裕子「手始めにレナさんに、サイキックの練習相手になってもらいましょう」

仁奈「レナおねーさんにでごぜーますか?」

裕子「レナさんは生粋のギャンブラー。ポーカーフェイスは朝飯前。心理戦に長け、相手に一切を読み取らせないことにかけてはかなりの実力者です」

裕子「しかし、それも仁奈ちゃんのそのサイキック――相手の『きもち』を読む力の前には形無しでしょう!」

裕子「ここでレナさんの『きもち』を読み取ることができれば、あなたは確実に一歩、エスパーとして成長できます!」

仁奈「な、なるほど! やってみるですよ!」



仁奈「レナおねーさん!」

仁奈「仁奈と手、つないでくだせー!」

仁奈「それで仁奈に、レナおねーさんの『きもち』にならせてくだせー!」

レナ「きもち? えっと、私のキグルミを作るとか?」

裕子「ふっふっふ! 驚くなかれ。今の仁奈ちゃんはエスパー。人の心が読めるんですよ」

レナ「……ふぅん? メンタリズムみたいなものなのかしら……?」

レナ「でもなんだか面白そうね。いいわ、かかってきなさい仁奈ちゃん!」

仁奈「じゃあいくぞー!」ギュッ

仁奈「レナおねーさんのきもちになるですよ!」

仁奈「むむむむ……」



仁奈「むむ……!!」


『――そういえば――最近――あん――ギャン――やってない――』ジジッ

『しばらくご無沙汰――』ジジジッ


裕子「ど、どうですか、仁奈ちゃん……?」

裕子「レナさんから、何が読み取れますか……?」

仁奈「むむむ……! そうでごぜーますね……」



仁奈「レナおねーさんは……、最近……やってない?」

仁奈「ごぶさたなんでごぜーますか?」

レナ「あら、よく分かったわね。そう。最近(ギャンブルを)する機会がなかなかなくって」

裕子「ふふふっ! この程度、まだまだ序の口ですよ!」


『前に旅行先――やったっきり――』


仁奈「前に旅行先でやったっきりでごぜーますか」

レナ「そうなのよ。最近は忙しくなっちゃったしね」

裕子「さすが私の弟子ですね! こうもスラスラと心を読むことができるなんて!」


『やっぱ――本場は――圧巻――』

『楽しかっ――。思いっきりベット――』


仁奈「なるほどー。やっぱほんばの雰囲気はちがうんでごぜーますかー」

仁奈「それで……思いっきり、"ベッド"? したんでごぜーますか?」

レナ「ああ、"ベット"ね。そうそう。あの時はちょっと勝負に出てみたのよね」

レナ「当たればその分稼げるし……。何より勝った時、気持ちいいしね!」

裕子「そうですかそうですか! レナさんはベッドを……」



裕子「うん? ベッドで稼げて……、気持ちいい……?」




『でもあの日――ツイてなか――』

『結構負けちゃっ――』

『でも、そういう危ない日にする――スリルがあって――いい――』


仁奈「でもそん時は、ついてなかったんでごぜーますか」

レナ「あはは……そうなの。もう読みが全部裏目に出てね……」

裕子(つけてなかった!?)

仁奈「でも、そういうあぶねー時にするのも好きなんですね!」

レナ「まあね! スリリングなのって、ゾクゾクしちゃうの♪」

裕子(アブナイ時にするのが好き!?)


『最後――なんとか――勝った――』

『楽しかっ――』

『でも、あの日以来、ツキが来てない――』


仁奈「えへへ! レナおねーさん、楽しかったんでごぜーますね!」

レナ「うん。ギリギリで勝てたしね。やっぱ勝負はああでなくっちゃ」

仁奈「でもあの日から、ツキが来てねー……?」

レナ「そうなのよねぇ……。色々、絞り出し過ぎたのかしら……」

裕子(月が来てない!?)



レナ「――驚いた。すごいわね、仁奈ちゃん」

レナ「正直、半信半疑だったんだけど……。ここまでいろいろ言い当てられちゃうとは思わなかったわ」

仁奈「えへへ! ホントでごぜーますか!」

仁奈「ユッコおねーさん! 仁奈のさいきっくどうだったで――」

裕子「レ、レナさん!」

レナ「うん?」

裕子「病院に行きましょう!!」

レナ「へ?」



レナ「裕子ちゃん、突然どうしたの?」

裕子「突然じゃありませんよ! むしろなんで今まで放っておいたんですか!?」

裕子「早く診てもらわないと!」

レナ「診てもらうって……」

レナ「ま、まあ確かに、ああいうの(ギャンブル)って中毒性があるし、病的に嵌っちゃう人もいるけれど……」

レナ「でも、私はその辺、こう見えても弁えてるし……」

裕子「何言ってるんですか! もうレナさんの身体は、レナさん一人のものじゃないんですよ!」

レナ「え? いや確かに、私に何かあったら事務所とかプロデューサーさんとかにも迷惑がかかるけど……」

レナ「あの、裕子ちゃん? 何か会話がすれ違って――」

裕子「あっ! あれは!」



及川雫「あっ、ユッコちゃんー。おはよ――」

裕子「ししし雫ちゃん! た、大変なんですよ!」

裕子「あ、あのですね! レナさんが――」

雫「えー? そんなに慌ててどうしたんですかー?」

雫「ふむふむ。ふむ――って、ええっ!?」

雫「あの、ユッコちゃん……それってやっぱり、デキちゃって……」

裕子「こういう時、どうしたらいいか、雫ちゃんなら分かりませんか!?」

雫「そ、そう言われてもー……。牛さんのことならある程度、分かりますけど……。人間さんは――」



裕子「そこをなんとか! 今日は清良さんもいませんし、頼りにできるのは雫ちゃんだけなんです!」

裕子「何か、牛さんの知識でもいいので、役に立つ情報はありませんか?」

雫「う、牛さんで、ですか……。妊娠について、牛さんだったらあれとかこれとか……」ウーン

裕子「何か、診察とか検査とか!」

雫「診察……検査……」ウーン

雫「あっ……」ティン

雫「直腸検査……!」

裕子「よく分かりませんが多分それです!」



雫「そ、そうですね……! よーし……!」

レナ「あのー、裕子ちゃん。だからね、私が言ったのは――」

雫「レナさん! だ、大丈夫ですよー!」

レナ「雫ちゃん?」

雫「わ、私、こういうことは初めてですけど……、でも、一番不安なのはレナさんですよね……」

雫「どぉーんと、私に任せてくださいー!」ガシッ

レナ「し、雫ちゃん、あの……」ズルズル


シズクチャン、マッテ! チカラツヨイワネ!?

モォー! モォー!



裕子「ふぅ……」

仁奈「あの……、ユッコおねーさん?」

仁奈「レナおねーさんはどうしたんで――」

裕子「仁奈ちゃん、よくやりましたね」ポン

仁奈「へ?」

裕子「仁奈ちゃんは今、そのサイキックで、一人の人間と一つの命を救う手助けをしたんです」

裕子「これはやろうと思っても、そう簡単にできることじゃありません」

裕子「誇りに思っていいですよ!」

仁奈「ほ、ホントでごぜーますか!」 

仁奈「よく分かんねーけど……、でも仁奈、いいことをしたんでごぜーますね!」

裕子「当たり前じゃないですか! あなたは今、確実に正義のサイキッカーとして一歩踏み出しましたよ!」

仁奈「うおー! やったー!」




裕子「さあ、この調子でどんどんサイキックぢからを高めていきましょう!」

仁奈「やるぞー!」


西川保奈美「あ、裕子ちゃんと仁奈ちゃん。おはよう」


仁奈「あっ、保奈美おねーさん! おはようごぜーます!」

裕子「おはようございます保奈美さん」

裕子「では、早速あなたもサイキックトレーニングの相手になってもらいましょう!」

保奈美「サイキック……トレーニング……?」



仁奈「今の仁奈はさいきっかーなんでごぜーます!」

仁奈「保奈美おねーさんのきもちも、言い当てられるですよ!」

保奈美「ええと、それって心が読めるってこと……?」

保奈美「す、すごいのね仁奈ちゃん。そんなことできるんだ」

仁奈「だから保奈美おねーさん! 仁奈のさいきっくしゅぎょーに付き合ってほしーでごぜーますよ!」

保奈美「うん、難しいことじゃないなら大丈夫よ。丁度、私もレッスンが終わってのんびりしてたとこだから」

仁奈「ありがてーです!」

仁奈「じゃあ、保奈美おねーさん! 仁奈の手、にぎってくだせー!」

保奈美「こう? ふふ。仁奈ちゃんの手、ちっちゃくて可愛いわね」ギュッ

仁奈「むむむむ……」

仁奈「保奈美おねーさんのきもちになるですよ……」



仁奈「むむむ……」


『――今日は――帰ったら――』ジッ

『そうだ。学校の制服のクリーニング――取りに――』ジジジッ


裕子「どうですか仁奈ちゃん。保奈美さんの『きもち』は読み取れましたか?」

仁奈「うーんと……」

仁奈「保奈美おねーさんの……学校の制服が……くりーにんぐ……?」

保奈美「えっ? あ、うん。そうよ。今日このあと取りに行こうと思ってたんだけど……」

保奈美「本当に当てられちゃうのね……! そんなこと仁奈ちゃんに話してないもの」

裕子「だから言ったじゃないですか。仁奈ちゃんは今や立派なエスパーなんですよ」

仁奈「えへへ。保奈美おねーさんの『きもち』になれば、ちょちょいのちょいでごぜーます」

裕子「うんうん。仁奈ちゃん、順調にサイキック道を歩んでいますね」

裕子(ん……? でも制服……?)



裕子(おかしいですね)

裕子(いえ、保奈美さん自身も肯定していますし、仁奈ちゃんの読み取った内容は本当なのでしょうけれど……)

裕子(なぜ――)

保奈美「ふふ、すごいすごい」ナデナデ

仁奈「えっへんでごぜーます!」キャッキャ


裕子(なぜ、"立派"に"成人"した"大人"であるはずの保奈美さんが学校の制服を……?)



裕子(お子さんのものとか? 確かメアリーちゃんくらいの年齢だって聞いたような……)

裕子(いや、それは単にその二人が親子に見えるって話でしたっけ? さすがに子持ちでアイドルとか聞いたことないですし……)

裕子「コスプレ用とか……?」ブツブツ

仁奈「仁奈のさいきっく、もっともっと見てくだせー!」

仁奈「むむむむーん……」


『そうい――今度の学校――唱コンクール――』

『大変――だ――』

『リーダー――ご指名され――ちゃんとやらなきゃ――』


仁奈「保奈美おねーさん、がっこーでごしめーされたんでごぜーますか」

保奈美「ああ、あの(合唱コンクール)のことね」

保奈美「うん、そうなの。アイドルやってるからって期待されちゃってるみたいで」

裕子「学校の制服……ご指名……?」



『――先生も――いい声が出てる――褒め――』

『嬉しいけど――恥ずかし――』


仁奈「でもせんせーにもいい声が出るって褒められてるでごぜーます!」

保奈美「そうね。やっぱり歌にはそれなりに自信があったし、そこは素直に嬉しかったわ」

裕子「学校の制服で、ご指名で……、いい声が出る……?」

保奈美「でも……お仕事の時とは違ってどうも気恥ずかしくって」

裕子「クリーニングが必要な学校の制服……アイドルだからとご指名……」

裕子「いい声が出る……」

裕子「そして――恥ずかしい……」

裕子「それって……」



裕子「ほ、保奈美さん!」

保奈美「うん? 裕子ちゃん、どうした――」

裕子「お、お金ですか!?」

保奈美「え……?」



裕子「なんで……なんで……!」

裕子「そりゃ、個人個人に事情はあるでしょうけれど……」

裕子「なんで相談してくれなかったんですか!」

裕子「わ、私たち事務所の仲間じゃないですか!」

裕子「そんなところで働く前に、まずは一言でも……」

保奈美「えっ、えっ、あの……?」

保奈美「うん、裕子ちゃんの言葉は嬉しいけど――」

保奈美「でも個人的なことだし、特に相談するほどのことじゃないと思って……」

保奈美「それとも、もしかして裕子ちゃんも見に来たいの?」

裕子「みみみ見になんて!!///」ボンッ

裕子「そ、そういう経験はあの、その……!///」ワタワタ

裕子「ひ、人様がしているのなんて……! そんな趣味はないですよっ///」

保奈美「う、うん? そう?」



裕子「確かに保奈美さんくらいの年齢になれば、問題はないのかもしれないですけど……」

保奈美「年齢……?」

保奈美「そうね。大体の高校生は経験するんじゃないかしら」

裕子「高校生!? こ、高校生もいるんですか!?」

保奈美「いるもなにも、みんな高校生だけど……」

裕子「!?!?!?」



裕子「だったらなおさら駄目なとこじゃないですか!」

裕子「ご両親からもらった大事な身体をそんなっ!」

裕子「親御さんも悲しみますよ!」

保奈美「えっ、そ、そうかしら……?」

保奈美「むしろそういう(学校)行事はしっかり出ろって、私は言われてるけれど」

裕子「!?」

裕子「そ、そんな……」



裕子「で、でもあの……!」

裕子「ほ、ほら! そんな不特定多数を相手にして、病気とかになったらどうするんですか!」

保奈美「病気……?」

保奈美(そういえば、クラスでも最近風邪が流行ってたわね)

保奈美(そっか。裕子ちゃん、合唱に向けての体調を心配してくれているんだ)

保奈美「ありがとう裕子ちゃん」

保奈美「でも大丈夫よ。その辺は普段から気を使っているから」

保奈美「特に喉は大切にしてるわ。私にとっては相棒みたいなものだしね」

裕子「の、喉まで使うんですか!?///」アワワ

仁奈「いっぱいほめられて、保奈美おねーさんはすげーなー」

保奈美「先生にも『飲み込みがいい』って言ってもらったのよ」ナデナデ

裕子「や、やっぱり、飲み込むんですか///」カァアア



裕子「そうだプロデューサー!」

裕子「プロデューサーはなんて言ってるんですか!?」

保奈美「プロデューサーさん?」

保奈美「確か――『今しかできない経験だから、精いっぱいやってこい』って……」

裕子「ぷ、プロデューサーがそんなことを!?」ガーン

保奈美「ふふっ。見に行きたいっていうのは、さすがに恥ずかしくて断ったけれどね」

裕子「ぷ、プロデューサーも所詮は男でしたか……」



保奈美「あの、裕子ちゃん……?」

保奈美「なんだかさっきから、どうも話がすれ違ってないかしら?」

保奈美「あのね。私が言っているのは学校の――」

裕子「あっ、あれは!!」



片桐早苗「あら、ユッコちゃんじゃない」

裕子「さ、早苗さん! いいとこに来てくれました!」

早苗「なぁに? もしかしてまた、さいきっく~とか言ってお間抜けなコトしてるんじゃ――」

裕子「それどころじゃないんですよ! あの、保奈美さんが、あの――!!」

早苗「保奈美ちゃんが? ……ええ。――ええっ!?」

早苗「………………」

早苗「……ユッコちゃん。それ、確かな情報なの?」

裕子「それはもう! 保証しますよ!」

早苗「…………そう」



保奈美「あ、早苗さん。おはようご――」

早苗「保奈美ちゃん」ポン

早苗「辛かったわね」

保奈美「へ?」

早苗「分かってるわ。いくら言葉を重ねても、あなたが経験してきたことを本当に理解してあげることはできないのかもしれない」

早苗「でも、だからこそ!」

早苗「だからこそ――あたしにできることはなんでも、全力で力になるから!」

保奈美「は、はい? あ、ありがとうございます……?」

早苗「確かに保奈美ちゃん、年齢の割に大人っぽいけど……でもそれをいいことに未成年にそんなことさせるなんて……」ゴゴゴゴ

早苗「しかも他の子も高校生だなんて……完ッ全にクロね……! 許せないっ!」ゴゴゴゴゴゴゴゴ

保奈美「あの、早苗さん……?」



早苗「保奈美ちゃん」

早苗「大丈夫よ。あなたはもう何も心配しなくていいから」

早苗「だから、その店の場所だけ、どこか教えてくれる?」

保奈美「み、店……? えっと学校なら――」

早苗「っと、ここじゃ話し辛い内容もあるわよね。あっちで聞かせてもらうわ」ガシッ

保奈美「へ? えっ? あの――」ズルズル


アノッ! サナエサーン!?

モシモシ、タクミチャン? チョットヒサシブリニアバレタクナイカシラ? エエ、マナミチャンアタリモヨボウトオモッテ



仁奈「えっと……」

仁奈「保奈美おねーさんは、どうしたんで――」

裕子「仁奈ちゃん」

裕子「私はさっき言いましたね」

裕子「私たちのサイキック――超能力とは超常の力であると」

仁奈「おっきなパワーなんですよね?」

裕子「その通りです」



裕子「しかしながら、いくらサイキックが強力でも――それを持つのが個人である以上、人間が一人でできることには限界があるのです」

仁奈「たしかに……仁奈も一人だとさびしいです……」

裕子「だからこそ私たちは誰かと手を取り合う」

裕子「手を繋いだ誰かが――また他の誰かへ手を差し伸べられるように……」

裕子「それが重要であり――それこそが尊いことなんです」

裕子「仁奈ちゃんは今、仁奈ちゃんができるだけのことをやりました」

裕子「それは早苗さんたちが引き継ぎ――必ずや保奈美さんを救ってくれるはずです」

裕子「よく、頑張りましたね」ナデナデ

仁奈「よ、よく分かんねーけど……えへへ……きもちーです♪」



裕子「さて。では私たちは私たちのできること――つまりサイキック修行を続けていきましょう」

仁奈「あっ、あそこにいるのは――」


日野茜「…………」トボトボ


仁奈「茜おねーさんでごぜーます!」

裕子「おや、ナイスチョイスですね。茜ちゃんなら色々と分かりやすそうですし」

裕子「――保奈美さんの時のような教育上よろしくないこともありませんでしょうし……」ゴニョゴニョ

裕子「とにかく練習相手にはもってこいです」

裕子「おーい! 茜ちゃーん!」



裕子「茜ちゃーん!」

茜「……な、なんだったんでしょう……あれは……」ブツブツ

裕子「茜ちゃん?」

茜「あっ、あんな……あんなことが……本当に……」ブツブツ

裕子「茜ちゃん!」ポンッ

茜「ファッ!?」

茜「――って、あっ……」

茜「ゆ、ユッコちゃん……! い、いつの間に……」

裕子「やだなー、さっきからずっと声をかけていたんですよ?」

仁奈「仁奈もいるですよー!」



茜「そ、それはすみませんでした……! ちょっと考え事をしてまして……」

裕子「考え事? 珍しいですね?」

裕子「それになんだか顔が赤いですし……、汗もすごいですよ?」

茜「あっ、あははー……! し、心配ご無用です! なんでもないですから……!」

裕子「ふぅむ……」



裕子(仁奈ちゃん仁奈ちゃん。ちょっといいですか)コショコショ

仁奈(ユッコおねーさんユッコおねーさん。なんでごぜーましょう)コショコショ

裕子(ちょっと仁奈ちゃんのサイキックで、茜ちゃんの『きもち』を読み取ってみてくれませんか?)

仁奈(茜おねーさんにもしゅぎょーに付き合ってもらうでごぜーますか)

裕子(それもありますが――)

裕子(どうも見た感じ、茜ちゃんの様子が変ですからね)

仁奈(茜おねーさん、もしかしてびょーきですかっ!?)



裕子(確かに茜ちゃんはいつも健康体で元気ハツラツ。病気とは縁遠いですが……)

裕子(しかしそれは言い換えれば、病気になった経験が少ない――病気の時における自分のコンディションを、しっかり把握できていないということでもあります)

裕子(もしかしたら身体の不調に、茜ちゃん自身が気づいていない可能性もありますから)

裕子(病気の治療に大切なのは早期発見!)

裕子(仁奈ちゃんのその力で茜ちゃんの健康診断をしてみてください!)

仁奈(分かったですよ! 任せやがってくだせー!)



仁奈「茜おねーさん!」

仁奈「ちっと、お手をはいしゃくするでごぜーます!」ニギッ

茜「へっ? あっはい。どうぞ」

仁奈「茜おねーさんのきもちになるですよ!」

仁奈「ムムムムーン!!」



仁奈「ムムム……!」


『――なっ、なんだったんでしょう……あのビデオは……』ジジッ

『あ、あんなもの……生まれて初めて見ました……』ジジジッ

『本当に見てよかったのかなぁ……』

『あっ、あんな……』

『男性同士が裸で……』


仁奈「だんせー同士が裸で……?」

裕子「へ?」

茜「!?」



茜「えっ!? あれっ!? 仁奈ちゃん!?」

茜「ああああの! こっ、これは……!?///」ワタワタ


『は、裸で……あ、あんな……///』

『口に……』

『胸に……//////』

『あ、穴に……/////////』


仁奈「くち……? むね……?」

仁奈「あな……?」

茜「ににに仁奈ちゃん!?」

茜「だっ、だめです! だめですよぉー!!///」


『激しく組み合ったりもしてましたし……///』

『あっ、あんなに引っ張って……食い込んで……//////』


仁奈「組み合って……引っ張って……?」

茜「や、やめてください! やめてぇぇえ!!///」ブンブン



『三人同時とか……』

『ベッドの上でとか……』


仁奈「三人同時……ベッドの上で……?」

茜「ひゃっ、ひゃああああ///」

仁奈「アイスティー……しんにっぽり……だぶるゆきぽ……」

茜「あああっ! いけませんいけませんっ!!///」ブンブン


『ああ! 顔と顔が近付いて……』


仁奈「二人は幸せな――」

茜「になちゃぁああああああん!!!///」ボンッ



裕子「あのー、茜ちゃん……」

裕子「もしかしてそれって……」

茜「ユッコちゃん違うんです! あの、これは出来心で――」


裕子「格闘技観戦でもしてたんですか?」


茜「へ……?」



裕子「男の人同士が裸で、取っ組み合ってたんですよね?」

裕子「お相撲とか? あとはプロレスとかボクシングとか……」

裕子「アイスティーとかはよく分かりませんが……。でもプロレスなんか、最近はエンタメ方面に寄ってるって聞きますしね」

茜「え、えんため……」



裕子「いやー、運動が好きなのは知ってましたけど、スポーツ観戦でもそこまでエキサイトできちゃうなんて」

裕子「でも、別に恥ずかしがらなくてもいいじゃないですか」

裕子「茜ちゃんらしくていいと思いますよ!」

茜「か、かくとうぎ……スポーツ……」

裕子「あれ、違いました?」

茜「あっ、な、なっ――」



茜「なるほどー!!」




茜「なるほど! あれはスポーツだったんですね!」

茜「なるほどなるほど! スポーツなら何もおかしくないですもんね!」

茜「いやぁー、お二人ともありがとうございます! おかげでスッッッッキリしましたー!!」

茜「ふう! スッキリしたら、身体を動かしたくなってきましたね!」

茜「ちょっと走ってきます!」

茜「ボンバーー!!!」ダッ



仁奈「茜おねーさん、元気になったですよ!」

裕子「うんうん。大変な病気とかじゃなくて良かったですね!」


――――――
――




仁奈「そういえばユッコおねーさん」

裕子「どうしましたか、仁奈ちゃん」

仁奈「仁奈、ユッコおねーさんのサイキック見てみてーですよ!」

裕子「……へ?」



仁奈「ユッコおねーさんのすげーさいきっくを見て、もっとさいきっかーの気持ちになれれば、仁奈ももっとじょーずにできるはずです!」

裕子「た、確かに一理ありますね……」

仁奈「見せてくだせー! おねげーです!」

裕子「し、しかし生憎、持ち合わせのスプーンはみんな曲げてしまっていて……」

裕子「それに今日は星の巡りが悪いのか、サイキックにはイマイチなカンジでして……」

仁奈「だめでごぜーますか……?」シュン

裕子「うっ……」



裕子「わ、分かりました!」

裕子「仁奈ちゃん、サイキック対決しましょう!」

仁奈「たいけつ?」

裕子「仁奈ちゃんは私の『きもち』をサイキックで読み取ってください」

裕子「私はそれを自慢のサイキックバリアーで防いでみせましょう!」

仁奈「わぁーおもしろそうだー!」キャッキャッ



仁奈「じゃあいくですよー!」ガシッ

裕子「あ、ちょっ、心の準備が――」

仁奈「ユッコおねーさんの『きもち』になるですよ!」

仁奈「ムムムムーン!」



仁奈「むむむー……」


『――ああ、流れで言っちゃったけどどうしよう!』ジジジッ

『こ、心を読まれるのってなんだかすごく恥ずかしい……』ジジッ


仁奈「むむ……」


『でも仁奈ちゃんのあんな顔、見せられちゃったら、こう言うしかないし……』

『ど、どのくらいまで読まれちゃうのかな……』

『ムムー! サイキック! サイキックバリアー!』

『おねがいー! 発動してー!!』


仁奈「………………」



裕子「どっ、どうでしたか仁奈ちゃん……!?」

裕子「わ、私の『きもち』は、読み取れましたか……?」ドキドキ

仁奈「えーと……」



仁奈「ユッコおねーさんはかわいいですね」

裕子「へ……?」

仁奈「すっげーかわいいですよ!」

裕子「あっ、そっ、そうですか!」ホッ

裕子「まあ、私が美少女サイキッカーだというのはもはや周知の事実ですからね」

裕子「どうやらさすがの仁奈ちゃんでも、私の心の深淵へ至ることはできなかったみたいですね!」アセアセ

仁奈「えへへ……」



裕子「さて。今日はもう一回くらいトレーニングしておきたいところですが……」

仁奈「じゃあ、こっち行ってみるですよ」

ガチャ

仁奈「たのもー!」



モバP「」チーン



仁奈・裕子「「!?」」



裕子「ぷっ、プロデューサー!?」

仁奈「プロデューサー! ぶっ倒れちまってどうしたー!」

P「」ブクブク

仁奈「プロデューサー! プロデューサー!」ユサユサ


「――落ち着いて」



渋谷凛「プロデューサーなら大丈夫だよ」

佐久間まゆ「気を失っているだけです。命に別状はないですよ」

裕子「あのでも、そこの床に血痕が……」

北条加蓮「それ、鼻血だよ。プロデューサーの」

五十嵐響子「確かに私も最初はびっくりしちゃいましたけどね」



裕子「な、なるほど。大事ではないようですね」

裕子「しかし一体、プロデューサーに何が……」

加蓮「何って、見たままだよ」

響子「見たままのことしか私たちにも分からないんです。部屋に入った時には、もうこの状態で」

裕子「は、はぁ……?」



まゆ「――それで、誰なんですか」

裕子「まゆちゃん?」

まゆ「まゆのプロデューサーさんにこんなこと……。誰がやったんだとしても許されることじゃないですよ」

まゆ「そこに転がっている紙コップ――大方、その中身に何か混ぜてあったんじゃないかしら」

まゆ「誰かが、何かを――混ぜておいたんじゃないかしら」

まゆ「そうやって昏倒したPさんに――何をする気だったんでしょうねぇ……」

まゆ「ねぇ、どう思います?」

まゆ「さっきコーヒーの差し入れなんて珍しいことをしていた――加蓮ちゃん?」

加蓮「んー? なになに? それってつまりアタシを疑ってるの?」

加蓮「まあそうだねー。もしアタシにそういうノウハウがあったら、やってみたいとは思うかなー」

加蓮「そんな知識が一介の女子高生に、もし、仮に、例えば、あったら――ね?」



まゆ「でも加蓮ちゃん、昔は病院通いが多かったんですよねぇ?」

まゆ「じゃあ――そういうお薬の知識とかも多いんじゃないかしら」

加蓮「あっはは! もーなにそれー! マンガの読み過ぎだって」

加蓮「そもそも、アタシがプロデューサーを昏倒させてなんか利点があるの?」

まゆ「それは――」

加蓮「言っとくけどアタシ、プロデューサーをお世話する甲斐性とか全然ないから」

加蓮「ホント、こんなの意味ないじゃん」

加蓮「だってアタシは、プロデューサーを世話するんじゃなくて――プロデューサーに世話してもらう側なんだから」

まゆ「――ッ!」ギリ



加蓮「だからそういうのだったら、もっと他に候補がいるんじゃない?」

加蓮「ねー、響子ちゃん? さっきも手作りの料理、タッパーで渡してたよね」

加蓮「ここんところ毎日やってるけど。そんな響子ちゃんだったらこういう時、プロデューサーのお世話をしたいって思うんじゃない?」

加蓮「――させるべきかは別として、さ」

響子「それはそうだよー!」

響子「私、普段からプロデューサーさんには、お嫁さんとしてプロデュースしてもらっているんだし」

響子「そうじゃなくても、プロデューサーさん、普段から自分のことは疎かになりがちですから」

響子「ちゃんと彼のことが分かってる人がご奉仕してあげないと♪」



加蓮「へぇ……そうなんだー」

加蓮「ところでアタシもよくプロデューサーから心配されるんだけど。何か響子ちゃん的なアドバイスはいただけるのかな」

響子「加蓮ちゃんはやっぱり食生活を見直すべきですね」

響子「ジャンクフードは手軽だけど、栄養が偏るから」

響子「ぶぶ漬けとか食べればいいんじゃないかな」

加蓮「……どうも」



響子「――ああそうだ。凛ちゃん」

響子「さっきプロデューサーさんと話したけどね――」

響子「凛ちゃんからの手作りのお菓子、喜んでたよ」

響子「美味しかったって。よかったね」

響子「何か――隠し味とか、入れたりしたのかな……?」

凛「…………響子、先に謝っておくね」

凛「ごめんね。誕生日の日、一日中プロデューサーを独占しちゃって」

響子「…………」ピクッ



響子「そ、それはしょうがないよー!」

響子「お仕事だったんだし――それにプロデューサーさんからは、ちゃんと夜に電話でおめでとうって言ってもらったし」

凛「ふーん、そっか」

凛「夜中に電話するのは悪いとか言ってたけど、ちゃんと私の言った通りにしたんだね」

凛「よかった」

響子「…………」ピクピク



凛「っていうかさ」

凛「そもそも、なんで誰かがプロデューサーに薬を盛ったみたいな話になってるの?」

凛「プロデューサーが倒れていたとしても、普通そんなこと考えないよね」

凛「少なくとも真っ先には思い至らないよ」

凛「……まあ、普段からそういうこと、当たり前に考えてる人とかなら別だけど」

凛「ねえ、なんでそんな考えに至ったのかな――まゆ」

まゆ「……うふふ」



裕子「あわわ……」

裕子(な、なんでしょうこの空間……! いるだけで胃が痛い……!)

裕子「に、仁奈ちゃん。ここは子供には――というか、まともな人間がいるには危険です」

裕子「トレーニングならどこか他の――」



仁奈「まってくだせー!」




仁奈「みんな、まってくだせー!」

凛「仁奈……?」

仁奈「聞いてくだせー」

仁奈「今の仁奈は人の『きもち』が読めるんでごぜーます」

仁奈「思ってること、考えてることが分かるですよ!」

まゆ「仁奈ちゃんが?」



仁奈「だから仁奈が……」

仁奈「仁奈が、みんなの『きもち』になるでごぜーます!」

仁奈「それでこの中に、プロデューサーをこんなにした人なんていねーって、しょうめーするですよ!」

仁奈「だからケンカしねーでくだせー!」

裕子「に、仁奈ちゃん……」

仁奈「見ててくだせー、ユッコおねーさん! 仁奈のしゅぎょーのせいかを!」

仁奈(今の仁奈なら、もう手をにぎらなくても相手の『きもち』が読めるですよ!)

仁奈「ムムムムーン!!」

仁奈「みんなのきもちになるですよ!!」ピカァアアアア



『――。――――――』ジジッ

仁奈「ムム……」

『――――う。――! そ―――――』ジジジッ

仁奈「ムムムッ!!」

『――――だよ。なんとか――――』ジジジジジッ

仁奈「ムムムムーン!!!」



『――あーあ。せっかく上手くプロデューサーにコーヒー飲ませられたのになぁ』

『あとは気分が昂ってきた頃を見計らって、いつもみたいに調子の悪いふりして仮眠室に連れ込もうと思ってたのに……』


『――うぅ、やっぱりあんなお薬を入れるなんて、悪いことはできないってことなのかな……』

『で、でもあんなにいつも料理美味しいとか、お嫁さんにぴったりだとか言われたら期待しちゃうもん……』


『――さすがに一筋縄じゃいかないね。まあこっちの手札は媚薬だけじゃないけど……』

『ああっ! あんなにプロデューサーが無防備なのに! 見てるだけなんて生殺しもいいところだよっ!』


『――うふふ。落ち着きましょう。あんな薬一滴でPさんが手に入るなんて思っていないでしょう』

『こんなのは彼との将来――その前のささやかな障害。この程度で私とPさんとの運命は引き裂けないのだから』


『でも不思議ですね。どうしてPさん、倒れているのかしら……』

『確かにあの薬、過剰摂取は厳禁って書いてあったけど……』

『おかしいなぁ』

『なんでだろ……』


『『『『分量はきっちり守ったはずなのに……』』』』



仁奈「………………」



裕子「に、仁奈ちゃん……!」

裕子「それで、どうですか……?」

仁奈「へっ……?」

まゆ「Pさんをこんなにした犯人は、どの人だったのかしら?」

仁奈「ど、どの人……?」

仁奈「わっ……」

仁奈「わかんねーですよ……」

裕子「そんなっ!?」



仁奈「ま、まってくだせー!」

仁奈「もう一回! もっかいやらせてくだせー!」

仁奈「次はちゃんと――」

凛「――いや、もう十分だよ」

仁奈「えっ……」

凛「ごめんね。別に仁奈の力のこととか、言ってることを疑ってるわけじゃないんだ」

まゆ「でも――たとえその力で犯人を突き止めたとしても、証拠となるのは仁奈ちゃんの証言だけになってしまいますから」

凛「犯人に『そんなのデタラメだ』って言われちゃえば、私たちはどうすることもできないからね」

仁奈「あっ……でも……」



加蓮「まあ仁奈ちゃんの言う通りではあるよね。こんなことで言い争っても仕方ないし」

響子「そうだね。どうしてこうなったかより――これからどうするかを考えなくちゃ」

凛「どうするかなんて、愚問だと思うけど。だから問題は――」

まゆ「誰がするか、ですか?」
 
まゆ「それこそ愚問ですねぇ。そんなの――」


凛「私に決まってるよね」

響子「私しかいませんね」

加蓮「アタシの役目だね」

まゆ「まゆですよぉ」


裕子「つ、つまり……?」



「「「「最後まで立ってた奴!!!」」」」



裕子「あわわ……!」




凛「言っておくけど――お空での仕事を見たくらいで、蒼の真髄を分かった気にはならないほうがいいよ」シャキン

響子「私、得意なんです♪ お料理もお掃除も――お片付けも、後始末も……」ジャラ

加蓮「アタシはこういうのあんまりなぁ……。だってみんな、ぶっ倒れたり、血を吐いたりした経験なんてないでしょ?」ガシャン

まゆ「あなたたちのこと、邪魔だなんてもう言いませんよ――邪魔にさえならないのだから」シュルシュル


裕子「あわわわ……」



裕子「に、仁奈ちゃん!」

裕子「逃げましょう! 避難しましょう! ここはこれから地獄になります!」

仁奈「じごく……?」

裕子「ええ。刈り尽くす嵐のような、呑み尽くす大波のような――ここは災禍の渦中になります」

裕子「よくて全壊……。最悪、この辺一帯消えてなくなりますから……!」

仁奈「さいあく……」

裕子「さあ、はやくこちらに――」

仁奈「それって……」


仁奈(仁奈のせいで……?)


裕子「仁奈ちゃん……?」



仁奈(仁奈がちゃんとできてれば……こんなことにはならなかった……?)

『――使い方を誤れば、大きな災厄と悲劇を引き起こすこともできる諸刃の剣』

仁奈(仁奈がまちがえたせいで……みんなケンカしちまう……)

『大きな力には大きな影響と――なにより責任が伴うもの』

仁奈(仁奈の責任……仁奈が悪いんだ……)

仁奈(……ごめんなさい)



仁奈(ごめんなさいごめんなさい)ポタ

仁奈(ごめんなさいごめんなさいごめんなさい……!)ポタポタ

仁奈(やめてくだせー……)

仁奈(ケンカはするのも見るのも嫌でごぜーます)

仁奈「みんなには仲良くしていてほしーですよ……」

仁奈(仁奈がいけねーから……仁奈が悪いから……)

仁奈(仁奈があやまるから……)

仁奈(だから――)



 仁奈ちゃん

 そこで仁奈ちゃんが謝るのは――誤りですよ

 ふふっ……


裕子「……仁奈ちゃん」ポン

仁奈「えっ?」

仁奈「ユッコおねーさん……?」

裕子「仁奈ちゃんはさっき言いましたね」

裕子「私――エスパーユッコのサイキックが見てみたいと」

仁奈「う、うん……」

裕子「ならばその願い――叶えましょう!」スタスタ



凛「……あれ、裕子まだいたんだ」

まゆ「早く仁奈ちゃんを連れて逃げてください。巻き込むつもりはないですけど――巻き込まない自信もないので」

裕子「あっはっは!」

裕子「みなさんまったく、何を物騒なことを言っているんですか」

裕子「物々しいにもほどがありますねー!」

加蓮「……こんな状況でもそんなこと言っていられるなんて。相変わらずお気楽だね」

響子「でも――私たちの得物を見てまでそう言っているんだったら――いささか能天気が過ぎるよ?」



裕子「いいじゃないですか能天気」

裕子「平和な証拠ですよ」

裕子「皆さんだってそうでしょう?」

裕子「大仰なこと仰ってますが――」

裕子「手にしているのが"そんなもの"なんですから」

裕子「とってもコメディです!」

加蓮「そんなもの……?」

響子「って……!!」



凛「私の蒼の剣が……青いサイリウムに!?」

まゆ「まゆの曲絃糸が……これ、タコ糸!?」

響子「私の単分子振動包丁が……おままごとセットになっちゃった!? 高かったのにっ!」

加蓮「アタシのファンネルビット……チョココロネだこれ!?」

凛「……これは一体!?」

裕子「いえいえ。皆さんがおもしろ手品合戦を始めようとしてたので、不肖、私も混ぜてもらおうと思って……」

裕子「私のサイキックを披露させてもらいました」

まゆ「さ、サイキック!? 裕子ちゃんが!?」



裕子「そう」

裕子「――現実《すべて》を茶番《なかったこと》にするサイキック」


裕子「『大博打撃ち《オールパッション》』」

裕子「――皆さんのシリアスをなかったことにした!」


響子「シリアスを……」

加蓮「なかったことに……!?」



裕子「――まあでも、なかったことにするまでもないですね」

裕子「アイドルである皆さんが、あんなものを手にしている時点でよっぽど茶番劇の三文芝居です」

裕子「皆さんのその手は――そんな下らないものを持つためにあるんですか?」

凛「裕子……」



裕子「違うでしょう」

裕子「その手は歌を届けるマイクを握るために」

裕子「ファンからの声援を受け止め、返そうと大きく振るために」

裕子「感謝を伝え、元気を与えようと握手をするために」

裕子「絶対トップで輝くと――夢へと伸ばし、掴むために」

裕子「――そして苦楽を共にし、お互い高め合える仲間と繋ぐために」

裕子「絆を紡ぐために」

裕子「そのためにあるはずです」



加蓮「……あーあ。これは堪えるなぁ……」

まゆ「そうですねぇ。さすがに裕子ちゃんにお説教されちゃうと、立つ瀬がないです」

凛「確かにね。ホント、なんであんなことで争ってたんだろ……」

響子「さっきまでの気持ちが嘘みたいです。もしかしたら――さっきまで渦巻いていた感情も、なかったことにされちゃったのかもしれませんね」

凛「……まゆ、加蓮、響子」スッ

まゆ「どうしました? 凛ちゃん」

凛「言わせないでよ、恥ずかしい」

凛「――仲直りの握手」



加蓮「ふふっ。握手って、凛一人じゃ、三人と握手できないでしょ」

響子「そうだね。でも――」ギュッ

まゆ「ひとりがひとりと繋がって――」ギュッ

響子「ひとりひとりが繋げていけば――」ギュッ

加蓮「全員が繋がれる、か」ギュッ

凛「全員に伝えられる」

凛「みんな、聞いて」



凛「私、いい場所知ってるんだ」

まゆ「人払いなら任せてください」

響子「道具なら色々と用意してあります!」

加蓮「親御さんや寮への連絡はやっとくよ」

P「」


We're the friends!~♪

ハートの温度 スゴくアツい~♪

おそろいのこの想い!!



ワ、ワタシ、フクスウニンッテチョットキョウミガアッタンデス

アタシハタイリョクナイカラ、ローテーションッテツゴウイイカナ

タシカニ。Pサンヒトリダトサイテイサンカイハハゲンデイマスカラ

フフ、ナガイヨルニナリソウダネ

ズルズルズル……



裕子「――ふう!」

裕子「やれやれまったく。ホント皆さん手がかかるんですから」

仁奈「ユッコおねーさんすげーですよ!」

仁奈「さすがでごぜーます!!」

裕子「ふふっ! まあ正義の美少女サイキッカーにかかれば暴徒鎮圧くらい、赤子のスプーンをひねるより容易いですよ」

仁奈「それもすげーですけど、それだけじゃなくて――」

裕子「ん?」



仁奈「ユッコおねーさん、仁奈のお願い、かなえてくれたですよ」

仁奈「仁奈のきもち――分かってくれたです」

仁奈「仁奈……ケンカみたくねーって思ってて……」

仁奈「仲良くしてほしーって思ってたですけど……」

仁奈「ユッコおねーさんは仁奈がなんにも言わなくても、仁奈のそのお願い、かなえてくれたですよ!」

仁奈「すげーです! やっぱさいきっくで仁奈のきもちになったですか?」

裕子「ああ、それですか」

裕子「――いえ。それにはサイキックは使ってません」

仁奈「そーなんですか?」



裕子「サイキックを使わなくても分かりますよ」

裕子「仁奈ちゃんが悲しい気持ちだと――それを見ているこっちまで悲しくなりますから」

裕子「だからなんとかしたいって――なんとかして、またあなたに笑ってほしいって、思うんですよ」ナデナデ

仁奈「もしかしてそれも、仁奈のさいきっくですか……?」

裕子「あはは。ある意味そうかもですね」

裕子「仁奈ちゃんの――その魅力は、超常的ですから!」

仁奈「えへへ♪」



――翌日


仁奈(みなさん、へいそはひとかたならぬごおんじょーにあずかりやがったるです!)

仁奈(市原仁奈でごぜーます!)

仁奈(今日もいっぱいレッスン、お仕事、しゅぎょーして、びしょーじょきぐるみさいきっくアイドル目指して、ゆーおーまいしんでごぜーますよ!)

仁奈(ん? あれは……)



「ねえレナ。この前、雰囲気のいいバーを見つけたんだけど、今夜あたりどうかしら」

「……ごめんなさい。身体のことも考えて、お酒は控えろって言われてて……」

「今は大切な時期だそうだから……怒られちゃうわ……」

「禁酒? ワインがない生活なんて私には考えられないわね」

「志乃さんはそうでしょうね……。でも、なんだかレナ、やつれてない?」

「それに――さっきから、なに飲んでるの?」

「ビオママ」



千川ちひろ「ひー、ふー、みー……」パラパラ

ちひろ「うんうん。売り上げは順調ね……」

仁奈「ちひろおねーさん!」

ちひろ「あら、仁奈ちゃん。おはようございます」

仁奈「おはよーごぜーます!」

ちひろ「そうだ。今度のお仕事の衣装が届いてますから、試着お願いできる?」

ちひろ「新しいキグルミですよ」

仁奈「ホントでごぜーますか! やったー!」ピョンピョン

ちひろ「ふふ♪」



『――で起きた、暴力団事務所爆発事件について――』

『――は取り調べに対して『やたら胸のでかい童顔と、やたら胸のでかいイケメンと、やたら胸のでかいヤンキーに襲われた』と供述しており――』

『警察では密輸していた新型麻薬による集団幻覚だと――』



仁奈「そうだ、ちひろおねーさん」

仁奈「ちひろおねーさんも、仁奈のしゅぎょーに付き合ってくだせー!」

ちひろ「しゅぎょー?」

仁奈「さいきっくとれーにんぐですよ!」



「おっはよー茜ちん!」

「おはようございます茜ちゃん。何を見ているんですか?」

「お二人とも! 丁度いいところに来ました!」

「昨日手に入れたばかりの新作です! 一緒に鑑賞しましょう! 白熱しましょう!!」

「おっ、茜ちん推薦とは! どれどれー?」

「茜ちゃんのことだから、何かのスポーツですか?」

「はい! タイトルは『大乱交! スティックブラザーズ』といいまして――!!」



ちひろ「さいきっく? 裕子ちゃんみたいな?」

仁奈「そうですよ。こえーこととかねーです」

仁奈「ちっとじっとしててくだせー!」

ちひろ「えっと、こう?」

仁奈「じゃあいくですよー!」

仁奈「ムムムムーン……!」

仁奈「ちひろおねーさんのきもちになるですよ!!」


――――――
――――
――



裕子「また曲がらなかった」

裕子「おっかしいなぁ……」

裕子「昨日のあの時は、こう、スプーンどころかすべてを螺子曲げるようなパワーを得た気がしたんだけど……」

裕子「一日経ったらすっかりさっぱり発動しないし……」

裕子「って、あれは……」



仁奈「………………」




裕子「おはようございます仁奈ちゃん」

裕子「どうしたんですか? そんなところでぼーっとして」

仁奈「……あっ」

仁奈「ユッコおねーさん……」



仁奈「仁奈……」

仁奈「仁奈、さっき、さいきっくしたですよ……」

裕子「おお。自主的にトレーニングとは感心ですね!」

裕子「それで、誰の『きもち』になったんですか?」

仁奈「……ちひろおねーさん」

裕子「ちひろさんですか! それは興味深いですね」

裕子「いつもプロデューサーや私たちのサポートでお世話になっていますが……、言われてみれば、これだけ付き合いが長いのに色々と知らないことも多い方ですから」

裕子「普段、どんなことを考えてるのか気になってしまうのが人情でしょう!」



裕子「それでどうだったんですか?」

仁奈「へっ……?」

裕子「ちひろさんの『きもち』になって、どうでしたか?」

仁奈「そーですね……」

仁奈「なんつーか……」




仁奈「にんげんっていいな……って……」



裕子「へ?」











昔SS書いて使わなかったネタの寄せ集め

相葉ちゃんだったりしぶりんだったり、年下とからめば誰でもお姉さん属性発揮するのはいいですよね

誤字脱字、結局長いのはごめんなさい

読んでくれてありがとう

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