堀裕子「ナックルボール」 (35)

注意
モバマス×やきう
ご都合主義

OKならどうぞ。

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P「それっ」

ピュッ

ブルンッ
ストライーク!バッターアウッ!

友紀「だぁー!もうプロデューサー、ナックルはずるいよ!」ムキーッ!

P「ははは、勝てばよかろうなのだぁ!」

友紀「どこに行くかわからないなんて超能力でも使ってるんじゃないのこのボール?」



裕子「超能力と聞いてきました!」バーンッ

P「おー釣れた釣れた」

友紀「裕子ちゃんには探知機でもついてるのかな?」

裕子「プロデューサー、ナックルとは何ですか?エスパーですか?」

P「裕子。ナックルはエスパーやないで。変化球や」

裕子「変化球というと…あのギュイーンって曲がるボールですか!」

P「ギュイーンかどうかは知らないけど…まぁ曲がるボールのことだな」

友紀「スピンをかけたり空気抵抗を変えたりしてボールの軌道を変えてるんだよ」

P「本来水平に投げられたボールは放物線を描いて落下するんだ。物理で習ったろ?」

裕子「はい…水平投射とかその辺ですよね?」

P「しかしボールにスピンをかけることで通常とは違う変化が発生するんだ。これを変化球って一般に呼ぶんだ」

友紀「厳密にはストレートも変化球なんだよ」

裕子「あっ…バックスピンをかけてるからですか?」

P「そう。バックスピンをかけることでボールの進行方向に揚力を発生させているんだ。マグヌス効果とも言うな」

裕子「ま…まぐぬす?」

友紀「…中村のストレートは加速している」

P「やめてさしあげろ、友紀」

P「まぁそれだから海外だと直球と変化球なんて区分はされてないんだ」

友紀「ファストボールとブレーキングボールって言われてるね」

裕子「国が違うとボールの呼び方も違うんですね…むむむ、野球って難しいですね」

P「まぁこれは考え方の違いみたいなもんだからな」

※ファストボール=速い球(フォーシーム、カットボールなど)
 ブレーキングボール=タイミングを外す意図の強い球(カーブ、チェンジアップなど)

P「さぁ本題に入るか。さっきボールにスピンをかけると変化するといったな。
  じゃあボールにできる限り回転を与えずに投げたらどうなると思う?」

裕子「えっ…? 変化させる方法の逆だから、下に落ちるボールになるんじゃないんですか?」

P「…理論上はそうだ。しかし、実際には風・湿度・縫い目・ボールの細かな傷などが作用する。
  その結果、乱気流が生まれ無回転のボールは不規則な変化を見せる!」

友紀「これがナックルボールの正体なんだよ!」ババーン

裕子「な、なんだってー!!!」

友紀「魔球って言われることもあるね」

裕子「ま、魔球!? それを極めれば、私もサイキッカーに」

P「なれねぇからな」キッパリ


P「次にナックルボールの長所を挙げていこう」

裕子「魔球…心地よい響きです」ウットリ

友紀「まだ言ってるよ…」

P「まず単純に不規則変化だからジャストミートされにくい」

友紀「狙って投げられたナックルを真芯で捉えるのは超能力者でもない限り難しいね」

裕子「ふっふっふっ…ならば私が捉えて見せましょう!」クワッ

P「うん…そーだねー」シラー

裕子「リアクション薄いですよ!?」


P「次にひじや肩への負担が極端に少ないことだ」

友紀「ナックルってキャッチボールみたいな投げ方で投げるから、故障しにくいんだよね」

P「登板間隔が短くても投げられるのは魅力だな」

友紀「例を挙げるとナックルボーラーの投手と速球派の投手じゃ100イニング以上の差が出たこともあるんだよ」

裕子「そ、そんなに差が出るものなのですか…」

※1979年
フィル・ニークロ  44先発 23完投 投球回342回
ノーラン・ライアン 34先発 17完投 投球回222.2回

ライアンは74年に332イニング(キャリアハイ)を投げているが、MLBでもレアすぎる完投型。

それ以上に投げられるナックルボーラーはロマンの塊である。


裕子「何か聞いているといいことずくめですね!」

友紀「いや、欠点も多いよ」

P「まず制球が難しいんだ。投げてる本人でさえどこに行くかわからない」

裕子「え゛っ」

P「不規則で捉えづらいということは、どこに行くかわからないということでもある」

友紀「厳密にはある程度縫い目の向きでコントロールはできるんだ。
   それでも風に吹かれるとつらいんだよ」

P「風の向きに大きく左右される。ナックルは繊細な球種なんだ」

友紀「調子が悪い時にはストライクが全然取れないからね」

裕子「むむむ…」

P「そしてランナーを出した時も弱い」

友紀「ランナーに走られたときにナックル投げちゃったら、二塁へはフリーパスも同然になるね」

裕子「で、でも! キャッチャーの肩が強ければそんなに簡単に走られないんじゃ…」

P「裕子、キャッチャーはボールを押さえるので精一杯なんだ。ランナーを気にする余裕はないぞ」

裕子「うっ…」

P「そしてランナーを警戒するあまりストレートを投げるとそれを狙われることもある」

裕子「難しいですね…ナックルボーラーって」

友紀「数が少ないものには理由があるんだよ」

P「そしてなによりキャッチャーの捕球能力に大きく頼ることになる」

友紀「本当に捕りづらいからナックル専用捕手がいるくらいだからね」

裕子「大変なんですね…」

P「…だが、ナックルボールを極めたらその威力はすさまじい。相手打者を翻弄するその姿は、まさにマジシャンだろうな」

裕子「!」



裕子「プロデューサー! 私もナックルを投げてみたいです!」

P「…そうか。なら、お前に問いたい」




P「お前は、どんな時でもナックルを信じられるか?」

裕子「えっ…」

友紀(あれ? なんか話がおかしな方向にいってない?)



P「ナックルボーラーは投球のほとんどをナックルに頼ることになる。その結果、ナックルでピンチを招くこともあるだろう」

裕子「………」ゴクッ

P「だが、ナックルボーラーがナックルを信じられなくなったら終わりだ。お前に、ナックルを信じる心はあるか?」

友紀(えっなにこの展開。あたしついていけないよ)




裕子「…私は、ナックルを信じます! 教えてください、プロデューサー!」

P「…よし! お前にナックルを伝授しよう」グッ

裕子「はい! お願いします、師匠!」グッ

友紀(なにこのスポ根展開!? ナックル談義はどこいったの!?)

―公園

P「まずは俺が手本を見せよう」

友紀「そもそもプロデューサーってナックル投げられるの?」

P「高校時代はセカンドのレギュラー兼二番手投手だったんだ。ナックルを投げてたぞ」

友紀「なにそれすごい」

P「甲子園までいったけど1回戦で大炎上してな…3回持たずにノックアウトされたよ」トオイメ

友紀「あっ…」


P「ナックルには様々な握りがある。二本指ではじいたり、三本指・四本指と人によってさまざまだ」

友紀「プロデューサーは二本指なんだね」

P「たまに三本でも投げるけど基本はこれだな。人差し指と中指で投げてるぞ」

友紀「あたしが捕ろうか? プロデューサー」

P「…やめとけ、捕れないから。裕子、バッターボックスに立ってくれ」



裕子(どんな変化をするんでしょうか…)

友紀(あたしもナックルを生で見たことはないんだよね)




P「………」フーッ

P(心は水平に。雑念を捨てる。手首を固定して―)

シュッ



ギュンッ!

裕子「えっ!?」

友紀(今…利き手と逆方向に曲がった)



P「裕子、これがナックルだ」

裕子「す、すごいです。こんな変化をするんですね!」

友紀(今どきのプロデューサーは変化球も投げれないとだめなのかな?)


P「まぁいきなりナックルを投げろと言われても無理だからな。まずはキャッチボールの感覚で投げてみろ」

裕子「はい! えっと…指は」クルクル

裕子(指を立ててスピンをかけない…)

裕子「いきますよー! えいっ!」シュッ



ヒューン

パシッ

P「……思いっきり回転してるぞ」

裕子「ムムム…これは難しいですね!」

P「そんなに簡単にマスターはできんさ。今日中にまともなナックルが一回でも投げれればすごいぞ」

………


裕子「えいっ!」シュッ

P「回転してるぞー」パシッ

裕子「そりゃ!」シュッ

P「棒球だな」パシッ

裕子「さいきっく☆変化球!」シュッ

P「トップスピンかけてごまかすな!」パシッ


裕子「うぅ…どうやって無回転で投げるんですか?」

P「指をはじくことに意識が行き過ぎだ。弾くんじゃなくて押し出す意識で投げてみろ」

裕子「押し出す…」

P「あと手首は固定しろ。回転する原因だぞ」

裕子「手首を固定…」



P「よし来い!」バシィ

裕子(押し出す意識で…手首を固定して)

裕子「えいっ!」シュッ



クッ!

パシッ

友紀「!」

裕子「今のボールどうですか、プロデューサー!」

P「………無回転だったぞ!」

裕子「フハハ! サイキックボーラー堀裕子爆誕ですよ!」ドーン

P「いや…これがスタート地点なんだけどな。ここからさらに変化させる必要がある」

裕子「でもコツはつかみました! もっと変化させて見せますよ」

………

カーカー

P「裕子、日も暮れてきた。そろそろ終わりにしよう」

裕子「待ってください…これが最後です」



裕子「………」フゥー

友紀「いつになく真剣な表情…」

P「……」




裕子(無心になる。手首は固定。押し出すように指ではじく)

ガバッ

裕子(ナックルよ―)



シュッ



裕子(風に乗れ!)




ギュンッ!

P「!」バチッ



友紀「い、今…」

P「俺のグラブを…」

裕子「は、弾いた…?」


裕子「…や、やりましたー!!! ばんざーい、ばんざーい!」

友紀「すごいよ裕子ちゃん、ホントにナックル投げちゃったよ!」

P「いやー、驚いたわ…まさかホントに投げるとはな」

裕子「これで私もサイキックアイドルですよ!」

P「いや…友紀と同じカテゴライズになると思うぞ…」



P(しかし…アイドルってやつはいつも俺の想像を超えてくる。
  だからこそ、ファンに希望を与えられるのかな?)

その後、ナックルをマスターした裕子はテレビ企画でプロ野球選手を三振に斬ってとった。

そのことがきっかけで裕子は女子プロ野球選手とアイドルの二足のわらじを履いて活動することになる。

これが後の新時代女子プロ野球「シンデレラリーグ」の幕開けとなるのだが、それはまた別のお話…

おわり!

ナックルが(*´ω`*)理由
①手が大きくないと投げられない
②制御が困難(風に大きく左右される)
③牽制・クイックが普通のピッチャーより重視される
④専用キャッチャーが必要な可能性あり
⑤最低限の球速は必要(130前後)
⑥これらが満たせる選手はたいてい普通のピッチャーになってしまう

でもロマンの塊

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