P「ゲームの世界に飛ばされた」FINAL3 (219)

アイマス×FF4 最終決戦編です

原作設定拾ったり無視したりご都合主義があったりオリジナルの設定があったりします

今度こそ完結します(おそらく)



1スレ目 P「ゲームの世界に飛ばされた」

P「ゲームの世界に飛ばされた」 (HTML化済み)
P「ゲームの世界に飛ばされた」 - SSまとめ速報
(https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1405694138/)


2スレ目 P「ゲームの世界に飛ばされた」2

P「ゲームの世界に飛ばされた」2 (HTML化済み)
P「ゲームの世界に飛ばされた」2 - SSまとめ速報
(https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1410099092/)


3スレ目 P「ゲームの世界に飛ばされた」FINAL

P「ゲームの世界に飛ばされた」FINAL (HTML化済み)
P「ゲームの世界に飛ばされた」FINAL - SSまとめ速報
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4スレ目 P「ゲームの世界に飛ばされた」FINAL2

P「ゲームの世界に飛ばされた」FINAL2
P「ゲームの世界に飛ばされた」FINAL2 - SSまとめ速報
(https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1450963080/)



SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1509884229


前スレ最終時点の各キャラの現在位置


地下1階…真、雪歩

地下5階…亜美、真美

地下7階…響、伊織、やよい

地下9階…千早、美希

地下11階…律子、貴音

地下12階(中心核)…小鳥、P

次元の狭間…春香

不明…あずささん

ミシディア…高木社長とゆかいな仲間たち


とりあえず立てました
続きは近いうちに

すみません、前スレ埋めた方がいいのは何か理由があるんですかね?
あんまり詳しいルール知らないもので…

ー 月の地下中心核 ー



小鳥「………」

P「………」



P(アイドルたちが地下渓谷へやってきて随分経った。小鳥さんの不思議な力で俺も途中までみんなの様子を見ていたけど、みんなの戦いは本当に頼もしいものだった)

P(『そろそろ誰か来る頃だろう』という音無さんの言葉でみんなの様子を見るのは中断し、こうして俺たちはみんなを待つことにしたんだけど……)



小鳥「誰が一番に来ると思います?」

P「原作通りだと律子と貴音ってことになりますよね。ちょうど二人とも直前まで下の方の階層にいましたし」

小鳥「確かに可能性は高いですね」

小鳥「………」


P(最終決戦を目前にして、音無さんが少し緊張しているように見える)

P(当たり前だよな。ラスボスという大役を演じなければならないプレッシャーとか、ひとりで13人と戦わなくちゃならない恐怖とか)



小鳥「……あの、プロデューサーさん。最後の戦いが始まる前に一つだけお願いがあるんですけど……いいですか?」

P「ええ、構いませんよ。俺に出来ることなら何でも言ってください」

小鳥「さっき話してた『裏ルール』なんですけど、みんなにはまだ話してないんですよね?」

P「……はい、たぶん社長も知らないと思います。現時点で知ってるのは、俺と音無さんだけですね」

小鳥「じゃあ……それは最後までみんなに黙っていてもらえませんか?」

P「え……?」

小鳥「別に『裏ルール』を話さなかったから何かが変わるとか、そんなことないのは分かってます」

小鳥「でも私、それをみんなを傷つけることの言い訳にしたくないんです。ここまで全て私の意思でやってきたことですし、けじめ、ちゃんと取りたいって思ってるんです」

小鳥「お願い……できますか?」

P「………」

P「尊重しますよ、音無さんの意思。一番大変な役はあなたなんですから」ニコッ

小鳥「……ありがとうございます」ペコリ



P(『この世界での出来事は現実世界に戻っても影響しない』という裏ルール。それをみんなに話せば、お互いにもっと楽な気持ちで最後の戦いに臨めるかもしれない)

P(俺には分からないけど、きっと音無さんにも背負うものはたくさんあるんだよな)

P(俺は……。今の音無さんに俺が言えることは……)



P「……音無さん、俺からも一つお願い、いいですか?」

小鳥「え? は、はい」

P「最後の戦い、いつもの朗らかな音無さんでいてくださいとは言いません」

P「でも、あなたらしさだけは忘れないでください」

小鳥「私……らしさ……?」

P「俺のお願いはそれだけです。あとは音無さんに全部お任せします。……って、ちょっと無責任な言い方かもしれませんけどね、はは……」

小鳥「プロデューサーさん……」

小鳥「わかりました。ありがとうございます」

小鳥「……ちょっとだけ、勇気もらえました」ニコッ

P「いえ、お礼なんて」

P(本当はもっと掛けるべき言葉があるのかもな。でもこれ以上はきっと、音無さんの重荷になる気がする)



小鳥「……っ!」ピクッ

P「……来ましたか?」

小鳥「はい……!」チラッ



…ザッ




小鳥「あら……うふふ♪」

小鳥「プロデューサーさんが言った通り、こんな場面だけ原作をなぞるんですね?」




律子「………」

貴音「………」

 

P「……律子、貴音……!」



律子「プロデューサー殿……!」

貴音「ご無事でしたか……!」



小鳥「いらっしゃい。律子さん、貴音ちゃん。待ってましたよ♪」



律子「お久しぶりですね、小鳥さん。本当に」

貴音「ご無沙汰しております」ペコリ



小鳥「本当に…………本っ当にお久しぶりですね! もう何年もお会いしてなかったような気分です♪」

P(実際はゲームの時間で一年も経ってないけど、みんなはそれくらい長く感じたってことだよな)

P(ついに、ここまで来たんだな……)



小鳥「貴音ちゃんはあの時ぶりね。バハムートさんと戦ったのよね? どうだった?」



律子「……貴音」

貴音「分かっております。この様な安い挑発には乗りません」



小鳥「あらら……残念」




律子「小鳥さん、たぶんもう私たちに精神攻撃は無駄だと思いますよ?」

律子「月の民の館では散々精神攻撃を受けましたけどね」



小鳥「へぇ……なんだか余裕ですね、律子さん」

小鳥「じゃあ、いいことを教えてあげます」

小鳥「前にもちょっとだけ話したと思いますけど、原作でも最初にゼムスの元へ到達するのがゴルベーザとフースーヤ……つまり、律子さんと貴音ちゃんの役の二人なんですよ」

小鳥「二人は最初ゼムスを圧倒するんですけど、その後どうなっちゃうかというと……」



貴音「真美から聞いています。そのぜむすとやらの真の姿に敗北してしまう、と」

貴音「ですが小鳥嬢もご存知の通り、この物語は既に誰も予想の出来ないものになっているのです」

律子「だから、私たちが小鳥さんに負けるかどうかは分からないってことです」



小鳥「……ふむ」

P(そうなんだ。誰にも先が分からない。だからこそ律子や貴音にも分がある)

P(でも、逆にそれは音無さんにも同じことが言えるんだ)

P(音無さんの強さは予測不能だぞ……)



小鳥「二人とも自信満々かぁ。まあ、初めから絶望されるよりはいいのかな?」

小鳥「んー、じゃあ~……」スッ

ポワ…



律子・貴音「!」



スゥゥゥ…

コトリマインド「うふふっ、お久しぶりですっ♪」

コトリブレス「私は初めまして、ですね♪」



律子「……まさか、分身……?」



小鳥「はい。実力テスト、というわけじゃないんですけど、律子さんと貴音ちゃんにはまず私の分身と戦ってもらおうかなと」

小鳥「私の分身二人に勝つことが出来たら、その時は私がお相手しますよ♪ どうですか?」



律子「……だそうだけど、貴音、自信は?」

貴音「わたくしに訊くのですか? 本人ならばともかく、分身となれば愚問ですね」

律子「それもそうよね。じゃあ、どっちがやる?」

貴音「そうですね……ならばここは公平にじゃんけんといきましょう」

律子「いいわよ。最初はグー」

貴音「じゃんけん……」



小鳥「ちょ、ちょっと待ったぁ! 何ですかその溢れ出る強キャラ感は! あの時私の分身一人にみんなで苦戦してたの忘れちゃったんですかっ!?」



律子「そう言われても、分身に勝たなきゃ小鳥さんは出て来ないんでしょう? だったら今さら尻込みしてても仕方ないじゃないですか」

貴音「分身如きに遅れを取っていては、本丸の攻略など夢のまた夢ですから」



P(二人の言葉はもっともだけど……。なんだろう、律子と貴音から感じるこの落ち着きは)



小鳥「むむむ……なんか納得いかない~!」

小鳥「『あの時苦戦した分身が二人も!?』ってなる場面のはずだったのにぃ!」

小鳥「……ええい! 二人ともやっちゃいなさーい!」ビシッ

P(音無さん、それヤラれ役の代表的な台詞ですよ)



コトリマインド「行きますよっ!」ダッ

コトリブレス「うふふっ♪ 分身だと甘く見てたら痛い目にあっちゃいますからねっ」ダッ



律子「……作戦変更。効率重視でいきましょう。私は右の分身、貴音は左。OK?」

貴音「承知しました」

…ダッ



コトリマインド「私の相手は律子さんですか? あの時みたいにまた操っちゃえば終わりかな?」ピリッ


律子「いいですね。油断してくれればそれだけこちらの労力も少なく済みますし」チャキッ


コトリマインド「本当に自信満々ですね~。後悔しても遅いですからね!」

コトリマインド「精神波っ!」バッ


ビリリッ…!


律子「……残念ですけど」

律子「……精神波!」バッ


…パキーンッ!!



コトリマインド「! 相殺された!?」



律子「もう操るのも操られるのもこりごりなんですよね。人の意思は尊重するものですよ?」ダッ

律子「……はあっ!!」ブンッ

ズガガドゴォォォンッ!!


コトリマインド「……っ!」ダッ



律子「……っと、避けられちゃったか」



コトリマインド「雷を纏わせた突き……。まさか魔法剣とか?」

コトリマインド「でも今の、前にどこかで見たような気が……」



律子「ああ、小鳥さんは一度見てるはずですよ?」



コトリマインド「やっぱり。うーん、でもどこで見たんだったかしら……」



律子「ほら、ゾットの塔ですよ。私があなたにまだ操られていた時、春香が私に向かって使ったでしょ?」



コトリマインド「……えっ?」



律子「っ……!」ダッ



コトリマインド「! ……速いっ!」



律子「……大気満たす力震え、我が腕をして
閃光とならん……!」バリッ…

律子「……無双、稲妻突きッ!!」ブンッ

ズガガッ……!!



コトリマインド「ちょっ、ウソでしょお!?」


ドゴォォォンッッ!!!



律子「……うん、まあ初心者にしては上出来でしょ!」



コトリマインド「こ、この前まで私が圧倒していたはずだったのに……」ヨロッ

コトリマインド「く、くやしい……」ドサッ



律子「流石の威力だわ。エクスカリバーのおかげね」チャキッ

律子「まずは一人。貴音の方は終わったかしら」チラッ



コトリブレス「……ホーリー!」バッ

キラキラキラ…!

ドゴオオオォォオオンッ!!



貴音「っ……!」

ズザザザッ…!

貴音「……はて、今のがほーりーですか?」



コトリブレス「なっ、なんで無傷なのよ~!?」



貴音「無傷、ということはありません。『しぇる』を使用したとはいえ、こちらにも少々のだめぇじはありました。ですが……」

貴音「ばはむーと殿のめがふれあを受け続けた身としては、些か物足りない攻撃でしたね」

貴音「……いえ、比べることすらばはむーと殿に失礼に当たるでしょう」



コトリブレス「ちょ、調子に乗ってるわね……!」



貴音「何故でしょうか。貴女には全く負ける気がしません」ゴゴゴゴ



コトリブレス「そ、そんな! 魔力がどんどん上がっていく……!?」



貴音「本物の魔法とは、こういうものです」

貴音「…………ほーりー」バッ

キラキラキラ…!


ドゴオオオォォォオオオオンッ!!!



コトリブレス「ば、バカなぁッ……!?」

…ドサッ



貴音「…………ふぅ」



律子「貴音!」タタタタ


貴音「そちらも終わりましたか」

律子「めちゃくちゃ強くなってるじゃない! 分身とはいえ、メガフレアを使わないで倒すなんて!」

貴音「わたくしには、あの方の加護があります。……そう、思えるのです。だからここまで強くなれた」

貴音「律子嬢こそ、まこと華麗な技でした」

律子「んー……私の場合はほら、武器が変わったっていうのもあるし」

律子「……ま、とにかく」チラッ



小鳥「……驚きましたね、これは。まさかどっちも一瞬でやられちゃうとは思いませんでしたよ」

小鳥「まあ、分身じゃ貴音ちゃんには勝てないだろうなって思ってはいたけど……」

小鳥「それに律子さんの技。今までと全然違う雰囲気。もしかして……」



律子「そういえば報告が遅れましたね。私、聖騎士にジョブチェンジしましたんでよろしくお願いします」



小鳥「………」

小鳥「本当ならあり得ないことのはずなんですけれど、よく考えてみれば可能性がないわけではなかったんですよね」

小鳥「……クルーヤさん、ですか?」



律子「そうですね。頼りない父親と、私を信じてくれている可愛い妹のおかげです」



小鳥「……やっぱり、そうなんですね」

P(……ということは、クルーヤははじめから律子に協力するために音無さんに近づいたってことになるのか……?)



律子「………」



ー回想、月の地下渓谷 B11F ー


…ザッ

律子「見送りはここまででいいです」

クルーヤ「そうかい? もうちょっとそこまで……」

律子「大丈夫ですって。目的地はどうせすぐそこなんですから。あとは春香についててあげてください」

クルーヤ「でもなぁ……。せめてハルカが技を習得するまでは一緒にいてくれてもいいのに」

クルーヤ「それでさ、仲間のピンチに君たち姉妹が駆けつけるんだ。カッコいいだろ?」

律子「あの、私別にカッコつけたいわけじゃないんですけど」

クルーヤ「……まあ、仕方ないか。本当はもう少し君と話をしたかったんだけどね」

クルーヤ「ごめん、リツコ。君が辛い時に何も出来なかったくせに、いつまでも娘離れ出来ない情けない父親で」

律子「だからそれはもういいですってば。何回も同じことで謝らないでくださいよもう……」

クルーヤ「………」



クルーヤ「あのさ、リツコ。情けないついでにもう一つ聞いてもらってもいいかな?」

律子「手短にお願いしますね。すぐそこまで仲間が来てるんですから」

クルーヤ「ありがとう」

クルーヤ「ボクがコトリさんの陣営にいたこと、君は不思議に思わなかったかい?」

律子「え? だってそれは、私と春香に会うために小鳥さんのところに潜り込んだんですよね?」

律子「…………ん?」

律子「あ、そうか。それだと小鳥さんを裏切ったことになるのね……」

律子「もしかしてクルーヤさん、そのことを気にしてるんですか?」

クルーヤ「………」

クルーヤ「ボクは、生前は聖騎士だった。これでも世界のために戦ってきたと思っているし、死んでからも世界のために出来ることはしてきた。そのためには手段は選ばないつもりでね」

クルーヤ「今回コトリさんに接触したのだって、コトリさんと戦うことになる君やハルカの手助けをするためだ」

クルーヤ「コトリさんを最初から騙すつもりだったんだ。……それがボクの『正義よりも正しいことよりも大切なもの』だから」

律子「……信念、ですか?」

クルーヤ「まあ、似たようなものさ」



クルーヤ「……でもさ、今は少しだけ後悔してるんだ」

律子「後悔……ですか?」

クルーヤ「うん。たぶん、コトリさんがものすごく悪い人だったら、きっとこんな風に気にすることはなかっただろうなぁ……」

クルーヤ「…………楽しかったんだ」

クルーヤ「コトリさんがいて、バハムートがいて、ボクがいて。妙な取り合わせだったけど、三人でいるのが存外に楽しかったんだよ」

律子「………」

クルーヤ「……ごめん、やっぱり今の話は忘れてくれ」

律子「………」

律子「…………はぁ」

律子「本当に、こんな頼りない人が私の父だなんてね。まったく……」

クルーヤ「あはは……ごめん」

律子「今のことは春香には言わないでくださいね? あの子、全面的にあなたのことを信頼してるみたいですから」

クルーヤ「……わかった。肝に銘じるよ」



律子「それじゃ、本当にもう行きますね」

クルーヤ「うん」

律子「色々お世話になりました」ペコリ

スタスタ







クルーヤ「…………頑張れ、リツコ!」







律子「!」



クルーヤ「詳しくはわからないけど、君やハルカが救おうとしているのはこの世界だけじゃないんだろう?」



律子「クルーヤさん……」



クルーヤ「ボクが君のために出来ることは本当にもう何もない。だからせめて、気休めの言葉くらいは贈らせてくれ」

クルーヤ「……頑張れ、負けるな、リツコ!」



律子「………」

律子「……まったく、そんな言葉じゃ気休めにすらなりませんよ……」グスッ



ーーーーーー
ーーー


ー 月の地下中心核 ー



律子(小鳥さんにしてみればそりゃショックよね。味方だと思っていたクルーヤさんに裏切られた形になるんだもの)



律子「……あの、小鳥さん?」



小鳥「……なーんだ、良かった♪」



律子「…………え?」



小鳥「ふぅ、これで一つ肩の荷が下りたわねー。悪の親玉も楽じゃないわ~♪」



律子(……嘘ね。ああ見えて小鳥さんって結構繊細だから絶対に傷ついてるはずよ)

律子(でも、それをあえて隠すつもりなら私は何も言いませんからね?)



小鳥「…………さて、と」スタスタ



律子・貴音「!」



小鳥「過ぎたことを言っても仕方ありませんよね。それよりも大切なことを言わせてもらってもいいですか?」ゴゴゴゴ



律子(この威圧感……! 流石に分身なんて比べものにならないわね……!)



小鳥「……律子よ、貴音よ。何故もがき生きるのか……?」



律子「え?」

貴音「………」



小鳥「滅びこそ我が喜び。死にゆくものこそ美しい……!」

小鳥「さあ、我が腕の中で息絶えるがよいッ!!」ビシィッ



律子「………」

貴音「………」


小鳥「………」

P「………」




P「何かと思ったら戦闘前の口上ですか。しかも丸パクリじゃないですかそれ……」

小鳥「だ、だって上手い言葉が思い浮かばなかったんですもん!」



貴音「……なるほど。律子嬢、恐らくこれは様式美というものでしょう。真の黒幕との戦いの前には盛り上がる台詞が付きものだと真美から聞いています」

律子「あ、そう……」

貴音「小鳥嬢、わたくしたちは闇の力に屈したりはしません。月も、地球も、全ての人を闇から救ってみせましょうッ!!」ビシィッ



小鳥「おっ、貴音ちゃんはノッてくれるのね。ありがとう♪」



貴音「さあ、律子嬢も何か一言を」

律子「いや、いいわよ別に……」



小鳥「んもぅ、律子さんノリ悪いなぁ」

小鳥「仕方ない、それじゃそろそろ始めましょうか」スッ



律子「……ええ、そうですね!」

貴音「小鳥嬢、あなたを満足させる戦いをしてみせましょう……!」



小鳥「さあ、かかって来なさい!!」


ー トロイアの国 店主の家 ー


ものまね士「フンフフーン~♪」ゴソゴソ

ものまね士「うふふ♪ 店主さんのためにおいしいお料理を作って待ってるこの時間、ちょっと好きだなぁ」


ガチャ

店主「……ただいまー!」


ものまね士「あ、おかえりなさーい!」タタタ

店主「お、なんかいい匂いがするなー」

ものまね士「今夕食の支度してますんで、ちょっと待っててくださいねっ♪」

店主「うん、ありがとな」



…ドガァンッ!!



店主「!?」

ものまね士「な、何事ですか!?」



ものまね士「……って、ぎゃー! 鍋が木っ端微塵にぃぃ!!」

店主「だっ、大丈夫かものまね士、ケガないか!?」

ものまね士「わ、私は平気ですけど……」チラッ

ボロッ

ものまね士「うぅ~、一日中煮込んだ愛情たっぷりの特製鍋がぁ~」

店主「ていうか、どうすりゃ鍋が爆発する事態になるんだよ……」



ものまね士「すみません、店主さん……。私、お料理作って待ってようと思ったんですけど……」

店主「気にすんなって。メシくらいオレがパパッと作るからさ」

ものまね士「はい……」ズーン

店主「そんなに落ち込むなよ。気持ちはすごく嬉しかったぜ?」

ものまね士「うぅ……私って全然奥さんらしくないですよね……。料理も失敗してばっかりだし、掃除や洗濯するとなぜか物を壊しちゃうし……」

ものまね士「やっぱり……やっぱり私には、薪割りくらいしかできることがないんです~!」

店主「…………ったく、バカだなぁ」

ものまね士「ば、バカって! 妻に向かってなんてこと言うんですか~! うわぁぁん! 店主さんのバカぁ~!」ボゴッドスッ

店主「ごはっ!? ちょっ……た、タンマ!」



店主「……いててて……」

店主「相変わらず手加減なしだなあんたは……」

ものまね士「……ぐすっ……」

店主「…………はぁ」

店主「ほら」スッ

ものまね士「……なんです、これ?」

店主「あんたに似合いそうな髪飾りを見つけたからさ。……プレゼントだ」

ものまね士「私に、ですか……?」

店主「あんたはオレの奥さんだろ? あんた以外に渡す相手なんていないって」

ものまね士「て、店主さん……!」パァァ

ものまね士「ううぅ~! 嬉しいです~!」ダキッ

店主「はは、現金なやつだなぁ。機嫌直ったか?」

ものまね士「はいっ♪」ニコッ



店主「…………ふぅ、ごちそうさまでしたっと」

ものまね士「やっぱり店主さんのお料理はおいしいなぁ。私も見習わなきゃ」

店主「片付けは後でオレがやっとくからさ、あんたは少し休んでなよ」

ものまね士「えっ、でも悪いですよ」

店主「いいからいいから」

ものまね士「えへへ、ありがとうございます♪」



ものまね士「店主さん、私、今すごく幸せです……」

店主「だなぁ……。ついこの間までは世界に危機が迫ってたってのに。もう魔物も悪さすることもなくなったしなぁ」

ものまね士「これも全部、ハルカさんたちのおかげなんですよね……」

店主「………」



店主「なあ、ものまね士。オレたちってさ、このままでいいのかな?」

ものまね士「え? どういう意味ですか?」

店主「オレやあんた含めて、この世界の奴らはみんなハルカたちの世話になってる。今のこの幸せだって、あいつらがくれたものだ」

店主「けど、ハルカたちは今もまだ戦ってるんだよ」

店主「時々思うんだ。幸せをもらうばっかりで、オレはハルカたちに何かしてやれたのかな……って」

店主「今も世界のために戦っているあいつらにしてやれることはないのかな、ってさ」

ものまね士「………」

ものまね士「………」

ものまね士「…………ダメです」

ものまね士「もらってばかりだなんて、そんなのダメだと思います」

ものまね士「私、ハルカさんたちの力になりたいです!」

ものまね士「戦っているハルカさんやミキさんたちのために、私に出来ることがあるのか分かりませんけど、でも……」

ものまね士「それでも、何かしなきゃ! だって私たち……」

店主「……仲間、だもんな」ニコッ

ものまね士「はいっ!」ニコッ


ー トロイア城 謁見の間 ー


店主「…………え? じいさん、ミシディアに帰ったのか?」

アン「はい。もう一週間ほど前のことになります」

店主「なんだそうだったのかぁ。どうりで最近お城で見かけないと思ったぜ」

店主「それなら一言挨拶くらいしてくれりゃいいのに」

アン「お年を召されているということもあってお一人にするのは心配だったのですが、ミシディアでやるべきことがあると仰っていましたね」

アン「あ、もちろん飛空艇技師のお二人に定期的に物資を届けに行っていただいたりはしているんですが……」

店主「でもじいさん、今さらミシディアで何するつもりなんだろ」

アン「………」

アン「店主さんは……やはり気になりますか? 長老様のこと」

店主「そりゃなぁ。じいさんは巨人が攻めて来た時は一緒に戦ったりもしたし、なにより結婚式まで世話になってる身だしな。アミとマミも月へ行っちまって身寄りはもういないんだろ?」

アン「そうですね。そう……伺っております」

店主「じいさん、まさか世を儚んで……?」

店主「……いや、あの元気なじいさんに限ってそんなわけないか。魔物も落ち着いたし、やっと平和になったところだもんな」

アン「………」



アン「あの、実は……」

アン「長老様は、ミシディアで祈りを捧げておられるようなのです」

店主「祈り……?」

アン「はい。世界の平和のため、月で戦っているあいどるの方たちのために、少しでも力になりたいと」

店主「ハルカたちの戦いと祈ることと、何か関係があるってのか?」

アン「………」

アン「店主さんは、クリスタルについてどこまでご存知ですか?」

店主「いや……キラキラ光る不思議な石ってくらいしか」

アン「クリスタルは神秘の石。想いを映し、心を伝え、願いを届ける魔法の石」

アン「人の想いは力。誰かを支える力になることができる。そしてその想いを?ぐのが、クリスタル」

アン「長老様はミシディアの祈りの館で、ユキホさんたちの力になろうとしているのです」

店主「……えーっと、よく分からんがそれってつまり、じいさんもハルカたちと一緒に戦ってるようなもんってことだよな?」

アン「はい、そういう考え方も出来ると思います」

店主「なんだよ……水臭いじゃないか。それだったらオレたちに一声かけてくれたって……!」

アン「……本当は、このことは長老様から口止めされていたことなのです」

アン「『未来ある者たちは未来を生きるべき。今を未来へ?ぐのは老い先短い自分の仕事だ』。……長老様はそう仰っていました」

店主「!」


?になってるところは「つなぐ」です
漢字だとなぜかバグる


店主「…………ふざけんなよ」

アン「……店主さん……?」

店主「ふざけんな……! なんだよそれは!」

アン「ど、どうか落ち着いて」

店主「落ち着いてなんかいられねえよ! なんでっ……!」

店主「なんで自分には未来がないみたいな言い方するんだよっ……!」

アン「………」

店主「……神官さん、すまん。しばらく休みをもらえないか? 帰ったら倍……いや、三倍働くからさ!」

アン「ええっ……?」

店主「それと、みんなを集めておいてくれ」

アン「みんな? ええと、それは……?」

店主「みんなって言ったらみんなだ」

店主「あの時ハルカたちと一緒に巨人に立ち向かったみんなだよ!」

店主「じゃあ、頼んだぜ!」

タタタ…


アン「あ、あの!」


…ガチャ バタン



…ガチャ


ドゥ「……姉上、何かあったのか? 今、ものすごい形相の店主殿とすれ違ったんだが」


アン「………」

アン「ドゥ、ちょっと頼まれてもらえる?」

ドゥ「? ……ああ、それは別に構わないが」


ー トロイアの国 店主の家 ー


…ガチャ


店主「ものまね士、いるか!」


ものまね士「……あれ? おかえりなさい。今日はずいぶん早いんですね?」

店主「あのさ、オレ、仕事はしばらく休むことにした」

ものまね士「な、何かあったんですか? 怪我とかしちゃったんですか!?」

店主「そうじゃない。他にやらなきゃならないことが見つかったんだ」

ものまね士「やらなきゃならないこと……?」

店主「とにかく行くぞ」スッ

ものまね士「えっ? あの、行くってどこへ?」

店主「……ミシディアだ」



ーーーーーー
ーーー


スタスタ

ものまね士「……長老さんが、ハルカさんたちのために……?」

店主「……ああ。じいさん一人に重荷を背負わせられないよな。それにオレだってあいつらの役に立ちたいって思ってたんだ」

店主「あんたもそうだろ? ものまね士」

ものまね士「はい。もちろんです!」

店主「今、神官さんがみんなを集めてくれてるはずだ。だからオレたちも早いとこ合流しなきゃ」



「……お二人とも、こちらにおられたのですね」



店主「あれっ、あんた……」



トロア「姉上から事情は聞きました。ユキホ王女たちのためにミシディアへ行かれるつもりなのですね?」

店主「うん。そうだトロア、あんたも一緒に来てくれ! あんただってあいつらに力を貸したいって思ってるだろ?」

トロア「はい。それは常々思っていたことです」



トロア「あいどるの方々には大きな恩があります。それをお返しする機会があるのなら、私も是非参加させていただきたい」

トロア「……ですが、貴女は自重してください、ものまね士殿」

ものまね士「なっ、なんでです!? 私だってみんなの役に立ちたいですよぅ!」

トロア「お忘れですか? 貴女の身体にはすでに新しい命が宿っていること」

ものまね士「っ……!」

トロア「魔物も襲ってこなくなったとはいえ、そのような身重の身体で飛空艇など無茶もいいところです」

店主「待ってくれ! ものまね士のことならオレが責任持って守るよ! だからこいつも一緒に行くことを許してくれ!」

トロア「なりません! 出産は母体の安全が第一。もし万が一ものまね士殿に何かあったらどうするおつもりですか!」

店主「だ、だからそうならないようにオレが守るって!」

トロア「店主殿、あなたは分かっていない。新しい命が生まれるのがどんなに大変なことなのかを」

トロア「どうしてもものまね士殿を連れて行くというのなら……」


トロア「私は、力ずくであなたたちを止めます……!」


店主「トロア……!」

ものまね士「トロアさん……」



店主「オレはどうしてもこいつも一緒に連れて行きたい。ハルカたちの力になるなら、あの時のメンバーが全員揃ってなきゃ絶対にいやなんだ」

店主「頼むっ……!」

トロア「あなたのそのわがままが自分の子と妻を危険に晒すとなぜわからないんです!」

トロア「出産とはとてもデリケートなものなのだ! 命は、失ったら終わりなのですよ!?」

店主「だから守るよ! 守ってみせる! ものまね士も、お腹の中の子も!」

トロア「分からずやめ……!」

店主「………」

ものまね士「………」



店主「……どうしても許してもらえないのか? ものまね士の同行を」

トロア「許せるわけがない。あなたは明らかに命を軽んじている!」

店主「ならしょうがないな」スッ


トロア「!」


店主「ものまね士、ちょっと下がっていてくれ」

ものまね士「て、店主さん……!?」



トロア「……言っておきますが、これでも私はトロイア随一の使い手と呼ばれている」

トロア「相手が男性とはいえ簡単に遅れを取ったりはしないッ!」スッ


店主「………」ジリッ

ものまね士「こ……こんなのおかしいですよ! なんで店主さんとトロアさんが争わなきゃいけないんですか!」


トロア「ものまね士殿。私は自分が間違っているとは思いません。ユキホ王女たちが与えてくれた未来、命、幸せ……それを無駄にしたくないだけです!」


店主「……そうだな。たぶん間違ってるのはオレの方だ」

店主「けどな、これはウチの問題だ。何が正しいか……モラルも道徳も全部、大黒柱であるオレが決めることだ!」 


トロア「なんて傲慢な人だ……!」

トロア「分かりました。どちらが正しいかは拳で決めるとしましょう」

トロア「…………いざッ!!」ダッ


ものまね士「っ!!」











店主「…………すまん、許してくれ!!」ドゲザァ



トロア「」

ものまね士「」




ものまね士「あ、あのー、店主さん……?」

トロア「あなたは……男のくせにプライドってものが無いんですか!? 女相手に土下座とは……失望しましたっ!!」

店主「プライドなんてどうでもいい。失望してくれても構わないさ」

店主「でも絶対に譲れない。あいつらがこの世界の恩人だってのもあるけど、それ以前に……」

店主「ハルカたちは、オレたちのかけがえのない仲間だから!!」

トロア「そんなことは私だって分かっているっ!!」

店主「……オレがカイポで宿屋やってた頃、最初に出会ったのが、ハルカとヤヨイだった」

トロア「は……? 何をいきなり……」

店主「あいつら、めちゃくちゃボロボロでさ、とりあえず宿屋で休ませることにしたんだ」

店主「どうやらあいつら、バロンの兵隊さんたちに追われてたみたいでさ。二人を匿っていたオレの宿屋は兵隊さんに無茶苦茶に荒らされたよ」

店主「ちょっとびっくりしたけど、まあ兵隊さんにゃ逆らえないし仕方ないと思った」



店主「でも……そこでハルカとヤヨイは怒ってくれたんだ。赤の他人のオレのために、自分のことのように」

店主「兵隊さんに文句言って来るって、飛び出して行っちまった」

トロア「………」

店主「その時のことが今でも忘れられなくてなぁ……。あー、こいつらは人の痛みが分かるんだなぁ、なんか気持ちのいいやつらだなぁって」

店主「……本当にそんな小さなことだったんだ。始まりは」

店主「何の因果か、それからはあいつらと関わることが増えていった」

店主「あいつら見てるとホント面白いんだよな。性格も年も違う集団なのに、なんでかみんな仲が良くてさ」

店主「最初は不思議に思ったけど、あいつらのことを観察していくうちに分かったんだ」

店主「ハルカも、ヤヨイも、ユキホも、ミキも、チハヤも、マコトも、ヒビキも、アミも、マミも、イオリも、アズサも、タカネも、リツコ様も、みんなお互いのことを仲間と認めて信頼し合えるから……だから上手くいってるんだなって」

店主「オレもさ、仲間だと思ってるんだ。じいさんや神官さん、ファブールの王様、ドワーフの王様、お姫さん、アガルトのばあさんにヒビキの娘さんにユキコ、ミニ助たち。……ものまね士のことだって妻であると同時に仲間だって思ってる」

ものまね士「店主さん……」

店主「もちろんトロア、あんたのこともな」

店主「これは言ってみりゃ最後の戦いだ。あいつらと一緒に戦うなら、仲間の誰ひとり欠けてほしくない」

店主「だから、ものまね士もお腹の子も連れて行きたいんだ」

店主「……それにさ、オレたちの子供も世界を救った英雄たちと一緒に戦えることになるんだぜ? こんなすげえ英才教育、他にないだろ?」

トロア「………」



トロア「……まったく、あなたという人は……」

トロア「あえて言わせてもらいますが、それは完全にエゴだ」

店主「ああ、自分でも分かってるよ。でもどうしても譲れないんだ。たとえ正しさから外れていたとしても」

トロア「正しさ、か……」



トロア「私の……私たち姉妹の母は、八女のユイットを産むと同時に他界しました」

店主「え……?」

トロア「その頃のトロイアはまだ開拓期で、魔物の襲撃も酷いものでした」

トロア「魔物の存在に怯えながらも母は、生まれてくる命は絶対に消してはならないと、薬師や白魔道士たちが止める中、身を犠牲にしてあの子を産んだのです」

店主「そうだったのか……」

トロア「魔物が大人しくなった今なら、母子共に健やかな出産はそう難しくはないでしょう」

トロア「このご時世、親の愛を知らない子は溢れるほどいます。しかし、だからこそ、あなた方の子にはそうなってほしくはないんです」

店主「………」



店主「…………すまん、トロア。あんたがそこまで考えていてくれたなんて」ペコリ

トロア「いえ、冷静に考えれば、私の考え方もまたエゴなのかもしれません」

ものまね士「…………あの」

ものまね士「正しさって、やっぱり人によって違うんだと思います。だから、たまに意見が合わなくなるのは仕方ないことですよね?」

ものまね士「でも、今の私たちに共通の想いがあるのも確かなことです。ハルカさんたちの力になりたいっていう想いが」

ものまね士「私、やっぱりお留守番していることにします」

店主「ものまね士!」

ものまね士「だって、やっぱり悲しいですもん。私たちのわがままで子供を失うことになっちゃったら」

ものまね士「それに、遠く離れていたって気持ちは通じるって、ハルカさんたちに教えてもらいましたし」

店主「け、けどさ……」

トロア「……いえ。やはりものまね士殿も店主殿と共に行ってください」

ものまね士「えっ……」

店主「トロア……いいのか?」

トロア「妻と子を守るのは大黒柱としての当たり前の責務です。その一方で、仲間のために戦いたいという想いも、人間として持つ当たり前の感情なのかもしれません」

トロア「私もフォローはしますが、店主殿、あなたは特にものまね士殿の健康状態に細心の注意を払うこと。……いいですね?」

ものまね士「トロアさんっ!」パァァ

店主「ああ、もちろん! ありがとう、トロア!」


ここまでです
ミ○○タが忙しくてなかなか物語が進まない…

ー 月の地下中心核 ー


…ドゴオオオオンッ!!



貴音「く……!」

ズザザザ…!



律子「貴音っ!」


小鳥「人の心配してる場合じゃありませんよ、律子さん?」ブンッ


律子「!」


ズドオオオオンッ!!



律子「……っ!」ヨロッ

律子「くぅ……! なんて破壊力……」チャキッ


律子「はああああっ!」タタタ…

律子「せいっ!」ブンッ


小鳥「うふふ♪」ヒョイッ


律子「やっ!」ブンッ


小鳥「残念♪」ヒョイッ

小鳥「それっ!」ブンッ


ズドオオオンッ!!


律子「う……!」ズザザザッ



貴音「……ぶりざが!」バッ

コォォ…シャキィィン!!



小鳥「……ふんっ!!」

パリンッ



小鳥「そんなものですか? こんなんじゃウォームアップにもなりませんよ?」



律子「…………ふぅ」チャキッ

貴音「けあるが」

シャララーン! キラキラキラ…!

律子「……ありがと、貴音」

律子「わかってたけど、やっぱり分身とは比べものにならない強さね……」

貴音「こうしてこちらに態勢を立て直す猶予を与えるのも、おそらくは小鳥嬢の絶対的な自信からくるものでしょう」

律子「完全になめられてるってことか……」



小鳥「律子さんも貴音ちゃんも、まだ全力じゃないですよね?」

小鳥「この期に及んで出し惜しみなんてしてたら、実力を発揮する前に退場することになっちゃいますよ?」



律子「…………ふむ」

貴音「……律子嬢」

律子「うん、わかってる。みんなが来る前にやられるのはちょっとカッコ悪いわよね」

律子「……やるだけやってみましょ!」チャキッ

貴音「……ええ!」



小鳥「さあ、次行きますよっ!!」ダッ

タタタ…



律子「よしっ!」チャキッ



…シュンッーー



律子「! 消えた!?」



「ーーせええぇぇぇいッッ!!」ブンッ



律子「くっ!」バッ



ドゴオオオォォオンッッ!!!



…スタッ

小鳥「………」

小鳥「…………ふふっ♪」ガシッ


貴音「……!」

小鳥「油断も隙もないわね、貴音ちゃん。メガフレアを撃つつもりだったのかしら?」



貴音「…………ふふふっ」ニコッ

ーーパシュンッ


小鳥「っ! 分身!?」



貴音「わたくしはこちらです、小鳥嬢」ゴゴゴゴ



小鳥「しまった! こんな初歩的な手に!」




貴音「貴女に受け切ることが出来ますか? わたくしのーー」



小鳥「…………なーんてね♪」ダッ

フッーー



貴音「! 速いっ……!」



ーーシュンッ

スタッ

小鳥「流石にこんな手には引っ掛からないわよ?」ガシッ



貴音「くっ……!」



「…………無双、稲妻突きッ!!」


ズカガガドゴオオオンッ!!!



小鳥「きゃあっ!?」

ズザザザッ!



…スタッ

律子「……よし、噛み合ってきたわね」

貴音「……ええ。まずは一撃」



小鳥「くぅ~~っ! 貴音ちゃんが本命だと思ったけど最初から律子さんが本命だったのね~!」

小鳥「なかなかやるじゃない……!」



P「………」

P(……うん。三人とも動きがめちゃくちゃ速すぎて全然目が追いつかないぞ)

P(ちゃんと見届けられるのかなぁ、俺……)



小鳥「あ、でも今の攻撃、痛くもかゆくもありませんでしたよ?」



律子「……まだまだ、これからです!」




貴音「…………!」ゴゴゴゴ



小鳥「………」

小鳥(貴音ちゃんが今度こそメガフレアを撃ってくるつもりみたいね……)

小鳥(そう簡単には撃たせないわよ……!)

小鳥「……!」ダッ



…ザッ

律子「…………っと、ここは通行止めですよ!」チャキッ



小鳥「止められるんですか?」
 


律子「止めてみせます!」



小鳥「はっ!」ダッ



律子「ふっ!」ヒョイッ


律子「……死兆の星の七つの影の、経絡を断つ……!」ゴゴゴゴ


小鳥「!」


律子「……北斗、骨砕打ッ!!」ブンッ

ズドドドドドドッ!!!



キィンッ!! バキィンッ!!

…ガキィンッ!!


小鳥「くっ……!」




小鳥「ふぅ、北斗七星になぞらえた七連撃、なかなかの技です! でも全部防ぎきりましたよ!」



律子「大気満たす力震え……我が腕をして、閃光とならんっ!」チャキッ



小鳥「ちょっ……連続!?」



律子「無双……稲妻突きッ!!」ブンッ



小鳥「あわわわっ!」ダッ



ズガガガドゴオオォンッ!!!



小鳥「……危なかった~」

 

律子「……貴音っ!」



貴音「……夜闇の翼の竜よ、怒れしば我とともに……」

貴音「胸中に眠る星の火よっ……!」ゴゴゴゴ



小鳥「くっ! さっきからいちいち詠唱がカッコいい!」



律子「いや、そこ反応するの……」


貴音「……めがふれあ!!」バッ


ブゥゥゥン…


ーーカッ!!


ズドドドドドドオオオンッッ…!!!





律子「これが、メガフレア……。私は見るの初めてだけど、本当に凄まじい魔法ね……」

貴音「これでもわたくしの最強の魔法なのですが……。しかし小鳥嬢はまだまだ余裕がありそうでしたね」

律子「あはは……。まあ、ああいう反応するところがまた小鳥さんっぽいっていうか」

貴音「……とりあえずは上出来、といったところでしょうか?」

律子「小鳥さんがまだ本気じゃないことを差し引いても、私たち二人でここまで善戦できるなんて思わなかったわ」

律子「上出来以上の収穫じゃないかしら」

貴音「律子嬢と共に戦うのが初めてではないからでしょうか……。貴女の隣は戦いやすいように感じられます」

貴音「普段以上の力を出せているならば、それはきっと律子嬢のおかげですね」ニコッ

律子「ふふっ、嬉しいこと言ってくれるじゃない。でも、それは私にとっても同じかもしれないわ」



律子「………」チラッ



P「………」



律子(プロデューサー殿はさっきからずっとだんまりか……)

律子(私たちの戦いが正しいかどうか、意見を聞きたかったけど……)

律子(……ううん、甘えちゃダメね)

律子(プロデューサーに見ていてもらいましょう。私たちの戦いを……!)



P(律子、貴音……本当にたくましくなったな)

P(本来なら、声援のひとつでも送ってやりたいところだ)

P(でもそれは出来ない。どちらか片方の味方をすることは出来ない。俺は両方の味方でありたいから)

P(みんなの戦いを見届けること。それが、この世界で招かれざる存在である俺の戦いだって思うから……)



貴音(……思えば、一番難儀な立場にいるのがプロデューサーなのですね)

貴音(小鳥嬢も含めた皆を大切に思うからこそ、どちらにも肩入れできない)

貴音(プロデューサーの優しき心根を思えば、まこと、胸が痛む思いです)

貴音(……ですが、どうか忘れないでください)

貴音(貴方がいてくれること、見守っていてくれることが、わたくしたちに大きな安心を与えてくれているという事実を……)



律子「……さて、小鳥さんはそろそろ復活してくるかしら」キョロキョロ


貴音「……っ! 律子嬢!」

律子「えっ?」



「…………フレア!」


ブゥゥゥン…


律子「しまっ……!」


ズバババババッ!!

ドゴオオオォォォオオンッッ!!!




律子「っ……つぅ……! 油断したわ……!」ヨロッ



小鳥「……ふ、うふふふっ……」

小鳥「ジョブチェンジしたばっかりなのに、もう聖剣技をしっかり使いこなすなんて……」

小鳥「律子さん、なかなかやりますね!」

小鳥「それに貴音ちゃん、以前よりさらに威力を上げたようね? 結構効いたわよ、今のは」



貴音「元はといえば、ばはむーと殿と渡り合うために身につけた魔法ですが……」

貴音「今は、貴女と戦うためにある力と言えましょう」

貴音「それにめがふれあは、ある意味ではわたくしにとって因縁の魔法でもあります」



小鳥「………」

小鳥「そんな皮肉言ったって、謝ったりなんかしないわよ?」



貴音「……『お前との時間は、悪いものではなかった』」



小鳥「…………へ?」



貴音「天国から貴女への言伝です」



小鳥「天国から……? ……あっ」



貴音「あの方がここで貴女と共に過ごした時間がどの様なものだったかは、わたくしには知る由もありません」

貴音「その時間があの方にとっても小鳥嬢にとっても良きものだったならば、わたくしはそれを嬉しく思う。……ただ、それだけです」



小鳥「貴音ちゃん……」



律子「さ、戦いを続けましょう、小鳥さん!」チャキッ



小鳥(貴音ちゃんとバハムートさんのラブロマンスかぁ……。すっごい気になるなぁ)

小鳥(ああもう、こんなことならプロデューサーさんと一緒に貴音ちゃんの戦いを見ておけばよかった!)



律子「……小鳥さん?」



小鳥(それにしても……律子さんをやり過ごしても後ろに控えた貴音ちゃんのメガフレアが刺さる……。かと言って貴音ちゃんが囮の場合もある……)

小鳥(加えて律子さんは接近戦だけじゃなく聖剣技も厄介、かぁ……)



律子「……おーい!」



小鳥(なかなかいいコンビね、りつたか……)

小鳥(りつ×たか……たか×りつ……)ブツブツ



律子「こらー!! 戦いの最中に妄想しないの!!」



小鳥「……はっ! い、いけない、久々にやっちゃった!」



律子「……まったく、こんな時まで」

律子「ホント、小鳥さんはそうやって一人で楽しむのが得意ですよね」



小鳥「そ、それはその……妄想は私にとって特技というか、むしろ宿命というか……」



律子「一人で完結しないでくださいよ。私も貴音もいるんですから」



小鳥「えっ……?」



律子「傍から見ればちょっと激しいキャットファイトに見えるかもしれませんけど、これでもあなたとの戦いを楽しんでるつもりなんですよ?」

律子「私も、もちろん貴音も」

貴音「ええ」コクリ



P(二人とも……)



律子「だから、小鳥さんも楽しんでください」

律子「……いいえ、小鳥さんも楽しめるようにしてみせますから!」



小鳥「………」



小鳥「……分かりました。それじゃ、私ももう少し本気を出すことにしますね? 二人だけで私に勝てるなんて勘違いしてもらっても困りますし」



律子「ええ、望むところです!」チャキッ

貴音「………」スッ



小鳥(私に、戦いを楽しめですって……?)

小鳥(律子さんも貴音ちゃんも全然分かってない)

小鳥(私はラスボスなのよ……? このゲームにおいて倒されるべくして存在している役なのよ……?)

小鳥(……そんなの、楽しめるわけないじゃない……!)




小鳥「……それじゃ、続きをしましょうか……」ゴゴゴゴ



貴音(威圧感が、更に増した……)

律子(ここからは簡単にはいかないかもね……)



小鳥「……ああそうそう、前に私が律子さんに言ったこと、覚えてますか?」



律子「小鳥さんが私に? 何でしたっけ?」



小鳥「……『本気で来てくれないと、死にますよ』?」



律子「…………え」



ー 月の地下渓谷 B8F ー


響「………」



ザァァ…




響「…………はぁ」ガックリ


響「もー、この階も水浸しになってるぞ~……」

響「きっと、やよいが戦ってた上の階から流れ込んできてるんだよね……」

伊織「………」グッタリ

やよい「……zzZ」



魔物「ガアア!」ヌッ



響「うわあっ!?」


魔物「ガアアアッ!」ブンッ

ザシュッ!

響「ぐっ……!」ヨロッ

響「このーーっ!!」ビュンッ

ドゴォ!!


魔物「グガアッ!?」ヨロッ


響「二人は自分が守るっ!」

響「たあああっ!!」

バキッ!! ドガッ!!


…ドサッ

魔物「」


響「…………ふぅ」

響「魔物も次々に湧いてくるし、ぐずぐずしていられないな」

響「今回はドラ左衛門がいないから水を凍らせて渡るのは無理か……」

響「自力で泳いで行くしかないみたいだな」チラッ

響「伊織、やよい、ちょっと濡れるけど我慢してね?」

…ザブザブ



ー 月の地下渓谷 B9F ー


響「……はぁ、はぁ……」フラフラ

響「水浸しの階が終わったら今度は足場がボロボロのアスレチックか……」

響「さすがに……二人抱えてのトライアスロンはキツいものがあるぞ……」

トボトボ…



魔物1「グルルッ!」ヌッ

魔物2「ガルルッ!」ヌッ



響「ああもう! また!」

響「二人とも、ちょっとここで待ってて。すぐ片付けてくるから」スッ

ドサ



響「来いっ!」



魔物1「グルルルッ!」バッ



響「ほっ……」ヒョイッ

響「……はぁっ!!」クルッ

ドゴォ!!


魔物1「グッ……!」ヨロッ



魔物2「ガルァ!!」ブンッ


ガシッ!


響「く……!」

響「せいっ!」

ドガッ!!


魔物2「ガッ……!」ヨロッ




響「くそー、ナンクル砲さえ使えればこんなヤツら一撃なんだけど、体力を消耗しすぎてると使えないみたいなんだよなー」

響「地道に攻撃して倒すしかないか」

響「はあああっ!!」ダッ

タタタ…


響「……うわっ!?」ズルッ


魔物1「グルルァ!!」ブンッ

ズザシュッ!!


響「うあっ……!!」ヨロッ


魔物2「ガルルル!!」

タタタ…



響「はぁ、はぁ……。あっ、もう一体が伊織とやよいの方に!!」

響「こらー! そっちはダメー!!」ダッ

タタタ…



魔物2「ガルルッ!!」



響「くそぉ! 間に合わないッ!!」



魔物2「ガルッ!!」ブンッ



伊織「………」グッタリ

やよい「……zzZ」



 
響「やめろーーーーッ!!!」




「…………ファイガッ!!」

ゴオオオッ…!!



響「…………えっ?」




ゴオオオォォオオ!!!

魔物2「グギャアアア!?」



真美「おおっと、亜美くんのキョーレツな攻撃! 魔物くんまともにくらってしまったァ!」

亜美「最強の美少女魔道士亜美、さっそうと登場っ!」ビシッ



響「……亜美! 真美!」パァァ



魔物1「グルルァ!!」バッ



響「うわっ!」



真美「……ストップ!」バッ

ピキーンッ!


魔物1「」ピタッ


真美「トドメだ、亜美ー!」



亜美「……おっけー!」

亜美「うなれ! ほしくずのロッドー!!」シャン


ヒュー… ヒュー…


ズドドドオオオンッ!!!


…ドサドサッ

魔物1「」

魔物2「」



亜美「よっしゃ!」

真美「ひびきーん! ヘーキかーい!」


響「うん、なんとか……」



真美「…………ケアルガ!」

シャララーン! キラキラキラ…!

響「助かったぞ……ありがと、二人とも」

亜美「もしかして、危ないところだった?」

響「うん、かなり。……って、そうだ! 伊織が大変なんだ!」

真美「そーいえば、やよいっちといおりんはどうしちゃったの?」チラッ

伊織「………」グッタリ

やよい「……zzZ」

響「やよいは使い果たした魔力を取り戻すために眠ってるだけらしい。魔物が言ってた」

響「でも、伊織は体がマヒしてる。早く治してあげないとまずいみたいなんだ」

亜美「ふむふむ、マヒね。真美、頼んだよっ!」

真美「おまかせ! …………エスナ!」

シャララーン!



伊織「………」ピクッ

伊織「………」グッタリ



亜美「…………あり?」

響「だ……ダメなのか?」

真美「う~ん……効いてないはずないと思うんだけどな」


真美「エスナ!」

シャララーン!


伊織「………」グッタリ


真美「超・エスナ!」バッ


伊織「………」グッタリ


真美「ぬぅ、なぜじゃ……」



亜美「いおりん、いったいどんなムチャしたんだろ……」

響「頼む真美、伊織を治してあげてよ!」

真美「………」


真美「うん、そーだね。どーやらコレは真美のシゴトっぽいよ」

真美「やよいっちといおりんは真美が引き受ける。だから……」ゴゴゴゴ







真美「二人とも、ここは真美にまかせて先に行ってッ!!」ビシィッ






響「えっ……?」

亜美「ほーう……?」ニヤリ



真美(………………決まったっ……!)ジーン



響「え、え~と……」

響「それってつまり、真美が伊織とやよいの面倒をひとりで見るってこと? でも、真美ひとりに大変な役目を負わせられない。自分も残るぞ!」

真美「じゃあひびきんに問題です。真美のジョブは何でしょうか?」

真美「1、美少女白魔道士。2、せくちー白魔道士。3、ヘロモンバリバリ白魔道士」

響「えっと……2と3はないから、1?」

真美「ブー! 正解は全部でしたー」

響「ええぇ……」

真美「真美はただの美少女じゃない、回復のエキスパンダーなのだよ!」

響「そりゃ、真美が回復のエキスパートなのも知ってるけど、でも……」

真美「だいじょーぶ。真美に任せて。魔物に襲われても真美ならヘーキだし!」

響「えっ? 真美って確かあんまり攻撃手段ないよね? どうやって一人で魔物を追い払うの?」

真美「そんなの決まってるじゃん。モチロンうそな…………じゃなくて、ひびきんも知らないチョーすごい魔法だよ!」

響「でも、それならせめてやよいだけでも連れて行くさー。もしかしたら途中で起きるかもしれないし」

真美「ううん、MP回復中ならゆっくり寝かせてあげようよ。召喚魔法ってメッチャMP消費するしさ」



真美「ここでみんなでちょびっとだけ休むって作戦ももちろんあるけど、真美たちがラスダンに来てからけっこー時間たってるっぽいよね? もしかしたらもう誰かピヨちゃんと戦ってるかもしんない」

真美「ピヨちゃんと戦うなら少しでも人数多い方がいいはずだよ?」

響「それはそうだけどさ……」



亜美「…………まったく、真美は江戸のシティのちから持ちですなぁ」ニコッ



響「江戸の……何? もしかして縁の下の力持ちのこと?」

亜美「ひびきんのダンナ。ここはひとつ、ウチの姉を信じて、顔を立ててはくれねぇかい? こう見えてコイツもここまで戦ってきた立派な戦士だ……」

亜美「きっとお役目を果たして、また元気な顔を見せてくれまさァ……」シミジミ

響「うぎゃ~!! も~、なんなのその芝居~!」

真美「ひびきん、迷ってるヒマはないっぽいよ!」

亜美「タイムイズマネーロンダリングなんだよ!」

響「ロンダリングは必要ないでしょ!」



響「う~……」

亜美「じ~っ」

真美「じ~っ」


響「はぁ……。わかった、真美の言うとおりにするぞ」

響「でもその代わり、真美もちゃんと無事でいてくれないとダメだからね!」

真美「ありがてぇ、ひびきんのダンナ!」

亜美「真美、死ぬなよ……!」

真美「てやんでぃ! あたぼーよ!」



響「じゃあ……」

亜美「また……」

真美「後で!」


タタタ…



ー 月の地下渓谷 B10F ー



魔物1「ウゴオオオ!!」ブンッ


千早「……ふっ!」ヒョイッ

クルンッ

千早「……はっ!!」ブンッ

ズドッ!!


…ドサッ

魔物1「」



魔物2「ガウウウ!!」バッ


美希「……!」ギリッ

美希「……えいっ!!」ヒュンッ

ドスドスッ!!


…ドサッ

魔物2「」



千早「…………ふぅ」


美希「あっ……ねえ見て、千早さん!」スッ

千早「えっ?」チラッ



ヒュゥゥ…



千早「これは……」

美希「すごいね、下に降りる階段がごっそりなくなってるの」

千早「ここでもかなり激しい戦いがあったみたいね……」

美希「千早さん、ここはミキに任せてなの! ミキのレビテトなら安全に下まで降りられるよ☆」

千早「待って、美希。あなたの魔力はなるべく温存しておいた方がいいと思うわ」

千早「……ちょっと失礼するわね」ダキッ

美希「えっ?」

美希「……あはっ☆ まさか千早さんにお姫様抱っこされる日が来るとは思わなかったの♪」

千早「しっかり捕まっていてね」

…タンッ フワッ



…スタッ


美希「ありがとうなの、千早さん」

千早「いいえ。これくらいしか私にできることはないから」

美希「これくらい、なんてそんなことないよ? 高いところから飛び降りても怪我しないなんてスゴイの!」

千早「でも……私は美希みたいに回復魔法が使えるわけでもないし、春香や真のような派手な技も持っていないわ」

美希「ん~……」

美希「色んなことをできちゃうのは、なんとなく千早さんっぽくないの」

千早「え……?」

美希「ミキ的には、ひとつのことに集中して誰にも負けないくらい極める方が千早さんらしいって思うな☆」

千早「……私らしい、か……」

美希「千早さん、覚えてる? この世界に来たばっかりの頃に、ばろんのお城でミキを助けるために、千早さんがジャンプで跳んで来てくれたよね?」

千早「そんなこともあったわね。……ふふっ、なんだか懐かしいわ」

美希「あの時と同じなの。千早さんのジャンプは敵を攻撃するだけじゃない。誰かを助けることだってできるんだよ?」

千早「美希……」

千早「ありがとう、美希」

美希「どういたしましてなの☆」


ー 月の地下渓谷 B11F ー


千早「………」

美希「………」



千早「ここは……なんだか静かね」

美希「うん。ゼンゼン戦ったあとがないの。さっきの階とは大違いってカンジ」

美希「ここでは戦いはなかったのかな?」

千早「わからない。けど、先に進んだ律子たちが見当たらないということは……」

美希「……もう、小鳥のところに到着してる、ってことだよね」

千早「………」

美希「………」

スタスタ…



美希「……千早さん、緊張してる?」

千早「どうかしら。少なくとも、さっきの美希の言葉で気持ちが軽くなったのは確かね」

美希「……そっか」

千早「………」

千早「そういえば美希、二つ前の階で何か言いかけてなかった?」

美希「ん……あのね」



美希(……ミキが戦った魔物さんが言ってた。ミキたちは、小鳥に殺されるって)

美希(小鳥がどんなこと考えてミキたちを迎えるのかは分からないけど、もし、最後の戦いで本当に誰かが死んじゃうようなことがあったら……)

美希(そんなことがあったら……)



美希「………」ブンブン

千早「……美希?」

美希「あのね、春香の言ってたとおり、最後の戦い、せーいっぱい楽しもうねって。そう言おうと思ったの」

千早「……ええ。その意見には心から賛成するわ。おそらくそれは、私たちにとっても音無さんにとっても必要なことだと思うから」

千早「行きましょう美希。私たちの、最後のステージへ!」

美希「うんっ!」

タタタ…



ここまでです
まだ生きててよかった

これラスボスはゼムスじゃなく正確にはゼロムスだがぴよちゃんどっちなんだ
ゼムスだったらゴルベーザとフースーヤーのWメテオで倒されたし

貴音「ぱわぁをすべてめておに!」
律子「いいですとも!」
貴律「Wメテオ(めてお)!」
うん…貴音のせいでシリアスにならない(笑)

過去スレ読んだりしてて思ったこと二つある
1つ目は小鳥さんは「アイドル」を育成してたのになんで「アイドル」らしいバトルをしないの?
なんのためにダンスやらボーカルやらやってたの?
2つ目は前スレでスーさんがあずささんに「あの時あずさの肉体<は>死んでなかった」言ったけど逆に言うと「脳は死んでいた」つまり「脳死」状態ってことじゃない?
だったら「この世界で死んだら元の世界へ帰る」ルールであずささんは事務所に戻ってるんじゃ…

来ない理由は考えられるとしたら以下のどれか
Ⅰ単純に忘れてる(前例あり)
Ⅱ飽きたから(続き思い浮かばないから)投げた
Ⅲ↑におかしい(?)部分指摘され書くの面倒になった
Ⅳ管理人がいないからいつまでも残るので甘えで放置(いつか書けばいいや的な考えで)
これのどれかだ

ー 月の地下中心核 ー


美希「ここが……月の真ん中?」キョロキョロ

千早「そうだと思う。ここに音無さんとプロデューサーがいるはずだわ」



…ズドドドドドドッ!!!



千早「!!」

美希「千早さん、あれ!」スッ








小鳥「まだ休むのは早いですよ……! …………メテオ!!」



ヒュー… ヒュー…  ヒュー…

ヒュー…  ヒュー…



ズドドドドドドオオンッッ!!!




律子「ぐぅ……っ……!」

貴音「く……!」







美希「律子、貴音!」

千早「っ……!」

タタタ…



小鳥「……あら、援軍が来ましたね?」チラッ

P(千早、美希……!)



千早「二人とも!」

美希「ケアルガ!」

シャララーン! キラキラキラ…!


律子「あなたたち……!」

貴音「助かりました……」

千早「遅れてごめんなさい」

律子「いいえ。二人とも無事で何よりよ」

美希(……うん。ハニーもちゃんといるみたいなの)

美希(あれ、でも……)

美希「………」キョロキョロ

貴音「……美希? どうしたのです?」

美希「ねえ、春香は? 春香はどこ?」

律子「春香も無事よ。諸事情でちょっとここに来るのは遅れるけどね」

律子「それよりも今は……」チラッ



小鳥「千早ちゃん美希ちゃん合流ですね♪ これで少しはまともに戦えるようになるかしら?」



千早「音無さん……」



小鳥「いらっしゃい、千早ちゃんに美希ちゃん♪」



千早「お久しぶりです」ペコリ

美希「………」

美希(……いつもと同じ小鳥……だよね?)


千早「苦戦、しているのね」

律子「……ええ、そうね」

律子(小鳥さんが少し本気を出しただけで手も足も出なくなった……。わかってたことだけど、今までのは単なる様子見だったのね……)

律子(二人が来てくれたのはとても心強い)

律子(でも、今は戦力差を考えるよりも優先することがある)


千早「律子と四条さんは下がっていて。ここは私たちが前に出るわ」チャキッ

律子「……待って」

千早「律子? まさか止めるつもりなの? 私は……」

律子「そうじゃないの。千早、この戦いで一番重要なことは?」

千早「…………ふふっ」ニコッ

千早「大丈夫よ、律子。私も美希も、たぶん他のみんなもそれは十分理解していると思うから」

千早「……美希、行きましょう!」

美希「はいなの!」

タタタ…



貴音「……どうやら、心配は必要ありませんでしたね」

律子「そうね。それじゃ私たちも続くわよ!」

貴音「……はい!」

タタタ…




小鳥(さて、四人でどこまで持ってくれるかしらね……)



千早「はああああっ!」

タタタ…



小鳥(千早ちゃんと美希ちゃんはどのくらい強いのかな~)


千早「……ふっ!」ブンッ


小鳥「……ふむ」ヒョイッ


千早「やっ……!」ブンッ


小鳥「よっ、と」ヒョイ


千早「はっ!」ブンッ


小鳥「なるほど」ヒョイ




…スタッ



小鳥「……うん、30点ってところね」



美希「………」



小鳥(美希ちゃんは動かない……か。完全にサポート態勢なのかな?)



小鳥「今度はこっちから行くわっ!」

ダッ…!

 
千早「!」


美希「プロテス!」バッ

パキーン!


…ガキィン!!


千早「くっ……!」ズザザザ

千早(速い……! それになんて重い一撃……!)

千早(美希のプロテスがあってこの威力……)


小鳥「これくらいで驚いてちゃダメよ~? 律子さんや貴音ちゃんですら今の私には手も足も出ないんだからね?」

小鳥「………!」ゴゴゴゴ


千早「魔法……!」チャキッ


美希「シェルっ!」

ポワーン!


小鳥「……フレア!」バッ


ブゥゥゥン…


ドゴオオオオオオンッ!!!





千早「くっ…………!」ヨロッ

美希「っ……千早さん、今回復するの!」バッ

千早「……いいえ、私ならまだ大丈夫」

美希「え、でも……」

千早「それより、来るわ!」



小鳥「とりゃーーっ!!」

ヒュンーー


ドガァッ!!


千早「うっ……!」ヨロッ


美希「千早さん! ケアルガ!」バッ

シャララーン!キラキラキラ…!


小鳥「せぇいっ!!」ブンッ


美希「あぅ……!」ヨロッ


千早「はあっ!」ブンッ

ガキィンッ!!

小鳥「……ほいっと」グイッ


千早「っ……!」ズザザッ


美希「ヘイスト!」バッ

カタカタ…シャキーン!!


千早「……はっ!」ブンッ


小鳥「わっ……!」

ガキィンッ!!


律子「大気満たす力震え……我が腕をして閃光とならん!」チャキッ

律子「無双……稲妻突きッ!!」ブンッ

ズガガドゴオオオンッ!!!


小鳥「ぬぅっ……!」ズザザザ



貴音「滅びゆく肉体に暗黒神の名を刻め……」ゴゴゴゴ

貴音「始原の炎、甦らん! ……ふれあ!」バッ


ブゥゥゥン…



小鳥「きゃっ……!」


ドゴオオオオオオンッ!!!







小鳥「………」



小鳥「うーん…………ぬるいっ!」

小鳥「……はっ!」ダッ


千早「!」


小鳥「てえええいっ!!」


ドガッ!! バキッ!! ドゴッ!! ベキッ!!



美希「あうっ……!」

貴音「うっ……!」

千早「くっ……!」

律子「きゃっ……!」


ヒューー ドサドサドサッ



小鳥「ふー……」コキッ

小鳥「四人でその程度? 私、まだ50%の力も出してませんよ?」
  


律子「く……流石に、強い……」

貴音「攻撃が効いている気配がない……」

貴音「回復します」バッ

美希「ううん、回復も補助も全部ミキがやるの。貴音は攻撃に専念してなの」

貴音「美希……。分かりました」

千早「………」




小鳥(四対一っていう精神的余裕があったとしても、攻撃が効いてないっていうのは律子さんたちにとってかなりキツいんじゃないかしらね)

小鳥(さて……)



千早「はあっ……!」ダッ



小鳥(お、千早ちゃんに怯んだ様子はない?)

小鳥「ふふっ」ダッ



千早「はっ……!」ブンッ


ガキィンッ!! バキィンッ!!


小鳥「ほっ、よっ……」

小鳥「千早ちゃんは私との実力差をあんまり気にしてないのかな?」

小鳥「でも……」ブンッ

ドゴォ!!


千早「うっ……!」ヨロッ


小鳥「これじゃ、律子さんの方がまだマシよ?」ブンッ



美希「千早さん! プロテス!」バッ


バキィンッ!!



千早「……!」ヨロッ



…ザッ


千早「……はっ!」タンッ 

フワッ…



小鳥「!」

小鳥「出たわねジャンプ……!」

小鳥(これって実はけっこう厄介な存在なのよねー)

小鳥(…………よし!)



小鳥「…………はっ!」

タンッ フワッ…



千早「!」


千早(音無さんもジャンプを……!?)

千早(でも……空中戦で負けるわけにはいかないっ……!)



小鳥「はああああっ!!」



律子「千早!」




ズザシュッーー!!




…スタッ




千早「………」チャキッ



小鳥「……っとと」ヨロッ

小鳥「むぅ、負けちゃったかぁ……」

小鳥「空中戦に関しては流石の貫禄ね。ダメージは全然なかったけどなかなかの気迫だったわよ? 千早ちゃん」



千早「いえ、今のは美希のフォローがあったからです」

千早「続けましょう、音無さん」



小鳥「………」

小鳥「……フォロー、ね」



美希「………」

美希(……ミキの考えすぎだったの)

美希(小鳥はすっごく強いみたいだけど、千早さんも貴音も律子も負けてない)

美希(このペースなら、ミキたちの誰かが死んじゃうなんて、そんなのありえないってカンジ)

美希(……うん、大丈夫!)

ー 月の地下渓谷 B10F ー


タタタ…

響「……そういえばさ、自分と亜美でペアになるのも久々だよね」

亜美「そだねー。えっと……亜美とひびきんとえんたろで巨人と戦った時ぶりだっけ?」

響「あの時は自分、あんまりみんなの役に立ててなかったけど、今回の戦いは期待しててよね!」

亜美「おや? 何か自信がつくようなイベントがあったの?」

響「ふふん! 自分、こないだすごい技覚えたんだ!」

亜美「え~どんな技!?」

響「それは後のお楽しみ! たぶん亜美も見たらびっくりすると思うぞ!」

亜美「そっかぁ、ひびきんもちゃーんと成長してるんだねぇ」

亜美「巨人相手に逃げ回ることしかできなかったあのひびきんがねぇ……」シミジミ

響「に、逃げ回るって……それは亜美も同じでしょ!」

亜美「……いかんな、年を取るとどうも涙腺が弱くなってしまって……グスン」

響「も~、そういう小芝居はいいから!」



亜美「んでも、すごい技持ってるのはひびきんだけじゃないかんね?」

響「えっ?」 

亜美「この亜美も、ついに封印してた力を使う時が来たってことなのだよ!」 

響「へぇ~、亜美にもまだとっておきの技があったのかー」

亜美「まあね~」

亜美(……って言っても、技としてはあんましカッコよくはないけど……)


『……そして、亜美には亜美だけの戦い方というものが必ずあるはずなのです』


亜美(亜美は亜美だけの戦い方をするよ。お姫ちん師匠……いや、師匠ちん!)


響「それじゃ、最後の戦いでどっちが活躍するか競争だな!」

亜美「モチ受けて立つよ!」

亜美「亜美はメッチャ楽しんで、その上でピヨちゃんだけじゃなくて全員に勝つッ!」

響「よーし、楽しみになってきたぞ~っ!!」



ー 月の地下渓谷 B9F ー


真美「…………さて、と」チラッ




伊織「………」グッタリ








真美「そろそろおシゴト、はじめますかね」



真美「えー、コホン」

真美「それではこれから、いおりんのマヒを治すオペっぽいのを開始します」


真美「メス」

魔物「ガル」スッ

真美「鉗子」

魔物「ガル」スッ

真美「………」ゴソゴソ

真美「汗」

魔物「ガル」フキフキ

真美「あ、どうも」

真美「………」ゴソゴソ

真美「止血鉗子」

魔物「ガル」スッ

真美「………」ゴソゴソ

真美「これは……! まずい、血圧が低下しているッ!」

真美「汗!」

魔物「ガル」フキフキ

真美「………」ゴソゴソ

真美「………」

真美「………」

真美「………………………」








真美「………………いやなんでいるの!!?」ビシッ

魔物「!?」



真美「ごていねいにノッてくれてありがとうね!」

真美「けど今のは真美がソレっぽいフインキ出そうとしてやっただけだからね!?」

魔物「が、ガル……」ショボン

真美「…………」

真美「………………って、魔物じゃんか~!?」ガビーン



真美「で、出たなーこのー!」

魔物「が、ガルル……」オロオロ

真美「まったくもう! こんな大事な時に~!」



真美「キミ、真美一人になら勝てるって思ってるんでしょ?」

魔物「ガルルッ!?」ブンブン

真美「でもザンネン。こっちにはとっておきがあるもんね!」

真美「くらえー! 必殺、スペシャル真美うそなきー!!」

魔物「っ……!」ビクッ



やよい「だいじょーぶだよ、真美!」



真美「…………へ? やよいっち!?」

真美「起きたんだね!」パァァ



やよい「ごめんね。今までわたしと伊織ちゃんのこと、真美が守ってくれてたんだよね?」

真美「……ふっ、約束だかんね。亜美とひびきんとの。やよいっちといおりんを守るのは真美のシゴトなのだよ!」

やよい「ありがとう、真美!」ニコッ

真美「まだ安心するのは早いですぜ、やよいっち殿。魔物が真美たちのジャマするつもりっぽいよ!」


魔物「が、ガルル……」


やよい「………」



やよい「……ううん、ちがうよ真美」

やよい「そのまものさんは、真美のことをジャマするつもりはないみたい」

真美「……えっ? そーなの? 魔物なのに?」

魔物「ガルッ、ガルッ!」

やよい「……ふむふむ、なるほどー」

やよい「まものさん、前に真美が泣いてるところを見て、真美のファンになったんだって。それで真美をここまでおいかけてきたーって言ってるよ」

真美「へ、へぇ~……そーなんだ……ふーん……」

やよい「真美、ここまでくるのに泣くようなことがあったの?」

真美「え、え~と……あったようななかったような……」

真美「ま、まあアレだよ! やよいっちが心配するようなことじゃないから! ね?」

やよい「? うん、真美がそう言うならいいけど……」


真美「む~……。なーんかモヤっとするけど、でも今はそんなの気にしてる場合じゃないよね」

真美「いおりんを治さなきゃ!」

やよい「わたしも手伝うよ、真美!」グッ

真美「へへっ、やよいっちがいてくれれば勇気百倍ってもんよ!」ニコッ


魔物「ガルッ、ガルルッ……!」

やよい「わぁ、そーなんですか! ありがとーございますっ!」ガルーン

真美「やよいっちさんや? 魔物くんは何て?」

やよい「あのね、『ぼくがまものを近づけさせないから、そのスキにがんばって』だって!」

真美「おおっ! それは助かりんぐだよ!」

真美「しかし真美も話に聞いてはいたけど、ジッサイにこうして見ると魔物と話せるのってすごいよね」

やよい「えへへっ♪ まものさんとお話するのはひさしぶりだから、うれしいかも!」

真美「ふむ…………」

真美「ま、せっかく真美たちに協力してくれるって言ってくれてるんだし、お言葉に甘えちゃいますかね!」

真美「そんじゃヨロシクたのんだよ、魔物くん!」

魔物「が、ガルルッ!」パァァ



真美「二人とも、準備はOK?」チラッ

やよい「うんっ!」

魔物「ガルッ!」シュタッ



真美「いおりん救出ミッション、開始だよっ!」



真美「はあぁぁぁぁ……!!」ゴゴゴゴ

真美「波動に揺れる大気……その風の腕で傷つける命を癒せっ……!」



真美「エスナ……………………×10っ!!」バッ

ポワポワポワーン…!



やよい「はわっ! いっぺんに10個も……!」


真美「くっ……!」ヨロッ


やよい「真美っ!」ダキッ

真美「カンタンな魔法だけど、さすがに10コはキツかったかも……!」

真美「でも、ふつうのエスナじゃ治らなかったし、今のいおりん治すにはこんくらいやらないと……!」

真美「もってくれー! 真美の魔力よ!」バッ



…ギュッ

真美「やよいっち……?」

やよい「わたしのまりょく、真美にわけてあげるね!」

パァァァーー!!

真美「うおおお……! なんかメッチャ力がわいてくるっぽいよー!」

真美「これならやれそうかも!」



真美「いっけえぇぇぇぇっ!!」

真美「超ハイパーファイナルアルティメットエターナルエスナーーーーッッ!!」

パァァァーー!!


やよい「!!」



シャラララーン!! キラキラキラ…!!


超遅れてごめんなさい
あと、どこで勘違いさせてしまったかわかりませんが、>>74にある「ゲームの世界で力尽きたら元の世界に帰る」というルールはありません
元の世界へ帰る方法はあくまでゲームクリアのみです

ー 月の地下中心核 ー



キィン!! ガキィンッ!!


千早「はっ……!」ブンッ


小鳥(四人になってからは、千早ちゃんが率先して向かって来てる……)

小鳥(切り込み隊長って感じね)

小鳥(まあ、50%弱の力を開放した今の私にとって千早ちゃんの攻撃が脅威になるわけじゃない。むしろ単体の攻撃力なら、律子さんや貴音ちゃんの方が厄介……)


小鳥「たあっ!」ブンッ


ドゴォッ!!



千早「くっ……!」ヨロッ



律子「……せいっ!!」ブンッ


ザシュッ!!


小鳥「っ……!」


貴音「………!」ゴゴゴゴ


小鳥「魔法……!」ダッ




千早「…………ふっ!」タンッ

フワッ…


小鳥(ジャンプ……! 貴音ちゃんと千早ちゃん、どっちを攻撃する……?)



小鳥(……いいえ、ここは全員まとめて!)

小鳥「はああああ……!」ゴゴゴゴ



美希「ミキの方が早いの!」

美希「…………ホーリー!」バッ


キラキラキラ…!


小鳥「美希ちゃん!? サポートじゃなかったの……!?」


ズドドドドドッ!!!


小鳥「くぅ……!」ズザザザ



貴音「…………赦されざる者の頭上に、星砕け降り注げ……!」

貴音「…………めてお!」



ヒュー…… ヒュー… ヒュー…

ヒュー… ヒュー… ヒュー…



ズドドドドドドドッ!!!



小鳥「ぐぬぬぬ……!」

小鳥「こ、こしゃくな~っ……!」



P(これは……もしかして……)


小鳥(ホーリーに関しては貴音ちゃんより美希ちゃんの方が威力は上か……)

小鳥(でも、貴音ちゃんにはメテオとメガフレアがある……。律子さんの聖剣技は言うまでもなく強力な攻撃だし……)

小鳥(千早ちゃんのジャンプ自体には私を脅かすほどの攻撃力はないのよね)

小鳥(なのに……)

小鳥(対空時間があるとはいえ、溜め無しでポンポン跳ばれると瞬間的にこっちの選択肢が増えることになる……)

小鳥(うーん……)



千早「…………はっ!」タンッ

フワッ…



小鳥「! 来るっ……!」



貴音「……!」ゴゴゴゴ

律子「はああああっ!」ダッ

美希「……ヘイスト!」バッ

カタカタ…シャキーン!



小鳥「もうっ……今度はそう上手くはいかないわよっ!」ゴゴゴゴ



小鳥「赦されざる者の頭上に、星砕け降り注げっ……!」

小鳥「…………メテオ!!」バッ



ヒューー… ヒュー… ヒュー…

ヒュー… ヒュー… ヒュー…



千早「っ……!」

律子「く……!」 

貴音「……美希、手伝います!」

美希「うんっ!」

貴音・美希「シェル!!」

ポワーン…!!



ズドドドドドドドドッ!!!




小鳥「………」

小鳥(……そっか、忘れてたわ)

小鳥(真ちゃんや響ちゃんの影に隠れがちだけど、千早ちゃんもスタミナは相当あるんだったわね)

小鳥(律子さんが攻撃力特化の戦士だとしたら、千早ちゃんはスタミナ特化の戦士ってところかしら)

小鳥(私へのダメージは微々たるものだけど、ちょっとずつジワジワ削られていく……。嫌な感じね)



千早「………」チャキッ

千早「…………はっ!」タンッ

フワッ…



小鳥「えっ!? もう立て直したの!?」



律子「二人とも、千早に続くわよ!」ダッ

貴音「ええ!」ダッ

美希「よーしっ!」ダッ



P(……やっぱりそうだ)



P(美希と千早が合流してからも音無さんに対して苦戦しているように見えたけど、少しずつ互角の戦いになりはじめている)

P(いや、たぶんまだいくらか音無さんの方が上なんだろうが、四人の行動に迷いが見られなくなってきた)

P(今の四人は、まるで攻撃のリズムを掴んでいるようだ)

P(そしておそらく、四人にリズムを与えたのは……)チラッ



千早「…………はっ!」

ズザシュッ!!


…スタッ


小鳥「うっ……!」ヨロッ



小鳥「く~~!」



P(千早……。俺には、今のお前が指揮者か何かのように見えるよ)



千早「…………ふぅ」

美希「千早さん、回復するの!」

千早「いえ、私はまだ……」

貴音「油断は禁物です、千早。回復はできる時にしておいた方が良いでしょう」

千早「……そうですね。わかりました」

美希「……ケアルガ!」

シャララーン! キラキラキラ…!



律子「……やっぱりあなたは頼もしいわね」

千早「そう言ってくれるのはありがたいけど……。でも、私は私に出来ることをしているだけよ」

律子「そのあなたに出来ることっていうのが、今の私たちにとってとても心強いのよ?」

千早「そう……」

千早「………」チラッ

律子「……千早?」

千早「今の勢いを止めたくない。……行くわね」

タタタ…


律子「……ホント、こんな時まで自分のペースを崩さないわね、あの子は」

貴音「ですが、それが千早の最大の武器のようにも思えます」

美希「律子、貴音。ミキたちも行くの!」

律子「いいけど、さんを付けなさい」

美希「……む~、こんな時までいつもの律子…さんなの」

貴音「ふふっ、どうやら自分のペースを崩さないのは千早だけではないようですね」ニコッ

律子「……これは一本取られたわ。ふふっ」


タタタ…

千早(みんなと違って、私に出来ることは限られている)

千早(でも、それで構わない)

千早(戦いの前に美希に言われたとおり、一つのことに集中する方が私には向いていると思うから)

千早(……だから)



千早(私は空へ跳び続けるだけ。これまでと同じように……)





千早「空中戦は負けません、音無さん……!」タンッ

フワッ…





小鳥「…………ふーん」

小鳥「少しは楽しめるようになってきたかしらね……!」


ー 次元のはざま ー


クルーヤ「……さて、ハルカにはこれから新たな聖剣技を教えようと思う」

春香「はいっ」

春香「……あれ? でも、聖剣技って4つだけじゃなかったんですか?」

クルーヤ「ああ。君にはまだ教えていない技が一つだけあるんだ」

クルーヤ「そしておそらく、その技を使いこなせなければ、君たちはコトリさんには勝てない」

春香「!」

クルーヤ「ハルカ、準備はいいかい?」

春香「………」

クルーヤ「……ハルカ?」

春香「……すみませんお父さん。その前にちょっといいですか?」

クルーヤ「ああ、何かな?」

春香「お父さんは、少しの間小鳥さんと一緒にいたんですよね?」

クルーヤ「そうだね。試練の山で君と別れ、君たちがここへやって来るまでは、ボクはずっとコトリさんと共に行動していた」

クルーヤ「とはいってもまあ、ボクだけじゃなくてバハムートや親衛隊のみんなも一緒だったんだけどね」

春香「その時のこと、聞かせてほしいんです」

春香「小鳥さんは今までどんな風に過ごしていたのか、私たちの誰も知らないから」

クルーヤ「そういえば、詳しくは知らないけど君たちはコトリさんと知り合いなんだっけ?」

春香「……はい、知り合い……です」

クルーヤ「ふーむ……」



クルーヤ「そうだなぁ……」

クルーヤ「初めて会った時は、コトリさんがびっくりするくらい良い人で驚いたな」

クルーヤ「ちょっと変わってるところもあるけど、一緒にいてすごく楽しかったし、打ち解けるのに時間は掛からなかったよ」

クルーヤ「バハムートもなんだかんだ言いながらコトリさんのことを気に掛けていたようだし、あの人は面倒見もいいから親衛隊の子たちもみんな彼女を慕っていた」

春香「そうなんですか! 良かったぁ……」

春香「あの、ここで小鳥さんやお父さんたちはたくさんおしゃべりしたりしたんですか?」

クルーヤ「うん。たくさん話もしたし、一緒に親衛隊の子たちを鍛えたりもした。あと、毎晩のようにお酒を……あれは楽しかったなぁ」

春香「えっ? お酒?」

クルーヤ「ああいや違う違う! たまにだよたまに。ほ、ほら、大人の付き合いってそういうものだろ?」

春香「は、はぁ」



クルーヤ「そうだ、そういえばたまたま一度だけコトリさんの歌を聴いたことがあったっけな」

クルーヤ「いやぁ、あの時はびっくりしたなぁ……」

春香「小鳥さんが?」

クルーヤ「すごく綺麗な歌声でさ、とっても嬉しそうに歌っていたんだ」

クルーヤ「その光景がこの世のものとは思えないくらい美しくって、ボクもバハムートも思わず感動しちゃったよ」

春香「……そっかぁ、小鳥さん……」

春香「……えへへっ♪」ニコッ

クルーヤ「ん? なんでハルカが嬉しそうにするんだい?」

春香「あっ……え、えっと、みんな楽しそうで良かったなぁって」

クルーヤ「コトリさん自身、ここでの生活を楽しんでいたんじゃないかな。ボクはそう思うよ」

春香(小鳥さん……)



クルーヤ「でも、不思議にも思ったんだ。世界を滅ぼそうとしている人のはずなのに、彼女からは悪意を全く感じられなくて」

春香「それは……」

春香「あの、お父さん。世界を滅ぼそうとしているのは小鳥さんの本意じゃないと思うんです。本当は小鳥さんって、そんなヒドイことできるような人じゃないですし」

クルーヤ「ああ、彼女はとても優しい人だ。それはたぶん、彼女と接した者がみんな思ったことだと思う」

春香「そう、そうなんです! 小鳥さんはとっても優しくて、いつも私たちのことを見守ってくれてて……」

クルーヤ「いつも見守ってる? どういうことだい?」

春香「あっ! そ、その……」

クルーヤ「………」

クルーヤ「……ずっと不思議に思ってた。なぜコトリさんがハルカたちのことを知っているのか。なぜハルカたちがコトリさんのことを知っているのか」

クルーヤ「……話してくれないか。君たちとコトリさんは本当はどういう関係があるんだい?」

春香「………」

クルーヤ「……ハルカ」

春香「………」

春香「小鳥さんは……」

春香「……大切な人、です。小鳥さんは私たちにとって、すごく大切な人なんです」

春香「ごめんなさい。これ以上は事情があって、お父さんでも話せなくて」

クルーヤ「……ただの知り合い、ってわけじゃないんだね」

春香「……はい」


クルーヤ(……じゃあ、今までボクがしてきたことは……)

クルーヤ(……ははっ、とんだ道化だな……)



クルーヤ「……よし、ちょっと横道に逸れちゃったけど、あまり時間もないし今度こそ本題に入ろうか」

春香「はいっ!」

クルーヤ「ハルカ。君は今、4つの聖剣技を使うことができる」

春香「えっと……無双稲妻突き、北斗骨砕打、乱命活殺打、そして不動無明剣ですね」

クルーヤ「これからボクが君に託すのは5つめの技……聖剣技の中でも最終奥義と言われている技だ」

春香「最終奥義……なんかすごそうですね……」ゴクリ

クルーヤ「この技は、既に君が持っている4つの技と違って、発動するのに欠かせないものがある」

春香「欠かせないもの、ですか?」

クルーヤ「それは、明確な意思。決して折れることのない心」

クルーヤ「誰にも負けないくらい、強い想いだ」

春香「……強い、想い……」

クルーヤ「……ハルカ、少し離れていてくれるかい?」チャキッ

春香「あっ、はい」タタタ



クルーヤ「……天の願いを胸に刻んで、心頭滅却……」ゴゴゴゴ



春香「っ……!」ゾクッ



クルーヤ「……聖光、爆裂破ッ!!」ブンッ


キラキラキラ…!!


ズドオオオオオオンッッ!!



春香「これが……聖剣技の最終奥義……」

クルーヤ「ああ。聖光爆裂破。自分のありったけの想いを剣に籠めて放つ技」

クルーヤ「……なんだけど、残念ながらボクはこの技を完璧には使いこなせなかった」

春香「ええっ!? お父さんでも完璧じゃないなんて、そんなに難しい技なんですか!?」

春香「うぅ、私に使いこなせるかなぁ……」

クルーヤ「ある意味ではとても簡単なんだけど、ある意味ではとても難しいんだ」

春香「あ、じゃあもう一回お願いします!」

クルーヤ「えっ? なんで?」

春香「あれっ?」



春香「あのー、これってもしかして、一回見ただけで覚えろってことですか?」

クルーヤ「そうだよ? 今までの技だってボクが口で説明したり何回も練習したりせずに、自然に出来るようになったろ?」

春香「あっ……そう言われればそうでしたね」

春香「でも、一番難しい技なんですよね? あんまり自信ないなぁ……」

クルーヤ「大丈夫さ。一流の聖騎士は技を一度見ただけで覚えてしまうものなんだから」

春香「……私、一流ですかね?」

クルーヤ「もちろんさ!」

春香「えっへへ♪ お父さんにそう言ってもらえたら、なんだかできるような気がしてきました!」ニコッ

クルーヤ(我が娘ながらちょろいなぁ)



春香「でも、意外とあっけないものですねー。最終奥義っていうくらいだから、なんかものすごい修行とか必要なのかと思ってましたけど」

春香「ほら、私がパラディンになる時も試練がありましたし! いやー、あの時が懐かしいな~」

クルーヤ「………」



クルーヤ「…………ねえ、ハルカ」

春香「はい、なんですか?」

クルーヤ「………」

春香「お父さん?」

クルーヤ「……ごめん、ただ名前を呼んだだけなんだ」

春香「ど、どうしたんですか?」

クルーヤ「………」

春香「あの……お父さん?」

春香「本当にどうかしたんですか? ひょっとして、お腹痛いとか?」

春香「それなら私の魔法で治してあげます!」

クルーヤ「いや、そうじゃないんだ。ハルカは優しい子だね」

春香「そんなことはないですけど……」

春香「………」



春香「あの、もしかしてお父さん、何か私に言いたいことがあるんじゃないですか? さっきからおかしいですよ?」

クルーヤ「………」

春香「言いたいことがあるなら言ってくださいね? 私にどこか悪いところがあるなら、直さなきゃですし」

春香「もうすぐお父さんともお別れなのに、言いたいことも言えないままなんて、私イヤですよ?」

クルーヤ「………」

クルーヤ「……ああ、そうだね。隠し事はよくない……」

クルーヤ「それじゃあハルカ、ひとつ質問させてもらってもいいかい?」

春香「はい! 何でも聞いてください!」

クルーヤ「コトリさんは大切な人だ。さっき君はそう言ったね?」

春香「はい、大切です! とっても!」

クルーヤ「じゃあ……」




クルーヤ「君はなぜその大切な人と戦う?」




春香「!」


春香「……それは……」

クルーヤ「とても重要なことなんだ。答えてもらえないかい?」

春香「………」



春香「……正直に、言いますね」

春香「私たちは、小鳥さんを救うためにここまで来ました」

クルーヤ「………」

春香「この世界が大変なことになっているのは私たちも知ってますし、世界の危機に私たちにできることがあるなら皆さんの役に立ちたい、っていう想いももちろんあったんですけど……」

春香「でも、一番の理由は、小鳥さんを……」

春香「大切な人を救うためです」

春香「そのために、私たちは大切な人と戦うって、そう決めたんですっ……!」グッ

クルーヤ「………」

クルーヤ(……一片の迷いも無い、か)

クルーヤ(思えば、この可能性を考慮することだってできたはずなんだ)


クルーヤ(これは…………運命だ)

クルーヤ(タチの悪い運命だ)

クルーヤ(だから……本当は誰が悪いわけでもないんだ……)


クルーヤ「…………」クルッ

スタスタ…

春香「? お父さん……?」



……ザッ

クルーヤ「………」

クルーヤ「ハルカ、君が技を習得するのにはものすごい修行も試練も必要ない」 

クルーヤ「ただ……」


春香「ただ……?」




クルーヤ「君は、ボクを倒さなければコトリさんの元へは行けない……」チャキッ




春香「えっ……!?」



春香「お……お父さん、いきなりどうしたんですか……?」

春香「冗談、ですよね?」


クルーヤ「ボクは空気を読まない冗談は言わないさ」

クルーヤ「剣を取るんだ、ハルカ。ボクたちは決着をつけなければならなくなった」


春香「け、決着って……。なんでいきなり……?」

春香「もしかして私、何かやらかしちゃいましたか?」



クルーヤ「そうじゃない」

クルーヤ「理由は簡単さ。君のやろうとしていることは、ボクの信念に反することなんだ」



春香「どういうことなんですか? 私、何がなんだか……」



クルーヤ「ボクは今まで、世界のために行動してきた。生きていた時も、死んでからも」

クルーヤ「世界を守り、人々の平穏を守ることがボクの信念だったから」

クルーヤ「死んでからもこうして思念体としてこの世に留まっているのは、その信念を忘れられないからなんだ」

クルーヤ「そうまでしてすがりついた世界の平穏を脅かそうという存在がいるのならば、それはボクにとって見逃すことのできない事態だ」

クルーヤ「たとえそれが……」



クルーヤ「娘が大切に思っている人であっても」




春香「っ……!」


クルーヤ「試練の山で君に言ったね。正義よりも正しいことよりも大切なことがあるって」

クルーヤ「それは、自分の信念だ」

クルーヤ「胸の中に燃えたぎる、自分が自分であるための、決して絶やしてはいけない炎」

クルーヤ「人は100%正義感やモラルだけで行動できるほど善人ではないし、行動の結果が善行に通じたとしても、結局そこにはその人のエゴが混じる」

クルーヤ「そのエゴこそが信念なんだ」

クルーヤ「信念というものは、簡単に善悪で測ることはできない。それと同時に、人が生きるための原動力となることもある」

クルーヤ「ボクにとって貫くべき信念……それは、この世界を守ること」

クルーヤ「だから、君たちがコトリさんを……」

クルーヤ「………」

クルーヤ「……いや、悪を救おうというのならば、ボクはその願いを打ち砕かなければならない」

クルーヤ「死んで魂だけになっても。ボクはボクを貫く……」

クルーヤ「世界のために、悪は滅ぼさなければならない……!」



春香「そ、そんな……!」


クルーヤ「君が悪を救おうというのなら、その信念はボクの信念と相容れない」

クルーヤ「さあハルカ、剣を取るんだ」

クルーヤ「もしくは、コトリさんを倒す覚悟を決めるか……。君に与えられた選択肢は二つに一つだ」



春香「で、でもっ……!」


クルーヤ「一つ言っておくと、ボクがコトリさんの側にいたのは、ただ彼女という人物を測るためだ。いずれ娘と戦うであろう悪をね」


春香「そんな言い方……! お父さん、さっき楽しかったって!」


クルーヤ「ふっ……!」ブンッ


ズドオオオオンッ!!


春香「ひゃっ!?」

ドサッ


クルーヤ「……ああ、楽しかったさ。もしかしたら生きていた頃よりも楽しいと思ったかもしれない」

クルーヤ「でもそれは、ボクの信念を曲げるには至らない事象だ」

クルーヤ「……いや、ボクは他の何を犠牲にしても信念を曲げるつもりはない」

クルーヤ「どのみち君は剣を取らなければならないさ。次元のはざまと元の世界を自由に行き来できるのはボクしかいないのだから」


春香「そんな……!」



春香(どうして……)

春香(どうしてこんなことに……)

春香(お父さんはいつも笑顔で、ちょっととぼけてるところもあるけどとっても優しくてステキな人で……)

春香(私とお姉ちゃんをパラディンに導いてくれて……)

春香(でも、それは全部世界を守るためだって……。世界を守るために、小鳥さんを私たちに倒させるために、小鳥さんに近づいて、騙して……)

春香(私が……小鳥さんを滅ぼさなくちゃならないなんて、そんなの……!)



クルーヤ「まだ決心がつかないのかい……?」チャキッ

クルーヤ「鬼神の居りて乱るる心……されば人、かくも小さき者なり……!」

クルーヤ「乱命……割殺打ッ!!」ブンッ

ドゴォ!! バキッ!!


春香「あぅっ……!」


ヒューー… ドゴオオンッ!!


クルーヤ「………」

クルーヤ「立つんだ、ハルカ。剣を構えなさい」


春香「う……ぅ……」


クルーヤ「もう一度言う。ボクは自分を曲げない。君が悪の助けに向かうのを阻止させてもらう」

クルーヤ「ボクを倒さなければ、君は大切な人を救えないッ!」



春香「うっ……」ヨロッ



クルーヤ「……仕方がないな。どうやら手段を選んでいられないみたいだね」

クルーヤ「悪いけど、君が救世主としてこの世界を救う気がないのらば他に代役を立てなければならない」

クルーヤ「だからハルカ、君は……」

クルーヤ「君たちはもう……」





クルーヤ「……用済みだ……!」




春香「え…………」



クルーヤ「命脈は無常にて惜しむるべからず……葬る!」

クルーヤ「不動……無明剣ッ!!」ブンッ
 

ズドオオオオオンッッ!!!




クルーヤ「………」


クルーヤ「………」


クルーヤ「………………やっとやる気になってくれたかい?」




春香「はぁ、はぁっ………!」チャキッ




春香(……よく考えれば、当たり前のこと……なのかな)

春香(ここはゲームの世界。お父さんはその世界の住人)

春香(小鳥さんがどんなにいい人でも、お父さんにとっては……この世界にとっては悪なんだ……)

春香(そう思われるだけのことを、確かに小鳥さんは今までしてきたから)

春香(そんなの、悲しい……。悲しすぎるよ……)

春香(でも、お父さんは本気だよね。このまま何もしないでいたら、私はきっとやられちゃう)

春香(それが分からないほど私だってバカじゃない)



…スクッ

春香「…………私は」



クルーヤ「!」



春香「私は救いたいんです。この世界で一人ぼっちだった小鳥さんを。たった一人で私たちと戦わなければならない小鳥さんを」

春香「ずっと……ずっと一人で……自分だけ悪役で……」

春香「そんなの、絶対辛いと思うから。だから、大丈夫ですよって言ってあげたいんです!」

春香「また小鳥さんに、みんなと一緒に心の底から笑ってほしいんですっ……!」

春香「……お父さん、悪は悪でしかありませんか? 歩み寄って仲直りすることは、絶対にできないんですか?」



クルーヤ「………」


クルーヤ「ああ、できないね」

クルーヤ「彼女が魔物を操って蒼き星を滅ぼそうとしたこと。リツコもまた、彼女に利用されたこと」

クルーヤ「君は忘れてしまったわけじゃないだろう?」

クルーヤ「彼女にはこれから永い眠りについてもらわなければならない。世界の平穏のために」

クルーヤ「これは、決められたことなんだよ」



春香「………」



春香「…………だったら、私の答えはひとつです」



春香「私は……」

春香「この世界の誰を敵に回しても、この世界の誰に蔑まれたって、自分の大切な人を救うっていう願いを諦めません!」

春香「だって、小鳥さんが私たちにとってかけがえのない人だっていう事実は……」




春香「たとえ世界が滅びたって、私たちにとって絶対に変わらない真実だからッ!」チャキッ




クルーヤ「……いいだろう。ならば君も、最早世界の敵だ……」

クルーヤ「世界の敵は排除しなければならない。聖騎士の名にかけてッ……!」チャキッ


それはたぶん、現実世界に戻っても何も影響しないということを説明する際に適当にそれっぽいことを書いたからわかりにくくなってしまったんだと思います

その他にも矛盾点はたくさんありますが、最初の頃はとにかく頭に浮かんだものをただそのまま書いていただけで後のことなんて深く考えてなかったので、スレがある程度進んだ時期に矛盾点のあまりの多さに自分で絶望した記憶があります
一応その後は矛盾点を少しでも減らす、増やさないように心がけて進めてきたつもりですが、ここまで進んだ段階で残っている矛盾を一つ一つカバーするのはもう不可能なので、この話はこういうものだと思っていただくしかないかなと…
正直、やり直そうかなと思ったこともありましたが、やり直すには掛かる時間が膨大すぎるのでこのまま突き進みます

本当は読んでいただいてる方に読み取ってもらうのが一番ですが、文章力、表現力が足りなさすぎて意味不明な部分が多いというのは自覚してますので、分からないことがあれば答えられる範囲で(レス数の許す限り)答えようと思います

ー ミシディア 祈りの館 ー


長老「………」

長老「………」

長老「…………どうやら、始まったようじゃな」



バルバリシア「始まったって……最後の戦いが?」

長老「うむ。月の中心から強いエネルギーを感じる」

長老「とてつもなく強大なエネルギーに、いくつかの光が向かっておる……」

カイナッツォ「ついに始まったか……」

カイナッツォ「……ええい、あいどるたちが戦っているというのに、私たちにはこうして祈ることしかできんのか!」

長老「気持ちはわかるが落ち着くんじゃ。今は微弱でも、ワシらの想いは必ず届く」

長老「それに、どうやら今のところ彼女たちは善戦しておるようじゃ」

カイナッツォ「なんだと!? 貴様、わかるのか!?」ガタッ

長老「精神波を飛ばすことで月での戦いを感じ取ることができる。まあ、細かいところまで把握するのは不可能じゃが」

カイナッツォ「私にも教えろ! あいどるたちはどうなっている!? チハヤは勇敢に戦っているのか!?」ガシッ

スカルミリョーネ「……お、落ち着け、カイナッツォ……!」グイッ


バルバリシア「……そういえば、あなたたちってあの可愛らしい召喚士専属の幻獣なんでしょう?」

バルバリシア「こっちに戻ってきてからずいぶん経つけれど、まだ出番はないの?」

高木「そのようだね。さっき我々が高槻君と共に戦ったのは普通の魔物だったから、高槻君はまだ音無君……」

高木「……いや、最後の敵の元へたどり着いていないのかもしれない」

バルバリシア「そうなの……。じゃあ、今はまだ全員揃って戦ってるわけじゃないのね」

長老「今のところ月の中心核で戦っているのは、リツコ、タカネ、チハヤ、ミキの四人のようじゃの」

カイナッツォ「何ィ!?」ガタッ

バルバリシア「ミキ……」

スカルミリョーネ「……あ、アズサはまだ…か……?」

ルビカンテ「………」チラッ


冬馬「………」


ルビカンテ「……どうした、浮かない顔をして。何か気になることでもあるのか?」

冬馬「……え? あ、いや……」

ルビカンテ「………」

ルビカンテ「オレはお前たちの主人の力はあまり知らんが……」

ルビカンテ「月の魔物を退けたのだ、相当の実力者なのだろう」

ルビカンテ「この戦い、そう悲観するほどでもないと思うが」

ルビカンテ「それにイオリがいる。ヤツがついていて負ける姿はオレには想像できんな」

冬馬「………」


翔太「あのルビカンテって人、ずいぶん伊織さんに入れ込んでるみたいだね。ファンなのかな」ヒソヒソ

北斗「まあ、俺たちの知らない交流があったんだろうな」ヒソヒソ


北斗「それにしても、俺たちのことも気にかけてくれるんですね。魔物とはいえ、あなたはなかなかの紳士のようだ」ニコッ

ルビカンテ「そんなつもりはない。ただ、同じ空間にいて同じ想いを持つ者同士、辛気臭い顔をされるのは御免だというだけだ」

翔太「……うーん、似た者同士惹かれ合ったって感じなのかなぁ」

スカルミリョーネ「……る、ルビカンテもツンデレの気があるから…な……」


冬馬「……悪い、気分を害しちまったみたいだな」

冬馬「でも、俺は別にあいつらが負けるなんて思っちゃいねえよ」

ルビカンテ「……? ならばなぜそんなに思いつめた顔をするのだ?」

冬馬「………」

冬馬「この戦いはさ……」

冬馬「あいつらにとってこの最後の戦いは、世界を救う以上の意味があるんだよ」

カイナッツォ「世界を救う以上の意味……?」

バルバリシア「どういうことなの?」

冬馬「それは……」

冬馬「詳しい事情は言えねえけど、あいつらはきっと尋常じゃない覚悟を持って最後の戦いに臨んでるんだ」

冬馬「そんなあいつらのことを思うと、ちょっと考えるところがあるっていうか……」

翔太「………」

北斗「………」

カイナッツォ「回りくどい言い方をするな。ズバリ何なのだ?」

冬馬「だから、何ていうか……」

黒井「私たちも彼女たちも、お前たちとは違う存在だということだ」

カイナッツォ「違う存在だと? そんなことは当たり前だろう? 私たちは魔物でお前たちは幻獣、そして彼女たちは人間なのだからな」

黒井「そういう意味ではない。もっと根本的な部分から違うのだよ」

高木「……黒井」

黒井「わかっている。説明したところで理解などされまい」

カイナッツォ「何なのだ? お前たちは一体何の話をしているのだ?」

冬馬「………」


冬馬「……なあ、あんた。あんたは如月千早が好きなんだろ?」

カイナッツォ「あん……?」

冬馬「そんで、あんたは三浦あずさ」

スカルミリョーネ「………」コクリ

冬馬「そっちの姉さんは星井美希だっけか?」

バルバリシア「ええ。ミキは私の可愛い妹よ」

冬馬「あんたは水瀬伊織に惚れたんだよな?」

ルビカンテ「……人間の感情は、正直いまだによくわからない」

ルビカンテ「イオリはオレにとって最大のライバルだが、オレはヤツに感謝しているし、尊敬もしている」

冬馬「……へへっ」

冬馬「よくわかんねえんだけどさ、嬉しいんだ。あんたたちがあいつらのことを好きになってくれたことが」

翔太「……うん。僕にもわかるよ、その気持ち」

北斗「エンジェルちゃんたちはこの世界でもエンジェルちゃんだった、ってことだな」

高木「実に、喜ばしいことだね」ニコッ

黒井「……フン」

冬馬「たとえあんたたちの存在が俺たちやあいつらと違ったとしても、あんたたちのその気持ち、絶対にあいつらの力になると思うんだ」

冬馬「ファンの応援ってのはアイドルにとってめちゃくちゃ心強いもんだからな!」

翔太「冬馬君……!」

北斗「……ああ、冬馬の言うとおりだ」

冬馬「祈りが力になるってそういうことなんだろ? じいさん」

長老「うむ。誰かを想う気持ちは等しく力になる。必ず、彼女たちに届く」


冬馬「頼む、どうか最後まであいつらのことを好きでいてくれよな」

カイナッツォ「ふん! お前に言われずとも私はチハヤを応援し続けるぞ! この私が認めた人間なのだからな!」

スカルミリョーネ「……お、オレはずっとアズサ一筋……」

バルバリシア「…………最後まで、か」

バルバリシア「そうね、いつか終わりが来るとしても、その時までこの気持ちが変わることはないって、誓って言えるわ」

ルビカンテ「今のオレたちが心変わりするなど、天地がひっくり返ってもあり得んことだ」

ルビカンテ「……どうだ。少しは不安は拭えたか?」

冬馬「……ああ。サンキュ!」


長老「……さ、祈りを再開しよう」



冬馬(がんばれよ、765プロ……。お前らには俺たちがついてるんだからな!)

冬馬(ゲームの配役なんてくだらねえモンに、絶対負けるんじゃねえぞ……!)

ー 月の地下中心核 ー


ヒューー…

ザシュッ!!


小鳥「くっ……!」ヨロッ

小鳥「……はっ!」ブンッ

ドゴォッ!!


千早「くっ……!」ヨロッ



律子「鬼神の居りて乱るる心、されば人
かくも小さき者なり……」


律子「乱命……割殺打!!」ブンッ

ズドオオオオオオンッ!!


小鳥「ぬっ……!」ズザザザ


貴音「滅びゆく肉体に暗黒神の名を刻め……」

貴音「始原の炎、甦らん……!」

貴音「……ふれあ!!」


ブゥゥゥン…


ズババババババッ!!!



小鳥「くぅ~っ……!」


小鳥「赦されざる者の頭上に、星砕け降り注げッ……!」ゴゴゴゴ



千早「…………はっ!」タンッ

フワッ…



小鳥「!」

小鳥(このタイミングでジャンプ!?)



美希(シェルで防御……)

美希(……ううん、きっと千早さんの方が早いの!)

美希「……ヘイスト!」バッ

カタカタ…シャキーン!



千早「…………はっ!」

…ザシュッ!!

スタッ



小鳥「……つっ!」

小鳥「…………」



小鳥「…………ふふ」

小鳥「……ふふふっ、やるじゃない……!」



千早「………」チャキッ




小鳥(千早ちゃんを軸に四人の息が合ってきている……)

小鳥(これはもう認めざるを得ないわね。私の方が押されている、ってことを)


千早「………」

千早「思っていたより楽しんでもらえているみたいで、良かったです」


小鳥「え……?」


千早「正直、ここへ来るまでは不安に思う部分もありました。覚悟を決めたとはいえ、やはりあなたと戦うのは、色々な意味で怖いですから」

律子「千早……」

美希「………」

千早「でも、音無さんが音無さんのままでいてくれたから」

千早「だから……」



千早「この戦い、後悔しないようにしようって、そう思えるんです」



小鳥「……千早ちゃん……」

P(千早……)



千早「あなたの希望に応えられるよう、私、全力でいきますね」チャキッ



小鳥(……私の、希望……?)

小鳥(私、みんなにどうしてほしいと思ってたっけ……?)


『……もちろん、みんなに楽しんでもらうため、ですよ?』


小鳥(……そうだわ。私は、みんなにゲームの世界を楽しんでほしくて……)

小鳥(千早ちゃんも、律子さんも、貴音ちゃんも美希ちゃんも……)

小鳥(みんな、楽しんでくれているのね)


小鳥(…………私は?)

小鳥(私、楽しいって思ってる?)

小鳥(私は……)



律子「……小鳥さん? またトリップしてるんですか?」



小鳥「……えっ? あ、いえ……」



律子「最初の方に言いましたよね? 私も貴音もあなたとの戦いを楽しんでる、だから小鳥さんも楽しんでください、って」

貴音「げぇむとは皆で楽しむもの……。教えてくれたのは貴女です。小鳥嬢、貴女が楽しめなければ、それはわたくしたちにとっては意味がないのです」

美希「難しいことは考えても仕方ないって思うな。最後はみんなで笑って終わるの。そうすれば、きっとこの世界の出来事もきっといい思い出になるの!」




小鳥「みんな……」




P(そうだ。音無さんは最初からずっと、みんなを楽しませるために色々やってきた)

P(だから……)

P「……今度はあなたが楽しむ番ですよ、音無さん」

小鳥「プロデューサーさん……」



小鳥(みんな、優しいのね)

小鳥(そんな言葉をかけられたら、決意が揺らいじゃうじゃない……)

小鳥(楽しむ、か……。そうね、できれば私もそうしたいわ)



小鳥(……でも、無理なの)

小鳥(私にはそんな資格はないから)


千早「…………あの、音無さん?」



小鳥「………」



美希「小鳥、どうしたの?」

律子「まさかまた妄想の世界に入ってるんじゃないでしょうね……」



小鳥「………」



貴音(……何故でしょうか。ここへきて何やら胸騒ぎが……)



小鳥「………」

P「音無さん……?」




小鳥「…………はぁ。おめでたいわね、みんな」

小鳥「律子さん、貴音ちゃん。あなたたちがここに来て最初に言ったことを覚えてますか?」



律子「私たちが最初に言ったこと? どのことを指してるんです?」

貴音「………」



小鳥「『この物語は既に誰も予想の出来ないものになっている。だから、律子さんたちが私に負けてしまうかどうかは分からない』」



律子「ああ、確かに言いましたけど……」

律子「もしかして、私たちが小鳥さんに勝てるかどうかも同じようにわからないって言いたいんですか?」



小鳥「………」

小鳥「ゲームっていうのは大抵の場合、最後に悪役が倒されてハッピーエンドで終わるようになってます」

小鳥「このFF4のストーリーもその例に漏れず、最終的には大団円を迎えることになりますけど……」

小鳥「でも、もし先がわからないお話なら、最後にハッピーエンドが待っているかどうかもわかりませんよね?」



4人「!!」


小鳥「私は音無小鳥……。この世界を憎む者……」

小鳥「全てを憎み、己すらも憎み、この世界を宇宙に還す者……!」

ゴオオオオオッ…!!





千早「っ……!」

律子「また威圧感が増した……!?」

美希「小鳥……?」

貴音「………」

貴音(……これは演技なのでしょうか?)

貴音(もし演技だとしても、そこまで頑なに悪役にこだわる必要が……?)

貴音(小鳥嬢、貴女はいったい何を思っているのですか……?)






小鳥「………………ここから先は……」



小鳥「手加減は無しよ…………」ゴゴゴゴ

ー 月の地下渓谷 B6F ー


雪歩「……えいっ!」ブンッ

ガコンッ!!


魔物「ァ……」

ドサッ


雪歩「…………ふぅ」



タタタ…

真「雪歩!」



雪歩「……あ、真ちゃん!」





真「そっちはどう? 誰か見つかった?」

雪歩「ううん……。魔物さんがいるだけで誰もいなかったよ……」

真「こっちもだよ。戦いの跡らしいものは見つかるんだけどね……」

真「ここまでしらみつぶしに調べてきたけど、誰も見つけられなかったってことは、みんなもっと下の階層に進んでるのか……」

雪歩「地下12階が最下層だから、この階でちょうど半分だよね……」

真「………」

雪歩「………」




真「……まさかとは思うけど、ボクたちの存在ってみんなに忘れられてるんじゃないか……?」

雪歩「だ、大丈夫だと思うよ?」


真「ふぅ……。文句を言ってもはじまらないか」

真「ボクと雪歩がしんがりっていうのは間違いなさそうだし、それならなるべく急ぎつつ調べていかないといけないね」

真「親衛隊の連中も見かけないし、今のボクたちなら探索のスピードをもう少し上げられそうだ」

雪歩(……親衛隊……)

雪歩(じゃあみんな、親衛隊の魔物さんたちに勝ったんだよね……)

真「……雪歩? どうかしたの?」

雪歩「……あ、うん……」

雪歩「あのね、今さらだけど私たちって小鳥さんと戦うんだよね」

真「……急にどうしたの? 怖くなったってわけじゃないよね?」

雪歩「うん。あの夜に春香ちゃんやみんなと話をしてからは、なんだか怖さは全部吹き飛んじゃったかも」 

雪歩「今はそれよりも、早くみんなに会いたいっていう気持ちの方が強いかな」

真「だよね。ボクも同じだよ!」

雪歩「……でも、それだけでいいのかなって」

真「えっ?」

雪歩「確かに私たちが楽しむこともすごく大切って思うけど、小鳥さんもちゃんと楽しんでくれるかな……?」

雪歩「上手く言えないんだけど、親衛隊が負けたこととか、色々なことを小鳥さんが気にしたりしてないかなって、ちょっと心配になっちゃって……」

真「………」

真「もしかしたら、小鳥さんに楽しんでもらうっていうのは言葉で言うほど簡単なことじゃないのかもしれないね」

雪歩「真ちゃん……」

真「小鳥さんの細かい事情はボクにはわからない。だから、思っていたのとは違う戦いになる可能性もあると思う」

真「でもきっと大丈夫だよ、雪歩」

真「何があってもボクたちなら乗り越えられる。だって、今までもそうだったじゃないか」

真「信じよう。ボクたちの絆は、絶対に負けない」

真「全員笑顔でエンディングを迎えられるってさ!」

雪歩「うん、そうだよね……!」



雪歩(大丈夫……だよね?)

雪歩(最後にはちゃんとみんなで笑えるよね……?)


ー 月の地下中心核 ー



律子「……美希、いつでもサポートできるように準備して。貴音は下がって詠唱を」

美希「うん!」

貴音「承知しました」

律子「千早、どんな攻撃を仕掛けてくるか分からないから慎重に行くわよ」

千早「ええ!」

タタタ…



小鳥「いい指示です、律子さん。今の四人を効率的に機能させる一番の指示だと思います」

小鳥「……それに『意味があるかどうか』は置いておいて、ね」



小鳥「私の最強の必殺魔法、見せてあげるわ……」

ゴゴゴゴ…



貴音「! これはっ……!」ピクッ

美希「なに、この魔力……!?」ゾクッ



小鳥「右手にフレア、左手にフレア……」ボゥ



千早「メガフレア……! 例の魔法ね……!」

律子「美希、防御を!」



小鳥「……合わせて、メガフレアッ……!!」バッ




千早「えっ!?」

律子「ちょっ……詠唱なしなの!?」

美希(防御が、間に合わないのーー!)



ブゥゥゥゥゥン…

バババババババババッ!!

ズドドドドドドドドドオオオオオンッ…!!!


千早「……くっ……!」

律子「な……なんて……破壊力……!」

美希「うぅっ……」

貴音「……凄まじい威力……。態勢を立て直さねば……!」



小鳥「……さて、まだ行くわよ!」バッ



貴音「!」



小鳥「右手にフレア、左手にフレア……」ボゥ



律子「連続で……!?」

千早「っ……させないわ!」ダッ

千早「はあああっ!」ブンッ


小鳥「……フレア」バッ


ブゥゥゥゥゥン…


バババババババババッ!!



千早「ああっ……!」

…ドサッ


律子「ち、千早っ!」

貴音「片方のふれあだけを発動……!? その様に器用な芸当もできるとは……!」


千早「く……っ……」グッタリ



小鳥「みんながここへ向かっている間、亜美ちゃん真美ちゃんの戦いを見たんだけど……。思わず笑っちゃったわ」

小鳥「だって魔法を複数同時に発動するなんて、私と全く同じことを考えているんだもの」



小鳥「とはいっても……。たぶん、魔法の威力は私の方がちょっぴり上だと思うけどね」ボゥ



千早「はぁ……はぁっ……」

千早「来るっ……!」ヨロッ

貴音(おそらく、次の攻撃を受ければ千早が危ない……!)


小鳥「……右手にフレア、左手にフレア……」ボゥ



貴音「……ふれあ!」バッ


ブゥゥゥン…


小鳥「! ……フレア」バッ


ブゥゥゥン…


ババババババッ!!


小鳥「そういえば、貴音ちゃんも詠唱略で魔法を撃てるんだったわね」

小鳥「……けど、私の攻撃速度について来れるかしら?」ボゥ



貴音「! もう次の魔法を……!」

律子「大気満たす力震え、我が腕をして閃光とならん……!」ゴゴゴゴ


小鳥「間に合ってませんよ、律子さん。……フレア」バッ

ブゥゥゥン…

ババババババッ!!



律子「ぐっ……!」

ドサッ


貴音「律子嬢!」

美希「っ……!」ザッ

貴音「……美希!」

美希「うんっ!」

美希「ケアルガ!」バッ

シャララーン! キラキラキラ…!



小鳥「ジリ貧って感じね……」ボゥ

小鳥「……合わせて、メガフレア!」バッ



律子「っ……!」ダッ



ブゥゥゥゥゥン…

バババババババババッ!!

ズドドドドドドドドドオオオオオンッ…!!!



P(なんだこれ……こんなに圧倒的なのか……?)

P(でも、このままやられてしまうほどみんなも弱くないはず……)

P(みんな……!)


千早「………」グッタリ



千早「……ぅ……」

千早「………」

千早「はぁ、はぁ……」ヨロッ

千早(……まだ、生きてるみたいね……)

千早(成す術がなかった……。まさかあんなに攻撃のサイクルが早くなるなんて……)




貴音「……けあるが」バッ

シャラララーン! キラキラキラ…!


貴音「無事ですか、千早」

千早「四条さん……。助かりました」

千早「美希と律子は……?」

貴音「……あちらに」スッ



律子「うっ……」グッタリ

美希「律子! しっかりしてなの!」ダキッ



千早「律子……!?」

貴音「二度目のめがふれあの時に美希を庇ったようです。回復はしましたが……」


貴音(僅か数度の攻防で壊滅寸前……。今までとはまるで桁が違う……。速さも、威力も……)

貴音「………」グッ



貴音「……ここは、わたくしが前へ出ます」

律子「そ、それはダメよ……。あなたは魔道士で特別打たれ強いわけじゃないんだから……!」

律子「今までどおり私が……………うっ!」

貴音「魔法攻撃への耐性ならば、律子嬢よりはあると思っています」

貴音「……美希、皆の回復をお願いしてもよろしいですか?」


美希(小鳥……)

美希(違うよね? ミキたちを殺そうなんて、そんなこと考えてないよね……?)


貴音「……美希?」

美希「……あ、う、うん。なに?」

貴音「回復を。それと、少し離れていてください」

美希「貴音、ひとりでやるの……?」

千早「待ってください四条さん」

千早「私も、行きます」

貴音「わたくしにも小鳥嬢のめがふれあに対抗する手立てが思いついたわけではないのです。ですから……」

千早「それでも構いません。あなたひとりでは危険すぎます」

貴音「……分かりました。ならばお願いします」

貴音「では……」

千早「はい!」

タタタ…


美希「律子…さん、ごめんなさいなの。ミキを庇ったせいで……」

律子「バカね、そんなこと気にしなくていいのよ」

律子「……この世界へ来て最初の頃に、色々な人を傷つけてしまった反動かしらね」

美希「えっ……?」

律子「今は、誰かを守りたいっていう思いが湧き上がってくるの」

美希「でも、律子…さんが死んじゃったら、ミキどうしたら……!」

律子「死ぬって、美希……」



律子「…………あー、もしかしてそういうこと?」

美希「え……?」

律子「おかしいと思ったのよね」

律子「プロデューサーも見てるっていうのに全然目立とうとしないし、美希、あなたこの戦いの最中ほぼずっと裏方に回ってたじゃない?」

律子「何か気になってることでもあるのかなって思ってたけど……」

律子「もしかして、この戦いで誰かが死んでしまうことを気にかけてたの?」

美希「それは……」

美希「………」

律子「大丈夫よ。そんな事態は起こらないように細心の注意を払うつもりだから」ギュッ

美希「律子……」

律子「それに、もし最悪死んでしまったとしても、ここがゲームの世界ならたぶんあるはずなのよ」

美希「あるはずって、何が?」

律子「…………蘇生魔法」

美希「!」


小鳥「四人でもどうにもならなかったのに、二人だけで私に敵うと思ってるのかしら?」



貴音「……やってみなければわかりません」

貴音「……!」ゴゴゴゴ

千早「………」チャキッ

 

小鳥(ここまでの戦いを見る限り、魔法防御は四人の中で貴音ちゃんが一番高そうね)

小鳥(被害を小さくするために体力の高い千早ちゃんと一緒に前に出てくるのは妥当……かな?)

小鳥(……ううん、貴音ちゃんのことだから何か考えがあるのかも)

 

貴音「すみません、貴女にこの様なことをお願いするのは心苦しいのですが……」

千早「いいえ、それしか方法がないのなら、試すべきです」

貴音「……はい」

貴音「準備は良いですか、千早」

千早「……いつでも」チャキッ




小鳥「……百聞は一見にしかず、か」

小鳥「私のメガフレアにどう対応するつもりなのか、見せてもらいましょうか……」



小鳥「右手にフレア、左手にフレア……」ボゥ



貴音「いざっ……!」ダッ

千早「行きます!」ダッ

タタタ…



小鳥(二人一緒に真っ直ぐ来た……? それで私のメガフレアをやり過ごせるの……?)



貴音「……!」ゴゴゴゴ



小鳥「……フレア!」バッ



千早「……ホーリーランス!」チャキッ


キラキラキラ…!

ズドドドドドドドドドッ!!



ドゴオオオオオオオオンッ!!!



千早「ぐっ……!」ズザザザ



小鳥「それじゃあ私のフレアは防げないわ」




貴音「……夜闇の翼の竜よ……怒れしば我と共に……!」ゴゴゴゴ




小鳥「……なるほど、千早ちゃんは時間稼ぎか……」

小鳥「でも残念、私の方が早いわね」ボゥ

小鳥「………………メガフレア!!」バッ


ブゥゥゥゥゥン…

バババババババババッ!!

ズドドドドドドドドドオオオオオンッ…!!!


小鳥「千早ちゃんが時間稼ぎして貴音ちゃんの詠唱を間に合わせようとしたみたいだけど、考えが甘かったわね」

小鳥「私のメガフレアは、十分な威力と溜めの短さ、さらに分割で発動させるコンパクトさも兼ね備えた、全てにおいて最強の魔法」

小鳥「色々考えてたどり着いたこの『万能メガフレア』……」

小鳥「絶対に負けることはないわよ……!」





……ザッ

貴音「…………はぁ、はぁっ……」

貴音「……怒れしば、我と共に……!」ゴゴゴゴ



小鳥「嘘!? 耐えた……!?」



貴音「……めがふれあ!」バッ



ブゥゥゥゥゥン…

バババババババババッ!!

ズドドドドドドドドドオオオオオンッ…!!!



小鳥「く……!」


小鳥「……流石の威力ね、貴音ちゃん……」

小鳥「バハムートさんを倒しただけあるわ……」


小鳥(……でも、貴音ちゃんらしからぬ強引な作戦だった。こちらにダメージがあったとはいえ、向こうの被害も小さくない)

小鳥(裏を返せば、他にロクな作戦を思いつかなかったってことにもなるか)



貴音「…………うっ……!」ガクッ




小鳥(魔法の詠唱中っていうのは隙ができるものだし、結構効いたでしょうね……)



貴音「……まだですっ……!」ヨロッ



小鳥(……ううん、相手を心配してる場合じゃないわ。この戦いはどっちかが倒れるまで終わらないんだから)

小鳥(私が倒れるか、みんなが倒れるか……)

小鳥(この物語に決着をつける方法は、それしかない……!)


小鳥「……さあ、行くわよ……!」ゴゴゴゴ



千早(……これ以上は、おそらく無謀ね)

千早「四条さん。一矢は報いました、一旦引きましょう」

貴音「しかし……」



小鳥「……逃さないわ……!」ボゥ



貴音「!」

千早「……失礼しますっ!」ダキッ

貴音「ち、千早……?」



小鳥「!? ちはたか……だとっ……!?」



千早「……はっ!」タンッ

フワッ…



小鳥「あっ、逃げられちゃった!」


…スタッ

貴音「……すみません、千早」

千早「いえ、一撃を与えられただけでも十分だと思います」 

美希「二人とも大丈夫!? ケアルガ!」

シャララーン! キラキラキラ…!



律子「……どう? 小鳥さんのメガフレア、攻略できそう?」

貴音「やはり、あの発動の早さが厄介ですね。わたくしのめがふれあはどうしても詠唱に時間がかかってしまいますし……」

律子「そう……。現状では攻撃力の高い貴音のメガフレアが勝敗の鍵を握ってると思うんだけど……」

律子「やっぱり誰かが小鳥さんの注意を引きつけて、その隙に他の人が攻撃するしかないか……」

美希「……ううん、それもきっとムリだよ。だってさっきの小鳥、フレアを二つ同時に、ほとんど一瞬で出したの」

美希「もしそれを別々に自由自在に撃つことができるとしたら、たぶん……ミキたちに逃げ道がないのと同じって思うな」

千早「あの速度と威力で攻撃され続けたら、こちらはかなり苦しいわね」

律子「そうなるとあとは、小鳥さんの魔力が切れるまで待つか……。いえ、そんな消極的な策じゃダメ……」

律子「せめてあと何人かいてくれれば、突破口は開けると思うんだけど……」




小鳥「そんな都合の良い展開はありませんよ」




四人「!!」



小鳥「のんびりなんてさせません。私は、みんなを倒さなければならないんですから……!」ボゥ



美希「!」

律子「……建前よ。本心じゃない」チャキッ

美希「……うん」

律子「悪役の演技もすっかり板に付いてきましたね、小鳥さん? 今から女優も目指せるんじゃないですか?」



小鳥「………」

小鳥「建前なんかじゃないってこと、証明してあげます……!」ボゥ



貴音「来ます……! 美希!」

美希「わかってるの!」

美希・貴音「シェル!!」バッ

ポワーン…



小鳥「ここまできたら防御なんてもう意味ないわ……! 貫いてあげるっ……!」

小鳥「……合わせて、メガフレア!」バッ



ブゥゥゥゥゥン…

バババババババババッ!!

ズドドドドドドドドドオオオオオンッ…!!!


美希「ぅ……」

律子「く……!」

千早「はぁ、はぁ……!」ヨロッ

貴音「……み、美希……魔法は使えますか……?」

美希「う、うん……今……回復するのっ……!」ヨロッ



…ザッ

小鳥「……その前に、全滅コースね」ボゥ



美希「こ、小鳥……!」

貴音「魔法が、間に合わない……!」

律子「みんなは……私が……守るっ……!」チャキッ

千早「はぁ、はぁっ……!」チャキッ



小鳥「私のメガフレアに三度耐えるのは、スタミナのある千早ちゃんや魔法防御の高い貴音ちゃんでも不可能だと私は踏んでる」ボゥ

小鳥「……残念だったわね。あなたたちはここでゲームオーバーよ」

小鳥「…………合わせて、メガフレアッ……!!」








「ふぃ~……やっととーちゃくだよー」

「待たせたなみんな! 自分たちが来たからにはもう安心だぞ!」



小鳥「えっ……!?」


ブゥゥゥゥゥン…



亜美「……って、うあうあ~! なんかくるよ~!」

響「うぎゃ~!!」



バババババババババッ!!

ズドドドドドドドドドオオオオオンッ…!!!




亜美「うぇ……」グッタリ

響「うぅ……」グッタリ



律子「あ……亜美!?」

貴音「響……!」

千早「二人とも、大丈夫……!?」

美希「っ……!」ヨロッ

美希「……ケアルガ!」バッ

シャララーン! キラキラキラ…!



亜美「うぅ……せっかくカッコよく登場しようと思ったのに~」

響「だからちゃんと様子見てから行こうって言ったんだ。亜美が『勢いが大事』とか言うからだぞ!」

亜美「ひびきんだってノリノリだったじゃんかー!」

美希「なんかモメてるの」

千早「緊迫していたはずなのに、二人を見てると気が緩んでしまいそうになるわね」

貴音「ともかく、二人が考えなしに突撃してくれたおかげで全滅の危機は免れたようです。助かりました」

律子「まったく、タイミングがいいんだか悪いんだか……」

亜美「いやあ、それほどでもあるよ~!」

響「褒められてるのか微妙なところだぞ……」


P(今のは……かなり危なかったと思う。響と亜美が割り込んでこなければどうなっていたか……)


小鳥(完璧にとどめになると思ったけど……)

小鳥(律子さんたち、亜美ちゃんと響ちゃんに救われたわね)

小鳥(………)

小鳥(救われたのは、律子さんたち?)

小鳥(それとも……)




亜美「ていうかみんなボロボロじゃん! もしかしてホントにピンチだったの?」

千早「ええ、状況的にはかなり劣勢と言ってもいいと思う」

亜美「ほほーう……」

亜美「ひびきん、こりゃカツヤクするチャンスかもしんないよ?」

響「へへ、どうやらそうみたいだなっ!」

響「みんな、少し休んでてよ。ここは自分と亜美でなんとかしてみせるっ!」グッ

律子「な、何言ってるのよ!?」

美希「二人だけじゃキケンなの!」



小鳥「………」



亜美「ねえねえ、ピヨちゃんも亜美たちがどんだけ強くなったか知りたいっしょ?」



小鳥(無謀……というか、きっと二人とも今のシリアスな空気を読めていないのね)

小鳥(早いところ格付けを済ませてしまいましょうか)


小鳥「……いいわ。それじゃあお姉さんの怖さを思い知らせてあげる……!」ゴゴゴゴ



亜美「おおぅ……ビリビリくるよ……!」

亜美「まさに最終決戦ってカンジだね!」

響「……なんだかピヨ子、ちょっとおっかないぞ」



P(亜美と響……黒魔道士に飛空艇技師)

P(亜美は音無さんと同じで魔法を複数同時に出すっていう技があるが、さっき音無さんも言っていたとおり、魔法の威力そのものに差があるだろう)

P(亜美が簡単に音無さんより優位に立てるとは思えないが……)

P(でも亜美のことだ、何か秘策があるのかもしれない)

P(響は足技メインの格闘術だけど、速さはともかく攻撃力はそこまで高くなかったはず)

P(ただ、親衛隊との戦いで響が使っていたあのよくわからない技のポテンシャルが未知数だ)

P(もしかしたら、もしかするのか……?)



亜美「そんじゃひびきん、プランBでいくよっ!」

響「いや、だからそんな打ち合わせしてないってば!」

タタタ…

律子「あっ、こら! 待ちなさい!」

貴音「……あの二人ならば、もしかしたら……」

律子「えっ……?」


亜美「へへん! ピヨちゃんの魔法なんてこわくないもんねっ!」



小鳥「そう言っていられるのも今のうちだけよ……?」



亜美「えっ、そうなの? じゃあ今のうちにイッパイ言っとかなきゃ!」

亜美「ピヨちゃんなんてこわくないピヨちゃんなんてこわくないピヨちゃんなんてこわくない……」

亜美「ホラ、ひびきんも!」

響「えっ? じ、自分はいいよ」



小鳥「すぐに生意気な口を聞けないようにしてあげるわ……」



亜美「……ひびきん、まずは亜美から行くよ!」

響「わかった。フォローは任せて!」


小鳥「……右手にフレア、左手にフレア……」ボゥ



亜美「……右手にファイガ、左手にファイガ……」ボッ



律子「フレアとファイガじゃ、どっちが強いかなんて明白じゃない……!」



亜美「追加でもういっちょファイガ……!」ボッ



美希「三つ目……。でも、それでもまだ小鳥にはゼンゼン敵わないの……」



小鳥「合わせて、メガフレア!」バッ



亜美「くらえ~~!! 鳳翼天翔~~っ!」バッ



ブゥゥゥゥゥン…

バババババババババッ!!


ゴオオオオオッ!!



ズドドドドドドドドドオオオオオンッ…!!!


小鳥「そんなレベルの魔法で私と張り合うつもり?」

小鳥「正直、負ける気がしないわね」ボゥ



亜美「くっ……そぅ……!」ヨロッ

響「ううっ……!」ヨロッ

響(め、めちゃくちゃな強さだぞ……)

響(これ、本当にどうにかできるのか……?)



美希「亜美、響、回復するの!」ダッ



小鳥「……フレア」バッ


ブゥゥゥゥゥン…

バババババババババッ!!


美希「あぅ……!」

ドサッ

千早「美希!」



小鳥「これは私と二人の勝負よ。水を差すような真似はやめてね?」

小鳥「さあ、続けましょう」



律子「こっちは行動すらままならない……。こんなのどうしろっていうの……」

貴音「……大丈夫です。二人を信じましょう」

貴音「それに、わたくしには一筋の光明が確かに見えました」

律子「貴音……?」


亜美「へ……へへっ、ピヨちゃんもなかなかやるね……」

亜美「でも、亜美の方がもっともっとスゴイってこと、教えたげるかんねっ……!」バッ

響(亜美、強がりなのか……?)

響(でも、そうだな。雰囲気で負けたらダメな気がする)

響(強気でいかなきゃ!)

響「亜美、まだ行ける?」

亜美「トーゼン! 亜美の実力はこんなもんじゃないんだよ!」

響「次またダメだったら、今度は自分が行くからね!」

亜美「うん、わかったよ」

亜美「あとさっきはサンキュ、ひびきん」

響「当たり前のことをしただけだぞ。だって自分たちはチームなんだから!」

亜美「……へへ、そーだったね!」




小鳥「右手にフレア、左手にフレア……」ボゥ



亜美「ブリザガ…………×3!」コオォ



小鳥「……メガフレア!」バッ




亜美「オーロラ・エクスキューションッ!!」バッ

キラキラキラ…!

コオオォォ…!!



ブゥゥゥゥゥン…

バババババババババッ!!

ズドドドドドドドドドオオオオオンッ…!!!


亜美「……く……ぬぬぅ…………」ヨロッ

響「だ……大丈夫か、亜美……」ヨロッ

亜美「ぜ、ゼンゼンヘーキだよー! 亜美はまだまだ元気モリモリだかんね!」



P(どういうことだ……?)

P(魔法防御が高い貴音ですら一撃を耐えるのに苦労していたのに、亜美と響はもう音無さんのメガフレア二発分を耐えている……)

P(二人もそれだけ強くなったってことなのか……?)



千早「……美希、今の見えた?」

美希「うん、ギリギリ。びっくりなの」

律子「……なるほど、貴音が見えた光明って『これ』のことだったのね」

貴音「ええ……」



貴音(……流石は響、765プロ最速です)

貴音(まさか、小鳥嬢のめがふれあの速度に反応するとは……)


小鳥(……確かに見えたわ)

小鳥(私がメガフレアを撃つタイミングに合わせて響ちゃんが亜美ちゃんを抱えて跳んだのを)

小鳥(完全に回避できたわけじゃないみたいだけど、直撃は外されたってところかしら)

小鳥(それを狙ってやったんだとしたら、恐るべき反射神経、瞬発力……)

小鳥(………)




響「……約束だ、亜美。次は自分が行く」スクッ

亜美「任せたぜぃひびきん……。とっておきの技、期待してるよ!」

響「……うん」

響(はっきり言ってピヨ子のメガフレアに対抗できるか自信はない)

響(でも、やらなくちゃ……!)



小鳥(響ちゃんの技って……)

小鳥(確かプリンちゃんたち相手に使ってたナントカ砲っていうやつだったわよね)

小鳥(なんであんなことができるようになったかは謎だけど、そこまで強そうな感じはなかった)


響(もしピヨ子のメガフレアに負けちゃったら、その時は……)

響(ナンクル砲を撃ったあとじゃ素早く動けないし、そうなると直撃を避けるのは不可能になる……)

響(せめて亜美だけでも安全なところに逃したいけど……)

響(……ダメだ。考えがまとまらない)

響(……あ~もうっ! ごちゃごちゃ考えるのはやっぱり自分には合わないぞ)

響(負けちゃったらその時また考えればいいんだ!)



響「来い、ピヨ子!!」




小鳥「………」



小鳥「……右手にフレア、左手にフレア……」ボゥ



響「………」スッ



律子「響が構えた……けど、何をするつもり? 魔法は使えないはずだし……」

美希「………」

貴音(響……)

千早(我那覇さんは、きっとあの時身につけた技を使うつもりなのね)

千早(あの技がどれだけの威力なのか。この戦いの行く末はそれに懸かっている気がする……)




小鳥「…………合わせて、メガフレア!!」バッ



ブゥゥゥン…



響「…………ナンクル砲ッ!!」


ピカッーー!


キュイイイイイイイン…




小鳥(…………え!?)



響「はあッ!!」バッ




ズドオオオオオオオオオオオンッッ!!!


小鳥「………」



響「………」



律子「……!?」



律子「響の技が……」

美希「小鳥のメガフレアとカンペキに相打ちなの……!」

千早「すごい、我那覇さん……!」

貴音「…………流石です、響」ニコッ




響「あ、あれ…………?」



亜美「ひびきんかっけえええええ! なに今の技ー!?」

響「ウソ……? ナンクル砲ってこんなに強かったのか……?」ボソッ

亜美「……ひびきん?」

響「あ……う、ううん! なんでもないぞ!」

響「ふ、ふふーん! 見たかピヨ子! これが自分の実力さー!」ビシッ



P(やったな、響……!)


小鳥「………」


小鳥(……そっか。考えてみれば、物理攻撃には無敵のあのプリンちゃんたちを何度もノックアウトし続けてきた技だものね)

小鳥(あの驚きようだと、自分でもここまでの威力だと思っていなかったみたい)

小鳥(それと、相殺したという事実もそうだけど、注目すべきは技の発動までの時間)

小鳥(ほとんどタメなしのノータイムだった。それであの威力……)

小鳥(まるで私の万能メガフレアに対抗するためにあるような技ね)

小鳥(思わぬところに伏兵がいたわ)



小鳥(……でも、それでも私には勝てない)

小鳥(どんなに上手く立ち回ったとしても、私には絶対に勝てないのよ)

小鳥(私とみんなには、『根本的な違い』があるんだから……)

ー 次元のはざま ー


春香「……大気満たす力震え、我が腕をして
閃光とならん……!」チャキッ



春香「無双……稲妻突きッ!!」ブンッ



クルーヤ「……聖光爆烈破ッ!!」ブンッ



キラキラキラ…!!

ズドオオオオオオンッ!!!



春香「うぁっ……!」

ズザザザ…!




クルーヤ「……その程度かい?」



春香「……まだまだですっ!」チャキッ

春香「死兆の星の七つの影の……経絡を断つ!」

春香「……北斗、骨砕打ッ!」ブンッ



クルーヤ「……聖光、爆裂破!」ブンッ


キラキラキラ…!

ズドオオオオオオンッ!!!




春香「……うっ……」

ドサッ


クルーヤ「啖呵を切った割にはお粗末だね」

クルーヤ「さっきは確かに君のことを褒めた。ボクは褒めて伸ばす主義だからね」

クルーヤ「けど、この程度だったとは。……ボクは君のことを少し過大評価していたのかもしれないな」



春香「……はぁ、はぁっ……」

春香(……ダメだ、私の剣は全部お父さんの聖光爆裂破に負けちゃう……)

春香(これでも全力なのに……)



クルーヤ「さて、ボクもそんなに時間に余裕があるわけじゃない」

クルーヤ「世界の敵である君には……そろそろ消えてもらおう」チャキッ



春香(ダメ、ここで負けるわけにはいかない……)

春香(ここで倒れちゃったら、なんのためにここまで来たのかわからないよ……!)

春香「……!」チャキッ


クルーヤ「……誰だって死にたくはない」

クルーヤ「志半ばにして果ててしまうことほど無念なことはないのだから」

クルーヤ「でも君の思い通りにはさせない」

クルーヤ「この世界の平穏のために、コトリさんには眠ってもらう」
  


春香「私は……」

春香「絶対に小鳥さんを救ってみせるッ!」チャキッ

春香「命脈は無常にて惜しむるべからず……葬るッ!」

春香「……不動、無明剣ッ!」ブンッ



ゴオオオオオッ…!!



クルーヤ「まだわからないのか……」

クルーヤ「……聖光、爆裂破ッ!」ブンッ


キラキラキラ…!

ズドオオオオオオンッ!!!



春香「…………う……」

…ドサッ



クルーヤ「………」


春香「…………ぅ……」



クルーヤ「………」

クルーヤ「……ハルカ、君はわがままだ」



春香「…………え……?」



クルーヤ「君がコトリさんを救ったとして、その先には何が待っている?」

クルーヤ「人々はコトリさんを受け入れるだろうか? いや、簡単に受け入れられはしない」

クルーヤ「悪を許したところで、この世界の人々が失ってしまった大切なものは戻ってこないのだから」



春香「!」




クルーヤ「人々の疑念はやがて確執へ変わり、コトリさんは孤独を知り、いずれ再びこの世界に危機が訪れる。悲劇は繰り返される。悪とはそういうものだ」

クルーヤ「たとえコトリさんがどんなに優しくていい人だからって、例外はないんだよ」



春香「…………ち、違う……」



クルーヤ「君は君の想いを叶えるため、世界中の人々を危機に陥れようとしている」

クルーヤ「それをわがままと言わずに何と言う?」



春香「…………そ、それは……」



クルーヤ「ボクは見過ごせない。悲劇を繰り返させやしない」

クルーヤ「自分の娘だからといって……容赦はしない……」チャキッ



春香「く……!」ヨロッ



クルーヤ「聖光爆裂破を三度受けてもまだ立つその精神力は流石だ」

クルーヤ「それだけ君の想いもまた、譲れないってことなんだろう」

クルーヤ「でもそれなら……」

クルーヤ「ボクはそのさらに上をいく想いを剣に乗せるだけだ……!」ゴオオッ…!


春香(今までの技じゃきっとお父さんには勝てない……)

春香(だったら、やってみるしかないよね……!)



春香「はあああああっ……!」ゴゴゴゴ



クルーヤ「!」

クルーヤ「使うつもりなのか……」

クルーヤ「いいよ。君の想いの強さ、見せてごらん」

クルーヤ「…………ハルカ!」チャキッ



春香「……天の願いを胸に刻んで心頭滅却……!」

春香「……聖光、爆裂破ッ!」ブンッ


クルーヤ「聖光、爆裂破!!」ブンッ



キラキラキラキラ…!


ズドドドオオオオオオオオンッ!!!



クルーヤ「………」



春香「…………う……」ガクッ

…ドサッ



クルーヤ「一流の聖騎士は技を一度見ただけで覚えてしまう。確かにそれはそうだ」

クルーヤ「しかし、覚えた技の真価を発揮できなければ、それは何の意味もない」

クルーヤ「君の聖光爆裂破は……」

クルーヤ「君の想いはボクの想いすら超えられない、その程度のものだったってことだ」



春香「………」グッタリ


春香(私の想いは……お父さんの想いすら超えられない……)

春香(わがまま……なのかな……)

春香(そうだよね……。やっぱりそういうことになっちゃうよね……)

春香(ゲームをクリアして私たちがこの世界からいなくなったら、その後はどうなるんだろう)

春香(……ううん、違う。お父さんが言ってるのはきっとそういうことじゃないんだ)

春香(だって、お父さんやこの世界の人たちにとっては、このゲームの世界が全てだから)

春香(だから守りたいものを守って、それを脅かすものと必死で戦うんだよね)

春香(それに対して、私たちは違う。帰るべき場所がこの世界とは別にある)

春香(だからこそ、考え方にすれ違いが生まれちゃうんだ……)

春香(お姉ちゃんが言ってたっけ。『お父さんはお姉ちゃんの目的を邪魔する敵でしかない』って)

春香(あの言葉も、もしかしたら間違っていなかったんじゃ、って思えちゃうよ……)


クルーヤ「……さて」チャキッ

ブンッ!



ズドドドドドオオォォン!!



春香「うあっ……!」

ドサッ



クルーヤ「そろそろ休憩は終わりだ、ハルカ」




春香「……はぁっ、はぁ……!」



クルーヤ「……天の願いを刻んで心頭滅却……」ゴゴゴ



春香「来る……!」チャキッ

春香(もう一度、やってみるしかない……!)ゴゴゴ



クルーヤ・春香「聖光、爆裂破ッ!!」ブンッ



キラキラキラ…!!


ズドドドオオオオオオオオンッ!!!

ー 回想 月の地下渓谷 B9F ー



真美「ぜぇ……ぜぇ……」

真美「ど……どうだ、全力の10倍エスナ……。これが今の真美にできるせいいっぱいだよ……!」

やよい「おねがいしますっ……!」ギュッ




パァァァーー!!



真美「うおっまぶしっ!!」




「……誰のでこがまぶしいですって……!?」




真美「その甘いボイスは!」

やよい「伊織ちゃんっ!!」



伊織「……待たせたわね、スーパー忍者アイドル伊織ちゃんの復活よっ♪」


真美「……ふぃ~、なんとかなった~」

やよい「うー、よかったです~!」

伊織「………」

やよい「……伊織ちゃん、どうかしたの? まだどこか痛い?」

伊織「ううん、そうじゃないの」

伊織「あんたたちが、私を助けてくれたのよね?」

真美「あーいやいや。真美は当たり前のことしただけなのだよ。そんなのぜーんぜん気にしなくていいから」

真美「ゴージャスセレブプリンとか気にしなくていいからね?」

伊織「私のせいで、迷惑かけてごめんなさい」ペコリ

真美「……あり?」

伊織「それとありがとう。助かったわ」

真美「むぅ……そう素直にお礼言われちゃうと調子狂うな~」

伊織「ま、ゴージャスセレブプリンくらい帰ったら飽きるほど食べさせてあげるわよ」

真美「よっしゃ!」グッ

やよい「真美、おつかれさま!」


伊織「……で、状況はどうなってるの? 確か私は響と一緒にいたはずだけど」

真美「うむ。話せば長くなるのじゃが……」

やよい「えっと、かくかくしかじかかなーって」

真美「その言葉ホント便利だよね」



伊織「……そうなのね。響と亜美が……」

真美「で、やよいっちに手伝ってもらっていおりんを治療して今に至るってカンジだね」

真美「あ、そーいえば魔物くんは……」チラッ



魔物「………」グッタリ



真美「魔物くん!?」

タタタ…


真美「魔物くんしっかり!」ガシッ

魔物「が、ガル……」グッタリ

伊織「なんで魔物が……? やよい、これどういうこと?」

やよい「あのね、まものさんはまものさんなのにまものさんからわたしたちをまもるためにまものさんとたたかってくれて……」

伊織「え、えーと……つまり味方してくれたってことでいいのよね?」

真美「魔物くん、死んじゃダメだ! ケアルガ!」

シャララーン! キラキラキラ…!

魔物「ガ……グ……ガルル……」

真美「なに……? なんて言ってるの……!?」

やよい「………」

やよい「『ボクはもう、長く生きられない』って……」

真美「そ、そんなのダメっしょ!」

魔物「が、ガル……ガルル……」

やよい「『こんなボクでも、最期に真美ちゃんの役に立ててよかった』って……」

真美「そんな……!」

真美「ダメだ! 目を開けてよ!」

魔物「ガ……ル……」

魔物「」ガクッ




真美「魔物くうううぅぅぅぅぅんッ!!!」


真美「なんで……! なんでいっちまったんだよ~!」

真美「メッチャ気のいいヤツだったのに……!」グスッ

伊織「真美……」

やよい「………」

やよい「泣かないで、真美。だいじょーぶだから」

真美「えっ……?」グスッ

伊織「やよい……?」

やよい「……翔太くん、おねがいしますっ!!」バッ


スゥゥゥーー…



翔太「へへ、ようやく僕が活躍できる時が来たんだね!」

翔太「生命をもたらしたる精霊よ……今一度我等がもとに!」

翔太「……レイズ!」


キラキラキラ…! パァァ…!


魔物「………」

魔物「っ……!」ドクン

伊織「!!」

真美「ま……魔物く~ん!!」ダキッ

魔物「ガ……ガルル……?」

真美「よかった~!」

伊織「生きかえっ……た……?」

伊織(……前に貴音が生き返ったって話は聞いていたけど、本当にあったのね、こんな夢みたいな魔法が……)

伊織(そういえば、御手洗翔太ってここまでの冒険で活躍したの見たことがなかったけど、まさかこんな力を持っていたなんて……)





真美「魔物くん、これからも真美のせくちーさを魔物たちに広めてね!」

魔物「ガルッ!」シュタッ

伊織「えっ、まさか真美が泣いてたのってそういう理由なの?」


翔太「せっかく初の活躍なのに生き返らせたのが魔物って……」

北斗「ドンマイ、としか言えないな……」

冬馬「気にすんなよ翔太、な?」

翔太「僕の存在意義って一体……」ズーン



伊織「………」

伊織「……いいえ、ちゃんとあるわよ、あんたの存在意義」

翔太「えっ?」

伊織「っていうかもう、あんたのその力は私たちの最後の切り札と言っても過言ではないわね」

翔太「だ、だよね! うん、僕もそう思ってたんだよー!」

冬馬「……ちょっと待てよ水瀬、お前まさか最後の戦いで死人が出るとか考えてるのか?」

伊織「…………さあ、どうかしらね」

冬馬「お、おい、マジかよ……」

冬馬「そんなことあり得るのか? 現実の世界じゃないからって、リアルに痛みとかはあるんだぜ? そんな世界で仲間に殺されるかもしれないとか……」

冬馬「実行する方もその可能性を考慮する方も理解できねぇよ……」

真美「いや~、甘いねぇあまとうは。縄タイムアラベスクってやつだねぇ」

伊織「名は体を表す、ね」

冬馬「確かに甘いものは嫌いじゃねえけどそういうことじゃねえよ!」

冬馬「あとあまとうって呼ぶな!」


冬馬「ていうか、お前らそこまで複雑なことになってたんだな……」

真美「フクザツ? ゼンゼン単純っしょ?」

真美「だってここ、ゲームの世界だし。真美たちはその登場人物なんだからさ」

真美「ラスボス戦で死んじゃうことだってそりゃーあるわけさ」

やよい「わたしは誰かが死んじゃうの、ほんとならぜったいにいやですけど……」

やよい「でも、翔太くんがいるのでへーきです!」

伊織「……もちろん、誰かを死なせるなんて最優先で忌避すべき事態ではあるけどね」

伊織「天ヶ瀬冬馬。あんたの不安は分かってるわ」

伊織「簡単に人を殺したり、生き返らせたり。そういう事に私たちが慣れを感じちゃうんじゃないかって事よね?」

冬馬「………」

伊織「なんて顔してんのよ。大丈夫に決まってるじゃない」

伊織「私はみんなを信じてるし、小鳥のことも信じてる」

伊織「その信頼さえあれば、何があっても大丈夫なのよ」

伊織「仲間って、そういうものでしょ?」

冬馬「………」


冬馬「……だったらさ、俺も信じさせてくれねえか」

冬馬「お前たちの絆、俺にも信じさせてくれ」

翔太「僕も信じたい。だって、やよいちゃんたちを見てると本当に何があっても大丈夫なんじゃないかって思うし」

北斗「俺たちも、君たちの仲間に入れてほしいんだ」

真美「おお……」

やよい「みなさん……!」

伊織「………」



伊織「……まったく、何寝ぼけたこと言ってるのかしらね」

伊織「あんたたちは、もうとっくに私たちの仲間よ?」

伊織「あんたたちがいてくれて心強いって思うし、その信頼は私たちの更なる力になるのは間違いないわ」

伊織「私の方こそお願い。私たちのこと、最後までちゃんと信じなさいよね」

冬馬「水瀬……」

翔太「へへっ……!」

北斗「……ありがとう」



真美「思ったんだけどさ、いおりんちょっと急激にデレすぎじゃない?」

伊織「う、うるさいわね! いいでしょ別に!」

やよい「えへへっ、みんな仲良しが一番です!」

伊織「そんな事より、グズグズしてないで出発よ!」

伊織「伊織ちゃんの華麗な活躍はこれからなんだから!」

ー 次元のはざま ー


春香「…………っく……」

春香「はぁ、はぁっ……」




クルーヤ(……もう何度剣を合わせただろう)

クルーヤ(ハルカの聖光爆裂破はまだまだ未熟で、ボクのそれには到底敵うものではない)

クルーヤ(これだけ何度も打ちのめされれば、肉体に蓄積するダメージも相当な量になる)

クルーヤ(今彼女を奮い立たせているのは、精神力だ)

クルーヤ(コトリさんを救いたいという想いがハルカを支えている)

クルーヤ(もし心が折れてしまえば、いくらここまでしぶとく粘ったハルカと言えど、もう……)



クルーヤ「………」チャキッ



春香「はぁ、はぁっ……!」チャキッ



クルーヤ「君たちが役に立ってくれないのなら、ボクは他に英雄を立てなければならない」



春香「………」



クルーヤ「ボクも暇ではないんだ。この辺で終わりにしようか」



春香「……っ」

春香「はあああああッ……!」

ゴオオオオッ…! 



クルーヤ(……足りない)

クルーヤ(おそらく……)



春香「天の願いを刻んで心頭滅却……!」ゴゴゴ



クルーヤ(……心に迷いがあるんだね)



春香「聖光……爆裂破ッッ!!」


キラキラキラ…!!



クルーヤ(それでは、ボクには勝てない)



クルーヤ「聖光、爆裂破ッ!!」


キラキラキラ…!!


ズドドドオオオオオオオオンッ!!!




春香「……う……」

ドサッ

春香「………」グッタリ




クルーヤ「………」

クルーヤ(……終わるのか、ハルカ……?)


春香(私は……)

春香(間違ってたのかな……)

春香(この世界からみんなで帰るためにやってきた事……)

春香(全部、間違ってたのかな……)

春香(今まで出会った人たちは、私たちのやろうとしてた事を知ったらどう思うかな……)

春香(私、この世界のことをどこかで他人事って考えてる……)

春香(私は……)



春香(…………プロデューサーさん……)










…キラーン!



春香「!」



『……春香。お前はここまでよくやってくれたよ』



春香「クリスタルの首飾りから声が……! プロデューサーさん……!?」



『辛い役目を背負わせてしまってすまない。本当はこんなつもりじゃなかったんだけど……』



春香「いえ、いいんです。プロデューサーさんが私たちのことを考えてくれたのは、とっても嬉しかったですから!」



『春香。お前のやること、進む道に文句を言う人もいるかもしれない。でも、そんなのは本当に些細な問題なんだ』



春香「え……?」



『なぜなら、お前は……』

『天海春香は、どんな時でも笑顔を忘れず前を向いていて、どんな時でも決して諦めることをしない、とっても素晴らしい人間だから』



『俺の、自慢のアイドルだから』



春香「っ……!」



『誰の意見を気にする必要なんてない。お前はお前の信じた道を行け』

『春香が選んだ道の先は、絶対に光が満ち溢れている。……少なくとも俺はそう信じてるんだ』



春香「プロデューサーさん……」



『さあ、みんなが待ってるぞ』


『「正義よりも正しいことよりも大切なもの」は、今お前と共にある!』




春香「………」



春香「…………はいっ!」


キラーン!


クルーヤ「!」

クルーヤ(……ハルカのクリスタルが光って……)

クルーヤ(……そうか、これは恐らく彼の仕業だな)

クルーヤ(彼は……)




春香「ううっ……!」ヨロッ

春香「…………はぁ、はぁ……!」ザッ



クルーヤ(……まるで、ハルカたちの守護神のようだ……)

クルーヤ(彼がいる限り、ハルカたちは何度でも立ち上がる……)

クルーヤ(やれやれ……まったく、さすがは未来のハルカの旦那様だね)




クルーヤ「……流石にしぶといね。まだ諦めないのか」



春香「………」

春香「私、ようやくわかったんです」



クルーヤ「ボクの言っていることをようやく理解してくれたのかい?」

クルーヤ「ならば、コトリさんを倒してくれるね?」



春香「はい、倒します。そのためにみんなで頑張ってここまで来ましたから」



春香「……けど、私たちは小鳥さんを救います。……絶対にっ!」

…ザッ



クルーヤ「コトリさんを倒し、救う……」

クルーヤ「そんなことは不可能だ」



春香「不可能なんかじゃありません。きっとできます! 私たちなら!」



クルーヤ「………」



春香「………」



クルーヤ「……君が折れるのは、どうやらもう期待できないみたいだね」



春香「…………はい」


春香「ひとつ、お父さんに伝えたいことがあるんです」



クルーヤ「……なんだい?」 
 


春香「今まで、ありがとうございました。私、お父さんと出会えて本当に良かったです!」ニコッ



クルーヤ「!」



クルーヤ「……そんな手には乗らない。ボクは心を揺さぶられたくらいで戦意を失ったりはしないさ」チャキッ



春香「そ、そんなつもりはありませんよぅ!」



春香「……ただ、最後にどうしてもそれだけは伝えたかっただけですから」チャキッ

春香「……!」ゴゴゴゴ



クルーヤ「来るか……!」



春香(私の聖光爆裂破はさっきお父さんに負けちゃった)

春香(でも、それならそれ以上に威力を引き上げればいい)

春香(お父さん。お父さんはずっと私の味方でいてくれたんですね)



春香(聖光爆裂破の威力を引き上げるには……)

春香(奥義として完璧なものにするには……)

春香(そのために必要なものは……)




『それは、明確な意思。決して折れることのない心』





春香「…………誰にも負けないくらい……」




春香「……強い、想いッ……!」

ゴオオオオオオオオオッ…!!





クルーヤ「……!」

クルーヤ(かつてない剣気っ……! これがハルカの……)

クルーヤ「……!」ゴゴゴゴ




春香「私の想いを……全部この剣に注ぎ込みますっ……!」



クルーヤ「来い、ハルカ……!」




春香「……天の願いを胸に刻んで……」



クルーヤ「……心頭滅却……」



春香「聖光……!」



クルーヤ「……爆裂破ッ!!」



キラキラキラキラ…!


ズドドドオオオオオオオオンッ…!!!




春香「………」グッタリ





クルーヤ「く……」ガクッ

クルーヤ「はぁ、はぁ……」



クルーヤ「…………よく頑張ったね、ハルカ」



クルーヤ「それでいいんだよ」



春香「………」




クルーヤ「周りの何にも影響されずに自分を貫くことは、時にわがままと言われる。けれど、大切なものはいつでも自分の中にあるものなんだ」

クルーヤ「そしてそれは、一般的に正義と言われるものよりも、正しいとされている考え方よりも、はっきりとした道標になる」

クルーヤ「だからハルカ。君は自分の道を行き、自分を貫き通しなさい」

クルーヤ(ボクが出来なかったことを、君が……)


グニャ…


クルーヤ「空間が歪みはじめた……。もう魔法すら維持できなくなってるのか……」

クルーヤ「……時間みたいだね。ボクはもうここを去らなければならない」

クルーヤ「今度こそ正真正銘、さよならだ」


春香「ぅ…………」



クルーヤ「………」


クルーヤ「……最後に、一つだけ忠告しておこう」

クルーヤ「君はコトリさんを救いたいと言ったけれど、おそらくそれは君たちだけの力では成し遂げられないだろう」

クルーヤ「彼女の優しい心を救いたいのならば……」




春香「……うぅ……」ピクッ



クルーヤ「………」

クルーヤ「……いや、やっぱりそれは君が自分で考えて答えを見つけるんだ」

クルーヤ「お父さんからの、最後の宿題だよ」ニコッ



クルーヤ「……悠久の時を経て、ここに時空を超えよ。我にその扉を開け……!」



クルーヤ「…… デジョン!」バッ



ーーシュンッ



クルーヤ「…………さよなら、ハルカ。愛しい娘」




「……親子の別れは済んだようだな」




クルーヤ「!」



バハムート「……ククッ!」



クルーヤ「………………バハムートか」


クルーヤ「やれやれ、すっかり油断していたよ」

クルーヤ「ボクたちの戦いをずっと見ていたのかい?」

バハムート「冥府への道中退屈すると思ったのでな。お前の用事が終わるまで待っていたのだ」

クルーヤ「そうか……そういえば君も死んだんだったね」

クルーヤ「ボクも長いこと現世に留まり過ぎた。きっと長い輪廻が待っているんだろうなぁ……」

バハムート「如何に我でも六道輪廻に干渉することは出来ぬ。次に人間界へ生を受けるのは、百年先か、或いは千年先か……」

クルーヤ「はぁ…………。まあ、仕方ないか」



バハムート「しかし、とんだ三文芝居だったな」



クルーヤ「……何がだい?」

バハムート「世界を守るのが自分の信念、か。……クククッ!」

バハムート「惚けているつもりだろうが敢えて言わせてもらう。それはお前の信念などではない」



バハムート「聖騎士となった者が等しく背負う宿命だ」



クルーヤ「………」


バハムート「クルーヤよ。お前がこれまで世界を守り続けてきたのは、それが自分の意思を差し置いてでも聖騎士として成すべきことであったからだ」

バハムート「だからお前は、生前も死後も、他の全てを棄てて世界を守るため行動してきた」

バハムート「……そう、家族との時間すらも棄ててな」

クルーヤ「………」

バハムート「お前の心は揺れ動いていた。先程の戦いの最中の話ではない。それ以前……お前が生きていた頃、聖騎士として活躍し始めた時から既にだ」

バハムート「もっと正確に言えば、お前の心に迷いが生じたのはお前が家族を持ってからなのであろう。今ならば我にもそれは理解できる」

バハムート「お前は迷っていたのだ。家族への愛と、聖騎士としての宿命との狭間で」

クルーヤ「………」

バハムート「やがてお前は、自分の心を騙すことを思いついた。『世界を救うのは自分の信念だ。自分が望んだことだから、家族やその他のことを犠牲にするのは仕方がないことなのだ』とな」

バハムート「だが、その様に気持ちを誤魔化し続けてきたお前の剣が、純粋で真っ直ぐな想いの剣に勝てるはずもない」

バハムート「お前とハルカの実力の差以前に、戦いの勝敗は火を見るよりも明らかだったというわけだ」

クルーヤ「………」


バハムート「あの娘も……ハルカもお前と同様に聖騎士だ。世界を背負う義務はあっても悪であるコトリを救って良い道理は無い」

バハムート「世界に破滅を持たらさんとする悪を助けるつもりならば、即ちそれは世界を脅かすということだ。確かにハルカたちは世界の敵というお前の表現は間違っていない」

バハムート「だが、お前は最初から理解していた。ハルカには勝てぬということを」

バハムート「お前は最初から敗けるつもりで、ハルカの聖光爆裂破を完成させるために……ハルカの助けとなるためだけに戦いを挑んだのだ」

バハムート「ハルカたちが世界の敵ならば、それを助けたお前もまた世界の敵、ということになろう」



クルーヤ「………」

クルーヤ「…………ふぅ」

クルーヤ「悔しいけど、概ね君の言うとおりだ。でも一つだけ違うところがある」

クルーヤ「ボクは別に負けるつもりでハルカに戦いを挑んだわけじゃない。もちろんハルカを倒すつもりだった」

バハムート「……ほう?」

クルーヤ「でも……」

クルーヤ「最後に彼女がボクに剣を向けた時、お礼を言って笑ったんだ」

クルーヤ「ボクにはその笑顔がとても哀しく見えてしまって……。『ハルカはどんな風に笑っていたんだっけ』って一瞬考えた」

クルーヤ「あの子の心からの笑顔を思い出した時には、もうボクにはハルカを倒そうとする意思も、世界のためにコトリさんを眠りにつかせようという想いも残っていなかった」

クルーヤ「やっぱりハルカには心から笑っていてほしい、ハルカの願いを叶えてあげたいって、そう思ってしまった」

クルーヤ「その瞬間にボクは聖騎士としての宿命を……今までずっと貫いてきたものを、完全に手放したんだ……」

バハムート「………」

クルーヤ「前言を撤回しなきゃいけないね。ハルカたちは世界の敵なんかじゃない」

クルーヤ「だって彼女たちは、世界の人々だけじゃなく、世界そのものにすら愛されているんだからさ」

バハムート「…………フン、随分と難儀な親子愛よな」


クルーヤ「ま、でも、悔しいからボクも言わせてもらうよ」

クルーヤ「バハムート、君は一人の女性への愛を貫いたために神である資格を失った。その身勝手な行動は幻獣という一種族を統べる者としてどうなのかな?」

クルーヤ「ボクと同様、君の行動もまた守られるべき摂理というものを無視した行為だ」

バハムート「……何故それを知っている」

クルーヤ「ふふん、ボクの精神波を見くびらないでもらいたいね。君とタカネちゃんのラブラブな戦いは全てお見通しさっ」

バハムート「フン……出歯亀はお互い様、ということか」

バハムート「だが、『我が儘と言われようと大切なものは己の中に在るもの』なのであろう?」

バハムート「先刻お前が独りごちた言葉だぞ」

クルーヤ「うっ……それは……」

バハムート「我は躰の底から湧き上がる衝動に身を委ねただけだ」

バハムート「後悔も罪悪感も無い。在るのは、愛という至上の喜びを知ることができた感謝のみだ」

クルーヤ「……ちぇっ、いい顔ですっかり開き直っちゃって」


クルーヤ「……ねえ、バハムート。変なこと聞くけどいいかな?」

バハムート「……なんだ」

クルーヤ「彼女たちは一体何者なんだろう?」

バハムート「………」

クルーヤ「この世界のほとんど全ての人が彼女たちを支持してるって言ってもいいくらい、今や世界は彼女たちの味方だ。おそらく、魔物でさえも」

クルーヤ「こんなにも他者を魅了する人間には、ボクは今まで出会ったことがない」

クルーヤ「自分の娘なのに変な話なんだけどさ」

バハムート「………」

クルーヤ「本当に、不思議な娘たちだった……」


バハムート「説明は出来ぬ。が、その問いの答えならば我らは既に持ち合わせているのかもしれぬぞ?」

クルーヤ「えっ、そうなのかい?」

バハムート「彼女たちが他者を惹き付ける理由。それは……」

バハムート「彼女たちが、あいどるだからだ」

クルーヤ「!」

バハムート「以前、タカネから聞いたことがある。あいどるとはどういった生態を持つ生物なのかを」

クルーヤ「それで、あいどるってどんな生き物なんだい?」

バハムート「分からぬ」

クルーヤ「…………は?」

バハムート「タカネが話してくれた内容は、我には何一つ理解が及ばなかったのだ」

バハムート「だが、短き時間をタカネと共に過ごし、我は思い至った。あいどるとはつまり、愛すべき存在なのだ、と」

クルーヤ「それって答えになってるのかな……」

バハムート「……さてな」

バハムート「只一つはっきりとしているのは、我もお前もあいどるを愛した、という事実だけだ……」

クルーヤ「うーん、結局何一つわかっていないような……」



バハムート「さて、そろそろ逝くぞ。最早我らは舞台を降りたのだ。これ以上現世に未練を残すのは無粋というものだ」

バハムート「世界の行く末も、コトリのことも……全てはあいどるたち次第であろう」

クルーヤ「……ああ、そうだね」



クルーヤ(ハルカ、リツコ……。キミたちがコトリさんを救えること、地獄の底から願っているよ……)

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