女騎士「お菓子などいらん」(60)

女騎士「悪戯してくれ」

~オーク宅、玄関~

オーク「…」

女騎士「悪戯してくれ」

オーク「そうか、ハロウィンの時期だったな…」

女騎士「うむ」

オーク「はぁ…」

女騎士「さぁ、早く悪戯してくれ」

オーク「本来なら『お菓子をくれなきゃ悪戯するぞ』じゃないのか?」

女騎士「むっ、冷静に指摘されると急に恥ずかしくなってきた」

オーク「ツッコミどころは他にも沢山あるんだがな…その格好とか」

女騎士「ん?あぁこれか。製作期間二週間の力作…カボチャアーマーだ!」

オーク「アーマー?」

ジッ

オーク「乳頭をカボチャの皮で隠しているだけにしか見えないが。下半身にいたっては隠す気すらないのがな…」

女騎士「乳頭をギリギリ見えるか見えないかのバランスにする為、二週間もかかったのさ!」

オーク「かかったのさ!とか言われても…」

ハァ

オーク「とりあえず今日は帰ってくれないか。こんな遅くに来られるのは正直迷惑だ。俺にも家庭があるんだ」

女騎士「うっ…」

オーク「子供はまだ手がかかる年だ。お前の相手ばかりしてやれんのだ…分かってくれ」

女騎士「うぅ…分かった…帰る」

オーク「あぁ、じゃあな。ドア閉めるぞ」

バタン
ガチャッ ジャララ
プシュー プシュー プシュー プシュー

女騎士(チェーンロックしてファブリーズ吹きまくってる…)

プシュー プシュー プシュー プシュー

女騎士(吹きすぎちゃう?)

女騎士「…」

女騎士「帰るか」

テクテクテク

・ ・ ・ ・ ・

オーク「…」

プシュー プシュー プ…

オーク「こんなもんか」

オーク「ふぅ、こんな夜遅くに来るなんて…」

オーク「どうかしてるぜ!」

テクテクテク
スワリ

オーク「はぁ」

?「苦労させられますね、あの人には」

オーク「僧侶…」

僧侶「一緒に冒険していた頃は、あんな風じゃなかったんですけどね」

オーク「何が彼女を…いや、分かっている、か…」

僧侶「…」

オーク「勇者の存在はこんなにも大きいものだったのだな…今更ながら思い知ったよ」

僧侶「えぇ。皆が彼を頼り…信頼し…」

ブンブン

僧侶「いえ、そんな綺麗なものじゃない…依存、していたのでしょうね」

オーク「依存…」

僧侶「彼の言葉は誰にでも心地よいものでした。信じて従えば間違いは無い…まるで神の啓示…」

オーク「そりゃまた…」

ガサゴソ
シュボッ
タバコ スパー

オーク「改めて思うよ。とんでもない奴と戦っていたんだな、俺は…俺達魔王軍は」

僧侶「あなた…」

オーク「ははっ、大丈夫。今更魔界に未練は無いよ。ただあの頃の俺は魔界の王たる魔王様に心酔していた。君が勇者に依存していたように…俺も魔王様に心酔していたのさ」

オーク「その考えを…俺の全てをひっくり返したのが勇者だった…」

オーク「結果的に魔王様を裏切る事になったが…魔界の為に取った今の道を後悔はしていない」

僧侶「そうですね…人と魔物…手を取り合い共に生きる事は出来る。私達のように…」

ギュッ

オーク「あぁ…」

オンギャー オンギャー

オーク「おっと、起きたか」

ガタリ

オーク「俺がやろう。君はもう少し休んでいるといい」

僧侶「はい…お願いしますね、あなた」

オーク「あぁ」

テクテクテク

僧侶「…」

僧侶(私は)

僧侶(私は、穏やかで幸せな生活を手に入れた…かつて勇者様と壮絶な冒険をした、この私が)

僧侶(あの日々が嘘のような、平穏で静かな暮らし…)

僧侶(なのに、どうして女騎士さんは…)

フワァ…

部屋に残っていたタバコの煙が
なかなか消えず、漂っていた。
まるでそれが女騎士のように
いまだ行く当ての無いかのように
ゆらゆらと、漂っていた…

【続く】

・ ・ ・ ・ ・

~女騎士の家~

女騎士「…」

トントントン
ギュッギュッギュッ

白菜、豚バラ
白菜、豚バラ、白菜
白菜、豚バラ、白菜、豚バラ
白菜、豚バラ、白菜、豚バラ、白菜

女騎士「よし…鍋一杯に!白菜と豚バラを!交互に敷き詰めたぞ!」

女騎士「ふっふっふ…いわゆる白菜と豚バラのミルフィーユ鍋というやつだ!」

女騎士「便利…実に便利!クックパッドというものは!」

ジュルリ

女騎士「ききっ…ふひっ…くききききき!」

ヨダレ ダラァ

女騎士「加熱!土鍋ゆえに、じんわりとまんべんなく加熱!絶対に加熱!例外無く加熱!逃れられぬ加熱!」

ジョバババババ
シッキン! シッキン!

女騎士「水など無粋な物は入れぬ…白菜から出る水分のみ…それのみ…だからこそ到達できる高み!甘みという高み!」

ジンワリ

女騎士「ほぅら、じくじくと…水分…出てくる…まるでダイヤモンド…まじりっけなしだ!」

フク ヌギィ

女騎士「あぁ…私もこの中に…入りたい…だが入れない…」

ハッ

女騎士「いや…果たして…入れないのだろうか?」

女騎士「決めつけ…思考の停止は死と同様…やる前から無理などと…」

女騎士「やれるかどうかは分からない…だが!やってみなければ!一生分からない!」

グツグツ

女騎士「は、入る…私は…このミルフィーユ鍋の中に…アッツアツの鍋の中に!」

ギリッ

女騎士「全身は入らない…だが…あるいは…あるいは!」

女騎士「私の願いを叶える、気まぐれな神がいたとして…突然時空が歪んだとして…あらゆる事象が偶然重なりあったとして!」

女騎士「ありえない事なんて…無い!」

女騎士「…」

チチ モミモミ セルフモミモミ

女騎士「乳神様…私に力を…!」

ミギチチ モミィィィィィ
ヒダリチチ オマメ~ クリクリッ

女騎士「ぶるあああああああああああああああ!」

ビクンビクン

女騎士「今だ!」

ピョーン

女騎士「鍋にダイブ!」

グッグッグッ

女騎士「!」

女騎士(頭が…入った!)

女騎士(このままねじ込めば…腰くらいまでは…)

女騎士(どうやらこの鍋は亜空間に繋がっているらしいな…ならば…全身が入る事は可能だな)

グッグッグッ

女騎士(尻も入った…あとは足…)

バタバタ

女騎士(いける…全身が鍋の中に…入る…)

グワン

女騎士(あ…?)

女騎士(意識…が…)

女騎士(そう、か…酸素…鍋の中は白菜と豚バラで満たされている…圧倒的に酸素が…足りない…)

クラッ

女騎士(も…だめ、だ…し…ぬ…のか…私は…)

キィン…

女騎士(駄目だ…私はまだ死ねない。約束も…果たせないうちに…死ぬ事は…)

キィン…

『平和な世界?』

『そうさ、人も魔物が争わない平和な世界だよ』

『ははっ、無理な話だな』

『でも、やらないうちから無理だって決めつけたら、本当に何もできなくなるよ』

『む、そうには違いないが…』

『やれるかどうかは分からない…でも、やってみなきゃ一生分からないよ。この世界にね、ありえない事なんてのは無いんだ』

『お前は…まっすぐな奴だな』

『そうかな…だったら君も同じさ。揺るがないその信念…そうだ、僕らは皆、似ている』

『私達が…似ている…?』

『あぁ。僕も君も、僧侶も戦士も魔法使いも…皆、似ていたから…惹かれ合ったんだよ、きっと』

『ふふ、惹かれ合う、か…案外ロマンチストなんだな』

『夢見がちな勇者ってのも面白いでしょ?』

『ふっ…ふふっ…』

『ははっ…ははは…』

『なぁ勇者…約束、しようか』

『約束?』

『必ずこの世界を平和にする…やり方は皆、互いに違うかもしれないが…己が信念に基づき…いつか辿り着こう…私達が望み願った…理想に』

『うん…』

『その為にはまず、魔王に会わなければな。倒すにしろ、話し合うにしろ…』

『そうだね』

『進まねばなるまい、わた

『そうだね』

『幾多の困難がま

『そうだね』

『わた

『そうだね』

『め

『そうだね』



『そうだね』

キィン…
キィン…

・ ・ ・ ・ ・

女騎士(…)

女騎士(そうだ、私は約束を果たすまでは…死ねない…)

カッ

女騎士(だから…力を…力を貸せ…)

女騎士(イフリート…)

ミギチチ…ピカァ…

女騎士(ポセイドン…)

ヒダリチチ…ピカァ…

女騎士(女騎士の名の元に命ずる…)

ポワァ…
ブクブクブク!

女騎士「出でよ、イフリート!ポセイドン!」

ブクブクブク!
バビュリュッセルゥゥゥゥゥ!

ナベ パリーン
ハクサイ ブタバラ グッチャグチャ

女騎士「っぶはぁぁっ!」

ハァハァハァ

女騎士「あ、危なかった…もう少しで窒息死するところだった…」

女騎士「ようやく応えてくれたか…イフリート…ポセイドン…」

イフリート『ふん、勘違いするなよ半人前』

ポセイドン『宿主が死ねば我らも消える…それを阻止したまでよ』

女騎士「まったく…久しぶりに口を利けばそんな言い方を…まぁお前達らしいがな」

・ ・ ・ ・ ・

説明しよう!
女騎士の右乳にはイフリート
左乳にはポセイドンという精霊が宿っているのだ。
彼らは基本的に実体を持たず
宿主の精神力に感応し様々な力を発揮するのである。
イフリートは炎の魔神。
ポセイドンは海洋の神。
どちらも最上位の精霊に位置する。

女騎士「さて、鍋からの脱出に成功したんだ…何だか腹が減ったな…」

キョロキョロ
パカッ

女騎士「冷蔵庫には…白菜と豚バラか…よし!白菜と豚バラのミルフィーユ鍋でも作るか!」

>>16に戻る…

・ ・ ・ ・ ・

そして何度目かのループの果てに
女騎士の肉体は鍋に溶けて混ざった。
その意識はスープと一体化していた。
自ら動く事が出来ない彼女は、もはや
誰かが女騎士宅を訪ね、鍋に冷や飯と卵を投入し
雑炊を作るのを待つしかなかった…

・ ・ ・ ・ ・

何度目の桜か?

何度目の滅びか?

何度目の新生命体の誕生か?

もはや、数えていた事も忘れた…
私は…?俺は…?僕は…?オイラは…?
誰?だれ?ダレ?DARE?

ここにあるのは…
温かな…雑炊…そうだ…
雑炊…私は…雑炊…

違う…雑炊ではない…
今はそうだとしても…かつて…
私は…そうだ…思い出せ…
あの日の約束を…果たすんだ…

幾年、幾億、幾光年…
その果てが雑炊だとしても…私は!

ブリュリュリュリュ
ボブン! ボブン! ボブン!

そうだ、肉に魂を吹き込め…

ポワァ ブリュリュリュリュリュリュ ニチュ

魂を記憶で包み込め…

カシュン! カシュン! カシュン

想いを…願いを!構築しろ!

ズバババババババ!

そうだ…かつて、ではない…私は!

バビュリュッセルゥゥゥゥゥ!

女騎士「私は…女騎士だ!」

ミギチチ グルルルルル ヤマヲクダク
ヒダリチチ ボブワァ ウミヲワル

女騎士「はぁっ…はぁっ…ここは…そうか…時の逆行…私は白菜と豚バラのミルフィーユ鍋を作る前に戻ったのか」

女騎士「しかし、一体誰が雑炊を…」

?「誰、だって?」

?「気づいている筈だよ…時を逆行させ、なおかつそれまでの記憶を保持させる…そんな事ができる奴は…僕しかいないだろう?」

クルッ

女騎士「お、お前…」

そこにいたのは
上半身は光り輝く白銀の鎧をまとい
下半身は何も身につけていない
優男が立っていた、そして勃っていた。

女騎士「勇者…」

勇者「そうだよ、僕だよ!勇者だよ!」

コシ グルン
チンポ ビターン ビターン ビタターン

女騎士「くっ、相変わらずの巨根アピールだな」

勇者「僕が時間魔法を使ったのさ…そうしなければ君は永遠に雑炊のまま、生命の輪廻から外れていたよ」

女騎士「そうか、礼をいう。だがな勇者、なぜお前がここにいる…お前は…」

勇者「そう、あの時…魔王と共に次元の狭間に飲み込まれた…」

女騎士「そうだ。次元の狭間は一方通行…二度と出られない筈だ」

勇者「ところがぎっちょん!」

ビンッ

勇者「なんやかんやあって、僕は魔王の魔力を吸収し、次元の狭間から脱出できたのさ」

女騎士「なんやかんや…一体何があったというのだ、勇者!?」

勇者「なんや!」

ブルン チンポ ビタターン

勇者「かんやさ!」

ブルン チンポ ビタターン プリュッ

勇者「おっと勢い余って皮を被ってしまった…戻さないと」

ギュッ ムキッ

勇者「これでよし」

女騎士「…」

女騎士「変わったな勇者…昔のお前なら皮を被っている事など気にしなかった筈だ」

勇者「変わるのさ…人も…ちんぽも…君だって、そうだろう?」

ニヤッ

勇者「僕との約束も忘れ、のうのうと…ぬくぬくと…ただ生きて…白菜と豚バラのミルフィーユ鍋なんぞ作る…酷い女だよ、君は」

女騎士「っ、ちがっ…」

勇者「違わないさ!君も!世界も!変わっていく…変わって、しまう!」

クックック

勇者「魔王は正しかったよ…やはり人は支配されてこそ秩序を保てる…必要なんだ、絶対的な支配が…畏怖が…恐怖が…」

勇者「魔王という!存在が!」
ビンッ
チンポ フルマックス!

勇者「ならば…僕がなろう…絶対的な支配者に…恐怖の対象に…つまりは…魔王に…」

女騎士「ゆ、勇者…お前は…」

勇者「違うさ…僕はもう勇者じゃない…」

勇者→魔王「僕は…私は…魔王だ!」

バビュリュッセルゥゥゥゥゥ!
ドゴゴゴゴ!

女騎士「挨拶代わりの射精が…大地を割った!?」

魔王「どうだいこの力…人々が恐れるに相応しい素晴らしい力だろう!」

女騎士「お前は…お前は!そんな暴力的な物言いで精子を!」

勇者「そうだと言っている!」

女騎士「何を!」

勇者「分からぬ奴だな、君も!」

女騎士「てか勇者か魔王か表記をはっきりしろ」

魔王「すまん」

魔王「…」

魔王「と、とにかくだ!」

魔王「私は魔王となり人間を支配する…これが私なりの平和の為の手段だ…」

女騎士「な、なにを!」

魔王「邪魔をするなら…君でも容赦しないよ?」

女騎士「容赦しない、だとぅ?」

魔王「そうさ…君のアレをああして、こうして…その下のソレを引っ張って…」

女騎士「や、やめ…」

魔王「さらにアレのアレをああやって…無理矢理……さらに……奥……まだまだ……私の……右が……そうさ……泣くまで……」

女騎士「や、やめてくれぇ!脳内で私を辱めるのは!」

魔王「やめないね!」

モウソウ モウソウ

魔王「ハァハァ…すごいじゃないか…そんなところを…あぁ…意外に…なんと…はぁぁあん!」

ドピュッ ドピュッ プレシャスタイム…
モッサン! ゴッサン! ドビュッシー!

女騎士「いやっ…半透明ヨーグルト!」

ジュワッ

女騎士「っ!?肌が…!」

魔王「ンフフフフ…私の精液は強酸性…触れればたちまち焼け爛れる!」

女騎士「に、人間兵器!」

魔王「そう…性交もできぬ…哀れな体よ!」

女騎士「…いや魔王よ…実は私も…特殊な体質なんだよ…膣内が強アルカリの…人間兵器なんだ!」

魔王「!」

シュバババ
クルッ スタッ ダダダダ キメッ

魔王・女騎士「「なんと奇遇な!!!!」」

魔王「ならば!」

女騎士「あぁ!」

魔王「いくぞ!」

ピョーン バサァ チンポ フライアゥェイ

女騎士「きませい!」

ゼンラ ウケイレタイセイ リョウコウ

【【ファイナルフュージョン!!】】

どるるるる!

ぐにゃぁぁぁん!

魔王「あ、あ、あああ!」

女騎士「んっ、んっ、んっ」

右回り、左回り、右回り
右、左、右、左
右右右右右右右右右右右
ナロナロナロナロナロナロ
左左左左左左左左左左左
ナエナエナエナエナエナエ

「「のわぁぁぁぁぁぁぁぁ!」」

・ ・ ・ ・ ・

こうして
魔王は右に左に回りに回り
女騎士の中に入ったり出たりした。
入っては幾年、出ては幾年。
入っては幾千年、出ては幾千年。
入っては幾億年、出ては幾億年。
そのうち女騎士は摩擦で擦れ発火して灰となった。

灰は灰に…【Ashes to ashes】

塵は塵に…【dust to dust】

魔王「虚しいものだな…人間兵器というのは…」

魔王「いや…虚しいのはこの世界そのものか…」

テレビ ピッ

『今日はハロウィンでーす!みんな仮装してバカ騒ぎしていまーす!』

魔王「ふふ…愚かな人間どもがハロウィンなどとのたまっている…滑稽だ」

魔王「だがいっそ…姿だけでなく…心まで仮装できたなら…楽になれるのだろうか…」

魔王「あぁ…目をつぶれば…彼女の姿が…声が…」

『お菓子などいらん』

『悪戯してくれ』

【完】

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