【ガルパン】しりしまい (51)

~学園艦・艦首展望露天風呂~



 ちゃぷ……ちゃぷ……



梓(……おなら、したくなっちゃった……)

梓(しちゃおうかな。周りには、西住先輩しかいないし──)


みほ「はぁ~練習のあとの温泉は気持ちいいね~」


 ちゃぷ、ちゃぷ……


梓「そ、そうですね」

みほ「お客さんはいないし、私達の貸し切りだよ」

梓「は、はい」

梓(……ぁんっ)

梓(でちゃいそう)

梓(よしっ──しちゃえ!)

梓「~~~っ!」


 …………、……


梓(──あ、あれぇ? いざしようとすると、なんか、でないよ……)

みほ「? 梓ちゃん、どうしたの?」

梓「──っ! い、えいえべつに! <こぽぉっ>……あっ……」

みほ「?」

梓(でた──変に力が入って──)


 ポコボコォ……

梓(足の間から気泡が──ゆっくり、ゆっくりと)


 ……こぽぉっ、こぽ……


みほ「? 泡?」

梓(気付かれちゃた!)

 
 もはぁん……


みほ「……!?」

梓(っ、うぅ、こんな時に限って、いつもより匂いが強いよぉ……)

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1508970958


みほ「梓ちゃん……、した?」

梓「……///」

みほ「やだもう、梓ちゃん」

梓「ごめんなさい……」

梓(ばれちゃった)

みほ「も~……ふふ」

梓(あ、笑ってくれた)

梓「え、えへへ」

みほ「くすくす」

梓「も、もう、あんまり笑わないでください」

みほ「梓ちゃんがいけないんだもん」

梓「そ、そうですけどぉ」


梓(……はぁぁ……楽しいよぉ……)


梓(先輩と一緒に温泉に入って、一緒におならの臭いに鼻をつまんで、それでもなおこうやって笑っていられる)

梓(これが私の今年の成果──高校二年生として、一生懸命頑張った成果なんだ。うん、良い一年だったなぁ)

梓(……先輩、来年の春には卒業しちゃうんだ。……やだな……)




みほ「──さちゃん。ねぇ、梓ちゃん?」

梓「あ、ごめんなさい、少しぼーっとしてしまって……なんですか?」

みほ「うんあのね」

みほ「私って、ちゃんと三年生らしくできてたのかなぁって」

梓「え……?」

みほ「皆から、頼りない先輩だって、思われたりしてないかなぁ」

梓「どうしたんですか、急に」

みほ「この一年間、私はずーっと、自分とお姉ちゃんを比べてたような気がするんだぁ」

梓「お姉さんと……」

梓「……。私にとって、先輩は──最高の先輩です。それに、みんなだって先輩の事を頼りにしてますよ」

みほ「本当?」

梓「はいっ」

みほ「そっか。よかった、ごめんね、急に」

梓「気にしないでください」

梓(……。前からそう。先輩は、時々こうやって、弱気になる。そもそも大洗に転校してきた理由だって──)

梓「西住先輩っ」

みほ「?」

梓「先輩と出会えったおかげで、私の高校生活はすっごく充実してますよっ。──だから、ありがとうございます!」

梓(この学校に、来てくれて!)

みほ「梓ちゃん」

みほ「……」

みほ「んっ……!」

梓(あ、先輩の、元気スイッチが入った──ふふ、そういう事もすっかりわかるようになっちゃったなぁ)

みほ「ねぇ、梓ちゃん!」

梓(ほら)

梓「──はいっ、なんですか?」

みほ「私ね、一度、やってみたかったことがあるの」

梓「なんです?」

みほ「あのね、えへへ──よいしょ、っと」


 ……ざばぁ……

 ……ぺた、ぺた、ぺた


梓「先輩? どこへ……?」


 ぺた、ぺた、……ぴた。


みほ「ふぅ~」

梓(海の方に向かって、仁王立ち?)

みほ「──えぃっ」

梓「!」


梓(す、すっぽんぽんで、夕日に向かって両手を広げて──!)


梓(あ……先輩のお尻、とっても可愛い──)


みほ「んっ、やっぱり恥ずかしいけど、でもなんだか……!」

梓「あ、あの、前くらいは隠したほうがいいのでは」

みほ「ねえ、梓ちゃんも、やろ!」

梓「ふえ!?」

みほ「とっても気持ちいいよっ」

梓「え、ええ~」

梓(西住先輩、テンションの落差がけっこー激しいんだよね)

梓(でも、先輩、とっても楽しそう!)

梓「わかりました! 梓、西住先輩に続きますー!」

みほ「やったぁ」

 ざばぁ、

梓「よい、しょ」

 ひた、ひた、ひた……


梓「ど、どこからも見られてないですよね」


みほ「大丈夫大丈夫、ふふふ、ね、やってみて……?」

梓「は、はいっ」

梓(胸も、おしりも、丸見えで恥ずかしいけど──)

梓「──ふ、ふんぬっー!」



 
 ──ヒュオオオォォォオオオォォ──




梓(────────!)


梓「わぁ……!」


みほ「ふふ、どう?」

梓「すごい……」


梓(目の前、全部、黄金色の海──……すごく綺麗……! そして海風が、オッパイとか、お腹とか、おまたとか、いつもは風があたらないところまでがすごくスース―して──なのに夕日はとってもあったかくて……!)


梓「は、恥ずかしいですけど、でもなんだかコレ──凄く気持ちいいです!」

みほ「ね! 私もそう思う。なんだか、すっごく自由になった気分っ」

梓「はいっ、私もです!」

みほ「うー、裸って、気持ちいいよーっ!」

梓「は、はいーっ!」

みほ「ふふ、梓ちゃーん!」

梓「先輩ーい!」

みほ「あははは……!」


梓(あぁ……先輩って──やっぱり不思議な人……二面性? っていうのかなぁ……)

梓(戦車道をしている時や、今みたいにやんちゃになってる時の先輩と……さっきみたいに、なんだか内気な先輩と──)

梓(どっちが──本当の先輩なんだろう……)

梓(でも、とにかく、私はそのギャップ……好き、かな……)

梓(──いつだったか、エリカさんが言ってた)

梓(西住先輩、昔は結構、やんちゃな子供だったらしいって)

梓(だとしたら──そういう子どものころの気持ちを、先輩は今、私に見せてくれてるのかな)


梓(嬉しい)


梓(今なら──ちょっぴり大胆なお話しも──できるかな!)

梓(もっと一杯、皆とはしないような、普通じゃないお話しがしたいんだもん……!)

梓「あ、あのっ」

みほ「うん?」

梓「せ、先輩ってその」

みほ「?」

梓「お、お尻、すごく綺麗ですね!」

みほ「お、おしり?」

梓「は、はい」

みほ「……え、えっと……」


梓(……あっ!?)

 
みほ「そ、そう……かな……?」

梓(やっちゃった……!?)


 ……いそいそ……


梓(あぁぁ……先輩、タオルで、お尻を隠しちゃった……早まっちゃったのかな……)

梓「ご、ごめんなさい、変な事を言って」

みほ「う、ううん! いいの、それに裸で一緒に立とうってそう言ったのは私のほうなのに、今更恥ずかしがって……私こそ、ごめんね……?」

梓「い、いえ、そんな」

みほ「え、と……じゃ、じゃあ、からだ冷えちゃうし、湯舟に戻ろっか」

梓「あ……」

梓(あぁぁ……せっかく、やんちゃみほ先輩だったのに……私の馬鹿ぁ)



 ……いそいそ……ちゃぷん……



みほ「ふ、ふぅー、暖かいね……」

梓「は、はい」

梓「……。」


梓(あぁ……もっとみていたかったな。先輩のおしり……)

梓(べ、別に、変な意味じゃないよ)

梓(先輩のありのままの姿をみてるんだって、思うと、なんだか、自分が先輩の特別になれたような気がして──)


梓(ちぇ……調子に乗りすぎちゃったのかなぁ)


みほ「──きちゃん、ねぇ、梓ちゃん」

梓「……あ、はい!? な、なんでしょう、すみませんまた、少しボーとしてて」

みほ「その、さっきのお尻の、ことなんだけど……」

梓「っ、ご、ごめんなさい! もう二度と、変なことは言わないです」

みほ「あ、ううん、そうじゃなくて──」

梓「え?」

みほ「実は……ちょっとだけ、自信あるんだ……お尻」

梓「え」

みほ「梓ちゃんは、大殿筋とか、肛門括約筋とかって、分かる?」

梓「えと、はい、なんとなく……」

梓(……うぅ、『肛門』って、先輩の口から……なんだか、ドキドキしちゃう……)

梓「く、訓練ですか? おしりの?」

みほ「うん、おしりの形が良くなるから、って」

梓「あ、なるほど……さすが西住流。先輩は、そんなところまで努力をしてるんですね、凄いです」

みほ「皆には言っちゃやだよ? けどそのおかげで確かにこう……キュッ、て、なってるかなって」

梓「へぇあぁ~……」

みほ「だから──ちょっとだけお尻に自身が……あったり、します。なので──ありがとう、私のお尻をおほめてくれて。恥ずかしかったけど……少し、嬉しかったよ」

梓(……先輩……)

梓「そうだったんですね……先輩のおしりは、日々の鍛錬のの証ですね! 素晴らしいです!」

みほ「ん……ありがとう、えへへ……」

梓(ふふ──……。先輩は本当に、可愛いなぁ……)

みほ「あ、そういえば──」

梓「?」

みほ「ふふ、くすくす……おしりで思い出しちゃった」

梓「???」

みほ「昔ね──私もお姉ちゃんもまだ子供だったころの話なんだけど」







 ────────────







みほ「──ねーねーお尻みせて、お姉ちゃんお尻みせてよ~」

まほ「もー……だから駄目だってば……」

みほ「なんで、どうしてぇ?」

まほ「だって、恥ずかしいよ……」

みほ「でもお姉ちゃんのお尻見たいー」

まほ「あのねみほ、お尻は人には見せちゃいけないところなんだよ?」

みほ「どうしていけないの?」

まほ「それは……恥ずかしい所だからだよ」

みほ「なんで恥ずかしいのー?」

まほ「なんでって……おトイレする所だからだよ」

みほ「おトイレは恥ずかしいことなの??」

まほ「う、うーん……と、とにかく、みほだって人にお尻を観られるのは恥ずかしいだろう?」

みほ「みほは、お姉ちゃんにならお尻みせてもいーよ?」ペロン

まほ「わぁぁぁぁ、駄目だよみほ、お母さま見つかったら怒られるよ、さぁパンツを上げて」ゴソゴソ

みほ「でもお母さんはお出かけしてるよー?」

まほ「それは、そうだけど……」

みほ「ねぇ見たい見たいー、お姉ちゃんのお尻みたいよぉー」ジタバタ

まほ「うぅ、……ああもぅ、しかたないなぁ……誰にもいっちゃだめだからね……?」

 ぬぎぬぎ、ぺろん

まほ「ほ、ほら、お尻だよ」

みほ「キャーーーーっ! おしりーーー!」キャッキャ

まほ「もぅ、みほは変な子だなぁ、ふふ」

みほ「お姉ちゃんのお尻ー♪」クイッ

まほ「ひゃぁ!? み、みほ!」

みほ「あれぇ? お尻の中にもオヘソがあるよー……?」

まほ「っ! もーっ、もう駄目! 終わりっ!」バッ

みほ「あーん、もっと見せてよぅ」

まほ「駄目っー! ……もー……あのね、みほ、よく聞いて」

みほ「?」

まほ「こんなこと、お友達とは絶対にしちゃいけないよ」

みほ「え~」

まほ「絶対にしないって、今ここでお姉ちゃんと約束して。お姉ちゃんと──約束、いい?」ズィッ

みほ「うー……。わかった」

まほ「ん、みほはいい子だよ」

みほ「ねぇお姉ちゃん、お尻のおへその事、お母さんに聞いてもいい?」

まほ「だめー! もう、しょうがないなぁ、おいで、その事はお姉ちゃんが教えてあげる」

みほ「わぁ~い」




 ────────────




みほ「──それからも、私は時々お姉ちゃんにおしりをせがんで……」

梓「へぇ……」


梓(……うらやましーなーお姉さん……私も西住先輩に、そんな風にせまられてみたいなぁ……)


みほ「今思うと少し恥ずかしいけどね。お姉ちゃんも、きっと覚えてるだろうなぁ」

梓「そうですね、妹である先輩が覚えてるくらいですから、多分……」

みほ「だよねぇ……はうぅ……」

梓「あはは」

梓(……けど、本当に──羨ましい。本当の、姉妹……)

梓(……。)

梓(──私は時々、こう思う時がある──)

梓(──私は、この人のお姉ちゃんになりたい……──)

梓(側にいて、一緒にいて……いつも元気に、笑っていさせてあげたい、弱気になった時はいつも励ましてあげたい、弱音も愚痴も全部きいてあげたいって、思う……)

梓(……。)

梓(変だよね……私の方が年下なのに……)

梓(でも……)


 ──────

~学校・授業中~

 
<先生「で、あるからして~──……」


梓(今日は久しぶりに先輩の家にお泊りだ──嬉しいな)

梓(梓。なんでもいい、何かアプローチしなさい。行動の先に、チャンスはあるっ)

梓(私の目標は先輩のお姉さん。じゃあ──どうしたらいい?)

梓(『先輩のお姉さん』……、まほさん)

梓(まほさんは……先輩の事を『みほ』って呼んでる……)

梓(……。)

 『ねぇ、梓ちゃん』

梓(はい、なんですか……み、ほ……)

梓(……っ)

梓(ノ、ノンナさんみたいだぁ)

 『あのね、梓ちゃん』

梓(なんだい、み、みほ……っ、みほっ)

梓(~~~~~~~!!)

梓(だめだぁっ、先輩を呼び捨てになんかできないよぉ)

梓「……うぅ」

梓(あぁ、顔が熱い。心臓がどきどきいってるぅ)



<先生「……わさん。──さわさん。……こら! 澤さん!」



梓(──!?)


梓「は、はい!?」


<先生「次、澤さんでしょう! 早く続きを読んで!」


梓「!? つ、続き……??」

<先生「……。ちゃんと授業を聞いていましたか?」

梓「ひぐっ……」


あゆみ(142ペーシ! 三行目からだよっ)


梓(あ──! ありがと!)


あゆみ(いいってことよ)


梓「え、えとえと、──」
 

 
 ──────────。



~その日の夜・みほの家~


梓「じゃあ先輩、電気、消しますね」

みほ「うん、ありがとう」


梓(とほほ──結局、普通に一緒に勉強をして、一緒にご飯をたべて──それだけで終わっちゃった……)

カチカチ


梓「うぁう、寒い寒い」

みほ「早くベッドにはいりなよー」

梓「はい~」


 もぞもぞ


みほ「きゃっ、梓ちゃんの足冷たい」

梓「す、すみません」

梓(先輩の足は、暖かいです)

みほ「けど、こうして一緒に寝るのも久しぶりだね」

梓「ですね~……大会の頃は特に、一緒に作戦会議なんかをして、そのまま泊めてもらうことが多くて……私が買ってきたこの枕、まだおいておいてくれたんですね」

みほ「うん。梓ちゃんが使ってない間は、抱き枕替わりにしてるよ」

梓「え、そ、そうなんですか?」

みほ「あ、ごめんね、嫌だった?」

梓「あ、いえ、全然」

梓(……先輩にいつも、抱かれてるまくら……先輩の臭い、するかなぁ)

みほ「よかった。じゃあ、お休み~」

梓「はい、お休みなさい」

 ──────

みほ「ん~……」

梓「どうしたんです?」

みほ「なんだか手持ちぶたさだなって」

梓「手持ちぶたさ?」

みほ「梓ちゃんの事、抱き枕替わりにしてもいい?」

梓「えっ」

梓(……じ、冗談、なのかな……だって、女のコどうしても普通はあんまりそんな事しないと思うし……)

梓(ただ先輩って、そういう突飛な事普通にしちゃいそうなとこあるし──私としてもべつに──)


みほ「……。……なんっちゃってね。ごめんね、困らせちゃったね」


梓「え、あ、え……」


みほ「ふふ、じゃ、お休み……」

梓「……、お休みなさい……」

梓(うー……チャンス、だった……のかなぁ……大後悔……)



 ──────────。

梓(眠れない)

梓(さっきの事を悔やんでるせいかな)

梓(……)


みほ「スー、フー」


梓(先輩の呼吸も、まだ起きてる)


みほ「フー、スー」


梓(やっぱり、もっともっと変なお話し、したい……動けっ、梓っ)


梓「あ、あの、先輩」

みほ「……んぅ?」

梓(あ、半分、寝てたのかな。ごめんなさい。でも──)



梓「先輩は──お姉さんのお尻、今でも見たいですか?」

みほ「え? もう……ふふ、何のお話……?」

梓「えと……姉妹って、どうなのかなって……うちは姉弟なので」

梓(我ながら適当だなぁ)

みほ「んー……。今でも、かぁ……」

梓「……」

みほ「お尻は子どもの頃の話──だもんね……私達はもう高校生だし……」

梓「じゃあ、もう今は別に?」

みほ「……。ん…………」

みほ「そうだよね、もう……そんなことしちゃいけないんだもんね……」

梓(……)

梓「まぁ、そう……ですかねぇ」

梓(そうは言うけど、先輩、なんだか横顔……寂しそう……)

みほ「……」

みほ「だけどねー……、時々……」

梓「……?」

みほ「懐かしくなるんだぁ。そんな風にお姉ちゃんとお尻を見せ合いっこしてた頃が


梓「……」

みほ「変……かな」

梓「そんな事ないです。兄弟姉妹って、いろいろおかしな事、しちゃいますよ」

みほ「ありがと……そっか、梓ちゃんもお姉さんなんだもんね。ふふ、きっと──良いお姉さんなんだね、梓ちゃんは」


梓「…………!」


梓(……っ、先輩の馬鹿っ……誘惑、ですっ、それはっ……)


梓「あ、あの……」

みほ「?」

梓「わ──私だって、先輩になら、お尻を見られても、全然恥ずかしくないです。その……お尻のおへそだって……っ」

みほ「え……?」

梓(あっ……しまった、つい、我慢できなくって……)

梓「ご、ごめんなさい、他人なのに、気持ち悪いですよね」

みほ「ん……そんな事ないよ。そういってくれて嬉しいよ、梓ちゃん」

梓「そ、そうですか……」

梓「……」

梓「あ、あのっ」

みほ「うん?」

梓「……あの……」

梓「……」

梓(駄目だ……。『それなら今、私のお尻を見てくれますか』って──……さすがにそこまではいえないよ……)

みほ「梓ちゃん?」

梓(……っ)

梓「わ──私でよこれば、どうぞ! 抱き枕でも、何でも……どうぞ!」

みほ「……ふふ、そう? うん、わかった。じゃあ──」


 きゅ


みほ「梓ちゃんの腕、ちょっとだけ借りるね」


梓「は、はい……」

みほ「昔、よくお姉ちゃんとこうしてたなぁ……」

梓(……っ……っ)

梓(先輩は、先輩は……たらしですっ……)

梓(……はぁ、悔しい……)

梓(──私がもしお姉さんだったら──嫌がったりなんかせず、先輩にいっぱい、おしりを見せてあげたのにな──)

梓(私が──先輩のお姉さんだったなら──)




 ────────

 ~大洗VS黒森峰・練習試合場~


梓「エリカさん」

エリカ「梓」

梓「ご卒業おめでとうございます」

エリカ「式はまだ来年なんだけど」

梓「はぁ。でも今日が最後の練習試合ですから、もう会うこともないでしょうし」

エリカ「そういえばそうね。どうでもよいので気にしてなかったわ」

梓「……。」

エリカ「……。」

梓「あの、エリカさん」

エリカ「何?」

梓「エリカさんって、お姉さんがいましたよね」

エリカ「いるけど」

梓「お姉さんのお尻とかって、見たことあります?」

エリカ「そりゃ一緒に風呂に入れば尻くらいは──何なのアンタ」

梓「エリカさんみたいな人でも、お姉さんのお尻がみたいとかって思うのかなと、思いまして」

エリカ「思うわけないでしょ。人の尻なんかみてどうするのよ汚い」

梓「汚い、ですか」

エリカ「あたりまえでしょ」

梓「まぁ、そうですけど」

エリカ「何を聞きたいのか知らないけど──」

エリカ「誰にだって汚いとこや見せたくない部分くらいある」

梓「……え?」

エリカ「人のお尻なんて、おいそれと見ようとするもんじゃないわ」

梓「まぁ……そうですけど……」

エリカ「ふん、これが最後の会話でしょうに、くだらないわね」

梓「はぁ、すいません」

エリカ「じゃ、行くから」

梓「はい。あの、えっと……お元気で」

エリカ「まーあんたも適当に、達者で」

梓「はい」


エリカ「……。」

梓「……。」


エリカ「──梓」

梓「え、はい」

エリカ「大学でも続けるのなら、またかかってらっしゃい」

梓「え……」

エリカ「……じゃあね」

梓「……、大学に入ったらまた、LINEで連絡します。……また試合してください」

エリカ「ふん、浪人するんじゃないわよ」ノシ


 つかつかつかつか……。


梓「──……。」

梓(エリカさんのお尻は、きっとものすごく臭いんだろうな。意地が悪くて。汗臭くて。エリカさんのお尻は──べつにみたくないや)

梓(『──汚いとこや見せたくない部分──』)

梓(でもエリカさん、お尻って──それだけじゃないですよ。きっと……)


 ──お姉ちゃんのお尻ー♪ キャッキャッ──


梓(……)

 ──────。






 ~学校、昼休み~




梓「……。」

 
   ──汚いとこや見せたくない部分──

 ──時々懐かしくなる。そんな風にお姉ちゃんとお尻を見せ合いっこしてた事──


梓(相変わらず、正反対な二人なんだなぁ)

桂利奈「ねー、あずさってば今日すっごい静かじゃん、どしたの?」

あや「ほっときなよ。考え事でしょ」

桂利奈「新隊長は大変だねぇ」

梓「……。よしっ」

あや「あ、動いた」

桂利奈「考え事は終わり?」

梓「うんもう終わり。やっぱり私は先輩のお姉ちゃんになりたい」

桂利奈「??」

梓「ちょっと西住先輩の教室にいってくる!」

桂利奈「いってらっしゃーい、よくわからんないけど」

あや「ラブだねぇ」

 たったったった……

 ──────。





梓「優花里先輩」

優花里「あれぇ、隊長」

梓「あの、西住先輩に用事があって」

優花里「ほい了解、西住殿~、隊長がお呼びですよ~」

梓「あ、あのぅ、隊長って言うのは試合の時だけにしてくださいよぅ、皆さんの方が先輩なんですし」

優花里「だめだめぇ、隊長は隊長なんだからぁ」

梓「うぅ、慣れないです」

みほ「──梓ちゃん?」

梓「西住先輩、えっと、ちょっとお話し良いですか」

みほ「うん、いいよ?」

梓「ここではなんなので、ちょっと外へ」

みほ「? うん、じゃあ」



 ──────。



みほ「ふぇ? 私のお姉ちゃんになりたい……?」

梓「は──はいっ」

みほ「……」

梓「……」

梓(ちょっと、直球すぎたかな……)

みほ「……」

みほ「そっかぁ」

梓(へ)

みほ「梓ちゃんは偉いね。ちゃんと自分の言いたい事を、相手の目を見てまっすぐに言える、立派だよ」

梓「……いえ、あの……」

梓(い、いくら先輩でも、普通に驚く場面では……)

みほ「──うん、お姉ちゃんみたいな立派な先輩に、梓ちゃんもきっとなれるよ」

梓(──あ!? 先輩勘違いしてる!)

梓「いえ、あの! そういう意味では……」

みほ「ふぇ?」 

梓「……っ……!!」

梓(ええい! 当たってくだけろっ)

梓「わ、私……先輩にわたしのお尻を見てほしいんです」

みほ「え……?」

梓「先輩のお姉ちゃんになりたいんです」

みほ「……」

梓「ふざけてるように聞こえるかもしれないけど、私、真剣ですっ」

みほ「……梓ちゃん……」

みほ「……」

みほ「うん、やっぱり梓ちゃんは偉い。立派になったよ」

梓「え……」

みほ「なんだかまるでエリカさんみたい」

梓「……あんまり嬉しくないです」

梓「……」

みほ「……」

みほ「ね、梓ちゃん」

梓「はい……」

みほ「──今日、私の家にお泊りにくる?」

梓「え……え!?」

みほ「私、受験勉強しなきゃだから、あんまり遊んでばっかりはいられないんだけど」

梓「あ……じゃあ、私もテストがありますから、今日も勉強道具も持っていこうかとっ」

みほ「うん、そうだね」

梓(……っ、お、お尻……みられちゃうのかな……)

みほ「あ──お尻は駄目だよ。そんなエッチなこと、軽々しくしちゃだめ」

梓「え……」

みほ「……ふふ……私のお姉ちゃんになってあげるって──沙織さんも、私に言ってくれたことがあったなぁ」

梓「……あ……」

梓(……そっか……私だけじゃないんだ……)

みほ「でも、梓ちゃんはやっぱり、妹って感じかなぁ」

梓(……)

みほ「じゃあ、一緒にお勉強しようね」

梓「……は、はい……」


 ──────。

梓(なんだか、軽くいなされちゃったなぁ……)

梓(もっと、驚いてほしかたなぁ……)

梓(じゃれつく後輩と、それをあやす先輩って感じ……)

梓(……)

梓「ええい、こんなんじゃだめっ」

梓「先輩のお姉ちゃんになりたいんでしょ、頑張れあずさっ……!」

 パン! パン!


 ──────。





 ~みほマンションの階段~


みほ「あ、帰ったら、まずお洗濯をしなきゃ」

梓「私も手伝います!」

みほ「ううん、梓ちゃんは先に勉強をしてていいよ。下着とかもあるし……ちょっぴり恥ずかしいから」

梓「あ、そっか……」

梓(……えへへー、なんか楽しいなぁ。先輩の日常生活に自然に潜り込む感し……)


 ガチャ、キィ


みほ「ただいまぁ」

梓「先輩一人暮らしなのに」

みほ「でも言っちゃうんだよね」

梓「ちょっぴり分かります。あは」

みほ「じゃあ、私は先にお洗濯をするから、梓ちゃんは好きにしてて。冷蔵庫の飲み物、飲んでいいよ」

梓「はぁ~い」

梓(んふ……毎日こうやって先輩の家に通えたらなぁ。でもさすがに迷惑かなぁ)




みほ「……あれ?」

梓「? 先輩、どうしました?」

みほ「わたし、部屋の灯り消し忘れてたのかな」

梓(? ……廊下の奥、部屋のドアの隙間から灯りが漏れてる……?)

みほ「それに、この、靴」

梓(あ……玄関に揃えておかれてるこの靴、大人の女性のはく革靴だ……先輩のじゃ、ない。じゃあ──誰の……)

みほ「………………お母さん?」

梓「え……」

みほ「──梓ちゃん、ごめん、ちょっとここで待っていて」

梓「え、あ、はい」


 とっ、とっ、とっ……ガチャァ……(みほが奥の部屋に入ってく)


梓「……」


 『お、お母さん……』


梓(先輩の声が、漏れ聞こえてくる。じゃあやっぱりお母さんが)

 『どうして……来るなら、連絡をくれればいいのに』

 『抜き打ちです』

 『抜き打ちって』

 『会合のついでです。……部屋はキチンと整頓をしているようね』
 
 『……』



梓(先輩の声、なんだかあんまり良い雰囲気じゃあない。先輩、あんまりお母さんとは……)

梓(……)

梓(私、帰った方がいいのかな……)



 『でも今日は後輩の子と一緒に勉強をする約束で、急に、困るよ……』

 『長居をするつもりはありません。すぐに帰ります。その子、待ってもらっているのなら、入っていただきなさい』

梓(え)

 『わかりました……』

梓(い、いいのかな)


 カチャ


梓「あ、あの先輩」

みほ「……」


 ぎし、ぎし、ぎし


みほ「梓ちゃん、ごめんね。実はお母さんが来てて」

梓(先輩、やっぱり少し、戸惑ってる)

梓「は、はい、あの、私、今日は」

みほ「ううん、お母さん、すぐ帰るって言ってるから」

梓「そう、ですか……?」

梓(逆光のせいなのかな。先輩の表情、弱弱しい)

梓「じゃあ……えと、お邪魔します」 

みほ「うん。……」



梓(先輩は本当に、あんまりお母さんとうまくいってないんだ……)


 ガチャ


梓「し、失礼します、こんばんは」

しほ「えぇこんばんは。あぁ、後輩とはこの子の事ですか」

みほ「そうだけど……」

梓「あの、初めまして、私、名前は──」

しほ「澤梓さん、ね」

梓「っ、は、はい! 西住先輩にはいつもお世話になっています」

しほ「今年の大洗もなかなか頑張っていたわね。優勝には一歩届かなかったようだけれど」

梓「はい、黒森峰には、及びませんでした。皆さん、とても強かったです」

しほ「どうも」

みほ「……」

しほ「では私の話は手短に──みほ、貴方、こちらで大学に進学したいという話しは電話で聞きましたが、何のために大学へ行くの?」

梓(それって……手短にすませて、いい話のかなぁ……)

みほ「それを聞くために、わざわざ……?」

しほ「もし、これといって明確な目的が無いのなら、わざわざ関東の大学に行くことはありません。早慶レベルの大学を受験するというのなら話は別ですが。そうでないのなら──熊本に戻って黒森峰の大学に通いなさい。学費にしても仕送りにしても小さい金額ではないのですよ」

梓(……。詰問、というか通告みたい。先輩がお母さんを苦手に思うその気持ち、ちょっぴり分かった)

みほ「……」


梓(先輩……)


みほ「お母さん私……先生に、なりたいんです」


梓(──え?)


しほ「……、初耳ね。教職に就く事を考えているの?」

みほ「小学校か、中学校で先生になって──」

みほ「小さい子どもに、戦車道を教えれたら、って」

しほ「そうですか。……そう、そんな事を考えていたの」

梓(そうだったんだ……)

しほ「それは分かりました。では、以降のビジョンはどうなっているの」

みほ「ビ、ジョン?」

しほ「目標があるのならそれを実現するための計画があるのでしょう」

みほ「資格の本とか、先生になるためのガイドが書いてある本は、これ……買いました」

みほ「けど、まだ具体的なことはあんまり決められてなくて……まずは、大学受験をクリアしようって……」

しほ「つまり、具体的なプランはまだ決まっていないのね」

みほ「……はい」

梓(……、私の思い込みなのかもしれないけど、お母さんはそうは言いながらもやっぱり、ちょっとだけ、意外そうというか、びっくりそうというか──私がびっくりしてるから、そう見えるのかもしれないけど)

しほ「……。まぁ……本気で指導員になりたいというのなら、具体的な方法をリストアップしておきなさい」

みほ「はい。……反対は、しないんだね」

しほ「今更、反対はしません。ただ──」

みほ「?」

しほ「貴方がこの先も戦車道に関わっていくというのなら、一つだけ要求をしておきます」

みほ「なんですか」

しほ「もし、まほの身に何かが起こって、あの子が西住流を継げなくなった時」

みほ「……」

梓(……。)

しほ「その時はあなたに話しが回る。貴方は──それを拒むのか、受け入れるのか、態度をはっきりさせておいて頂戴。拒否するならそれはそれで結構です。貴方はすでに一度西住流を捨てている。まぁ養子をとるなり手段を考えます。けれど仮に少しでも受け入れるつもりがあるのなら──西住流を続けなさい。どちらにせよ今さら貴方と再び揉めて時間を浪費することだけはしたくありません」

みほ「……。はい」

しほ「そも指導員を目指すのであれば、西住の人間であるというステータスを活用するくらいのしたたかさを──……まぁ、いいわ、この話は、今日はもうやめておきましょう」



梓(あ……やっぱり、私、邪魔だったかなぁ……)



しほ「では、私は帰ります。──こういう話になるとは思っていなかった。貴方、長引いてしまって申し訳なかったわね」

梓「あ、いえ」

しほ「それと、丁度いいわ、貴方にこれを私ておきましょう」

梓「?」

ばさっ


梓「これ……黒森峰大学の入学案内&願書ですか」

しほ「大学で戦車道を続けるつもりなら参考になさい。来年の大会の成績によっては、特別奨学金制度の利用もできます」

梓「はぁ、ありがとうございます」

梓(……この冊子……本当は西住先輩に渡すつもりだったのかなぁ……)



みほ「……」

 ────────。





しほ「じゃあね」

 ──ガチャン

みほ「……」

梓(……)

みほ「……急に、ごめんね、梓ちゃん」

梓「いえ、そんな」

みほ「じゃあ、勉強、しよっか」

梓「あ、はい。あの私、お茶、入れますね」


 と、と、と、と……


梓(……先生の事とか、西住流の事とか……先輩が何かいうまでは、私からは聞かないでいよう)

梓(……。でも、先輩はやっぱりすごいです)

梓(将来の目標とか、ちゃんとしっかり考えてるんだ)

梓(それなのに私、何も考えてないくせに、先輩のお姉ちゃんになりたいとか、オシリお尻っとかて、うぅ、なんだか私、恥ずかしい、バカみたい……)


梓(……だけど……)


梓(先輩が立派だからこそ、頑張ってるからこそっ……やっぱり、私!)


 ────────。


みほ「じゃ、電気、消すね」

梓「はい、お願いします!」


 かち、かち


みほ「うぅー、寒いぃ……」


 ……もぞもぞ


みほ「お休み、梓ちゃん」

梓「はい、お休みなさい」


梓「……すぅ……」


梓(あはは~結局、何ごともなかったように勉強をして、一緒にご飯を食べて、代わりバンコにお風呂にはいってしてしまったぁ~)

梓(だけど先輩、お母さんが帰ってから──やっぱりちょっとだけ口数が少なくて、なんだか出会ったころの先輩を思い出すな……)


みほ「すー……すー……」

梓(先輩いま何を考えてるのかな……)


梓「……。あのう先輩」

みほ「ん?」

梓「今日みたいにまた……勉強をしにきてもいいですか」

みほ「うん、いいよ」

梓「邪魔になったら、言ってください。私、すぐに調子にのっちゃいますから……」

みほ「あはは、うんわかった。でも、大丈夫だよ。私、梓ちゃんといるとなんだか気持ちがリラックスするの。だから」

梓「本当ですか。嬉しいです」

みほ「だから……お母さんと話しをしていた時も、梓ちゃんが見てるんだからって、いつもより頑張れった気がする」

梓(あ……その話、してくれるんだ……)

みほ「お姉ちゃんがいつもエリカさんと一緒にいた理由、ちょっとだけわかるような気がしたんだぁ」

梓「あのお二人の場合は、エリカさんが一方的にお姉さんにくっついていたんだと思いますけどねー」

梓(……って、私も人のこと言えないか……)

みほ「あ、だけどこれだけは約束してね」

梓「?」

みほ「うちに泊まる時は──梓ちゃんもかならず、そのボコパジャマを着ること」

梓「う……ちょっと恥ずかしいです……」

みほ「ううん、とっても可愛いよっ、Mサイズ、予備を買っておいてよかったぁ」

梓「はは……」

梓(パジャマは恥ずかしいけれど……でも良かった、先輩の声、笑ってる)

みほ「今日は、ごめんね。お母さんがこの家にくるとは思ってなくて」

梓「いえ、謝る事なんて、本当に何もないです」


 …………ボォォォォォォォ…………


梓(あ、学園艦……今、出航してるんだ)

梓(……)

梓「私こそやっぱり、お邪魔だったんじゃないかなって」

みほ「ううん、何度もいうけど、そんな事ないよ」

梓「はい……」


みほ「……」

梓「……」


梓「あの……先輩」

みほ「何……?」

梓「私、自分が恥ずかしいです」

みほ「どうして?」

梓「私、……おしりのことしか、考えてませんでした」

みほ「お尻……」

梓「先輩は、将来の事とかちゃんと考えて、お家の事とかでもいっぱい悩んでます。それに比べたら私、本当にバカです」

みほ「……。」

梓「先生になりたいっていう先輩の話、すごく立派だと思います」

みほ「そう、かな」

梓「でも、だからこそ私────やっぱり先輩のお姉ちゃんになりたいです!」

みほ「梓ちゃん」

梓「先輩がすごく立派な人だからこそ、私も負けないくらいにもっともっと頑張って、先輩に甘えてもらえるくらいになりたいんです!」

みほ「……。梓ちゃんは、どうして、そんな風に思ってくれるの……?」

梓「それは、……、言ったら、先輩に怒られそうです」

みほ「……怒らないよ、約束する」

梓「じゃあ……」


梓「……私、先輩の事は尊敬してます。でも、それ以上に──先輩の事……可愛くて……」


みほ「……」

梓「私、家ではお姉ちゃんなんです。だから、かなぁ。なんとなく感じるんです。先輩は本当は甘えんぼで、いまでもお姉さんに甘えていたいんじゃないかなって」

みほ「……」

梓「お姉さんとの思い出話をしてるとき先輩は本当に幸せそうです。そんなふうに甘えんぼなくせに頑張ってる先輩が……私、可愛く思てしかたがなくて……」

みほ「………………」

梓「生意気言って、ごめんなさい……」

みほ「……。私……先生になるのは無理なのかな」

梓「え?」

みほ「後輩の梓ちゃんに、そんな風に思われてるんだもん」

梓「いや、私が勝手にこう感じているだけで……」

みほ「……」

梓「あの、せ、先輩」

みほ「……」

梓(調子に乗りすぎた、のかな……)

みほ「私、これでも精一杯頑張ってるんだけどなぁ」

梓「……」

みほ「可愛い……かぁ」

梓「せ、先輩……」

みほ「もう寝るね、お休み」

梓「お、怒ってるんですか? 怒らないって約束したじゃないですかぁ」

みほ「知らないもん」

 もぞ

梓「あ、あ」

梓(先輩、背中を向けっちゃった……)


梓「先輩ぃ……」

梓「本当、生意気いってごめんなさい。……。でも──」


 ……え、ちょっと──


梓「そうやって拗ねてる先輩は」


 待って、何を考えてるの梓、それは言っちゃダメだってば


梓「今までで一番」


 だめだめだめ!


梓「可愛い、です」


 ……あぁ……言っちゃった……


 馬鹿ぁ……


みほ「……」


梓(怒られるに決まってる)

梓(けど)

梓(拗ねてる先輩、本当に、今までのどの先輩よりも、可愛い……)



みほ「今のは、ちょっとだけ──」

梓「え?」

みほ「お姉ちゃんぽかった、かな」

梓「え」

みほ「梓ちゃん」

梓「はい……?」

みほ「おしりみせて」

梓「……え?」

みほ「そこまで言うなら、おしりみせて」

梓「言うなら、って……」


梓(……)

梓(……何が、おこってるんだろう──)

梓(──だけど──……先に、進むんだっ)


梓「わ、わかりました」

梓「でも、ちょっとだけ待ってください。お風呂場で、おしり、綺麗にしてきたいです」

みほ「うん」

梓「じゃあ」

 ごそ……

 ──────。






 ごし、ごし

梓(ウェットティッシュで、よく拭いて、それから、コロンを──)

 ごそごそ

梓「自分のおしりに、コロンをつける日がくるとは思わなかったなぁ。でも、やな臭いがしたら恥ずかしいもん……ちゃんと、広げて──えいっ」

 かしゅッ、かしゅッ、

梓「ひゃっ! スース―する」


梓(想像してたシチュエーションとは少し違う、し──)

梓(タイミングは思いがけないけど──)

梓(でも、いじけた先輩の我儘をしかたなく聞いて上げてる私)

梓「これはちょっとだけ、お姉ちゃんっぽいぞ、梓……」




 ──────。


 


梓「で、では、どうぞ」


みほ「……」 


梓(豆電球の薄暗い灯り、おしりすっぽんっぽんで、先輩のベッドにうつ伏せになってる私……)

梓(みんなのおしりは、お風呂で見慣れてるけど……)

梓(さすがにこれは少し恥ずかしい)

梓(けど……)

梓(やっと先輩に、こうしておしりを……)

  ──エリカ「誰にだって汚いとこや見せたくない部分くらいある」──

梓(たしかにおしりは汚いですよ、臭いですよ。でも……先輩にとって、お尻は……)

みほ「梓ちゃんのおしりは、とっても綺麗だね」

 さわ……さわ……

梓「っ……」

梓(先輩の手、冷たい。……ううん、私のおしりが、熱いんだ。心臓、こんなにドキドキしてるから……)

みほ「ジョギングも、筋力トレーニングも、とっても頑張ってる。おしりって筋肉なんだよ。梓ちゃんのおしりはとってもよく頑張ってるおしり」

梓「あ、ありがとうございます……」

みほ「子どものころ……よくお姉ちゃんがこうやってマッサージしてくれた」
 
 ……むに、むに……

梓「ん……」

梓(先輩の手の平におしりをこねられるの、恥ずかしいけど、……気持ちいい……)

みほ「お母さんに隠れて、お姉ちゃんと。懐かしいなぁ」

梓「……」

みほ「でも、懐かしいって思うのは……もう戻れないって、分かってるからなのかな」

梓「先輩……先輩はやっぱり今でも、お姉さんのおしりを触っていたいんですね」

みほ「……。うん、そうだよ。触りたい……とっても触りたい……」


梓(──……先輩……)


 ……むに、むに……


梓「じゃあ、お願いを、してみたらどうですか」

みほ「駄目だよ。そんなお願いをしたら、お姉ちゃんに心配されちゃうもの」

梓「そうかもしれませんけど、でも──」

みほ「?」

梓「もしかしたらお姉さんも、先輩におしりを、さわってほしいと思ってるかも」

みほ「……。どうして、そう思うの?」

梓「それは──」

梓「私は今、すごく……嬉しいです。先輩と一緒に、他人とは違う事をしてる」

みほ「……」

梓「私の恥ずかしいところを、先輩が見てくれてる、触ってくれてる。なんだかとっても……特別な気持ちです……」

みほ「……」

梓「お姉さんだって、もしかしたらそんな風に──」

みほ「──あずさ、ちゃん……」


 ぴとっ……


梓「──ッ……!?」

梓(私のおしりに、先輩が鼻を)


みほ「わ、梓ちゃんのおしり、桃の香りがする」

梓「はひっ」

梓(こ、コロン、つけておいてよかった)


みほ「私もね、子供のころ、梓ちゃんとおんなじような事を考えてたよ」

梓「先輩も」

みほ「お姉ちゃんは私の特別……私がお姉ちゃんにしたことは、本当は全部──私がお姉ちゃんにしてほしかった事。私は、私の全部を、お姉ちゃんにみてほしかった」

梓「先輩の、全部……」

みほ「おしりも、口の中も、耳の中も、全部みてほしかった。……おしりのにおいも、かいでほしかった。私はとんでもない甘えんぼなんだよ。お母さんが厳しい人だからなのかなぁ」

梓「……」

みほ「でも、小学校にはいって、寄宿舎に入って──そういうのはあんまり普通のことじゃないんだって、恥ずかしいことなんだって、分かってきた。だからお姉ちゃんを困らせちゃいけないって……」

みほ「それ以来、寂しいけど──ずっとずっと、我慢してる。そうしなきゃ、私だけじゃなくてお姉ちゃんまで皆にバカにされる」

梓「……」

みほ「梓ちゃんにも、笑われちゃうね」

梓「私は……。私はそんな先輩が、やっぱり、可愛いです」

みほ「梓ちゃんは、そればっかり」

梓「でも、だって、そうだからしかたないです」

みほ「……。子どものころ、お姉ちゃんに、みほは変な子だねって言われた。その通りだと思う。だけど──梓ちゃんも──同じくらい、変な子だねー……」

 さわ、さわ

梓「……。先輩」

みほ「ん……?」

 さわ、さわ

梓「先輩は、これからも全部、我慢していくんですか。寂しい事も、甘えたい事も」

みほ「うん、そうだよ。そうしなきゃいけないと思う」

梓「……」

梓「先輩は本当に……立派です……」

みほ「そんなことないよ……」

 さわ、さわ……

 ──────────


 チュンチュン、チュン……


梓(ん、朝……)

梓「ふぁぁ」

梓(先輩は──まだ寝てる)

みほ「……スゥ……スゥ……」

梓(……。先輩のおでこの奥には、いろんな物がつまってるんですね……)

梓(……)

みほ「……ん、ふ」

梓(あ……唇もごもご、かわいー……)


みほ「おねえ、ちゃん」


梓(寝言……?)


みほ「約、束……ごめんね、破って……」


梓(約束……)

梓「……あ」

 ──こんなこと、お友達とは絶対にしちゃいけないよ──  

   ──絶対にしないって、今ここでお姉ちゃんと約束して。お姉ちゃんと──

梓「……」

梓「でも、お姉さんもいけないです。先輩がこんなに我慢してるのに……」

     ──人のお尻なんて、おいそれと見ようとするもんじゃないわ──

梓(ああもう……五月蠅いですエリカさん。そんな事、分かってますよ……)

    ──恥ずかしいことなんだって、分かってきた。だからお姉ちゃんを困らせちゃいけないって──

梓(………………)

梓(……っ)


梓「み、み」

梓「みほ」

梓「み、みほっ」

みほ「……」

梓「みほ、お姉ちゃんは全然困らない」

梓「お姉ちゃんもみほのおしり、見たいもん!」

梓(ぶはぁっ、……うぅ、顔から火がでそう。まだまだお姉ちゃんには程遠いよ……)

梓(でも……)

梓「私、ぜったい、立派なお姉ちゃんになってみせる」

梓「先輩が卒業するまでの間に、お姉ちゃんって呼ばせて見せます」

梓(その時は、先輩のおしり、見させてください)

梓「頑張るから、み、み、みほ」


みほ「……んもぅ、梓ちゃん五月蠅いよぅ……」


梓「っ!!! お、起きてたんですか!」

みほ「ずっと、独り言、つぶやいてるんだもん。夢の中にまで聞こえてきてたよ……」

梓「ごご、ごめんなさい」


梓(うぁ、う、『みほ』って呼んだの聞かれちゃった……)


みほ「ふあぁ」

梓「…………」ドキドキ



みほ「……おしっこ」

梓「あ、え……」

みほ「ふぁぁ……」

 とた、とた、とた……ガチャ、ばたん

梓(……)

梓(聞かなかった事にしてくれたのかな)



みほ『ねえ、梓ちゃん』



梓「!? は、はい!?」

みほ『昨日の事、みんなには秘密だからね。うさぎさんチームのみんなにも言っちゃだめだよ』

梓「あ、はい……えと、先輩も、秘密でお願いします」

梓(私がこっそり先輩を「みほ」って呼んだ事とか……)

みほ『うん、言わないよ』

梓「よ、よかったです」

梓(……)

梓(先輩と私、二人だけの秘密、か)

梓(……えへへ)

梓「……」

 もじ、もじ……

梓(あぁなんだか……私もお手洗いが近くなってきちゃったかも)

梓「あの、先輩、私もおトイレしたいので、できればなるべく早く……」

みほ『えぇ、ダメだよ。私が出た後10分くらいは入っちゃダメ』

梓「えっ」

みほ『だって、私のおしりは梓ちゃんのおしりみたいな桃の良い匂いはしないもん』

梓「そ、そういうのやめてください、意地悪ですよ……」

みほ『くすくす』


梓(……あ……)


梓(先輩、笑ってる)

梓(笑ってくれてるんだ)

梓(嬉しいな)

梓(だって、先輩と私は昨日からおかしなことばかりしてる。だけどそれでも先輩は、今でもこうして、笑ってくれていて……)

梓(……嬉しい!)


梓「──もう、先輩って、実はすごく子供っぽいですよね」

みほ『そんなことないもん。私は梓ちゃんよりもお、姉、ち、ゃ、ん、なんだから』


梓(~っ、せんっぱいっ……!)


梓「お願いですから、早く出てくださいよー」

 がちゃがちゃ

みほ『わ』

梓「はやくー」

みほ『梓ちゃん変態、やだもう』

梓「漏れちゃいますー」

 がちゃがちゃ

みほ『もー……くすくす……』

梓(また笑ってくれた。先輩は、本当に、可愛いなぁ……)

梓「ね先輩~」

 がちゃがちゃ……

みほ『くすくす、くすくす……』

梓(……先輩──、今先輩は、どんな顔をしてるんですか……)


 

梓(トイレにくぐもる先輩のその笑みは、なんだかとってもヤンチャな音色を響かせていて──)

梓(今にもこの扉の向こうから幼いころの先輩が飛び出してきて、私に向かって「お姉ちゃんのいじわる」と鮮やかな笑みを咲かせてくれるのではないかと──そんな淡い妄想を、私は抱いてしまっているのでした──)


 ────────────。





梓(けれど、その後もなかなかお姉ちゃんとは呼んでもらえず、それでも日々はどんどん、どんどんと、過ぎてゆき……)


梓「──先輩! 三年生さよなら壮行試合、お手合わせありがとうございました!!」

みほ「ウサギさんチームの皆、とっても強くなったね」

梓「えへへ、嬉しいです。……じ、じゃあ、褒めていただということで、私のこと『お姉ちゃん』と!」

みほ「ふふ……私達の4号をちゃんと撃破する事ができていたら、考えてあげたかもしれないんだけどね」

梓「うぐ」

みほ「でも、梓ちゃんの指揮は本当に立派だったよ。少しだけ……お姉ちゃんみたいだった」

梓「むむ、光栄です」

梓(けど、あくまで『お姉ちゃんみたい』どまりなんだよねー……はぁ~)


 ────────────。



梓(西住先輩達三年生は本格的に引退をし、年が明け──先輩達と直接会う機会もだんだんと減っていった)

梓(私の心は慎重にバランスを保ちながら、少しづつ諦めを受け入れていく。それでいいんだと思う。失敗を認めることまた、きっととても大切な事で──)

梓(私は、先輩のお姉ちゃんにはなれなかった。けど──それが今の私の実力なんだ。もっと、頑張らなきゃって、事なんだ)


 ──ピリリリリ、ピリリリリリ



梓(ん、携帯電話が鳴ってる。誰だろ)


 ──ピリリリリ、ピリリリリリ


梓「あ、西住先輩から……?」



 ────────。



 ……ワイワイガヤガヤ……


梓「ブラックボックス展……ですか」

みほ「うん。一昨年の秋のお祭りになるのかな。その時にも一度入ったことがあるんだ。とっても面白いんだよ」

梓「へぇ~」

みほ「行こ!」

梓「わっ、先輩、は、はしゃいでますね」

みほ「最近ずーっと勉強しかしてなくて、今日は久々の息ぬきなんだもん!」

梓「あはは、お供させていただきます! 先輩、誘ってくれて、とっても嬉しいです!」





──────




ペパロニ「おぉ、大洗の隊長と副隊長だ」

梓「ペパロニさん」

みほ「こんにちは。けど私はもう『元』副隊長ですよ」

ペパロニ「そうだった……お互い寂しいねぇ」

みほ「はい、とっても」

梓「あの、ペパロニさん受験勉強は……」

ペパロニ「たまには祭らなきゃ勉強なんかやってらんないよ」

梓「いいのかなぁ……」

ペパロニ「じゃ、一組500円だよ」

みほ「はい、お願いします」

 
 ちゃり~~~ん♪


ペパロニ「ではまずお二人には大切なルールをご説明いたしまぁっす!」

梓「ルール……?」



みほ「……」



 ────── 


────── 




梓「へぇ、なんだか防音ルームって感じですね」

みほ「うん。今はまだ灯りが付いてるけど、もうじき真っ暗になるよ」

梓「それじゃあ、ペパロニさんにもらったこの耳栓を──」

みほ「あ、ちょっと待って梓ちゃん」

梓「?」

みほ「耳栓は、しなくいいの」

梓「え……でも、このアトラクションを愉しむためにはルールが大事だってペパロニさんが」

みほ「ルールは……変更」

梓「変更?」

みほ「うん。私が新しいルールを梓ちゃんに伝えます」

梓「新しいルール……?」

梓(どうしたんだろう。先輩の声と表情、なんだかとっても真剣……)

梓「……わかりました」

みほ「じゃあ、よく聞いてね」

梓「……」


みほ「スゥ、ハァ……」


みほ「──この部屋は外界とは切り離された特別な空間です」


梓「え……」


みほ「光もなく音もなく、自己と向き合うための鍛錬の場」


梓「……」


みほ「精神を研ぎ澄ませます。雑念を捨て、記憶をも捨て、今この瞬間に己の心を集中させてください。……恥ずかしいだとかそういうのは、無しです」


梓「……」

みほ「……以上です」

梓「……。えっと」

梓「つまり、私はどうしたらいいんでしょう」

みほ「それでは、もうすぐ電気が消えます」

梓「え、あの……──」


 ──フッ……


梓(灯りが消えた! 真っ暗……自分の手さえも見えない……)

梓「先輩、いますか? いますよね?」


 「 うん、いるよ」


梓「わ、声はすぐ側に聞こえるのに、姿はちっとも見えない」


 「 不思議だよね 」


梓「え、ええ……それはいいんですが、新しいルールって何をどうしたら……?」


 「 …… 」


梓「先輩?」


 「 …… 」


梓「せ、先輩? どうして黙って──」
 

 「 フゥ~~ 」


梓「ひゃっ!?」

梓(……!? 先輩が私の耳に息を吹きかけた!?)

梓「な、なにを──」


 「 えい、えい 」 ツンツン、コチョコチョ、


梓「あひ! あひゃひ、なにするんですかぁ!」


 「 ──きひ、いひひ…… 」


梓「へ……」

梓(……)

梓(え!? 今の先輩の笑い声!?)

梓「な、なんですかそのヤンチャな笑いかたは──ひゃぁ!? 今度はおしり!?」
 

 「 にしし 」サワサワサワ、


梓「もう! 先輩!」

梓(べ、勉強のしすぎでおかしくなっちゃったのかな)


 「 きゃぁは、いししししっ……」


梓(ま、まぁ先輩が楽しそうにしてくれてるのは嬉しい……だけど……!!)

梓「っ……ひぃぃ」


梓(……暗いっ、どこから何されるか全然わからないっ──なにこの感覚っ……すごく怖い……! ぞわぞわするぅ……!)

梓「っ、先輩って──ほんっと、先輩って、先輩ぶってるくせにほんとは子供なんだからぁ!」


 「 うひ、ひ……。…… 」


 「 ………… 」


梓(次はどこから──……、……ぁえ……?)

梓「せん、ぱい?」


 「       」


梓(き、急に静かになった)

梓「あ、あの──」

 
 「 ……だめ、かな 」


梓「え……?」

梓(あ、先輩、私のすぐ後ろに、いる)


 「 やっぱりもっと先輩らしく──年上らしく──ちゃんと高校生らしくしてないと、……情けなかったかな」


梓「……!」


梓(……しまった、馬鹿──私の馬鹿……)

梓(せっかく先輩が──)


梓「先輩、あの、いいんです。いっぱいいっぱい、はしゃいでください」

梓(幼いころみたいに、はしゃいでくれてたのに……)


 「 ごめんね、久しぶりに、梓ちゃんと会えて……楽しくて。この部屋なら……この部屋でだけなら、思いっきりはしゃいでもいいかなって──」


梓「私も楽しいですよ。だからもっと──」


 「 ──ううん、いいの。」


梓(……)


 「 もう、大丈夫だよ。ありがとう 」


梓「…………」



梓(あぁ、まただ……)


 
 ──梓「先輩は、これからも全部、我慢していくんですか。寂しい事も、甘えたい事も」──

 ──みほ「うん、そうだよ。そうしなきゃいけないと思う」──



梓(どうして──)

梓(どうしてそこまで打ち明けてくれるのに、どうして結局私には甘えてくれないんですか?)

梓(どうして最後には隠してしまうんですか? こんな所につれてきて、おかしなルールを勝手に作っておいて……!)

梓「っ」

梓「……っっ」

梓「……~~~ッ」

梓「……ぁ、あぁぁっ……!」


梓(暴力──)

梓(いっそ先輩に暴力をふるってしまいたい──)

梓(甘えてくださいって、我慢しないでくださいって、──先輩の服を全部びりびりに破いて先輩の皮膚を全部ははがしてむき出しにした先輩のやんちゃな気持ちに私の身体を隅から隅までなすりつけてしまいたい!)


梓「……ッ」

梓(だめ、衝動っ、抑えてっ……!!)


 ──────すぅ……はぁ……──


梓(私の感じ方は、──きっと、間違ってる)

梓(認めなきゃいけない。だって──)

梓(だって私は──先輩のお姉さんには、最後までなれなかった)

梓(だから……)

梓(貴方なら──まほさんなら、どうするんですか、こんな時)

梓(ちっとも素直になってくれない先輩に──甘えたいクセに甘えてくれない先輩に──貴方なら何ていうんですか……!?)

梓(──……)

梓(……)

梓(そう……きっとあの人なら、こうする……)

 すっ

梓(先輩の頭のてっぺんに、優しく手を添えて)

 ふぁさ

 「 ん……梓ちゃん……? 」

梓(それから、ゆっくりと撫でながら──)

 さわ、さわ……

 「 ぁ…… 」

梓(きっと、こんな感じの事を言うんだ)

梓「みほ」

 「 ……! 」

梓「偉いよ、みほ」

 「 ………… 」

梓「勉強、頑張るんだぞ」

 よし、よし



梓(──先輩は、甘えたいことも、苦しいことも、全部我慢するって、決心したんだ)

梓(ならお姉ちゃんは──そんな先輩を、応援しなきゃいけない!!)

梓(お尻をみてあげたくても──お尻をみせたくても──我慢する!)

梓(それがお姉ちゃんなんだ!!)

梓(そうですよね──まほさん──!)





 「 ……駄目……! 」





梓「……え?」



 「 やだ、駄目、梓ちゃんは……お姉ちゃんには、ならないで……」



梓「……、は……?」



 「 梓ちゃんはずっと──そのままでいて 」




梓「……!? どういう──」


 


 「 お姉ちゃんになれなくて、お姉ちゃんになりたがる梓ちゃんのままでいてよ…… 」




梓「 ──────!! 」




梓(──一寸先も見えあい暗闇の中──けれど私は、私の感情の火花が散るのを確かに見ました──)

梓(初めには強烈な怒りがあって──少しすると、先輩への憐れみや、理解からくるもどかしさが湧き上がり──そして──何段階かの混沌を経た後、最後の瞬間に微かにまたたいたのは──これは…………母性?)

梓(すべてほんの一瞬の閃光だったはずなのに、コンマに刻まれた時の連なりの中で、それらは次々と発する色を変えていく──)


梓(その輝きに照らされて、先輩の瞳が私を見つめている)


梓(その寂しげな瞳の中に私がいる。まほさんじゃない。そこにいるのは、間違いなく──私──)




梓「──っああっ、もぉぉぉおっ……! いったいなんなんですか!! 」



 ガッ!

 「 きゃっ……!? 」

梓(乱暴に抱きしめるくらいのことは──させてもらいますっ!)

 「 や、梓ちゃん、あぅ…… 」



梓「先輩の望むとおり、私は私のままで足掻いてあげます。──だから──だからもう、言わせてもらいます!!」



 「……!?」



梓「──みほのお尻がみたい!」


 「……!」


梓「みほのお尻がみたいんだ……!」



 「……!!!」



梓「見せて、くれるか……?」


 「 ……っ、梓……ちゃん…… 」


 ──パッ



梓「あっ!?」


梓(そんな、灯りが……)


みほ「……」



梓(……っ)

梓(もう──『ルール』は適用されないのかな)

梓(いつもの先輩に、戻っちゃうのかな──)


みほ「……っ」





みほ「──おねぇ、ちゃん……」





梓「──!」


みほ「今日私の家に……泊まって」



梓「…………!!!!!!!!


 ──────────



 ガタンゴトン、ガタンゴトン……

< 次は~大洗、大洗~



梓「……」

みほ「……」


 ガタンゴトン、ガタンゴトン……


梓「……」

みほ「……はぅぅ……」

梓「……」

みほ「私、こんなのでいいのかなぁ……」

梓「……」

梓「……お泊りはやっぱり無し、とか、聞かないですよ」

みほ「……う~……」

梓「……。コホン、あ、アー」

みほ「?」

梓「『考えすぎだ。みほは、みほらしくあればいいんだ』……えへ、似てます?」

みほ「~~~っ! もう! お姉ちゃんの声真似、禁止!」

梓「あはは、痛いです」


<大洗~、大洗~

 キキイィィィイッィ……ブリュゥ~ーーーー


梓「あ、ほら、着きましたよ」

みほ「もう……。えと、梓ちゃん一度お家に帰るんだよね?」

梓「はい。お勉強道具とか着替えを取ってきます」

梓(……それと、一応わたしも、お風呂でおしりを洗っておこっかな……)

 ──────────────。



 




梓「さって──先輩の家の前に着いた……」

梓「……」

梓(うー……、別に緊張することなんかないんだけど──なんか緊張してきた……)

梓(……)

梓(どんなシチュエーションで、先輩のお尻を見るんだろう)

梓(やっぱり、寝る前……かな?)

梓(電気を消して、一緒のベッドでお休みをいって、それから、お布団の中で先輩がパジャマをぬぐ……のかな?)

梓(先輩は恥ずかしがり屋だからなぁ、きっと、なかなか脱いでくれないんだろうな。布団の中で、もたもたもたもた……)

梓「ふふ……」

梓(……はぁ~……だけど、本当に、こうなるなんて……)

梓「──私はどうして、先輩のおしりを見るんだろう」

梓(そんなの──考えるまでもない)

梓(私と先輩だから──だよっ)

梓(見よう……堂々と見よう。誰にも自慢はできないけれど──私はこれから、私の尊敬する先輩のおしりをみるんだ……っ)

梓「梓、いけっ……パンツァー、フォーっ!」


 ぴんぽ~~~~~ん


梓(とりあえず一緒にお勉強をして、ご飯を食べて……落ち着け落ち着け……)


 ──かちゃっ


梓(……っ)


みほ「──梓ちゃん」

梓「せ、先輩、来ました」

みほ「……。」

梓(……ん?)

みほ「あのね……すごく申し訳ないんだけど……」

梓「へ?」

みほ「その……お母さんが、また──」

梓(──……!!!)

梓「……嘘……」

みほ「……。うん、ごめんね、嘘、なんだけど……」

梓「へ」

梓「…………」

梓「──先ぱぁいっ! もう!」

みほ「あはは、許して。……お母さん来てないかなーて、ちょっぴり思っちゃってたのは本当だけど……」

梓「往生際がわるいです」

みほ「そうだね、見苦しいね。さ……入って」

梓「おじゃましますっ、もー……私だって、結構緊張はしてるんですから……」

みほ「そっか……。……。……お姉ちゃんと見せ合いっこしたときは、緊張なんてしなかったんだけどなぁ……」

梓「……」

梓「……当たり前です。私は、先輩のお姉さんじゃないですから。……なれませんでしたから」

みほ「梓ちゃん……」

梓「私はあくまで、先輩のお姉さんになりたい後輩……です」

みほ「……」

梓「けど、だからこそ──先輩のおしりを見れるなら、それって、姉妹以上なんじゃないかって──私は思ってますっ……!」

みほ「……!」

みほ「梓ちゃん……梓ちゃんはすごいね。うん、私なんかよりもずっとずっとお姉さんだよ。さ、入って」

梓「はいっ、お邪魔しますっ」


 とた、とた、とた


梓「しつれいしまぁーす、えっとお泊りの荷物、部屋の隅に置かせてもらいますね」


みほ「うん……」



みほ「……えっとじゃあ──私のおしり、み、見る?」


梓「……」


梓「……えっ!?」

梓(も、──もう!?)


みほ「さっき、お風呂に入って体だけは洗ったの──だから、すぐのほうが、梓ちゃんにもいいかなって……」

梓「あの……も、もっと、時間が遅くなってからかと、思ってました……」

梓(まだ、外も明るいのに……)

みほ「でも……この後梓ちゃんにおしりを見せるんだって、そう思うと、なんだか勉強とか集中できなそうで」

梓「な、なるほど……」

梓(……っ)

梓「わかりましたっ、じゃ、じゃあ……っ」


みほ「ん……」


杏(先輩は小さくうなずくと──部屋の奥のカーテンを閉めに歩いていく──)

梓(私は、先輩のその細い背中とほっとぱんつのおしりがリズムよく形を変えるのを見つめながら──たかまる鼓動に戸惑いつつ……)

梓(あぁ、人生はこんなものなんだろうなぁと、分かったようなことを考えていました)

梓(いつだって、覚悟を決める瞬間は唐突にやってくるんだ)

梓(敵の奇襲、味方のピンチ、そして絶好の逆転チャンス──それらはみんな、こっちの気持ちなんて考えてはくれない、何の前触れもなく、唐突に、その瞬間は訪れる──)

 シャッ

梓(カーテンが閉められて、けれど部屋の中はまだまだ薄暗い。ブラックボックス展の闇とは比較にもならない。窓際にたたずむ先輩の姿が、はっきりと見える──その少し恥ずかしそうな、表情だって)

みほ「じゃ、えっと……脱ぐ、ね?」

梓「は、……はいっ」

 
 ……しゅる……

梓「……っ」

梓(先輩が、恥じらいの滲むしぐさで、パンツを下ろしていく──太ももから、膝をこえて、拗ねへ……)

梓(今はまだ、かがんだ先輩の後頭部のせいで、お股の辺りはみえないけれど──この数秒後にはもう──先輩の──お腹が──)


梓(──心臓の鼓動が体全体に広がって意識までもが脈動してる。どくん、どくん、どくん、どくん、視界までもがなんだかぐらぐら揺れている)



みほ「……っ、えへへ、はずか──しいね」

梓「……っ……」



梓(そして二人きりの部屋の中、今、輩の形のいい下半身が、私の目の前に──)














 ────────────────。














梓(……ハァ~~~~~~。この時に調子にのらんきゃなぁって……ハァ~~~~~~、ぜーんぶ、もう後の祭りなんだけどね~……)












 ──────────────。



まほ「──みほっ、お願いだから! おしりを放して!」

みほ「やだぁー! このままうつ伏せでいーのっ、もっともっとお姉ちゃんのおしり見るのー!」

まほ「後でまた見せてあげるから! いまは一度おしまい! ね!?」

みほ「どうしてぇ?」

まほ「だ、だって……お──おならがでそうなのっ」

みほ「うん、いいよ?」

まほ「へ」

みほ「お姉ちゃんのおヘソからおならがでるの、みほ見たいもん! えい、おしり開けぇー!」グィグィ

まほ「ひぃ、……だ、だめーっ、絶対駄目っ、やだー!」ジタバタ!!

みほ「見るのー! 見たい見たいー!」

まほ「ほ、ホントに怒るよーっ! みほっ!!」


 げしっ!!


まほ「──あっ、ご、ごめんみほ、足が当たって……」


みほ「……」


まほ「……み、みほ……?」

みほ「…………~~~~~っ!」

まほ「ちょ、み──」


みほ「ぴやあぁあぁああぁぁあぁあぁぁぁあぁぁぁあ!!!!!!!」

みほ「蹴ったぁ! おねぇちゃんが蹴ったぁ~~~!! ふぇぇぇぇぇぇえええええっんん!!」


まほ「み、みほぉ、ごめんねみほぉ! わざとじゃなくて……」

みほ「ピギャペェェェェェェェェェェェェェェェェ!!」

まほ「あわわわわ……」


 ──ガラっ!!


しほ「こら! 何を騒いでいるの!」

まほ「お、お母様!」

しほ「みほはどうして泣──って、まほ! なんて格好をしているの!!」

まほ「えっ!」

しほ「ちゃんとパンツとずっずを履きなさい! はしたない……!」

まほ「わぁっ、あわわ、ごめんなさい、ごめんなさい……」

みほ「ぴぇぇぇぇぇぇぇぇお姉ちゃんが蹴ったぁぁぁぁぁ!!」

しほ「……? まほ、どういうこと? ケンカをしたの? ちゃんと説明をなさい」

まほ「違う、そうじゃなくて……そうじゃなくてぇ…………ぐずっ」

しほ「泣く暇があったら早くズボンをはきなさい!」

まほ「ひぐっ!!」(ビクッてなって肛門に力)

   <ぷぅ~~~っ……

まほ「ひゃぅっ……!?」

しほ「……! まったく……なさけないっ……!」

まほ「……!」ガーーーン!

まほ「……っぐ、ひぐぅっ……うぇっ……」

しほ「泣いてはなりません!!」

まほ「っ、……っ……!!!! ……ぴぇぇ゛ええ゛ぇぇ゛ぇぇ゛ぇぇぇええぇま゛ほ゛は゛わ゛る゛く゛な゛い゛の゛に゛ぃぃぃ゛ぃぃ゛ぃぃ゛ぃぃぃ!!」

みほ「ベギャアアアアアアアアアおねえじゃんがげっだああああ!」

しほ「……ハァ……なんなのですか、もう……」


 ──お姉ちゃん……あの時は本当にごめんね──今ごろになって、ようやくわかったよ……お姉ちゃんがあの時、おならを我慢しながらいったいどんな気持ちでいたかが──────────


 ────────────────





 ちゅんちゅんっ……ちゅんっ……


梓(ん……もう、朝五時……起きなきゃ……)

 ごそ……

梓「ふぁぁぁぁ」

みほ「──スゥ……スゥ……」

梓「……」

梓(まだ、怒ってますか、先輩……)

梓(──)

梓(昨晩私は、おそらく──ううん、間違いなく、世界でだれも見たことのないものを見たんだ)

梓(……つまり──)



梓(先輩のおしりの穴から、先輩のおならが噴き出す、そのまさに瞬間を──)

梓(……)


梓「人間の身体って、すごいなぁ……」


梓(──今でも、目に焼き付いているよ)


梓(振動──いくつものヒダ達の微細な振舞──)

梓(どうしておならはあんな音をたてるのかって、子供のころかずっと不思議だった。その秘密を、私は見ちゃったんだ)

梓(あぁ、いやだいやだって懇願する先輩の涙声もまた、耳に残ってる……)


梓(……うぅ……)

梓(どうかしてたよ……興奮して……)

梓(私はすっかり、のぼせて、頭がおかしくなって──なんだか、私は先輩の全部を自分のものにできたように勘違いをして──)

梓(先輩の命も、心も、そして──先輩の乙女心さえも、私のものだと)

梓(結果──うぅ……先輩は激怒した)


梓「当然だよぅ……」


梓(見たこともないくらいに怒り狂って──そして先輩は、私にも同じことをして報復をした)

梓(つまりは──私をすっぽんぽんにして、私をベッドに腹ぶせの四つん這いにさせて、それから、私がオナラをするまで──私のおしりをがっちり放してくれなかった──)

梓(……。)



梓(私、すごいこと先輩にしちゃったし、させられちゃったんだぁ……)

梓(……その後の勉強の、空気が重い事重い事……)

梓(はぁ……お詫びに、飛び切り美味しい朝ごはんをつくります──ゴメンね、先輩……)



 ──────────。






梓「ふぅ~、もうしばらくで、おいしい朝食の完成だよっと……」

梓(先輩、もーちょっと、寝ててくださいね、一応これはサプライズですから……)


みほ「──ふぁぁぁぁ」


梓「あ゛っ」

みほ「いい匂いがする」


梓(……サプライズ、失敗……)


梓「お、おはようございます、先輩……」

みほ「……」


梓(返事をくれない……怒ってる、よねぇ)


梓「あのぅ……昨日は本当にごめんなさい。」

みほ「……」


梓(はぁ、しばらくは口、きいてくれないかなァ……)


みほ「……。夢を、見たの」

梓「え……」

梓「夢、ですか」

みほ「うん」

梓「えと……どんな夢ですか」

みほ「……。梓ちゃんには教えない」

梓「そ、そうですか」


梓(……うぅ)


みほ「だけど──」

梓「?」

みほ「それに免じて、許してあげる」

梓「へ?」

みほ「お姉ちゃんに免じて──昨日のことは許して上げる。でも、二度とは許さないから」

梓「へぁ、……あ、ありがとう、ございます……」

みほ「もう少し寝る。ご飯できたら、起こして」

梓「は、はい……」

みほ「……」


 とた、とた、とた……


梓「……」

梓(…………???????????)



 ──────


梓(朝食ができた後、先輩を優しく起こしに行き──モーニングストレッチの補助とと、髪をとかすこととを厳命された。もちろん私はうやうやしくその申しつけに従った。その間に朝食が冷めたけど──たぶん、わざとの意地悪だろう。怒れません)

梓(テーブルを囲んで一緒に朝ごはんを食べ、美味しいご飯のおかげで先輩は少しだけ機嫌を直してくれた。単純で可愛い。一緒にベーグルをほおばりながら、今日の休日の予定を、二人で相談しあった。嬉しい。ケンカしたまま帰りたくはなかったもの。今日一日だけは、先輩の家で勉強をして帰ることにした……)


みほ「梓ちゃん、とってもお料理上手なんだね」

梓「えへへ、ありがとうございます」


梓(──マッシュルームサラダをほおばる先輩の唇──その唇に、先輩の肛門のイメージが重なる)

梓(それだけじゃない、先輩のオナラの香りの強い印象、口の中に広がる得たいのしれない風味──そして、唇でたしかに感じた、先輩の肛門の感触──あらゆるイメージが、先輩の笑顔に重なる──)

梓(先輩は気付いていないかもしれないけど──昨日、怒り狂った先輩が私の顔にヒップアタックをしたとき──私は先輩のおしりに顔をうずめていたのだ──その時、私はたしかに唇で、先輩の肛門に触れた──)

梓(……世界中の誰にもいえない、先輩にすら怖くて言えない、私だけのとっとき秘密)


梓「……」

梓(先輩の肛門──少しも汚く思えない)

梓(それはきっと──先輩がかつて幼いころ、お姉さんの肛門をしきりに見たがった、その愛情と同じだと思う)



みほ「……梓ちゃん、唇のはしに、ドレッシングがついてるよ」

梓「へぁ?」

みほ「ほら、ここ……」

 ぐじ……

梓「あ……えへへ」

みほ「もう……ふふ……」



梓(……先輩もきtっと、私の笑顔に私の肛門を重ねているのだと思う。それくらいに、昨日の出来事は忘れられない──)

梓(先輩と私は、お互いの肛門を感じあい、その後ケンカをし、だけど今は、こうして仲直りをしつつある。他の誰とも経験したことのない特別な記憶──そういったもので、少しずつ私達は結ばれていく)

梓(姉妹の絆は、甘いおかしやや可憐な草花で結ばれるわけじゃない)

梓(それよりもはるかにもっと具体的で共感的なもの──匂い、味、痛み、暖かさ、そして感情──それらを共に積み重ねて、少しづつ少しづつ紡がれていく。だとしたら──)

梓(一月の朝、外は寒いけれど、部屋の中は暖房で暖かく──)




梓「ありがと、みほ」

みほ「いいよ、お姉ちゃん」

梓「……えへへ~」

みほ「もー……人前ではだめだよ?」




 先輩と私は、少しだけ姉妹だった。








ガールズ&パンツァー ~しりしまい~

~完~

ありがとうございました。

せやな。
すまんかった。
もう求められてないのにまだ夢を見てた。
卒業するわ。

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom