善子「夢なんて見てないわよ」 (15)
初SSです。古典落語「天狗裁き」をアクアメンバーで改作してみました。それではどうぞ
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花丸「善子ちゃん、部室行くずら」
善子「Zzzz」
花丸「机に突っ伏して寝てる・・・」
善子「Zzzz」
花丸「気持ちよさそうに寝てるずらねえ。どんな夢見てるのかな?」
善子「Zzzz」
花丸「なんだか楽しそう・・・あれ、でもなんだか怒ってるような顔にも見えるずら。あれあれ?今度は、すごく苦しそう」
善子「うう・・ううん・・」
花丸「うなされてる!?ちょっと、善子ちゃん起きるずら!」
善子「よはね・・よぉ・・って、あれ、ずら丸?ああ、寝ちゃってたか・・・起こしてくれてありがとう」
花丸「ねえ善子ちゃん、どんな夢見てたずら?」
善子「へ?」
花丸「寝てる善子ちゃん、最初は楽しい夢でも見てるのかなーと思ってたら、なんだか怒ってるようにも見えて、さっきはすごくうなされてたんだよ」
善子「そうだったの?てかなに人の寝顔観察してんのよ、早く起こしてくれればいいのに」
花丸「ごめんね、善子ちゃんが寝言でいきなり『全てのリトルデーモンたちよ、伏してこのヨハネを拝むがいいわ!』なんて叫びだして教室のみんなドン引きしてたから、これはほっといたほうが面白そうと思っ
善子「嘘でしょおおおお!?」
花丸「嘘ずら」
善子「」
花丸「本当に嘘ずら」
善子「地獄よりもさらに底へ堕としてあげましょうか・・・?」
花丸「でもうなされてたのは本当なんだよ、どんな夢見てたずら?」
善子「そんなこと言われても、夢なんかみてた覚え無いわよ」
花丸「そんなはずないずら、あんなにくるくる表情が変わって」
善子「言っとくけど自分の寝顔を詳しく解説されるのって結構恥ずかしいんですけど?今度ずら丸でやってあげるから、その時に私の気持ちがわかるわよ」
花丸「とにかく!どんな!夢を!見てたずら!?」
善子「だから!見てないって!言ってるでしょ!」
花丸「善子ちゃん・・・」
善子「何よ」
花丸「オラ達、幼いころからのつきあいだよね?」
善子「それが何よ」
花丸「卒園から今まで離れていた九年間は、夢の話もできないほどの深い溝を作ってしまったの?」
善子「何よそれは」
花丸「ねえ、どうしても話せないの?」
善子「話せないわよ、見てないものは」
花丸「はあ、所詮人は独りずら」
善子「それより部室行きましょうよ」
花丸「行かない」
善子「え?」
花丸「行かないといったら行かない。夢の話すらしてくれないような人と同じグループでスクールアイドルなんてできないずら!」
善子「まさかの退部宣言!?ちょっと!どんだけ飛躍すんのよアンタ!」
花丸「飛躍ではないずら。マルのことをちっとも信用してくれないんだったら一緒にいたくない、それだけのことずら!」
善子「意味わかんないわよ!」
花丸「マルだって善子ちゃんの気持ちがわからない!善子ちゃんのバカ!」
善子「バっ・・・!?言ったわね!?バカはそっちでしょ!勝手に怒り出して!」
花丸「◆‰§Θ√Å≒※★◎〒!!」
善子「■Σ±Цψ♭≧$〓¶@!!」
ルビィ「ピギッ!?二人ともどうしたの!?」
花丸「ルビィちゃん!聞いてほしいずら~津島さんが、津島さんがあ!」
善子「もう他人になってる!?」
ルビィ「善子ちゃんがどうかしたの?」
花丸「マルのこと信用なんかできないって」
善子「伝言ゲーム二人目からいきなり曲げんな!」
ルビィ「そ、そんなこと言ったの?」
善子「なわけないでしょ!寝てた私をずら丸が起こしてくれたんだけど、いきなり見てた夢の話をしろってしつこいのよ。そもそも見てないんだから話せなくて当然なのに」
ルビィ「で、でもそんな理由で花丸ちゃんがこんなに」
花丸「ひどいよね!ひどいよね!?夢の内容くらい言ってくれてもいいのに!」
善子「と、いうわけなのよ」
ルビィ「・・・。花丸ちゃん、本当にそれが理由で怒ってるの?」
花丸「それはもう!!」
ルビィ「ねえ花丸ちゃん、先に部室行ってて?え、行きたくない?ううん、そんなこと言わないで、千歌さんがのっぽパン余っちゃったから花丸ちゃんにあげようって言ってたよ?ルビィもすぐ行くから、ちょっとだけ先に行ってて。うん。大丈夫。じゃあね!
・・・善子ちゃん、大変だったんだね」
善子「頭痛い・・・」
ルビィ「花丸ちゃん、時々変なところで頑固になるよねえ」
善子「あんな形で発動するとは・・・ヨハネの闇のオーラにあてられてしまったのかしら?」
ルビィ「ふふ、そうかもしれないね?ルビィもびっくりしちゃった」
善子「ルビィが仲裁してくれてよかった。助かったわ」
ルビィ「ううん。それに、善子ちゃんの判断は正しかったと思うよ」
善子「どういうこと?」
ルビィ「花丸ちゃんちょっとずつネットが使えるようになってきたでしょ?最近、身の回りの出来事を掲示板サイトによく書き込んでるみたい」
善子「へえ、あのずら丸がねえ」
ルビィ「でも、まだネットのことよくわかってないっていうか、見てたらたまに個人が特定できそうなことも書き込んじゃいそうになってるの」
善子「絶対に生配信とかに手を出したらダメなタイプね」
ルビィ「だからね、花丸ちゃんに夢のこと話したら、『今日友達がこんな夢を見たらしいです!』なんて書いちゃうかも。下手したら本名入りで」
善子「うわ、堕天使もびっくりの悪行」
ルビィ「でもね、ルビィならそんなこと絶対しないから」
善子「へ?」
ルビィ「善子ちゃんの夢・・・ルビィになら教えてくれるよね?」
善子「」
ルビィ「ねえ、どんな夢?おいしいものいっぱい食べる夢?それとも、おにぎりになって花陽さんに食べてもらえる夢?」
善子「アンタの個人的な願望じゃない!しかもマニアックだな!」
ルビィ「ルビィなら口が堅いから」
善子「そういう問題じゃないって言ってるでしょ!」
ルビィ「うゆ・・・ルビィにも話してくれないの?」
善子「誰にだろうが無理なものは無理」
ルビィ「・・・」
善子「・・・」
ルビィ「・・・」
善子「・・・」
ピギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア
善子「びっっっくりした!わかりやすい前兆があったのにびっくりした!」
ルビィ「そんなあ、そんなあ、善子ちゃんはルビィのことなんか信用できないんだ」
善子「だからそうじゃないって!いいからさっさと部室行きましょうよ」
ルビィ「やだ」
善子「え?」
ルビィ「やだ。夢の話すらしてくれないような人と同じグループでスクールアイドルなんてしたくないよ!」
善子「みんななんで簡単に退部しようとするの!?」
ルビィ「善子ちゃんのバカ!」
善子「バっ・・・!?言ったわね!?こちとら本日二回目でさすがに神経高ぶるわよ!?」
ルビィ「◆‰§Θ√Å≒※★◎〒!!」
善子「■Σ±Цψ♭≧$〓¶@!!」
ダイヤ「ピギッ!?二人ともどうしたんですの!?」
ルビィ「お姉ちゃん!聞いてほしいの、津島さんが、津島さんがあ!」
善子「どうして下界の人間は変に切り替えが早いのかしら」
ダイヤ「善子さんがどうかなさったんですの?」
ルビィ「ルビィのこ
善子「と信用できないなんて間違っても言ってないわよ。かくかくしかじか・・・」
ダイヤ「ルビィ、それは本当ですの?・・・そう、そうなのですね。ルビィ、先に部室に行ってください。え、行きたくない?そんなことを言わないでください、千歌さんがμ'sグッズをうっかりダブって買ってしまったからルビィにあげようと言っていましたわよ?私もすぐ行くので、ちょっとだけ先に行っててちょうだい。ええ。大丈夫。それでは。
・・・善子さん、大変でしたわね」
善子「フッ・・・天界を追放されたあの日から、これくらいの苦難はなんでもないわ・・・」
ダイヤ「遠い目でそんなことを言わないでください・・・。不肖の妹が迷惑をかけてごめんなさい。花丸さんが、すぐ来ると言っていたルビィが全然来ないと言うものですから私が様子を見に来たら、こんなことになっているなんて」
善子「別にダイヤが謝ることないわよ」
ダイヤ「それにしても、どうしてそんなにこだわるのでしょうか」
善子「こっちが知りたい」
ダイヤ「同学年の仲良し同士だからこそ、話せないこともあるでしょうに」
善子「そうそう・・・ってあれ?」
ダイヤ「花丸さんが聞きたがり、ルビィが聞きたがったというその夢の話。私になら教えてくださいますわよね?」
善子「帰りたい」
ダイヤ「どんな夢だったんですの?」
善子「帰りたい」
ダイヤ「おいしいものをいっぱい食べる夢?それとも、ピロシキになってエリーチカに食べてもらえる夢?」
善子「帰りたい」
ダイヤ「ご安心くださいまし、私は生徒会長。生徒の秘密を漏らすようなことは決していたしませんわ」
善子「生徒会の重要書類失くして私に探させる人にそんなこと言われても」
ダイヤ「ぐっ・・!」
善子「とーにーかーくー!見てないものは見てないの!」
ダイヤ「どうしてもお話くださいませんの?」
善子「見てないんだから無理に決まってるでしょ!」
ダイヤ「そんなに、人に言えない内容の夢を見たんですの?」
善子「私をなんだと思ってるの」
ダイヤ「花丸さんにも、ルビィにも、私にも決して言えないような・・・まさか!!」
善子「何」
ダイヤ「さてはあなた、Aqoursを裏切る気でいますわね!?」
善子「はあああああ!?」
ダイヤ「きっとそうですわ、普段考えていることが夢にでてきたから私たちには言えないんですわ!ラブライブ本番当日にドタキャンするとか?それともわざと歌えないフリをするとか?」
善子「その一件まだトラウマなの?」
ダイヤ「どおりで最近善子さんが練習に参加したとたん雨で練習ができなくなると思いましたわ!」
善子「それは申し訳ない」
ダイヤ「津島さん」
善子「退部するとか言わないでよ」
ダイヤ「まさか。させるんですわ。あなたを」
善子「ぬぁんでよ!?」
ダイヤ「今更μ'sメンバーの物真似で私の気を引こうとしても遅いですわ。裏切り者といられるわけがありません。この先も何をしでかすかわかったものではありませんわ、Aqoursからいなくなるぐらいでは安心できません。理事会にかけあって、退学処分にしてもらいます」
善子「何よその悪魔もドン引きの所業!?」
ダイヤ「いいですわね?」
善子「そんなの認められるわけないじゃない!そこまで言うなら理事会でもなんでも通しなさいよ!」
鞠莉の家
鞠莉「『本校生徒津島善子は、自分の夢の内容を決して話さない。悪魔召喚、学園転覆、あらゆる企みを隠し持っているに違いないため、生徒会長として本校からの退学処分を妥当とする。黒澤ダイヤ』
ダイヤ・・・疲れてるの?」
善子「あの人マジでそんな文書送ったんだ・・・悪魔召喚は否定しないけど」
鞠莉「安心して、さすがにこんなの通さないから」
善子「当たり前よ!」
鞠莉「きっとダイヤも後で頭を冷やして謝ってくれると思うけど、今日は私からお詫びをさせて。マカロンでもポップコーンでも、好きなものを好きなだけ食べていってちょうだい♪」
善子「はっ!この甘い香り・・・漆黒の闇すら照らし出す色とりどりの光!じょ、浄化されてしまう!!」
鞠莉「我慢しなくていいんだよ?」マカロンデクチビルツンツン
善子「!?なんと罪深き口づけなのでしょう・・・パタリ」
もぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐ
鞠莉「グレート!こっちが気持ちよくなる食べっぷりだわ♪紅茶も飲んでね」
善子「すぅーてぇーきぃ・・・」
鞠莉「ふふ、善子ったらカワイイ♪」
善子「もう食べらんないぃぃ」
鞠莉「満足してもらえたかしら?楽しそうにしてもらえてうれしい」
善子「ごちそうさま、すっごくおいしかった」
鞠莉「よかった。大好きよ、善子」
善子「ちょ・・・急に何言いだすのよ」
鞠莉「Aqoursも、Guilty Kissも、これからも一緒に頑張ろうね」
善子「もちろん」
鞠莉「それじゃあ」
善子「うん」
鞠莉「花丸が聞きたがり、ルビィが聞きたがり、ダイヤが聞きたがったというその夢の話」
善子「・・・マリーは信じてる」
鞠莉「私になら教えてくれるでしょ?」
善子「・・・マリーは信じたかった」
鞠莉「ねえ、どんなシャイニーな夢だったの?」
善子「生徒会長も理事長も頭おかしい学校なんて廃校になってしまえ」
鞠莉「冷たいよお!私まで蚊帳の外にするの?」
善子「そういう問題じゃないんだって!」
鞠莉「ね~え~いいでしょお~~聞かせなさいよ~!あんなに散々食べたじゃな~い!」
善子「これが真の目的!?本当に見てないんだってば!誰に聞かれても見てないんだから言えないの!」
鞠莉「ショックデース・・・私と善子の絆は、その程度のものだったなんて」
善子「こういうやりとりもううんざりしてるから勘弁して」
鞠莉「そう・・どうしても無理なんだ」
善子(シリアスモードのマリーって結構怖いわよね)
鞠莉「入って」パチッ
善子「え?何よ扉に向かって・・・わっ!?ちょっと、誰よこの黒服の男達は!?」
鞠莉「うちのガードマンデース」
善子「どこまでも金持ち・・・ってちょっと何するのよ!?」
鞠莉「地下室に連れて行きなさい」
善子「どゆこと!?」
鞠莉「話したくなるまで、灯りもない地下室で過ごすといいわ」
善子「何それ!?ここそんな地下牢じみた部屋があるの!?待って、待って、離しなさいよおおおおお!!!」
善子「私なんでこんなところにいるの」
善子「暗い・・・なんにも見えない・・・」
善子「家に帰れたらなんでもいいから、誰か助けてよお・・・」
「滑稽なものだな」
善子「!?こ、声がした!誰?誰かいるの!?」
「堕天使ヨハネを名乗る者がいると聞いてどんなものかと見に来れば、他愛ない小娘ではないか」
善子「私を知っている人なのね!?ど、どこにいるのよ!」
「案ずるな、まずはここから出してやろう」
善子(誰か私を持ち上げた!?不思議な感覚・・・空間が・・・捻じ曲げられていくような・・・!)
善子(・・・ぐっ!!)
善子「うーん・・・何・・・何がおこったの・・・。あれ?ここ・・・外?私・・・地下に閉じ込められて・・・そしたら急に不思議な力が・・・」
「ここは淡島だ」
善子「えっ」
善子(何この変な男の人・・ひ・・ひと!?いや、羽が生えてる!?)
「我が名は堕天使ルシファー」
善子「!??」
堕天使「全て見ていたぞ。夢を語る語らぬで愚かな仲間割れ・・我に仇なす者であればどうしてくれようかと思ったが、とんだ不幸な女だな。人の子のことなぞどうでもいい、と言いたいところだがさすがに気の毒になったぞ」
善子「ちょっとまだ何がなんだかわからないけど・・でもありがとう。最後に助けてくれるのは同族なのね」
堕天使「何が同族だ。大体どんな思い付きでヨハネを名乗る。使徒ヨハネのつもりか預言者ヨハネのつもりか知らぬが、両方ただの人間だぞ?天界の者の類ではない。たしかに『ヨハネ黙示録』には堕天に関する記述があるが、大方それと混同して
善子「言わないでくださいそこまで深く考えてなかったんです」
堕天使「全く骨折り損とはこのことよ。もう帰るが良い」
善子「うん・・・本当に助かったわ。ありがとう」
堕天使「おっと、しばし待て」
善子「どうしたの?」
堕天使「花丸とやらが聞きたがり、ルビィとやらが聞きたがり、生徒会長が聞きたがり、理事長も聞きたがったというその夢の話」
善子「」ガタガタガタガタ
堕天使「何を震えている。我は堕天使。人の子の夢の内容に興味などない」
善子「そ、そうよね」
堕天使「が」
善子「」ガタガタガタガタ
堕天使「貴様がどうしても話したいというのなら、聞いてやらんこともないぞ?」
善子「ガタガタガタガタ」またこうなるの!?
堕天使「動揺し過ぎだ。今ここには誰もおらぬ。他の者に聴かれることなどないぞ」
善子「見てないの!ほんっとにほんっとに見てないんだから!堕天使にだろうが悪魔にだろうが、無理なものは無理なのよ!」
堕天使「貴様、帰れたらなんでもいいから助けてと言っていたな。あのとき、貴様は我と契約を結んだのだ。堕天使との契約を反故にするとどうなるかわかっているのか?その身は八つに裂かれ、魂は永久に現世をさまよい続けることになるぞ」
善子「何を言われても無理ってさっきから話してるじゃない!」
堕天使「我が恐ろしくはないのか!?どうしても口を塞ぐのであれば、無理矢理にでも開いてやるしかないな!」
善子「か、鎌!?」
善子「いやあああああああああああ!!!」
・・・・・・・・
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・・・・
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善子「Zzzz」
花丸「なんだか楽しそう・・・あれ、でもなんだか怒ってるような顔にも見えるずら。あれあれ?今度は、すごく苦しそう」
善子「うう・・ううん・・」
花丸「うなされてる!?ちょっと、善子ちゃん起きるずら!」
善子「よはね・・よぉ・・って、あれ、ずら丸?ああ、寝ちゃってたか・・・起こしてくれてありがとう」
花丸「ねえ善子ちゃん」
花丸「どんな夢見てたずら?」
終わりです。天狗裁き改め「堕天使裁き」いかがでしたでしょうか
古典本来のあらすじはこちら
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