ぐだっと祝うよゆかりちゃん (13)
※キャラ崩壊注意。
※短めです。
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「私、今度の誕生日に遠泳にチャレンジをしてみようと思ったんです」
水本ゆかりがいつものように突然わけのわからないことを真顔で言い出した。
これに素早く反応したのは、ドーナツを食べながらドーナツを食べることを考えていた椎名法子だった。
「へー、そなんだ。がんばってね」
凄く気のない返事だった。
というかドーナツしか頭になかった。
「いや、がんばってねじゃないよね法子ちゃん?」
ツッコミ不在のままに会話が流れてしまわぬように、中野有香が口を出した。
放っておけば一切止まらず本当に遠泳に行きかねないし、それをドーナツを食べながらのんびり見守りかねない。
遠泳するアイドルを見守るドーナツを食べるアイドル、凄い絵面だが見てみたいとは別に思わない。
「でもゆかりちゃんがやりたいって言うなら、あたしたちはそれを応援するしかないと思うよ有香ちゃん?」
「その理解の深さは今発揮するべきじゃないと思うな」
「ところでえんえーって?」
「そこから理解してなかったの?」
法子ちゃんは無邪気だなあ、と有香は思った。無知だなあとは思わないあたりに有香の人の良さが現れている。
「遠泳、ですよ。法子ちゃん。遠くに泳ぐと書いて遠泳です。アイドル界という大海を泳ぐ私たちにとっては、やりとげなければいけないことですね」
「へー。それよりドーナツ食べる?」
「はい、いただきます」
「法子ちゃんもう少し興味持とう?」
ゆかりが流してドーナツを小さな口でリスのように食べ出したので有香が代わりに提言をした。
「ゆかりちゃん、どうして遠泳なんですか?」
法子があまりにも無関心なので、代わりに有香が興味を持つことにした。
というか、単純にどうしてそのようなイカれた発想に至ってしまったのか、三人の中で唯一ツッコミ属性を持つ常識人枠の有香にとっては普通に気になった。
もしかして何かとても深い意味合いが隠されている可能性だって、聞いてみなければ有り得るのだ。たとえ那由多の彼方にしか存在しないであろう可能性であったとしても、聞かなければ真実は明かされない。
開けてみないとわからない猫の命のように、聞いてみないとわからない。
ところで思考実験のたびに殺されそうになる猫を忍んで法子はドーナツを食べた。何かと理由をつけてはドーナツを食べる。ドーナツを食べるために適当な理由をつけているだけとも言う。
「今日は誕生日なので、せっかくですからこれを機に何かに挑戦してみようかと……ほら、美波さんもチャレンジすることは大事だと仰ってましたよね」
「うーん、挑戦の方向性が違うかなぁ」
「違いませんもん」
「もんって」
可愛いなあ、と有香は思った。
怒ることに慣れていないのか、ふぐのように頬をまあるく膨らまして、じっとりと目を据えて鋭くない眼光で睨めつけるゆかりの姿は、お世辞にも怖くは見えず、可愛らしいとしか言いようがない。
「ふんだ、です。では何をすればいいんですか」
「拗ねるゆかりちゃん可愛い」
おっと思わず心の声が漏れてしまいました、と有香。
目の前の女の子可愛すぎ大問題です。
「か、可愛いだなんて、褒めても何も出ませんよっ? 法子ちゃんこれでありったけドーナツ買ってきてください」
めちゃくちゃ出ていたけどそれで喜ぶのは法子ちゃんだけなのでは?
「わーいっ! たべていい? たべていーい?」
「これは有香ちゃん用です」
「有香ちゃんゆるさない……っ!」
鬼の形相だった。怒るとはこうするんだよとゆかりに教えているのかとも思ったが、どうやら素のようだった。何もしていないのに、ひどいなあと思いながら有香は懐からコンビニで買ってきたミニドーナツを法子の口に放り込んだ。
なぜそんなものが懐に入っているのかと言えば、法子を手懐けるためだ。
「んまんま。有香ちゃんゆるす」
許された。法子ちゃんは無邪気で可愛いなあ、と有香は思った。単純であると思わないあたりに有香の人の良さが現れている。
しかし、さて、何をすればいいんですかと聞かれてしまうと、有香は悩んだ。凄く悩んだ。時間にして一秒悩んだ。
一秒だけ考えて、ぽんと閃いた、もとい最初からずっと思っていた、当然の結論があったので即座に口に出した。
それは、凄く凄く、普通のこと。
「誕生日ならケーキを食べません?」
「いただきます」
有香は冷蔵庫に入れているネームプレートつきのケーキを取り出しに行き、ふと思った。
甘いものしか食べてないなぁ。
おわり
ミスドのカフェオレ飲み放題で半日以上時間潰した学生時代が懐かしい。
水本ゆかりちゃん誕生日おめでとう
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