仁奈「夢みるウサミンロボ」 (28)
【モバマスSS】です
天才池袋晶葉の作ったウサちゃんロボ
そのウサちゃんロボを安部菜々の故郷ウサミン星の超科学により強化改修したのがウサミンロボである
人の世にアイドルがいる、この素晴らしいものを護るために、今日もどこかで頑張ってるのだ!
今日もどこかでウサミンロボ、明日もどこかでウサミンロボ
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今夜の市原仁奈ちゃんは、女子寮でお泊まりです。
ご飯もしっかり食べました。
夜は少し寂しいですけれど、一人で寝ることだってもうできます。
怖くなったらお隣の部屋には片桐早苗さんもいます。
反対側の部屋には星輝子もいます。
うさ
ウサミンロボだっています。
「ロボと一緒でごぜーます」
女子寮専属のロボは、年少組がどうしてもお泊まりをしなければならないときのお世話係でもあるのです。
時々、「お世話係をさせて欲しい。金なら払う」と意味不明な主張をしてくるおかしな人もいるのですが、全てお断りです。
しつこい人はウサミン竹槍で撃退します。
邪魔する奴は竹槍一つでダウンです。
仁奈ちゃんは、寝る前にお風呂に入ります。今夜はクラリスが一緒です。
よーく暖まって、お風呂上がりにはイチゴ牛乳を飲んで、それからお部屋に戻ってきます。
イチゴ牛乳を届けるのもウサミンロボの役目です。ただし、選ぶのは橘ありすの独断場です。たまにはコーヒー牛乳を希望されるのですが、準備は万全です。
クラリスにはミネラルウォーターです。ただのよく冷えた水をクラリスが受け取ると時々葡萄酒に変化するのは、異星の超科学たるウサミン科学でも未だ解明できない謎です。
ちなみに、石がパンに変わることもあるので大原みちるは大喜びします。
お風呂上がりの仁奈ちゃんは、ほっかほかの姿のままベッドに潜り込みました。
「ほっかほかですよ」
うさー
ウサミンロボは絵本を準備して、仁奈ちゃんの横に転がります。
大きなベッドなので、仁奈ちゃんとウサミンロボが並んで横になっていても平気なのです。
仁奈ちゃんが眠るまで絵本を読む。それが今夜のウサミンロボの重大な使命なのです。
うーさー
本を開きました。
「ご本を読んでくれやがるですか?」
うーさー
朗読モードオン
ウサミンロボ合成音声システム始動
サンプリング協力:グリーンリバーライト(仮名)
“昔々、あるところに”
じぇ……
“お爺さんとお婆さんが”
じぇじぇ……
“ある日、お爺さんが若返ると……”
うさっ!?
じぇじぇじぇ……
絵本の内容がおかしくなっています。そして謎の声も聞こえます。
じぇじぇじぇ……
“お爺さんにはお婆さんが……”
“桃、私のことは嫌いかい?”
“お爺さん……”
“そうだ、私に全てを任せて”
うさっ!?
あまりのことにウサミンロボは朗読をストップします。これは一体。
止めたらダメなんだじぇ、ロボ、続けるんだじぇ
ちょっと、やめなよ。聞いてるの仁奈ちゃんだぜ
じぇ!?
どこからか別の声も聞こえました。
さすがに仁奈ちゃんには聞かせられないじぇ……
ぐりりばはあたしも聞きたいけどさ……
ウサミンロボのセンサーには神谷奈緒と大西由里子の反応があったような気がしました。
ウサミンロボは気にせず絵本を交換しました。
新しい絵本の裏表紙には持ち主の名前が書いてあります。
【白坂小梅】
エドワード・ゴーリーの絵本でした。
うさっ!?
もう一度交換します。
表紙には傷ついた悪姫ブリュンヒルデが描かれています。
うーさー
個人のノートが混じっていたようです。
これは絵本ではありません、禁断のグリモワールです。
うさ
こんどこそ、正真正銘の絵本です。
“昔、竹取の翁あり……”
読み進めると竹から見目麗しい紅顔の美少年が出てきたので、ウサミンロボは絵本を投げ捨てると、ウサミン竹槍百裂突きで葬りました。
油断していました。
そうこうしているうちに、仁奈ちゃんは眠ってしまいました。
結果オーライです。
んー
ウサミンロボはゆっくりと静かに、夜間隠形モードに移行します。
顔や耳の光が消え、ウサミンロボの姿も闇の中に消えていきます。
うーさー
仁奈ちゃんの小さな寝息だけが聞こえていました。
*************
「仁奈、仁奈!」
仁奈は目を覚ました。
「あれ、寝てた?」
「何やってんのよ、仁奈」
「ごめんごめん、じゃあ、そろそろ行こうか」
「本番直前まで寝てるなんて、杏さんでももうちょっと早く起きてたわよ」
「そこで先輩の名前は卑怯だよ、薫」
「さ、二人とも、行きましょ」
「はい、菜々先輩」
市原仁奈、龍崎薫、安部菜々の17才アイドルトリオは、まさにトップアイドルだった。
「市原さん、安部さん、スタンバイお願いします」
スタッフの言葉を合図に三人がステージへ出た瞬間、まるで爆発でも起きたかのような熱狂が辺りを包み込む。
ニナチャーーーーーン!
ニナチャーーーーン!!!
カーーーオーーーールーーーーー!
センセーッテヨンデーー
ナナサーーーーーーーン!!
ジュウネンマエカラファンデシターーーー
ナンカケイサンオカシクネ?
「みんなありがとーーー!!」
「ウーサミンっ!」
ハイッ!!!
歌い、踊る三人。ファン達の熱狂のボルテージは上がり続け、熱気と興奮に包まれたライブは大好評のうちに幕を閉じた。
「お疲れ様でした!」
三人の労をねぎらうスタッフ達。冷たいミネラルウォーターや冷やしタオルが渡され、スタイリストやヘアメイクさんたちが三人の姿形を整えていく。
菜々と薫は互いのパフォーマンスについて話しているが、仁奈はそこに参加しようとして口を閉じた。
「どうしたの? 仁奈」
「……なにか足りない」
「今日の出来? 仁奈は厳しいなぁ」
「違うよ、ねえ、何かおかしくない? 誰かがいないの」
「誰かって……」
小さな……違う、同じぐらいの大きさのモノ……そう、あの頃、同じくらいの大きさで……
「ロボ!」
「え? 何?」
「ろぼ? 何それ」
顔を見合わせる薫と菜々。
「ねえ、なんで菜々まで知らないの? ウサミンロボだよ? ウサミンだよ?」
「えっと……ごめんなさい、ロボって何のことかな?」
「なんで……」
あ、と声を上げる薫。
「もしかして、昔事務所にいたロボット?」
「覚えてるでしょ、薫」
「古いよ、とっくにおシャカだよ」
「え」
「あー、思い出しました。あれですか。もうかなり前に始末しちゃいましたよねぇ」
「……どうして……始末……って」
*************
うさっ!!
緊急事態が発生しました。ウサミンロボは夜間隠形モードを解除すると、仁奈ちゃんの手を握ります。
うさっうさっ
仁奈ちゃんはうなされています。夢を、とても嫌な夢を見ているのでしょうか。
「……ロボ……」
ロボの名前を呼んでいます。
うさっうさっ
ロボは仁奈ちゃんの手を優しく握ります。
僕はここに居るよ。仁奈ちゃんの側に居るよ、と言うように。
仁奈ちゃんの目が開きました。
うさー
ウサミンロボは仁奈ちゃんの視界に入るようにしてご挨拶します。
「……嫌な夢を見やがりました」
仁奈ちゃんの目が潤んでいました。まるで今にも泣き出しそうです。
うさ
「ロボは、ずっと一緒ですよ」
うさ
ウサミンロボは仁奈ちゃんの背中を優しく撫でます。そして、ゆっくりとリズミカルにポンポンと叩きます。
うーさー
大丈夫だよ。僕はずっと一緒に居るよ。仁奈ちゃんと一緒に居るよ。
言葉は話さないけれど、そんなことを言ってるように仁奈ちゃんは思いました。
「約束するでごぜーます」
うさ
仁奈ちゃんはウサミンロボの手をしっかりと握っていました。ウサミンロボは逆らうことなくじっとしています。
「一緒ですよ?」
うーさ
「一緒ですよ」
うーさ
「一緒で……」
うさ
「い……」
仁奈ちゃんは眠ってしまいました。
うさ……
ウサミンロボは、今度は夜間穏形モードにはならず、顔部分の光量を少しだけ落としました。
うーさー
静かに、仁奈ちゃんを見守ります。
*************
「……ちゃん」
「仁奈ちゃん」
「仁奈ちゃん」
自分を呼ぶ声に、仁奈ちゃんは目を覚ましました。
周りを見回すと、自分はアイドルの恰好をしています。
だけど、さっきの夢と違って大人の姿ではありません。
そして、目の前にはウサミンロボが立っています。
「仁奈ちゃん」
「……ウサミンロボ、喋りやがるのですか?」
「みんなには内緒だよ」
「わかったです」
「仁奈ちゃんに伝えたいことがあって、僕は喋れるようになったんだ」
「仁奈とお話ですか」
「うん。仁奈ちゃんと約束するんだ」
「約束?」
「僕は、仁奈ちゃんとずっと一緒にいるよ。仁奈ちゃんが望む限り、僕はずっと一緒にいるよ」
「ロボ!」
「約束だよ!」
指切りげんまんはウサミンロボの手では難しいので、二人は握手します。
*************
朝になると仁奈ちゃんは目を覚ましました。
ウサミンロボにおはようの挨拶をすると、ウサミンロボもウサの元気なご挨拶を返します。
そしてウサミンロボは、朝食の準備を始めるのです。
それから仁奈ちゃんは時々、大人になってもアイドルを続けている夢を見るようになりました。
大人になった仁奈ちゃんは大人気のアイドルです。
その後ろでは、いつもウサミンロボたちが楽しそうに踊っているのです。
終
以上、お粗末様でした
Twitterで見かけた絵(というかドール?)がありまして
ドールで作った仁奈ちゃんとプラキットウサミンロボが寝転んで一緒に本を読んでいる姿
その尊さに心打たれて気が付いたらSS書いてました
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