都内某所 スーパー
常務「日本に帰ってきて一週間が経った」
常務「時差ボケも無くなったし、そろそろ自炊を再開するとしよう」
常務「さて、今晩の献立は……」
???「う~、届かねーです」
常務「む? あれは確か……」
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???「困りやがりました……」
常務「キミ」
???「なんでごぜーますか? 今いそがしいので後にしてくだせー」
常務「届かないのか? なら私が取ってあげよう」
???「わーい! ありがとうごぜーます!」
常務「ふふっ、これくらい訳はない」
常務「それはそうと……キミは確か市原仁奈といったな」
仁奈「なんで仁奈を知ってるです?」
常務「私はキミの事務所で常務をやっている」
仁奈「じょーむ?」
常務「わかりやすく言えば、プロデューサーより偉い人だ」
仁奈「おー! すげーです!」
常務「ところで、キミはここで何をしている?」
仁奈「今日はママが帰ってくるのがおせーから、お弁当を買いにきたでごぜーます……」
常務「なに?」
仁奈「パパは外国だし、ママもお仕事が忙しいから仕方ねーです……」
常務「……」
仁奈「それじゃあ仁奈はもう行くですよ! お弁当取ってくれて、ありがとうごぜーました!」
常務「待ちたまえ」
仁奈「?」
───
都内某所 MJハウス
仁奈「わー! お外がピッカピカだー!」
常務「そうだろう? 都内の一等地にある高層マンションだからな」ドヤァ
仁奈「すげーです!」ぐ~
常務「ふふっ、お腹が空いてしまったか?」
仁奈「えへへっ、ちょっと恥ずかしいです……」
常務「それでは早くご飯を作らないとな」
仁奈「仁奈もお手伝いするですよ!」
─────
───
─
常務「待ちたまえ」
仁奈「?」
常務「やはり育ち盛りの子供がスーパーのお弁当ばかりというのは感心しないな。いや、最近のお弁当も添加物を使ってないものも多いから一概には言えんが……」
仁奈「さっきから何を言ってやがるんです?」
常務「あ、あぁ、済まない。とにかく少し待っていてくれ」
常務「確か担当は……」ポパピプペ
常務「……」
常務「私だ。キミは確か市原仁奈の担当だったな」
常務「ああ。彼女の親の連絡先を教えて貰えるだろうか?」
常務「いや、問題が起きたというわけではない」
常務「彼女は今晩は私の家に泊める。その事で彼女の親に許可を取る」
常務「ああ。面識のない私が連絡しても信用がないからな」
常務「……察しがよくて助かる。キミから先に連絡をしてくれたまえ。私はそのあとで再度連絡をする」
常務「あとはこの事は他言無用で頼むぞ……」
─
───
─────
仁奈「こねこね~♪」
常務(連絡を取った感じ、家族仲が悪いわけでは無さそうだったが、年端もいかない子供だ。さぞ寂しい思いをしてるんだろう……)
常務(そういえば、私も幼い頃は両親が忙しく、いつも一人ぼっちだったな……)
常務(私は彼女に当時の自分を重ねているのだろうか……)
常務(いや……さっきまでは確かにそうだったかも知れんが……)
仁奈「ぺったん♪ ぺったん♪」
常務(なんだ……胸の奥から溢れ出すこの気持ちはっ!)
仁奈「えへへー! 出来やがりましたー!」にぱーっ
常務「」キュン
───
仁奈「ハンバーグ! すげー美味しそうです!」ジュー
常務「ふふっ、熱いから火傷しないようにな」
仁奈「大丈夫でごぜーます!」
常務「そうか。では食べるとしよう」
仁奈「いただきまーす!」
常務「いただきます」
仁奈「あちちっ」
常務「ほら言わんこっちゃない! 大丈夫か!? 火傷はしてないか!?」
仁奈「大丈夫でごぜーます! それよりもすげー美味しいですよ!」
常務「そ、そうか? 何よりキミが頑張って作ったものだからな」
仁奈「キミじゃねーです」
常務「え?」
仁奈「キミじゃなくって仁奈って呼んでくだせー! それにこれは仁奈だけじゃなくて、じょーむと一緒に作ったから美味しいんでごぜーます!」
常務「」キュン
常務「さぁ、仁奈ちゃん! まだまだお代わりはあるからな!」
仁奈「そ、そんなにいっぱい食べれねーでごぜーます……」
───
仁奈「ごちそーさまでした!」
常務「ごちそうさまでした」
仁奈「はぁ……お腹いっぱいでごぜーます」
常務「少したったらお風呂を沸かしてあるから入るといい。それにアイスも買ってあるぞ」
仁奈「やったー! アイスだー!」
常務「ふふっ、お腹いっぱいなのでは無かったのか?」
仁奈「アイスは別腹でごぜーますよ!」
───
仁奈「わーい! フカフカだー!」
常務「ふふふっ、王室御用達のロイヤルベッドだから当然だ」
仁奈「よくわからねーけど、すげーです!」
仁奈「う~ん……」
常務「眠くなってきたのか?」
仁奈「まだ……眠たく……ねーです」
常務「……」
仁奈「すぅ……すぅ……」
常務「ふっ、慣れない環境では無理もないか」
常務「さて、明日は送っていかなければならないから、私も早めに寝るとしよう」
常務(……寂しくなったら、いつでも遊びに来ていいからな)
──事務所──
常務「……」カツカツ
凛「あれが、この前帰ってきたっていう美城常務?」
卯月「なんだかクールな人ですね」
未央「噂だと、今ある全アイドルプロジェクトの解体をするって話だよ」
卯月「そ、そんな! 私達は一体どうなっちゃうんでしょうか……」
バタン
常務「ふぅ……」
部長「やあ、お疲れさん」
常務「お疲れ様です」
部長「そういえば、今こんな噂が流れているんだが」
常務「噂?」
部長「なんでも、今あるプロジェクトを全て解体、白紙に戻すと」
常務「……確かにバラエティー路線はテコ入れが必要だとは思いますが、わざわざ全プロジェクトを解体まではしません。混乱するだけです」
部長「ふむ」
常務「バラエティー路線は765プロの天海春香。彼女の存在が大きい。彼女を打ち破るにはこちらも相応の準備を……」
部長「ま、待ちたまえ。ここがアイドル部門だという事を忘れていないか?」
常務「そういえば、先日挙がったこの『とときら学園』という企画は実に素晴らしい。生徒役にはアイドル界で古来からの伝統であるスモックを……」
部門「おーい?」
コンコン
常務「これは早急に企画者と綿密な打ち合わせが……っと来客か。入りたまえ」
???「失礼します」
常務「ああ、キミか。急に呼び出してすまない」
部長「確か、高垣楓くんだったかな」
楓「はい。それで……お話というのは?」
常務「キミの活躍は、我が事務所でトップクラスだと聞いている」
楓「はぁ」
常務「そこで、キミに相応しい仕事を用意した。この日にある小さなライブをキャンセルし、全国ツアーをして貰う」
楓「……」
常務「どうしたのだ?」
常務(おや? この資料だと、この場所は彼女の……)
常務「すまない、小さなライブと言ったことは訂正しよう」
楓「……」
常務「先程のキャンセルという話は無しで、せっかくだから、この場所でのライブをツアーのファイナルにするというのはどうだろうか?」
楓「……美城常務!」
常務「思い出の場所なのだろう?」
楓「はい! お受けさせていただきます!」
常務「では、詳しい話はまた後日に」
───
常務「ふぅ……これでいくつかの案件は片付いたな」
ガチャ
仁奈「じょーむ!」
常務「おお! 仁奈ちゃん、どうしたのだ?」
仁奈「前に約束したキグルミを一緒に着るでごぜーますよ!」
仁奈「あれ? あのモフモフはなんでごぜーますか?」
常務「ああ。あれはカシミヤのコートだよ」
仁奈「かしみや?」
常務「外国にいるヤギの事だ」
仁奈「おお! じょーむはヤギのきもちになるですか!」
常務「ふふっ、そうだな」
仁奈「それじゃあ仁奈と一緒にモフモフしやがりましょー!」
常務「その前にひとついいかな?」
仁奈「なんでごぜーますか?」
常務「仁奈ちゃんはアイドルになれて楽しいか?」
仁奈「もちろんですよ! プロデューサーやアイドルのおねーさん達、じょーむも一緒で楽しいです!」
常務「ふふっ、そうか。……さて、一緒に遊ぶとしようか」
ちひろ(はぁ、常務に資料を届けに来たけど、緊張するな~)
コンコン
ちひろ「美城常務。資料をお届けに参りました」
シーン
ちひろ「あれ? 反応がないわね」
ガチャ
ちひろ「失礼しま~す」
仁奈「モフモフ♪」
常務「モフモフ……モフモ……フ!?」
ちひろ「あ、あの! し、失礼しましたー!!」
終わり
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