【ガルパン】響け! キス・マイ・アス! (59)
みほ「ねーねーお尻みせて、お姉ちゃんお尻みせてよぅ」
まほ「もー、だから駄目だってばみほ」
みほ「なんで、どうしてぇ?」
まほ「だって、恥ずかしいもん」
みほ「でもお姉ちゃんのお尻見たいー」
まほ「あのねみほ、お尻は人には見せちゃいけないところなんだよ」
みほ「どうしていけないの?」
まほ「それは……恥ずかしい所だからだよ」
みほ「なんで恥ずかしいのー?」
まほ「えと……おトイレする所だからだよ」
みほ「おトイレは恥ずかしいことなの??」
まほ「う、うーん……と、とにかく、みほだって人にお尻を観られるのは恥ずかしいだろう?」
みほ「みほはお姉ちゃんにならいいもん!」ペロン
まほ「わぁぁぁぁ、駄目だよみほ、お母さま見つかったら怒られるよ、さぁパンツを上げて」ゴソゴソ
みほ「でもお母さんはお出かけしてるよー?」
まほ「そうだけど……」
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みほ「ねぇ見たい見たいー、お姉ちゃんのお尻みたいよぉー」ジタバタ
まほ「うぅ、しかたないなぁ、誰にもいっちゃだめだからね?」
ぬぎぬぎ、ぺろん
まほ「ほら、お尻だよ」
みほ「キャーっ!」キャッキャ
まほ「もぅ、みほは変な子だなぁ、ふふ」
みほ「お姉ちゃんのお尻ー♪」クイッ
まほ「ひゃぁ!?」
みほ「あれぇ? お尻の中にもオヘソがあるよー……?」
まほ「っ! もーっ、もう駄目! 終わりっ!」バッ
みほ「あーん、もっと見せてよぅ」
まほ「駄目っー! ……もー……あのね、みほ、よく聞いて」
みほ「?」
まほ「こんなこと、お友達とは絶対にしちゃいけないよ」
みほ「え~」
まほ「絶対にしないって、今ここでお姉ちゃんと約束して。お姉ちゃんと──約束、いい?」ズィッ
みほ「うー……。わかった」
まほ「ん、みほはいい子だよ」
みほ「ねぇお姉ちゃん、お尻のおへその事、お母さんに聞いてもいい?」
まほ「だめー! もう、しょうがないなぁ、おいで、おへその事はお姉ちゃんが教えてあげるから……」
みほ「わぁ~い」
~そして10年後~
みほ「────……。」
梓「……。」
先の展開何も考えてないのでまた何か思いついたらまた書かせていただきますよって
みほ「お姉ちゃんだってきっと覚えてる。恥ずかしいなぁ」
梓「でも、お二人とも本当に仲良しだったんですね」
みほ「今だって仲良しだよ……多分」
梓「じゃあお姉さんのお尻、今でも見たいですか?」
みほ「梓ちゃんったら。お尻は子どもの頃の話。私達はもう高校生なんだから」
梓「あはは、そうですよね」
梓(……。)
みほ「ただ、時々ね」
梓「?」
みほ「懐かしくなる。そんな風にお姉ちゃんとお尻を見せ合いっこしてた事。お尻だけじゃない、お口の中とか、いろんなところ」
梓「……。」
みほ「変、かなぁ」
梓「そんな事ないです。私だって、その、弟の、お、おちんちん、引っ張ったりしてましたし」
みほ「もう梓ちゃんったら」
梓「兄弟姉妹って、いろいろおかしなことしますよ」
みほ「ふふ、梓ちゃんは、いいお姉さんなんだね」
梓「えへ……」
みほ「……、こんな風に、二人一緒に一つのベッドで寝て、こっそりコソコソ話をして、あの頃は楽しかったなぁ」
梓「先輩っ、私も今、すっごく楽しいです」
みほ「ほんと?」
梓「はい。先輩のマンションに二人でお泊り、誘ってもらえて、本当に嬉しくて」
みほ「良かったぁ。梓ちゃんが隊長になって、私が副隊長になって、一緒にいる時間は随分増えたけど、あんまりこういうことはしたことがなかったから。私が卒業しちゃう前に、一度くらいはって、ね」
梓「年が明けて春が来たら、先輩がいなくなっちゃいます。やだなぁ」
みほ「私も寂しいよ。皆とお別れするの」
梓「……。あのっ……」
みほ「?」
梓「私だって、先輩になら、お尻を見られても、全然恥ずかしくないですから、全然、その……お尻のおへそだって……」
梓「ご、ごめんなさい。他人なのに、気持ち悪いですよね。」
みほ「そんな事ないよ。ただ……えへへ、あの時のお姉ちゃんの気持ちがちょっぴりわかっちゃったなって」
梓「お姉さんの気持ち、ですか?」
みほ「うん。『ちょっぴり嬉しくて──でもやっぱり困っちゃう』」
梓「……あぅ、すみません……」
みほ「いいよ、気にしなくて」
梓「は、はい」
みほ「ふふ、妹がいるって、こんな気持ちなのかなぁ」
梓「先輩……」
────────。
みほ「すー、すー、」
梓(……。)
みほ「ふぅ、ん」
梓「……」
すんすん
梓(先輩の前髪のつけ根、柔らかくて良い匂い)
みほ「すー、すー」
梓(あーあ。あと二年早く生まれたかったなぁ)
梓(そしたら私、先輩の先輩になれた)
梓(先輩はみんなから頼りにされていて、そのみんなの期待に答えなきゃって、先輩はずっと頑張ってきた)
梓(けど──)
梓「先輩は本当は、今でもお姉さんに、甘えていたいんじゃないですか」
みほ「……むにゃ、むにゃ……」
梓(一生懸命に頑張ってる先輩が、私、好きです。でも、だからこそ私──)
梓(先輩を、思いっきり甘やかしてあげたい)
梓「年下のくせに生意気だって、先輩は怒るかもしれないけれど──私、先輩のお姉ちゃんになりたいです」
──────。
~練習試合場~
梓「エリカさん」
エリカ「梓」
梓「ご卒業おめでとうございます」
エリカ「式はまだ来年なんだけど」
梓「はぁ。でも今日が最後の練習試合ですから、もう会うこともないでしょうし」
エリカ「そういえばそうね。どうでもよいので気にしてなかったわ」
梓「……。勝ち逃げされるみたいで、気に食わないです」
エリカ「みたいじゃなくて、勝ち逃げ」
梓「留年して来年も私と戦ってくれませんか」
エリカ「そんなくだらない事のために留年? 冗談じゃない」
梓「……。」
エリカ「……。」
梓「……八ヶ岳は楽しかったですか」
エリカ「ん……。……まぁ、そうね、良かったわ。それについては礼を言っておく」
梓「どうも。」
梓「あの、エリカさん」
エリカ「何?」
梓「エリカさんって、お姉さんがいましたよね」
エリカ「いるけど」
梓「お姉さんのお尻とかって、見たことあります?」
エリカ「そりゃ風呂に入れば尻くらいは見たことあるけど──何なのアンタ」
梓「エリカさんみたいな人でも、お姉さんのお尻がみたいとかって思うのかなと、思いまして」
エリカ「思うわけないでしょ。人の尻なんかみてどうするのよ汚い」
梓「汚い、ですか」
エリカ「あたりまえでしょ」
梓「まぁ、そうですけど」
エリカ「何を聞きたいのか知らないけど──」
エリカ「誰にだって汚いとこや見せたくない部分くらいある」
梓「……え?」
エリカ「人のお尻なんて、おいそれと見ようとするもんじゃないわ」
梓「まぁ……そうかもしれないです」
エリカ「ふん、これが最後の会話でしょうに、くだらないわね」
梓「はぁ、すいません」
エリカ「じゃ、行くから」
梓「はい。あの、えっと……お元気で」
エリカ「まーあんたも適当に、達者で」
梓「はい」
エリカ「……。」
梓「……。」
エリカ「──梓」
梓「え、はい」
エリカ「アンタ、勝ち逃げされるのが嫌だったら、大学でまた試合すればいいでしょ」
梓「へ」
エリカ「……じゃ」
梓「……、あの、大学に入ったらまた、LINEで連絡します」
エリカ「留年すんじゃないわよ」ノシ
つかつかつかつか……。
梓「──……。」
梓(エリカさんのお尻は、きっとものすごく臭いんだろうな。意地が悪くて。汗臭くて)
梓(『──汚いとこや見せたくない部分──』)
梓(でも、お尻って、そうなのかな)
味「私には、そういう風には──思えないんだけどなぁ」
──お姉ちゃんのお尻ー♪ キャッキャッ──
──────。
続きを思いついたらまた続きを書きます
行き当たりばったりですみません。
梓「……。」
──汚いとこや見せたくない部分──
──時々懐かしくなる。そんな風にお姉ちゃんとお尻を見せ合いっこしてた事──
梓(相変わらず二人とも、正反対なんだなぁ)
桂利奈「ねー、あずさ今日すっごい静かじゃん、どしたの?」
あや「ほっときなよ。考え事でしょ」
桂利奈「隊長は大変だねぇ」
梓「……。よしっ」
あや「あ、動いた」
桂利奈「考え事は終わり?」
梓「うんもう終わり。やっぱり私は先輩が好き」
桂利奈「へぇ」
梓「ちょっと西住先輩の教室にいってくる!」
桂利奈「いってらっしゃーい」
あや「ラブだねぇ」
たったったった……
──────。
梓「優花里先輩」
優花里「あれぇ、隊長」
梓「あの、西住先輩に用事があって」
優花里「ほい了解、西住殿~、隊長がお呼びですよ~」
梓「あ、あのぅ、隊長って言うのは試合の時だけにしてくださいよぅ、皆さんの方が先輩なんですし」
優花里「だめだめぇ、隊長は隊長なんだからぁ」
梓「うぅ、いまだに慣れません」
みほ「──梓ちゃん?」
梓「西住先輩、えっと、ちょっとお話し良いですか」
みほ「うん、いいよ?」
梓「ここではなんなので、ちょっと外へ」
みほ「? うん、じゃあ」
──────。
みほ「──今日も私の家にお泊りしたい? うん、それは構わないけど……」
梓「やった」
みほ「でも私、受験勉強しなきゃだから、あんまり遊んでばっかりはいられないよ?」
梓「はい、私もテストがありますから、今日も勉強道具も持っていこうかとっ」
みほ「?? 私の家で勉強をするの?」
梓「はいっ、……えと、やっぱり、お邪魔ですか」
みほ「ううん、そんな事はないけど」
梓「私、先輩が卒業しちゃうのが寂しいです。だから、たくさん一緒にいたいんです」
みほ「……そっか、そういうことなんだね。ふふ、なら、初めからそういってくれればよかったのに」
梓「迷惑じゃないかなって」
みほ「そんなことないよ」
梓「よかった……」
梓「……」
梓「あの、先輩っ」
みほ「なに?」
梓「私、先輩にわたしのお尻を見てほしいです」
みほ「え」
梓「私、先輩のお姉ちゃんになりたいんです」
みほ「……。」
梓「ふざけてるように聞こえるかもしれないけど、私、真剣です」
みほ「……。」
みほ「梓ちゃんは──」
梓「……。」
みほ「立派になったねぇ」
梓「先輩」
みほ「なんだかまるでエリカさんみたい」
梓「それは、あんまり嬉しくないです」
みほ「でも本当だよ。自分の言いたいことを、きちんと相手の目をみて、真直ぐに──私には真似ができない。すごいよ」
梓「私こそ、先輩みたいにもっと堂々としていたいです。最近の先輩はまるで、お姉さんのまほさんみたいで──」
梓「って、あぅ、違う、こんなんじゃだめ……」
みほ「?」
梓「私、先輩のお姉ちゃんになりたいのに、そんな事言ってちゃいけない」
みほ「ねぇ、どうして梓ちゃんは、私なんかのお姉ちゃんになりたいの?」
梓「それは──」
みほ「──あぁ、やっぱり、この話はまた後にしよっか」
梓「後?」
みほ「今日、家にきてくれるんだもんね」
梓「あ──はいっ、行きますっ!」
みほ「うん。一緒にお勉強しようね」
梓「はい!」
みほ「あ、けど」
梓「はい?」
みほ「お尻は駄目だよ。そんなエッチなこと、軽々しく言っちゃダメ」
梓「……むぅ……」
どうやってSSを書いてたのかわからなくなってきました。辛いです。
みほ「家に帰ったら、まずお洗濯をしなきゃ」
梓「手伝いますよ」
みほ「ううん、梓ちゃんは先に勉強をしてていいよ。パンツとか、ちょっぴり恥ずかしいし……」
梓「あ、そうですね……」
梓(……なんか楽しいなぁ。先輩の日常生活に自然に潜り込む感し……)
ガチャ、キィ
みほ「ただいまぁ」
梓「先輩一人暮らしなのに」
みほ「でも言っちゃうんだよね」
梓「ちょっぴり分かります。あは」
みほ「じゃあ、私は先にお洗濯をするから、梓ちゃんは好きにしてて。冷蔵庫の飲み物、飲んでいいよ」
梓「はぁ~い」
梓(んふ……毎日こうやって先輩の家に通えたらなぁ。でもさすがに迷惑かなぁ)
みほ「……あれ?」
梓「? 先輩、どうしました?」
みほ「わたし、部屋の灯り消し忘れてたのかな」
梓(? ……廊下の奥、部屋のドアの隙間から灯りが漏れてる……?)
みほ「それに、この、靴」
梓(あ……玄関に揃えておかれてるこの靴、大人の女性のはく革靴だ……先輩のじゃ、ない。じゃあ──誰の……)
みほ「………………お母さん?」
梓「え……」
みほ「──梓ちゃん、ごめん、ちょっとここで待っていて」
梓「え、あ、はい」
とっ、とっ、とっ……ガチャァ……(みほが奥の部屋に入ってく)
梓「……」
『お、お母さん……』
梓(先輩の声が、漏れ聞こえてくる。やっぱりお母さんが)
『どうして……来るなら、連絡をくれればいいのに』
『抜き打ちです』
『抜き打ちって』
『会合のついでです。……部屋はキチンと整頓をしているようね』
『……』
梓(先輩の声、なんだかあんまり良い雰囲気じゃあない。先輩、あんまりお母さんとは……)
梓(……)
梓(私、帰った方がいいのかな……)
『でも今日は後輩の子と一緒に勉強をする約束で、急に、困るよ……』
『長居をするつもりはありません。すぐに帰ります。その子、待ってもらっているのなら、入っていただきなさい』
梓(え)
『わかりました……』
梓(い、いいのかな)
カチャ
梓「あ、あの先輩」
みほ「……」
ぎし、ぎし、ぎし
みほ「梓ちゃん、ごめんね。実はお母さんが来てて」
梓(先輩、やっぱり少し、戸惑ってる)
梓「は、はい、あの、私、今日は」
みほ「ううん、お母さん、すぐ帰るって言ってるから」
梓「そう、ですか……?」
梓(逆光のせいなのかな。先輩の表情、弱弱しい)
梓「じゃあ……えと、お邪魔します」
みほ「うん。……」
梓(先輩は本当に、あんまりお母さんとうまくいってないんだ……)
ガチャ
梓「し、失礼します、こんばんは」
しほ「えぇこんばんは。あぁ、後輩とはこの子の事ですか」
みほ「そうだけど……」
梓「あの、初めまして、私、名前は──」
しほ「澤梓さん、ね」
梓「っ、は、はい! 西住先輩にはいつもお世話になっています」
しほ「今年の大洗もなかなか頑張っていたわね。優勝には一歩届かなかったようだけれど」
梓「はい、黒森峰には、及びませんでした。皆さん、とても強かったです」
しほ「どうも」
みほ「……」
しほ「では私の話は手短に──みほ、貴方、こちらで大学に進学したいという話しは電話で聞きましたが、何のために大学へ行くの?」
梓(それって……手短にすませて、いい話のかなぁ……)
みほ「それを聞くために、わざわざ……?」
しほ「もし、これといって明確な目的が無いのなら、わざわざ関東の大学に行くことはありません。早慶レベルの大学を受験するというのなら話は別ですが。そうでないのなら──熊本に戻って黒森峰の大学に通いなさい。学費にしても仕送りにしても小さい金額ではないのですよ」
梓(……。詰問、というか通告みたい。先輩がお母さんを苦手に思うその気持ち、ちょっぴり分かった)
みほ「……」
梓(先輩……)
みほ「お母さん私……先生に、なりたいんです」
梓(──え?)
しほ「……、初耳ね。教職に就く事を考えているの?」
みほ「小学校か、中学校で先生になって──」
みほ「小さい子どもに、戦車道を教えれたら、って」
しほ「そうですか。……そう、そんな事を考えていたの」
梓(そうだったんだ……)
しほ「それは分かりました。では、以降のビジョンはどうなっているの」
みほ「ビ、ジョン?」
しほ「目標があるのならそれを実現するための計画があるのでしょう」
みほ「資格の本とか、先生になるためのガイドが書いてある本は、これ……買いました」
みほ「けど、まだ具体的なことはあんまり決められてなくて……まずは、大学受験をクリアしようって……」
しほ「つまり、具体的なプランはまだ決まっていないのね」
みほ「……はい」
梓(……、私の思い込みなのかもしれないけど、お母さんはそうは言いながらもやっぱり、ちょっとだけ、意外そうというか、びっくりそうというか──私がびっくりしてるから、そう見えるのかもしれないけど)
しほ「……。まぁ……本気で指導員になりたいというのなら、具体的な方法をリストアップしておきなさい」
みほ「はい。……反対は、しないんだね」
しほ「今更、反対はしません。ただ──」
みほ「?」
しほ「貴方がこの先も戦車道に関わっていくというのなら、一つだけ要求をしておきます」
みほ「なんですか」
しほ「もし、まほの身に何かが起こって、あの子が西住流を継げなくなった時」
みほ「……」
梓(……。)
しほ「その時はあなたに話しが回る。貴方は──それを拒むのか、受け入れるのか、態度をはっきりさせておいて頂戴。拒否するならそれはそれで結構です。貴方はすでに一度西住流を捨てている。まぁ養子をとるなり手段を考えます。けれど仮に少しでも受け入れるつもりがあるのなら──西住流を続けなさい。どちらにせよ今さら貴方と再び揉めて時間を浪費することだけはしたくありません」
みほ「……。はい」
しほ「そも指導員を目指すのであれば、西住の人間であるというステータスを活用するくらいのしたたかさを──……まぁ、いいわ、この話は、今日はもうやめておきましょう」
梓(あ……やっぱり、私、邪魔だったかなぁ……)
しほ「では、私は帰ります。──こういう話になるとは思っていなかった。貴方、長引いてしまって申し訳なかったわね」
梓「あ、いえ」
しほ「それと、丁度いいわ、貴方にこれを私ておきましょう」
梓「?」
ばさっ
梓「これ……黒森峰大学の入学案内&願書ですか」
しほ「大学で戦車道を続けるつもりなら参考になさい。来年の大会の成績によっては、特別奨学金制度の利用もできます」
梓「はぁ、ありがとうございます」
梓(……この冊子……本当は西住先輩に渡すつもりだったのかなぁ……)
みほ「……」
────────。
しほ「じゃあね」
──ガチャン
みほ「……」
梓(……)
みほ「……急に、ごめんね、梓ちゃん」
梓「いえ、そんな」
みほ「じゃあ、勉強、しよっか」
梓「あ、はい。あの私、お茶、入れますね」
と、と、と、と……
梓(……先生の事とか、西住流の事とか……先輩が何かいうまでは、私からは聞かないでいよう)
梓(……。でも、先輩はやっぱりすごいです)
梓(将来の目標とか、ちゃんとしっかり考えてるんだ)
梓(それなのに私、何も考えてないくせに、先輩のお姉ちゃんになりたいとか、オシリお尻っとかて、うぅ、なんだか私、恥ずかしい、バカみたい……)
梓(……だけど……)
梓(先輩が立派だからこそ、頑張ってるからこそっ……やっぱり、私は……!!)
────────。
みほ「電気、消すね」
梓「はい、おっけーです!」
かち、かち
……もぞもぞ
みほ「お休み、梓ちゃん」
梓「先輩、お休みなさい」
梓(結局、何ごともなかったように勉強をして、一緒にご飯を食べて、代わりバンコにお風呂にはいって──)
梓(だけど先輩は、ちょっとだけ口数が少なくて、なんだか出会ったころの先輩を思い出すなぁ)
みほ「すー……すー……」
梓(先輩の吐息、すぐ側で……先輩いま何を考えてるのかな。聞いてみたい。でも……私からきいちゃ迷惑かな……)
梓「……。あのう先輩」
みほ「ん?」
梓「今日みたいにまた、勉強をしにきてもいいですか」
みほ「うん、いいよ」
梓「邪魔になったら、言ってください。私、すぐに調子にのっちゃいますから……」
みほ「あはは、うんわかった。でも、大丈夫だよ。私、梓ちゃんといるとなんだか気持ちがリラックスするの。だから」
梓「本当ですか。嬉しいです」
みほ「だから……お母さんと話しをしていた時も、梓ちゃんが見てるんだからって、いつもより頑張れった気がする」
梓「……」
みほ「お姉ちゃんがいつもエリカさんと一緒にいた理由、ちょっとだけわかるような気がしたんだぁ」
梓「あのお二人の場合は、エリカさんが一方的にお姉さんにくっついていたんだと思いますけどねー」
梓(……って、私も人のこと言えないか……)
みほ「あ、だけどこれだけは約束してね」
梓「?」
みほ「うちに泊まる時は──梓ちゃんもかならず、そのボコパジャマを着ること」
梓「う……ちょっと恥ずかしいです……」
みほ「ううん、とっても可愛いよっ、Mサイズ、予備を買っておいてよかったぁ」
梓「はは……」
梓(パジャマは恥ずかしいけれど……でも良かった、先輩の声、笑ってる)
────────。
ちく、たく、ちく、たく……
梓(……)
梓(先輩、もう、寝たかな)
みほ「……スゥ……スゥ……」
梓(寝返りして、先輩の寝顔、観察しちゃおうかな……)
みほ「──梓ちゃん」
梓(……っ!)
みほ「まだ、起きてるかな」
梓「はい……起きてます」
みほ「今日は、ごめんね。お母さんがこの家にくるとは思ってなくて」
梓「いえ、謝る事なんて、本当に何もないです」
みほ「ん……」
梓「……」
…………ボォォォォォォォ…………
梓(あ、学園艦……今、出航してるんだ)
梓(……)
梓「私こそやっぱり、お邪魔だったんじゃないかなって」
みほ「ううん、何度もいうけど、そんな事ないよ」
梓「はい……」
みほ「……」
梓「……」
梓(『聞いてもいいよ』って、先輩は私にメッセージしてくれてるのかな)
梓(……よしっ……)
梓「……先輩っ」
みほ「わ、何……?」
梓「私、自分が恥ずかしいです」
みほ「どうして?」
梓「私、おしりのことしか、考えてなかったんです」
みほ「お尻……」
梓「先輩は、将来の事とかちゃんと考えて、お家の事とかでもいっぱい悩んでます。それに比べたら私、本当にバカです」
みほ「……。」
梓「先生になりたいっていう先輩の話、すごく立派だと思います」
みほ「そう、かな」
梓「でも、だからこそ私、……やっぱり先輩のお姉ちゃんになりたいです!」
みほ「梓ちゃん」
梓「先輩がすごく立派な人だからこそ、私も負けないくらいにもっともっと頑張って、先輩に甘えてもらえるくらいになりたいんです!」
みほ「梓ちゃんは、どうして、そんな風に思ってくれるの……?」
梓「それは、……、言ったら、先輩に怒られそうです」
みほ「……怒らないよ、約束する」
梓「じゃあ……私、先輩の事は尊敬してます。でも、それ以上に──先輩は、可愛いです」
みほ「……」
梓「私、家ではお姉ちゃんなんです。だから、なんとなく感じるんです。先輩は本当は甘えんぼで、いまでもお姉さんに甘えていたいんじゃないかなって」
みほ「……」
梓「お姉さんとの思い出話をしてるとき先輩は本当に幸せそうです。そんなふうに甘えんぼなくせに頑張ってる先輩が……私、可愛く思てしかたがなくて……」
みほ「………………」
梓「ごめんなさい……」
みほ「私……先生になるのは無理なのかな」
梓「え?」
みほ「後輩の梓ちゃんに、そんな風に思われてるんだもん」
梓「そんな、私が勝手にこう感じているだけで、先輩は、皆から頼りにされてます」
みほ「……」
梓「あの、本当です、先輩」
みほ「……」
梓(調子に乗りすぎた、のかな……)
みほ「私、これでも精一杯頑張ってるんだけどね」
梓「……」
みほ「梓ちゃんがそんな風に思ってただなんて、ちょっとショック」
梓「せ、先輩」
みほ「もう寝るね、お休み」
梓「怒らないって約束したじゃないですかぁ」
みほ「知らないもん」
もぞ
梓「あ、あ」
梓(先輩、背中を向けっちゃった……)
梓「先輩ぃ……」
梓「本当、生意気いってごめんなさい。……。でも──」
……え、ちょっと──?
梓「そうやって拗ねてる先輩は」
待って、何を考えてるの梓、それは言っちゃダメだってば
梓「今までで一番」
だめだめだめ!
梓「可愛い、です」
……あぁ……言っちゃった……
馬鹿ぁ……
みほ「……」
梓(怒られるに決まってる)
梓(けど)
梓(拗ねてる先輩、本当に、今までのどの先輩よりも、可愛い……)
みほ「今のは、ちょっとだけ──」
梓「え?」
みほ「お姉ちゃんぽかった、かな」
梓「え……」
みほ「梓ちゃん」
梓「は、い……」
みほ「おしりみせて」
梓「え」
みほ「そこまで言うなら、おしりみせて」
梓「言うなら、って……」
梓(……)
梓「わ、わかりました」
みほ「……」
梓「でも、ちょっとだけ待ってください。お風呂場で、おしり、綺麗にしてきたいです」
みほ「うん」
梓「じゃあ」
ごそ……
──────。
ごし、ごし
梓(ウェットティッシュで、よく拭いて、それから、コロンを──)
ごそごそ
梓「自分のおしりに、コロンをつける日がくるとは思わなかったなぁ。でも、やな臭いがしたら恥ずかしいもん……ちゃんと、広げて──えいっ」
かしゅッ、かしゅッ、
梓「ひゃっ! スース―する」
梓(想像してたシチュエーションとは少し違うけど──)
梓(でも、いじけた先輩の我儘をしかたなく聞いて上げてる私)
梓「たしかに、ちょっとだけ、お姉ちゃんっぽいかも」
──────。
梓「で、では、どうぞ」
みほ「……」
梓(豆電球の薄暗い灯り、おしりすっぽんっぽんで、先輩のベッドにうつ伏せになってる私……)
梓(みんなのおしりは、お風呂で見慣れてるけど……)
梓(さすがに少し恥ずかしい)
梓(……けど……)
梓(やっと先輩に、こうしておしりを……)
──エリカ「誰にだって汚いとこや見せたくない部分くらいある」──
梓(たしかにおしりは汚いですよ、臭いですよ。でも……先輩にとっては……)
みほ「梓ちゃんのおしりは、とっても綺麗だね」
さわ……さわ……
梓「っ……」
梓(先輩の手、冷たい。……ううん、私のおしりが、熱いんだ。心臓、こんなにドキドキしてるから……)
みほ「ジョギングも、筋力トレーニングも、とっても頑張ってる。おしりって筋肉なんだよ。梓ちゃんのおしりはとってもよく頑張ってるおしり」
梓「あ、ありがとうございます……」
みほ「子どものころ……よくお姉ちゃんがこうやってマッサージしてくれた……」
……むに、むに……
梓「ん……」
梓(先輩の手の平におしりをこねられるの、恥ずかしいけど、……気持ちいい……)
みほ「お母さんに隠れて。懐かしいなぁ」
梓「……」
みほ「でも、懐かしいって思うのは……もう戻れないって、分かってるからなのかな」
梓「先輩……先輩はやっぱり今でも、お姉さんのおしりを触っていたいんですね」
みほ「……。うん、そうだよ。触りたい……とっても触りたい……」
梓(──……先輩……)
……むに、むに……
梓「じゃあ、お願いを、してみたらどうですか」
みほ「駄目だよ。そんなお願いをしたら、お姉ちゃんに心配されちゃうもの」
梓「そうかもしれませんけど、でも──」
みほ「?」
梓「もしかしたらお姉さんも、先輩におしりを、澤ってほしいと思ってるかも」
みほ「……。どうして、そう思うの?」
梓「それは──」
──人のお尻なんて、おいそれと見ようとするもんじゃないわ──
梓(……)
梓(エリカさんの言うとおりだと思う。……でも、だからこそ──)
梓「私、今、すごく……嬉しいです。先輩と一緒に、他人とは違う事をしてる」
梓「私の恥ずかしいところを、先輩が見てくれてる、触ってくれてる」
みほ「……」
梓「お姉さんだって、もしかしたらそんな風に──」
みほ「──あずさ、ちゃん……」
ぴとっ……
梓「──ッ……!?」
梓(私のおしりに、先輩が鼻を)
みほ「わ、梓ちゃんのおしり、桃の香りがする」
梓「はひっ」
梓(こ、コロン、つけておいてよかった)
みほ「私もね、子供のころ、梓ちゃんとおんなじような事を考えてたよ」
梓「先輩も」
みほ「お姉ちゃんは私の特別……私がお姉ちゃんにしたことは、本当は全部──私がお姉ちゃんにしてほしかった事。私は、私の全部を、お姉ちゃんにみてほしかった」
梓「先輩の、全部……」
みほ「おしりも、口の中も、耳の中も、全部みてほしかった。……おしりのにおいも、かいでほしかった。私はとんでもない甘えんぼなんだよ。お母さんが厳しい人だからなのかなぁ」
梓「……」
みほ「でも、小学校にはいって、寄宿舎に入って──そういうのはあんまり普通のことじゃないんだって、恥ずかしいことなんだって、分かってきた。だからお姉ちゃんを困らせちゃいけないって……」
みほ「それ以来、寂しいけど──ずっとずっと、我慢してる。そうしなきゃ、私だけじゃなくてお姉ちゃんまで皆にバカにされる」
梓「……」
みほ「梓ちゃんにも、笑われちゃうね」
梓「私は……。私はそんな先輩が、やっぱり、可愛いです」
みほ「梓ちゃんは、そればっかり」
梓「でも、だって、そうだからしかたないです」
みほ「……。子どものころ、お姉ちゃんに、みほは変な子だねって言われた。その通りだと思う。だけど──梓ちゃんも──同じくらい、変な子だねー……」
さわ、さわ
梓「……。先輩」
みほ「ん……?」
さわ、さわ
梓「先輩は、これからも全部、我慢していくんですか。寂しい事も、甘えたい事も」
みほ「うん、そうだよ。そうしなきゃいけないと思う」
梓「……」
梓「そう、ですか……」
──────────
チュンチュン、チュン……
梓(ん、朝……)
梓「ふぁぁ」
梓(先輩は、まだ、寝てる)
みほ「……スゥ……スゥ……」
梓(……。先輩のおでこの奥には、いろんな物がつまってる……)
梓(……)
みほ「ん、ふ」
梓(あ……唇もごもご、かわいー……)
みほ「おねえ、ちゃん」
梓(寝言……)
みほ「約、束……ごめんね、破って……」
梓(約束?)
梓(……)
梓「……あ」
──こんなこと、お友達とは絶対にしちゃいけないよ──
──絶対にしないって、今ここでお姉ちゃんと約束して。お姉ちゃんと──
梓「……」
梓「……お姉さんもいけないです。先輩がこんなに我慢してるのに……」
──人のお尻なんて、おいそれと見ようとするもんじゃないわ──
梓(ああもう……五月蠅いですよエリカさん。そんな事、分かってます)
──恥ずかしいことなんだって、分かってきた。だからお姉ちゃんを困らせちゃいけないって──
梓(………………)
梓(……っ)
梓「み、み」
梓「みほ」
梓「み、みほっ……」
梓「お姉ちゃんは全然困らない」
梓「お姉ちゃんもみほのおしり、見たいもん!」
梓(ぶはぁっ、……うぅ、顔から火がでそう。まだまだお姉ちゃんには程遠いよ……)
梓(でも……)
梓「私、ぜったい、立派なお姉ちゃんになってみせる」
梓「先輩が卒業するまでの間に、お姉ちゃんって呼ばせて見せます」
梓(その時は、先輩のおしり、見せてください……)
梓「頑張るから、み、み、みほ」
みほ「……んもぅ、梓ちゃん五月蠅いよぅ……」
梓「っ!!! お、起きてたんですか!」
みほ「ずっと、独り言、つぶやいてるんだもん。夢の中にまで聞こえてきてたよ……」
梓「ごご、ごめんなさい」
梓(うぁ、う、『みほ』って、聞かれちゃった……)
みほ「ふあぁ……」
梓「…………」ドキドキ
次回の投稿で終わります。
みほ「……おしっこ」
梓「あ、え……」
みほ「ふぁぁ……」
とた、とた、とた……ガチャ、ばたん
梓(……)
梓(聞かなかった事にしてくれたのかな)
みほ『ねえ、梓ちゃん』
梓「!? は、はい!?」
みほ『昨日の事、みんなには秘密だからね。うさぎさんチームのみんなにも言っちゃだめだよ』
梓「あ、はい……えと、先輩も、秘密でお願いします」
梓(私がこっそり先輩を「みほ」って呼んだ事とか……)
みほ『うん、言わないよ』
梓「よ、よかったです」
梓(……)
梓(先輩と私、二人だけの秘密、か)
梓(……えへへ)
梓「……」
もじ、もじ……
梓(あぁなんだか……私もお手洗いが近くなってきちゃったかも)
梓「あの、先輩、私もおトイレしたいので、できればなるべく早く……」
みほ『えぇ、ダメだよ。私が出た後10分くらいは入っちゃダメ』
梓「えっ」
みほ『だって、私のおしりは梓ちゃんのおしりみたいな桃の良い匂いはしないもん』
梓「そ、そういうのやめてください、意地悪ですよ……」
みほ『くすくす』
梓(……あ……)
梓(先輩、笑ってる)
梓(笑ってくれてるんだ)
梓(嬉しいな)
梓(だって、先輩と私は昨日からおかしなことばかりしてる。だけどそれでも先輩は、今でもこうして、笑ってくれていて……)
梓(……嬉しい!)
梓「──もう、先輩って、実はすごく子供っぽいですよね」
みほ『そんなことないもん。私は梓ちゃんよりもお、姉、ち、ゃ、ん、なんだから』
梓(~っ、せんっぱいっ……!)
梓「お願いですから、早く出てくださいよー」
がちゃがちゃ
みほ『わ』
梓「はやくー」
みほ『梓ちゃん変態、やだもう』
梓「漏れちゃいますー」
がちゃがちゃ
みほ『もー……くすくす……』
梓(また笑ってくれた。先輩は、本当に、可愛いなぁ……)
梓「ね先輩~」
がちゃがちゃ……
みほ『くすくす、くすくす……』
梓(……先輩──、今先輩は、どんな顔をしてるんですか……)
梓(トイレにくぐもる先輩のその笑みは、なんだかとってもヤンチャな音色を響かせていて──)
梓(今にもこの扉の向こうから幼いころの先輩が飛び出してきて、私に向かって「お姉ちゃんのいじわる」と鮮やかな笑みを咲かせてくれるのではないかと──そんな淡い妄想を、私は抱いてしまっているのでした──)
────────────。
梓(それからというもの、私はあしげく先輩のお家にお邪魔をさせてもらい……けれど、とうとう一度も「お姉ちゃん・みほ」と呼び交わすことはかないませんでした)
梓(そうこうしているうちに、三年生達は本格的に戦車道クラスを引退し、年が明け、いよいよ受験のシーズン。先輩達と直接に会う機会もめっきりと減っていってしまいました)
梓(私はといえば、慎重に心のバランスを保ちながら少しづつ諦めを受け入れようとしてて、つまり──私は先輩のお姉ちゃんにはなれなかったのだと。……努力が足りなかったんだ。潔く認めよう。心を切り替えて、次の目標を見据えなきゃ、と──)
──ピリリリリ、ピリリリリリ……
梓(──ん……電話?)
ピリリリリ、ピリリリリリ
梓「桂利奈かな……って、わ、西住先輩……?」
梓(わぁ、ちょっぴり久しぶり……)
ぴっ……
梓「──先輩っ、こんにちは」
梓「──はい、とっても元気ですよ」
梓「──え? あ、はい、予定は無いですけど──」
────ピ
梓「……」
梓「アンツィオ高校のお祭りに一緒に行こうって……いいのかな、先輩」
────────
梓「──あの、さ、誘ってもらえたのは嬉しいですけど、いいんでしょうか、受験勉強……」
みほ「今日は久々に息抜き。もうずっと勉強しかしてないんだもん」
梓「そういう事なら、いいんですけど……」
ワイワイガヤガヤ……
梓「アンツィオ高校はいつ訪れても賑やかですねぇ」
みほ「ね、ほんと。──あ、あった! 梓ちゃん、あそこだよ」
梓「『ブラックボックス展 in アンツィオ』……これですか、先輩が行きたいのは」
みほ「うん。とっても面白いんだよ。私も以前、一昨年の秋かな、入ったことがあるの」
梓「そうなんですか」
みほ「さ、いこっ」
梓「あ、はい」
梓(──あはは、なんだか今日の先輩、はしゃいでるなぁ……)
──────────
梓(──茨城に初雪が舞ったこの日──)
梓(多分、私はもう二度どと──先輩のおしりには触れさせてもらえないのだろう──だけど、それはしかたがない。自業自得だ。調子の乗ってしまった私が、全部いけないのだ──)
──────
ペパロニ「おぉ、大洗の隊長と副隊長だ」
梓「ぺ、ペパロニさん……」
みほ「こんにちは。けど私はもう『元』副隊長ですよ」
ペパロニ「あぁ、そりゃそうだ。お互い寂しいねぇ」
みほ「はい、とっても」
梓「あの、ペパロニさん受験勉強は……」
ペパロニ「たまには祭らなきゃ勉強なんかやってらんないよ」
梓「いいのかなぁ……」」
ペパロニ「はいはい、一組500円だよ」
みほ「はい、お願いします」
ちゃり~~~ん♪
ペパロニ「ではまずお二人には大切なルールをご説明いたしまぁっす!」
梓「ルール……?」
みほ「……」
梓「へぇ、なんだか防音ルームって感じですね」
みほ「うん。今はまだ灯りが付いてるけど、もうじき真っ暗になるよ」
梓「それじゃあ、ペパロニさんにもらったこの耳栓を──」
みほ「あ、ちょっと待って梓ちゃん」
梓「?」
みほ「耳栓は、しなくいいの」
梓「え……でも、このアトラクションを愉しむためにはルールが大事だってペパロニさんが」
みほ「ルールは……変更」
梓「変更?」
みほ「うん。私が新しいルールを梓ちゃんに伝えます」
梓「新しいルール……?」
梓(どうしたんだろう。先輩の声と表情、なんだかとっても真剣……)
梓「……わかりました」
みほ「じゃあ、よく聞いてね」
梓「……」
みほ「スゥ、ハァ……」
みほ「──この部屋は外界とは切り離された特別な空間です」
梓「え……」
みほ「光もなく音もなく、自己と向き合うための鍛錬の場」
梓「……」
みほ「精神を研ぎ澄ませます。雑念を捨て、記憶をも捨て、今この瞬間に己の心を集中させてください。……恥ずかしいだとかそういうのは、無しです」
梓「……」
みほ「……以上です」
梓「……。えっと」
梓「つまり、私はどうしたらいいんでしょう」
みほ「それでは、もうすぐ電気が消えます」
梓「え、あの……──」
──フッ……
終わりませんでした。
ごめんなさい。
次こそはラスト。
梓(灯りが消えた! 真っ暗……自分の手さえも見えない……)
梓「先輩、いますか? いますよね?」
「 うん、いるよ」
梓「わ、声はすぐ側に聞こえるのに、姿はちっとも見えない」
「 不思議だよね 」
梓「え、ええ……それはいいんですが、新しいルールって何をどうしたら……?」
「 …… 」
梓「先輩?」
「 …… 」
梓「せ、先輩? どうして黙って──」
「 フゥ~~ 」
梓「ひゃっ!?」
梓(……!? 先輩が私の耳に息を吹きかけた!?)
梓「な、なにを──」
「 えい、えい 」 ツンツン、コチョコチョ、
梓「あひ! あひゃひ、なにするんですかぁ!」
「 ──きひ、いひひ…… 」
梓「へ……」
梓(……)
梓(え!? 今の先輩の笑い声!?)
梓「な、なんですかそのヤンチャな笑いかたは──ひゃぁ!? 今度はおしり!?」
「 にしし 」サワサワサワ、
梓「もう! 先輩!」
梓(べ、勉強のしすぎでおかしくなっちゃったのかな)
「 きゃぁは、いししししっ……」
梓(ま、まぁ先輩が楽しそうにしてくれてるのは嬉しい……だけど……!!)
梓「っ……ひぃぃ……」
梓(……暗いっ、どこから何されるか全然わからないっ──なにこの感覚っ……すごく怖い……! ぞわぞわするぅ……!)
梓「っ、先輩って──ほんっと、先輩って、先輩ぶってるくせにほんとは子供なんだからぁ!」
「 うひ、ひ……。…… 」
「 ………… 」
梓(次はどこから──……、……ぁえ……?)
梓「せん、ぱい?」
「 」
梓(き、急に静かになった)
梓「あ、あの──」
「 ……だめ、かな 」
梓「え……?」
梓(あ、先輩、私のすぐ後ろに、いる)
「 やっぱりもっと先輩らしく──年上らしく──ちゃんと高校生らしくしてないと、……情けないかな 」
梓「……!」
梓(……しまった、馬鹿──私の馬鹿……)
梓(せっかく先輩が──)
梓「先輩、あの、いいんです。いっぱいいっぱい、はしゃいでください」
梓(幼いころみたいに、はしゃいでくれてたのに……)
「 ごめんね、久しぶりに、梓ちゃんと会えて……楽しくて 」
梓「私も楽しいですよ。だからもっと──」
「 ──ううん、いいの。」
梓(……)
「 もう、大丈夫だよ。ありがとう 」
梓「…………」
梓(あぁ、まただ……)
──梓「先輩は、これからも全部、我慢していくんですか。寂しい事も、甘えたい事も」──
──みほ「うん、そうだよ。そうしなきゃいけないと思う」──
梓(どうして──)
梓(どうしてそこまで打ち明けてくれるのに、どうして結局私には甘えてくれないんですか?)
梓(どうして最後には隠してしまうんですか? こんな所につれてきて、おかしなルールを勝手に作っておいて……!)
梓「っ」
梓「……っっ」
梓「……~~~ッ」
梓「……ぁ、あぁぁっ……!」
梓(暴力──)
梓(いっそ先輩に暴力をふるってしまいたい──)
梓(甘えてくださいって、我慢しないでくださいって、──先輩の服を全部びりびりに破いて先輩の皮膚を全部ははがしてむき出しにした先輩のやんちゃな気持ちに私の身体を隅から隅までなすりつけてしまいたい!)
梓「……ッ」
梓(だめ、衝動っ、抑えてっ……!!)
──────すぅ……はぁ……──
梓(私の感じ方は、──きっと、間違ってる)
梓(認めなきゃいけない。だって──)
梓(だって私は──先輩のお姉さんには、最後までなれなかった)
梓(だから……)
梓(貴方なら──まほさんなら、どうするんですか、こんな時)
梓(ちっとも素直になってくれない先輩に──甘えたいクセに甘えてくれない先輩に──貴方なら何ていうんですか……!?)
梓(──……)
梓(……)
────……
梓(そうだよ……きっとあの人は、こうする……)
すっ
梓(先輩の頭のてっぺんに、優しく手を添えて)
ふぁさ
「 ん……梓ちゃん……? 」
梓(それから、ゆっくりと撫でながら──)
さわ、さわ……
「 ぁ…… 」
梓(きっと、こんな感じの事を言うんだ)
梓「みほ」
「 ……! 」
梓「偉いよ、みほ」
「 ………… 」
梓「勉強、頑張るんだぞ」
よし、よし
梓(──無責任! 先輩の本当の気持ちも知らずに……!)
梓(きっとそのせいで先輩は、我慢ばっかりを……っ)
よし、よし、よし……
よし、よし、よし……
梓(……。)
梓(だけど、先輩がそれを望んでるんだとしたら?)
梓(もし、そうなら……)
梓(……)
梓(私の考えは、全部私の我儘で……だったら……)
梓(先輩が、それを望むなら、お姉さんのやり方が──やっぱり、一番いいのかな──)
……じゃあ──────だとしたらわたしはこの一年間……いったい、何をやってたんだろう──────────
「 ……駄目……! 」
梓「……え?」
「 やだ、駄目、梓ちゃんは……お姉ちゃんには、ならないで……」
梓「……、は……?」
「 梓ちゃんはずっと──そのままでいて 」
梓「……!? どういう──」
「 お姉ちゃんになれなくて、お姉ちゃんになりたがる梓ちゃんのままでいてよぅ…… 」
梓「 ──────!! 」
梓(──一寸先も見えあい暗闇の中──けれど私は、私の感情の火花が散るのを確かに見た──)
梓(初めには強烈な怒りがあって──少しすると、先輩への憐れみや、理解からくるもどかしさが湧き上がり──そして──何段階かの混沌を経た後、最後の瞬間に微かにまたたいたのは──これは…………母性?)
梓(すべてほんの一瞬の閃光だったはずなのに、コンマに刻まれた時の連なりの中で、それらは次々と発する色を変えていく──)
梓(その輝きに照らされて、先輩の瞳が私を見つめている)
梓(その寂しげな瞳の中に私がいる。まほさんじゃない。そこにいるのは、間違いなく──私だった──)
梓「──っああっ、もぉぉぉおっ……! なんなんですか!! 」
ガッ!
「 きゃっ……!? 」
梓(乱暴に抱きしめるくらいのことは──させてもらいますっ!)
「 や、梓ちゃん、あ…… 」
梓「分かりました、分かりましたから先輩の我儘、全部ききます。だから先輩も──自分の言った事くらいは、守ってください」
「 え…… 」
梓「自分から言い出したルールぐらいは、最後まできちんと守ってもらいますからっ」
──パッ
梓(──灯りがついて、暗闇が消えた)
みほ「あ、梓っちゃん、もう、終わっちゃったから……」
梓(そんなこと……知りません!)
梓「いいですか、次は、ちゃんと、守ってくれますか」
みほ「え」
梓「守ってくれますかっ、先輩が決めたルールですよっ」
梓(先輩を抱きしめたまま、先輩の少し朱くなっている耳元へ直に言葉をぶつける)
みほ「……はい」
梓(先輩のその戸惑たような敬語が、なんだか私には、ちょっぴり可笑しく思えた)
──────。
ペパロニ「はぁい、お疲れさ──」
梓「ペパロニさん!」
ペパロニ「んぁ?」
梓「追加でもう一回、入れますか!」
ペパロニ「あぁいいよ。お客さんの待ちもないし」
梓「じゃあ、これ、500円ですっ」
ちゃりんっ♪
ペパロニ「あいあい、毎度あり~。……お?」
みほ「……」
ペパロニ「にひひ……、西住さん、なんか顔赤くない?」
みほ「……っ、な、何でも……ない、です……」
ペパロニ「いひひ~、楽しんでくれてるね、結構結構! よぉし、サービスで時間を倍にしとくっすよん♪」
みほ「あぅ……」
梓「ありがとうございますっ」
──────。
フッ……
梓(また、暗闇。けれどもう、はこれっぽっちも怖くない)
──私がお姉ちゃんにしたことは、全部、私がお姉ちゃんにしてほいしこと──
梓(──やってあげます。私はお姉ちゃんにはなれないけれど──だからこそ、やってあげますっ)
梓(先輩は、お姉さんには──こんなこと、したくてもできないんだ……!)
梓(私じゃなきゃ──できない!)
梓「えい!」ツンツン!
「 きゃっ!? 」
梓「えいえいっ」ツンツンツン!
「 や、梓ちゃっ……」
梓「えいえいえい、えいっ」プニプニ
「 んっ、あっ 」
梓(先輩も、早く──)
「 ……っ、も、もぉっ! 」 チョンチョン
梓「ひぅっ!?」
梓(──やったぁ!)
「えいっ!」 チョメチョメ
梓「ひゃあっ」
梓(そうです、先輩もっと……もっと楽しみましょう、恥ずかしがらずに!)
「──きひっ、えひ、いひひ……!」
梓(……! きたぁぁぁ!!)
「──きゃ、あは──あははは……!」
梓「先輩、負けないですよォ!」ツンツン!
「 あひっ……あひゃ!」スリスリスリ!
ツンツン、ツンツン──
──スリスリ、サワサワ
梓(楽しいですか、先輩──私はとっても楽しいですよ──────)
「 きゃひ……! 」
──────。
梓(──そろそろ明りが灯くころかなぁ? もっともっと、先輩とこうしていたいけど──)
「 …… 」ツンツン、ツンツン……
梓「ひゃうっ……んもう、先輩、さっきからおしりばっかり」
「 …… 」ツンツン、ツンツン……
梓(……? というより、おしり以外は一切触ってくれない……?)
「 …… 」ツン……
梓「……」
梓(──あ……)
──私がお姉ちゃんにしたことは、全部、私がお姉ちゃんにしてほいしこと──
梓(……)
梓「──先輩」
「 …… 」
梓(……。まほさんなら、多分、……気が付かないふりをして──それがまほさんの優しさなんだ。きっと……)
梓(だけど私は──まほさんじゃない……)
梓(……)
梓(先輩、やっと少しだけわかりました。先輩が私に──何を求めていたのか……)
梓(……)
梓(……いいですよ、しかたないです。尊敬する先輩の我儘なら……聞かなきゃです……)
梓「──先輩、見たいです」
梓「先輩のおしり──見たいです」
梓「見せて、くれますか……?」
「 ……っ 」
梓(……やっと……ここまでこれた──)
梓(アンツィオの皆さんの、おかげです。恥ずかしがり屋の先輩のために──こんな暗闇を養子してくれて──)
──パッ
梓「あっ!?」
梓(灯りが……)
みほ「……あ、梓、ちゃん……」
梓(……、あは、先輩、前髪がメチャクチャですよ)
梓(──けど、もう、『ルール』は適用されないのかな)
梓(いつもの先輩に、戻っちゃうのかな──)
みほ「……」
梓(……先輩……)
みほ「梓ちゃん」
梓「はい」
みほ「よかったら、今夜、私の家……一緒に泊る?」
梓(──!)
梓(せん……ぱい……!!)
みほ「一緒にお勉強、とか」
梓「は、はい! 私も中間テスト、近いですから────!」
──────────
ガタンゴトン、ガタンゴトン……
< 次は~大洗、大洗~
梓「先輩、学園艦が見えてきましたよ。何度見ても大きいです」
みほ「……」
ガタンゴトン、ガタンゴトン……
梓「……? 先輩?」
みほ「……梓ちゃぁん」
梓「わ……どうしたんですか?」
みほ「今日の事……いろいろ振り返ってたらなんだか恥ずかしくなってきちゃった……」
梓「……」
みほ「私、こんなのでいいのかなぁ……」
梓「まぁ……ほかの人には、見せないほうがいいかもしれないですね」
みほ「梓ちゃんには、いいの?」
梓「はい。もう隠しても遅いですから」
みほ「う……」
梓「先輩……お泊りはやっぱり無し、とか、聞かないですよ」
みほ「う~……」
梓「……。コホン、あ、アー」
みほ「?」
梓「『考えすぎだ。みほは、みほらしくあればいいんだ』……えへ、似てます?」
みほ「~~~っ! もう! お姉ちゃんの声真似、禁止!」
梓「あはは、痛いです、叩かないでくださいよぅ」
<大洗~、大洗~
キキイィィィイッィ……ブリュゥ~ーーーー
梓「あ、ほら、着きましたよ」
みほ「もう……。えと、梓ちゃん一度お家に帰るんだよね?」
梓「はい。お勉強道具とか着替えを取ってきます」
梓(……それと、一応わたしもお風呂でおしりを洗っておこっかな……)
──────────────。
梓「さって──先輩の家の前に着いた……」
梓「……」
梓(うー……、別に緊張することなんかないんだけど──なんか緊張してきた……)
梓(先輩のおしり──お風呂や温泉では何度もみてる。けど今回はそれとは違う)
梓(……)
梓(どんなシチュエーションで、見るんだろう……)
梓(多分……寝る時だと思うけど……)
梓(電気を消して、一緒のベッドでお休みをいって、それから、お布団の中で先輩がパジャマをぬぐ……のかな?)
梓(先輩は恥ずかしがり屋だからなぁ、きっと、なかなか脱いでくれないんだろうな。布団の中で、もたもたもたもた……)
梓「ふふ……」
梓「……」
梓「──私はどうして、先輩のおしりを見るんだろう」
梓「……」
梓(そんな事、考えるまでもない)
梓(私と先輩だから──だよっ)
梓「……よしっ」
梓(見よう。堂々と見よう。誰にも自慢はできないけれど──私はこれから、私の尊敬する先輩のおしりをみるんだ……っ)
梓「梓、いけっ……パンツァー、フォーっ!」
ぴんぽ~~~~~ん
梓(とりあえず一緒にお勉強をして、ご飯を食べて……落ち着け落ち着け……)
──かちゃっ
梓(……っ)
みほ「──梓ちゃん」
梓「せ、先輩、来ました」
みほ「……。」
梓(……ん?)
みほ「あのね……すごく申し訳ないんだけど……」
梓「へ?」
みほ「その……お母さんが、また──」
梓(──……!!!)
梓「……嘘……」
みほ「……。うん、ごめんね、嘘、なんだけど……」
梓「へ」
梓「…………」
梓「──先ぱぁいっ! もう!」
みほ「あはは、許して。……お母さん来てないかなーて、ちょっぴり思っちゃってたのは本当だけど……」
梓「往生際がわるいです」
みほ「そうだね、見苦しいね。さ……入って」
梓「おじゃましますっ、もー……私だって、結構緊張はしてるんですから……」
みほ「そっか……。……。……お姉ちゃんと見せ合いっこしたときは、緊張なんてしなかったんだけどなぁ……」
梓「……」
梓「……当たり前です。私は、先輩のお姉さんじゃないですから。……なれませんでしたから」
みほ「梓ちゃん……」
梓「私はあくまで、先輩のお姉さんになりたい後輩……です。そのほうが──いいんですよね」
みほ「……」
梓「けど、だからこそ──先輩のおしりを見れるなら、それって、姉妹以上なんじゃないかって──私は思ってますっ……!」
みほ「……!」
みほ「梓ちゃん……梓ちゃんはすごいね。うん、私なんかよりもずっとずっとお姉さんだよ」
梓(──じゃあ、私の事をお姉ちゃん呼んでくれますか──?)
梓(……はは)
梓(……うん、そうじゃ、ないんだよね。先輩のお姉さんはまほさん一人。それは絶対に、変えられないんだ)
梓(……はぁ~あ)
梓(それだけの事に気付くのに──一年以上もかかっちゃったんだなぁ……)
梓(せめて、その時間は無駄じゃなかった、って思いたい。私は今、ここにこうして──いる、だから、無駄じゃない……って)
とた、とた、とた
梓「しつれいしまぁーす、荷物、ここに置かせてもらいますね」
みほ「うん
みほ「……えっとじゃあ──私のおしり、見る?」
梓「……」
梓「……えっ!?」
梓(も、──もう!?)
みほ「うん。さっき、お風呂に入って体だけは洗ったの──だから、すぐのほうが、梓ちゃんにもいいかなって……」
梓「も……もっと、時間が遅くなってからかと……思ってました」
梓(まだ、外も明るいのに……)
みほ「でも……この後梓ちゃんにおしりを見せるんだって、そう思うと、なんだか勉強にも集中できなそうで」
梓「な、なるほど……」
梓(……っ)
梓「わかりましたっ、じゃ、じゃあ……っ」
みほ「ん……」
杏(先輩は小さくうなずくと──部屋の奥のカーテンを閉めに歩いていく──)
梓(私は、先輩のその細い背中とほっとぱんつのおしりがリズムよく形を変えるのを見つめながら──たかまる鼓動に戸惑いつつ……)
梓(あぁ、人生はこんなものなんだろうなぁと、分かったようなことを考える)
梓(いつだって、覚悟を決める瞬間は唐突にやってくるんだ)
梓(敵の奇襲、味方のピンチ、そして絶好の逆転チャンス──それらはみんな、こっちの気持ちなんて考えてはくれない、何の前触れもなく、唐突に、その瞬間は訪れるんだ──)
シャッ
梓(カーテンが閉められて、けれど部屋の中はまだまだ薄暗い。ブラックボックス展の闇とは比較にもならない。窓際にたたずむ先輩の姿が、はっきりと見える──その少し恥ずかしそうな、表情だって)
みほ「じゃ、えっと……脱ぐ、ね?」
梓「は、……はいっ」
……しゅる……
梓「……っ」
梓(先輩が、恥じらいの滲むしぐさで、パンツを下ろしていく──太ももから、膝をこえて、拗ねへ……)
梓(今はまだ、かがんだ先輩の後頭部のせいで、お股の辺りはみえないけれど──この数秒後にはもう──先輩の──お腹が──)
梓(──心臓の鼓動が体全体に広がって意識までもが脈動してる。どくん、どくん、どくん、どくん、視界までもがなんだかぐらぐら揺れている)
みほ「……っ、えへへ、はずか──しいね」
梓「……っ……」
梓(そして二人きりの部屋の中、今、輩の形のいい下半身が、そのすべてを、私の眼前に──)
まとめサイト様へ
>>36について
下記の部分は全部削除してください。
──────────
梓(──茨城に初雪が舞ったこの日──)
梓(多分、私はもう二度どと──先輩のおしりには触れさせてもらえないのだろう──だけど、それはしかたがない。自業自得だ。調子の乗ってしまった私が、全部いけないのだ──)
──────
────────────────。
梓(……ハァ~~~~~~。この時に調子にのらんきゃなぁって……ハァ~~~~~~、ぜーんぶ、もう後の祭りなんだけどね~……)
──────────────。
まほ「──みほっ、お願いだから! どいて! おしりを放して!」
みほ「やだぁー! このままうつ伏せでいーのっ、もっともっとお姉ちゃんのおしり見るのー!」
まほ「後でまた見せてあげるから! いまは一度おしまい! ね!?」
みほ「どうしてぇ?」
まほ「だ、だって……お、おならがでそうなのっ」
みほ「うん、いいよぉ?」
まほ「へ」
みほ「お姉ちゃんのおヘソからおならがでるの、みほ見たいもん! えい、おしり開けぇー!」グィグィ
まほ「ひぃ、……だ、だめーっ、絶対駄目っ、やだー!」ジタバタ!!
みほ「見るのー! 見たい見たいー!」
まほ「ほ、ホントに怒るよーっ! みほっ!!」
げしっ!!
まほ「──あっ、ご、ごめんみほ、足が当たって……」
みほ「……」
まほ「……み、みほ……?」
みほ「…………~~~~~っ!」
まほ「ちょ、み──」
みほ「ぴやあぁあぁああぁぁあぁあぁぁぁあぁぁぁあ!!!!!!!」
みほ「蹴ったぁ! おねぇちゃんが蹴ったぁ~~~!! ふぇぇぇぇぇぇえええええっんん!!」
まほ「み、みほぉ、ごめんねみほぉ! わざとじゃなくて……」
みほ「ピギャペェェェェェェェェェェェェェェェェ!!」
まほ「あわわわわ……」
──ガラっ!!
しほ「こら! 何を騒いでいるの!」
まほ「お、お母様!」
しほ「みほはどうして泣──って、まほ! なんて格好をしているの!!」
まほ「えっ!」
しほ「ちゃんとパンツとずっずを履きなさい! はしたない……!」
まほ「わぁっ、あわわ、ごめんなさい、ごめんなさい……」
みほ「ぴぇぇぇぇぇぇぇぇお姉ちゃんが蹴ったぁぁぁぁぁ!!」
しほ「……? まほ、どういうこと? ケンカをしたの? ちゃんと説明をなさい」
まほ「違う、そうじゃなくて……そうじゃなくてぇ…………ぐずっ」
しほ「泣く暇があったら早くズボンをはきなさい!」
まほ「ひぐっ!!」(ビクッてなって肛門に力)
<ぷぅ~~~っ……
まほ「ひゃぅっ……!?」
しほ「…………、まったく……なさけないっ……」
まほ「……!」ガーーーン!
まほ「……っぐ、ひぐぅっ……うぇっ……」
しほ「泣いてはなりません!!」
まほ「っ、……っ……!!!! ……ぴぇぇ゛ええ゛ぇぇ゛ぇぇ゛ぇぇぇええぇま゛ほ゛は゛わ゛る゛く゛な゛い゛の゛に゛ぃぃぃ゛ぃぃ゛ぃぃ゛ぃぃぃ!!」
みほ「ベギャアアアアアアアアアおねえじゃんがげっだああああ!」
しほ「……ハァ……なんなのですか、もう……」
菊代「あらあらあら~」トタトタトタ
──お姉ちゃん……あの時は本当にごめんね──今ごろになって、ようやくわかったよ……お姉ちゃんがあの時、おならを我慢しながらいったいどんな気持ちでいたかが──────────
────────────────
ちゅんちゅんっ……ちゅんっ……
梓(ん……もう、朝五時……起きなきゃ……)
ごそ……
梓「ふぁぁぁぁ」
みほ「──スゥ……スゥ……」
梓「……」
梓(先輩、まだ怒ってるかなぁ……)
梓(──)
梓(私は昨日、おそらく──ううん、間違いなく、世界でだれも見たことのないものを見たのだと思う)
梓(……つまり──)
梓(先輩のおしりの穴から、先輩のおならが噴き出す、そのまさに瞬間を──)
梓(……)
梓「人間の身体って、すごいなぁ……」
梓(──今でも、目に焼き付いている)
梓(振動──そう、いくつものヒダ達の微細な振動の輪舞──)
梓(なぜ、おならはあんな音をたてるのか。子供のころかずっと不思議だった。だけど──その過程と全機構を、私は目の当たりにした)
梓(と同時に、いやだいやだと懇願する先輩の声もまた、耳に残ってる……)
梓(……。)
梓(私はどうかしてたんだと思う)
梓(もっとも、私と先輩の関係そのものがそもそもどうかしていたのかもしれない)
梓(とにかく、私はすっかり、のぼせて、頭がおかしくなり──あの一時、私は先輩の全部を、自分のものにできたように勘違いをしていた)
梓(先輩の命も、心も、そして──尊厳までも)
梓(結果──先輩は激怒した)
梓「当然だよ……」
梓(見たこともないくらいに怒り狂って、私に同じことをして報復をした)
梓(つまりは──私をすっぽんぽんにし、私をベッドに腹ぶせの四つん這いにさせて、それから、私がオナラをするまで──私のおしりをがっちり放してくれなかった──)
梓(……。)
梓(私、すごいこと先輩にしちゃったし、させられちゃったんだぁ……)
梓(……その後の勉強の、空気が重い事重い事……)
梓(はぁ……お詫びに、飛び切り美味しい朝ごはんをつくります──ゴメンね、先輩……)
──────────。
梓「ふぅ~、もうしばらくで、おいしい朝食の完成だよっと……」
梓(先輩、もーちょっと、寝ててくださいね、一応これはサプライズですから……)
みほ「──ふぁぁぁぁ」
梓「……あ゛っ」
みほ「……。いい匂いがする」
梓(……サプライズ、失敗……)
梓「お、おはようございます、先輩……」
みほ「……」
梓(返事をくれない……怒ってる、よねぇ)
梓「あのぅ……昨日は本当にごめんなさい。」
みほ「……」
梓(はぁ、しばらくは口、きいてくれないかなァ……)
みほ「……。夢を、見たの」
梓「え……」
梓(……?)
梓「夢、ですか」
みほ「うん」
梓「ど……どんな夢ですか」
みほ「……。梓ちゃんには教えない」
梓「そ、そうですか」
梓(……うぅ)
みほ「だけど──」
梓「?」
みほ「だから、許してあげる」
梓「へ?」
みほ「お姉ちゃんに免じて──昨日のことは許し上げる。でも、二度とは許さないから」
梓「へぁ、……あ、ありがとう、ございます……」
みほ「もう少し寝る。ご飯できたら、起こして」
梓「は、はい……」
みほ「……」
とた、とた、とた……
梓「……」
梓(…………???????????)
──────
梓(朝食ができた後、先輩を優しく起こしに行き──ウェイクアップストレッチの補助と、髪をとかすこととを厳命された。もちろん私はうやうやしくその申しつけに従う。その間に朝食が冷めたけど──たぶん、わざとの意地悪だろう。怒れません)
梓(テーブルを囲んで一緒に朝ごはんを食べ、美味しいご飯のおかげで先輩は少しだけ機嫌を直してくれた。単純で可愛い。一緒にベーグルをほおばりながら、今日の休日の予定を、二人で相談しあった。嬉しい。ケンカしたまま帰りたくはなかったもの。今日一日だけは、先輩の家で勉強をして帰ることにした……)
みほ「梓ちゃん、とってもお料理上手なんだね」
梓「えへへ、ありがとうございます」
梓(──マッシュルームサラダをほおばる先輩の唇──その唇に、先輩の肛門が重なる)
梓(それだけじゃない、先輩のオナラの香りの強い印象、口の中に広がる得たいのしれない風味──そして、唇でたしかに感じた、先輩の肛門の感触──あらゆるイメージが、先輩の笑顔に重なる──)
梓(先輩は気付いていないかもしれないけど──昨日、怒り狂った先輩が私の顔にヒップアタックをしたとき──私は先輩のおしりに顔をうずめていたのだ──その時、私はたしかに唇で、先輩の肛門に触れた──)
梓(……世界中の誰にもいえない、先輩にすら怖くて言えない、私だけのとっとき秘密だ)
梓「……」
梓(先輩の肛門──少しも汚く思えない)
梓(それはきっと──先輩がかつて幼いころ、お姉さんの肛門をしきりに見たがった、その愛情と同じなのだろう)
みほ「……梓ちゃん、唇のはしに、ドレッシングがついてるよ」
梓「へぁ?」
みほ「ほら、ここ……」
ぐじ……
梓「あ……えへへ」
みほ「もう……ふふ……」
梓(……きっと先輩も、私の笑顔に、私の肛門を重ねているのだと思う。それくらいに、昨日の出来事は忘れられない──)
梓(先輩と私は、お互いの肛門を感じあい、そしてケンカをし、そうして今、仲直りをしつつある。他の誰とも経験したことのない特別な記憶──そういったもので、少しずつ私達は結ばれていく)
梓(姉妹の絆は、甘い金平糖や可憐な草花で結ばれるわけじゃない)
梓(それよりもはるかにもっと具体的で共感的なもの──匂い、味、痛み、暖かさ、そして感情──それらを共に積み重ねて、少しづつ少しづつ紡がれていく。だとしたら──)
梓(一月の朝、外は寒いけれど、部屋の中は暖房で暖かく)
梓(先輩と私は、少しだけ姉妹になった──)
ガールズ&パンツァー ~響け! キス・マイ・アス! ~
おわり
以上です。ありがとうございました。
くぅつか。
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少女達(+1)が暗闇であれこれします。
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