ガメラ VS ゴジラ (31)
浮き立つ幾多の水泡の中、苦しみ悶えるそれの姿を私は見ていた
この東京湾はやがて理不尽な死を迎える
私と、お前をその胸に抱いたまま
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もし、私たちに“次”があるというのなら
望まれない頭脳、望まれない命なんかじゃなく
業を業によって塗り替える終わりなき歴史を克服し、互いが静かに生きられる
そんな世界に――
『尾形、大成功だ』
『幸福に暮らせよ』
『さよなら』
『さよなら』
ガメラ VS ゴジラ
200X年 京都駅 跡地
浅黄「……」
浅黄の周囲には、無数の鉄骨が彼岸花のように折れ曲がったコンコースの成れの果てと、炭化した“邪神”の骸がいまだ静かに転がっていた。
あまりにも広大な瓦礫の平野と化したこの街に、あの美しき古都の面影はどこにも無い。
浅黄「ガメラ、あなたは今……」
ガメラと心を通わせたかつての少女はここで、いったい何を思うのか。
自衛隊隊員A「……遅いな」
隊員A「架橋中隊の連中はいったい、どこで足止めを食らっている?」
隊員B「さぁ、分からん」
隊員A「ドーザーもダンプも掘削機も、橋の崩落した鴨川をこのまま渡ることはできん」
隊員A「何万ものギャオスの死骸から流出した、毒性物質の除染に3年」
隊員A「さらに下京区一帯の瓦礫撤去だけで半年も要したとなると……」
隊員B「あぁ、この先どれだけの時間が掛かるかなんて考えるのも嫌になるな」
隊員A「違いない……ん?」
隊員A「ちょっと君!」
浅黄「!」
隊員B「民間人はここ、立ち入っちゃいけないよ!」
浅黄「ご……ごめんなさい」
隊員A「こんな危険なところで、君はいったい何を?」
浅黄「い、いえ……その」
隊員A「?」
隊員A「……まぁいい」
隊員A「とにかく君は今すぐ、ここを離――」
「ガメラに関する手がかりはもう、ここには残されてはいませんよ」
浅黄「!」
隊員A「あっ……」
隊員A「ご、ご苦労様です!」
隊員B「ご苦労様です!」
渡良瀬「大宮化学学校の……渡良瀬です」
渡良瀬「これより当地域は我々、化学科の小隊が調査に入る」
渡良瀬「こちらの方は丁重にお送りするから、あとは我々に」
隊員A「はっ!」
隊員B「はっ!」
タッタッタッ……!
渡良瀬「……さ、車でお送りしますのでこちらへ」
浅黄「あ、あの」
渡良瀬「はい?」
浅黄「どうして、私がガメラを探してるって……分かったんですか?」
渡良瀬「あぁ、それは……」
渡良瀬「あなたの噂を、以前に私が聞きつけていたからです」
渡良瀬「“草薙浅黄”さん」
浅黄「え?」
今日はここまでにします
需要があるかは分かりませんが、よろしくお願いします
ブロロロロ……
渡良瀬「ここはかつて、ガメラとイリスが交戦した地……民間では過去に起こった惨劇の象徴として、人が二度と帰ることのない忌むべき場所だと言われています」
渡良瀬「そんな場所の近くに民間人がいたと聞こえたものですから、まさかと思いましたよ」
浅黄「……」
渡良瀬「それはただの熱狂的な廃墟マニアか、もしかすれば“当時”のことをよく知る人間か、そのどちらかではないかと」
浅黄「そう、だったんですか」
渡良瀬「貴女を実際に見て、私は後者だと確信しました」
渡良瀬「それと、我々がガメラと共にレギオンとの殲滅戦を繰り広げていたあの時、貴女はある女性とお会いしたことがありますね」
浅黄「女性……あっ」
浅黄「もしかして、それは穂波さんのこと……ですか?」
渡良瀬「えぇ、我々もかつて穂波さんには大いに助けられたもので」
渡良瀬「あの事件の後、私は彼女と幾度かお会いし、その際にガメラと実際に交信したというあなたの話を、その手の“壊れた勾玉”のことから何までよく耳にしていたのです」
浅黄「……」
浅黄「あの……穂波さんは、今どちらに?」
渡良瀬「今も故郷の札幌にいらっしゃるはずです」
渡良瀬「三年半前に起こったギャオスの大量発生の折も、北海道にはほとんど影響がなかったと聞いていますから、今も無事にお過ごしでしょう」
浅黄「そうですか、よかったぁ……」
渡良瀬「ははは……そういえばあの方も先ほどの貴女のように、よく立ち入り禁止区域に足を踏み入れては行動を起こされていました」
渡良瀬「今となっては、全てが懐かしい」
ブロロロロ……
渡良瀬「……草薙さん」
渡良瀬「実は私も、貴女と同じくガメラの行方を追っているところです」
浅黄「えっ?」
渡良瀬「いや、正確には“ガメラが生存している”という証明を欲していると、言った方が正しいでしょうか」
浅黄「で、でも」
浅黄「自衛隊の方々は皆、“ガメラはもう死んだ”とお考えなのでは?」
渡良瀬「いえ、それは違います」
渡良瀬「三年半前……たしかにガメラは、ここ京都に襲来した数万体のギャオスと交戦し、その数の過半数を殲滅した矢先……」
渡良瀬「空中で突如発生した“爆発”とともに、その姿を消した瞬間を数名のF-15J搭乗員が目視にて確認しています」
浅黄「……」
渡良瀬「ガメラという戦力を喪失した我々はその後、多大な犠牲を払いながらも残りのギャオスを辛うじて殲滅し、翌日には内閣総理大臣より事態の収束宣言……」
渡良瀬「そして“ガメラ死亡”を断定した旨の公式発表がなされたというのが、貴女方もよく知る事件の“概ね”の結末です」
浅黄「……はい」
渡良瀬「ですが私は、ガメラが本当に死んだなどと信じてはいません」
浅黄「では、やっぱり渡良瀬さんも」
渡良瀬「えぇ……何しろ、ガメラの死骸は未だに見つかっていませんし、あの爆発が果たしてギャオスの攻撃によるものだったのかどうかも判明していません」
渡良瀬「それに、あの戦闘によって情報網が大混乱をきたしていた翌日に、そういった公式の見解が早々に下されるなんて、余りにも早計ではないかと思わざるを得ません」
渡良瀬「かつての“戦友”に値する存在を、簡単に死なせたくないというのは……あなた同様の私個人の想い」
浅黄「……」
渡良瀬「そして、これは今貴女にだけ打ち明けることですが」
浅黄「え?」
渡良瀬「このガメラの生死に纏わる上層の見解に、何かキナ臭いものを感じる……」
渡良瀬「これは、中央特殊武器防護隊長、渡良瀬一等陸佐としての勘です」
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今日はここまでです
読んで下さった方、ありがとうございます
東経165° マーシャル諸島 ビキニ環礁
『――ギォッ』
『――ギォッ』
陽が沈み、星々が空に上り詰める頃
十数の災厄が一つの島から飛び立ち、散った
『……』
収穫を得た彼らはやがて、また一つの島へと戻って来る
孵化して間もない新たな変異体は、それを生まれながらにして知っていた
『ギオッ』
先刻飛び立った成体ギャオスの一体が、最初の収穫を得た
矢じりのように尖ったその口に、自動車大ほどの肉塊を咥えている
彼らは三年半前、京都には向かわなかった
あの地でイリスが果てようが、数万もの仲間が墜ちようが、関係なかった
彼らの行動目的はすべて、ついさっき生まれた変異体のためなのだから
僅かばかりの更新で申し訳ないです
今夜また書きにきます!
音速を遥かに超えた低空飛行によって、真下の海面が二つに分かれ跳ね上がる
巣の存在する島まであと10マイル
瞬く間に、ギャオスは島へと辿り着く――
ズンッ
『――ギィオォ!』
はずだった
ギャオスの眼前に突如“巨大な尾”が現れたかと思えば、それは彼の首筋を押し潰すように打った
80m級の巨体が為す術もなく叩きつけられ、海面に走る二筋の波は、空高く上がった水柱によってかき消される
現状の理解が及ばず、首の折れたギャオスは飛沫の舞う視界をくまなく見回し、激しくもがいた
揺れ動く波間に見えるのは
星空、飛沫、星空、黒の皮膚、飛沫、銀の背鰭、星空――
『ギャァァァオォ!』
『グォォン……ッ!』
そして膨大な熱量を孕んだ、我が身を灼く光だった
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期待