北条加蓮「藍子と」高森藍子「郊外のカフェで」 (47)

――静かな道――

北条加蓮「そのメガネは?」テクテク

高森藍子「春菜ちゃんに借りてきました」テクテク

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――まえがき――

レンアイカフェテラスシリーズ第55話です。
以下の作品の続編です。こちらを読んでいただけると、さらに楽しんでいただける……筈です。

・北条加蓮「藍子と」高森藍子「カフェテラスで」
・高森藍子「加蓮ちゃんと」北条加蓮「カフェテラスで」
・高森藍子「加蓮ちゃんと」北条加蓮「膝の上で」
・北条加蓮「藍子と」高森藍子「最初にカフェで会った時のこと」

~中略~

・高森藍子「加蓮ちゃんの」北条加蓮「膝の上に 2回目」
・高森藍子「加蓮ちゃんと」北条加蓮「過ぎた後のカフェテラスで」
・高森藍子「加蓮ちゃんと」北条加蓮「夏休みのカフェテラスで」
・北条加蓮「藍子と」高森藍子「都会のカフェで」

>>2 過去作のタイトルを大幅に間違えたので差し替えます。正しいのはこちらです。毎度毎度申し訳ない……。



――まえがき――

改めまして、レンアイカフェテラスシリーズ第55話です。
以下の作品の続編です。こちらを読んでいただけると、さらに楽しんでいただける……筈です。

・北条加蓮「藍子と」高森藍子「カフェテラスで」
・高森藍子「加蓮ちゃんと」北条加蓮「カフェテラスで」
・高森藍子「加蓮ちゃんと」北条加蓮「膝の上で」
・北条加蓮「藍子と」高森藍子「最初にカフェで会った時のこと」

~中略~

・高森藍子「加蓮ちゃんと」北条加蓮「探り合いのカフェで」
・高森藍子「加蓮ちゃんと」北条加蓮「9月に入った頃のカフェで」
・高森藍子「加蓮ちゃんと」北条加蓮「休日のカフェテラスで」
・北条加蓮「藍子と」高森藍子「都会のカフェで」

加蓮「今の藍子ってさ、手に分厚い本持たせたくなるね。図書館にいそう」

藍子「何の本を読んでみようかな?」

加蓮「何読んでても似合うと思うよ」

藍子「そういえば……春菜ちゃんから、加蓮ちゃんの分も預かっているんですよ。はい」スッ

加蓮「知ってた。そうちゃーく」カチャ

藍子「春菜ちゃんから伝言です。"眼鏡道から逃げてはなりません!"ですって」

加蓮「じゃ伝言返し。"その道を歩くのは春菜に任せるよ。私はパス"」

藍子「春菜ちゃん、残念がりそう」

加蓮「ライトブルーの薄いフレームかぁ。これならつけててもあんまり気にならないかな?」(首を左右に傾げつつ)

藍子「変装だと思ってみたらどうでしょうか。たまには、こういうのもいいですよね?」

加蓮「ファッションにもなるのかな……」

加蓮「……でもさー、この辺だと変装はいらなくない? 人通りとか全然ないし」

藍子「今から行くカフェは、郊外のとても静かな場所にあるんですよ。まさに、穴場のカフェですっ」

加蓮「それでこんな道なんだね。狭いし、さっきから草とか踏みまくってるもん」

藍子「トレーナーを用意してきて正解でしたね」

加蓮「服が汚れちゃってるから、帰ったらすぐ洗わないと」

藍子「汚れてもいい服で、って言うのを忘れちゃってました。ごめんなさい、加蓮ちゃん」

加蓮「藍子のそれ、ベージュのジーパンとかそれ用?」

藍子「はい。いつもは森に行く用のですけれど、今日はこれでもいいかなって」

加蓮「トレッキングパンツとかもアリだよね。私もそういうの用意してみよっかなー」

加蓮「ぁー……暑い」パタパタ

藍子「大丈夫ですか? 水分補給は早めにしちゃいましょうね。それに、汗もこまめに拭かなきゃ……」

藍子「あっ、ちょっとだけ顔を下げてください。目を瞑っててくださいねー」フキフキ

加蓮「ん……」

藍子「よしっと。あと5分くらいで着くと思いますよ。もうちょっとだけ、頑張って歩きましょ?」

加蓮「はーい。……どこか歩いたり出かけたりすることに関しては、もうすっかり藍子についていくしかないね」

藍子「都会なら加蓮ちゃんの方が詳しいと思いますよ。でもこういう静かな場所は、私に任せてください♪」

加蓮「頼もしー」

――静かなカフェ――


<からんころーん

「いらっしゃいませ」

加蓮「ど、ども」ペコッ

藍子「ふむふむ」キョロキョロ

「……お客様?」

加蓮「え? あ、ごめんなさ……。2人で……藍子?」

藍子「ふんふん……」キョロキョロ

加蓮「藍子ー? 座るよ?」

藍子「あ、はいっ」

藍子「私はこの"昼食セット"で。加蓮ちゃんは?」

加蓮「コーヒーだけでいいかなぁ。お腹あんまり空いてないし。あ、でもパンケーキだけ食べちゃお」

藍子「それでお願いしますっ」

「はい。ごゆっくりお待ち下さいね」

……。

…………。

加蓮「とりあえず悩んだらパンケーキとコーヒー。なんだかカフェ通になった気分っ♪」

藍子「……」キョロキョロ

加蓮「で藍子、アンタはさっきから何してるの? そんなにここが珍しい?」

藍子「あ……いえ。そんなに珍しい物がある訳では」

加蓮「じゃあなんできょろきょろしてんの? 誰か探してるとか」

藍子「違いますよ。そういえばお話していませんでしたね――」

藍子「ごほんっ」スワリナオシ

藍子「今日の私は、"ひょうろんか"なんですっ」

加蓮「評論家」

藍子「コラムはただのお散歩日記とは違います」

藍子「私の行ったカフェについて、詳しく、そして時には批判もしなければなりません」

藍子「だから今日は、きりっといかせてもらいます!」

加蓮「…………」ジトー

藍子「そ、その目は何ですか?」

加蓮「……。続けて?」

藍子「は、はい、続けますね」

藍子「具体的には……」(メモを取り出し)

藍子「ご飯は美味しいか。内装は素敵か。店員さんは丁寧な方か」

藍子「きちんとチェックして、それを読者の皆さんに伝えるのが、今日の私のお仕事なんです」

藍子「もし、悪いところがあったら、しっかり書かなきゃいけないんですっ」

加蓮「あっそ」ジトー

藍子「……だから何ですかその目は」

加蓮「いや、藍子が評論って……ねえ?」

藍子「加蓮ちゃん! 私にはできないって思っていませんか?」

加蓮「全然思ってるよ?」

藍子「あうぅ」

加蓮「カフェのレポとかならまだしも。あ、もしかして、春菜に眼鏡を借りたのも?」

藍子「そうです。私なりの意気込みです」メガネクイッ

加蓮「ふーん……?」ジー

藍子「どうですか? 私、"ひょうろんか"っぽいですか?」

加蓮「ゆるふわカフェの窓際でほんわかオーラ出してる文学少女っぽいかなー。似合ってるよ」

藍子「えへへ」

加蓮「……全く評論家っぽく見えないっていう皮肉なんだけどね? 今の」

藍子「えーっ」

加蓮「――ん、藍子」チラ

藍子「?」チラ

「お待たせしました。こちらコーヒーと、紅茶です」コトッ

加蓮「ありがとー」

藍子「ありがとうございますっ」

「昼食セットとパンケーキの方は、もう少々お待ち下さいね」ペコッ

藍子「はいっ」ペコリ

加蓮「それにしても。へー、藍子が批判かぁ。ふーん?」ニヤニヤ

藍子「確かにこういうのしたことありませんけどやってみないと分からないじゃないですか!」

加蓮「ま、頑張れー。どうしても何か批判しないといけないなら、私も協力するから」

藍子「お願いします、加蓮ちゃん。ふふ、こういう時の加蓮ちゃんって、すっごく頼もし――」ハッ

藍子「いえっ。今日は、私が全部やるんです。加蓮ちゃんは見ているだけでいいですっ」

加蓮「そう? じゃあ、私は藍子がやってるところをのんびり眺めることにするね」

藍子「はい!」

……。

…………。



「お待たせ致しました。こちら昼食セットで、こちらパンケーキになります」コトッ

藍子「ありがとうございますっ」

「ご注文は、以上でよろしかったでしょうか?」

加蓮「……」コクリ

「では、ごゆっくりどうぞ」ペコリ

藍子「――で、では、いただきます」キリッ

加蓮(カフェのお昼ごはんを前に緊張してる藍子……)

藍子「まずは、レタスから」アム

加蓮(だ、ダメ、笑っちゃダメ。……うくっ……あ、藍子だって真剣なんだから。我慢するのよ私!)ウクク

藍子「すごくしゃきしゃきしています! これはフレンチドレッシングでしょうか」モグ

加蓮「わ、私もパンケーキ食べよっかなー」アム

藍子「味付けは濃すぎず、でも薄すぎず……野菜の食べにくさを消していつつ、すんなり食べられるくらいの量……」モグモグ

加蓮「おー、ふわふわしてるー。おいしー」

加蓮(……ん? この藍子の声、録音しとこっかな?)ポチッ

藍子「次は、たまごです」モグ

藍子「柔らかいっ。箸で摘んだ時には崩れないのに、口に入れたらふんわり溶けていくっ」モグモグ

藍子「これは……黒胡椒でしょうか? ぴりっとした味が、いいアクセントになっていて……ついもう一口!」

加蓮「マーガリン塗ってー、あむっ。ん~♪」


藍子「ウィンナーを頂きます」サクッ

藍子「……! 美味しい! 今"さくっ"て言いましたっ。口の中で"さくっ"って言いました!」

藍子「脂っぽさもないからいくらでもいけちゃいます! 朝ごはんにもお昼ごはんにも食べてしまいたいくらいっ」

藍子「ケチャップは、もしかしたら自家製でしょうか? コクがあって、でも、ちょっぴり甘みもあって……」モグモグ

加蓮「コーヒーうまー。アイスコーヒーにしといてよかった」ゴクゴク


藍子「セットの紅茶を頂きます」ゴクゴク

藍子「うんっ。美味しいです! すうって飲める感じが、すっごく私好みです♪」

藍子「昼食セットは、10点中10点! ううん、10点でも足りないので、20点ってことにしちゃいましょう」メモメモ

>>11 繰り返し申し訳ございません。1行目の加蓮のセリフを一部修正させてください。
誤:~~春菜に眼鏡を借りたのも?」
正:~~春菜にメガネを借りたのも?」


藍子「では改めて。いただきますっ」パンッ

藍子「あっ、まだトマトを食べていませんでした。トマトって、傷んだりしてたらすぐ変な味になって――」モグ

藍子「!!!!」

藍子「!!!!!!!」ブンブンブンカンッ

加蓮「藍子がヘドバン始めたー!? メガネ飛んでってるよ!?」ハイ

藍子「はっ。お、美味しすぎてつい……」ドウモ

加蓮「どうせならパンケーキも取材っとく?」ハイ

藍子「いいんですか? それなら一口」アムッ

藍子「わぁ……! 加蓮ちゃんの言う通り、すっごくふわふわしてますね! 私も、こんなケーキを焼いてみたいな……♪」モグモグ

加蓮「それなら食べる係は私ね」

藍子「ちゃっかりしてる……。その時には加蓮ちゃんには、何か美味しいジュースでも作ってもらいましょうか」

加蓮「ジュース?」

藍子「もぐもぐ……ごくん。~~~~♪」

加蓮「……」パシャッ

藍子「って! 今撮りました?」

加蓮「うん。思うんだけどさ、いろんなことを書くのもいいけど、美味しそうに食べる写真が一番じゃない?」

加蓮「テレビだって、コメントとかより美味しそうにたくさん食べてるシーンの方がお腹空いてくるじゃん」

藍子「そうですけれど……うぅ、不意打ちで撮られると」

加蓮「たはは」

藍子「つ、次は加蓮ちゃんの写真も使っちゃいますからね!?」

加蓮「いいよー」

藍子「う~、そんなにあっさり」

加蓮「へへっ。……手作りジュースかぁ」ゴクゴク

藍子「ジュースとパンケーキがあれば、たちまちお菓子のパーティー会場ができちゃいますから」

加蓮「あ、いいねそれ。でもさ、ジュースの作り方なんて知らないよ? 私」

藍子「ミキサーと材料があれば簡単にできますよ。加蓮ちゃんのオリジナルブレンド、期待しちゃいますね」

加蓮「オリジナルブレンド……オリジナルブレンド……?」

加蓮「ポテトってミキサーに入れても大丈夫?」

藍子「……それはやめておいた方が。ほら、ミキサーがポテトの脂でベタベタになってしまいそうです」

加蓮「そっかー。ポテトがダメとなると……うーん」

藍子「加蓮ちゃんの頭の中にはポテトしかないんですか……」

加蓮「あとアイドルとモバP(以下「P」)くらいはあると思うよ? 頭の中」

藍子「どっちもミキサーに入れちゃ駄目です! そうじゃなくて、食材の話っ」

加蓮「……、……パンケーキ?」

藍子「今お皿の上を見て言いましたよね!?」

加蓮「材料はまた調べてみるね。それこそカフェで聞いてみるのもいいかも」

藍子「パンケーキのお返しに、はいっ、加蓮ちゃん。ウインナーをどうぞっ」

加蓮「分かってるぅ」モグ

藍子「こっちのレタスも、ドレッシングがとっても絶妙で、美味しいですよ」ハイ

加蓮「どれどれ?」モグ

加蓮「ホントだー。もしかしたらこれも手作りじゃない? 凝った感じの味がするー」

藍子「そうみたいですね」アムアム

加蓮「藍子ちゃん的には料理は満点以上かー。カフェの雰囲気とかは?」

藍子「そうですね――」キョロキョロ

藍子「静かなオルゴールに、温かみの感じられる木造の壁と床。壁にかかっている絵は、子どもが描いたみたいで可愛いっ」

藍子「薄橙の間接照明もいい感じですね。やすらぎ効果がいっぱい溢れています」

藍子「耳を済ませば、キッチンの方から音が聞こえてきて……」

藍子「カフェっていうより、なんだか自分の家にいるみたい。窓の外から見える光景も、庭みたいに見えてきますね……ふわ」

加蓮「寝とく?」

藍子「はっ。ううん、大丈夫っ。でも、これだけ静かなカフェで安らげる場所なら、お休みの日になる度に来たくなっちゃいますね」

藍子「内装は、10点中、10点。ううん、これも20点!」メモメモ

藍子「あっ。店員さんの項目はどうしましょう」

加蓮「物静かな女の人って感じだったよね。でもこう、あんまりビクビクしてなかったっていうか」

藍子「注文を確認する時も、すごく丁寧で優しく言ってくださいました」

加蓮「そうそう。たまに"これで大丈夫かな?"って店員とかいるけど、ああいうのってこっちが不安になるじゃん」

藍子「店員さんが自信なさそうだと、こっちまで心配になってしまいますよね」

加蓮「さっきの人は、そういう感じが全然無かったかな?」

藍子「まさに理想で憧れる店員さんっ。私も、あんな風になりたいな」

加蓮「……藍子、店員に憧れ持ってるの? 制服を着たいってだけじゃなくて?」

藍子「私、小さい頃の夢はカフェの店員さんと、おもちゃ売り場のお姉さんでしたから!」

加蓮「どっちも似合いそー」

藍子「店員さんはとても優しい方……っと」メモメモ

加蓮「私は何がいいかなぁ。ネイルサロンは当然抑えるとして、やっぱりスマイル0円かなぁ」

藍子「……。あれ?」

加蓮「スマイル1000円加蓮ちゃん。……ん、どうかした?」

藍子「いつの間にか、用意していた項目がぜんぶ高い点数になっていて……。見てください。30点満点中60点になっています」

加蓮「うん」

藍子「コラムは批判や思ったことをありのままに書いた方がいい時もある、ってPさんに教えてもらったのに」

加蓮「うん」

藍子「べた褒めになっちゃってます!」

加蓮「うん。そうだねー」

藍子「うん、じゃなくて~~~! どうしましょう加蓮ちゃんっ。これでは"ひょうろんか"になれません!」

加蓮「うん。そうだねー」

藍子「だから! ……ううっ、せっかく眼鏡までかけて気合を入れてきたのに」

加蓮「結局、外面だけ変えても根っこは変わらないってことでしょ」

藍子「私に評論は、やっぱり向いていないのでしょうか……?」

加蓮「うん」

藍子「うんじゃなくて~~~~~!」

加蓮「知ってたし」

藍子「し、知ってたならもうちょっと――」

加蓮「自分でやるって言ったの藍子じゃん」

藍子「……うぅ」

加蓮「それにさ。藍子が取材して藍子が書くコラムでしょ? あんまりツンツンしてたら変な感じにしかならなくない?」

藍子「こ、このままでいいんでしょうか?」

加蓮「いいっていいってー。いいカフェだった、ご飯が美味しかった、店員さん優しかった、って。ぜんぶハートフルにしちゃっていいんじゃない?」

藍子「……」

加蓮「それとも無理矢理にでも悪いことを書いてみる? せっかく美味しいご飯を食べられたカフェだったのに?」

加蓮「そしたらここの評判悪くなっちゃうかもよ」

藍子「それは絶対に嫌です」

加蓮「ならいいじゃん。べた褒めでも」

藍子「……それなら、このまま行ってしまいますね!」

加蓮「それがいいよー」

藍子「このカフェは、すっごくいい場所です♪ ……うんっ。メモはこれでおしまい!」

藍子「詳しい内容は、また帰ってから書きますね」

加蓮「どうせならここで書いていったら?」

藍子「確かに、ここでならすごく集中できそうですけれど」

加蓮「でしょ?」

藍子「そうしたら私、ぜんぜんお話できなくなっちゃいますよ?」

加蓮「あー」

藍子「せっかく加蓮ちゃんと一緒にいるんですから、私は……何かお話したいなって。もくもくとコラムを書くのは、家で1人になった時で十分ですっ」

加蓮「……藍子がそう言うならしょーがないなー。藍子がそう言うんだからしょうがないなー」

藍子「あはは……。ホントは加蓮ちゃんがお話したいんじゃないですか?」

加蓮「何言ってるの。私は別に、1人になったらなったでスマフォとかつつくし。何なら藍子を置いて帰ってもいいんだし」

藍子「ええっ。それはやめてください! 気付いたら1人になっていたなんて、寂しくて泣いちゃいますっ」

加蓮「子供か」

□ ■ □ ■ □


藍子「ごくごく……ん~♪ ここは絶対牛乳が美味しいって確信してました。注文してよかったです!」

加蓮「ごくごく……。メロンソーダはちょっと刺激が足りないかも。なーんか甘ったるいんだよねー」

藍子「そうなんですか?」

加蓮「はい」(メロンソーダを渡す)

藍子「はいっ」(牛乳を渡す)

加蓮「どれどれー?」ゴクゴク

藍子「ごく、ごく」

加蓮「ふう。うっわホントだ。美味しー! ね、ね、これお土産にしようよ!」

藍子「ふうっ。お土産……! それもいいですねっ」

加蓮「でしょでしょ?」

藍子「メロンソーダは、私はこれくらいの方が好きかも……。加蓮ちゃんには、物足りないでしょうか?」

加蓮「ちょっとね。ほら、炭酸ってやっぱりスカッとした方がいいじゃん?」

藍子「あまり味が強すぎると、喉が変な感じになっちゃいますから。あと、お腹の中も」

加蓮「分かるけどねー。そろそろ返してー?」

藍子「はい」スッ

加蓮「牛乳返すー。ごくごく」

藍子「ごく、ごく」

加蓮「……ふう。ホントに静かだね、ここ」

藍子「静かですね。たまに吹いてくる風のささやきも、耳に心地いいくらい……」

加蓮「よくこんな場所にあるカフェなんて見つけたね、藍子」

藍子「いっぱい調べてみましたから。前に行ったのは、すごく賑やかな場所だったから……次に行くなら、こういうところかなって」

加蓮「やっぱりさ、カフェってこういう感じじゃない? この前のはファミレスっぽかったし」

藍子「加蓮ちゃん、前にもそう言っていましたよね。でも、あれだってカフェなんですよ?」

加蓮「藍子はああいうところとかよく行くの?」

藍子「普段はあんまり。賑やかな場所で騒ぐのも好きですけれど、静かな場所でゆっくりするのも好きですから」

加蓮「そっか」

藍子「でも、加蓮ちゃんが一緒なら、はしゃいじゃうのもいいかな?」

加蓮「私の方がクールで藍子の方がパッションなんだけどね。ふふっ」

加蓮「……あれはあれで落ち着かなかったけど、こっちもこっちでちょっと戸惑っちゃうなぁ」

藍子「戸惑う、ですか?」

加蓮「私、ずっと都会育ちだし。それに、なんだかんだ人のいない場所にいたことってないからねー」

加蓮「……それが、そこにいて欲しい人かどうかは別として」

藍子「……あぁ」

加蓮「ふふっ。だからかな? こんな田舎っぽい場所ってどうしても慣れないかも」

藍子「なんとなくわかっちゃいます。加蓮ちゃんは、賑やかな都会にいた方が似合いそう」

加蓮「でしょー?」

藍子「それに、都会っぽい服のお店のこととか、すごく詳しいですもんね」

加蓮「ホント合わないね。私達」

藍子「ふふ。似合いませんね」

加蓮「田舎かー。でも、こういう場所もいいなぁ……。退屈してそわそわしちゃいそうだけど」

藍子「私も、こういう場所には憧れてしまいます」

加蓮「ホントの田舎暮らしってどんな感じなんだろ」

加蓮「まず、車の音がなかなか聞けなくて、表に出てもあんまり人が歩いていないよね」

藍子「テレビのチャンネルも少なくて、学校に通う子どももあんまりいなさそう」

加蓮「コンビニとか全然ないよね絶対。あとアパレルも。流行の服とかぜんぶ通販でさ。ウィンドウショッピングとか絶対できなさそう」

藍子「あっ。きっと夜は星がすっごく綺麗ですよ! 月明かりも……」

加蓮「わかるわかるー」

藍子「私、月明かりの下で静かな道を歩いてみたいんです。小説とかで読んで、ああいうのって憧れちゃって……」

加蓮「なんかロマンチックだよね。大人って感じがして」

藍子「お休みには、近くの山に遊びに行きましょ? 綺麗な川のほとりで、水遊びとかどうですか?」

加蓮「ふふっ。あ、でもこういう場所って朝晩の気温差ヤバそー。私、すぐ体調を崩しちゃわないかな?」

藍子「ずっと暮らしていたら慣れますよ。それに、自然のいっぱいある場所は、闘病に向いているってよく言います」

加蓮「それもそっか。じゃあもし私の病気が再発したりしたら、都会にさよならしてこーいう場所に来ないといけなくなるのかな?」

藍子「あ……。そうなっちゃうのかな?」

加蓮「……あのね。大丈夫だから、そんな寂しそうな顔をしないの」

藍子「で、ですよね?」

加蓮「やっぱり私、人がいっぱいいる場所の方が好きかな」

藍子「くすっ。この前は、人が多すぎて困っちゃってたのに?」

加蓮「程々にね? ほら、私達の事務所みたいな」

藍子「多すぎず、少なすぎず。バランスの良い場所が1番ってことですね」

加蓮「……あれ? なら私、今のままでいいってことじゃん。何に悩んでたんだろ」

藍子「さあ? というより、悩んでいたんですか?」

加蓮「分かんない」

藍子「なんですか、それ~」

加蓮「えー、どうしよ。なんだか急に事務所に帰りたくなっちゃったけど……でももうちょっとここにいたいんだよね……」

加蓮「せっかく来た場所だし、藍子と2人だし」

加蓮「どうしよう。ね、私どうしたらいいと思う?」

藍子「そんなの私に聞かれても……」

加蓮「どうしよう。ね、私どうしたらいいと思う?」

藍子「そんなの私に聞かれても……」

加蓮「とりあえず今はのんびりしたいかも」

藍子「じゃあ、ひとやすみして、それから事務所に戻りましょう」

加蓮「そうしよっかー」グデー

加蓮「あー、ひんやりして気持ちいー」

藍子「すみませーんっ。紅茶のお代わりと、ううん、紅茶のお代わり、お願いします♪」

>>35 重複失礼しました。最初の2行は不要です。


加蓮「……」グデー

藍子「……♪」

加蓮「……私さ、やっぱり知らない人がいっぱいいる場所って、微妙なんだ」

藍子「この前の、都会のカフェみたいな?」

加蓮「うん。私さ、ちいさい頃から、"知ってた"ことが多かった気がする。知識も、人も、場所も」

加蓮「だからかな。人が多い場所っていうより……知らない人がいっぱいいるのって落ち着かないのかも。分かんないことばっかりで」

加蓮「実際、事務所に入ったばっかりの頃って結構ビクビクしてたんだよ? これでも」

藍子「そうだったんですか。あはっ、なんだか想像できませんね」

加蓮「うっさいなー。私って結構臆病なんだよー? 今は知ってる人しかいないから、ま、ご覧のとーりだけど」

加蓮「かといって静かすぎる田舎も微妙。わがままでしょ?」

藍子「ふふっ。わがままな加蓮ちゃん」

加蓮「ねー」

加蓮「それでもさ……。静かで寂しくなった時でも、こうして話をしていたら……色々、紛れちゃいそうだし」

加蓮「話してるだけで、1日がなくなっちゃいそうで、そんな毎日があってもいいかな? なんて思っちゃうんだ」

藍子「はい」

加蓮「マンガとかドラマでよくある、静かな縁側に寝そべって、どーでもいいおしゃべりをしたりとかさ」

加蓮「そういうのいいなー、なんて。ちょっとおばさん臭くなっちゃった?」

藍子「そんなことないですよ。私だって、そういう毎日に、たまに憧れますから」

加蓮「そっかー……」

加蓮「ねー、藍子」

藍子「はい」

加蓮「もしホントに私の病気が再発して、田舎暮らしすることになったらさー」

藍子「なったら?」

加蓮「……ごめん。なんでもない」

藍子「……」ウーン

藍子「……」ンー?

藍子「……くすっ♪」

加蓮「な、何」

藍子「いーえっ♪ でも、……♪」

加蓮「だから何よ、もー! そんなニヤニヤしてないでコラムでも書いてなさい!」

藍子「加蓮ちゃんっ」

加蓮「何!」

藍子「その時は、一緒に川に遊びに行って、夜に月明かりの道をお散歩しましょうね♪」

加蓮「……藍子なんて田舎の神様にでも拐われちゃえ!」

□ ■ □ ■ □


加蓮「ふわ……」ゴシゴシ

藍子「紅茶、美味しい……♪」

<~~~~♪
<~~~♪

藍子「あ、Pさんからメールだ」

加蓮「私にも届いてる。一斉送信かな?」

藍子「そうかもしれませんね」

加蓮「……」

藍子「……」

加蓮「一斉送信のメール」

藍子「お花見の予定」

加蓮「盛り上がる私達」

藍子「体調を崩しちゃった加蓮ちゃん」

加蓮「……」

藍子「……」

加蓮「……」

藍子「……」

藍子「ふ、不吉なことを考えるのはやめて、せーので開きましょう!」

加蓮「そうだよね! それがいいよね! うん!」

加蓮「じ、じゃあカウントダウンするよ? さん、にー、いち! せーのっ」

藍子「えいっ」

加蓮「えい!」

藍子「って、これ、事務所のみなさんへの一斉送信じゃないみたいです」

加蓮「私と藍子にだけっぽい。藍子、Pさんに今日ここに来ること伝えてる?」

藍子「はい、伝えていますよ。一応お仕事ですから。加蓮ちゃんが一緒だとも言っています」

加蓮「それでかなー。さて中身は、っと」

藍子「次のコラムの期限が……え、今週末に前倒し!?」

加蓮「で、私には是非藍子を手伝ってほしい、って……無茶なこと言うねPさん! 私だってお仕事とかレッスンとかあるんだけど!」

藍子「うぅ。まだようやく書くことがまとまっただけなのに」

加蓮「やっぱりさ、せっかくだしここで書いちゃおうよ。コラム」

加蓮「今日1日は大丈夫だし。私も手伝うから、そうしたら私に気を遣うこともないでしょ?」

藍子「いいんですか……?」

加蓮「いいっていいって。ほら、メモ見せて。隣座るよ?」スッ

藍子「ゎ……」

加蓮「えーっと……ほら、まずこっちのメモの……ここ。カフェに行く途中の話を書いて――」ズイ

加蓮「って聞いてる? おーい」

藍子「か、加蓮ちゃんっ。えと、そうだ、加蓮ちゃんの分も何か注文しませんか?」

藍子「ココアでも飲みながらゆっくり考えましょ? それにPさんにメールの返信もしなきゃ」

加蓮「それもそっかー。返信は私がするから注文してもらっていい?」

藍子「はいっ」

藍子「(小声)……隣に加蓮ちゃんがいるのって、こんな感じなんだ……。……ふふ♪」

加蓮「?」

藍子「い、いえ。すみませーんっ」

加蓮「返信返信。"オッケー。藍子と頑張って書いてみるね"っと」

藍子「甘いココア、お願いします。ちょっぴり甘さ控えめで!」

加蓮「よしっと。さ、藍子。せっかくメガネまでつけてるんだから、今日はゆるふわモード封印でやるよ!」

藍子「は、はいっ。よろしくお願いします、加蓮ちゃん!」

――後日・高森藍子のコラムより一部抜粋――

都会にも、こんな場所があるんですよ。
まるでダイニングキッチンにいるようなくつろぎ空間、みなさんもどうですかっ?



お土産には、牛乳を選びました。
友だちみんな大喜びで、また買ってきてほしい、なんて言われちゃいました♪


――左下に小さな吹き出しがある――

藍子ちゃんが超おいしそうにお昼ごはんを食べてる生音声、○月×日の私のラジオにて大公開~♪(加蓮)
↑録音していたんですか!?(藍子)



おしまい。読んでいただきありがとうございました。

前回のお話の前半、藍子はアップルジュースを飲んでいた筈なのに途中でアップルティーと誤表記してしまっていたみたいです。
あれは単なるミスです。投下してだいぶん経ってから気づきました。
……今回も含めて最近ミスが多すぎることを自覚しています。次回から今まで以上に気をつけますね……。

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