檀黎斗「北条加蓮ゥ!」 (21)
これはモバマス×仮面ライダーエグゼイドのクロスssです
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「アンタがアタシをアイドルにしてくれるの?でもアタシ特訓とか練習とか下積みとか努力とか気合いとか根性とか、なんかそーゆーキャラじゃないんだよね。体力ないし。それでもいい?ダメぇ?」
あぁ、今思えば私ってほぼ初対面の人に何言ってたんだろうね。
印象最悪とかそんなレベルじゃないじゃん。
そもそも自分より年上の人に向かってアンタとか……
それでもいい?ダメぇ?じゃないよまったく。
とは言えこの時の私自身に関して言い訳出来るならさせて欲しいかな。
だってほら、当時は……ね?
色々と諦めかけてて、でも色々と諦め切れなくて。
なんかちょっとこう、素直になれないみたいな?
最初にスカウトかけられた時は
「アイドルなんて夢みたいな事、叶うわけないじゃん」
って突っぱねちゃったしね。
でも。
こんな今の私からしたら信じられないような言葉よりも。
この時の私が自分で何を言ったのか忘れちゃうくらい。
私の担当プロデューサーの言葉は、面白すぎて笑っちゃうものだった。
「……北条、加蓮……」
「な、何?」
彼がアタシの名前を呟く。
あ、やば、流石に態度悪過ぎたかな。
怒らせちゃった?
なんて、考える暇も無く……
「北条加蓮ゥ! 何故君が、オーディションを受けずにアイドルになれたのか。何故私に声をかけられたのか。何故心が痛むのクワァ!」
……それ以上言わないで。
「その答えはただ一つ……」
……やめて!
「アハァー……北条加蓮ゥ!君が世界で初めて……私が全力でプロデュースしようと思った女の子だからだぁぁぁぁ!!アーハハハハハハハハハアーハハハハ!ハハハハハ!!!」
「何言ってるの?!アンタにアタシの事情なんて!」
「分かるとも、色々あって私は人の心に敏感でね。それと既に、君の事は調べさせて貰ってる。だからこそ言わせて貰う!君は最高の原石だぁ!君のアイドル人生はすべて、私の、責任と覚悟で、プロデュースされるんだよ!だあ―――ははははははっはーはははは!ブゥン!」
……ふふっ。
「ばっかみたい。こんなアタシに向かって?最高の原石?なにそれ、面白くなさ過ぎて笑っちゃう」
「担当アイドルに笑顔を提供するのも、神でありプロデューサーである私の仕事だからね」
皮肉通じなさ過ぎでしょ。
でも、まぁ。
これだけ変な人で、面白い人で。
私に期待してくれる人なんだし。
「まぁ、いいよ。よろしくね、プロデューサー」
「任せてくれ、君を最高に輝かせてみせる。神の才能に不可能はないのだから」
少しくらい、付き合ってみてもいいかな。
「えー、レッスンなんてめんどくさーい」
「なにを言っているんだ加蓮……君には確かに才能がある。最高の原石だ。しかしどんなに大きな原石だって、磨かなければ輝かないだろう?」
「ちゃんと来てるだけいいでしょ、なんか体調悪い気がするし」
「何?それは本当か?それは不味いな……直ぐに救急車を呼ぼう」
うっそでしょ……
流石にそれはアタシの方が不味いし……
「あー!なんか体調良くなった気がする!大丈夫だよプロデューサー、いけるから!少し頑張ってみるから!」
なんだかなぁ。
日々のレッスンはアタシの体力がギリギリ切れないくらいの量だし、ハードさもなんとか頑張れば乗り越えられるくらいに設定してあって。
どれだけプロデューサーがアタシの事を理解してるか嫌という程理解したけど。
それ以上に、なんだか上手く乗せられてる気がする。
多分本人は大真面目なんだけど。
「やるじゃないか北条。以前より動きが良くなってるぞ」
「当たり前だ、トレーナー。彼女は私が見つけた神の才能を持つ者だぞ?」
まってトレーナーさん相手に変な事言わないで。
単純に恥ずかしいし、そんな事言うと……
「なるほど、ならもう少し厳しくしても大丈夫だな?」
「それは良く無いな。するとしても、きちんと休憩をとってからだ。きちんとプロデューサーである私の許可したレッスンスケジュールとメニューを守ってもらおう」
あー……やってくれちゃったね、プロデューサー。
「プロデューサー、アタシ帰るよ?」
「ちょっと待ってくれ!やめてくれ!私が悪かった!私は心を入れ替えた!だから……もう少し、レッスンに出てくれないか?」
いい大人がそんな必死にならないでよ。
恥ずかしいじゃん、アタシが悪いみたいじゃん。
「分かったから、まだもう少しやれそうだし」
「ふふっ……君がまだもう少し頑張れそうなのも、全て私の計画の内!」
帰ろ。
「もうすぐ、オーディションだね」
「あぁ……」
私が初めてオーディションを受けた時。
結構大きなドラマで、もうすぐ私の番で。
珍しくプロデューサーが俯いて震えてた。
「ふふっ、私より緊張してどうするの?」
「……緊張?ふふ……まさか!震えているのは……私と君の才能にさ!!」
……まーた始まった。
オーディション用の台本、最終チェックしとこ。
「君なら確実に、このオーディションに合格出来るだろう!私の目に間違いは無かった!」
周りに他の人いるからやめて。
「9610番の方ー」
「それじゃ、行ってくるね」
「お、おい待てっ!まだ話は終わってーー
「ふざけるな!何故だ!何故合格しなかった!」
オーディションは、結局ダメだった。
噂話程度だと信じたいけど、結局元から結果は決まっていたらしい。
もちろん、凄く悔しかった。
だって私、結構頑張ってきたんだよ?
「加蓮の才能は地上波で放送されなければならない。加蓮の才能はこんなもんじゃ無いんだぞ!それを……それを妨げるなんて罪だ!」
……んだけど、私以上に取り乱して悔しがるプロデューサーの姿が見てられなくて。
「大丈夫だって、諦めなければ叶うんでしょ?早く次のオーディション受けようよ、プロデューサー」
まったく……これじゃどっちがプロデューサーか分からないじゃん。
「……そうだね。満たされない人々に夢と冒険を与える、それがアイドルの使命だからなぁ!」
「調子出てきたじゃん、プロデューサー」
「何度コンティニューしてでも合格しよう。早く次の仕事を見つけなければ、それこそ私が罪を犯してしまうところだったね……ありがとう、加蓮」
そう言って、パソコンを人差し指でカタカタしながら電話をかけ始めたプロデューサー。
頑張ってくれるのは嬉しいけど、過労死しない程度に、ね?
「私が、CDデビュー……?」
「あぁ、今の君に、透き通るように純粋な君にピッタリの曲さ」
少しずつ、端役とは言えテレビに出るようになってきた頃。
私の、念願のCDデビューが決まったんだ。
それだけでもう、涙が溢れそうになる。
「いいんだ……私、CDデビューして、本当にいいんだ」
「当たり前だよ。君は私が育てたアイドルだからね」
タイトルは『薄荷ーハッカー』
メロディを聴いて、歌詞を読んで。
また、泣きそうになる。
……敵わないなぁ、私の夢を叶えてくれるプロデューサーには。
本当に、私の歌だ。
「神様がくれた時間は溢れる、あとどれくらいかな……これって……」
「加蓮、神である私が君に時間を贈った覚えはない。つまり、君の時間は元から君だけのものだ。君が思ったように歌えばいい」
ふーん、ふふっ、そうなんだ。
じゃあ、ほんの少しだけ。
プロデューサーに対して、歌ってあげる。
もちろん、聴いてくれるみんなの為にも。
そして、私の為にも。
「アイドルになれるなんて全然思ってなかったからホントに嬉しいんだ。これもプロデューサーのおかげかな?」
「その通りさ。私の神の才能に不可能はない」
感謝の念が吹き飛んだ。
ようやく、私がCDデビュー出来た日。
私にとって、新しい私が産まれた日。
諦めずに頑張ってきて良かった、って。
嬉しくて、泣きそうになっちゃった。
全部吹き飛んだけど。
「でもね、それは元々君が持っていたものだよ。私は磨き上げる事が出来ても、発揮する事は出来ないからね」
「珍しいじゃん、プロデューサーがそんな事言うの」
「それだけ君は頑張ったと言う事さ。よく私の想像通りの……いや、想像以上のアイドルになってくれたね、加蓮」
……ふふっ、誰かさんのおかげで、ね。
私のやる気を引き出してくれて。
あるかも分からなかった才能なんてモノを磨き上げてくれて。
うるさくなるから言わないけど、本当に感謝してるんだよ?
さて、そろそろCDデビュー記念の小さなソロステージが始まる時間だけど。
「さあ加蓮、ステージで私達の神の才能を受け取らせてあげてくれ」
「うん!あの頃憧れたような、綺麗なドレスに……ステージに……歌に……ううん、今は私の番だね。私の事を見てくれるみんなに教えてあげたい! 夢は叶うんだってことを!」
「ふふっ。あれから……本当に、色々あったね」
「随分楽しそうじゃないか、加蓮……!プロデューサーの私をさしおいて!」
「寂しいの?私が遠い存在になっちゃった?」
「まさか、私は元々神の才能を持つプロデューサーだ。早く君が登ってくるのを待っているよ」
なーんて、今ではお互い軽口を叩きあえる様にもなって。
着実に、私の夢をどんどん叶え続けてくれて。
時折うるさくて怒鳴る事もあるけど。
あと徹夜で疲れてたらしい時に足バタバタさせられた時は本気でキレたけど。
「こんなにたくさんのファンが応援してくれたから、私はこのステージに立てるんだ。私の夢が形になったんだよ。だから、この記念すべきステージはプロデューサーのおかげなんだよ!」
CDデビューして一周年のライブを、私は迎えられた。
ステージの脇から見る風景は、ほんの一年前では思い描く事すら出来なかったのに。
今ではそれが、目の前に広がってる。
ここまで連れてきてくれて、本当にありがと、プロデューサー。
「緊張はしてないかい?君の才能を持て余す事は最大の罪だからね、十全に発揮しなくてはいけないよ」
「まったく……私が、誰を見てアイドルをしてきたと思ってるの?大丈夫、貴方が育てたアイドルだよ」
それに、聞こえてたからね?
私のドレス姿を見せた時、プロデューサーが小声で
『美しい……』
って、言ってくれてたの。
「なら心配いらないな。大丈夫、きちんと最高のアングルから映像に残せる様に指示しておくからね」
諦めなくて、本当に良かった。
夢が、夢以上に大きなものになって。
それが全部叶っちゃうなんて。
「北条加蓮ゥ!何故君がここまで来れたのクワァ!その答えはただひとつ… 君が夢を諦めず、全力で頑張れる女の子だからだぁぁぁぁぁ! 」
「ふふっ……ありがと、プロデューサー」
それじゃ、あの頃の私に自慢しちゃうくらい。
プロデューサーである貴方が想像出来ないくらい。
最高のライブにしてみせるから。
To Be Continued
以上です
お付き合い、ありがとうございました
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