【モバマス】救急戦隊ウサミンロボ (35)
天才アイドル池袋晶葉によって生み出されたウサちゃんロボは、アイドルのバックダンサーだけではなく団子も配ったりできる優れロボである!!
そして、ウサミン星の未来科学によって改修されたウサちゃんロボは、超AIウサミニアックブレインとウサミニウム合金のボディによって、ウサミンロボとして生まれ変わった!
今日もウサミンロボは、アイドルの平和と自由、そして魅力のために頑張り続けるのだっ!!
なお、ウサちゃんロボには着ぐるみタイプも存在し、市原仁奈や橘ありすが入っている!
双葉杏が入った日は動きが悪い!
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おかしい、とモバPは思いました。
いつもの事務所、事務所の中にはいつもの机、机の下にはいつものぼのの(今日は輝子もいます)、小梅の背後にはいつものあの子。
いつもと同じですが、何か違和感があります。
見慣れた事務所の内装を見回します。
一心不乱にパンを食べているみちる。
一心不乱にドーナツを食べている法子。
一心不乱にビールを飲んでいるユッキ(キャッツ暗黒時代突入中)
一心不乱にラーメンを食べている四条貴音。
一瞬、ん?と思いましたが、まぎれもないアイドルです、セーフです。
天ヶ崎冬馬、もとい鬼ヶ島羅刹なら叩きだします。水嶋咲と秋月涼は女装時セーフです。
おかしいところはありません。
しかしこの、拭いようのない違和感はなんでしょう。
もう一度見まわします。
机、パソコン、PSVR、除湿機、給湯機、ミクロマン秘密基地セット、うえきちゃん、ダーツの的、麻雀卓、
炊飯器、アロマディフューザー、カセットコンロ、ぴにゃこら太、ウサミンロボ、ホームベーカリー……
今、何かおかしなものがありました。
ウサミンロボがおかしいのです。
よく見ると胸に輝く日輪こと、勇者の印USAマークがありません。
AEDマークです。救命機器です。
「ロボ、どうしたんだ、それ」
うさ
ウサミンロボは誇らしげに胸をはっています。
命を守るロボです。大好きなアイドルたちに万が一のことが起こってしまった時、命を助けることができるのです。
こんなにうれしいことはありません。
もちろん、そんな緊急事態は起こらずにいるのが一番なのですけれど。
うさ
AEDウサミンロボは、ウサミンロボシリーズの中では珍しく、自分があまり活躍しない世界を望んでいるのです。
「ロボに救命装置を管理してもらうというアイデアだ」
池袋晶葉が現れてモバPに説明します。
「自走して、助けに来てくれる救命器具だ」
「意外だな、ウサミン科学の粋を集めたウサミンロボにならそんな機能はとっくに付いているものとばかり……」
「確かに付いてはいたんだ。ウサミン星謹製の救命プログラムが」
「だったらそれでいいじゃないか。悪いが地球製のものとは比べものに……」
「確かに性能はすごいぞ。救命フィールドを発生させて、その中に入ったものを問答無用に回復するからな」
「凄すぎるだろ」
「しかし、あくまでウサミン星人用だから、地球人には合わないらしい。副作用が出る可能性がある」
「副作用……」
「地球人がウサミン星人用の救命処置を受けると、一種のアレルギー反応が起こる可能性がある」
「アレルギーか」
「うむ。まずは、妙にハイテンションになる」
「ふむ」
「そして、ウサ耳が生えてくる」
「怖っ!!」
「あと、永遠の17才になる」
「お、おう」
「話を戻そう。ロボに新機能をつけたついでと言ってはなんだが、事務所で救命講習を受ける話が出ているぞ」
「そんな話は聞いてないが」
「いや、アイドルの仕事の話でなく、事務所内部の研修らしい」
「ああ、それならちひろさんの管轄だな」
「ただ、アイドルの中から希望者がいるなら、一緒に受けられるそうだ」
「ふむふむ」
「ロボのことがあるから、私は出席する。ウサミンは残念ながらその日仕事が入っている」
そして、講習当日がやってきました。
そして、講習当日がやってきました。
皆が集まった会議室の講師席には、片桐早苗が立っています。
「講師は早苗さんでしたか」
「現役時代はそういうお仕事もしてたしね」
「ちなみに救命講習の資格もちは私だけじゃないわよ」
「トレーナーさんたちは全員持っているし、あいさんやヘレンちゃんも」
「へえ」
「茜ちゃんはマネージャーやってたときにとってるし、愛海ちゃんもね」
「まさか心臓マッサージ目当て……」
「それは誤解だよ! プロデューサー!」
愛海が姿を見せました。
「確かにあたしはお山が大好き。だけど、流石に命に関わるようなことは優先するよ」
「……愛海」
「だってさ、考えても見てよ。救命講習は命を救うんだよ。ひいてはお山も救うんだよ?」
「ん?」
「まだ見ぬお山、まだ触れぬお山。未知なるお山が私が堪能する前に無くなるなんて、そんなの絶対おかしいよっ!」
「一つの命を救うのは、無限のお山を救うこと! 人の命はお山の未来!! 燃える棟方魂!!」
「よしわかった落ちつけ」
「うん」
講師席に座る愛海。
「あと、奈緒ちゃんも受講したいって」
「ほう」
「凛ちゃんも一緒に来るはずだったんだけど、仕事の都合で」
「奈緒と凛……もしかして」
「ち、違うぞ!」
受講席にいた奈緒が立ちあがりました。
「べ、別に加蓮が心配とか、そういうのじゃないから、違うからな! 勘違いするなよ!」
「ああ、心が洗われる」
そうこうしているうちに開講時間です。
「まずは、実際の救命措置を見てもらおうかしら」
「練習用のダミー人形は用意してあるわ」
モバPそっくりの人形が、床に横たえられています。
「似すぎでしょ、これ」
よく見ると、左手小指に赤いリボンが巻かれています。
モバPは頷きました。
「あ、製作者がわかったような気がする」
「あら、良かったわね、まゆちゃん。心が通じたみたいよ?」
「当たりかよ、ひねれよ!」
早苗さんは説明を始めます。
「まず、救護対象者を発見した場合はどうしますか」
受講席に座っていた千川ちひろが手をあげました。
「財布を確認します」
「ちひろおおおおおおっ」
「ちょっとプロデューサー、どうしたんですか」
「いや、ちひろさん、今のおかしいでしょう」
「何故ですか? 一般的に見て、財布の中に身分証の類があると思うんですが」
「そうね、アレルギーの有無や持病について書かれたメモを財布に入れている人は多いわ」
早苗さんが同意しました。
「あ」
「うふふ」
ちひろさんは笑っています。
「プロデューサーは、なにを勘違いしたんですかねぇ……」
早苗さんの説明が続きます。
「調べるのも大切だけど、まずは対象の意識があるかどうかを確認してね」
ダミー人形の肩をたたく早苗さん。
「もしもし、大丈夫ですか? もしもーし!」
「反応がない場合は、呼吸の有無を確認ね。胸の上下を観察すればいいわ」
「そして、周囲を確認してね。今は講習中だけど、実際に町中だと、車やバイク、自転車が走っているかもしれないから」
「周囲を確認して危険がなければ、助けを呼ぶの」
「やってみて、プロデューサー」
モバPが、ダミー人形に駆け寄りました。
「周囲確認、危険なし。そこの人、こっちに来て協力してください」
「ボンバー!!」
「にょわ~!!」
「ひぃいいいいいっ!!」
全力で駆け寄った二人により、モバPは無事吹き飛びました。
「こういうことがあるので、二次災害にも注意が必要よ」
「ちなみに、助けを呼ぶときは具体的に言うのが効果的ね」
「例えば……」
「そこの着ぐるみの子、119番通報お願い」
「りょーかいでごぜーますよ!」
「そこのゴシックドレスの子、AEDを持ってきて」
「我が魂の赴くままに!」
モバPも試します。
「そこの鞭持った人、119番通報!」
「あ゛あ゛? あんた、誰に命令してるの?」
時子さまの鞭が唸りました。
「え、あの、いや、これは救命訓れ、はうっ、ごめんなさい、ごめんなさい、ぶひぃ、ぶひぃ、ぶひぃぃいいいっ!!」
モバPはしばらく休憩をとることになりました。
早苗さんは講習を続けます。
「AEDが到着するまでは胸部マッサージによる人工呼吸を行います」
「よし、それじゃあようやく出番ね。ロボちゃんお願い」
うさ!
ウサミンロボは張り切って飛び出し、モバPそっくりのダミー人形に手を伸ばします。
マッサージ機能、オン。
全力全開!
ばきっ、と嫌な音がしました。
うさ……
ウサミンロボの腕は、ダミー人形を貫通して、床に突き刺さってしまいました。
うーさー……
ちょっと力を入れすぎたようです。
佐久間まゆが失神しました。それほどのショッキング映像でした。
白坂小梅は、何故かつまらなそうな表情です。
(中身は作ってないんだ………)
何かつぶやいています。
う、うさ
ウサミンロボは動揺しています。
それもそのはずです、心臓マッサージをしようとしたら胸板を突き破ってしまったのですから。
普通死にます。
うさ!
ウサミンロボは慌てて秘蔵のエナドリを取り出しますが、無駄です。
さすがのエナドリでも無理なものは無理です。
早苗さんが、そんなウサミンロボに近寄ります。
「秘技、見なかったふり!」
うさっ!?
別のウサミンロボが現れて、ダミー人形の残骸を片づけています。
「さあ、人工呼吸の次はAEDの使い方よ」
早苗さんは大人ですから、大人の事情で見なかったふりをするのがうまいのです。
「ダミー人形が壊れたから、ロボちゃん、代役よろしく」
うさ
ウサミンロボは仰向けに横たわります。
AED内蔵ウサミンロボがやってきます。
うーさー
「ロボちゃんには本当の緊急事態のときに大活躍してもらうとして、今は私たちの講習よ」
「カワイイボクに任せてください」
「よし、幸子ちゃん。AEDの使い方は録音されたガイドメッセージがあるからね」
AEDはふたを開けると使い方を説明する録音音声が流れるようになっているので、安心なのです。
ウサミンロボも例外ではありません。
しかも、事務所アイドルによる録音音声です。
AEDウサミンロボのお腹が開き、ビニール袋にくるまれて、ウサミンロボ内部とコードで繋がったパッドが出てきました。
『パッドをビニール袋から出して、パッと開いてください』
『パッドをパッと開いてください』
『パッドをパッと……パッと……パッド』
これは25歳児です。
『開いたパッドを画面のように胸に当ててください』
AEDウサミンロボの顔に、パッドを胸に当てたアイドルの姿が映し出されます。
顔は映っていませんし、ちゃんと服も着ています。服の上からパッドを当てています。
一つは右肩の少し下、一つは左脇腹の少し上。二つのパットを充分に離して、心臓を挟むような位置です。
『顔が映らず、胸だけで無念……胸で無念………胸で』
25歳児でした。
「えーと……」
さすがのカワイイ幸子も固まっています。
うさ……
横たわったウサミンロボが困ってしまいました。
このままでは救命講習が進みません。
しかし、勇者はいました。
「それではわたくしがやるのでしてー」
依田芳乃です。
パッドをビニール袋から出すと、ウサミンロボの胸元に当てます。
『パッドを胸に当てたら、一旦離れてください。パッと離れてください』
心臓を再鼓動させるためにパッドから流れる電流に、感電する恐れがあるのです。
今回は練習なので実際には流れませんが、本番では注意するべきことです。
『練習ですけど離れてください。本番のために慣れてください』
『離れることに慣れる……離れることに慣れる……』
25歳児は絶好調でした。
「ハイでして~」
しかし芳乃のペースは乱されません。
『では、電流を流します』
電流を流されたふりをするために、ウサミンロボはぴくんぴくんと痙攣します。
「いや待てロボ、その演技は要らない」
うさっ!?
モバPに駄目出しされたウサミンロボは少しだけショックでした。
『マッサージを続けてください』
電気ショックだけで蘇生するとは限りません。その時は再びマッサージを開始するのです。
ダミー人形は既に破壊されているのでウサミンロボにマッサージです。
早苗さんが方法を指示します。
「左手を前にして、右手で左手の甲をつかむように……そう……それで思い切り胸を押すの」
「人間ならそう、その位置」
「どれくらい押せばよろしいかと~」
「人間なら数センチ押し込むくらいのつもりで」
「骨は大丈夫でしょうか」
「心停止よりは骨折の方がマシ、それぐらいの思い切りでいいのよ」
「了解でして~」
思い切り押す芳乃ですが、相手はウサミンロボです。ウサミニウム合金の鋼のボディです。
人間の力ではへこみません。
「芳乃ちゃん、私が替わります」
「有香さん」
こふーこふーと息を整えながら、中野有香がウサミンロボに跨がるように立っています。
う……さ?
ウサミンロボは嫌な予感がしました。しかし、ウサミニウム合金ボディはとても頑丈です。
大丈夫です。多分。きっと。おそらく。
「行きますよ、ロボさん!」
うさ?
チェストぉおーーーっ!!!
なんか凄い気合来た、とウサミンロボは思いました。
チェストとは漢字で書くと「血ぇ吸と」
【わが拳、あるいは剣が貴様の血を吸う】の略です。
決して【緒方智絵里のストッキング】の略ではありません。
ウサミンロボは賢いのです。
バキン、と音がして、ウサミンロボの横たわっていた位置から少しずれた場所の床が砕けます。
うさ?
「誤チェストごつ」
蘭子が熊本弁じゃない言葉で何か言いました。
そして有香が再び構えます。
うさ!?
待つウサ、待つウサ、なんかおかしいウサ
チェストぉおおおおおっ!!!!
うさぁぁぁぁああ!!??
ウサミンロボはとび起きて逃げます。床は砕けました。
『意識が戻りました、マッサージをやめてください』
こんなこともあろうかと準備していた映像が役に立ちました。
「なんか、みな、はっちゃけてないか?」
モバPは首をかしげています。
「妙にハイテンション……あ」
「……あ」
モニターを見ていた晶葉も呟きます。
「なあ、晶葉」
「なんだ、助手」
「ウサミン星人用の救命フィールドが作動しているような……」
「き、気のせいじゃないかな」
翌日、アイドル達にウサ耳が生えて大騒ぎになりました。
おわれ
以上、お粗末様でした
遅ればせながら、夏コミ来てくれた人ありがとー
愛海の台詞
「一つの命を救うのは、無限のお山を救うこと! 人の命はお山の未来!! 燃える棟方魂!!」
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