男「発達障害」 (27)

医者「ああ、君がここに来るようになってしばらく経つけどね、正直分からないんだ」

医者「親の不満を口にしたから治ったなんて聞いた事が無いし」

医者「まず君がそう言う格好をしている訳も分からない」

男「これは、その…」

医者「とにかくここの病院を薦めてあげるから、こっちにかかった方がいいよ」

医者「発達障害を専門に診てくれてる所だから」

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男「あの、後どのくらいしたら先生に診て貰えるんですか?」

心理療法士「それは先生に聞いて見ないと」

男「早く、良くなりたくて」



「こちら心の悩み 相談ダイヤルです」

「本日はどうされましたか?」

男「対人緊張が強くて」

「そうなんですか。年齢を教えてくれますか?」

男「ーーー」

「所でご兄弟はいますか?こちらに電話するのは今回が初めてですか?」

「話していた感じだと、この電話口では特に変とは思いませんでしたよ。このままちょっとずつで良いので頑張って下さい」

医者「この前の心理検査の結果を見て欲しいんだけど」

医者「ほらここの数学的処理の項目が抜きでていて、そして逆にこっちの空間把握能力は低くなっている」

医者「これはね、典型的なアスペルガー障害の人のものです。でも、その人達の中にも自分の長所を生かして社会で活躍してる人は大勢いるんです。私の所に来た患者はみんなそうなっています」

医者「だから、安心して、私の所に来ていれば必ず良くなるから」

医者「緊張が強い?人に見られている感じがする」

医者「じゃあこのお薬を出しておきますから」

医者「じゃあ頑張ろう」

ストラテラ、リスペリドン

処方された薬を見るに医者は統合失調症だと判断したのだろう

発達障害の患者は他の病気も平行して患っていることも珍しくない

薬を飲んでから、日中は眠る事が多くなった

起きていようと思っても、睡魔が襲ってくる

それに起きていても手足が痙攣したりして、その場に座っていることが辛く、寝ている方が楽と言うこともあった

両親は飲み続ければ必ず良くなると言った。

素人の判断で薬を中断したり、摂取することは危険なので、多分それは間違っていない。

医者の診療時間は短いものだった

事前に予約を取るものの、時間通りに診察を受けれる事はまずなく、一時間位待つことがざらだった

自分よりも重症の患者は沢山いて、そのせいで時間を食うらしい

医者に副作用の事を話した事もあったが、少し位はあるものだから大丈夫らしい

薬に関して何の知識もない自分には、ただ医者を信頼する事しか出来ない

医者は今は合う薬をチューニングしている所だと言った

平行して病院と提携のあるカウンセリング機関にも通った

カウンセラーは緊張の原因は空間把握能力が劣っており、細かい変化に気付かないせいだろうと言った

そのせいで知らず知らずの内に周りに迷惑をかけて、結果的に周囲から疎外されてしまうらしい

俺はそんな事を相談しに来てるんじゃない、と思った

夏の終わり頃になって、予備校に通い始めた

カウンセラーからしつこく言われたのと、自分自身が家に居る事が嫌になって来ていたからだ

親と顔を合わせるのが辛い

それに学校に行くか行かないかで言えば、まず行ける

これまでもずっとそうだったのだから

ただ、学校に行かない方が良いと思っただけだ

予備校に通っていることを、親やカウンセラー、医者は喜んだ

俺も、このままでいいのかもしれないと思った

そして春が始まる頃、俺は高校時代の同級生と会った

俺はこのままで良いのかと疑い始めた

俺はネットで精神科を探し、駅前にある精神科に行ってみる事にした

そこの医者にも、俺の大まかな経歴等を話したが、分からない、と言われた

カウンセラーは、言い訳を見付ける事しかしなかった

他の高額なカウンセリングにもかかった。そこのカウンセラーは「またこうなってしまう事は十分に考えられました」と言った。俺はその顔を見て、この人も分からないのだろうな、と思った。

効果がないと思ったし、何より金銭面で迷惑をかけたくなかったので、そこに行くのをやめた

元々の医者からは、また大量の薬を出された。

当然副作用も酷かったが、何より医者の「飲んでゆっくりしていれば必ず良くなる」と言う言葉がとても魅力的に思えた

親も、医者の事を信じるのが一番だと言った。今思えば、親もよく分からず不安だったのだろう。

だが、ある日、俺の眼球が上転し、そのままの位置で動かす事が出来なくなった。常に白目を剥いた状態になり、視界がほぼ遮られた。1人で用を足しに行くことも出来なくなった。

幸い、急患で駆け付けて処方された薬を飲んだら、翌日には良くなった。

でも、それから先は、また俺の掛かり付け医が変わった。同じ病院内の他の医者が担当することになった。親と前医者との間でどんなやり取りがあったのかは知らないが、多分前医者が気分を悪くしたのだろう。

その頃、また俺は精神科を探し始めた。そして、ネットで評判の良かったクリニックにかかってみる事にした。

その医者の前でも俺は経歴を語った。医者は、俺が以前にも数回別の医者にかかっていると聞いても、悪い顔はしなかった。それどころか、俺に安心感を与える様な表情を見せてくれた。俺は、ここなら大丈夫かも知れないなと思った。

医者は自分がどうしたいのか、どう思っているのかをその都度よく考える事が重要だと言った。俺はその事を常に心がける事にした。さらに、人と接する職業には向いていないだろうから、伝統芸能の職人を目指したら良いのではないかとも言った。俺は、そう言う事ではない様な気がした。

平行して、以前からのカウンセリングにも通った。カウンセラーはずっと「その事は後から考えればよい」の一点張りだった。俺はそうかも知れないと思った。

夏が終わり、俺はまた予備校に通い始めた。

予備校に通っている間は受験勉強にそれなりに精を出した。毎日のように講師の元へ質問をしに行った。しかし、自分の違和感は消えなかった。

年が明け、センター試験が終わり、俺の合格は粗方決まったかに思えた。ふと、俺はこのままで大学生になれるのだろうかと思った。勉強をするよりも、他の事をした方が為になるのではないか。

俺は久し振りに医者とカウンセラーにかかった。

医者は、以前よりも淡白になったように感じた。医者から見れば俺は健常者なのだろう。俺は、自分が自分で障害者として扱って欲しいのか、健常者として扱って欲しいのかが分からなくなった。

医者は、もしかすると効果のある薬があるのかもしれない、と言った。俺は、最初と言っている事が違う、と思った。

カウンセラーは若い内は友達が多かったりする事がとても良い事に思える、社会に出れば関係がなくなる、と言った。別に俺はそんな事は気にしていない、と言った。

友人から遊びに誘われた。俺は、大学に合格した喜びがあるから、今度は大丈夫だろう、と思った。

俺は、一年間何をして来たのだろう、と思った。

カウンセラーは発達障害だから仕方がない、と言った。俺は、言う通りに予備校に行ったんだから話をちゃんと聞いて欲しかった。

医者は、誰でも多かれ少なかれ持っているものだから、どうしようもない、と言った。俺は、残念な気持ちになった。

親はまた医者に行き出す俺を見て不安に思ったようだ。こう言う事になるから、地元の大学に進めば良かったと言った。俺は、どこに行っても変わりないと思った。

春になり、独り暮らしを始める事になった。

俺は、ネットで近くのカウンセリングを探し、そこに行ってみる事にした。カウンセラーとはメールでやり取りをした。指定された場所がマンションの一室だったので驚いた。

カウンセラーは自分の分しかお茶を出さなかった。書いてあった金額よりも多くお金を取られた。初回は多くかかるらしい。俺はここには行かない方が良いと思った。

大学の近くの精神科も見付け、そこに行くようにした。向こうとここでは診察代が違う事に驚いた。

俺は度々、親に仕送りを求めて電話をした。親は俺が医者を回る事に否定的な様だった。俺は、申し訳ないと思った。

高額なカウンセリングも受ける事にした。俺は、ここなら良くなるかもしれない、と思った。

お金が無くて、医者に通う事が出来なくなった。俺は、生活保護を申請すれば、医療費の負担が少なくなると知った。俺は、自分は本当に障害者なのかなと思った。

カウンセリングには引き続き通っていた。俺は、今度は見捨てないで欲しいと思った。そして、ここに来る位なら、他の事に金を使いたいと思った。俺は、普通に生きたいと思った。

ネットで、人は二十歳迄で人格が形成される、と言う文を見た。俺は、そうかも知れないな、と思った。

俺は最近、自分がどこで間違えてしまったのだろう、と考える様になった。だが、考えてもそれは分からかった。俺はもう取り返しの付かない所まで来てるし、そうじゃないのかも知れない。ただ、このままでは生きて行けないだろうな、と思った。



俺は、このまま生きていて良いのだろうかと思うようになった。ただ、本当に死にたいのかと聞かれると、それも違うような気がした。俺は、自分が病気なのか病気じゃないのか、発達障害なのか発達障害じゃないのか、緊張しているのかしていないのか、自分が何を考えているのかをよく考えるようになった。ただ、考えてもよく分からない事ばかりだった。

俺は、生きているのが辛いと思うようになった。多分、俺が生きている事で一番迷惑を受けているのは俺自身なのだと思った。俺は急に、俺に対しても申し訳なく思った。

最近、数年前に死んだ犬の事を考えるようになった。

カウンセリングも、もう他の所には行きたくないと思った。

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