アライさんの脳天をスコープの照準に捉え、静かに引き金を引く (1000)

俺は今日も猟銃を携えて森へ足を踏み入れる

視覚と聴覚を研ぎ澄ませ、ターゲットを探す

しばらく森の中を進むと、奴らの声が聞こえた

前方約

アライさん「さあ、ちび達!立ってみるのだ!」

アライちゃん1「のぁー」ヨチヨチ

アライちゃん2「の、のだぁ…」ヨチヨチ

アライちゃん3「なのだー」ペタン

アライさん「チビ達!頑張るのだ!ちゃんと二本足でバランスをとるのだ!」

獲物は4匹。奴らは歩行訓練の最中のようだ

俺は猟銃にサイレンサーを取り付け、音を立てないように静かに猟銃を構えた

前方約25メートルの距離。狙うならこの辺りからだろう。

スコープに映る生き物達は、一見すると人間の少女とさほど変わらない。

それもそのはずだ。あの獣はフレンズ。

今もジャパリパークで人気を集める、あのフレンズなのだから。

俺はアライさんの子供の頭へと照準を合わせる。

アライさん「しょうがないのだ。アライさんのお手手をしっかり握るのだ」

アライちゃん1「の、のだぁ…!」プルプル

アライさん「そうそう、ぎゅーっとしながら、ゆっくり立つのだ」

アライちゃん1「なの…だぁ…!」プルプル

アライさんの子供は、親の手を握りながら、ゆっくりと立ち上がっていく

アライさん「その調子なのだチビ!よし、じゃあお手てを離すのだ!」

親のアライさんが手を離す

アライちゃん「のぁっ!」ポテッ

子供のアライさんはその場で転んでしまった
せっかく合わせた照準から、頭が若干外れてしまった

アライちゃん1「うぅ~…!」プルプル

アライちゃん2「のぁ~」ヨチヨチ

アライちゃん3「なのだ~」ヨチヨチ

アライさん「チビ!その調子なのだ、しっかり踏ん張るのだ!」

一番大きな子供が、少しずつ立ち上がっていく。

アライちゃん1「のだぁ!」スクッ

アライさん「!や、やったのだ!ようやくチビが一人で立て…」

再び照準の位置へ頭が戻った。…この機を逃すものか!

俺は即座に引き金を引いた。

バシュっという音と共に、銃口から硝煙が上る。

照準に映った害獣は吹き飛び、向こう側へ倒れた。

アライちゃん1「のばっ」バタッ

アライさん「ああ、また倒れたのだ!でも大丈夫、もう一度起き上がってみるのだ!」

どれだけ応援しても、あの子供はもう起き上がることはないだろう。

アライちゃん1「」ビグビグビグビグバタタタッタタタタッタ

銃弾に貫かれた獣は、ゴキブリのように手足を動かしている。

アライさん「!?な、何なのだ!?何を暴れてるのだ!?」

アライちゃん2「のだー?」

アライちゃん3「おかぁちゃん、おねぇたんどちたのぁ?」クイクイ

アライさん「お、おいチビ!しっかりするのだ!」ダッ

撃たれた子供に親が駆け寄る。

アライさん「…!あ、ああ、ち、血が、こ、こんなに、あ、あ」

アライさん「なんなのだ、これは、いや、ち、チビ、だめなのだ、死んじゃだめなのだぁ」ユサユサ

アライちゃん2「のだー?」ヨチヨチ

アライちゃん3「おねーたん?」ヨチヨチ

2匹の子供たちが、地面を這いつくばって死骸へと近寄っていく。

俺は照準を移動させ、死骸のすぐ隣へ狙いを定める。

アライさん「あ、ああ、ち、ちびがあぁ、しんじゃったのだぁ…!そんな、ようやく、一人で立てるように…!嫌なのだぁ…!」ユサユサ

アライちゃん2「のだー」ヨチヨチ

死骸の隣。スコープに子供の頭が映った。

すかさず俺は2発目の弾を放つ。

アライちゃん2「ぎびゃっ」ポーン

子供の軽い体は宙を舞い吹き飛んだ。

アライさん「!?ちび!?ちびっ!」

子供は頭が上から半分以上消し飛んでいた。

知能の低いアライさんでも、すぐにその死を理解できるだろう。

アライさん「あ、ああ、ち、ちび!ここは危ないのだ!逃げるのだあぁ!」ガシッ

アライちゃん3「のぁー!なのだー!」

親は子供を抱き抱えた。

丁度その足が照準に映っている。もちろん俺は引き金を引いた。

アライさん「な゛うっ!?」バタッ

アライちゃん3「の゛だぁ!」ボテッ

親の脚へ銃弾を浴びせてやると、すぐに倒れ、子供は地面へ叩き落とされた。

アライちゃん3「いたいのだぁ~!」ビエエエン

アライさん「ァぁ、あ゛ぁあああ゛あああ゛あ!脚があぁ!アライさんの脚がぁあああ!」ドッタンバッタン

アライさん「うぅ゛~!あう゛ぅ~!」ズリズリ

アライちゃん3「ひっく…ひっぐ…のだぁ…!」ヨチヨチ

親も子も、四本足で地べたを這いずり回ってその場から離れようとする。

あの調子ならばもう森の中へ隠れることはできまい。俺は獲物の方へ歩み、近づいていく。

アライさん「だ、誰なのだ?」

こちらへ気付いたようだ。

アライさん「丁度よかったのだ、アライさんの脚がすごく痛くて大変なのだぁ…!手当てするのだぁ!」

どうやら俺が撃ったとは気付いていないらしい。

そもそも、銃というものを知らないのだろうか。

アライさん「何黙って見てるのだ!さっさとするのだぁ!」グイグイ

害獣は俺の脚へしがみついてグイグイと引っ張る。

汚らわしい手で触るな。俺は害獣の傷付いた脚へ思い切り蹴りをぶちかました。

アライさん「いだいのだぁああ!」ゴロンゴロン

アライちゃん3「のぁ!?お、おかーちゃんになにするのだぁ!」

そしてまだ動く方の脚へ銃口を押し付け、密着させたまま引き金を引いた。

ボンッという音と共に砂埃が舞い、害獣の脚が粉々の肉片となって飛び散った。

アライさん「ああがぁあああ゛ああ!あ゛ぁあああああ゛がぁああああ!」ゴロン

のたうち回る害獣。完全に破壊された大腿動脈からホースのように血液が吹き出る。

もうこいつは放っておいてもいいだろう。俺は残る子供一匹の方を向いた。

アライちゃん3「ひ!や、やだぁ!くるなあぁ!」ヨタヨタ

害獣の子供は、よたよたとその場で立ち上がり、ふらつきながら二本脚で体を支えた。

アライさん「ち、ちび!…逃げるのだちび!走って逃げるのだあぁ!」

アライちゃん3「の、のだぁ!」ヨタヨタ

子供はふらふらと、慣れない足取りで森の中へ逃げ込もうとする。

アライちゃん3「のだ、のだぁ!」ヨタヨタ

アライさん「頑張るのだ、もうちょっとなのだぁ…!」

何がもうちょっとなのか分からないが、俺はすたすたと歩いて害獣、いや害虫へ追い付いた。

そして猟銃をフルスイングし、まだ熱い銃身で子供の両脚へと打ち付けた。

アライちゃん3「のだっ!」ポテッ

アライさん「ちび!お願いなのだ…もうやめるのだ!痛いのやめてほしいのだ!アライさん達なんにも悪いことしてないのだぁあああ!」

親アライさんの脚の断面からはおびただしい量の出血が見られる。

脂汗と涙と鼻水を垂らしながら、よくもまあそんなに喋れたものだ。

このしぶとい生命力こそが、害獣の大繁殖という被害を招いたのだ。

アライちゃん3「びええええ!わああぁぁ!」ヨチヨチ

俺は子供の脚を片方掴むと、空中へと勢いよく持ち上げる。

アライちゃん3「のだあぁぁ!?」

そして、地面にある岩の上へと思い切り叩けた。二度も、三度も、四度も。

岩の上にはどんどん血が広がっていく。

アライちゃん3「びっ!ぎっ!げぇっ、ぶぎっ!ごぼぇっ!」ベシャベシャ

子供は大量に吐血した。

アライさん「あああ、やめるのだ、た、たのむのだ、チビは、まだ立って歩けるようになった、ばっかりなのだぁ!」

そいつを岩の上へ置くと、俺は靴の底で下半身を思い切り踏んづけた。

アライちゃん3「びぎゅ゛っ」ブチャアアア

アライさん「ちびい゛ぃぃ!!」

足の裏へゴリっという骨が砕け潰れた感触が伝わる。

踏み潰した害獣の頭を掴んで持ち上げると、変な方向に折れ曲がった両脚の間から、大量の出血が流れ出た。

アライちゃん3「の…ぁ゛…」ピクピク

アライさん「…ぁ…ち、び…っ…どう、して…」

親アライさんもさすがにこの失血量では、もう動くことはできないだろう。

俺は瀕死の幼獣を逆さにし、両脚を掴み、思い切り左右に引っ張る。

アライちゃん3「…ィ…」

やがてぼぎぼぎと音を立て、親の目の前で子供の両脚が引きちぎられた。

アライさん「…ぁ…あ…」

アライさん「…ち、び…」

さっさと親も子たちと同じところへ送ってやろう。

俺は親アライさんを蹴り転がして仰向けにさせ、股間へ銃口を押し当てる。

アライさん「ひ、い、や゛、ぁ…」ピクピク

引き金を引くと、ボンッと音が鳴り、アライさんの体がビクンと跳ねる。

アライさん「ぐぼぉっ…」

股間と背中から血が溢れ、害獣の服を濡らしていく。

これでよし。
俺は四つの肉塊を袋に詰めると、森を去った。



~街~

食通の友人「よう、ハンター。今日はどうだった、アライさんは狩れたか?」

いい調子だった。弾を無駄遣いした感はあるが。
俺は袋を友人へ渡す。

食通の友人「へぇ~4匹も!サンキューな!」

いいって。死骸処理してくれて助かる。
しかし、こいつはいつもいつも一体、アライさんの骸をどこに片付けるのか…。

今回はここまでです
また気が向いたらハンティングします

アライグマ専用の手を突っ込むと抜けなくる罠で話しを作って欲しいです!

>>17
https://youtu.be/loAVpDaFffk
これでしょうか?
すごく面白そうですが、このトラップに関する情報がなかなか見つからないですね…

https://hyke-store.com/?pid=84677600
ここにアライグマトラップの仕組みが書いてありました
そのうち使わせていただきます



食通の友人「子供のアライさんを、2~3匹ほど生きたまま狩ってきてくれないか?」

生け捕りか。
構わないが、どうしてだ?
車の中で泣き叫ぶわ暴れるわ…、息の根を止めた方が狩りやすいのだが。

食通の友人「今度のやつはな、生きたままじゃなきゃダメなんだ」

いいだろう、我が友人よ。
お前には色々援助してもらっている。
今回は生け捕りを試みよう。

丁度、農園からアライさん駆除の依頼が来ていたところだ。

俺はアライさん捕獲用の籠を持ち、農園へ向かった。

~農園~

トラップの設置は完了した。
あとは、監視カメラを仕掛け、深夜の間にアライさんが引っ掛かるのを待つだけだ。

だが正直、友人の期待を満たすのは難しいだろう。
フレンズでない野生のアライグマであれば、食べ物を畑から奪う際、子連れでやってくることはめったにない。
警戒心が強いためだ。

俺は一旦帰宅することにした。



翌朝、俺は目を覚ますと、食卓へ向かった。

トーストを焼きながら、テレビをつけ、録画した映像を映す。
農場へ取り付けた、例の監視カメラの録画映像だ。

しばたく早送りすると、森のほうからのそのそと何かがやってくるのが見えた。

アライさん「チビ達!こっちへ来るのだ!」

アライちゃん1「なのらー」ヨチヨチヨチヨチ

アライちゃん2「のだ~」ヨチヨチ

アライちゃん3「ごはんなのだー!」ヨチヨチヨチヨチ

アライさん「美味しそうなにおいがするのだ!今日は美味しい野菜がいっぱい採れそうなのだ!」

アライちゃん1「なのだー」ヨチヨチ


映像の中では、アライさん親子が畑へ近づいていた。
フレンズになり、警戒心が薄まったのだろうか?
まだ両脚で立つことすらできない子供を連れていた。

アライさん「ん?なんなのだ?この匂い」スンスン

アライちゃん1「あっちなのら~」ヨチヨチ

アライちゃん2「いいにおいなのだー」ヨチヨチヨチヨチ

アライちゃん3「うまそうなのだー」ヨチヨチ


親子が向かった先には、俺が仕掛けた捕獲用トラップの籠があった。
籠の中には、揚げパンやキャラメルコーン等、匂いの強い餌を仕込んである。

アライさん「あの中に入ってるのだ!みんな、入るのだ!」モゾモゾ

アライさん「んしょ、んしょ…!」モゾモゾ

アライさん「入れたのだ!」スポッ

アライさん「ん…食べ物が入ってるのだ。もぐ…」モグモグ

アライさん「!!すごい、とーっても美味しいのだ!みんな入ってくるのだ!」

アライちゃん1「たべるー!」ヨチヨチヨチヨチ スポッ

アライちゃん2「はやくたべたいのだー!」ヨチヨチヨチヨチ スポッ

アライちゃん3「おなかすいたのだー!」ヨチヨチヨチヨチ スポッ

4匹の親子は、いとも簡単に籠へ入った。
そして、親のアライさんが奥のベーコンへ手を伸ばす。

アライさん「これが一番美味しそうなのだぁ」ガシッ

ベーコンが取られた瞬間、仕掛けが作動する。

ガシャンと音を立て、籠の入り口フタが閉じた。

アライさん「!?なんなのだ!?」ビクッ

アライちゃん1「のぁっ?」

アライちゃん2「おいしーのらぁ」モグモグ

アライちゃん3「おかーしゃんもごはんたべるのだー」モグモグ

アライさん「…なんだ、この箱から音がなっただけなのだ。なんでもないのだ」ムシャムシャ

親子は籠の中の餌を食い漁る。

元々大した量は入れていない。食い終わるには時間の問題だろう。

アライちゃん1「ごちそーさまなのだぁ」ケプ

アライちゃん2「もっとたべたいのだー!」ジタバタ

アライちゃん3「はたけいきたいー!」

アライさん「確かに物足りないのだ。ここから出て畑に…」ガシャ

アライさん「…?」ガシャガシャ

アライさん「で、出られないのだ!入り口がないのだ!?」グイグイ

アライちゃん1「はやくあけてー」

アライちゃん2「まだなのだー?」

アライちゃん3「?」

アライさん「はぁ、はぁ、どこなのだ、出口はどこなのだぁ!」ガシャ!ガシャ!

アライさんは籠の壁に手当たり次第タックルをかました。

その揺れは籠全体に伝わり、ガシャンガシャンと大きな音を立てる。

アライちゃん1「ごはんー」ヨチヨチ

アライちゃん2「はやくあけてー」クイクイ

アライちゃん3「もっとたべたいのだー!びええええん!」ビエエエエン

アライさん「このっ!このっ、このっ!どうやったら開くのだ!?」ガシャガシャ

アライちゃん1「おかーしゃんがあけてくれないのだー!」ビエエエエン

アライちゃん2「いじわるやなのだー!」ビエエエエン

アライちゃん3「はたけいくー!やだー!」ジタバタ

とうとう子供達が泣き出した。

アライさん「あ、アライさんだって出たいのだ!チビ達も見てないで手伝うのだぁ!」

あの籠はアライさんがどんだけ暴れても壊れることはない。

このまま見続けても時間の無駄だろう。
俺は電気ヤリを車へ積み、再び農園へ向かった。

つづく

~農園~

例の籠のある場所へ足を運ぶと、
アライさんの声が聞こえた。

「そこの人ー!助けてほしいのだぁ!」

俺に気付いたらしい。
籠へと近づくと、カメラに映っていた親子の姿が見える。

アライさん「早く来るのだ!アライさんたちの危機なのだぁ!」ガシャガシャ

アライちゃん1「なのだー!」ウルウル

アライちゃん2「おなかぺこぺこなのだぁ!」ビエエエエン

アライちゃん3「だしてー!」

生け捕りにするのは子供だけでいい。
親のアライさんはさっさと黙らせよう。

俺はカバンから、電気槍とバッテリーを取り出す。

この道具は、末松電子製作所で生産されているエレキブレードという製品だ。
単純な構造ながら、捕らえた獣を安全かつ効率的に処理できるスグレモノだ。

アライさん「何なのだそれは?わかったのだ、この箱を開ける道具なのだぁ!」

アライちゃん1「たすかるのだー」

アライちゃん2「でられるのだー!」キャッキャ

アライちゃん3「ここからでたら、おいしいいやさいいっぱいたべるのだぁ!」ワイワイ

俺は電気槍をバッテリーへ繋ぎ、電源を入れる。
手元で赤いランプが光り、先端の針へ

そして、籠の中の親アライさんへ切っ先を向ける。

アライさん「遅いのだ!早くそれで箱をこわすのだー!さっさとするのだ!」

どうやら、命を狙われているとは思っていないらしい。
やりやすくて好都合だ。

俺は電気槍の先端を、そっと籠の中へ差し入れる。

アライさん「な…なにやってるのだ、それをこっちに向けたら危ないのだ」

アライさんの表情が曇る。
俺は即座に、アライさんの腹へと電気槍を突き出した。

アライさん「びぎっっっ!!!」

電気槍がアライさんのどてっ腹に突き刺さる。
アライさんは背中を大きく仰け反らせて手足をピンと突き出した。
苦痛に歪んだ表情のままブルブルと痙攣し、そのままのポーズで固まった。

アライちゃん1「!?」

アライちゃん2「ヒトしゃん、おかーしゃんになにするのだぁ!」

アライちゃん3「ひっこぬくのだぁ!」スッ

子供が親の腹から槍を引っこ抜こうとして、手でぎゅっと握る。

アライちゃん3「びいぃぃっ!?」バッ

だが握った瞬間、すぐに槍から手を離した。
そのまま手を押さえて地面をゴロゴロと転がり回った。

アライちゃん3「いたい~いたいのだぁぁ!びりびりするのだぁ!」ビエエエエン

アライちゃん1「ああ、あああ、おかーしゃんもきょーだいもききなのだぁ」ビエエエエン

アライちゃん2「いじめないでぇ!あらいさんたちわるいことしてないのだぁ!」ビエエエエン

泣き声がやかましい。こいつにも突き刺してやろうか。
だが子供は生け捕りにする約束だ。失血で死なれても困る。
俺は無視して、親アライさんの体に電流を流し続けた。

アライさん「ッ………ぐぶッ………」

白目を向き、口から泡を吹きはじめた。
殺すだけならこのまま電流を浴びせ続け、心肺停止させれば楽なのだが…。
こいつの死体は、生け捕ったガキ共と共に、友人へ渡す約束をしている。


だから、キチッと『血抜き』して、『下処理』をする必要がある。

心肺を止めてしまうと血抜きができない。

だから俺は一旦、アライさんから電気槍を引っこ抜いた。
変なポーズで硬直していたアライさんの体から力が抜け、その場でどたっと倒れ伏す。

アライさん「う…ぐ、ふっ……ぅ……」ビクッビクッ

アライちゃん1「もうやめるのだぁ!おかーしゃんをいじめるなぁ!」ジタバタ

アライちゃん2「やなのだー!」ビエエエエン

アライちゃん3「こわいのだぁだれかたすけるのだぁここからだすのだぁ!」ヨチヨチヨチヨチ

俺は白目で倒れている親の首もとへ、電気槍を突き刺す。

アライさん「え゛ぅ゛っ…」

そして槍を左右へぐりぐりと動かし、頸動脈をブチンと絶ち切った。
槍を引っこ抜くと、真っ赤で粘り気の強い動脈血が勢いよく吹き出た。

アライさん「……」ビュグッ ビュグッ

アライちゃん1「おかーしゃあああん!」ビエエエエン

アライちゃん2「おかーしゃんめをあけるのだぁ!おっきするのだぁ!」ユサユサ

アライちゃん3「うあ、ひ、や、ぁ、ぁああああ!」チョロチョロ

子供たちが泣き叫ぶ中、しばらく待っていると、やがて親アライさんの首から出血が止まった。
顔面は蒼白になっている。血抜きは完了だ。

俺は下処理を済ませた親の体と泣き叫ぶ子供3匹が入った籠をシートにくるみ、袋へ詰めて車に乗せた。

アライちゃん1「だすのだぁ!あらいちゃんたちをここからだすのだぁ!」ガンガン

アライちゃん2「おかーしゃん!おかーしゃああん!」ユサユサ

アライちゃん3「だずげでえぇぇ!だれかあああ!」ジタバタ

まあ、この農園にはまだまだアライさんが現れるのだろう。

同じような籠を何ヵ所かへ設置すると、農園の主へ挨拶し、車を走らせて一旦街へ戻った。

つづく



~街~

俺は街へ戻り、食通の友人のもとへ着いた。
アライさんの籠を袋詰めのまま持っていく。

食通の友人「よう!どうだった仕事は?うまくいったか?」

ああ、上出来だ。
お前が望んでたもんはここにあるぞ。

袋からガサゴソと籠を取り出す。
袋の底には、親アライさんの血が溜まり、ゼリー状に固まっている。

アライさん「」

アライちゃん1「ここどこなのだ?おうちかえりたいのだ」

アライちゃん2「ヒトしゃん、おかーしゃんをなおしてほしいのだ、おきてくれないのだぁ」

アライちゃん3「すぴー…すぴー…」スヤスヤ

食通の友人「おおっこりゃたまげた!3匹も!俺はいい友人を持ったぜ!」

そう言われると狩人冥利に尽きるな。
まあ、そいつらはいつも通り好きなように使ってくれ。

食通の友人「ああ、サンキュー。それじゃあアライちゃんたち、こっち来ようか…」

アライちゃん1「なんなのだ?こわいのだ」

アライちゃん2「はなしきくのだ!はやくおかーしゃんをなおすのだぁ!」ガタガタ

アライちゃん3「ん…むにゃ…」




食通の友人は、籠を持ち、家の奥へ進んだ。

食通の友人「アライちゃんたち、お腹空いてないかい?」

アライちゃん1「おなかぺこぺこなのだー」グーギュルル

アライちゃん2「うぅ…そんなのがまんするのだ。おかーしゃんなおすのがさきなのだぁ!」ユサユサ

アライさん「」ガクガク

アライちゃん3「だしてほしいのだー」ガタガタ

食通の友人「はいはい、お母さんね。ちょっと貸して」ガシャ

食通の友人は、籠を開けて親アライさんの死骸を取り出す。

アライちゃん1「!あいたのだ!」ヨチヨチ

アライちゃん2「ここからでるのだー」ヨチヨチヨチヨチ

アライちゃん3「なのだー」ヨチヨチヨチヨチヨチヨチ

アライさんの子供たちは、開いた籠の口から外へ出ようとする。

アライちゃん1「あたまがでたのだ!このままからだぜんぶでるのだ!」ヨチヨチヨチヨチヨチヨチ

子供の一人が、頭を籠の外に出した。

食通の友人「逃げんじゃねェェアアアクソバエ共があァ!」

食通の友人はそれを見逃さなかった。
平手で思いっきり子供の顔面をぶっ叩き、籠の中へ弾き飛ばした。

アライちゃん1「ぶぎゃぇっ!」

バチーンと音が鳴り響き、子供は反対側の壁へ打ち付けられた。

アライちゃん1「びえええん!わああああん!いだい、いだいのだあぁ!」ビエエエエン

食通の友人「フーッ、フーッ…次なめた真似しやがったらぶち殺すぞ」

アライちゃん2&3「あ、あわ、あわわっわわわ」ガタガタブルブル

食通の友人「さて、と…。お腹すいたって言ってたよね?ご飯をあげよう」

アライちゃん2「!」

アライちゃん3「ごはんなのだ?」グーギュルル

アライちゃん1「ひぐっ…ぐすっ…いたい、いだいのだぁ…はなぢがとまらないのだぁ…」ドクドク

食通の友人「さ、キャベツだよ。召し上がれ」

食通の友人は千切りのキャベツを、ぱらぱらと籠の中に落とした。

アライちゃん2「!たべものなのだー」

アライちゃん3「もぐもぐ…おいしーのだぁ!」ムシャムシャ

アライちゃん1「うぐうぅぅ…いたい、いだい…」

子供たちは差し出されたキャベツを食べる。

アライちゃん3「もっとよこすのだぁ!」ガシャガシャ

アライちゃん2「おねーちゃんがまだたべてないのだ!それにおかーしゃんもさっさとなおしてごはんあげるのだぁ!」

アライちゃん1「うぅぅ…いだい…」シクシク

食通の友人「お母さんの分もちゃんとあるよ。さ、お姉さんにもご飯あげて」

アライちゃん2「おねーしゃんおきるのだ!」ユサユサ

アライちゃん1「うぅ…」シクシク

アライちゃん3「ほら、ごはんなのだ。たべるのだ」

アライちゃん1「ありがとうなのだ…」ムシャムシャ

アライちゃん2「こんなんはむれでわけあうのだー」

食通の友人「さて、食べ終わったかな」

食通の友人は、籠を持ち上げると、新聞紙をしいたタライの上に置いた。

食通の友人「そろそろかな…」

アライちゃん2「おかーしゃん!おかーしゃんをはやくたすけるのだ!」

食通の友人「あー、そうだな。痛む前に、下ごしらえするか」

食通の友人は、アライさんを水でざぶざぶと洗った。
洗った後、アライさんをまな板の上に寝かせた。
手足は死後硬直で固まっていたが、血をしっかり抜いていたためか、グイグイと動かすとすぐに関節が柔らかくなった。

食通の友人「ふむ、下処理はきっちりされてるな」

そして、大きな包丁を取り出すと…

食通の友人「んしょっと」

包丁をアライさんの腹へと突き刺した。

アライちゃん1「!!!」

アライちゃん2「おかあしゃああああん!!」

アライちゃん3「やだあああ!やめてえええ!」ガシャガシャ

そのまま、腹をざくざくと丁寧に切り裂いていき、
下腹部まで切り込みを入れる。

さらに、食通の友人はボロボロの鉈を取り出す。
アライさんの股間へがんがんと何度も鉈の刃を叩き付け、骨盤の恥骨を叩き割る。

そして腹の中に手を突っ込み、内臓をずるずると引きずり出す。

そして、包丁を使い、皮を剥いでいった。

アライちゃん1「あ……ああぅ…」ガクガクブルブル

アライちゃん2「おかーしゃんが…ころされちゃったのだ…」プルプル

アライちゃん3「だすのだぁ!ここからだすのだぁ!おうちかえるのだぁ!」ガシャガシャ

アライちゃん1「う゛っ…!?」

アライちゃん2「おなか…いたいのだぁ…!」グーギュルル

アライちゃん3「う、うぷっ…!きもぢ、わるい…!」

食通の友人「ああ、さっきのキャベツには下剤と嘔吐剤をたっぷり仕込んどいたからね」

食通の友人「腸と胃の内容物は全部出してもらうよ」

アライちゃん1「ああ…ああああ!」

アライちゃん2「げええっ!」

アライさんの子供たちは、大量の糞と吐瀉物と、未消化のキャベツを新聞紙の上に撒き散らした。
吐くものが無くなっても何度もえずき、よだれを垂らした。

アライちゃん1「ひぃー…!ひぃー…!」ゼェハァ

アライちゃん2「せっかくたべたおやさいがぁ…」ゼェハァ

アライちゃん3「おなかこわしちゃったのだぁ…」ゲホゴホ

食通の友人「汚れたなぁ。洗っておこうか」

新聞紙をくるんで袋に包み、ゴミ箱に捨てる。
その後、アライちゃんの籠を流し台へ運ぶと、シャワーヘッドを取り付けたホースを向ける。

アライちゃん1「な…なんなのだ?」

アライちゃん2「もういじめるのはやめるのだー」

アライちゃん3「ひいぃ…」

そしてシャワーヘッドから、勢いよく水が噴射される。

アライちゃん1「わぷっ!みずなのだぁ」バシャー

アライちゃん2「きもちいいのだぁ」ザー

アライちゃん3「からだあらいっこするのだぁ」コスリコスリ

シャワーで水を浴びせてやると、子供たちは互いの毛皮を洗いあう。
けものプラズムでできた服は、毛皮と同意義である。

つづく

アライちゃん1「あらいっこなのだー」コスリコスリ

アライちゃん2「したにみずがたまってるのだ!」

アライちゃん3「のどかわいたのだー」

アライさんの子供たちは籠の底の隙間から、タライに溜まった水へ舌を伸ばす。
だが、水面に舌先は届かなかった。

先程洗浄のために使った水には抜けた毛や、なんやよくわからんネバネバが浮いている。
そんなものが気にならないほど、喉が渇いているのか…あるいは、元から気にしないのか。

大まかな汚れは取れただろう。
食通の友人は水を止めた。

アライちゃん1「の、のど、かわいたのだ…」

食通の友人「さて、と。それじゃ」ガチャ

食通の友人は、籠の上を開けると、中の子供へ手を伸ばす。
子供たちは、伸ばされた手から逃げ惑い、籠の中を走り回る。

アライちゃん1「ぴぃっ!」ヨチヨチ

アライちゃん2「つ、つかまるのやなのだ!」ヨチヨチヨチヨチ

アライちゃん3「た、た、たすけ…」ガクガクブルブル

先程母親を殺されたときの恐怖が蘇ったのだろう。
籠のすみへ逃げる子供たち。

食通の友人は、子供の一人を背中からガシッと鷲掴みにした。
体の大きさは、フェレットの成体より一回り大きい程度だろうか。

アライちゃん1「ひぃ!い、ぁ、あああああ!」ジタバタ

アライちゃん2「お、おねーしゃんをはなすのだぁ!」ガブッ

子供の一人が、姉を掴む手へ噛みつく。

食通の友人「ッッ痛ってェーーなこのハエガイジクソムシがあァ!」

そう言うと、なんと食通の友人は、手に握るアライちゃん1を鈍器代わりに振りかざし、
アライちゃん2の頭をぶん殴った。

アライちゃん1「ぎびっ!!」

アライちゃん2「はぎゃあっ!」

食通の友人「このクソ虫が!このクソ虫が!このクソ虫がああっぁあ!」ブンッ ガンッ ガンッ

アライちゃん1の頭を、何度もアライちゃん2の頭へ打ち付ける。
ふと食通の友人は手を止める。

アライちゃん1「」ピクピク

アライちゃん2「」ピクピク

アライちゃん3「ひ、あ、あわ、あわっわわわ…こ、ころさな、いで、なのだぁ」ガチガチブルブル

食通の友人「フゥーッフゥーッ…いかん、殺してしまったら台無しだ」

アライちゃん1「う゛…ぁ…」ピクピク

アライちゃん2「いだい…いだいぃっ…」血ダラダラ

籠の中だけで、手首のスナップだけで殴っていたためか、
2匹とも致命傷には至らなかったようだ。
これがもし籠の外であれば、全身の力を使った渾身の殴打により、
2匹の頭蓋骨は割れた卵の殻のように潰れていたことだろう。

そして軽々と持ち上げられたアライちゃん1は、流し台へ移された。

アライちゃん1「ぐっう…!いだい…!あだまいだいのだぁ…!あだまいだいいだいいだいのだああぁぁ!」ビエエエエン

意識が戻り、痛みが強くなってきたのだろう。
流し台のアライちゃんは、大声で泣き出した。

食通の友人「黙れ。お前もああなりたいかい?」グイッ

食通の友人は、アライちゃんの顔を、まな板の上にある母親の死骸へと向けた。

アライちゃん1「ひぎゃっ…お、おかー…しゃん………!」ウルウル

アライちゃん1「おがーしゃん!おがーしゃああんっ!」ビエエエエン

先程は遠景でしか見ていなかったが、
こうして間近で母親の死体を見たことで、
愛する母親の死を実感したのだろう。
子供はワンワンと泣き出した。

食通の友人「…まあいいや。どうせ、すぐ声は止むんだからな」

食通の友人は、先程のホースの先へ、スポイトの先端のような器具を取り付けた。

そして器具を無理矢理アライちゃんの口の中へ捩じ込む。

アライちゃん1「むぐうぅぅっ!?」モゴモゴ

食通の友人「さっきの吐瀉物が食道に残ってるかもしれないから、念入りに洗わないとねぇ」キュッ

蛇口を捻ると、水が流れたホースが
蛇のように動き出す。
そして、アライちゃんの口の隙間から勢いよく水が吹き出した。

アライちゃん1「ぶごぐぶぼごがばぼごごぼぼうぐぶぼばっばべべばがばぼばぼぼ!!!」

口を適当に洗浄すると、器具を引き抜く。

アライちゃん「げはーっ…がぼっ…ごぼっほ!げほっ、げぇーっほごほっ!」

だがそれでは終わらず、今度は器具の先端をアライちゃんの肛門へと突っ込んだ。

アライちゃん1「ぴぎいぃぃっ!?」

今度は隙間から水が出ては来ない。
水を流し込まれた腹が、どんどん膨らんでいく。

アライちゃん1「あ゛あ゛あ゛ぁあああ!ぐるじぃおながいだいおしりいたいぎゃああああああああああ!!!」

そして破裂するのではと心配になるくらい水を流し込んだあたりで、肛門から器具を引き抜く。
途端に肛門から勢いよく水が排出され、排水口へ流れていく。

アライちゃん1「う゛う゛う゛ぅ゛ぅ゛っ!」ビューーッ

食通の友人は、水の排出を促すために、腹を上から下にぐーっと押していく。

アライちゃん1「ぎひーっ…ぎひーっ…」ピクピク

どうやら洗浄は完了したらしい。
先程より綺麗なケージへと、アライちゃんを入れ、蓋を閉める。

食通の友人「さてと、残りの奴は…」クルッ

アライちゃん2「もうちょっとででられるのだ!」グググ

アライちゃん3「はやくひっぱるのだ!みつかるのだ!」ヨジヨジ

なんと、先程閉め忘れた籠の蓋から1匹が這い出ており、
もう一匹を引っ張り上げようとしているではないか。

食通の友人「逃げるのかい?」

アライちゃん2「ひっ!み、みつかったのだ!」 ビクッ

アライちゃん3「は、はやくひきあげるのだぁ!」ヨジヨジ

食通の友人は、笑顔で籠へと近づく。

アライちゃん3「き、きたのだ!はやくぅ!」ヨジヨジ

アライちゃん2「ひ、ひゃあああ!」パッ

籠の上にいたアライちゃんは、なんと手を離し、もう一匹を籠の中へ落とした。

アライちゃん3「のだっ!」ボテッ

アライちゃん2「に、にげるのだぁ!」ピョン

なんと、このアライちゃんは、姉妹を見捨てて一匹だけ逃れようというのだ。
籠から下りると、アライちゃんは這い這いで一目散に部屋の外へ逃げていく。

アライちゃん3「お、おねーしゃん!?あらいしゃんがまだでてないのだぁ!あらいしゃんもつれてくのだぁ!」ガシャガシャ

アライちゃん2「はぁはぁ、にげるのだぁ!」ヨチヨチヨチヨチヨチヨチ

籠の中から、遠ざかる姉を見て泣き叫ぶ妹。

アライちゃん3「おいてくなんてひどいのだぁ!やくそくしたのだぁ!いっしょにおうちかえるって!おねーしゃん!おねーしゃん!」ガシャガシャ

アライちゃん2「おまえのぶんまでいきるのだー!」ヨチヨチヨチヨチ

だが、アライちゃんが尻を振りながら腹這いで逃げるそのスピードはあわれゴキブリ以下。
ルンバですら余裕で追い付けるほどの遅さだ。

食通の友人はすぐに距離を詰める。

アライちゃん2「もうちょっとでそとなのだぁ!」ヨチヨチヨチヨチ

アライちゃんはついに出ることができた。厨房の外へ。
だが外にはフローリングの廊下が続いており、どこが出口かは分からない。

アライちゃん2「とにかくにげるのだぁぁ!」ヨチヨチヨチヨチ

フローリングの床に、アライちゃんの腹と手足がこすれ、ドタドタと音を立てる。
左右に揺れるフワフワの尻尾が床に擦れ、綿埃が宙を舞う。

アライちゃん2「おそとにいくのだぁ!」ヨチヨチ

食通の友人「残念、ゲームオーバーだ」ガシッ ヒョイ

追い付いた食通の友人は、尻尾を掴んでアライちゃんを持ち上げた。

つづく

アライちゃん3「おいてくなんてひどいのだぁ!やくそくしたのだぁ!いっしょにおうちかえるって!おねーしゃん!おねーしゃん!」ガシャガシャ

アライちゃん2「おまえのぶんまでいきるのだー!」ヨチヨチヨチヨチ

ここからアライさんの本質を感じたわ
ナチュラルボーンクズ、フレンズでは決してあり得ない邪悪な本性の発露って感じ

食通の友人は、アライちゃん2のフワフワの尻尾をつかんで逆さ吊りにしながら、
厨房へと戻ってきた。

アライちゃん2「はなすのだ!はなすのだ!はなすのだあぁ!」ジタバタ

そして籠の蓋を開けると、アライちゃん2を中へ戻そうとする。

先程見捨てられたアライちゃん3は、籠の中からじっと姉を睨む。
その目に涙を溜めながら。

食通の友人「ほら、戻った戻った」グイグイ

アライちゃん2「いやなのだ!いやなのだ!いやなのだあぁ!」ジタバタ

食通の友人「戻れよ」ガンッ

アライちゃん2「のだっ!」ボテッ

アライちゃん2の頭をぶん殴って落とした。
そして、

食通の友人「もう逃げるなよ」

そう言い、籠の蓋を…カタンと中途半端に閉めた。
内側から押せば、おそらく蓋は開くだろう。
うっかり閉め忘れたのだろうか?それとも…

食通の友人「さーて、下ごしらえするか。アラジビフェスは明日だ」

食通の友人「いいかそこのハエガイジ共。こっからは火加減がヒジョーに大事なんだ。うるさくして俺の集中を乱すなよ」

そう言い放つと、食通の友人は流し台で作業を始めた。

アライちゃん2「…」ハァハァ

アライちゃん3「…っ」プルプル

籠の中では、姉妹が再び対面していた。

アライちゃん3「おねーしゃんは…さっき、あらいしゃんをみすてたのだ…」

アライちゃん2「…」

アライちゃん3「うらぎったのだ!やくそくやぶったのだ!あらいしゃんは、おねーしゃんのこと、しんじてたのだ!」ウルウル

アライちゃん2「…うるちゃいのだ」

アライちゃん3「ぐすっ…!おねーしゃんはうそつきなのだ!あらいしゃんをみごろしにしようとしたのだ!わるいやつなのだぁ!」ビエエエエン

アライちゃん2「うるさいのだ!」ベシィ

アライちゃん3「のだっ!」ビターン

アライちゃん2「あらいしゃんはわるくないのだ!あらいしゃんは、せいいっぱいおまえをたすけようとしたのだ!おまえをぐいぐいひっぱったのだ!」

アライちゃん2「でもおまえがとろとろしてるから!あいつにきづかれたのだ!おまえがおそかったからわるいのだぁ!」

アライちゃん2「わるいのは、おまえなのだぁ!おまえがあしをひっぱったのだ!あらいしゃんはおまえのせいでにげおくれたのだぁ!」ポカポカ

アライちゃん3「のだっ!のだっ!いたのだぁやめるのだぁ!」ジタバタ

プルルルルル…ガチャ

食通の友人「はい、こちらショクエモンです…。ええ、明日のアラジビフェス…なに?ハエがうるさくて聞こえない?ははぁすいません、ええとですね…」

アライちゃん2「おまえなんか!さいしょからみすててれば!あらいしゃんはひとりでにげられたのだぁ!おうちにかえれたのだぁ!」ベシベシ

アライちゃん3「いだいのだあぁ!」

食通の友人「例のメニューですね、準備間に合いました。丁度3匹…もしもし、もしもし!はい!えーとですね!はい!もっと大きな声で言いますね!はい!例のメニューがですね!!!」

アライちゃん2「それなのに!おまえのせいで、ぜんぶだいなしなのだぁ!おまえなんか…!」

アライちゃん2「うまれてこなきゃ、よかったのだぁーっ!」ベシーン

アライちゃん3「うびゃあぁ!」ベタン

アライちゃん2「はぁ…はぁ…」ゼェハァ

アライちゃん2「あやまるのだ!あらいしゃんにあやまるのだ!」ゲシゲシ

アライちゃん3「おねーしゃんなんて…」

アライちゃん3「おねーしゃんなんて、だいきらいなのだぁ!」ベチーン

アライちゃん2「のだっ!」ビターン

アライちゃん3「ひぐっ…ぐすっ…!あらいしゃんに、あらいしゃんに…!」ゲシゲシ

アライちゃん2「いたいのだ!やめるのだ!おねーしゃんは、いだいんだぞぉ!」ジタバタ

アライちゃん3「あやまるのだ!ごめんなさいするのだ!みすてたことあやまるのだぁ!」ゲシゲシ

アライちゃん2「いいかげんにするのだぁ!あらいたっくる!」ドゴォ

アライちゃん3「うぎゃあ!」ガシャーン

アライちゃん2「そんなにはんこうすると、つぎににげるとき、もうたすけてやらないのだ!」ゼェハァ

アライちゃん3「…!」ハァハァ

アライちゃん2「そうだ…よくみたら、ふたがはんびらきなのだぁ、でられそうなのだぁ」

アライちゃん3「つ、つぎは、あらいしゃんがさきにうえにいくのだぁ!」ヨチヨチ

アライちゃん3は、半開きの蓋の真下へと移動した。

アライちゃん3「のだっ!のだっ!と、とどかないのだ…!」ピョンピョン

二足歩行でまともに立つ脚力すらまだない足で、どうやって一人で外に出ようというのだろうか。

アライちゃん2「あつかましいのだ!」ゲシ

アライちゃん3「のだっ!」

アライちゃん2「おまえなんかもうしらないのだ!あらいしゃんのふみだいになるのだ!」ノシカカリ

アライちゃん2は、妹を踏み台にし、蓋へ手を伸ばした。

食通の友人「それでですね、パン粉を…はい…はい。もしもし?え?コバエを黙らせろって?ええ、はい、わかりました。それじゃ、折り返し電話しますので…」ガチャン

アライちゃん3「んうぅぅううぅ~~~!やなのだ!あらいしゃんがでるのだあぁ!」バタバタ

アライちゃん2「こら!あばれるなぁ!ふみだいはあばれたらだめなのだ!」ゲシゲシ

アライちゃん2「ん…しょ…!」グイッ

アライちゃん2は、なんとか籠の上の口へと手をかけた。
そして、大きな尻尾を籠の上へと出す。

アライちゃん2「これで、おさらばなのだぁ!」

アライちゃん2は、尻尾をぴんと立て、尻を籠の外へと出すことができた。

アライちゃん2「はぁはぁ、あとちょっとなのだぁ!」グイグイ

アライちゃん3「やなのだぁ!あらいしゃんも、おうちにかえるのだぁ!」ガシッ

なんと、アライちゃん3は今にも脱出しそうなアライちゃん2の足を掴んだ。

アライちゃん2「はなすのだ、このできそこない!あらいしゃんは、いだいなんだぞぉ!」バタバタ

アライちゃん3「あらいしゃんもいっしょにかえるのだぁ!ひとりだけずるおのだぁ!」グイグイ

アライちゃん3は、文字通り姉の足を引っ張って、脱出を阻害している。
本人にその気があろうがなかろうが、姉の足枷となっている事実に変わりはない。

アライちゃん2「うざいのだ!」ゲシィ

アライちゃん3「ぴぃ!」ボトッ

アライちゃん2は、なんと妹の顔面を…いや、目をめがけて蹴りを放った。
目潰しをくらった妹は、再び籠の底へ突き落とされた。

アライちゃん2「はぁはぁ、これでああしでまといはいなくなったのだぁ」ゼェハァ

アライちゃん2「しっぽさえでれば、もう…」

そして、その左右に揺れる大きな尻尾を…
大きな手が、ガシリと握った。

風呂入ってきます

途端に、アライちゃん2の顔から血の気が引く。
尻尾に感じるこの圧力はこれで2度目だ。

アライちゃん2「あ…う…」プルプル

食通の友人「…俺も悪かったな」

アライちゃん2「え…」

食通の友人「さっきから『殺すぞ』とか言ってる割には、実行に移さないし。口だけ野郎だ俺は。反省しなくっちゃあな~…」ニギニギ

アライちゃん2「は…はなすのだ…おねがいなのだ…あらいしゃんは、ただおうちにかえりたいだけなのだ…」プルプル

食通の友人「さっき逃げるなって言ったよなァ!?騒ぐなって言ったよなァ!おとなしくしろっつったよなあぁ!」グググ

アライちゃん2「いだいいだいいだいしっぽがいだいのだぁ!」

食通の友人「フゥーッフゥーッ、生かしておいてやってると思ったら付け上がりやがって…もー許さねェ」
フーッフーッ

アライちゃん2がガチでゴミなのだすぎてほんとツボに来る
どんな最期を迎えてくれるのか楽しみっす

アライちゃん2「た、たす…け…そ、そうだ、あ、あらいしゃんを、たすけて、くれたら、お、おいしい、おやさいを、あげるのだ」ガチガチブルブル

食通の友人「フゥーッフゥーッ…」ニギギギギ

アライちゃん2「このいえに、はいるとき、お、おいしそうな、おやさいの、はたけが、みえたのだ」ガチガチブルブル

食通の友人「…」

アライちゃん2「そ、そのおやさい、あらいしゃんが、おまえに、はんぶんくれてやるのだ、だ、だからはなすのだ」ブルブル

食通の友人「それうちの家庭菜園」

アライちゃん2「か、かて、な、なんなのだ?」

食通の友人「そっかー…。逃がしたら、半分持ってくのかー。そっかー…」

アライちゃん2「な、なにいってるのだ、はたけは、みんなのものなのだ」

食通の友人「^^#」

アライちゃん2「と、とりひき、なのだ、あらいしゃんは、かしこいのだ、だから、た、たすけるのだ」ガチガチブルブル

食通の友人「まあいいや…それより、ちょっとダンスの練習に付き合ってくれよ」

アライちゃん2「だ、だんす…?」

食通の友人「ああ。今ちょっとダンスの練習してんだが、振り付けがどうにも覚えらんなくてさ。それに付き合ってくれたら、今は殺さないでおいてやる」

アライちゃん2「わ、わかったのだ、だ、だんす、するのだ」

食通の友人「オーケイ、シャルウィダンス」スッ

食通の友人はタブレットPCを取り出し、
YouTubeで動画を再生し始めた。

タブレットPCを片手で操作し、音量を上げる。
右手で、アライちゃん2の尻尾を握り、中吊りにしたまま。

アライちゃん2「だ、だんす、するから、はなしてほしいのだぁ!しっぽがいたいのだ!あたまにちがのぼってくるしいのだぁ!」ジタバタ

先程から中吊りにされているアライちゃん2の顔は真っ赤だ。血が上っている。

食通の友人「レッツスタート」ポチッ

ズッタンズッタンズッタンズッタン…

音楽が流れ始める。

アライちゃん2「しっぽいたいのだぁ!はなすのだああぁ!このままじゃだんすできないのだぁ!」ジタバタ

食通の友人「さーて、今度こそ。動画の通りバッチリ、振り付け覚えるぜー♪」



『純情~スンジョン~』DJ OZMA

https://youtu.be/KFpMipVzLs0


食通の友人は、音楽のリズムに合わせて体を上下し始める。

アライちゃん2の尻尾を握るその右手に、強く強く力を込めながら。

つづく

クッソ懐かしいもん持ってきたな
アライちゃんがどう取り乱すか楽しみ

『純情~スンジョン~』

この曲は大分前に流行った曲である。

その特徴的なダンスの振り付けが話題となり、結婚式や宴会の一発芸では大人気となった。

動画にもある通り、右手にタオルを持ち、頭の上に掲げて手首のスナップを利かせ、思い切り振り回すのだ。

そして、食通の友人は今、右手にタオルの代わりにアライちゃん2の尻尾を握りしめ、

この振り付けを再現しようとしている。

食通の友人は、籠へと近づき、中吊りになっているアライちゃん2の姿を妹へ見せつける。

食通の友人「よく見ておけ!姉妹のダンスを!」ヌッ

アライちゃん3「ひっ!?」ビクッ

そして、洗浄されて別の籠に移された後、意識を取り戻したアライちゃん1の前へ移動する。

食通の友人「よく見ておけ!俺に逆らった者の末路を!自分も逃げたらこうなることを目に刻んでおけ!」ヌッ

アライちゃん1「や、やめるのだ…いもーとをはなすのだ…」

アライちゃん2「あらいしゃん、このままじゃだんすできないのだ!はやくおろすのだぁ!」ブラーン

食通の友人「いくぜ!オーオォ!オーオォ!オーオォォォオー!!!」ブンブン

アライちゃん2「のだあああ!?」グルングルン

なんと、食通の友人は尻尾を握りしめ、アライちゃん2をブンブンと振り回した。

食通の友人「オーオォ!オーオォ!オーオォォォオー!!!」ブンブン

アライちゃん2「あぁ、ぁああああ!!」グルングルン

食通の友人の腕力は、鉈で親アライさんの骨盤をいとも容易く粉砕するほど剛力無双である。

握力たるや、リンゴを握りつぶすことなど造作もないだろう。

そんな怪力の持ち主が、小動物ほどの小ささの幼いアライちゃん2を、尻尾を握りしめ、
一切の手加減なく全力で振り回しているのである。

その遠心力たるや計り知れない。

尻尾を中心にブンブンと振り回されるアライちゃんには、尻尾から頭の方へと、強い遠心力がかかる。

皆さんは遠心分離機をご存知だろうか。

液体を多く含んだものを、端を回転軸にして高速で回転させると、
遠心力により液体内の物質が外側へと分離されるのだ。

尻尾を握られ、グルングルンと回されるアライちゃん2は、冗談でも何でもなく遠心分離されていた。

体内の血液がすべて頭部へと集中していく。
頭部の毛細血管内の圧力はパンパンになっており、静血流の逆流を防ぐための静脈弁は完全に機能を失っている。

アライちゃん2の顔面は熟れたトマトのようにパンパンに赤く膨れ上がっている。

目は完全に充血し、血圧上昇によって破裂した鼻の粘膜からは止まることなく鼻血が吹き出す。

部屋の白い壁に、アライちゃん2の鼻から飛び出した血飛沫が赤い線を作る。

アライちゃん2「ぐぅうぶぐぎゅぐぅううぅう!!!」

食通の友人は、その後もアライちゃん2の尻尾を握ったまま、激しいダンスの振り付けをこなしていった。

アライちゃん2はガクンガクンと上下左右に振り回される。

完全に白目を剥いており、真っ赤な顔面は紫色を帯びている。

鼻だけでなく、耳からも口からも血液が流れ出ている。
これらは全て、遠心力で急上昇した血圧に毛細血管耐えきれず破裂したことによる出血である。

体外ですらそうなのだ。
果たして毛細血管の塊である脳組織がどうなっているか…
ここに脳外科の医者がいない以上、誰も知る由はない。

アライちゃん3「ひ…あ…ぁああ…」ガチガチブルブル

アライちゃん1「やめるのだああ!あらいしゃんのいもーとがしんじゃうのだあぁ!」ガシャンガシャン

そして、再び例のフレーズが来る。

食通の友人は、明らかに千切れかかったボロボロの尻尾を振り上げ、頭の上に掲げる。

食通の友人「さあラストォ!オーオォ!オーオォ!オーオォォォオー!!!」ブンブン

アライちゃん2「」グルングルン

食通の友人「オーオォ!オーオ…」ブンッ

突如、ブチィッという音が鳴り、食通の友人の手からアライちゃん2の体の重さが消えた。

食通の友人「オ?」

その手には、フワフワの尻尾だけが握られていた。

尻尾を失ったアライちゃん2は、そのままハンマー投げの要領で投射され、
アライちゃん3のいる籠に向かって一直線に飛んでいく。
その速度は時速50キロをゆうに超えている。

そして、格子状の籠へと、顔面から真っ直ぐに突っ込み、衝突した。

ガッシャァンと大きな音が鳴り、その衝撃で籠が一瞬宙に浮いた。

涙を流しながら震えるアライちゃん3に、鮮血がどっと浴びせられた。

続きは後ほど

アライちゃん2「」グチャッ

アライちゃん2はそのまま床へ落下した。

アライちゃん2「」ビグンビグッビググッバタッバタタタタッバタバタバタタッ

そして横たわったまま、足をゴキブリのようにせわしなく動かしている。

食通の友人「あちゃーゴキガイジムーブしてやがる…。明日のアラジビフェスまで持たないかなこりゃ」

食通の友人「まーいいや、くたばったらくたばったで捨てればいいだけだ。ちゃちゃっと洗おう」ガシッ

アライちゃん2「」バタバタバタタッビグンビグッ

食通の友人は、流し台でアライちゃん2を、続いてアライちゃん3をざぶざぶと洗った。
例の器具を使い、口内と肛門まで洗浄した。



アライちゃん2「う゛…ぁ゛…」ピクッ

アライちゃん1「よかった、きがついたのだ!」

アライちゃん3「…」

空が夕暮れに染まった頃、アライちゃん2が手を動かした。

アライちゃん1「あらいさんのこと、わかるか?」ツンツン

アライちゃん2「…ぁ…」ビクッビクッ

アライちゃん3「…」フン

アライちゃん1「おなかすいたのだ…あのひとしゃんはぜんぜんたべものくれないのだぁ…」グーギュルルー

アライちゃん3「おなかすいたのだ!ひもじいのだー!」ジタバタ

アライちゃん2「」

3匹とも、体力も精神も限界に近付いている。

食通の友人「やあ」スタスタ

アライちゃん3「ひっ!」ビクッ

アライちゃん1「おねがいなのだ…おうちにかえしてほしいのだ……」

アライちゃん2「…のだぁ…」ピクピク

食通の友人「ふーむ…それじゃあ約束しよう。この中から一匹だけ…」

食通の友人「お母さんと過ごしていたところへ、かえしてやろう。ホントだぞ」

アライちゃん1「!ほ…ほんとなのか?」ピクッ

アライちゃん2「…えり…い…の…ぁ」ピクッ

アライちゃん3「お、おうちにかえれるのだ!やったのだ!」

食通の友人「10分後にまた来る。それまでに話し合って決めておけよ~」スタスタ

アライちゃん1「よかったのだ、ようやくおうちにかえれるのだ!」

アライちゃん2「…のあぁ…」

アライちゃん3「はやくかえって、ごはんいっぱいたべるのだ!」

アライちゃん1「?まつのだ、それじゃあらいさんがかえれないのだ」

アライちゃん3「なにいってるのだ?あらいしゃんがいちばんいいこなのだ、だからあらいしゃんがかえるのだぁ」

アライちゃん1「そんなのおかしいのだ!あらいしゃんがいちばんおねえしゃんなのだ!あらいしゃんはなぁ、いだいなんだぞぉ!」

アライちゃん2「………ぁいぉい…ぁぁぃあぅあ…ぃぃぅぉぁぁ…」

アライちゃん3「おかしいのはおねーしゃんなのだぁ!」

アライちゃん達は口喧嘩を始める。

アライちゃん2「あ、あぁい…ひゃんぁ…」

アライちゃん1「?」

アライちゃん2「ああいひゃんぁ、いいあん、はひほいのらぁ…!」ピクッ

アライちゃん1「なにいってるかわかんないのだ!」

アライちゃん2の目の焦点は明らかに合っていない。
手足も小刻みに震えており、口からはヨダレが垂れている。

アライちゃん2「ありゃい…ひゃんが…いひばん…ひからもひれ…ゆうかんれ…かひこいのらぁ…!」ブルブル

アライちゃん3「…!」

アライちゃん2「らから、あらいひゃんが…いひばん、たくまひく、いひられうのらぁ…!かえぅのらぁ…!」ガクガクブルブル

自分が一番力持ちで、勇敢で、賢いと主張するアライちゃん2。

アライちゃん3「そんなわけないのだぁ!」

アライちゃん3「おねーしゃんは、あらいしゃんをだましたのだ!うそつきなのだ!えんまさまにしたぬかれればいいのだ!」

アライちゃん2「らに…いっへるのら…おまえが、のろのろひへははら…あらいひゃんが、かわいひょうらめにあっはのら…」

アライちゃん3「だまるのだぁ!」ドガッ

アライちゃん2「いひゃいいいぃぃ!」ビクッ

アライちゃん3「おねーしゃんは、もうしっぽもないし!」ゲシィ

アライちゃん2「ひ、あ…!」

アライちゃん3「からだも、うごかないのだ!」ゲシィ

アライちゃん2「やめぅのら!いひゃいのぁ!」

アライちゃん3「おまけにさっきからなにいってるかわからないのだ!あたまもおかしいのだ!」ゲシィ

アライちゃん2「のらぁっ…!」

アライちゃん3「おまえなんかもう、いきていけないのだ!」ハァハァ

アライちゃん3「おねーしゃんはもう…!『がいじ』なのだぁ!」

アライちゃん2「…ひがう、のらぁ…」

アライちゃん1「ちがわないのだ!おまえはすぐしぬのだ!『がいじ』なのだ!」ゲシィ

アライちゃん2「がいひひゃらいのらぁ
…!あらいひゃんは、てんひゃいひなのらぁ…!」ガグガグビクビク

アライちゃん3「がいじ!がいじ!がいじぃぃっ!がいじなんて、しんじゃえばいいのだぁ!」

食通の友人「10分経ったぞ。誰に決まったんだ?」ヒョイ

アライちゃん3「あらいしゃんなのだぁ
!」

アライちゃん1「!?…ちがうのだ、あらいしゃんなのだ!」

アライちゃん2「あらいひゃん…が…はえぅのらぁ…」ガグッビググッビグンビグッバタバタバタタッ

食通の友人「決まってないじゃねーか。残念だなぁ…お前らが約束破ったんだからな」

アライちゃん1「まつのだぁ!あらいしゃんがいちばんおねーしゃんなんだから、かえれるにきまってるのだぁ!」

アライちゃん3「ちがうのだ!あらいしゃんがいちばんかわいいのだ!だからあらいしゃんがいきてかえるのがいちばんいいのだぁ!」

アライちゃん2「…あぁぃ…ひゃんが…いひばん…あひゃまいいのらぁ………」ビグンビグッビググッ

食通の友人「タイムオーバーでーす。もう聞きませーん」スタスタ

そう言うと、食通の友人は部屋から出ていってしまった。

アライちゃん1「…」

アライちゃん2「」ピクピク

アライちゃん3「…!」ワナワナ

アライちゃん1「なんで…なんでおまえたち、じゃましたのだ!おまえたちのせいで、せっかくのちゃんすがだいなしなのだぁ!」ベシィ

アライちゃん3「うるさいのだ!おねーしゃんのせいなのだ!おねーしゃんなんか、ごみなのだぁ!」ベシィ

アライちゃん1「ごみっていったほうがごみなのだぁ!」ベシィ

アライちゃん2「…あぁい、ひゃん…も、いひははっは…のらぁ…」

アライちゃん3「がいじはだまってるのだ!」ゲシィ

アライちゃん2「ぎびっ!」

アライちゃん1「はぁ…はぁ…」

アライちゃん3「はぁ…はぁ…」

アライちゃん1「…ねむいのだ…」ムニャムニャ

アライちゃん3「…いつも、このくらいのおそらのとき、おかーしゃんがこもりうたをうたってくれたのだ…」

アライちゃん2「…」ピクピク

アライちゃん3「………」

アライちゃん2「…」

アライちゃん1「おかーしゃん…おかーしゃん…!」ウルウル

アライちゃん1「ぐすっ…!おかーしゃあん!おかーしゃーーーんっ!びえええんっ!」ビエエエエン

アライちゃん3「うわああぁぁん!おうちかえりたいのだぁ!おかーしゃんといっしょに、かえりたいのだぁ!」ビエエエエン

アライちゃん2「みんな…れ…まら…あひょっびひゃい…のらぁ…!」プルプル

アライちゃん1「ひぐっ…ぐすっ…」シクシク

アライちゃん2「…」ピクピク

アライちゃん3「うっ…うぅ…」シクシク

アライちゃん1「…」

アライちゃん2「…」

アライちゃん3「…たまにはけんかしておころー…」

アライちゃん1「…なきがおみたらなぐさめよぉー…」

アライちゃん2「とび…ひ…ぃぉ…ぁ…おひぇ…ぉ…ぁ…」

アライちゃん3「みじかめにしてー…♪」

アライちゃん達は、母親から教わったという、子守唄を歌い出す。
身を寄せ合い、体を温め合いながら。

アライちゃん1「きれいなものさがしにゆこー♪」

アライちゃん2「おぃひぃものぉ…ひゃくひゃん…はべよ…」

アライちゃん3「つまりはこれからもどうかよろ…」

食通の友人「うるせーぞてめーら!黙って寝てろ!」ガラッ

アライちゃん3「ひっ!」ビクッ

アライちゃん1「!ひ、ヒトしゃん、さっき決まったのだ、かえるのはこのあらいしゃんできまっ…」

食通の友人「次に日が上るまでに声出した奴は、そこのガイジと同じくらい痛め付けるぞ。約束しよう」

アライちゃん1「」ビクッ

アライちゃん2「」

アライちゃん3「っ…」ビクッ

食通の友人「いいか、俺は約束は守る男だからな」スタスタ

アライちゃん1「…」

アライちゃん2「…」

アライちゃん3「っ…」ウルウル

そうして日が暮れる…。

果たしてアライさんの子供達は、なぜ生け捕りにされたのか?

なぜ下剤と嘔吐剤を飲まされ、口と肛門まで洗浄されたのか?

そして食通の友人がさらっと口にした「アラジビフェス」とは、一体何なのか?


…すべてはまだ、謎に包まれている…。

つづく

~翌朝~

アライちゃん1「のど!のどがかわいたのだああぁぁ!」

アライちゃん2「」

アライちゃん3「みずのませてほしいいのだあああ!」

食通の友人「うるせーぞてめえら!」ガチャ

アライちゃん1「ひっ、ヒトしゃん!あらいしゃんたち、みずのまないと、し、しんじゃうのだぁ」

アライちゃん2「」

アライちゃん3「おみずのませろなのだぁ!」

食通の友人「ふむ…全員か?」

アライちゃん1「あたりまえなのだぁ!」

アライちゃん2「」

アライちゃん3「みんなみずのまなきゃしんじゃうのだ!」

アライちゃん2「…み…」ピクピク

食通の友人「じゃあ、そこのくたばりかけの奴にもか?」

アライちゃん1「あたりまえなのだ!いもーとはだいじなかぞくなのだ!」

アライちゃん2「…ず…」

アライちゃん3「はやくしろなのだ!おねーしゃんがしんじゃうのだぁ!」

昨晩までは喧嘩していたアライちゃん達も、仲良しに戻ったようだ。
互いを思いやる心、これこそフレンズの絆といえるだろう。

食通の友人「そうだな…2匹にだけ飲ませてやろう。って言ったらどうする?」

アライちゃん1「あらいしゃんにのませるのだ!」

アライちゃん2「…ほ…ひぃ…の…ら…」

アライちゃん3「あらいしゃんにもよこせなのだ!」

食通の友人「2匹つったろ。どいつとどいつだよ」

アライちゃん1「じゃあ、あらいしゃんと、そこのいちばんしたのいもーとによこすのだ!」

アライちゃん2「!?」

アライちゃん3「そうなのだ、それがいいのだ!」

食通の友人「大事な妹じゃなかったのか?」

アライちゃん1「こんながいじ、もうほっといてもしぬのだ!しげんのむだなのだぁ!」

アライちゃん2「…がいひ…ひゃ…ないのらぁ…」ピクピク

アライちゃん3「がいじにやるみずはないのだ!」ゲシィ

食通の友人「じゃあ1匹だけだったら?」

アライちゃん1&3「「あらいしゃんによこすのだぁ!」」

アライちゃん2「…す…のらぁ…」

アライちゃん1「ああっ!またいもーとがはんこうしたのだ!おーぼーなのだぁ!」

アライちゃん3「おねーしゃんこそ!こういうときは、いもーとにゆずるのがおねーしゃんなのだぁ!」

アライちゃん2「あ…あら…しゃ…も…」

アライちゃん1&2「「がいじはさっさとひからびるのだ!」」ゲシィ

アライちゃん2「」ピクピク

食通の友人「はー…もうこのくだり飽きたわ。今のは全部例え話だよ。…1晩かけて水抜きしたんだ、ここでやったら水の泡ってもんだ」

アライちゃん1「はぁ!?う、うそなのだ!?だましたのだ!?」

アライちゃん3「ひどいのだ!ゆるさないのだ!」

アライちゃん2「おね…が…みず…くだ…さ…」

食通の友人「それよりもっといいもんがあるぞ」

食通の友人は、アライちゃん達が入った籠を持ち、ガレージへ移動する。

食通の友人「これからいいとこに行くぞ」

アライちゃん1「なんなのだ…?」

食通の友人「美味しいものが、いーっぱいあるところだ。ホントだぞ」

アライちゃん2「!」

アライちゃん3「す、すごいのだ!あらいしゃんもたべていいのか?」

食通の友人「ああ、アライさんも食べていいんだぞ。ホントだ」

アライちゃん2「みず…のみ…ぃ…のぁ…」

食通の友人「(無視)それじゃ、出発するぞ」

食通の友人は、籠を車に積む。
籠の隣には、段ボールとクーラーボックスが積まれている。

アライちゃん1「おいしいもの、たくさんよこすのだ!」

食通の友人「ああ、おいしいもの、3匹分あげるぞ」

アライちゃん3「ほんとなのだ?さっきみたいに嘘じゃないのだ?」

食通の友人「さっきのは嘘じゃなくて例え話ってもんだ。ああ、俺は約束は守る男だ。っつーか、お前らごときに嘘ついてもしょうがねーだろ」

アライちゃん1「ところで、となりのはこからいいにおいがするのだぁ」クンクン

クーラーボックス「」

アライちゃん3「いいにおいなのだぁ、くわせるのだぁ!」ガシャンガシャン

食通の友人「こらこら、つまみ食いはダメだぞ。それにまだ調理の途中だ、向こうに行ってからもっと美味しくするんだぞ」

アライちゃん1「うぅ…いますぐたべたいのだぁ…」ヨダレダラダラ

食通の友人「さて、行くぞみんな。美味しいもの目指して出発だー!」

アライちゃん1&3「「おー!」」

アライちゃん2「…ぉ…」

こうして1人と3匹と1皿を乗せたワンボックスカーは出発した。



~会場~

受付「ようこそ、こちらアラジビシェフ専用受付となります。チケットはお持ちでしょうか?」

食通の友人「はい、こちら」

受付「ショクエモンP様ですね。本日の料理、楽しみにしております」

食通の友人「ども」

受付「それで、そちらの籠に入ってるのが…」チラッ

アライちゃん1「はやくくわせるのだー!」ガシャガシャ

アライちゃん2「みず…み…」

アライちゃん3「きのうからなんにもたべてないのだー!さっさとくいものよこすのだ!」ガシャガシャ

食通の友人「ご覧の通りです。あと、こっちのクーラーボックスも」

受付「わかりました。では、こちらの品質検査室へお預けください」

食通の友人「はい、おなしゃす」スッ

受付「お預かりします」ヒョイ

そう言い、受付はアライちゃん達の入った籠をスタッフに渡す。

アライちゃん1「なんなのだ?これからたべものがたくさんあるところにいくのだ?」

食通の友人「そうだよ」

アライちゃん3「おみずものめるのだ?」

食通の友人「飲めるかどうかは運次第だが…まあ、水を貰えるのは確かだ」

アライちゃん2「…から…だ…いひゃいのら…しっぽも…なおひへ、ほひぃのら…」

食通の友人「(無視)それじゃ、パーティー会場で会おうぜ!」

スタッフは、籠を運んでいった。

続きは後ほど

~検査室~

スタッフ「よいしょ」ガコン

スタッフが部屋へ籠を運び込み、静かに置いた。

アライちゃん1「うっ…なんだここは、さむいのだ…。ここにたべものがあるのか?」キョロキョロ

アライちゃん2「」ガチガチブルブル

アライちゃん3「くしゅんっ…。…!?あ、あれは…!」

スタッフ「おっと、ショクエモンPから、この部屋の中はあまり見せるなって言われてたっけ。よいしょ」バサッ

スタッフは、黒い布を籠へとかけた。
布で覆われた籠の中で、アライちゃん達は食事への期待を胸に抱く。

アライちゃん1「!?なんなのだ?まわりがみえないのだ!」キョロキョロ

アライちゃん3「ちょっとみえたのだ。あらいしゃんのおともだちが、いっぱいおひるねしてたのだ」

アライちゃん1「おひるね?」

アライちゃん3「あらいしゃんたちが、そこのがいじみたいに、いっぱいおひるねしてたのだぁ」

アライちゃん2「がい…ひ…ひゃ…ない…」ピクピク

『そこにだれかいるのだー?』

アライちゃん1「!あらいしゃんのこえがするのだ!」

『助けるのだ!嫌なのだ!そんなの刺されたら痛いのだぁ!』

『こら!大人しくしろ!』

アライちゃん1「なんかきこえるのだ…」

アライちゃん1「そういえば、このおへや、あらいしゃんのなかまのにおいがするのだぁ」クンクン

アライちゃん3「ほんとなのだ!おともだちがいっぱいいるのだぁ!」クンクン

アライちゃん1「きっとあらいしゃんたちのぱーちーなのだ!みんなでごはんたべるのだ!」

アライちゃん3「たのしそうなのだぁ」

スタッフ『はい次、ショクエモンPの持ち込みアライさん』

バッと黒い布が取り除かれる。
周りには、スタッフ数名と、検査用の道具、簡易シャワーがある。

アライちゃん1「ごはんなのだー?」

スタッフ1「生きたままか。それじゃあウィルス、寄生虫は無し、と」カキカキ

スタッフ2「あとは…。丸ごとか…それじゃあ、胃カメラと、腸内撮影か。ほら、あーんして」

アライちゃん1「たべものなのだ?あーん」

アライちゃん3「あっ!ずるいのだ!あらいしゃんもなのだ!あーん」

2匹のアライちゃんは口を空ける。

スタッフ1「…ん?そっちのは生きてるのか?」

アライちゃん2「」ピクピク


スタッフ1「生きてますが、体調悪そうですね。病気になってたりしませんかね?」

スタッフ2「採血しておくか」ブスッ

アライちゃん2「ぎひっ…」ビクッ

スタッフ1「血液検査の間、こっちの奴らの管内検査済ますか」

アライちゃん1「あーんなのだ」

アライちゃん2「」

アライちゃん3「はやくごはんとおみずよこすのだー!」

スタッフ1「はい胃カメラ」ズボォ

アライちゃん1「もごぉ!?」

アライちゃん2「おごっ…」

アライちゃん3「もごおぉっ!」

スタッフ1はアライちゃん達の口に胃カメラを挿入した。

スタッフ1「ふむ…胃カメラよし。超音波検査しましたが、腸も完璧です」

スタッフ2「血液検査完了。問題なし。それじゃ洗浄~」

胃カメラが口から引き抜かれる。

アライちゃん1「げほっごほっ!こんなのごちそうじゃないのだぁ!」プンスカ

アライちゃん2「」ピクピク

アライちゃん3「あらいしゃんをいじめるなー!」プンスカ

スタッフ3「はいはい、じゃあお湯シャワーします」ジャー

スタッフ3はアライちゃん達にシャワーを浴びせ、全身をくまなく洗浄していく。

アライちゃん1「みずっ!みずなのだあああああああああ!あーん」アングリ

アライちゃん3「のどかわいたのだ!いっぱいのむのだ!あーん」アングリ

アライちゃん2「」パクパク

スタッフ3「おっと、口塞ぎ忘れてた」

スタッフ3はシャワーを止める。

アライちゃん1「なにするのだ!もうすこしでのめたのだ!」

アライちゃん3「のどからからなのだぁ!」

スタッフ1「はーいガムテープ」ペタッ

スタッフ1は、3匹のアライちゃんの口を、ガムテープで塞いでしまった。

アライちゃん1「むぐっ!?」

アライちゃん2「」

アライちゃん3「んぐむむー!」

スタッフ3「はーい洗浄開始」ジャー

スタッフ3は、アライちゃん達丁寧に…とはお世辞にも言えない、雑な洗い方で洗浄した。

スタッフ3「ドライヤー」ゴワー

そして、3匹を乾かした。

アライちゃん1「もごご…!」

アライちゃん2「」

アライちゃん3「んぐむむ…!」

スタッフ1「そんじゃガムテ剥がすか」ベリッ

アライちゃん1「のだあぁ!」

スタッフ1は、アライちゃんの口に貼り付けていたガムテープを、一切手加減無しで、すぐに剥がした。

アライちゃん2「」ベリッ

アライちゃん3「のだあぁ!」ベリッ

スタッフ1「…ん?そこの奴、呼吸止まってないか?」

アライちゃん2「」ビググッビグンビグッバタバタバタタッビグンビグッバタバタバタタッ

スタッフ2「うわ!ハエガイジムーブしてやがる!キモ!」

スタッフ3「おいおい、笑い事じゃないだろ…いや笑い事か」ハハハ

アライちゃん2は深刻な運動障害を負っており、鼻から呼吸することが困難になっていたようだ。

スタッフ1「こういうときはどうすれないいんだ?」

スタッフ2「背中を叩こう」バンッ

アライちゃん2「」ビグッ

アライちゃん2「はーはーはーはーはーはーはーはーはーはーはー、ぜはっはーはーはーはーはーはーはーはーはーはー」

スタッフ3「息を吹き返したな」

アライちゃん1「ひっ…はっ…から、だ、が…おもい、のだ…」ピクピク

アライちゃん3「ぐるじぃ…」ピクピク

アライちゃん1と2の体は、痙攣を始めている。

スタッフ1「脱水症状か?このままじゃショーまでもたないぞ」

スタッフ2「んじゃー生理食塩水を静脈注射しとこう」ドシュゥ

アライちゃん1「んぎっ!」ドスッ

アライちゃん2「」ドスッ

アライちゃん3「のだぁ!?」ドスッ

アライちゃん達は、生理食塩水を大量に注入された。
まともに健康管理をする気があるなら、正気の沙汰でない行為だ。

アライちゃん1「ぉ…ぁ…」ブルブル

アライちゃん2「」

アライちゃん3「の…だぁ…」ブルブル

スタッフ1「これでフェスまでは持つだろう。さ、検査完了」

アライちゃん達は、再び黒い布を被った籠へと入れられ、運ばれていった。



腕の脈へ一気に生理食塩水を注ぎ込まれたアライちゃん達。

どうやら、それでもなんとか水分補給にはなったらしい。

しかし、生理食塩水の静脈注射と水を飲ませること
…水を飲ませた方が、ずっとコストが安上がりで、安全なはずだ。

一体なぜ、こんな回りくどいことをされたのか…。

アライちゃん達は、無事にたくさんのご馳走へとゴールインできるのか?



つづく

アライさんは疑問の時は「~なのか?」としゃべることもあるので参考までに
(例 12.1話「このままつけるんじゃだめなのかー?」)

アライちゃん1「…の…だぁ…」ピクピク

アライちゃん2「」

アライちゃん3「なの…だぁ…」ピクピク

しばらく失神していたアライちゃん達だったが、水分が体に浸透してきたのか、
意識を取り戻していった。

アライちゃん1「うぅ…すこし、らくになったのだ?」

アライちゃん2「…ぅ…」

アライちゃん3「なんだったのだ…」

すると、籠の外から美味しそうな匂いが漂ってくる。

『さて、後はクーラーボックスの中身だな。毒物検査用意』

『ってか、毒物検査って必要なんかね?』

『知らないのか?毒物検査無かった頃のアラジビフェスでは、アラ信のバイオテロで6~7人病院送りになったんだぞ』

『はぇ~…。うん、オッケーっす』

アライちゃん1「なんなのだ!?おいしそうなにおいなのだ!あらいしゃんにもくわせるのだぁ!」ガシャガシャ

アライちゃん3「たべものいっぱいあるっていってたのだ!あらいしゃんたちもたべれるっていってたのだ!よこすのだぁ!」ガシャガシャ

現在時刻はAM10時。

アライちゃん達は、まる1日何も食べていなかった。

アライちゃん1「ぅ…ぁ…しんじゃう…のだ…」ピクピク

アライちゃん3「ご…は…」ピクピク

アライちゃん2「…」

もはや空腹がどうこうというレベルではなく、栄養失調により命の危機に瀕していた。

アライさんの子供は、赤ちゃんのころは仔ウサギ程度の大きさ…体長10cmでありながら、
たった1~2年で人間の少女ほど…150センチの大きさへと成長する。

つまり、3日で1センチ程背が伸びるという恐ろしいほどの成長スピードをもつ。

また、こんなに小さな頃から言語を話せるほどの知能を持つため、
脳が消費するカロリーもそれ故に馬鹿にならない。

よって、アライちゃん達は大変食欲旺盛なのである。

アライちゃん達は、見た目だけならそれほど痩せ細ってはいなかった。

これまで畑荒らしやゴミ荒らし、母親が狩った小動物の死骸から蓄えた脂肪分がまだ残っている。

危機というのは、血糖値が足りないのである。

少しずつアライちゃんの体内では脂肪の分解が始まっているが、それにより得られるカロリーが、
基礎代謝の消費に追い付かないのだ。

細胞から活動エネルギーが減っていき、
アライちゃん達の意識は朦朧としていた。

アライちゃん1「なにか…なんでもいいのだ…なんでも…」チラッ

アライちゃん3「なにか…」チラッ

アライちゃん2「…あらい、ひゃんも…はえはい…のら…」

アライちゃん1「…」ゴクリ

アライちゃん3「…」ゴクリ

アライちゃん2「な…なんなのら…その、めは…」

アライちゃん1と3が次女へ向ける眼差しは、今まで見たこともない表情だった。

フレンズとして植え付けられた人間の理性が剥がれ落ちたような…
餓えた野生動物の目だ。

アライちゃん1「…はぁ、はぁ…!」ジュルリ

アライちゃん3「ごはん…ごはん…!」ジュルリ

アライちゃん2「こ…こわいのら…ひょんなめれ…みないれ…ほひぃのら…」

水を指すようで悪いが飢餓の時は脂肪より先に筋肉から
消費するぞ?まぁアライさんに人間のような機能は無いと
思うが念のために言いました

アライちゃん1「…!」

アライちゃん3「…っ…」

アライちゃん1「だめ…なのだ…!」プルプル

アライちゃん3「おねーしゃあん…!」ウルウル

アライちゃん1「いもーと、まつのだ、だめなのだ、あとちょっと…あとちょっとだけ、まつのだぁ…!」プルプル

アライちゃん3「おなか、ぺこぺこなのだぁ…!もう、がまん、できないのだああぁ…!」グスングスン

アライちゃん1「ごはん…ごはんが、あらいしゃんたち、さんにんを…まってるのだ!」

アライちゃん3「…!う、ううぅぅぅ!」

アライちゃん1「こらえるのだ…!ううぅうぅ…!」ガクガクブルブル

アライちゃん3「っ…!」グスングスン

アライちゃん2「…」

アライちゃん2「あ、あり…が…と…なのら…いもーと、おねーしゃん…」

>>194

     ,へ、        /^i
     | \〉`ヽ-―ー--< 〈\ |
     7   , -- 、, --- 、  ヽ
    /  /  \、i, ,ノ    ヽ  ヽ
    |  (く._・_)  〈く_・)  )  |
   /  <  / ▼ ヽ    >   、
  く彡彡   ,.へへ、    ミミミ ヽ
   `<   Yュlエl'ィン     ミミ彳ヘ
      >  くェェ/´ __/   \
     /         7      \

     |        /

アライちゃん達は、禁忌となる行動を思い止まったようだ。
ということは、恐らくまだまだ死には遠いということなのだろうか。

やがて、籠の外から音楽と共に、大きな声が聞こえてくる。

『お集まりの皆様!ようこそおいでくださいました!これより第13回、アラジビフェスを開催致します!』

\オオォオォオォー!/

『みんな、腹空かしてきたかー?胃薬持ってきたかー!』

\ミンミーーーーーーー!/

アライちゃん1「なんかにぎやかなのだ…」

アライちゃん3「きになるのだ…」

『ステージクッキングは10時30分から開催です!それまでしばらくの間、物品販売ベースでのショッピングをお楽しみください!』

やがて、籠の外から一斉に、たくさんの料理の匂いがたちこめてきた。

アライちゃん1「…!すごいのだ!たくさんいいにおいがするのだ!」

アライちゃん3「あらいしゃんたちもおそとにでるのだぁ…!」

『おーいお前ら』

聞き覚えのある声が聞こえた。

アライちゃん1&2&3「!!!」

食通の友人「ハロー」

食通の友人は、皿を3つと、鍋を持っていた。

アライちゃん1「そ、そのおなべから、いいにおいがするのだ!」

アライちゃん2「の…だぁ…」

アライちゃん3「おねがいなのだ…あらいしゃんたちに、それをぜんぶよこすのだ…」

食通の友人「ああ、そのつもりだよ」

アライちゃん1&2&3「!!」

食通の友人は、器を並べると、鍋から液体を器へと盛っていく。

食通の友人「待たせたな。さ、ごはんだぞ。美味しいスープだ」

器に注がれた液体からは、食欲をそそる匂いが漂ってくる。

そして、3つの器を籠の中へ入れた。

アライちゃん1「いただきますなのだー!」ガバッ

アライちゃん2「…ぅ…ぁ…」プルプル

アライちゃん3「おいしいのだ!おいしいのだあああああ!」ペチャペチャ

アライちゃん達は、物凄い勢いで器の上のスープを飲み干していく。

スープと呼ばれた液体は、ドロっとしており、非常に濃い味である。

というか、料理を知るものならば、これをスープとは呼ばない。

相応しい呼び方は、「ソース」である。

アライちゃん1「おかわりなのだ!」ケプ

アライちゃん3「はぁはぁ、いままでがまんしたぶん、もっともっとよこすのだぁb」

アライちゃん2「…は…はっ…」ペロペロ

食欲の友人「ん?そこの奴が飲み終わってないな…」

アライちゃん1「いもーとはきっともうおなかいっぱいなのだ!だからあらいしゃんによこすのだぁ!」バッ

アライちゃん2の器へ手を伸ばす姉。

アライちゃん2「!?」

アライちゃん3「おねーしゃんにあげるのはもったいないのだ!あらいしゃんによこすのだ!」バッ

同じく妹。

食欲の友人「させるかボケエエェ!」

食欲の友人は、籠の中へ手を突っ込むと、アライちゃん1と2を籠の壁へと押し付ける。

アライちゃん1「はなすのだああ!」ガジガジ

アライちゃん3「これっぽっちじゃたりないのだぁ!」ジタバタ

食欲の友人「落ち着けよ…もっとやるから」ガシッ

アライちゃん2「」プラーン

食欲の友人は、アライちゃん2と彼女のためのスープ(?)を籠の外へ出した。

食欲の友人「ほら、おかわりだぞ」コポポ

そして、籠の中の2つの器へスープを注いだ。


アライちゃん1「おいしいのだあぁぁ!」ペチャペチャ

アライちゃん3「しあわせなのだー!」ペチャペチャ

アライちゃん2「…おい…ひぃ…」ペロペロ

アライちゃん達は再び、物凄い勢いでスープ(?)を飲み干していく。
そのお腹はどんどん膨れていく。

アライちゃん2「…の…だぁ…♪」ペロペロ

食欲の友人「しっかしこいつ、飲むの遅いな」

先程も言った通り、アライちゃんは運動機能の障害で、鼻からうまく呼吸ができない。
スープを飲む間はほぼ呼吸が止まっているので、息継ぎが必要なのだ。
それに加え、全身の運動神経も危機的状況であり、
うまく飲むことができずにいた。

食欲の友人「よっと」ガシッ

アライちゃん2「!?」

食欲の友人は、アライちゃん2を掴むと、
スポイトの中へスープを吸い上げる。

食欲の友人「おせえんだよ!さっさと飲めオラァ!」ドシュゥ

アライちゃん2「!!?ごぼ、ぐぼっ!」ジタバタ

食通の友人は、スポイトを使って無理矢理アライちゃん2の口の中へスープを注ぎ込んだ。



アライちゃん1「いっぱいのんだけど…おみずじゃおなかいっぱいにならないのだ…」ケプ

アライちゃん2「」ピクピク

アライちゃん3「のみものじゃなくて、たべるものをよこすのだぁ!」

食通の友人「そうだな、そろそろ頃合いか」

『それでは皆様、いよいよステージクッキング午前の部、始まります!』

籠の外から、再び声が聞こえてきた。

『最初に華々しく先陣を切るのはこのお方!いきなりクライマックスだぁ!みんなお待ちかね、僕らのキチガイ野郎!ショクエモンPだぁ!』

\ワーーーーー!!/

食通の友人「よしきた。さ、ごはんにするぞ。先にステージで待ってるぜ」スタスタ

食通の友人は、銀の蓋が被さった大きな大きな皿の乗ったカートを押し、籠から離れていく。

~ステージ~

食通の友人「ハローハロー!ショクエモンPでーす!」ガラガラ

食通の友人がステージへ上がると、舞台の下からは大勢の観客の歓声が迎えた。

観客『ショックエモン!ショクエモン!ショクエモン!』

司会「えー、今回はいきなり1人目からの参加となりました。後の人たちのハードルが上がりそうですね!」

食通の友人「それはどうかな?舞台裏で他の参加者と話してたけどさ、みんなヤベー奴ばっかだよ」

司会「それは皆さんとっくにご存知です」

観客『アハハ…』

ステージの上には、ガスコンロ、流し台など、一通りの調理器具が揃っている。

流し台にはディスポーザーが取り付けられており、排水設備もカンペキだ。

司会「さて、本日のメニューは確か…」

食通の友人「おおっと待ちな!ネタバレはもう少し待ってくれ」

司会「おっと、そうでしたね。出来上がってからのお楽しみってことですか?」

観客「なんだー?」

食通の友人「ちょっと違うな…。ネタバレってのは、お客さん達へのでなく…この子達への、さ」チラッ

食通の友人は、舞台の袖(横側の、観客から見えない位置)へ目配せをする。

すると、ステージの横からスタッフが登場し、黒い布で覆われた籠をステージの端へ置いた。

観客「なんだありゃ。籠…?」ザワザワ

観客「おおっ!出たぞ!毎度お馴染みのライブキッチン!」

観客『ショークエモン!ショークエモン!ショークエモン!』

食通の友人「さ、お前ら。待たせたな。ご飯の時間だぜ。カモン!」パチン

食通の友人が指パッチンをすると、スタッフが籠の横の口をさっと開けた。

食通の友人「こっち来な!さっきのスープより、もっと美味しい料理を作ってやるぜ!」

『ほんとなのかー?』

籠の中から声が聞こえる。

『やったのだ!ずっとまってたのだー!やくそくどおりなのだー!』

そして籠の中から、アライちゃん1が顔を出した。

アライちゃん1「なのだー!」ヨチヨチヨチヨチ

アライちゃん3「なのだー!」ヨチヨチヨチヨチ

観客『ワアアアアアアアアーーー!FOO↑ーー!』パチパチパチパチ

拍手喝采が、アライちゃん達を出迎える。

つづく

乙です先ほどは…つい気になってツッコミをいれてしまい
誠に失礼しました

>>215
どもです
次に活かします、多分

アライちゃん2はほとんど寝たきりで指一つまともに動かせない全身まひのような状態だと想像しているんだけどあってる?

>>219
作中ではゴキガイジムーブしたり、器からノロノロとソースをすするぐらいはやってます

アライちゃん1「なのだー!」ヨチヨチヨチヨチ

アライちゃん3「なのだー!」ヨチヨチヨチヨチ

これだけでもうご飯三杯分はアラ虐欲が湧いてくる
ヨチヨチほんとキモくて嬲りたくなるわ

アライちゃん達2匹は、よちよちと歩き食通の友人の足下まで辿り着くと、
くいくいとズボンを引っ張った。

アライちゃん1「ごはんー!ごはんよこすのだー!」クイクイ

アライちゃん3「おなかぺこぺこなのだー!さっきみたいなの、もっとほしいのだー!」クイクイ

司会「あれ?何かやったんですか?お腹には何も入れないでおくと言ってましたが…」

食通の友人「ソースを少々。中まで味付けするためにね。ほらお前ら、こっちこい」ガシッ

アライちゃん1「のだー」

アライちゃん3「のだぁ~」

食通の友人は、アライちゃん1&3を掴み上げ、キッチンへ乗せた。

司会「ところで、持ち込みアライさんの数は3匹と書いてありますが、もう一匹は…?」

食通の友人「あー、まだ出て来てないか」スタスタ

食通の友人は、籠の上面の蓋を開け、アライちゃん2を取り出した。

アライちゃん2「…の…だぁ…」ピクピク

観客「おいあれ…しっぽが無いぞ」ザワザワ

観客「ピクピクしてるし…大丈夫なのか?」ザワザワ

司会「大丈夫なんですか?これ…」

観客も司会も、心配しているようだ。

食通の友人「安心したまえ、品質検査は通ったぜ★」

観客「ならオッケーだ!」ザワザワ

アライちゃん2「…の…ぁぁ…」

司会「ところで、どうしてこんな事に?」

食通の友人「いやぁ、昨日こいつと一緒にダンスの練習してたら、つい…ね」

司会「そのダンスとは?」

食通の友人「『純情 ~スンジョン~』だ。こんな風にな。オーオォ!オーオォ!オーオォォォオー!!!」クルクル

食通の友人は、右手を掲げて頭の上でクルクルと回した 。特にタオル等は持っていない。

アライちゃん2「ひぃいぃ!や、やめぅのぁ、もういひめらいれほひぃのらぁ!」

観客『ワッハハハッハハハハ』

司会「それでは、さっそくクッキングの方を始めましょうか」

アライちゃん1「まってたのだー!」

アライちゃん3「はやくおいしいごはんつくるのだー!」

観客『おぉ!?』ザワザワ

司会「ん?やけに乗り気ですね…。どういうことです?これから自分がどうなるか分かってんですか?」

食通の友人「ふふ、クッキングの前にこいつらに意気込みでもインタビューしてみたらどうだい?」

司会「それもそうですね。えーと、今の意気込みは?」スッ

アライちゃん1「もうおなかぺこぺこなのだー!きのうからずっとなんにもたべてないのだー!」

司会「おお…さすがショクエモンP、徹底的ですね」

アライちゃん3「ここには、おいしーものがたくさんあるってきいたのだ!」

ステージから下を見下ろすと、会場のあちこちに屋台ブースがあった。
観客達はあちこちの屋台から買った料理を容器に入れて持っている。

その料理は、どれも…
殆どが、肉料理である。

司会「はい。おいしいもの、たくさんありますねぇ!」

アライちゃん1「あらいしゃんたちも、たべられるってきいたのだ!」ワクワク

アライちゃん3「そうなのだ!あらいしゃんたちもたべていいっていってたのだぁ!」キャッキャ

2匹がそう言うと、観客席はどっと笑いの渦に巻き込まれる。

観客「あははっははは!なるほどなぁ!言葉の通りだぁ!」ヒヒヒ

観客「マジウケるわー!」ゲラゲラ

アライちゃん1「でもさっきからあらいしゃんたち、ぜんぜんごはんつくってもらえないのだ!うそなのか?」

観客「いーえ!嘘じゃありません!ショクエモンPの言葉に何一つ嘘はありません!」

アライさん達も食べられる(直球)

アライちゃん2「…しゃんにんぶん…つくっへ…くれるっへ…いっはのは…」プルプル

司会「え?何ですか?」

食通の友人「ああー気にしなくていいよ。こいつダンスの途中で思い切り頭ぶつけて以来、ガイジだから」

観客『ワハハハハ…!』

アライちゃん2「が、がいひひゃないのらぁ…!あらいひゃんは…へんひゃいひなのら…しまいでいひばんゆうひゅうなのらぁ…!」プルプル

観客「寝言言ってんじゃねーよガイジ!」

観客「鏡見ろガイジ!」

観客「何言ってるかわかんねーよガイジ!」

観客『ガ・イ・ジ!!!!ガ・イ・ジ!!!!ガ・イ・ジ!!!!』

アライちゃん2に対し、観客から差別的な表現のチャントが沸き上がる。

アライちゃん2「ひ…ひがうのらぁ…!けがひへる、らけなのらぁ…!」ヒグッグスッ

観客『ガ・イ・ジ!!!!ガ・イ・ジ!!!!ガ・イ・ジ!!!!』

アライちゃん2「おいひいごはん、はべはら、なおるのらぁ…!」シクシク

観客『ガ・イ・ジ!!!!ガ・イ・ジ!!!!ガ・イ・ジ!!!!』

アライちゃん2「ほっぽも、ひっほはえへふるのらぁ…!」

観客『ガ・イ・ジ!!!!ガ・イ・ジ!!!!ガ・イ・ジ!!!!』

アライちゃん2「らからおねがいらから…!がいひなんて…よばないれほひいのらぁ…!びええええん…!」ビエエエエン

観客『ガ・イ・ジ!!!!ガ・イ・ジ!!!!ガ・イ・ジ!!!!ガ・イ・ジ!!!!ガ・イ・ジ!!!!ガ・イ・ジ!!!!ガ・イ・ジ!!!!ガ・イ・ジ!!!!ガ・イ・ジ!!!!ガ・イ・ジ!!!!ガ・イ・ジ!!!!ガ・イ・ジ!!!!ガ・イ・ジ!!!!ガ・イ・ジ!!!!ガ・イ・ジ!!!!』

観客のノリ良すぎてJAXA

アライちゃん1「こわいのだ…」

アライちゃん3「がいじになったのが、あらいしゃんじゃなくてよかったのだぁ…」

アライちゃん2「いもーとまで…!ひどいのらぁ…!」

アライちゃん3「ひどいのは、あらいしゃんをみすててにげようとしたおねーしゃんなのだ!」

観客『アハハ…!』

食通の友人「さーてそんなガイジも、首から下は健常です。ささ、そろそろ料理を始めましょうか」

アライちゃん1「わーい!」ピョンピョン

アライちゃん3「はやくつくるのだぁ!」

食通の友人「では、まずは卵を割り、小麦粉と塩コショウとよく混ぜます」チャカチャカ

アライちゃん1「わぁ、もうたべていいのだ!」ピョン

アライちゃん3「いただきますのだ!」ピョン

アライちゃん達は、料理を作ってる最中のボールへ飛び込もうとする。

食通の友人「もーちょっと待ってな」ペシッ

アライちゃん1&3「「のだっ!」」ボテッ

食通の友人「さて、コンロではサラダ油を火にかけ、170度まで熱します」カチッ

コンロの上で、油が熱くなっていき、次第に泡立ち始める。

食通の友人「そして先程のボウルを、よーく混ぜます」マゼマゼ

食通の友人「まぜまぜ~」マゼマゼ

食通の友人「そしてこの中へ、俺特製のソースを少しだけ垂らしまーす」ポタッ

アライちゃん1「うう、もうがまんできないのだぁ!」ガバッ

アライちゃん3「たべるのだー!」バッ

今度はアライちゃん達をはね除けず、なんとボウルの中へのダイブを許してしまった。

べちゃっと音が鳴り、アライちゃん達の体がボウルの中の材料へ浸された。

なんということだ。
マトモに料理していれば起こるはずのない事態が発生してしまった。

アライちゃん1「はぁはぁ、たべものおっぱいなのだぁ!」ベチャベチャ

アライちゃん3「ぺろぺろ…」ピチャピチャ

司会「ああーっと!アライさん達に料理を邪魔されてしまったァー!」

観客「ああっ!おいおい、どうすんだこれ…」ザワザワ

観客「作り直しか?」ザワザワ

アライちゃん1「じゅるるっ…あんまりおいしくないのだ…」モグモグ

アライちゃん3「でもえいようなのだー」モグモグ

司会「あーもう収拾のつかないことに…」

食通の友人「丁度いい、そこのガイジも入れましょう」ヒョイ

アライちゃん2「のあぁ…!」ベチャッ

司会「ご乱心ですかーーッ!?」

アライちゃん達の体は、どんどん卵と小麦粉のペーストまみれになっていく。

司会「あの、これからどうするので…」

食通の友人「次はパン粉をまぶします」バッバッ

アライちゃん1「のだっ!?」

アライちゃん3「けほっ、こほっ…!」

司会「何事もなかったかのように続行しましたが…あの…」

観客「え?どうしたの?作り直さないの?どう見ても手遅れだろ…」ザワザワ

観客「ショクエモンPやっちまったなー…。動画撮って拡散しよ」パシャ

アライちゃん1「うぅ、まずいのだー!おまえいってたのだ!おいしいものいっぱいあげるって!」ペロペロ

材料のペーストはまだまだボウルに沢山残っている。

アライちゃん達が飲んでも、なかなか無くならない。

アライちゃん3「そうだ、おいしいものあげるっていったのだ!これのどこがおいしいものなのだ!ごみなのだぁ!」ペロペロ

アライちゃん1「ちゃんとやくそくまもるのだぁ!」

観客「うわ…大惨事…どうすんだこれ…」ザワザワ…

観客「いや…待て。もしかしたら、これも筋書き通りだとか…まさかな」

観客達は騒然としている。

食通の友人「安心しなベイビー、約束は守るよ」ヒョイ

アライちゃん1&3「「のだぁ?」」

食通の友人は、アライちゃん達3匹が入ったボウルを持ち上げ、コンロの前へ移動する。

アライちゃん1「おそらとんでるみたいなのだー!」キャッキャ

アライちゃん3「ゆーふぉーなのだー!びゅーん!」キャッキャ

アライちゃん2「…」ブクブク

アライちゃん2はペーストの中で溺れているようだ。

食通の友人「皆様、ご安心ください。ここまで全て、レシピ通りの流れです」

観客『おぉ!?』

食通の友人「さあさあこのボウルに居るのは、材料にまみれたアライちゃん3匹!」

食通の友人「そしてガスコンロには、バチバチと音を立てて跳ねる、アツアツのサラダ油ァーッ!」

食通の友人「今から宣言通り!約束通り!美味しい料理を…」ガシッ

アライちゃん3「のだぁ?」プラーン

食通の友人は、ビニール手袋越しにアライちゃん3を掴み、持ち上げると…

アライちゃん3「なんなのだ?」




食通の友人「…『あげよう』と、思いまァーーーーーっすッ!」





アライちゃん3「?」

観客『おおおぉぉぉ!?』ザワザワ

観客「あー!そういう意味かぁ!!っておい嘘だろおおぉ!?カメラカメラ!」

アライちゃん3「これからおいしいりょうりつくるのか?」

食通の友人「イエス」

食通の友人「皆さん、カメラの用意はいいですかぁ?それでは一緒に、カウントダウンしましょう!」

食通の友人「3!」

観客『3!』

食通の友人「2!」

観客『2!』

アライちゃん3「にー!」キャッキャ

食通の友人「1!」

観客『1!』

アライちゃん3「いーち!」キャッキャ

アライちゃん1「いちー!」ワイワイ

アライちゃん2「」ブクブク

アライちゃん1&3は、会場の楽しそうな雰囲気に飲まれ、一緒にカウントダウンしていた。

何が起こるかは分からない。
だけど、きっと楽しいことが起こって、
美味しい料理をお腹いっぱいたべられる。
そう思った。

食通の友人「ゼロおおぉぉッ!」パッ

アライちゃん3「のだ?」



食通の友人は、サラダ油が跳ねる鍋の上で、アライちゃん3から手を離した。


アライちゃん3の体が、重力に従って落下していく。

ドボンという音と共に、アライちゃん3はサラダ油の中へ落ちた。

じゅわあ、ばちばちと、油が跳ねる音が鳴り響く。

アライちゃん3「あああああああああああああづいのだあああああああああああああああああああ!!!!!!!!!」バシャバシャ

アライちゃん1「ひぃ!?」ビクッ

観客『YEAHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHH!!!!!!!!!』

ステージの上の大スクリーンには、キッチンを上から映した映像が流れている。

会場の誰もが、今この場で、前代未聞、世界初の料理が誕生したのを目の当たりにした。

アライちゃん3「のぁぁああああ!あづい!あづいあづいあづいあづいあづいあづい!!だずげでえええぇ!だずげでえええぇ!」バシャバシャ

アライちゃん1「な…なにやってるのだ!?このままじゃ、あらいしゃんのいもーとがやけどするのだ!」

アライちゃん1は、ボウルの上から顔を出し、真下で起こる阿鼻叫喚の地獄絵図を目撃していた。

アライちゃん3「い゛ぎぃぁああああああ!!!ぁ゛ぁあああああああああーーーーっ!」パチャパチャ

アライちゃん1「ヒトしゃん!はやくいもーとをたすけるのだああぁ!」

食通の友人「おや、助けたいかい?」

アライちゃん1「あたりまえなのだ!だいじないもーとなのだぁ!」

食通の友人「だったら…」ガシッ

アライちゃん1「のだっ!?」

食通の友人「てめぇが助けに行けや!!!おねーしゃんなんだろォァ!?美しい姉妹愛見せろや!!」グイイッ

アライちゃん1「や、やめるのだあ!こんなのおかしいのだ!や、やくそく、やくそくは!あらいしゃんたちはおいしいものいっぱいあるとこでおいしいごはんを…」ジタバタ

食通の友人「約束通り!美味しいものを、揚げるのだァーッ!」ポイッ

アライちゃん1「のだああぁ!」バシャァッ

なんと、アライちゃん1も続けてサラダ油の中へ投入してしまった。

アライちゃん1「いぎゃああああ!あづいあづいあづいいい!」バシャバシャ

観客『ワアアアアアアアア!!』ヒューヒュー

アライちゃん3「ぁ…じゅい…おねーしゃ…だ…ず…げ…」ピクピク

アライちゃん1「ああ、ぅぁあああ!」ムギュ

アライちゃん3「のだっ!?」ザブン

アライちゃん1「でるのだ!でるのだぁ!」バシャバシャ

アライちゃん3「ごぼごぼがばごびぼご!ごぼぼがばぼごご!」バシャバシャ

アライちゃん1は、アライちゃん3の上に乗り、妹を踏み台にして鍋から脱出を図った。
姉の踏み台になったアライちゃん3は、頭まで完全に油の中へ浸されている。

アライちゃん1「はぁはぁ、だ、だしつなのだぁ!」ピョンッ

アライちゃん1は、妹の背を蹴り、鍋のへりへ掴まる。
高温に熱された鉄の鍋が、アライちゃん1の手の皮膚を焼く。
その温度はサラダ油以上である。

アライちゃん1「あづいあづいあづいいいあづいあづいあづいいい!!!」ブルブル

それでも、アライちゃんは必死に熱さに耐え、妹を踏み台にし、体を油から引き上げていく。

アライちゃん1「でるのだあぁ!」バッ

そうしてようやく、体が半分以上、鍋のへりから外へ出た。
ここまでやったのだ。後は体を鍋の外へ傾かせ、重力に身を預ければ脱出できる。

食通の友人「おやおや、料理が落ちちゃうじゃないか」スッ

食通の友人は、菜箸でアライちゃん1の頭を掴む。

アライちゃん1「おねがいなのだたすけるのだあらいしゃんしにたくないのだあついのもうやなのだはなすのだあづいあづいあづいだずげでえええぇ!」ウルウル

アライちゃん1は、揚げ物料理の衣で全身が被われ始めている。
ただし、ボウルの中で材料がつかなかった顔面だけは、焼け爛れた皮膚が露出している。

食通の友人「こんがり揚げましょー」ポイッ

アライちゃん1「のだぁぁっ!」バシャーンッ

再びアライちゃん1は、油の中へ落とされた。

アライちゃん2「に…にげ、なきゃ…」ガクガクブルブルバタッバタバタビググッ

アライちゃん2は、ボウルから脱出しようと体を動かす。

しかしアライちゃん2の小脳は、すでに毛細血管の破裂で大きな損傷を受けており、体を思い通りに動かすことすらままならない。

アライちゃん2「な…なんれ…こんな…ひろいこと…ひゅるのら…」ガクガクブルブル

食通の友人「あー?なんでかって?」

アライちゃん2「あらいしゃんたひは…おいひいごひひょうが…いっぱいたべられるっへ…ひいへ…たのひみに…ひへはのらぁ…なのに、なんれ…」ガクガクブルブル

食通の友人「おや、言ってなかったか?このフェスが、何をする場なのか」

ここは先程まで、料理コーナーであったはずだ。
だというのに、何故か今不可解にも、アライちゃん達への虐待…いや、虐殺が公然と行われている。

読者の皆も、この状況に困惑し、なぜこんな非道な虐殺行為が行われているか…?
そもそもアラジビフェスとは何なのか、疑問に思っているところであろう。

…え?何?別にそんな事ない?
だいたいわかってた?

…なるほど、それは助かる。
理解が早くて助かる。

君たちが、このイベントの趣向を理解できる人間で、本当に助かる。

食通の友人「そうだ、この皿。さっきお前ら、中身を食べたがってたよな?」

銀の蓋が被さった大きな皿が、テーブルの上に乗っている。

食通の友人「オープン」パカッ

アライちゃん2「…!」

アライちゃん2は、皿の上に盛られた物体を見て驚愕する。
そこに乗っていたのは、照り焼きにされた…

アライちゃん2「お…おかー…ひゃん…!」ブルブル

母親の、丸焼きだった。

観客『オオオォォオオォオオ!』パチパチパチパチパチパチ

アライちゃん3「」ジュワワァァ パチパチッ…

アライちゃん1「た…ずげ…し…にた……ぃ…」ジュワアア

アライちゃん1の体の動きが、止まった。

食通の友人「このイベントはアラジビフェス。正式名称は『アライさんジビエフェス』っつうんだ」

アライちゃん2「じ、じび、え…」

食通の友人「つまりなァーッ!てめーら害獣をッ!ブッ殺して!食っちまおうっていうイベントなんだよォーーーッ!ヒャァーーァーハァーハハッハハァア!!」

観客『YEAHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHH!!!!!』

食通の友人「たくさんある美味しい料理も!食べられるのも!あげられるのも!全部てめーらアライさんなんだよォーーーッ!」

アライちゃん2「ぅ…そ…なのらぁ…」プルプル

アライちゃん2「な…んで…おかひぃ…のら………」ガクガクブルブル

食通の友人「なんでだと?てめーら害獣はなぁ!ヒトの畑を勝手に荒らし、農作物を食い散らかす!経済損傷は年間3億円だ!」

アライちゃん2「は…はたけの、ごはん…たべないと…いきて…いけないのらぁ…」

食通の友人「だったらなぁ!死ねばいいんだよッ!そうだろお前らァーッ!」

観客「そうだそうだ!」

観客「その通りだ!」

観客『死ーねッ!!死ーねッ!!死ーねッ!!死ーねッ!!死ーねッ!!死ーねッ!!死ーねッ!!』

アライちゃん2「ひどい…のらぁ…!」

スカッとする

食通の友人「今この会場にいる人間達だけじゃない!この世の全ての人々が!」

食通の友人「いや!てめーら特定外来種とそのフレンズに生活圏を脅かされた、全ての土着生物がッ!てめーら全員くたばれって思ってんだよッ!」

アライちゃん2「ひ…ぁ…!」

食通の友人「さ、そういうわけで、てめーもくたばりなぁ!」ガシッ

アライちゃん2「や、やめ…ゆ、ゆる…ひへ…」ビクッビクッ

食通の友人「じゃあ謝るんだな!この会場の全ての人々へ謝罪しろ!そうすりゃ無罪放免になるかもなぁ!」

アライちゃん2「ご…ごめんなさい…なのら…」

アライちゃん2「こ、これからは…ひとしゃんも、はたけから、おやさいとって、いいのら…」プルプル

観客「あ?」

アライちゃん2「ひ、ひとしゃんのぶんも…すこしだけ…のこしておく…のら…」

アライちゃん2「おまえたちにも…はたけのおやさい…わけてやるのら…」

アライちゃん2「なかよく、わけあうのらぁ…!らから、ゆるひへぇ…!」

観客「^^#」

食通の友人「さあ皆さん、このガイジ、無罪放免にしてあげますかッ!?」

アライちゃん2「ゆるひへぇ…!」

食通の友人「判決はッ!!?」





観客『…』





観客『死刑ェェェェエーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッッッッッ!!!!!!!!!!』





食通の友人「ギルティーーーーーーーーーッ!!!!!」ポイッ

アライちゃん2「あじゅいのらあぁぁああああっ!!!」ドボオオォン

観客『YEAHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHH!!!!!!』

揚げ物と化した姉妹が浮かぶ鍋の中で、身体中を油に焼かれるアライちゃん2は、走馬灯を見ていた。

これまでの選択で、何を間違ってしまったのか?


そうだ、あのとき。




食通の友人『ふーむ…それじゃあ約束しよう。この中から一匹だけ…』

食通の友人『お母さんと過ごしていたところへ、かえしてやろう。ホントだぞ』

あのとき、なんとかして、自分が選ばれていれば…




食通の友人「あのとき、自分が選ばれてれば良かった、とでも思ったか?」

アライちゃん2「…!」ジュワアア

食通の友人「もしそうなったら…お前を…」

食通の友人「生きたまま照り焼きにして…」


食通の友人「お母さんと過ごしていたところ…『胎の中』へ詰めてェ!親子丸焼きにしていたんだぜぇぇーーーーッ!!!」


アライちゃん2「…の…らぁ…」ピクピク

アライちゃん2「」ジュワアアー


アライちゃん2も、姉妹と同様に、ピクリとも動かなくなった。

食通の友人「後はこのまま、内臓までしっかり焼けるように、しばらく待てば、完成です」

観客「ブラボー!おお…ブラボー!」パチパチパチパチパチパチ

観客「さすがショクエモンPッ!俺達にできないことを平然とやってのけるッ!」パチパチパチパチ

観客「そこに痺れるッ!憧れるゥッ!」パチパチパチパチ

会場は、拍手喝采の渦に飲まれた。


司会「…みんみー…えー…、あまりの迫力に、わたくし思わず司会を忘れておりました」

司会「待ってる間、どうしましょう?」

食通の友人「そうだな…。こいつらが油に落ちてもがき苦しむ姿を、リプレイして上のスクリーンで上映するのは?」

観客『YEAHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHH!!』

司会「そ、それでいきましょう!それではリプレイスタート!」ピッ



そうして、10分が過ぎた。

食通の友人「えー、それでは御披露目します。今回のための特別レシピ…!」

食通の友人は、鍋からこんがり揚がったアライちゃん達を引き上げ、金網の上に乗せる。

食通の友人「名付けて…!!アラフライですッ!!」


そのビジュアルは凄絶なものだった。

猫ほどもあろうかというビッグサイズのフライから、
苦悶の表情で息絶えた、アライちゃんの焼け爛れた顔が飛び出ているのだ。


司会「さ、試食タイム!食べてみたい方はステージへ、こちらへ列を作ってお並びください!」

食通の友人「食べれるサイズにカットしてお渡しします!」


この凄絶な料理を食べようというチャレンジャーは、
…すぐには現れなかった。

なぜだろうか?

…そんなもん分かっている。
当たり前の価値観を持った人間ならば。

こんなものを料理と思うことはできないし、
ましてや食ってみたいなどとは思うはずがない。

まず第一に、見た目がヤバい。

フレンズであるアライちゃんは、見た目だけなら人間の少女と変わりがない。

それだけならば、この場に集まっている者達であれば受け入れられるだろう。


問題は、丸ごと一匹フライになっているこの姿である。

エビフライでさえ殻を剥いてから揚げるのが普通だ。

このアライちゃんは、毛皮もついたままだし、骨も内臓も取り除かれていない。

泥抜きは済んでいるとはいえ、一匹丸ごとである。

これを口にしたいという者が、いるのだろうか…?

観客1「おえええ…無理だわ。あんなん食える奴いんのかよ…」ザワザワ

観客2「毛皮あるじゃん…」ザワザワ

観客3「内臓とか大丈夫なの?品質検査通ってるなら寄生虫はいないんだろうけど…」ザワザワ



観客4「んじゃ俺、食べにいきまーす」スタスタ



観客1「!?お、おいおい、マジか?」

観客4「ああ、だってさ…」



観客4「ショクエモンPの料理だぞ?不味いワケがないだろ」


いつの間にか、ステージの下には行列が出来上がっていた。

食通の友人「はーい、じゃあ輪切りにして切り分けますよ。どこがいいっすか?」ザクザク

観客4「おすすめはどこっすか」

食通の友人「当然、腹だ!」

観客4「では、それを1つ」

食通の友人「はーい、どうもー」スッ

アラフライちゃん3「」ザグッ ザグッ

食通の友人は、アラフライちゃん3の腹へ2回包丁を入れた。

観客4「いただきまーす…」モグモグ

観客4「…!」モグモグ



観客4「ンマーーーーーーーーーーイ!!!!」モグモグ



観客『!?』ザワザワ

観客4「なんすかこれ!?めちゃウマ!ふほーうまい!まず内臓がウマい!」ハフハフ

食通の友人「調理の10分前に、特製ソースを飲ませておいたのさ。加熱することで、食材を内側から味付けするってわけさ」

観客4「あと、骨もコリコリしててウマいっすね!軟骨みてー」モグモグ

食通の友人「子供のアライさんは急成長するためか、骨が柔らかいんだよ。揚げれば軟骨みたいになって骨ごと食える」

観客4「皮膚もパリパリしてますね」サクサク

食通の友人「毛皮や尻尾のけものプラズムは、死後は形状維持の力が無くなるからか、加熱すると形象崩壊し始めるんだ。そこがまじでウマい」

観客4「ご馳走さまでした!アラフライ最高!Woo↑」


その後も長蛇の列が続きがすぐにアライちゃん達の姿は消え失せた。
頭も、尻尾も、すべてがバラバラになり、観客達の胃袋へと消えていったのである。


…そう、こんなゲテモノでも、食べてみたがる者はいるのだ。
その理由は、『ショクエモンP』こと、食通の友人が調理したから。

この男の実績と信頼は、それほどまでに強いのである。

司会「では、ショクエモンP!今回も素晴らしいショーと料理をありがとう!」

観客『ショックエモン!ショックエモン!ショックエモン!』パチパチパチパチ

食通の友人は、アライちゃん達を入れてきた籠と、その母親の丸焼きが乗っていた皿を運び、ステージから降りていった。

お腹すいてきた

つづく

焦らし方が絶妙だった
長すぎず短すぎず
おつでした

ショクエモンPこと食通の友人は、ステージクッキング終了後、ブースをぶらついていた。

彼はバッグからスマホを取りだし、電話を始める。

電話の相手『はい、こちらハンター。どうだ?調理の調子は』

食通の友人「無事ステージクッキング完了したぜ。お前が活きの良いアライさんの子供を獲ってくれたおかげだ」

電話の相手『そうか、そいつは何よりだ。あの後、同じ畑に罠を仕掛けて、何組か生け捕りにしたぞ。どうする?』

食通の友人「おお、それならこっちに持ってこいよ!食肉補充ブースに持ち込めばそこそこ稼げるぜ。生け捕りは今不足してるからな」

電話の相手『不足って…。オーケー、持ってくぜ』

『アライさん達をここから出すのだぁ!』

『なのだー!』

『のぁー』

食通の友人「そりゃみんな大喜びだろう。そうだ、ついでにお前も食事に来ないか?おごるぜ」

電話の相手『はは、冗談きついぜ。あんなもん食うだなんて吐き気がする。細胞の一片とて体内に入れたくないね』

食通の友人「そっかー、まあ仕方ないな。それが普通だ」



俺は食通の友人からの電話を切ると、アラジビフェスの会場に向かった。

軽トラの荷台へ、アライさんの親子を乗せた籠を5つ乗せている。

エンジン音と風の音が、荷台のクソやかましい騒ぎ声をかき消してくれる。

駐車場へ着くと、食通の友人がスタッフを連れて待っていてくれた。

食通の友人「よう、ハンター!待ってたぜ」

スタッフ1「どうもどうも!して、獲物はどこですか?」

ああ、ここにあります。
軽トラの荷台の上に乗った、5つの籠を指差す。

アライさん1「開けるのだ!開けるのだあぁ!」ガンガン

アライさん2「アライさん達をここから出すのだ!みんな可哀想なのだぁ!」ガンガン

アライちゃん1「あけぅのらー」クイクイ

アライちゃん2「せまくてこわいのらー!」ビエエエエン

ああうるせぇ!お願いだ!早く持ってってくれ!

スタッフ1「はい、どうもー。ひぃ、ふぅ、みぃ…。とにかく運びますね」ガシッ

アライさん3「のだっ!?おい、アライさん達をどこへ連れていくのだ!?」

スタッフ1「くっ、大人しくしろ!」

アライさん3「いやなのだあああああ!出るのだあああああ!」ドッタンバッタン

スタッフ達も、暴れ騒ぐアライさんを連れていくのに一苦労しているようだ。

食通の友人「なあ、アライさん…さっきからこの会場から、いい匂いがしないか?」

アライさん3「くんくん…そういえば、さっきから美味しそうな匂いと、アライさん達の匂いがするのだぁ」

食通の友人「そう!その通り。ここではアライさん達と、とっても美味しいお料理で、みんなでお食事会してるんだよ」

アライさん3「!すごいのだ!アライさんも食べたいのだぁ!さっさと連れていくのだ!」

アライさん2「アライさんも行きたいのだ!」

アライさん1「みんなで行くのだ!」

アライちゃん1「のだー」ピョンピョン

アライちゃん2「おなかいっぱいごはんたべれるのだー!」キャッキャ

アライちゃん3「うれしいのだぁ!」ワイワイ

食通の友人「でも、ここはマナーが大事だからね。大人しく、静かにして、喋らないでいた子から先にご馳走のとこに行けるよ」

アライさん1「そうなのか?」

食通の友人「ああ。『さっさと食べさせるのだぁ!』とか騒いじゃうと、後に戻されるか、最悪何も食べ物が無くなるから気を付けてね」

アライさん3「それは困るのだ!チビ達もお腹空かせてるのだ!」

食卓の友人「逆にずーっと我慢して静かにできたら、すぐ食卓の一員になれるよ」

アライさん2「じゃあアライさん、静かにするのだぁ」ピタッ

アライちゃん4「やなのだ!いまあうぐたべたいのだー!」ジタバタ

アライさん4「静かにするのだ!チビのせいでアライさん達がご飯食べられなくなったらどうするのだぁ!アライさんの危機なのだぁ!」ガシッ

アライちゃん4「うぐぐ、むぐぐー!」モゴモゴ

食通の友人「さ、静かになりましたよ。一緒に搬入しましょう」ガラガラ

スタッフ「あ、は、はい…。ありがとうございます」ガラガラ

食通の友人とスタッフは、リヤカーへ籠を乗せ、品質検査室へ向かい移動を始める。

アライさん5「楽しみなのだー…」ヒソヒソ

スタッフ「そちらの方も同行お願いします。中で検査してから、換金します」

俺もスタッフへと同行する。

~品質検査室前~

スタッフ「えー検査終わりました。生け捕りで健康体、未糞抜きの成体アライさんが5匹。同条件で、生後3ヶ月以内が2匹、生後6ヶ月以内が4匹、生後9ヶ月以上2年未満が1匹」ピポパ

スタッフ「計9万5千円です」

え!?そ…そんなにたくさん貰っていいのか!?
こんなクソゴミハエガイジ共にそんな価値があるとは思えないんだが…

スタッフ「生け捕りで栄養状態が良く、怪我のないアライさんは貴重なんですよ。逆に死亡していても、血抜き済みで保存状態が良ければそれなりの値段になります」

ほほう…。例のライブキッチンのチケット代で稼げるってわけか。
じゃあ、値が下がるのは?

スタッフ「病気だったり、あるいは血抜き無しの死体だったりすると、加工の手間があるので価値が下がりますね。さらに、腐敗してたり毒が抜けてないと、お引き取りはできませんので返却となります」

なるほど。いいビジネスだな。

スタッフ「お客様も是非、お食事をされていっては如何ですか?」

はは、あり得ないな。
吐き気がする、あんなものを食うなんて。

言葉には出さないが…
『お前ら、狂ってるよ』と、そう思わずにはいられない。

俺は軽く挨拶すると、自宅へ戻った。
次の仕事場への仕事道具を取りに行くためだ。

今度のハンティングは、今まで以上に神経を使いそうだ…。

………

……

つづく

ショクエモンも酷い目にあって
欲しいと思うのですが
作品の趣旨違いですねお疲れ様です

~オマケ~

それにしても、いくらなんでもあいつらだけで9万5千円は高すぎやしないか?

スタッフ「それは、アライさんを閉じ込めてる檻ごと引き取ってるからです」

ああ、そういえば…。檻ごと持ってってたな。
あれ仕事道具なんだが…。
まあ、檻から出すわけにもいかないだろうし、仕方ないか。

スタッフ「お客様の檻は原価が1個6000円で、中古価格で5千円。それが5個で2万5千円となります。それをさっぴいた7万円がアライさん売却の純利益となります」

なるほど。
しかし…何度も言うが、檻は仕事道具だ。
また買いに行かなきゃならんのか…

スタッフ「使い終わった檻は、檻の中古販売コーナーで売却されます。そちらへ立ち寄っては如何でしょうか?」

それは助かる。
早速俺は、檻コーナーへと中古檻を買いに向かった。



つづく

乙です
ショクエモンPさんの話はこれで終わり?

>>351
どういう心理もとい考え方でそういう要望に至るんでしょうか?
ユーザーの気持ちを考える上で作品の参考にしたいので、教えて貰えると助かります

>>354
次は一旦ハンター編ですかね
アラジビフェス続きだとだれてきそうなので…

>>356 >>351の人、他のスレでアライさんのss書いてる人。見れば解ると思うよ

>>357
なるほど、ちょっと酷いのだ劇場の人ですね

ショクエモンPはアラジビ料理中のあらゆる危険を考慮し対処する人物なので、
彼自身が酷い目にあうことは無いでしょう

ただ、アラジビフェス参加者の中には、彼の真似してライブキッチンやろうとしてアライさんから思わぬ反撃にあったり、
料理中になんかの事故にあったりする素人達もいると思いますね

そういう人の事故を話のネタにするのも面白いかもしれません(このスレでは書きませんけども)



農夫「くそっ!やられた!」

農夫は自らのカボチャ畑の惨状を目の当たりにして嘆く。

まるで食べ物で遊ぶかのように、カボチャを食い散らかし、破壊し、放置する…。

こんな下品で思慮の浅い畑荒らしをする者はアライさんのみだ。
人間ならば、もっとバレないように狡猾に行うだろう。

農夫は怒り心頭、即座に対策を試みた。

農夫「アライさん対策…アライさん対策…」パラパラ

農夫は本をめくり、導入コストの安そうなものを探す。

農夫「おっ、罠籠。これにしとくか」

農夫はさっそくホームセンターへ行き、アライさん捕獲用の籠を5つほど購入した。

農夫「これをあちこちへ設置してと…。これで良し!」カチャカチャ

農夫は籠を設置し、荒れ果てたカボチャ畑を片付けると床についた。

…深夜…

アライさん1「今日もお野菜を収穫なのだー!」ガサガサ

アライちゃん1「なのだー!」ピョコンッ

アライちゃん2「のぁー」ヨチヨチ

農場付近の森の茂みから、アライさん親子が姿を現す。

アライさん1「チビ達も野菜の取り方を覚えるのだ!」スタスタ

アライちゃん1「たべるのだー!」ヨチヨチ

アライちゃん2「なのぁー」ヨチヨチ

アライさん1「ん?あれは何なのだ?」キョロキョロ

アライさん1は、農場に設置された5つの籠に気が付く。
どの籠の中からも、揚げパンの匂いが漂ってくる。

アライさん1「美味しそうな匂いがするのだぁ!チビ達はここで待ってるのだ!」

アライちゃん1「わかったのだー」ワクワク

アライちゃん2「のぁー」

アライさん1は、子供達を待たせ、籠に入る。

アライさん1「美味しそうなのだぁ、チビ達もきっと喜ぶのだぁ」ガシッ

餌に手をかけた途端、ガシャーンと音が鳴り、籠の入り口が閉まる。

アライさん1「のだっ!?」ビクッ

アライさん1「なんなのだ、入り口が閉まって…開かないのだ!」ガシャンガシャン

アライちゃん1「おかーしゃん、どうちたのだ?」ヨチヨチ

アライちゃん2「どったのぁー?」ヨチヨチ

アライさん1「ち、チビ達!この箱が壊れて空かなくなったのだ!早く開けるのだ!」

アライちゃん1「あかないのだー!」ガチャガチャ

アライちゃん2「かたいのぁー」ガジガジ

叩いてもかじっても開かない。
アライさん捕獲用の籠は、蓋の開け口に南京錠が付いている。
手先が器用なアライさんでも、開けることができないように。

アライさん1「チビ達何やってるのだ!もっと頭を使うのだ!」ガシャ

アライちゃん1「あけかたわかんないのだぁ!」ガチャガチャ

アライちゃん2「かたくてこわれないのだぁ…」ガジガジ

森の茂みがガサガサと揺れる。
何かがやってくるようだ。

アライさん2「さっきから畑が騒がしいのだー」ガサガサ

アライさん3「凄い野菜でも見つけたのかー?」ガサガサ

奥から、別のアライさん達がやってきた。

アライさん1「!仲間なのだ!おーい!アライさんを助けるのだ!」ガシャガシャ

アライさん2「!?どうしたのだ!?」タタッ

アライさん3「ひどい、閉じ込められてるのだ…何があったのだ!?」

アライさん1「箱の中からいいにおいがしたから入ったら、出られなくなったのだぁ!アライさんの危機なのだぁ!」ジタバタ

アライちゃん1「おかーしゃんをたすけてほしいのだー!」ビエエエン

アライちゃん2「なのだぁー!」ビエエエン

アライさん2「箱…?」チラッ

アライさん3「そういえば、いいにおいがするのだぁ」クンクン

アライさん1「行っちゃ駄目なのだぁ!アライさんみたいに出られなくなるのだ!」

アライさん2「そ、それは困るのだ…」

アライさん3「危機なのだ…」

アライさん1「うぅ、お腹が空いたのだ…。とりあえずこの食べ物を食べるのだ」モグモグ

アライさんは罠の中の揚げパンを食べる。

アライさん2「美味しそうなのだー…」ダラリ

アライさん3「うぅ、アライさんも箱の中の食べ物を取るのだ!」タッ

アライさん1「待つのだ!アライさんみたいに捕まったらどうする気なのだ!?」

アライさん3「うぐぐ…」

アライさん2「箱をひっくり返せば、ゴハンだけ落とせるんじゃないのかー?」

アライさん3「!そうなのだ!やってみるのだ」グイグイ

しかし、箱は押しても引いても地面かた離れない。
地面に打ち込んだ杭に繋がれているためだ。

アライさん2「動かないのだ……」ゼェハァ

アライさん3「なんて頑丈なのだ……」ハァハァ

アライさん1「うぅ、このままでは日が暮れるのだ…。みんなヒトに見つかるのだぁ」

アライさん2「お前の助け方は分からないのだ。アライさん達は普通にお野菜をもってくのだ」スタスタ

アライさん3「尊い犠牲なのだー」スタスタ

アライさん1「待つのだぁ!出られないアライさんが可哀想なのだぁ!」ガシャガシャ

アライさん2「可哀想だけど仕方ないのだぁ」ブチブチ

アライさん3「お前に構ってたらチビ達がお腹を空かせるのだぁ」ブチブチ

アライさん2&3は、畑から赤みのついたトマトをもぎ取り、ビニール袋に入れていく。
このビニール袋はおそらく森を訪れた人間がポイ捨てしたものだろう。
こういった人間の行いが、アライさんの生活を助け、害獣の増殖を助長しているのだ。

アライちゃん1「おかーしゃん!おかーしゃんをたすけてほしいのだー!」ビエエエン

アライちゃん2「ひどいのだー!」

アライさん1「うぅ…。お願いなのだ。せめてアライさんのチビ達は、見捨てないで欲しいのだ」

アライさん2「ん?」

アライさん1「チビ達は、まだ一人で生きていく生活力がないのだ…。このままでは飢え死になのだ。せめて、アライさんがここを出るまでチビ達を預かって欲しいのだ」

アライちゃん1「おねがいなのだー…」ウルウル

アライちゃん2「おかーしゃんがいないあいだ、あたらしいおかーしゃんになってほしいのだ…」ウルウル

アライさん3「う…分かったのだ。そこのチビ達、こっちに来るのだ。アライさんが野菜収穫するのを手伝うのだ」

アライちゃん1「ありがとなのだー!」ヨチヨチ

アライちゃん2「あたらしいおかーしゃんなのだぁ」ヨチヨチ

アライさん2「おーよしよし。可愛いのだ」ナデナデ

アライさん3「お腹すかせて可哀想なのだ」ダキッ ギューッ

アライちゃん1「のだー♪」スリスリ

アライちゃん2「なのだぁー」シッポフリフリ

アライさん1「ふぅ…。これで、チビ達は一安心なのだぁ…。でも、まだアライさんが危機なのだぁ!」ガシャガシャ

アライさん4「何の騒ぎなのだ?」ガサッ

アライさん5「畑がやかましいのだ。それにいい匂いがするのだ」ガサッ

茂みから、さらにアライさんが続々と登場する。

アライさん1「あ、お前達!アライさんを助けるのだ!」ガシャガシャ

アライさん4「何やってるのだ?」

アライさん5「あっちの箱からいい匂いがするのだ」スタスタ

アライさん2「ん?お前達も野菜取りに来たのか?」ブチブチ

畑を荒らしているアライさん2&3が、新たな2匹の来訪者に気付く。

アライさん3「お前達、あっちのいい匂いがする箱に入っちゃ駄目なのだ!その箱の中のアライさんみたいに、出られなくなるのだ!」

アライちゃん1「なのだー!おかーしゃんがかわいそうなのだぁ」

アライちゃん2「おかーしゃんをたすけてほちいのだぁ」ウルウル

アライさん4「なに!それは怖いのだ」

アライさん1「多分、ヒトが仕掛けた罠なのだ。酷い事するのだ、あいつらは畑の野菜を独り占めする気なのだ!アライさんを虐めて楽しむゴミなのだぁ!」ガシャガシャ

アライさん5「なんてひどい奴らなのだ…サイテーのクズなのだぁ!」

アライさん1「だから、アライさんを助けて欲しいのだ!」

アライさん4「分かったのだ。畑から野菜を取り終わったら助けるのだ」スタスタ

アライさん1「え」



…陽が上り始めた頃、アライさん2&3&4&5が、一通り野菜を荒らし終え、畑から出てきた。

アライさん1が捕まった籠の横を通りすぎて、ぞろぞろと森の中へ帰っていくようだ。

アライさん2「ふぅー大収穫なのだぁ」スタスタ

アライさん3「チビ達と一緒にたくさん食べるのだぁ」スタスタ

アライちゃん1「あたらしいおかーしゃんといっしょにたべるのだー」ヨチヨチ

アライちゃん2「なのだー!」ヨチヨチ

アライさん4「これからは、あの箱に気を付けるのだ」スタスタ

アライさん5「お前のお陰で罠にかからずに済んだのだ。少し野菜を分けてやるのだ」ポイッ

アライさん5は、アライさん1のいる籠の隙間から、キャベツの葉を2~3枚差し込む。

アライさん1「うぅ…。出して欲しいのだぁ…」ムシャムシャ

アライさん4「また夜になったら、棒切れかなんか持ってきて、その箱壊してやるのだ」スタスタ

アライさん5「困難は群れで分け合うのだー」スタスタ

そして、アライさん1を残してアライさん達は森へ帰っていった。

…朝…

農夫「どれどれ、罠の様子は…」スタスタ

籠1『出すのだぁ!アライさんをここから出すのだ!』ジタバタ

籠2「」シーン

籠3「」シーン

籠4「」シーン

籠5「」シーン

農夫「ぬお!?1個しかかかってないぞ。しかも畑が荒されまくってるー!?」ガビーン

アライさん1「そこの人!アライさんをここから出すのだ!悪い奴に閉じ込められたのだ!」ガシャガシャ

農夫「……」

アライさん1「他のアライさん達も来たけど、危ないから入らないように言ったのだ!アライさんはなぁ、偉大なんだぞぉ!」

農夫「……………」ワナワナ

アライさん1「アライさんは偉いのだ!思いやりがあるのだ!だからここから出すのだぁ!」ガシャガシャ

農夫「てめーの仕業かこのハエガイジ!」

農夫「ったく………」ガシッ

農夫は籠を地面の杭から外し、リヤカーでがらがらと運ぶ。

アライさん1「どうしたのだ?アライさんを助けてくれるのか?」

農夫が籠の乗ったリヤカーを押して向かった先には…


浴槽と、ホースが取り付けられた
蛇口があった。


アライさん1「?これで箱を壊してくれるのか?」

この浴槽は、畑の隣の庭へ放置されているものだ。
中には雨水が半分ほどまで溜まり、藻やボウフラが湧いている。

農夫「ウラアァ!」ポイッ

アライさん1「ごぼっ!?」バシャアン

農夫は浴槽へアライさん1の入った籠を投げ込む。

アライさん1「ぷはっ!何するのだ!急に水に入れられたら驚くのだぁ!」プハァ

農夫「うっせーな、くたばれ!」キュッ

農夫が蛇口をひねると、浴槽の水かさが増していく。

アライさん1「なっ!?何してるのだお前、水が増えてるのだ!止めるのだぁぁ!」バシャバシャ

農夫「籠罠じゃ効き目無しか…。別の対策グッズ買うか」スタスタ

アライさん1「ああっ!待つのだ!止めるのだ!止めるのだあぁ!」ガシャンガシャン!

農夫はアライさん対策グッズカタログを読みながら、浴槽に水が満たされるのを待っている。

アライさん1「誰か!アライさんを助けるのだぁ!アライさんの危機なのだぁ!」バシャバシャ

水位はどんどん増していき、アライさんの下唇が水に浸かった。

アライさん1「ぷはっ!お前!助けるのだ!アライさんを助けるのだ!このままじゃ溺れるのだ!アライさんをここから出すのだぁぁ!」バシャバシャ

アライさん1「なんで!なんでアライさんをいじめるのだ!アライさんはただゴハンを食べに来ただけなのだあぁ!」バシャバシャ

アライさん1「ごぼっ…ぶはっ!なんでも!ずるがら!だずげるのだあぁ!ごぼっ!みずを!どめるのだあぁ!」バシャバシャ

アライさん1「ちび達!アライさん達!だずげでえええええあああああああああ!!!嫌だああぁぁ!溺れるの嫌なのだぁごぼぼがばぼぼぼぶぐぐぶぐ!」ゴボゴボ

アライさん1「ぐぶぶごぼがばぼごぼぼばごぼぼぼがばぼごぼぼ!」ゴボゴボ

農夫はアライさんの頭まで水に浸かったことを確認すると、
蛇口をきゅっとひねり、水を止める。

アライさん1「どべるのがごぼびぼばああ!びぎがべべべふべばぎゃごぼべぶぼ…!」モゴモゴ

アライさん1は何度も檻を叩き、引っ張り…
そして、手を離し、静かになった。

アライさん1「」プカー…

農夫「よし、溺れ死んだか。引き上げよう」ガシッ ザバー…

浴槽から檻を引き上げ、中からアライさん1を取り出す。

アライさん1「」グッタリ

農夫「くたばったかな。さてどうやって処分するか………」

農夫「アナグマやイノシシとかだったたらジビエにしてもいいんだが、アライさんはなぁ…。見た目人だし、食いたくないし焼いて土に埋めるとするか」

農夫「火を起こしてくるか…」スタスタ…

農夫はアライさん1を焼却するためにその場を去った。

アライさん1「」

アライさん1「」ピクッ

アライさん1「ご…ごぼはっ…!」ゲホゲホ

なんとアライさん1が息を吹き返した。
失神してすぐ引き上げられたため、まだ死んでいなかったのだ。

アライさん1「がばっ…がはっげほ!」

気管に詰まった水を何度もえずいて吐き捨てるアライさん1。

アライさん1「はーはーはーはーはーはーはーはーはーはーはーはーはーはーごぼっ!げぼっほ!」

アライさん1「はぁ…はぁ…」ヨロヨロ

アライさん1「…でられたのだ…はこから…ころされる…とこだっだのだ…」ピクピク

アライさん1「にげなきゃ…なのだ…ちびたちが…まってるのだ……」ヨタヨタ

……

農夫「さてと、アライさんの死骸は…」スタスタ

農夫「あれ!?ない!?」

さっきまでそこにあったアライさん1の死骸は、忽然と消えていた。

農夫「どういうことだ…?仲間が来て連れてったのか?わからん…」

農夫「ま、いなくなったらいなくなったでいいや。今度は籠罠なんて使えないやつじゃなく、もっと便利な罠を買うか…」スタスタ



~森の中~

アライさん1「はぁ、はぁ…」ヨロヨロ

アライさん1「つたえなきゃ…あのはたけには、わるい人間が、うろついてるのだ…」ヨタヨタ

アライさん1「みんなにつたえなきゃ…!あの人間は…アライさんを殺そうとしたのだ…!」

アライさん1「みんなにつたえなきゃ…!あの人間を…!」

アライさん1「皆で力を合わせて、やっつけるのだぁ…!」

つづく



農夫「ともあれ、畑をまた片付けなくちゃな…。ああ、どんどん野菜がなくなっていく…」

農夫「もうこのままでもいいんじゃねえかな………」

食通の友人「食いやすいものを残しておくと、餌場にされますよ」

農夫「おお、お前さんは…うちのお得意さんのショクさん」

食通の友人「はい、農夫さん…昨日も八文字八百屋さんから野菜買いましたよ」

農夫「ハハ…今年は出荷できるかな…」

食通の友人「酷いですねこれ…アライさん被害ですか」

農夫「ああ。昨日、籠罠つけてみたんだけどね…かかったのは1匹だけで、荒らされ放題だよ」

食通の友人「…自分で仕掛けたんすか?」

農夫「ああ。かかった1匹も、水に沈めてから籠から出してほっといたら、いつの間にか消えてたけどな」

食通の友人「…」

農夫「ショクさん?」

食通の友人「…なんでプロの駆除業者に頼まなかったんすか?」

農夫「いやあ、害獣駆除なんてさ、イノシシやアライグマぐらいなら手慣れたもんだし。それに金もかかるんだろ?」

食通の友人「…それでこの結果ですか…」

農夫「ど、道具が悪かったんだよ。次はもっといいのを…」

食通の友人「言っておきますけど…あいつらをただの害獣と一緒だと思わない方がいいっすよ」

農夫「え」

食通の友人「あれはフレンズ…。言葉を話し、知能はヒトに匹敵するかもしれない…は言い過ぎだが、まあその辺の獣より狡猾です」

食通の友人「しかも、そいつらが森にウジャウジャ住んでいて、互いに情報交換している…」

食通の友人「そんな連中を、あなたは敵に回してしまった。やばいっすよ」

農夫「またまた、たかがアライさんだろ?大したことないって…」

食通の友人「…」

食通の友人「今からでもプロの駆除業者に依頼した方が…」

農夫「いいっていいって。それよりホレ、今日は電気柵を買って取り付けるんだ」

食通の友人「…」



~森の中~

アライグマ♂「…」ヘコヘコ

アライグマ♀「キューキュー」

森の中で、アライグマのつがいが交尾をしていた。
野性動物の交尾は数十秒で終わるという。雄のアライグマは間もなく雌へ遺伝子を注ぐだろう。

アライさん2「ちょっと待つのだ!」ガサッ

アライグマ♀「!?」ビクッ

アライグマ♂「!?」ビクッ

アライさん2「お前ばっかりずるいのだ!アライさんによこすのだ!」ゲシィ

アライグマ♀「キュー!」トテトテトテ…

アライさん2は雌のアライグマへ蹴りを放つ。雌は一目散に逃げていく。

アライグマ♂「…」ガクガクブルブル

アライさん2「おいお前、アライさんを気持ち良くするのだ」

アライさん2はよつんばいになり、雄のアライグマへ尻を向ける。

アライさん2「はやくするのだ」シッポフリフリ

アライグマ♂「…!」ガバッ

交尾を途中で邪魔された雄は、目の前のフレンズが雌のアライグマと同じフェロモンを
出しているのに気付き、アライさんに後ろから覆い被さる。

アライグマ♂「キュ~」ヘコヘコ

アライさん2「あー気持ちいいのだ!」

雄はアライさん2へ覆い被さり、腰を打ち付ける。
アライさん2は恍惚の表情を浮かべている。

アライグマ♂「…!」ヘコヘコヘコヘコ

アライさん2「はぁっ…!はぁっ…!」

雄の腰の動きが速くなる。
アライさん2は眉間に皺を寄せ、口の端から涎を垂らしている。

アライグマ♂「っ…!」ビクッビクッ

アライさん2「の、のあぁぁっ…!」ビクッビクッ

アライグマの雄とアライさんは同時に、びくびくと腰を震わせた。

アライグマ♂「…」タターッ

アライさん2「はぁ、はぁ…気持ちよかったのだぁ…」ゼェハァ

アライグマをはじめとした野性動物は、ヒトに比べて交尾で絶頂に至るまでの時間がずっと短い。
どうやらそのフレンズであるアライさんも、同じ性質を受け継いでいるようだ。



アライさん2「ふぅ、これでアライさんも子供ができるのだぁ」テクテク

アライちゃん1「あたらしいおかーしゃん、なにしてたのだ?」ヨチヨチ

アライちゃん2「あらいぐましゃんにいじめられて、かわいそうなのだぁ~」ヨチヨチ

アライさん2「今のは交尾なのだ。とっても気持ちいいのだ。将来チビ達もこうやって、赤ちゃんを作るのだぁ」

アライちゃん1「あたらしいおかーしゃんも、おかーしゃんになるのだ?」ヨチヨチ

アライちゃん2「かぞくいっぱいでたのちーのだぁ」キャッキャッ

アライさん2は、子供のアライさんを2匹連れて森の中を歩いていた。
これらはアライさん2自身の子ではなく、籠に捕まったアライさん1から託された子である。

アライさん1「ぜぇ…はぁ…」フラフラ

アライさん2「!お前、箱に閉じ込められてた…。出られたのか」

アライちゃん1「おかーしゃんなのだあー!」ヨチヨチ

アライちゃん2「あらいしゃんさびしかったのだ、おかーしゃんすきすきなのだぁ」ギューッ スリスリ

アライさん1「おーよしよし。チビ達、お母さんは戻ったのだ」ナデナデ

アライさん2「うぅ…チビ達が、元の親のとこに戻ってしまったのだ。あのまま帰ってこなきゃよかった…とは、さすがに言えないのだぁ」ションボリ

アライさん3「出られたのか?」ガサッ

アライさん4「凄いのだ!よかったのだ」ガサッ

アライさん5「どうやって出たのだ?」

利己的かつ自己中心的な性格で知られるアライさんといえど、
籠罠の危機を知らせてくれた仲間のことは、多少なりとも身を案じていたのだろうか。
アライさん1が無事に帰ってきたのを見て、まあ若干は嬉しそうだ。

アライグマは基本的に群れをつくる習性はないが、
フレンズとしての知能と言語を得たためか、
出会ったら挨拶する程度の社会性は芽生え始めているようだ。

何かのきっかけがあれば、アライさん達はコロニーを作り、群れで活動するようになるだろうか?
いや、利己的な性格のアライさん達には、社会性を身に付けることなど無理だろう。

アライさん1「アライさんは…。あの畑を独り占めしようとしてる悪い人間に、殺されそうになったのだ…!」

アライさん2~5「!?」

アライさん1「人間に捕まったアライさんは、箱ごと水に沈められて、殺されたのだぁ!でも、なんとか生き返って、ここまで戻ってきたのだ」

アライちゃん1「おかーしゃんをころすなんてひどいのだぁ!」ビエエエエン

アライちゃん2「わるいにんげんなのだぁ!」ビエエエエン

アライさん2「なんて悪い奴なのだ…」

アライさん3「このままあの畑に収穫に行ったら、もっと色々酷いことされるかもしれないのだ…」

アライさん4「食べ物のためにアライさんを殺すなんて、地獄の閻魔も見放すゴミなのだぁ」

アライさん5「どうすればいいのだ…。他の畑を探した方がいいのか…?」

アライさん1「いや、そんなわけにはいかないのだ…。あの畑は、チビ達を育てるのに必要なのだ」

アライさん3「えらく同感なのだ」

アライさん1「それに、あいつはアライさん達を殺そうとする大悪党なのだ…!みんな、あいつをやっつけるのだ!」

アライさん2「!でも…ヒトを敵に回すと怖いのだ…」

アライさん1「大丈夫なのだ。敵はあの人間1人なのだ。夜のうちにみんなであいつのところへ行って、棒切れで叩いたり引っ掻いたり首を絞めれば、それでみんなの畑に平和が戻るのだ!」

アライさん4「これだけの仲間がいれば、人間一人くらい楽勝なのだ!」

アライさん5「力を合わせてやっつけるのだ!」

アライちゃん1「のだー!」

アライちゃん2「なのだー!」

こうして森の奥では、アライさん達による農夫暗殺計画が企てられていた。

利益を互いに奪い合う利己的なアライさん達だが、
共通の敵を見つけたことで、その攻撃性を合わせて団結してしまったのだ。

もっとも農夫が死んでしまったら、もうこの畑に新たな作物は実らなくなるのだが…。


そんな恐るべき事態が進行しているとは知らない農夫は、呑気に電気柵の設置を進めし、
畑を夜襲から守る準備をしていた。
…今晩夜襲の目標となっているのが、畑でなく自分自身だというのに!


果たして彼らの戦いの行方は…?

そして、アライさん達による農夫暗殺計画が、今夜決行される。

つづく



深夜。
森の茂みがガサガサと揺れる。

アライさん1「人間討伐なのだー!」ガサッ

アライさん2「悪い奴をやっつけるのだ!」ガサッ

アライさん3「成敗なのだ!」ガサッ

アライさん4「わくわくするのだ」ガサッ

アライさん5「まるでジャパリパークのアライさんみたいなのだ!」ガサッ

アライちゃん1「なのだー!」ヨチヨチヨチヨチ

アライちゃん2「なのだー!」ヨチヨチヨチヨチ


アライさんの成体の身体能力は、年相応…14~15歳の人間の少女と同等レベルである。
爪や牙が多少鋭いため、同年代の人間の少女より若干戦闘能力は高い。

…ときに、フレンズは心身を鍛え、レベルという概念的な数値を上げることで、
体内のサンドスターを消費し身体能力をブーストする「野生解放」の力を持つという。

だが、野生のアライさん達のレベルは低い。
野生解放の力に目覚めている個体はこれまで確認されていないのだ。


かつて人間の女性や、サバンナの2匹のネコ科少女、
そして大きな耳の相棒と共に旅をして、
セルリアンの脅威から人類を救った彼女とは…
戦闘能力に雲泥の差があるのだ。

アライさん2「憎き敵はどこにいるのだ?」ザッザッ

アライさん1「あっちなのだ!アライさんは、あっちへ運ばれて、水に沈められたのだ!だからあっちに住んでいるに違いないのだ!」ザッザッ

アライさん1は、浴槽があった場所へ向かっている。
そこは農夫の家の庭である。
アライさんの群れは、確実に農夫の元へ向かっていた。

アライちゃん1「はぁ、はぁ…つかれたのだぁ…」ヨチ…ヨチ…

アライちゃん2「もうはしれないのだぁ…」ヨチ…ヨチ…

こいつらは何のためについてきたのか。
成体のアライさんの歩行スピードに必死に追い付こうとしていたようだが、
這い這いでは到底追い付けはしない。

アライさん1「チビ達はアライさんがおんぶしてやるのだ」ヒョイ

アライさん2「少しの間新しいお母さんになってたのだ。また甘えていいのだ」ヒョイ

アライちゃん1「おんぶなのだー!おかーしゃんすきなのだー」キャッキャッ

アライちゃん2「たのしーのだー!」キャッキャッ

これから人を殺めようというのに、この緊張感のなさは何なのか。

アライさん1「ん?くんくん…いい匂いがするのだ」

アライさん2「何なのだ?くんくん…美味しそうな匂いなのだ!」

アライさん3「戦いの前に腹ごしらえするのだ!」タタッ

アライさん1「行ってみるのだ!」タタッ

やがてアライさん達の群れは、柵の前で止まる。

アライさん1「ん?何なのだこれは?」

目の前にあるものは電気柵。
6段のワイヤーが張り巡らされており、最上段はアライさんの首あたりの高さである。

柵はぐるっと半径3メートル程の円をかくように張り巡らされており、
その中心からいい匂いが漂ってくるようだ。

アライさん5「何なのだこれは!?邪魔なのだ!」

アライさん2「邪魔なのだ。よいしょ」

アライさん2は、ワイヤーに足をかけ、上っていく。
どうやら、電気柵には電気が通っていないらしい。

アライさん2「!みんな、こっちなのだ!いいものがあるのだ!」

アライさん1「アライさんもいくのだ」ヨジヨジ

アライさん3「美味しそうな匂いがするのだ」ヨジヨジ

全てのアライさんが、電気柵をよじ登り、直径6メートルの円の中へ入った。

その中心にあるのは、少量の野菜炒めである。
ソースがたっぷりかけられており、美味しそうな匂いが漂ってくる。

アライさん1「美味しいのだ!美味しいのだぁ!」ガツガツ

アライさん2「ああっ!アライさんが先に見つけたのだ!」ガツガツ

アライさん3「待つのだ!アライさんにも残すのだぁ!」タッ

中心に到達した者から、我先にと野菜炒めにかぶりついていく。

アライちゃん1「あらいしゃんもたべたいのらぁ~」

アライちゃん2「たべさせるのだ~」

アライさん1「だめなのだ!これは戦いの前の腹ごしらえなのだ!」ガツガツ

アライさん2「戦うアライさん達が食べるのだ!チビは食べなくていいのだ!」ガツガツ

アライちゃん1「たべたいのだー!」ビエエエエン

アライさん1&2「ふぅー、美味しかったのだ」ペロリ

アライさん3「ああっ!」

アライさん4「アライさんの分が…」

アライさん5「ないのだ…!」

アライさん3「な、なんでアライさんの分を残しておかなかったのだぁ!」

アライさん1「そんなのお前が遅かっ…」

そこまで言った瞬間。

アライさん4「のだっ!?」バタッ

アライさん1「!?」

突然、文句を言ってかかったアライさん4が、その場に倒れた。

アライさん4「」ガクッビグッビグッバタッバタタタッビグンビグッバタタッ

アライさん4は、倒れたまま手足をバタバタと震わせている。

アライさん5「お、おい?大丈…の゛だっ!?」バタッ

アライさん3「!?」

アライさん4を心配して駆け寄ろうとしたアライさん5が、突然倒れた。

アライさん3「どうしたのだ!?」

アライさん5「ぐ、ぶ、ぐえ゛、か、ばっ…」ブシュウウゥ

アライさん5の喉仏の右隣から、鮮血が吹き出している。
おそらく頸動脈を破壊されているのだろう。

アライさん1「な、何なのだこれは!こ、ここにいると危ないのだ!」

アライさん1「この囲いの中から出るのだ!」ガシッ

アライさん2「逃げるのだ!チビ達、捕まるのだ!」ガシッ

アライちゃん1「こわいのだぁー!」ビエエエエン

アライちゃん2「もうおうちかえりたいのだぁ!」ビエエエエン

アライさん3「このロープをよじ登って…」ガシッ

アライさん3が、電気柵のワイヤーを右手で掴んだ瞬間。

アライさん3「んぎゃああああ゛ぁあ!」ビグッ

アライさん3「いだいいだいいだいのだあああ!」ヒリヒリ

アライさん3は、電気柵から手を離した。

アライさん3「何なのだこ…れ゛っ!?」バタッ

アライさん3もその場に倒れた。

アライさん3「ああ!ぁああああああ!アライさんの!アライさんのあしが!いだいいだいいだいいだいのだあああああああ!!」ジタバタ

アライさん3は、太腿を押さえたまま倒れ、ジタバタと暴れている。

アライさん1「に…逃げ…ぎゃっ!」ビグッ

アライさん1は電気柵のワイヤーに触れ、即座に離した。

アライさん2「いだっ!な、何なのだこれ!さっきと違うのだ!触ると凄く痛いのだ!」

明らかに先程と様子が違う。
電気柵に、電源が入っている。


本来は、『囲いの中に入れないために』使われる電気柵が、
今は『囲いの外に出さないために』使われているのだ。

アライさん2「な、何なのだこれは!?なんでみんな、いきなり怪我していくのだぁ!?」

アライさん3「いだいいい!いだいのだあああ!あしがああああ!」ジタバタ

どうやら、アライさん3は致命傷にならなかったようだ。

全く…だから、このクソ銃は嫌なんだ。
弾速は遅いし、チャージに物凄く時間がかかる。
おまけに威力も低いから、この20m程の距離からアライさんを仕留めるなら首を狙うしかない。
しかも弾速が遅いせいで、ちょっと風が吹いただけでも弾が反れる。

…だが、『発射音が小さい』という唯一の長所は、今この場において、絶大な威力を発揮する。

おい、食通の友人。そっちの銃、空気のチャージは終わったか?

食通の友人「ああ終わった、ほいよ。そっちは預かるぜ」

サンキュー。
俺は食通の友人から、空気チャージが完了したエアライフルを受けとる。
そして撃ち終わった方のエアライフルを渡す。

さて。
俺は暗視ゴーグルでスコープを覗き込み、
残りの害獣へ狙いをつける。

アライさん1「ど、どこから逃げればいいのだ!」アセアセ

アライさん2「そうだ、匍匐前進して、一番下の隙間から抜ければいいのだ!」ズリズリ

アライさん2はワイヤーの下から抜けとうとしている。

アライさん2「う、うぅ…ここを通るのはきついのだ……」

アライさん2「地面をちょっと掘るのだ」ザクザク

アライさん2が地面を掘っている。そのお陰で、頭の位置は上下左右にぶれず同じ場所に留まっている。
今が絶好のチャンスだ。

俺はアライさんの脳天をスコープの照準に捉え、静かに引き金を引く。

エアライフルから小さくバシュっと音が鳴る。発射音の殆どはサイレンサーに吸収されている。

狙ったアライさん2は、その場で仰向けにひっくり返った。

アライさん2「う…あ…な、ひ、あ…うぁ、あ…」ガクッビグッビグッバタッバタタタッビグンビグッバタタッ

アライさん1「のだあぁ!?ま、またあ…!」

頭蓋骨を貫くにはパワーが足りないと思っていたが、
どうやらそんな心配はいらなかったようだ。

見たところ、頭蓋骨の一部を砕き、その破片が脳に食い込んだといったところか。
あれで完全にくたばるかは分からないが、動きを止めることができれば今はそれでいい。

アライさん3「うっ…ひぐっ…ぐすっ…脚がいだいのだあぁ…!」シクシク

さて、成体でまだ動ける奴は、アライさん1だけだ。

アライさん1「ひぃ!あ、うわああああああああ!いやだ!アライさんは怪我したくないのだあああ!」タタタタタ

どうやら動きを止めると撃たれることには気付いたのだろうか。
パニックを起こしたアライさん1は、円の外周に沿ってグルグルと走り回った。

アライちゃん1「こわいのだぁ!あらいしゃんおそとにでるのだぁ!」ヨチヨチヨチヨチ

アライちゃん2「にげるのだぁ!おうちかえるのだぁ!」ヨチヨチヨチヨチ

アライさんの子供達が、電気柵の下をくぐり抜けようとしている。
参ったな、まさか奴らがガキを連れてくるほどバカだとは想定外だった。
このままでは脱出されてしまう。

おい、空気のチャージは?

食通の友人「ほいよ。やっぱ電気ポンプは便利だな」

同感だ。
農夫から電源を借り、電気式のポンプで空気を200気圧までチャージしている。
手でやるのとは充填速度が桁違いだ。

じゃ、こっち銃もチャージ頼んだぞ。

アライちゃん1「でられたのだー!」スポッ

アライちゃん1が電気柵の下をくぐり、外へ出た。

アライさん1「や、やったのだ、チビ!そのまま逃げるのだ!」

アライちゃん1「のだぁー!」ヨチヨチヨチヨチ

俺はアライちゃん1の進行方向へ照準を合わせる。
そして照準の中に入る直前に引き金を引いた。
少しの時間差の後に、アライちゃん1の顔が照準に入り、そしてその体が宙を舞った。

アライちゃん1「ぶぎゃっ!」グチャアァ

アライさん1「ち、ちび!」

宙を舞ったアライちゃん1は、派手に内臓を撒き散らして地面に落ちた。
エアライフルといえど、あんな小さな小動物ならば、胴体を真っ二つに引き裂ける威力はあるのだ。

アライちゃん2「びえええええんっ!」ヨチヨチヨチヨチヨチヨチヨチヨチ

アライちゃん2は、既に電気柵の外に出ている。
まずい。一匹たりとも逃がすものか。

食通の友人「ほい、次ィ!」サッ

俺は食通の友人からエアライフルを受けとる。
おい、食通の友人!お前も暗視ゴーグルは着けてるだろ。
チャージはもういいから、走って奴を追え!

食通の友人「わかった!」タッ

アライちゃん2「こわいのやなのだー!」ヨチヨチヨチヨチ

アライさん1「ちび!そのまま逃げるのだ!…はぁ、はぁ…」ゼェハァ

俺は這い這いで逃げるアライちゃん2へ照準を合わせ…引き金を引く。

しかし、アライちゃん2のそばで砂埃舞うだけだった。
ちっ…外したか…!

アライちゃん2「はぁ、はぁ…!」ヨチヨチヨチヨチ

アライちゃん2が、どんどん離れていく。
もはやこのエアライフルの射程距離外だ。

アライさん1「ちび!強く賢く生きるのだ!そして、この人間を必ずやっつけるのだー!」ゼェハァ

アライちゃん2「おかーしゃん!いままでそだててくれてありがとうなのだ!おかーしゃんのこと、だいしゅきなのだぁ!」ヨチヨチ

アライちゃん2「あらいしゃんは、いっぱいとっくんして、つよくなるのだぁー!」ヨチヨチヨチヨチ

食通の友人「お~っと、そうは問屋が下ろさないぜ」ガシッ

アライちゃん2「のだっ!?」

アライさん1「ち、ちび!」

先回りしていた食通の友人が、アライちゃん2へ追い付き、尻尾を掴んで持ち上げた。

アライちゃん2「な、なんなのだぁ、ヒトしゃん、しっぽいたいのだあぁぁ」ジタバタ

アライさん1「お、おい!アライさんの子供を離すのだ!」

食通の友人「^^」

アライさん1「な…何笑ってるのだ?」

やれやれ、またあいつが悪趣味なことを始めようとしている。
俺はエアライフルへポンプを装着し、空気をチャージした。

食通の友人「これ何か分かるかな?そう、ゴム手袋~」

食通の友人「これをつけてっと。よいしょ」ガシッ

食通の友人はゴム手袋を自身の手へ着けると、そちらの手へアライちゃん2の尻尾を持ち替える。

アライちゃん2「ひ、ヒトしゃん!あらいしゃんをはなちてほちいのだ!あらいしゃんは、おかーしゃんとやくそくちたのだ!」ブランブラン

アライちゃん2「おおきくなって、いっぱいきたえて、あらいしゃんたちをいじめたにんげんをやっつけるのらぁ!」ジタバタ

食通の友人「そっかー。それじゃあ、俺がトレーニングしてやるよ。お前を鍛えてやる」スタスタ

食通の友人は、スタスタと歩き、電気柵へ近付く。

アライちゃん2「ほ、ほんとなのか?おねがいしゅるのだ、あらいしゃんをきたえてほちーのだ!」

アライさん1「ちびを…助けてくれるのか?」

食通の友人「それじゃあまずは!!!!忍耐力の鍛練だあァアーー!」スッ

食通の友人は、ゴム手袋越しに尻尾を掴んで逆さ釣りにしているアライちゃん2を、電気柵のワイヤーへ押し当てた。

アライちゃん2「びぃぃっ!!!いだいのだああああ!」ビグンッ

アライさん1「ちびぃ!」

アライちゃん2「いだいのやなのだあぁ!」グイン

アライちゃん2は尻尾を曲げ、体を丸め、ワイヤーに触れないようにする。

食通の友人は、アライちゃん2が全身に力を込めプルプルと震えているのをゴム手袋越しに感じているようだ。

食通の友人「そうだそうだ耐えろォ!い~い筋トレになるだろォォ!?」

アライちゃん2「もう…むりなのだぁ…!」プルプル

アライちゃん2は限界を迎えたのか、力が抜ける。
すると再び背中がワイヤー触れた。

アライちゃん2「ぎびいぃっ!!」ビグンッ

アライさん1「やめるのだ!こんなの特訓じゃないのだあぁ!」

食通の友人「じゃあてめえがこっち来て我が子を救ってみろやァア!」

アライさん1「う、うぅ、でも、このヒモに触ったらビリビリして痛いのだ…」

食通の友人「じゃあてめーのガキが苦しむ姿をそこで見物してるんだなあァ!」

アライちゃん2「びぎゃあああああ!!!ぁああああああ!!!!」ビグググッ

アライちゃん2は再び尻尾や全身に力を込めようとするが、その度に力が抜け、ワイヤーに電撃をくらっている。

よし、エアライフルのチャージ完了だ。
俺はリングの中のアライさん1に狙いを定める。

アライさん1「もうやめるのだああ!チビが死んじゃうのだ!」タタッ

食通の友人「ぶら下げるんじゃ接触が悪いな。それじゃ…」ガシッ

食通の友人は、アライちゃん2の胴体を掴むと、直接ワイヤーへ押し当てた。
ドアノブを握って押すような感じだ。

アライちゃん2「びゃああああああああああああ!のぁあああああああああああああああ!ああああああああ!」ビグググッ

食通の友人「ヒャーーーーハーーハハハァーーーー!!!身体中ビリビリしてい~い特訓になるだろォ?」

食通の友人「将来に備えて、今のうちにやっておけや!人間に挑んでブザマに負け、拷問されたときの特訓をなあァアア!」

アライさん1「やめるのだあああ!」タッ

アライさん1は我が子を救うため、ワイヤーへアライちゃん2を押し付ける食通の友人の方へ向かって走った。

アライさん1「チビを離すのだ!」ガシッ

アライさん1はワイヤーの隙間に手を突っ込み、食通の友人の腕を握る。

アライさん1「ちびを!離すのだぁぁ!」グググ

そして食通の友人の腕を、リングの外側方向へ押す。
アライちゃん2は、少しずつワイヤーから離れていく。

食通の友人「ふはは、いーぞその調子だ。ふんっ!」ガクッ

食通の友人は、腕を急に下へ動かす。
するとそれを握っていたアライさん1の腕が、ワイヤーに触れる。

アライさん1「いだいのだああああああああああああああ!!!があああぁあああ!う゛ぁあああああ!」

なんと涙ぐましいことだろうか。
我が子を救うため、アライさん1は必死に電気柵の痛みに耐え、食通の友人の腕を外へ押しているのだ。

つまり、アライさん1はその体勢のまま、あまり動かないのだ。

ここが好機!
俺はアライさん1の頭を狙い、エアライフルの引き金を引いた。

つづく

乙でした。
水を差す様で言いにくいけど電気柵ってワイヤーと地面の両方に触れてないと電気が流れないんだよね。

>>485

     ,へ、        /^i
     | \〉`ヽ-―ー--< 〈\ |
     7   , -- 、, --- 、  ヽ
    /  /  \、i, ,ノ    ヽ  ヽ
    |  (く._・_)  〈く_・)  )  |
   /  <  / ▼ ヽ    >   、
  く彡彡   ,.へへ、    ミミミ ヽ
   `<   Yュlエl'ィン     ミミ彳ヘ
      >  くェェ/´ __/   \
     /         7      \

     |        /

俺が引き金を引いた…その瞬間。

アライさん3「あしがいだいのだあぁ!だずげでえぇ!」ガシッ

アライさん1「のあ゛ぁあ゛!?」ガクッ

何を思ったか、脚を撃ち抜かれたアライさん3が、アライさん1の足首を引いて掴んだ。
そのせいでアライさん1はがくっと膝をつき…

俺のエアライフルの弾丸は、空を切った。

くそっ、本日2度目のハズレだ。
まあいい、今までたった2発の無駄弾で済んだのが奇跡的というものだ。

アライさん1「のだっ!」ペタン

アライさん1は尻餅をついた。
そのおかげでアライさん1は我が子から手を離し、電流から逃れたようだ。

俺は再びエアライフルへ弾丸を装填する。
このプリチャージ式エアライフルには、先程200気圧まで空気を込めた。
1発撃った程度ならば、再び空気を詰め直さなくとも、まだ十分な威力が出るだろう。

そもそも先程までは、確実な殺傷のためにわざわざ空気を詰め直していたが、
ここまでやってしまえばもう神経質になる必要はないのだ。

さて、もう一発狙いを定めて…
…ん?食通の友人の奴、何かやってるぞ。

アライちゃん2「ぎ…びぃぃ…」ピクピク

アライちゃん2はワイヤーから離される。

食通の友人「そうだ、次は体を大きくする特訓をしてやるぜ。よく見ておけよ」ゴソゴソ

アライさん1「もうやめるのだ、その子はアライさんの子供の最後の生き残りなのだ…!」

食通の友人が取り出したのは、エアライフル用のハンドポンプだ。

食通の友人「ヒャッハー!じゃあその子が大きくなる姿を親のてめえに見せてやるぜ!」ズボッ

アライちゃん2「の゛あ゛ぁっ!?」ビクッ

あの野郎!
俺のハンドポンプを、アライちゃん2のケツの穴に突っ込みやがった!
後で弁償させてやるからな。

食通の友人「おおきくなーれ、おおきくなーれ」ガシュガシュ

アライちゃん2「のぁあああああ!おなががいだいのだああぁ!」プクー

食通の友人は、アライちゃん2のケツの穴からポンプが抜けないように押さえつけながら、
ハンドポンプで空気を詰めていく。

食通の友人「ほぉーら、どんどん大きくなっていくぞォ~?我が子が大きくなる姿が見れて感無量だろォ!?」ガシュガシュ

アライちゃん2「のぎゃあああ!!ヒトしゃん!おながごわれじゃうのらあああああああああああああ!!!!」プクー

アライさん1「やめるのだ…!こんなの見たくないのだ…!チビが、ちびが苦しんでるのだあぁ…!」

アライちゃん2の腹がどんどん膨れていく。

ここであの親の頭をぶち抜くこともできるが、
まあ食通の友人の悪趣味な戯れが終わってからでいいだろう。

…って待てよ。このままじゃ…
おい食通の友人!耳栓付けろ!

アライちゃん2「のがあぁああああああああああああああ!」プクー

アライちゃん2の腹が限界まで膨らみ、そして…
バンッという物凄く大きな音と共に、アライちゃん2の腹は破裂した。

アライさん1「ちびぃいいいいいいいいいいいいいっ!!!!!!!」

腹部の裂け目から勢いよく臓物が飛び出て、千切れ飛んだ。

アライちゃん2「」ダラーン

アライさん1「あ…ぁぁあ…」ペタン

アライさん1「うぁあああ…!ちび、ちびがぁあああ…!」シクシク

アライさん1「アライさんが産んで、
…一緒にご飯食べて…一緒に遊んで…。大事に大事に育てた、アライさんの一番大切な子供たちがあぁ…!」ビエエエエン

アライさん1「かえすのだ、かえすのだああぁぁ!アライさんに、ちびたちの命を返すのだぁあああ!」ビエエエエン

食通の友人「ああぁ耳がいてぇ!だが、大したことはねえぜ」キーン

アライさん1がへたりこんで、わんわんと泣きわめく。
食通の友人は、あの至近距離でアライちゃん2の腸が破裂するのを聞いたというのに、
耳がキーンとする程度で済んだようだ。
バケモノめ。後で耳鼻科行けよ。もちろんてめーの自腹でな。

アライさん1「どうして、どうしてこんなことになったのだあぁ!」

食通の友人「ヒャーーーハハハ!てめぇら、ここの農家を殺すつもりだったんだろ?人間を酷い目に合わせてやるのが見たかったんだろォ~?」

食通の友人「そんなこと!万に一つも!起こり得ないんだよォ!人間様にてめーらが敵うわけがねえんだ!下等なハエガイジクソムシがああぁ!」

アライさん1「ぁあ、ああああ…頼むのだ、許してほしいのだ…もう逆らわないのだ、だから命だけは助け…」

俺は仕事でここへ来ている。遊びのつもりはない。
食通の友人の悪趣味な戯れに付き合うのはここまでだ…というより、奴も満足しただろう。

俺はアライさん1の腹部へ狙いを定め、エアライフルの引き金を引いた。

つづく

アライさん1「の゛ぁ゛っ!」バタッ

引き金を引くと、アライさん1が倒れる。
ヒットしたようだ。

アライさん1「……ぁ……ぐ……う゛!!ぐぇぇえええぇぇぁあああああぁあぁぁぁああ!!!あああああああああああああああ!!!」ドッタンバッタン

腹部を押さえながら、どたばたと暴れている。
どこに当たった?急所だろうか?

奴らは微小ながら、単体回復のスキルを持つ。
かつてセルリアンと戦ったアライさんは、その能力を活かして自ら盾となって味方のフレンズを敵の攻撃から守り、勝利を導いたという。

今、目前20mの距離でどたばたと苦しみ悶えている害獣もまたアライさんだ。

肺が片方潰れたり、小腸を撃ち抜かれたりした程度では、運が悪ければ回復して生き残ってしまう可能性がある。

食通の友人「はは!その位置は肝臓だな!肝臓脈からそんだけ出血してりゃ、10分とたたず失血性ショックで失神、そのままおだぶつだ」

アライさん1「ぁ゛あああああ゛!やだ!!!!!いだい!!!じにだぐない!!のあぁ!!!」ビクッビクッ

食通の友人がダメージを事細かに分析し、わざわざ大声で叫んでくれた。

オーケー。全員が逃げ回ることのできないダメージを負ったことで、第一段階クリアだ。

第二段階に移行しよう。
俺はハントの道具一式を運び、アライさん共へ向かって進んだ。

食通の友人「おーい。一匹、逃げようとしてる奴がいるぞ」

ああ。俺も気がついてる。

アライさん3「はっ、はっ、に、にげ、にげなきゃ…」ザクザク

太腿を撃たれたアライさんは、電気柵の下の地面を掘り、脱出しようとしている。
まだ穴は浅いようだ。

全く問題はない。

俺はワイヤーに流れる電流を止めると、扉を開け、電気柵の囲いの中に入る。

辺りには、死骸だか危篤だか分からんアライさん達が転がっている。

死んだふりをしているかもしれん。
一匹一匹、確実に止めを刺していこう。

まずは先程腹を撃ち抜いてやった個体だ。

アライさん1「あ、あら、い、さんは、わるい、やつを、やっつけて…みんなで、へいわに…くらし、たかった、だけ、なのだ」ブルブル

痙攣し始めている。
このままでも失血死するだろうが、確実な止めを刺す。

アライさん1「お、おまえたち、だって、じぶんを、おぼれじに、させようとする、やつがいたら、きっと、こうする、のだ」ブルブル

エアライフルへ弾丸を装填する。

アライさん1「おんなじなのだ、おまえたち、だって、きっとこどもが、たいせつなのだ、まもりたい、はずなのだ」ブルブル

銃口を、アライさん1の眉間に押し付ける。

アライさん1「あらいさんは、わるくないのだ、あ、あらいさん、は…たいせつな、かぞくを、てきから…まもっ…」

引き金を引く。

アライさん1「」パギャッ

アライさんの頭が大きく跳ねた。
頭蓋は内部圧力によってばかっと割れ、血と脳が飛び散った。

続いて、こいつ。
電気柵の下を掘ってる真っ最中のやつだ。
脚に一発撃ち込んだくらいじゃこいつらは死なん。確実に止めを刺す。

アライさん3「ひっ!や、やめ…アライさんには、チビ達が待ってるのだ」ガクガクブルブル

知ったことか。
俺はエアライフルへ弾丸を装填する。

食通の友人「あーらら!そりゃ気の毒なことをした!」

食通の友人「オーケー、分かった。お前一人だけ、この場から家に帰してやる」

…待て。何だって?
勝手に何を言う?見逃すわけないだろ。

食通の友人「まあまあ落ち着けハンター。悪いのは、農夫を殺しに来たこいつらだけだ。こいつのガキに罪はない」

何をバカな…
耳を痛めたついでに脳でも痛めたか、友人よ。
可哀想に。耳鼻科はともかく、脳外科の手術費は俺も半分持ってやるよ。

>>529
>>1でもないのにID真っ赤にして目障りなんだよ
すこし黙ってろ

>>531
全然問題ないですよ
むしろ反応あると嬉しいくらい

食通の友人「だが、親のあんたがついてなきゃ、子供達は…まあ…たくましく生きるだろう。だが、つらい日々を歩むだろう」

アライさん3「そ…そう!そうなのだ!チビ達にはアライさんが必要なのだ!」

食通の友人「だから、俺は寛大な心をもって、お前が子供達のところへ帰るのを許してやろう」

アライさん3「…分かればいいのだ。よかったのだ…。人間にも話の分かる奴がいたのだ…」

食通の友人「そして、お前を傷付けたお詫びだ。その脚じゃ満足に家に帰れないだろう。連れてってやるから、家まで案内してくれないか?」

アライさん3「勿論なのだ!でも、それだけじゃお詫びにならないのだ!アライさんは脚や仲間を傷付けられたのだ、たくさん食べ物をよこすのだ!」

食通の友人「仰せのままに。お前の家に着いたら、沢山食べ物を収穫することを…約束しよう」

アライさん3「物分かりがいいのだ!それじゃあ、さっさと運ぶのだ!」


俺は長年こいつと付き合ってきたから分かる。
食通の友人は、絶対に相手との約束を破らない。
もっとも、その約束が相手の望む形で果たされるかは別だがね…。

続きは後で

俺は農夫が仕掛けていた5つの罠籠のうち1つを外すと、食通の友人へ渡す。

これにアライさんを入れて持っていけ。

食通の友人「オーライ。気が利くね」

俺の方は、この地面に転がってる奴らに確実な止めを刺した後、電気柵を畑の回りに張り直しておくぞ。
二人ともここを離れたら、畑に他のアライさんが来るかもしれないからな。

それと、お前も向こうでこれ使うだろ。
エアライフルを一丁持ってけ。

食通の友人「サンキュー。じゃ、一丁借りていくぜ」ガラガラ

アライさん3「あっちの方なのだ」ユビサシ

さて、食通の友人は行ったか。

俺の方は、止め刺しを開始する。
まずは撃たれた後にゴキガイジムーブしたアライさん5と、頸動脈から大量出血したアライさん4を蹴飛ばした。
どちらも反応はない。これだけの出血だ、死んでいるとみてよい。

そして、電気柵の外にいる2匹のアライちゃんを見る。
どちらも派手に内蔵をぶちまけており、確実に死んでいる。

さて、あとは…

アライさん2「あ、あび、び、びび、あびびび」ビグンッビグンッビグンッ


穴を掘ってる途中に頭を撃ってやった奴だ。
脳が中途半端な壊れ方をしたようで、わけのわからない声を出しながら痙攣している。

気持ち悪いから、さっさと仕留めよう‼
そいつを蹴っ転がしてうつ伏せにする。

アライさん2「あびっ」ゴロン

そして、首筋にエアライフルの銃口を押し当て、引き金を引く。
バスっと音が鳴ったと同時に、アライさん2の体が少し跳ねる。

首筋からはおびただしい出血が見られた。
脛椎を破壊した。これで心停止は確実である。

俺は電気柵を、再び畑の回りにぐるっと囲うように設置した。

これで、こっち側は仕事完了だ。
あとは、電気柵にアライさんが近付いてこないか見張り、来たら狙撃するだけだ。

つづく



食通の友人は、森の奥へ歩みを進めた。

食通の友人「ついエアライフル借りてきちまったけど…俺が持ってても銃刀法違反だよなコレ。俺免許持ってねーし」ザッザッ

アライさん3「よかった、脚の血が止まったのだ…」

アライさん3は太腿を撃ち抜かれていたが、大腿動脈などの急所は傷付いていなかったようだ。
単体回復のスキルのせいか、既に傷はかさぶたで覆われて血が止まっている。

食通の友人「…バケモノめ…」ザッザッ

アライさん3「ん!この辺なのだ!おーい、チビ達!アライさんのお出ましなのだ!」

食通の友人「どっちだ?」

アライさん3「あの木に空いてる穴の中なのだ!」

食通の友人「ここか?」ジロジロ

食通の友人「…顔が見たいな。お前に似て可愛い顔してるんだろ?」

可愛い顔とは言うが、アライグマのフレンズは若干(?)つり目気味であり、フレンズ愛好家の間でも賛否両論…
好みが分かれる所である。

もっとも、アライさん達をフレンズの少女でなく、汚らわしい害獣としか見ていない者にとっては、
その比較的整った顔も虫の擬態か何かのようにしか見えないとのことである。

食通の友人「子供達を出してくれたら…、そうだな、さっき約束もしたし。ご飯にしようか」

アライさん3「本当なのか?」

食通の友人「本当だ。俺は約束は必ず守る。さっき言った通り、子供達のところへ帰ることを許してやっただろう?」

アライさん3「わかったのだ!おーい!チビ達!出てくるのだ!」パンパン

アライさん3が手を叩く。
すると、木に空いた穴から声が聞こえてくる。

アライちゃん3「おかーしゃんなのだー!」ヒョコ

木の穴から、アライさんの子供が顔を出す。

アライちゃん4「しょーしゃのがいせんなのだー!」ピョコ

アライちゃん5「おかーしゃん!わるいやつやっつけたのだ?あしたからまたおいしーおやさいたべれりゅのだ?」ヒョコ

アライちゃん6「おまんまほちーのら!」ヒョコ

アライちゃん7「なのぁー!」ヒョコ

食通の友人「ヒャア5匹も!こりゃ大漁だァ!」

食通の友人「さー腹減ったろ。ご飯にするぞ。さ、籠から出な」ガシャ

食通の友人は、籠の蓋を開け、アライさんを外に出す。

アライさん3「チビ達!出てくるのだ!こいつがご飯をくれるのだ!」

アライちゃん3「ごはんなのだー!」ワイワイ

アライちゃん4「みんなでたべるのだー!」キャッキャ

子供達が、一匹ずつ木の穴から下りてくる。

アライちゃん5「わるいやつやっつけたうえに、どれーまでつれてくるなんて、おかーしゃんはいだいなのだぁ!」ヨチヨチ

アライちゃん6「のぁー!」ピョコ

アライちゃん7「なのらぁー!」ヨチヨチヨチヨチ

食通の友人「ご飯を…『あげる』?そう言ったっけ?」スッ

食通の友人は、アライさん3の背後で、5キロはあろうかという大きなハンマーを振り上げる。

そして、そのハンマーをアライさんの後頭部へ振り下ろした。

アライさん3「のぐゃっ!!?」ドボギャ

食通の友人「ヒィーーーット!!!!」

アライさん3はその場に昏倒する。

アライさん3「あ、ぁ、う、ぅぁ、ぉ、ぁ、あぁあぁ、あ」ガクガクビグンッビグググッビグンッバタバタタバタッ

食通の友人「うん。いーいゴキガイジムーブだ」

アライちゃん3「!?」

母親が目の前で殴り倒されるのを見た子供達。

アライちゃん3「な、なにするのだー!」

アライちゃん4「おかーしゃんをいじめるな!あらいしゃんがやっちけちゃうのだ!」

アライちゃん5「おかーしゃん!!めをさますのだぁ!おがーしゃん!」グイグイ

アライちゃん6「やなのぁー!こぁいのぁー!」ヨチヨチヨチヨチ

アライちゃん7「びえええええんっ!」ヨチヨチヨチヨチ

食通の友人「さーて回収タイムといくか」ガシッ

アライちゃん7「いーーやーー!やーなーのぁー!」ジタバタ

食通の友人は、一番小さな子供を捕まえると、籠へ入れる。

アライちゃん4「ひとしゃんなんて、らくちょーなのだ!えい!」ペチッ

食通の友人の足首を、右手で叩くアライちゃん4。

アライちゃん4「やぁ!」ペチッ

左手で足首を叩く。

アライちゃん4「たあ~」ペチッ

右手。

アライちゃん4「ふははは!てもあちもでないのらぁ!あらいしゃんはさいきょーむてきなのらぁ!」ペチッ

左手…

アライちゃん4「あらいしゃんのつよさに、びびってるのらぁ!」ペチッ

再び右手が足首を叩く…

アライちゃん4「やーい!よわむしなのだ…」ブンッ

アライちゃん4が左手で足首を叩こうとした瞬間、
食通の友人はその足を上げた。

アライちゃん4「のぁ?」スカッ

体勢を崩したアライちゃん4は、その場で転がる。

アライちゃん4「のぁっ」コロン

食通の友人は、アライちゃん4の小さな小さな左手に向かって、靴の踵に全体重を乗せて勢いよく踏みつける。

食通の友人「死ねェエェーーーーーーーッ!!!」ドグシャアア

アライちゃん4「あぎぃゃぁああぁあああぁあぁあ゛あ゛ぁあ゛ァァーーーーーっっっ!!!いだいのらぁぁーーーーーーーっ!!!!!」

食通の友人「2匹目」ヒョイ

アライちゃん4「いだいぃーーーーっ!!!あらいしゃんのおててぇーーーーーーっ!!!おててがぁーーーーーっ!おがーしゃーーーんっ!おがーしゃんだずげでええええええっ!」ビエエエエン

食通の友人は、泣きじゃくるアライちゃん4を籠へ投げ入れる。
その左手は道路で車に潰された虫のようにペタンコになっており、骨が突き出ている。

アライさん3「あ…ぅ…どこ…なのら…ちび、たち…ぅ…ごちそうは…どこなのら…」ガクガクビグンッビグンッ

母親は何やらうわ言を呟いている。
三途の川で野菜でも洗っているのだろうか。

アライちゃん3「にげるのだー!」ヨジヨジヨジヨジ

アライちゃん6「のぁー!」ヨジヨジ

アライちゃん7「びええええん!」ヨジヨジ

子供達3匹は、巣穴へ向かって木をよじ登る。

訂正

× アライちゃん7「びええええん!」ヨジヨジ

○ アライちゃん5「びええええん!」ヨジヨジ

一番チビな7は、最初に捕まりました。

食通の友人「はいもう一匹ゲットー」ガシ

アライちゃん5「はなすのぁー!びええええんっ!こわいのらあぁ!おがーしゃん!おがーしゃーーーんっ!」ジタバタ

こいつも籠へ投げ入れる。

アライちゃん3「おうちかえるのだぁ!」スポッ

アライちゃん6「なのらー!」スポッ

2匹が巣穴へ潜ってしまった。

食通の友人「この辺かな?」ズボッ

食通の友人は、巣穴へ手を突っ込んだ。

食通の友人「どーこだ」ゴソゴソ

巣穴の中で、アライちゃんが食通の友人の手をバリッと引っ掻いた。

食通の友人「ッッ痛」ズボッ

食通の友人は、巣穴から手を引っこ抜いた。

食通の友人「ハァ…ハァ…なめやがって…」ガシッ

怒りに震える食通の友人は、先程母親の頭をぶん殴った5キロハンマーを握る。

食通の友人「くたばりやがれェェーーーーーーッ!!」ブンッ

振りかざしたハンマーは木の穴よりやや下に当たり、その表面を打ち砕いた。

アライちゃん5「ぎびぃいぃいぃーーーーーーーーーっ!!!!!!!」

ハンマーをどけると、砕けた木の破片にはさまり、アライちゃん5が血まみれで巣穴の壁に貼り付いていた。

食通の友人「食えるかなぁこれ…まあいいや、4匹目」ヒョイ ポイッ

アライちゃん5「」ベチャッ

アライちゃん5「」ビグンッビグググッバタッバタッ

アライちゃん5は籠の中へ入れられた瞬間、手足を小刻みに震わせた。

>566訂正

食通の友人「くたばりやがれェェーーーーーーッ!!」ブンッ

振りかざしたハンマーは木の穴よりやや下に当たり、その表面を打ち砕いた。

アライちゃん3「ぎびぃいぃいぃーーーーーーーーーっ!!!!!!!」

ハンマーをどけると、砕けた木の破片にはさまり、アライちゃん3が血まみれで巣穴の壁に貼り付いていた。

食通の友人「食えるかなぁこれ…まあいいや、4匹目」ヒョイ ポイッ

アライちゃん3「」ベチャッ

アライちゃん3「」ビグンッビグググッバタッバタッ

アライちゃん3は籠の中へ入れられた瞬間、手足を小刻みに震わせた。

食通の友人「さて」

アライちゃん6「ぴ、ぴいぃ!」ガクガクブルブル

アライちゃん6は、巣穴の奥でがたがたと震えている。

アライちゃん6「のぁ、なのあぁぁ!」プルプル

食通の友人「これでラスト」ガシッ ヒョイ

アライちゃん6「…!」ジタバタ

アライちゃん6は食通の友人に握られる。

アライちゃん6「がぶっ!」ハムッ

食通の友人「!」

食通の友人は、アライさん6を握った手を高々と上げる。

食通の友人「ッッ痛ェーーーなクソガイジハエゴミがあぁーーッ!」ブンッ

そして籠の上面へと、思い切り叩きつけた。

アライちゃん6「ぎぴぃーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!!」ガシャンッ

アライちゃん6は、鉄製の籠の上面へ叩きつけられて大きくバウンドし、草の上に落ちた。

アライちゃん6「」グッタリ

食通の友人「手間かけさせやがって。よいしょ」ガシッ ポイッ

アライちゃん6を籠へ投げ入れる。

食通の友人「フゥー、フゥー…。勿体ないことしたな…。五体満足だったのに、半分くらい半殺しにしちまった」フゥーッフゥーッ

食通の友人「フレンズには寄生虫も病原体も無いとはいえ…、野生の獣に引っ掻かれ、噛みつかれるってのは生きた心地がしねえな」ゼェハァ

食通の友人「そして、最後に」ガシッ

アライさん3「あ、ああ、ち、ちび、ちびたち、どこなのだ」ガクガク

食通の友人「お前らの大好きなママを、籠に入れてやるよ」ポイッ

食通の友人「クローズ」ガシャ

食通の友人は、籠を閉める。

質問なんだけど、ショクエモンPはアライさん料理専門店なの?
あと、アライちゃんの方は極力生け捕りにしようとしているのにも理由があったり?

食通の友人は、籠の中を覗き込む。

アライさん3「」ピクピク

アライちゃん3「」ビグンッビグググッバタッバタッ

アライちゃん4「あらいしゃんのおててがぁぁーーーーーっ!」ビエエエエン

アライちゃん5「おがーしゃん!おきて!おぎるのだあぁぁ!またわるいやちゅが!あらいしゃんたちをいじめるのだ!おきてやっちゅけるのらぁ!うええええんっ!」ユサユサ

アライちゃん6「」グッタリ

アライちゃん7「だちてー!」ヨチヨチヨチヨチ

食通の友人「はは!籠の中は阿鼻叫喚の地獄絵図だ!おもしれー!まるで動物園みてーだ!」

食通の 友人は籠を持ち、森に入ってきた道を戻った。

つづく

>>572
後程その辺は描写するかも



食通の友人が、森から戻ってきた。

籠にはアライさんの親子がぎっしり詰まっている。

食通の友人「悪の芽は摘んだぜ」

まさか、子まで探してかっさらってくるとは…。
あのアライさんと意志疎通をとり、子供の居場所を聞き出すなど、俺には真似できない芸当だ。

食通の友人「そっちはどうだ?」

ああ、あの後他のアライさんが3匹畑に近付いてきたよ。
全員撃ち殺したけどな。

食通の友人「さすが」



そして、夜が明けた。



アライさん達の死骸「」グチャア

アライちゃん達が入った籠「ダスノダー!」ガシャンッガシャンッ

農夫「こ、これは…?」

食通の友人「昨晩こっそり、知り合いのハンターに依頼して、あなたをアライさんから守ってました」

こいつらは、あなたの命を狙ってやってきました。
我々が駆除しなければ、あなたは怪我を負うか、最悪死んでいたかもしれません

農夫「そんな、ばかな…一体どうして…」

食通の友人「溺死し損ねた奴が、徒党を組んできたんでしょう」

農夫「…君のお陰で救われた。ありがとうな。費用はちゃんとワシが払うよ」

食通の友人「頼みますよ」

これからは、あいつらの駆除にはちゃんとプロの駆除業者を呼んでください。
我々は、日々奴らの行動原理と、効率的かつ安全な殺し方を研究してるんですから。

農夫「あんたがいうと説得力あるな…わかったよ」

食通の友人「じゃあ、捕らえたこいつらは、貰っていきますよ」ガシャ

農夫「ああ、それは…大丈夫なのかい?確かアライグマやらウシガエルやらは、特定外来ナントカっていう法律で、生きたまま持ち運びできないんだろう?」

食通の友人「動物のままなら、ね。フレンズは違います」

農夫「なんと?」

食通の友人「大体それじゃあ、外来生物のフレンズは、善良であっても人と一緒に移動しただけで殺されちゃうじゃないですか」

農夫「それは可哀想だなぁ…」

かつて人々を脅かしていたセルリアンを、退治してくれたフレンズ達…。

彼女達は、人間に成り代わって地上の支配者になることだってできた。
しかしそんなことはせず、人類復興のために力を貸してくれたのだ。

そんな彼女達を、一体なぜ畜生扱いできようか。

そんな人々の感謝と尊敬から制定されたのが、『フレンズと国民と自然の共存のための法律』である。

簡単にいうと、フレンズは獣として生きることもできるが、
申告すれば人としての戸籍を持ち、差別なく人と平等に暮らせるというものだ。

農夫「人と同じか…。ん?だったら、尚更アライさん達を駆除しちゃいけないんじゃないのか?」

そこでできたのが、『特定有害フレンズの駆除促進のための法律』…
通称アライさん駆除法である。

「第一条。
以下のフレンズは、戸籍を持たない限り、特定有害駆除対象フレンズとする。

・アライグマ


以上」

農夫「…?なんだそりゃ?」

数年前、火山の噴火でサンドスターが撒き散らされ、
野生のフレンズが急増した。

その中の多くは、人と共存し、コミュニケーションを取ることが可能だった。
しかしただ一種だけ、極めて利己的であり、人々の生活を脅かす害獣と成り果てたフレンズがいた。

それがアライさんである。

サンドスターには人の意志が宿る…と聞く。
日本に住むアライグマがフレンズ化した際、その人格形成には、害獣としての側面が大きく反映されたのだ。

最初は彼女達となんとかして共存しようと試みる者もいた。
だが今ではもはや、そんな夢物語を語る者はお花畑の住人くらいしかいない。

ただの迷惑な奴…で済めば、話は簡単だった。
だが、アライさん達の脅威はそんなことで収まる規模ではなかった。

アライさんといえば「宝探し」。
その貪欲な物欲により、民家を意図的に荒らし回り、
「面白そうなもの」や「美味しそうなもの」を強奪していく。

さらに、その繁殖力。
フレンズは全員が雌である。
その増え方はネズミ算といって差し支えない。

最も恐ろしいのは、単体回復のスキルと、一切の寄生虫や病原体を寄せ付けない異常な免疫力である。

一般の動物は、生後から成体まで育つ確率は30%に満たない。
それは病死であったり、怪我であったり、他の生物からの捕食であったりする。

だが、アライさんはその殆どと縁がない。
成体まで育つ確率はゆうに90%を超える。

このまま放置すれば、自然は荒廃し、冗談抜きで人類の文明が崩壊しかねない。

フレンズ達との協議の結果、戸籍を持たないアライさん達を、『特定有害駆除対象フレンズ』と認定。

国家ぐるみでの駆除作戦が始まったのである。

アライさん駆除の名目では軍隊を動かせないため、民間の狩猟者が中心となり駆除を進めるしかなかった。

始めはただただ、徒労であった。
生産性のない狩猟に対し、協力する者は多くはなかったし、
国家予算も雀の涙であったという。

だが、転機が訪れた。
あるカニバリストが、仕留めたアライさんの肉を食ったところ、
一般販売される食肉すら上回る、絶品ともいえる美味だということに気付いた。

サンドスターの影響だろうか。
元のアライグマも悪くない味だが、それを遥かに凌駕する美味なのだ。

アライさんに食肉としての利用価値を見いだされたことで、
『特定有害フレンズの駆除促進のための法律』へ二条以降が追加されたのだ。

「第二条。
特定有害駆除対象フレンズは、
国家が指定した研究機関を除き、一切繁殖の助長を禁止する。
本法律に違反した場合、個人に対しては懲役30年以下の禁固刑または3000万円以下の罰金を、法人に対しては8億円以下の罰金を課す。」

「第三条。
特定有害駆除対象フレンズは、その駆除を以て達成される事業を認可され、
フレンズ省及び環境省の審査により助成金を受けることができる。
ただし、第二条を守るため、特定有害駆除対象フレンズの存在なくして存続できない民間事業はこれを禁ずる。」


長いから大雑把に言うと、
・アライさんを繁殖させるのは禁止!
・アライさんの駆除を助長するビジネスには補助金出すよ!
・でも、アライさん無しじゃ存続できないビジネスは、そのうちアライさんを繁殖させるかもしれないからダメだよ!

ということだ。

農夫「ポカーン」(話についていけてない)

どうやら農夫は、長々とした説明で頭がパンクしかかっているようだ。

食通の友人「要するに、俺はこれからこいつらを自分の店で調理する。だから持ち運びしてもいいんですよ」

農夫「…はっ、そ、そうなのか…」

食通の友人「そうです」

全く…
こいつと同じ悪趣味を持った連中のお陰で、
俺はアライさん狩りでなかなか儲けているというのだから、複雑だ。

俺はアライさんの肉なぞお断りだ。死んでも口にしたくないね。
食通の友人よ、こないだ仕留めた鹿の肉まだあったろ。

今日の昼飯は、お前んとこのジビエ料理店に行くよ。

食通の友人「おっ、そうか!じゃあ、アラジビ料理にも挑戦してみないか?」


…お断りだっつってんだろッ!



翌日。
食通の友人は、ブログへアライちゃんが入荷したことを記載した。

すると、彼の経営する『食獲者(ショクエモン)ジビエ料理店』は、即座に予約が殺到。
限定15食程のアラジビ料理は、一瞬で予約が埋まってしまった。

食通の友人「さて、料理の仕込みをやるか」

食通の友人は、アライさん一家が入った籠に目をやる。

幸いにも、あれだけの地獄絵図にも関わらず、
死亡したのは母親であるアライさん3と、ハンマーで押し潰されたアライちゃん3の二匹のみであった。

これらはとうに血抜きを済ませ、冷蔵されている。

食通の友人「さーて、糞抜きとかライブキッチンの準備とかやっとこうかな。明日は客が殺到するだろうし」

プルルルルル

食通の友人「はい、もしもし。…はい、大臣。え!?今から!?今からですか!」

食通の友人「しかしこの食材は、明日の限定15品の…。え?14品にすればいいって?うーん…まあ、分かりました」

ピッ プーッ プーッ プーッ…

食通の友人「…全く、さんざん世話になったとはいえ、大臣はいつも突然だから困る…」

数分後、ジビエ料理店「食獲者」の前に、高級車が到着した。

中からは、黒いスーツに身を包んだ3名の少女と、
温かそうなコートを着た少女が1名現れた。

食通の友人「お出ましか」

??「さ、新作のアラジビ料理を食べさせるのです。予約に割り込んだ分、お題は弾むのです」

食通の友人「ようこそ、大臣」

特徴的な髪、耳、尻尾。
高級車から降りてきた4名は、全員がフレンズである。

食通の友人は、コートを着た少女…大臣と呼ばれるそのフレンズを店内へ招く。

食通の友人「さて、何かお望みの料理はありますか?」

大臣「こないだのアラジビフェスで披露した、アラフライもいいですが…。未公開の新作はあるのですか?」

食通の友人「はい。ビックリするようなのがありますよ」

大臣「じゃあ、それを寄越すのです」

食通の友人「かしこまりました。驚いて体がシュッと細くなるようなのをお出ししますよ」

大臣「わくわくするのです」

誰も見たことのない完全新作メニューが、
突如訪れた、このやたら偉そうなフレンズの前で披露されることになった。

つづく

食通の友人は、籠の中を覗いた。

食通の友人「どいつを使おうか」

アライちゃん4「うぅ…あらいしゃんのおてて、なくなっちゃったのだぁ…」

こいつは腕を踏み潰された個体だ。
人間であれば、手を失った後ろくな止血もしなければ、失血死してしまうだろう。
しかしアライちゃん4の腕の断面は、かさぶたで覆われており、出血は既に止まっている。
これも単体回復スキルのなせる技である。

食通の友人「今回は…カタワは使いたくねえな」

アライちゃん5「おがーしゃん…おかーしゃんがいなくなっちゃったのだ…いつかえってくるのだ…」

こいつは五体満足で取っ捕まえた個体だ。
親がくたばったことを受け入れられないのだろうか。
候補ナンバー1といったところだろう。

アライちゃん6「ひとしゃん、おなかしゅいたのら、ごはんくらしゃいなのら」

こっちを見ながらそう言うのはアライちゃん6。
俺の手を噛みついたから、籠の上面へ思いっきり叩きつけてやったのだが。
思いのほかダメージが少なかったようだ。

アライちゃん7「おまんまー!」グーギュルル

一番幼いアライちゃん7。こいつも五体満足だ。
空腹のことしか考えていないようだ。
能天気な奴め。


食通の友人「どいつを使おうかな…?そうだ、ブログで投票してもらうか」

Title:すまないお前ら

よう、お前ら。ショクエモンPだ。

先程は新鮮なアラジビ料理の予約ありがとうな。
先着15皿ということだったが、今から急な来客が来て、急遽アラジビ料理を振る舞うことになって、やや減りそうだ。
ハンターの友人に代わりの調達を頼んでるが、見つからなかったらすまない。

でさ。
この中のどいつを料理しようかな?
今からちょっとの間、投票を受け付けようと思う。
各個体の特徴は、>>622-625を見てくれ。

■ブログアンケート:
アライちゃん4~7のうち、どいつを食材にしようか?

>>625-630

食通の友人が、籠の前へ再度やってくる。

アライちゃん4「ひぃっ…!」ビクッ

アライちゃん5「うぅ…おなかぺこぺこでのどもかわいたのだ…おかーしゃん…おかーしゃん…」ションボリ

アライちゃん6「ひとしゃん、おまんまと、おみずくらしゃい」

アライちゃん7「うええええんっ!」ビエエエエン

食通の友人「水差しが空になってるな。ボトル交換しとくか」カチャカチャ

食通の友人は、籠に取り付けた給水ボトルを外し、水道水を注いで再度取り付けた。

アライちゃん6「お、おみずなのら!」チュパチュパ

真っ先にアライちゃん6が給水ボトルへ飛び付き、水を飲み始めた。

アライちゃん6「ごくごく!ごくごく!」

みるみるうちにボトルの中の水が減っていく。

アライちゃん7「みずー!」グイグイ

アライちゃん5「あ、あらいしゃんにも、のませるのだ!」ゲシゲシ

アライちゃん4「どくのだー!あらいしゃんがいちばんおねーしゃんなのだ!」ゲシゲシ

アライちゃん6「ぷはぁ、いたいのら!いまはあらいしゃんがのんでるのら、じゃましないでほちーのら!んぐっ…ごくごく………」

あっという間にボトルの水が減っていった。

アライちゃん6「ぷはぁ~。ひとしゃん、おみずだけじゃやなのら、ごはんもくらしゃい」

アライちゃん7「ごはんー」ヨチヨチ

アライちゃん5「そ、そうなのだ…!ひとしゃん、やまであらいしゃんたちにいったのだ!ごはんにするぞって」

アライちゃん6「ひとしゃん、うしょちゅきなのらぁ」

アライちゃん4「うぅ…」

食通の友人「嘘なんてつくもんか。今からご飯にするとこだよ。ただし、一匹だけな」

そう言った途端。

アライちゃん4「ごはん!ごはんなのだ!」ピョンピョン

アライちゃん5「あらいしゃんにくだしゃいなのだ!」ピョンピョン

アライちゃん6「あらいしゃんがたべるのらー!」ジタバタ

アライちゃん7「まんまー!まんまー!」ヨチヨチ

全員が一斉に、こっちに向かってアピールしてきた。

食通の友人「じゃ、お前にするわ」ガシッ

食通の友人は、アライさん6を鷲掴みにする。

アライちゃん6「やったのらぁ!」

アライちゃん4「あ、あらいしゃんにも、よこすのだ!」ガシッ

アライちゃん4が、片手だけで食通の友人の手にしがみつく。

アライちゃん5「あらいしゃんもほしいのだ!」ガシッ

アライちゃん7「まんまー!」ガシッ

全員が食通の友人の手にしがみついて来た。

食通の友人は、そのまま手を引き上げる。

アライちゃん4「のだぁ!」ズルリ

片手しかないアライちゃん4は、自重を支えられず、ずり落ちていった。

アライちゃん5「あらいしゃんもたべるのだー!」グイグイ

アライちゃん7「ごはんー!」グイグイ

アライちゃん6「みんなじゃないのら、あらいしゃんがえらばれたのだぁ!ごっはん♪ごっはん♪ヒトしゃんしゅきしゅきなのらぁ♪」スリスリ

アライちゃん6は、自身を握る食通の友人の手へ頬を擦り寄せた。
自分たちを拉致した相手だというのに。
自分を思い切り籠の上面へ叩きつけた相手だというのに。

どうやらアライちゃん6は、衝撃で一部記憶を失っているようだ。

楽しそうに笑顔を向けるアライちゃん6。

食通の友人「おい俺の手にしがみついてるクソガイジゴキバエ共!邪魔だ!」ブンッ

食通の友人は、手首のスナップを利かせ、アライちゃん5と7を籠の壁へ叩きつける。

アライちゃん5「のぎゃっ!」ベチーン

アライちゃん7「いちゃいのらぁ!」ベチーン

まとわりついていたアライちゃん達は衝撃で手からズリ落ちた。

アライちゃん6「ごっはんなのらぁ♪ひとしゃん、あらいしゃんおなかぺこぺこなのら、いっぱいごはんくらしゃいなのら」キャッキャッ

アライちゃん6は、食事にありつける期待のためか、食通の友人に握られている手の中ではしゃいでいる。

食通の友人は、籠からアライちゃん6を出すと、籠のすぐ隣へタライを置いた。
タライへ新聞紙をしき、その上へアライちゃん6を置いた。

食通の友人「ほーら、たくさんお食べ」サッサッ

食通の友人は、千切りのキャベツを新聞紙の上に落とす。

アライちゃん6「いただきましゅなのら!はむはむ、もぐもぐ…」サクサク

アライちゃん4「あ、あらいしゃんもsほしいのらぁ!」ガシャンガシャン

アライちゃん5「ずるいのだぁ!こっちにもよこすのだぁ!」

アライちゃん7「まんまー!」ガシャンガシャン

アライちゃん6「おいちーのら!ひとしゃんだいしゅきなのらー!」モグモグ

美味しそうにキャベツを食べるアライちゃん6を、姉妹は恨めしそうに妬み、睨んでいる。

アライちゃん6「うっ…!?」ギュルルルルル…

まあ、もちろん。
キャベツには、 た っ ぷ り 下 剤 と 嘔 吐 剤 が 入 れ ら れ て い る 。

アライちゃん6は、姉妹の目の前で、新聞紙の上で脱糞し、嘔吐した。

新聞紙の上に、悪臭が漂う。

アライちゃん6「うぅ、うえぇ…おなかごわじじゃっだのらぁ…!うえええん…!」ヒックヒック

アライちゃん7「くしゃいのらー!」

アライちゃん4「ざまみろなのだ!よくばるからばちがあたったのだ!」キャッキャッ

アライちゃん5「えんがちょなのだ!ごみなのだ!」

アライちゃん6「うぅ…、ひとしゃん、さっきのたべものやなのら、ちゃんとたべれるのをちょうだいなのら…」シクシク

食通の友人「うーきたね。じゃ、さっさと洗うか」ガシッ

アライちゃん6「のぁ?」



アライちゃん6は、例の器具を口と肛門に奥深くまで突っ込まれ、水洗洗浄された。



さらに、アライちゃん6は水を張ったタライへと沈められ、全身をジャブジャブと洗われた。

アライちゃん6は溺れかけながら、地獄の責め苦を味わった…
と形容するのは大袈裟すぎである。


なぜなら、本当の地獄は こ こ か ら や っ て く る か ら で あ る 。



食通の友人は、厨房から店へ戻ってきた。

食通の友人「おまたせしました。ライブキッチン準備できました」スタスタ

アライちゃん6「うぐっ…ひぐっ…ぐしゅっ…ひとしゃんに、いっぱいいじめられたのらぁ…!」シクシク

大臣「…」

大臣は待っている間、テレビでニュースを見ていたようだった。

『次のニュースです。特定有害駆除対象フレンズ輸出制限法が可決されました』

大臣「やったのです。念願の法案が通ったのです。苦労したのです」

食通の友人「ああ、ようやく可決されたんすねこれ。おめでとうございます」

大臣「これで、特定有害駆除対象フレンズは、生きたまま海外に輸出したり、持ち出すことが不可能になったのです」

食通の友人「ふむふむ」

大臣「つまり、海外で特定有害駆除対象フレンズを養殖したり、ライブキッチンをするのは不可能になったのです」

大臣「つまり、外人がアライグマフレンズ料理を食いたければ、加工済みの肉を輸入するか、日本に来るしかないのです」

食通の友人「観光客が増えることを期待してるってわけですね」

大臣「それだけじゃないのです。海外でアラジビ肉の需要が増えれば、アライグマフレンズの狩猟と国外輸出がビジネスとして活性化するのです」

大臣「ビジネスが活性化すれば、スポンサーが増え、狩猟活動に経済支援を得られるのです」

大臣「アラジビ肉の国外需要が増えれば増えるほど、駆除が進むのです。好循環なのです」

食通の友人「…国内の野良アライさんを狩り尽くしたら?」

大臣「そのときはビジネスも駆除活動も、アラジビフェスも終了なのです。農作物被害が無くなってハッピーエンドなのです」

食通の友人「…」

大臣「どうしたのです?」

食通の友人「…なんかもにょるな、それ」

大臣「まずは駆除しないことには始まらないのです」

食通の友人「アライさんを狩り尽くしたら、もうアラジビ肉ビジネスが無くなるわけで…。失業者とか出るんじゃないすか?」

大臣「そのために、駆除法の三条があるのです。特定有害駆除対象フレンズに依存し、生命線とするビジネスは禁止してるのです」

食通の友人「うーん…なんだかなぁ…」

アライちゃん6「…いまのうちににげるのらぁ~…」ヨチヨチヨチヨチ

大臣「まあ見てるのです、きっと上手くいくのです。それより今は、お前が上手く美味いもんを作る時なのです」

食通の友人「そ、そっすね。では、えー、観客は1人しかいませんが。ライブキッチン始めまーす!」ガシッ

アライちゃん6「のりゃあ!?」ジタバタ

大臣「わくわくするのです」

つづく

食通の友人は、アライちゃん6をタッパーへ閉じ込めた。

タッパーの中のアライちゃん6は、じたばたと暴れまわっている。

アライちゃん6「…!…!」ジタバタ

食通の友人「その前に、舞台に相応しい衣装へ着替えてきます」

食通の友人は一度厨房へ引っ込むと、透明なレインコートを着て戻ってきた。

食通の友人「まずは、ステージをセッティングしましょう!」

そう言うと、食通の友人は店内の広いスペースへ透明なビニールシートを敷いた。
ビニールシートはとても清潔そうである。

食通の友人「えー、お客様。汚れる可能性があるので、離れてご覧ください」

大臣「わかったのです」スッ

食通の友人が着ている透明なレインコートの下は、いかにもシェフらしい服装。いわゆるコックコートである。
清潔感のあるエプロンに、『食獲者』の刺繍が縫い付けてある。

食通の友人「さて、それでは。早速…」

タッパーの中のアライちゃん6は、酸欠のせいで喉を押さえてもがき苦しんでいる。

食通の友人「ショーの主役の登場です!」ポイッ

食通の友人は、タッパーの蓋を空けると、アライちゃん6をビニールシートの中央へ投げた。

アライちゃん6「のあぁっ!」ペタン

アライちゃん6「はーはーはーはーはーはーはーはーはーはーはーはー」ゼェハァ

窒息寸前だったアライちゃん6は、息を切らせて空気を吸い込み、吐いている。

食通の友人「空気は美味しいかい?」スッ

食通の友人は、ハンマーを抱え上げている。

アライちゃん6「ぜぇはぁ、ぜぇはぁ!」ハァハァ

食通の友人「おーい、無視すんなよ!」ブンッ

食通の友人は、ハンマーをアライちゃん6の右脚に叩きつけた。

アライちゃん6「のぎゃあああぁっ!」ブヂャッ

凄まじい音だ。
アライちゃん6の脚が、床とハンマーに挟まれ、潰れる音。

潰れた脚から血溜まりが広がる。

アライちゃん6「あぎゃああああぁあああ!のぁ、のあぁぁぁ!あらいしゃんのあんよがあああああ!いぢゃいのらあぁぁ!おがーしゃん!おがーーしゃあああああんっ!」ジタバタ

アライちゃん6は、潰れた右脚を押さえて、ビニールシートの上をごろごろと転がっている。
転がり回った跡には、血が太い線を引いている。

食通の友人「押さえつけてっと」ガシッ

食通の友人は、アライちゃん6の頭を床へ押し付ける。

アライちゃん6「いぢゃいぃいぃいいぃぃ!ああああああ!いぎゃああああああああ!」ジタバタ

食通の友人「右脚から手を離しな、おちびちゃん」

アライちゃん6「ひどしゃん!あらいしゃんにひどいことするのやめるのらあぁぁ!」ビエエエエン

食通の友人「離さないと、次は…お手々ごといっちゃうぜ!おらァ!」ドゴオォ

再び、アライちゃん6の右脚へハンマーを叩きつける。

アライちゃん6「ぎびゃああああああああああああああああ!」ドチャアッ

今度は、右脚を押さえる両手ごとハンマーと床に挟まれた。

アライちゃん6「ああああああ!う゛ぁ゛ああああああ!おてて!おててがあああああああ!!」ゴロンゴロン

アライちゃん6の右手からは、おびただしい出血が見てとれる。
左手の方は、右脚を床側から押さえ付けていたため、比較的軽傷のようだ。

大臣「す…すごい迫力なのです…」

大臣は驚いているためか、気持ち若干体がシュッと細くなっている。
彼女の動物としての特性だろうか。

食通の友人「ほーら、次いくぞ」グイッ

再びハンマーを振り上げる。

アライちゃん6「ひっひひひとしゃんおねがいなのだもういたいのやなのだあんよがいたいのだおててもいたいたおのだおねがいやめりゅのらもういたいのやなのらああぁぁ!」ウルウル

アライちゃん6は仰向けになり、命乞いをしている。

食通の友人「アライよっとぉ!」ドグシャ

再び右脚へ、ハンマーを振り下ろした。

アライちゃん6「うぎぃっひぃぃいいぃいぃぃ!!」ブヂイィ

とうとう、右脚は切断されてしまった。

食通の友人「よっし、右脚ゲッツ!」

アライちゃん6「ぎひ…ぁ…ぅぇ…ぁ…」ピクピク

あまりの激痛に、失神しているアライちゃん6。

食通の友人「余所見してんじゃねーよ!」ドゴオォ

次は、左脚へハンマーを叩きつけた。

アライちゃん6「の゛ぎゃああああああああああああ!!!!!」ビビグンッ

食通の友人「せい!」ドグシャ

アライちゃん6「いぎゃああぁ!」ブチャア

食通の友人「でやあぁ!」ドゴォ

アライちゃん6「ひぎぃいいーーーーっ!」ブシュウゥ

左脚も切断された。

アライちゃん6「……ぅ…ぁ…」ピクピク

血を失いすぎたためか。
反応が鈍くなっている。

食通の友人「左腕ェ!」ドガァ

アライちゃん6「ぎひっ…!」

食通の友人「右腕ェ!」ドゴォ

アライちゃん6「あぎゃっ…!」

食通の友人「さらに左腕!」ガンッ

アライちゃん6「びぎっ…!」

食通の友人「ぶっつぶれろォ!右腕エェ!」グシャアアァ

アライちゃん6「あがあぁっ…!」

右腕と左腕もまっ平らに潰れ、胴体から千切れてしまった。

大臣「な…なんなのですかこれは?わけがわからないのです…本当に料理風景なのですか???」

アラフライの時のような、『料理らしさ』が全く感じられない、凄惨な虐待現場。

ビニールシートは血塗れであり、食通の友人のレインコートも返り血で真っ赤である。

食通の友人「そろそろ…楽にしてやるよ!」ブンッ

アライちゃん6の下腹に、ハンマーが叩きつけられた。

アライちゃん6「ごぶぅっ…!」

アライちゃん6は吐血した。

食通の友人「どれ、まだ生きてるか?」

アライちゃん6「……ぉ…か…しゃ…」

食通の友人「はい!お腹と背中が!ペッタンコォ!」ブンッ

再び下腹へハンマーが振り下ろされる。

アライちゃん6「」ベヂョォ

食通の友人「最後に一つだけ、願い事を聞いてやるよ。何がいい?」

アライちゃん6「…ぅ…じ…に…だぐ…な…」

食通の友人「ハイ時間切れえェェェーーーッ!」ブンッ

次に食通の友人がハンマーを振り下ろしたのは…

アライちゃん6の頭だ。

アライちゃん6「」ブゴヂャァッ

耳を塞ぎたくなるほど、生々しい音だった。
頭蓋骨が砕けてへこみ、脳が潰れた音。

アライちゃん6「」ビグンッビビグンッガクッガググッビグググッ

手足を失い、鼻から上が潰れてもなお、アライちゃん6の首から下は痙攣する。

食通の友人「ヒャハ!こんな状態でもゴキガイジムーブはできるんだなあぁ!」

食通の友人「最後の…仕上げだ!」ブンッ

アライちゃん6の下腹へハンマーを叩きつける。

アライちゃん6「」グシャアアァ

下腹も潰れて引きちぎれた。
胸部からは潰れた内臓がこぼれ出ている。

アライちゃん6の痙攣は止まった。

食通の友人「さーて、全身くまなく潰しましょうね」ブンッ

何度も何度も、残ったアライちゃんの胴体へハンマーが叩きつけられる。

そして。

ビニールシートの上には、血溜まりと、

原形をとどめない肉片がばかりが散乱していた。

食通の友人「さーて、ここまで細かくしましたらっと」ガサガサ

食通の友人は、ビニールシートの上の肉片を一ヶ所に集める。

食通の友人「これをザルに入れて、血をよくきります」ボドボド

流し台に乗ったザルの上に、肉片が落ちていく。
血は排水口へ流れ落ちていく。

食通の友人「そしてボロボロの毛皮を取り除きます」ズルズル

肉片の中から、アライちゃん6の千切れた服を取り除いていく。

食通の友人「あとはこれを、フードプロセッサーで粉砕して」ポチッ

ガガガガと音が鳴り、アライちゃん6の肉片は粉砕されていく。

食通の友人「細かく切り刻みましたね」ガチャ

フードプロセッサーから出されたアライちゃん6の肉片は、挽き肉となっていた。

ただし、眼球や歯、骨の欠片が端々から突き出ている。

食通の友人「パン粉とみじん切りの玉ねぎ、そして卵と胡椒と混ぜてよーく練ります」ネリネリ

大臣「おお、やっと料理らしくなったのです」

食通の友人「あとは、これをフライパンでよーく焼きましょう」カチッ

フライパンをコンロで加熱する。
サラダ油がばちばちと跳ねる。

食通の友人「よーくこねて」コネコネ

玉ねぎ等とよく混ぜられ、こねられたアライちゃん6の肉片は、細長い棒状に固められた。
その大きさは、ちょうどアライちゃん一匹分くらいだ。

食通の友人「焼きましょう~」ボトッ

フライパンに肉塊が落とされる。
じゅわあと音が鳴り、肉の焼けるいい匂いがたちこめる。

食通の友人「さーて、焼き上がりました!」

食通の友人は、焼けた肉塊をフライパンから取り出し、皿に乗せる。

食通の友人「最後に特性ソースをかけて……」トローリ

焼けた肉塊に、デミグラスソースをベースに調合された特製ソースがかけられる。

食通の友人「完成です!名付けて…」

食通の友人「アライちゃんバーグ!」


皿の上にあるのは、ホカホカのビッグサイズハンバーグだ。

肉も、骨も、歯も爪も、内臓も。
血液と毛皮以外の、アライちゃん6一匹まるごとが、このハンバーグに詰まっているのだ。

大臣「な…」

衝撃的な光景であった。
先程まで生きていたアライちゃん6が、目の前で叩き潰され、惨殺された。

そして全身の肉片を、骨も歯も内臓も、全部まるごと固めて焼いて、
はいどうぞ料理ですよと、皿に盛って出された。

それを見た大臣は…


大臣「なんですかこれは!!!!!食べて大丈夫なのですか!!!!!?」


…人としてごく当たり前の感想を言った。

続きはあとで

大臣はアラジビ愛好家である。

一般人なら芽を背けたくなるようなグロテスクな料理、『アラフライ』でさえ、
彼女は明確に「食べたい」と言ってのけた。

しかし、そんな彼女でも。

大臣「う…う…」ガクガク

ナイフとフォークを握る手は、しばらく震えていた。

食通の友人「ちなみに俺はこれ食べましたよ。自分が食ってウマいと思うもの以外、人に食わせるわけないじゃないですか」

大臣「その理屈は分かってますが…」プルプル

そこへ、小学生くらいの男の子が入店してきた。

食通の友人「へいらっしゃい」

男の子「おじちゃーん、干しアライください」

食通の友人「へい、あんがとな。150円だ」

男の子は、ガマ口財布から150円を取り出し、渡す。

食通の友人「へい、まいど~」スッ

食通の友人は、串に刺さった干し肉を男の子へ渡した。

男の子「いただきまーす」ムシャムシャ

男の子は、美味しそうに干し肉を食べている。

大臣「…ショクエモンP、私にもあれを1つ寄越すのです」

食通の友人「へいまいど、150円です」

大臣にも、串に刺さった干し肉を手渡す。

食通の友人「サービスの麦茶です。どぞ」コトン

大臣「いただくのです。あぐあぐ…」モグモグ

大臣「…うん、やはり干しアライは美味しいのです」モグモグ

食通の友人「屑肉を出汁で味付けして、干し肉にしたもんですが、けっこうイケますよね」

大臣「…ここの所、お前の料理はインフレしていたので、この素朴な味がまたいいのです」

大臣「無理に見た目の派手さを追究しなくても、アラジビ肉はそれ単独で十分美味しいのです」モグモグ

食通の友人「豚や牛と同等以上のポテンシャルありますよね。ただ、やっぱアライさんが人の見た目してるから、パンピーには受けが悪いですが」

大臣「ふぅ…。さて、アライちゃンバーグを頂くのです」カチャカチャ

大臣は、ハンバーグを切って口へ運ぶ。

大臣「もぐもぐ……!ごくんっ…」

大臣「な…何ですか、これは!」

大臣「美味しいのです。骨は軟骨みたいでコリコリしてるのです」

食通の友人「アラフライは、頭まで美味しく頂かれましたからね。こいつらは骨も歯も爪も、加熱すると柔らかくなるんですよ」

大臣「むぅ…。無駄がないのです。普通焼き魚でさえ頭は残されるのです。もぐもぐ…」モグモグ

大臣「御馳走さまなのです」

食通の友人「いかがでしたか?」

大臣「…料理としては満点です。しかし…」

大臣「ライブキッチンのクッキングショーとしては、さっきのは微妙なのです」

大臣「まず、カタルシスがないのです。盛り上がりに欠けます。ただ淡々と殺して、後は普通に料理するだけ」

大臣「料理のピークと、虐殺のピークがずれてるのです」

食通の友人「随分冷静な観点で批評しますね。まあ…確かに…」

大臣「それから、アライさんのリアクションが面白みがないのです。拘束し、ただ叩かれて、痛がってるだけなのです」

大臣「もっとこう、もがき苦しみ、動き回るようなのがウケるのです」

食通の友人「フーム、難しいっすね…」

大臣「これはダメ…とまでは言いませんが、次のフェスで挑戦者に負けるかもしれないのです」

食通の友人「挑戦者?」

大臣「聞いてないのですか?次のフェスで、あのブラウンPが、あなたにクッキング対決の挑戦をしてるのです」

食通の友人「最近ブログチェックしてなかったからな~…」

大臣「ブラウンPは新人ながら、めきめきと腕を上げているのです。そして何より、ブラウンP自身のファンが多いのです」

食通の友人「…だろうな」

大臣「クッキング対決では、料理は600g以下と規定されるのです。それでどれだけたくさんの試食者から票を得られるかで、競い合うのです」

食通の友人「うーん…相手はあのブラウンPか…。俺より格上のランカーか」

大臣「次のライブキッチン、アライちゃんバーグで出る気なら、勝ち目は薄いのです」

大臣「どっちが格上かはさておき…、今現在のランキングではお前の方が上なのです。でも、ブラウンPの急成長は、あっという間にお前を抜き去りそうなのです」

食通の友人「…となると。俺の方も、ずっと温め続けてきた秘密兵器を御披露目するしかないな」

大臣「秘密兵器?」

食通の友人「はい。誰にも見せてなかたんですが…。俺は勝負には勝たなくちゃ気がすまないタチで。次のライブキッチンは、全力でいきますよ」

大臣「楽しみにしてるのです」

大臣「…お前には、感謝してもしきれないのです」

食通の友人「…お互い様ですよ」

大臣「…かつて、アラジビ料理は悪趣味なゲテモノでしかなかったのです。同好の狩人がひっそりと集まって、こっそり食べ合う地味で陰気な集いにすぎなかったのです」

食通の友人「…」

大臣「そこへお前がやって来て、アライさんを虐殺しながら料理する、ライブキッチン動画を動画サイトへ投稿し始めたのです」

大臣「お前はトーク技術や、アライさん虐殺ショーの魅力でファンを獲得し、アラジビ料理の普及に貢献したのです」

大臣「お前のおかげで、フェスの参加人数は増え始め、アラジビ肉の優れた味が純粋に評価され始めているのです」

食通の友人「物騒な話ですがね…。人と同じ姿のフレンズを食べるなんて」

大臣「明日は客がいっぱい来ると言ってたのです」

食通の友人「はい。ま、材料が15皿には足りなくなりましたがね…」

大臣「だったら、『特定有害駆除対象フレンズ引き取り保護サービス』を使うといいのです」

食通の友人「何ですかそれ?」

大臣「駆除業者が集めた特定有害駆除対象フレンズは、保健所へ集められますが。それを注文のあった場所に配送する事業なのです」

食通の友人「有料なんすね」

大臣「名目上は、『引き取り保護』ですが…、ぶっちゃけると、アラジビ肉の通販なのです」

食通の友人「ぶっちゃけましたね!?」

大臣「駆除業者や狩猟業者が持ってきた特定有害駆除対象フレンズを、卵管をレーザーで焼いて避妊した後、アラジビ料理人のところへ流通させるシステムなのです」

食通の友人「あ、いいですねそれ」

大臣「これがあれば、アラジビ料理人は安定したアラジビ肉の供給を受けられるようになり、我々は料理人から代金を受け取り駆除活動資金にできます。良循環なのです」

食通の友人「採算取れるんすか?」

大臣「今はまだ赤字なのです。でも、安定してアラジビ肉を供給できれば、やがて多くの人に普及して、人気と需要が高まるのです」

大臣「そうすれば、やがて市場規模の増大に繋がり、黒字化できるのです。今は先行投資の時期なのです」

食通の友人「うまくいけばいいっすね」

大臣「そのためには、お前ら料理人が頼りなのです。頑張ってアラジビ料理を普及させて、駆除活動を促進してほしいのです」

食通の友人「ああ、任せてくれ。次の秘密兵器で、多くの人の胃袋もハートも鷲掴みにしてやるさ」

大臣「かつて多くの動物達を乱獲し絶滅に追いやった、お前達人間の群れとしての強さを見せるのです」

大臣「ドードーやステラー海牛にやったように、奴らを絶滅させてやるのです」

食通の友人「…健闘しますよ、大臣」

大臣「配送完了、と。これで明日までには、子供のアライさんが2~3匹そっちに届くのです」

食通の友人「おぉ…便利ですね」

大臣「着払いなのです」

食通の友人「俺の自費ィ!?」

大臣「ご利用ありがとうなのです。あ、それと、干しアライ3つ寄越すのです」

食通の友人「ほいよ、450円っす」

大臣は、黒服の三人のフレンズ達へ干し肉の串を1本ずつ渡すと、車に乗って去っていった。

食通の友人「…さてと、アラジビフェスの挑戦者か…」

食通の友人「丁度いいや。『秘密兵器』も食べ頃だったしな」スタスタ

食通の友人は、自宅の地下室へ足を運んだ。

地下室の前には、重い鉄の扉がある。

食通の友人「仕込みももうすぐ終わりかな…」ガチャ

食通の友人「お前ら、飯の時間だぞー」ギイィー…

食通の友人は、ゆっくりと、鉄の扉を開ける。

そこは暗く、独特な匂い…悪臭が漂っていた。

デブアライさん1「も、もごご…」

デブアライさん2「うぐぐ、ぐ、ぐるじいのだ…」ブヨンブヨン

つづく

食通の友人「しかし、明日か…」クルッ

食通の友人は、籠の中を覗く。

アライちゃん4「うぅ…ひもじいのだ…」ピクピク

アライちゃん5「おがーしゃん…まんま…」ピクピク

アライちゃん7「」ピクピク

食通の友人「水だけで、明日までもちかな…。あんまり痩せ細って肉が落ちてもやだなぁ」…

食通の友人は、ブログの記事へ食材の写真を掲載した。
『お客さんに美味しく食べられるまでの間、肉を落とさずがんばれ!』等と無茶な文を書いている。

携帯電話「パッパッペプッパッパッパラッパッ♪」

ブログを投稿した直後、携帯電話が鳴った。
SNSアプリの無料通話サービスだ。

食通の友人「もしもし」ガチャ

『突然の電話すまない。ショクエモンPだね?』

バカな。
食通の友人は、ショクエモンPとしての名義では、電話番号を公開していないはずだ。
アンチやアラ信からの電話攻撃を避けるため、連絡はメールに絞っているのだが。

何かヤバい、と思った食通の友人は、通話を切ろうとする。

『待つんだ。アライちゃんが栄養失調なんだろう?』

通話を切ろうとした手を止める。

『大変だね、ショクエモンPは。血抜きせず、内臓も取らず、生きたまま調理することで、独特の獣臭さすら料理の旨味へ活かす技術。素晴らしいね』

『そして、ファンはあなたの腕前に惚れ込み、アライさんまるごと料理を求めてやってくる』

『そう、内臓すら料理に使う。だからこそ、生かしてる間は餌をやれない…。管理が大変そうだね』

食通の友人「…あんた誰です?」

『私はブラウンP。貴方の熱烈なファンだ』

通話の相手は、ブラウンPと名乗った。
次回のフェスでクッキングバトルを挑んできた相手だ。

食通の友人「…要件は?」

『なに、単なるアイデア提供さ。そのアライちゃん達へ、飴玉をやってはどうかな?』

食通の友人「!…飴玉…」

『飴玉なら100%吸収され、老廃物にならない。それに基礎代謝に使われる糖分を与えてやれば、痩せ細ることもないだろう』

食通の友人「…なるほど…それはいい。でも、俺はあんたのライバルなのでは?何故そんなアイデア提供を?」

『君の熱烈なファンだからさ。明日、私も君の店に行くよ』

食通の友人「…!」

『君は私の憧れだ。尊敬している。だからこそ、とことん君の可能性のすべてを追究してもらいたい』

『そして、全力の君とぶつかりたいのさ』

食通の友人(…この声、女性か。女性のアラジビ料理人もいるんだな)

『そしてまあ、単純に。フレンズだとか関係なく、アライグマ自体が私の大好物だ』

食通の友人「!ぬ…」

食通の友人も、アライグマを料理し、食べたことがある。
ジビエの中では美味な方ではあるが…大好物と?
フレンズを食べる食通の友人が言えることではないが、かなり異質な趣味である。

食通の友人「大好物?変わってますね」

『そう、大好物さ。昔からずっと。この姿になるより、ずっと前からね』

食通の友人「…『この姿』?」

『ふふ、何でもないさ。明日、楽しみにしているよ』

食通の友人「…アイデア提供ありがとう。感謝しますよ、ブラウンP」

『では、お元気で』

ブラウンPは通話を切った。

食通の友人「…そうだな。飴玉…やってみるか」

食通の友人は、コンビニで安い飴玉を袋で買った。
そして、アライちゃん達のいる籠へ近付く。

食通の友人「もう水飲み干したのか…。水差し交換しなきゃな。あと、籠の下の受け皿も交換するか」

籠の下の受け皿には、アライちゃん達の排泄物が溜まって臭いを出している。

食通の友人は、受け皿を交換し、水差しへ水道水を注ぎ込んだ。

アライちゃん4「しん…じゃう…のら…」グーギュルルー

アライちゃん5「おか…しゃ…」ギュルルー

アライちゃん7「ま…んま…」

このまま放っておくと共食いしそうな雰囲気である。

食通の友人は、籠の上面の蓋を開ける。

食通の友人「おーい、チビ達。餌だぞ」ポイポイ

食通の友人は、安い飴玉をゴロゴロと籠へ投げ入れる。

アライちゃん4「!」ピクッ

アライちゃん5「た、食べ物なのだあぁ~!」ガシッ

アライちゃん7「れろれろ…」

一斉に飴玉を頬張るアライちゃん達。
一番体の小さなアライちゃん7は、口に頬張ることができず、ペロペロと舌を出して舐めている。
人間には小さくても、アライちゃん達のサイズから見ると大きな食糧に見えるだろう。

アライちゃん4「ほ、ほいひぃのら~!」コロコロ

アライちゃん5「あまいのら~!んん~!」コロコロ

アライちゃん7「おいひ~のら!」ペロペロ

基礎代謝に必要なカロリーが体から失われていたときに、カロリーの塊である飴玉を与えられたのだ。
それはそれは美味であろう。

アライちゃん4「がりばり…ごくんっ」

小さくなった飴玉を、バリバリと噛んで飲み込んだアライちゃん達。

アライちゃん5「もっと!もっとほしいのだ!」

アライちゃん7「おかわりなのらぁ」

食通の友人「ほいよ」ポイポイ

適当にいくつか投げ込み、食通の友人は、厨房から出た。

食通の友人「これなら明日もなんとかなりそうだな」

続きは後程



翌日、ジビエ料理店『食獲者』は、開店前から行列ができていた。

限定15品の、店内ライブキッチン。
それだけでなく、彼自身の普通のジビエ料理もなかなかの腕前であるため、
せっかくなので食べたいという人も集まったのである。

やがて、開店時刻がやってきた。

食通の友人「へいらっしゃい」

客1「クォーターサイズアラフライ定食お願いします!」

食通の友人「かしこまり」

これが今回の目玉、『クォーターサイズアラフライ定食』。

例のアラフライを、1/4にカットしたものをメインにした定食だ。
元々のアラフライはビッグサイズで、一人で食うには多すぎるので、これくらいのサイズが丁度いいのだろう。

??「やあ、来たよ。約束通りにね」

野郎の賑わう声ばかりの店内から、女性の声が聞こえた。

帽子をかぶった女性が、食通の友人へ挨拶しに来た。

ブラウンP「実際に話すのは初めてだね。初めまして、昨日電話した者だ」

明確には名乗らず、あくまで客の一人に扮しているようだが…

彼女がブラウンPで、間違いないだろう。

そして、帽子をかぶってはいるが…
人間ではあり得ないような、特徴的な髪の色をしている。

そして彼女の右目をよく見ると、どうやら青のカラーコンタクトを入れて、左目と同じ色へ見せているようである。
その本来の色は、おそらく黄色。オッドアイであることを隠しているのであろう。

食通の友人は、一目で分かった。

フレンズは自身が人間だと思い込むことで、耳と尻尾を隠せるそうだが、
彼女はそれをやっているのだ。

ブラウンPもまた大臣と同じく、フレンズであると。

ブラウンP「私も頼もう。クォーターサイズアラフライ定食ひとつ。はい、予約チケット」

食通の友人「まいど。えー、ではこれより!ライブキッチン開始とさせていただきます!」

客1「オー!」パチパチパチパチ

客2「待ってました!」パチパチ

客達『ショックエモン!ショックエモン!ショックエモン!』

ブラウンP「ショックエモンっ、ショックエモンっ、ショックエモンっ」

食通の友人は、綺麗に洗浄済みのアライちゃん達を持ってきた。

アライちゃん4「おぼれじぬかとおもったのだ…」ゼェハァ

アライちゃん5「ひとがいっぱいいるのだ」

アライちゃん7「いいにおいしゅるのら!」

アライちゃん8「たのしそーなとこなのだ!ほけんじょとぜんぜんちがうのだ!」

アライちゃん9「いいにおいするのだ!ひとしゃん、だしてほしいのだ!ごはんさがすのだぁ!」

いつも通り、このアライちゃん達も、「これから美味しいご飯をつくる」と
食通の友人に吹き込まれているのだ。

アライちゃん達は、自身の運命を知らず、何か楽しげな雰囲気に飲まれ、期待に胸を高鳴らせていた。



アライちゃん4「あぢゅいのだあああああああああああ!!」ジュワアアアアア

アライちゃん5「ぎびぃいいいいいいいいいいいいい!!!」バチバチ

アライちゃん7「のぎゃぁあああああああああああ!!!」ドジュウゥウ

アライちゃん8「だずげえええぇ!うぞずぎぃ!おいじいものぐれるっでいっだのにいぃいぃ!!!」ジュワアアアア

アライちゃん9「あぢゅい!あぢゅいのだぁ!やだぁ!じにだぎゅないぃぃいいぃ!」ジュワアパチパチ

食通の友人「ヒャッハー!もっと熱がれ苦しめ命乞いしろォ!己の罪を噛み締めながら、地獄の業火でくたばりやがれェーッ!ヒャーーーハハハハハハ!!!」

客達『うおおぉおぉーーーー!』

客1「すげぇ…これが生で見るアラフライ調理…」ゴクリ

客2「マジキチだぜ…。ショクエモンP、マジで頭がイってやがる…」

客3「この人達頭おかしい…俺含めて…」

ブラウンP「ふふ…素晴らしいよ…」ゾクゾク

ブラウンPは、携帯電話を取り出す。

ぱしゃ。
油の中で苦悶し絶叫する、アライちゃん達の顔を撮影する。

ぱしゃ。
異様なテンションでライブキッチンを披露する、ショクエモンPの顔を撮影する。

ぱしゃ。
ライブキッチンを眺める、観客達の顔を撮影する。

ブラウンP「ふふ…。いい顔、いただき」

まだまだ満足し足りないのだろう。油の中で苦しみ、絶命していくアライちゃん達の顔を、動画で撮影している。

ブラウンP「…事実は小説より奇なりとは、まさにこの事だね…」

アライちゃん5「じにだぐない!あらいしゃん、じにだぐないのだあ!」ガシッ グイッ

アライちゃん7「おごぼっ!」ザブン

アライちゃん4「のぎゃああ!」ザブン

アライちゃん5は、姉妹達の体を踏み台にし、鍋から出ようとする。

アライちゃん5「あらいじゃんは!いぎるのだああ!おがーしゃんが、しぬまえにいったのだ!しまいでいちばんつよくそだてって!」バシャバシャ

全身大火傷で、フライの衣に覆われかけているアライちゃん5。
どうやら、やっと母親の死を受け入れたらしい。
大きな成長と言えるだろう。

アライちゃん5「だがら!あらいしゃんは、おがーしゃんとのやぐぞぐを、まもるのだぁ!いぎなぎゃいげないのだあああ!」ズルリ

アライちゃん4「」ジュワアアアアア

アライちゃん7「」ジュワアアアアア

姉妹を踏み台にしたおかげで、あと少しで鍋から出られそうなアライちゃん5。

食通の友人「おっと。料理が鍋から落ちちまう」ガシッ

食通の友人は、菜箸でアライちゃん5の頭を掴む。

アライちゃん5「のだあぁっ!?」ビクッ

食通の友人「もう、おかーしゃーんって叫ばないのか?ようやく親離れしたか、成長したなぁ」

アライちゃん5「やめるのだおねがいなのだあらいしゃんしにだぐないのだもうあづいのやなのだおねがいなのだはなすのだ」ジタバタ

食通の友人「だったらその成長を報告しに行きなァ!天国のおかーしゃんのところへよォ!」ポイッ

アライちゃん5「のぎゃああああ!!!あぢゅいのらあああああ!」ボチャーンッジュワアアアアア

食通の友人「ん?違うな。母親がいるのは天国じゃなく、地獄か?いや、それも違う…」

食通の友人「冷蔵庫の、中でした」

観客達『ドワッハハハハハ』

やがて、アライちゃん達の声は完全に止まった。

アラフライちゃん4「」ホカホカ

アラフライちゃん5「」ホカホカ

アラフライちゃん7「」ホカホカ

アラフライちゃん8「」ホカホカ

アラフライちゃん9「」ホカホカ

アラフライが、完全に出来『揚』がった。

食通の友人「さーて、それじゃー切っていきますよ」スッ

ざくざくと、アラフライを食べやすいサイズにカットしていく。

食通の友人「へいおまち!クォーターサイズアラフライ定食、15皿ァ!」

客達『ウォォオォォー!ショックエモン!ショックエモン!ショックエモン!』パチパチパチパチ

店内ライブキッチンは大成功だったようだ。



アラフライ定食は完売。

残りの客達は、冷蔵庫の中のアラジビで作れる料理や、鹿や猪、アライグマ等のジビエ料理を注文した。

大繁盛であった。

ブラウンP「ご馳走さまでした」

食通の友人「お粗末様」

ブラウンP「いやぁ、良かったよ。料理の味も、ライブキッチンも。またいつか頼もうかな」

食通の友人「…」

おそらく、アライちゃんバーグではここまでの盛り上がりは期待できないだろう。
自身はこの先、アラフライを超えるライブキッチンができるのだろうか?
…自らの壁を越えることの困難さを、食通の友人は感じていた。

食通の友人「…ブラウンPは、自分の店はあるんですか?」

ブラウンP「私にはないよ。一応調理師免許を持ってはいるけど、本職は料理人じゃない」

食通の友人「じゃあ本職は?」

ブラウンP「それを言うと身バレしそうだからやめとくよ。ほら、この通り私は変装してきてるんだから」

客1「ん?今、ブラウンPって言いました?」ピクッ

客2「ブラウンPが来てるのか!?」

客3「どこだ!?」キョロキョロ

食通の友人「あっ…」

ブラウンP「…会計にしよう」

ブラウンPは、会計を済ませると、そそくさと出口の方へ行った。

ブラウンP「…さっきの顔、みんないい表情だったよ。夢に出てきそうなくらい」

食通の友人「え」

ブラウンP「捗りそうだよ、本職の方もね」

彼女はそう言うと、店を後にした。

つづく



食通の友人は、こないだ山で捕まえたアライさん達で、うまく料理できたようだ。
自分本位で利己的なアライさん達が、その命をもって人のために献身できたのだ。
奴らも天国へ行けるだろうか…?

いや、無いな。
奴ら害獣の狼藉は、命をもった償いでも許されるものか。
地獄で罰を受けることすらおこがましい。

さて。
今、俺の目の前には犬が1頭おり、俺を見つめている。
犬種はイングリッシュ・ポインターだ。

大型犬ではあるが、こいつは成犬ではなく、まだ若い。
育ち盛りであり、これからまだまだ大きくなる。

俺は犬に向かって言葉を発する。

「佐助!伏せ!」

犬はスッと伏せる。
よし、次は…

「佐助、待て!」

犬は待機のポーズをとる。
ちゃんと聞き分けているな。

俺はそのまま、部屋の外へ出る。

そして、部屋の外にある籠罠へ近付く。
籠の中では、立って歩けるくらいの発育状態のアライさんが眠っている。
生後8ヶ月程度だろうか。身長は1m程度だ。

アライしゃん「すぴー…すぴー…」zzz

俺は籠を掴み、犬が待つ部屋へ戻った。

犬は、待機しながら、籠の中のアライさんを見ている。

アライしゃん「すぴー…すぴー…」zzz

この状況で、よく寝ていられるものだな。
俺は籠を蹴りつけ、ガシャンと音を立てる。

アライしゃん「のあっ!?」ビクッ

さすがに起きたようだ。

アライしゃん「な、な、なんなのだここは!?あ、ヒトなのだ!それと、どうぶつがいるのだ」

アライしゃん「ヒトしゃん!アライしゃんをここからだしてほしいのだ!あ、そのまえに、あのこわいやつをおっぱらってほしいのだ!」

注文が多いな。
オーケーだ。

佐助、部屋から出ろ。

犬は俺の命令通り部屋から出た。
単純な動詞だけでなく、「部屋から」という部分まで理解できるのは、
飼い主として利口さを自慢したいところである。

今開けてやるからな。
俺は、籠を開ける。

アライしゃん「やっとでられたのだ。ヒトしゃん、ありがとうなのだぁ!」

アライさんの子供は、親と違って礼を言うことがある。
幼いうちは人になつきやすいというアライグマの性格だろうか。

アライしゃん「あらいしゃんのおうちはどっちなのだ?おかーしゃんのいるとこにかえるのだ」トテトテ

二足歩行に慣れてきたばかりといった様子である。
まだバランスを取ることに慣れていないようだ。

アライしゃん「そのまえに、おなかすいたのだ。ヒトしゃん、このへんにたべものがとれるはたけはあるのか?」

この野郎。
俺がてめーらと同じように、野菜泥棒してるとでも思ってんのか。

ああもう無理だ。限界だ。
食通の友人を見習い、こいつらと会話して情報を引き出す術を身に付けようと考えていたが、
こいつらはあまりに頭が悪く、会話が通じない。
話しても何も得られず、ただストレスが溜まるばかりだ。

もういい、こいつへの用は、あと1つのみだ。

アライしゃん「アライしゃん、このへんをたんけんしてごはんさがすのだー」テクテク

俺は部屋の外に向かって叫ぶ。
「佐助!捕らえろ!」

途端に部屋の外から先程の犬が飛び出して、アライさんの子供目掛けて走ってくる。

アライしゃん「のだあぁ!?こ、こわいのがきたのだ!にげるのだぁ!」トテトテ

だが、歩くのに慣れないアライさんのスピードでは、犬から逃げ切れない。

犬はアライさんの首に噛みつき、地面に押し倒す。

アライしゃん「のあぁっ!」

「捕らえろ」は、獲物を捕まえて拘束するという命令だ。
よし、合格だ。俺はアライさんを再び籠へ戻そうと…

アライしゃん「いだいいぢゃいいだいいぢゃいのらあぁ!のだあああぁぁぁあっ!ヒトしゃん!だじげでぇぇぇっ!びいぃぃっ!」ジタバタ

犬「ガウ!ワウウゥ!」メリメリ

…おい待て、何をしてる!?
そうじゃないぞ!「仕留めろ」の指示はまだ出していない!
佐助、待て!待て!

犬「ガウ!バウウッ!」ブンッブンッ

アライしゃん「ぎびっ!ひぎっ!」ドゴッベゴッ

犬は、身長1mはあるアライさんを軽々と振り回し、地面へ何度も叩き付けている。

アライしゃん「の゛だっ!のあぁぁっ!」ブシュウゥゥ

首には歯が食い込み、血がボタボタと吹き出ている。

佐助!そうじゃない!殺すことまで命令してない!

俺は再度命令する。
「待て!」

犬「フゥッ…」ポイッ

アライしゃん「ぎび…ひ…ぅぁ…」ドサッ ピクピク

犬はアライさんを離した。
首から血が流れているが、あれは頸動脈のダメージではない。
致命傷ではないだろう。

まあ、命令を間違えたのは訓練し直すとして。
「待て」の命令を聞いた分良しとするか…

犬「バガウゥゥ!ガルルゥグャウウゥゥ!」バグンッ

アライしゃん「ぎびぃぃーーーっ!!??」

犬はアライさんの腹に噛みついた。
おい!待て!待て!ってば!

犬はアライさんの腹に噛みつき、腹の肉をメリメリと引っ張る。

アライしゃん「あぎゃぁああーーーー!ぎぴぃぃいぃーーーっ!!」ジタバタ

俺は何度も「佐助!待て!」の命令をするが、
犬は頭に血が上り、耳に入っていないようだ。

犬「グバウゥゥーッ!」ブヂイィ

アライしゃん「いぢゃいのだあああああああああああ!!!!!」ブシュウウゥウ

犬はアライさんの腹の肉を噛み千切った。
薄い皮膚と脂肪層が引き裂かれ、未発達は腹筋が露になる。

言っておくが、うちの犬は普段はこうじゃないのだ。
小鹿やイタチで訓練するときは、「捕らえろ」の命令で必要以上に傷付けることはないし、
「仕留めろ」の命令の最中でもちゃんと「待て」の命令を聞いてくれる。

それに、まだ成犬でないのだ。
今までこいつは、体長1mの動物をブンブンと振り回すパワーなど見せたことがないし、
腹の肉をあっという間に引き裂くような、成犬すら超えるアゴの力があったなどと、飼い主の俺ですら今初めて知ったのだ。

犬「ウゥ!ガウルルゥ!」ガブゥブヂィ

アライしゃん「いぢゃい!いぢゃいぃぃ!ヒトしゃん!だずげでえぇっ!こいつをごろじでほじいのだあぁ!」

あ゛ぁ゛!?
何の義理があっててめーのような害獣を助けなきゃならねえんだ。
死ぬのはてめーだクソガイジゴキバエがぁ!

「佐助!仕留めろ!」

…しまった。
訓練の予定にはなかったのに、つい余計な命令を口走ってしまった。

犬「グギャルルルゥゥウーーーッ」ガブブヂイィ

アライしゃん「ごぶえぇーーーーっ!!」ズルズルウゥゥ

俺が間違えて「仕留めろ」の命令を出した途端、
犬はさらなるパワーでアライさんの腹筋を食い破り、腸を引きずり出した。

おおう、何だこれ。
お前本当に犬か?
こんな所業は狼とかチーター等の猛獣がやる芸当だぞ。

犬「ギャウウゥゥウゥ!」ブヂィポイッ ブヂィポイッ

アライしゃん「ぶぎいっ…ご…ぼごぼぇっ…」ブシュウウゥウ

腸を引き裂き、腎臓を噛み千切り、肝臓を引きずり出し、胃を切断し、膵臓を放り捨てる。

犬は腹から引きずり出した臓物を、噛み千切って辺りへ放り捨てていく。

…おいおい、もっと効率的な仕留めかたはいくらでもあるんじゃないのか?

俺は小鹿とかで教えたぞ。
動脈とか神経束とかの急所を狙えば、必要最小限の力で効率的に仕留められるのだと。

アライしゃん「ぎ…び…」ピクピク

犬「ハッハッ…クゥーン…」

消化器系の内臓をバラ撒き終わった後、犬は大人しくなる。
まだ循環器系は残ってるが、このまま放置すれば死ぬだろう。
「仕留めろ」の命令は完遂した。…結果はともかく、やり方に問題を感じるが。

この犬は、訓練中の猟犬見習いである。名は佐助だ。

猟犬は俺の家系を代々助けてくれたパートナーだ。
その嗅覚で獲物を探し当て、速いスピードで獲物を追い詰め、格闘する。
その最中に、俺ら狩人が獲物を銃で仕留める…。
猟師と猟犬の連携によって、獣を捕らえるのである。

もうすぐ、実戦経験を積ませようと考えている。

佐助のやつは、普通の獣を狩るときにはまともに命令を聞くし、並の身体能力で狩りをするのだが…。
アライさんを狩るときのみ、異常に狂暴になり、まるでリミッターを解除したかのように体の力を振り絞るのだ。
そしてその後2日は、筋肉痛と疲労でヘトヘトになりやがる。

一体、なぜなのだろうか…。
こいつをアライさん狩りに連れていっても大丈夫だろうか。

つづく



朝日が射す森の中。
岩の下の穴から、アライさんがのそのそと這い出てきた。

アライさん「ん~、気持ちのいい朝なのだ!」

アライしゃん「ぜっこうのかりびよりなのだぁ!」ノソノソ

続いて、やや小さなアライさんが2匹這い出てきて、二本足で立った。
どうやら2匹とも、まだ二足歩行は慣れたてらしい。

アライちゃん1「なのだー!」ヨチヨチ

アライちゃん2「なのだー!」ヨチヨチ

アライちゃん3「なのらぁー!」ヨチヨチ

続いて、さらに小さなアライさんの子供達も這い出てきた。

アライさん「アライさん達は大所帯なのだ。だからお肉を食べて元気をつけるのだ」

アライちゃん1「なのだー!」

アライちゃん2「おにくなのだー!」

アライちゃん3「なのらぁー!」

アライさん「アライさんは、人間達が独り占めしてる鳥を捕まえてくるのだ。おねーちゃんも一緒に来るのだ」

アライしゃん「わかったのだ!おかーさんとちからをあわせて、がんばっていっぱいおにくとるのだ!」

アライちゃん1「がんばるのだー」

アライちゃん2「きをつけるのだー」

アライちゃん3「のぁー」

やがて、巣穴からさらに子供が顔を覗かせる。

アライちゃん4「のらー」ピョコ

アライちゃん5「おぱいー」ピョコ

アライさん「そうなのだ、おっぱいあげるの忘れてたのだ。ほら、たくさん飲むのだ」ダキッ

アライさんは、巣穴の奥から2匹の小さなアライさんを引っ張り出すと、抱き抱える。

アライちゃん4「ちゅーちゅー」ゴクゴク

アライちゃん5「んみんみ…」ゴクゴク

2匹は、母親の乳房から母乳を飲んでいる。

乳児アライちゃん4「けぷ」

乳児アライちゃん5「おなかいぱいー」ケプ

アライさん「これで大丈夫なのだ」スッ

乳児のアライちゃん達を、巣穴の奥へ戻した。

アライしゃん「それじゃチビたち、ちゃんとあかちゃんのめんどーみるのだー」

アライちゃん1「みるのだー」ノソノソ

アライちゃん2「のだー」ノソノソ

アライちゃん3「のぁー?」ノソノソ

小さな子供達は、巣穴へ戻っていく。

アライさん「それじゃ、鳥を捕まえに行くのだ!」スタスタ

アライしゃん「こんやはみんなでとりにくぱーてぃーなのだ!」トテトテ



森の中。
アライさん達が、がに股歩きで野山を進んでいるのが見えた。

アライさん「あっちに鳥がいるのだ、アライさん1人だと1匹しか持てないのだ」スタスタ

アライしゃん「じゃあ、あらいしゃんがおてつだいするから、しゅうかくにばいなのだぁ!」トテトテ

アライさん「よくいったのだ!お前は、アライさんの自慢の娘なのだぁ!」ダキッ

アライしゃん「は、はずかしいのだ…////」スリスリ

アライさん親子は、森のど真ん中でハグを始めた。
さっさと行かないのか?と言いたいが、この茶番でアライさんの侵攻が遅くなるならばそれもいいだろう。

アライさん「アライさんは、何度か人間に見つかりそうになったのだ。だけど、頑張って食べ物を集めて、家族を育てたのだ」ギュー

アライしゃん「おかーさん…」

アライさん「だけど、こうやって働き者の娘ができて、いっぱい家族ができて。ずっと頑張ってきた甲斐があったのだ」

アライしゃん「…アライしゃんも、かぞくおもいなおかーさんのとこにうまれてこれて、ほんとうにしあわせなのだ」ギュー

アライさん「お前はいい子に育ったのだ。きっとお前も、りっぱに子供を産んで、育てていけるのだ」ナデナデ

アライしゃん「あったかいのだ…////」スリスリ

2匹が抱き合っている。
こちらからは、小さいアライさんの背中が見え、向こう側に母親の顔が見える。

このままずっと茶番を続けるとも思えない。
チャンスを逃してたまるものか。

俺は小さいアライさんの背中…
親子の胴体が重なっている部分へ、エアライフルの照準を合わせた。

エアライフルの弾の貫通力は高くない。
それでも今ならば、1発で2匹にダメージを負わせることのできるチャンスはある。

俺の隣で、佐助がアライさん親子を睨み付け、息を荒げている。
今にも吠えて飛びかかりそうだが、なんとか我慢しているようだ。

アライさん「でも、最近のお前は無理しすぎなのだ。できないことをやろうとして、無茶ばかりして失敗してるのだ」

アライしゃん「…うぅ…」

アライさん「こないだも、一人でイタチを捕まえようとして指を噛まれて怪我したのだ。お母さんを心配させないでほしいのだ」

アライしゃん「…だって、あらいしゃん、おかーしゃんに…もっとほめられたくて、かまってほしくて…」ウルウル

アライしゃん「おかーしゃん、あかちゃんやちびたちにばっかりかまってて…さびしくって…!」グスン

アライさん「…無理しなくていいのだ。出来ないことは出来ないでいいのだ。お前はもっと、お母さんに甘えていいのだ」ナデナデ

アライしゃん「…うええええんっ!おかーしゃーんっ!」ダキッ ギュー

アライさん「…なんだか赤ちゃんの頃を思い出すのだ。可愛いのだ」ナデナデ



気 持 ち 悪 い 。
さっさと殺そう。
俺は脊髄反射的に引き金を引いた。

俺の手元で、エアライフルがバシュッと音を立てて弾を放つ。

アライしゃん「の゛だっ!!?」

アライさん「!?」

ヒット。

アライしゃん「…ぅ…ぁ…い…いだいのだあああああああああああああああ!!!」ビグンビグンッバタッバタッタタタッ

子供はその場に倒れ込み、背中から血を流して転げ回る。
どうやら弾は貫通せず、子供の体内で止まったらしい。

さて、こういう時、アライさんの母親は決まって子供の心配をして、寄り添い揺するものだ。

エアライフルならば発射音が聞こえづらいため、突然わけも分からず子供が倒れたようにしか思えないということだ。

アライさん「これは…じ、銃なのだ!逃げるのだああ!」タタッ

なんと!?
これは計算外だ。
母親は子供が銃で撃たれたことを認識し、その場から一目散に逃げ出した。

アライしゃん「お、おがーしゃん!ぁあ、ああああ!いだいのだあぁ!だずげでええぇえっ!おがーさん!」ジタバタ

アライさん「アライさんは死にたくないのだ!お前はまた産めばいいのだ!」ダッシュ

アライしゃん「ぅぁああ、ああああああああ!」ジタバタ

くっ…
俺はエアライフルに弾を込めるが、おそらく間に合わないだろう。
取り逃がしてしまう…。



佐助「ギャワワワン!ガアウゥガガァウ!」ダッ


佐助が命令を待たずに飛び出した。

そうだ、集中しすぎて頭になかったが、こいつがいた。
佐助に向かって俺は叫ぶ。
「佐助!捕らえろ!」

…「捕らえろ」の命令をする場合、
確実に捕まえられる方を捕らえるように訓練してある。
2匹を狙って両方取り逃がすより、確実に1匹を捕らえた方が、猟師としても助かるのだ。

そういうわけで、佐助が俺の指示通りに動いてくれるなら、転げ回っているチビを拘束するはずだ。
…今回親に逃げられたのは、想定外のアクシデントだ。
佐助よ、お前はお前に求められる水準の仕事をこなせばいい。


佐助「グァルルル!!ギャルルガウワアアゥワウ!!」ダダッ

アライさん「のあぁ!?いきなりけものが追っかけて来たのだ!?」ダダッ


なんと!?
佐助は指示を無視し、親のアライさんを追いかけていった。

やめろ!深追いは危険だ!
「佐助!戻れ!」

アライさんは、普通のアライグマとは違う。
人間の少女ほどの体格と身体能力がある。
しかも敵を攻撃するときに限り、群れることすらあるのだ。
猟犬にとって、決してただの被捕食者はない。

それに佐助はあの若さだ。
下手をすれば、犬の方が殺される危険性もある。

「戻れ!佐助!」

佐助は命令を無視しているのか、それとも頭に血が上って耳に入らないのか。
普段の走行訓練の倍以上の速度で地を駆け抜け、親のアライさんに向かっていった。

佐助「ガウギャウウゥグルルルル!」ドゴォォッ

アライさん「のああぁっ!」ドサッ

佐助はアライさんにタックルを浴びせ、地面に押し倒した。
そして。

佐助「ガァアウウゥ!」ガブゥブヂィ

アライさん「ひっ!?ぎ、やぁああああああああああっ!!!」

なんという早業だ。
地面に押し倒したと思ったら、即座に右目に噛みつき、眼球を噛み砕いた。
あんな離れ業、訓練した覚えはないぞ!?

アライさん「ぐうぅ、はなすのだああ!」ブンッ

アライさんは、佐助に向かって爪を振り下ろす。
アライさんといえどフレンズだ。レベルは低いが、一応戦う能力はある。
鋭い爪の攻撃が、佐助に襲いかかる。

佐助「ガアウゥッ!」バヅンッ

アライさん「!?ひ、ひぃいいいっ!!い、いだいいいぃ!」

…ん!?
今、何をした!?
振りかざされたアライさんの腕へ、佐助が一瞬口を当てると、
アライさんの手首からダラリと血が流れた。

アライさん「ぁあ、あああああ!て、手が!動かないのだぁ!!誰か!だずげるのだぁ!チビ達!おねーちゃん!」ジタバタ

ああ、分かった。
佐助はあの一瞬で、アライさんの手首の腱を断ち切ったのだ。
どういう牙の使い方をしたんだ!?まるでアーミーナイフだ。

むぅ…明らかな命令違反とはいえ、ここまでやったもんはしょうがない。大したものだ。
確実な止めを刺させるか。

「佐助!仕留めろ!」


佐助「ギャグルルルガオォオオオオオォオオォオ!!!!」


俺の「仕留めろ」の指示を受けた佐助は、一際全身の筋肉に力をみなぎらせた。
そして、アライさんの…

佐助「ギャグァワアゥ!!」ガブブヂィ

アライさん「のぎゃあああぁあああっ!!」

乳房を噛み潰した。
…乳房ぁ!?
そこは急所ではないだろ!!首を狙わんか、首を!!

アライさん「や、や゛めるのだああぁ!」ブンッ

アライさんが、無事な方の手で佐助を引っ掻こうとする。

佐助「バウワァゥ!」バグボギィ

アライさん「いぎゃいぃいい!手が、手がああぁ!」ブラン


うおぉっ…なんてことだ。
アライさんの腕に噛みついて、そのまま捻って腕の骨をへし折った。

佐助「ガウグゥゥ!」ガブブヂィ

アライさん「いぎゃあぁああああああーーっ!!」

佐助は、もう片方の乳房を噛み潰した。

佐助「ハァッ、ハァッ、ハァッ」ゼェハァ

アライさん「ああ、ぅぁあぁ…あ、赤ちゃんに、お乳あげられなく、なっちゃったのだぁ…」

だから何故乳房なのだ!?佐助よ!

佐助はいったん、アライさんの上からどいた。

アライさん「う、ぅぁ…た、たずげで…くれるのか…?」

なぜ仕留めないのだ、佐助よ…?
そうだ、きっと疲労がたまり、体力の限界が来たのだろう。
ご苦労だった佐助。どいてろ、後は俺が狙撃して…

佐助「ハガアグゥ!」ガブゥ

アライさん「のぁああ!?」ビグゥ

佐助は再びアライさんに飛びかかり、スカートの中に頭を突っ込み、股間に噛みついた。

アライさん「がぁあああ!あがぅぁぁあああーー!いだいいだいいだいいだいいいぃぃーー!」ジタバタ

佐助「ガウグウゥーーッ!」ガブブヂィ

アライさん「のぎゃぁああ゛あああーーーーーーっ!!!」ブシュウウゥウ

…!?
スカートの中から顔を出した佐助は、なにかをくわえていた。
血にまみれた何かを…。

アライさんの股間からは、大量に出血している。

…分かった。
佐助がくわえているのは…

…アライさんの恥骨。
骨盤の一部であり、産道をつくるリングを前から支える骨だ。

奴は骨盤をかみ砕き、恥骨をむしりとったのだ。

佐助「ガァアウゥ!」ガブゥ

佐助は、再びスカートの中に頭を突っ込む。

アライさん「ぎひーっ、ぎひーっ、や、やめ…だ、だずげ…」

佐助「ガルルゥグァ!」ブヂィ ズルズル

アライさん「ぎぎゃぁぁがぁあああーーーーーっ!!!」ブシュウウゥウ

スカートから顔を出した佐助は、また何かをくわえている。
そして、それを加えたまま、まるで見せつけるかのように、アライさんの目の前に近付ける。

なんだ、あれは。
何か内臓のようだが…
スコープで覗いてみるか。


…オーマイ。
あれは、子宮だ。

アライさんの体内からむしりとった子宮を、アライさんに見せびらかしているようであった。

佐助のやつが何を考えているか、飼い主の俺にはまるで理解できない…。

アライさん「うあぁ、が、がえずのだ、あらいさんの、おなかのなかみ…がえずのだぁ…」ブルブル

アライさんは、腱を切られて動かなくなった手を伸ばす。

佐助「ガウゥアウ!」バヅンッ ペッ

アライさんの目の前で、子宮を噛み砕き、地面に吐き捨てた。

アライさん「…ぅ、ぁあ、あ…」

佐助「ガウゥ!」ガブゥ

そして、佐助はようやく、首に噛みついた。

アライさん「ぎっ…」

いいぞ。そのまま血管を断ち切ればいい。
…だが。

佐助「…」メリメリ

アライさん「が…ご…げ…ぐる…じ…」ビグビグ


佐助は血管を断ち切ろうとせず、首を強く噛んだままである。

アライさん「ごぼ…が…あ…が…」ブクブク

アライさんが泡を吐く。

佐助「…」メリメリ

アライさん「…だ…ず…げ…」

…俺の考えが正しければ。
佐助は今、アライさんの首を噛んで絞めている。
絞首刑のように。

血流も空気供給も止まったアライさんの顔は、徐々に真っ赤になっていき…

アライさん「」

…やがて、顔から表情が消えた。

佐助「ガウゥ」ブヂィ

ようやく、佐助がアライさんの頸動脈を断ちきっ…
…てない。

アライさん「がばっ!?ごぼぼ…」ブシュウゥゥ

頸動脈を断つ代わりに、喉仏を噛み千切った。

アライさん「」ブシュウゥゥ

とはいえ、喉仏を噛み千切られて生き長らえる生物はいないだろう。

事実、これが止めとなった。
アライさんは腹部と喉から大量出血し、やがて脈を止めた。

アライしゃん「の…ぁ…に…にげ…」ズルズル

背中を撃たれた子供のアライさんは、ずるずると這って逃げようとしている。

佐助「ハッハッ」ザッ

アライしゃん「ひぃっ…く、くる、なぁ…」

佐助「ガウ」ガブゥ

佐助は、子供アライさんの首をくわえ、持ち上げる。

アライしゃん「のあぁっ…!」ブラン

佐助「ガウゥ」ザッザッ

アライしゃん「は…はな…じ…で…」

そのまま、母親のところへ持ち運ぶ。

アライさん「」

佐助「ハッハッ」

佐助は、子供のアライさんを親の前へ運んだ。

アライしゃん「あぁ…おかーさん…おかーさん…い、いたいのだ…だず、げで…」ブラン

佐助「ガウウゥ!」ブンッズボオォ

アライしゃん「むぐぅ!?」

!?
…佐助は、子供アライさんの顔面を、先程切り裂いた母親の股間へ押し付けている。

アライしゃん「ぐぶ、ごごぼがばぼごぼぼぼ!」

佐助「フーッフーッ」


…クレイジー。
佐助は、子供アライさんの顔面を母親の腹の中へ突っ込み、
血と臓物で溺死させようとしている…のだと思う。多分。

なんでそんな面倒なことを…。
首を噛んでいるのだから、頸動脈を切るなりすりゃいいだろう。

アライしゃん「」ダラーン

やがて、もがき苦しんでいた子供アライさんの動きが止まる。

佐助「ガウウゥ」ゴギィ

アライしゃん「」ベキン

佐助は、子供アライさんの首の骨をへし折り、止めを刺した。

…だからッ!!
最初からそのトドメの一撃だけでいいだろうがッッッ!!!



何はともあれ。
アライさん親子を始末した。

佐助「ハッハッ」

…結果オーライ、ではないぞ。
今回はたまたまうまく言ったとはいえ、狩猟は単独プレーでやるもんじゃない。
連携が大事なのだ。

調子に乗って己の力を過信すると、やがて痛い目に遭うぞ。

佐助「クゥーン」

これはお前のために言っているんでもあるんだぞ。
敵を深追いするあまり、危険な地形に迷い込み、転落したり戻ってこられなくなったらどうする。
もしくは、アライさんの罠に誘い込まれ(まあ、ないとは思うが…)、袋叩きにされたらどうする。

その時は、お前が死んでしまうのだぞ。
未来の相棒よ、早死にするような真似はよせ。

後でたっぷり躾し直してやる。
こいつらの死体を材料にドッグフードを作った後でな。

だが、その前に。
せっかくお前を連れてきたのだ。

ま だ や っ て お く こ と が あ る だ ろ う ?


俺は、動かなくなった子供アライさんを佐助の眼前に置く。

「佐助、嗅げ」

佐助「クンクン…」クンクン

佐助は子供アライさんの匂いを嗅いでいる。

「佐助、探せ」

佐助「ハッハッ、クンクン…」ザッザッ

佐助は、地面の匂いを嗅ぎながら、森の奥へ進んでいく。
俺は籠を持って佐助のあとを追う。

俺は籠へ、動かなくなった子供アライさんを入れ、佐助の後を追っている。

佐助の進むペースは、徐々に遅くなってきている。
筋肉に疲労が溜まっているのが見て分かる。

やがて、佐助は岩の下にある穴を見つけ、そこを嗅ぐ。

佐助「ワン!ワンワン!」

俺に向かって吠えた。
さて、どうすべきか…

ここまで来たのだ。やらせてやろう。

「佐助、捕らえろ!」

佐助は、岩の下の穴へ顔を突っ込んだ。

佐助「…」ゴソゴソ

「けものなのだー!」

「こわいのだー!」

「のだああぁ!?はなすのらああ!」

佐助が穴をゴソゴソしてると、うるさい声が聞こえてくる。

佐助「ワン!」ズルゥ

アライちゃん1「のあぁぁ!はなすのだああぁぁ!」ジタバタ

オーケー、上出来。
あの母親の巣穴が見つかり、生き残ってたガキを捕らえたというわけだ。

佐助が獲物を捕らえてこっちへ来る。

佐助「クゥーン…」ブラン

アライちゃん1「ひ、ヒトなのだ!よかったのだ、ヒトしゃん!あらいしゃんをたすけるのだ!このけものをやっちゅけてほしいのだぁ!」ジタバタ

あ゛ぁ゛!?
てめえどのツラ下げて我が優秀な愛犬より偉くなった気でいるんだ地上を穢すクソ虫共が!!
佐助、そいつを地面に落とせ。

佐助「ハッハッ」パッ

アライちゃん1「のあぁっ!?」ボトッ

アライちゃん1「よかったのだ、たすかったのだ!これでおうちに帰れるのだ」ヨチヨチ

帰すわけねーだろウジ虫。
ハエの幼虫を逃すと思うか?

俺は弾丸装填済みのエアライフルをアライちゃん1の背中に押し付け、
引き金を引いた。

アライちゃん1「びっ!」グチャアァ

アライちゃん1は、派手に内臓を撒き散らして宙を舞った。

さて、今のやつが最後なのか?

佐助「ハッハッ」ザッザッ

佐助は巣穴に顔を突っ込む。
どうやら、まだ獲物がいるようだ。

佐助「クゥーン」ザッ

顔を穴から出す。
そう、佐助は若いとはいえ大型犬。
アライさんの巣穴に潜り込むことはできない。

じゃあどうするか?
…ここからは、俺の出番だ。

まずは巣穴のそばに、姉の死体を置く。

「くんくん…おねーしゃんのにおいなおだ!」

「おねーしゃんがかえってきたのだ!」

「のあー」

「ちのにおいなのだ!とりをつかまえてきてくれたのだ!」

俺は釣り竿の先へ、錘とスルメをくくりつける。
そしてそれを巣穴へ投げ込む。

「のだっ!?」

「たべものなのだぁ!おねーしゃんがくれたのだ!」

「これがとりなのか?」

「たべるのだー」ガシッ

手応えあり。
俺はリールを巻く。

「にげるなー!」

アライちゃん2「のだー!」スポッ

出てきた。
バカみたいなやり方だが、これが通じるのがアライさんなのである。

アライちゃん2「かたいのだー」アギアギ

アライちゃん2は、スルメをかじっている。
俺はエアライフルへ弾を込めると、アライちゃんの脳天をスコープの照準に捉え、静かに引き金を引く。

アライちゃん2「」バチャアッ

頭が吹っ飛んだ。

アライちゃん2「」ビグンビグンッビグビグガグッガグッビククッバッタタッタバタタッ

次の弾をエアライフルへ込める。
そして、巣穴を注視する。

アライちゃん3「たべものー?」ヨチヨチヨチヨチ

続いて、巣穴からもう一匹アライちゃんが現れた。

アライちゃん3「?おねーしゃん?なんでうごかないのら?」ユサユサ

アライしゃん「」ガクガク

巣穴の前に置いといた子供アライさんに近寄っている。

アライちゃん3「おねーしゃん?どちたのら?なんでへんじしないのらぁ?おかーしゃんは、とりは?」クイクイ

まあいい。
アライちゃん3の頭を照準に捉え、引き金を引いた。

アライちゃん3「」グチャアァ

頭がガクンと動いた。

アライちゃん3「」ビグビグガクガクバタッバタッタタタッビグビグ

ゴキガイジムーブした。脳を破壊することに成功したようだ。

もういないのだろうか?
俺は巣穴に再びスルメを投げ込む。

「のぁー?」

「ぁー」

…かからない。
だが、声が聞こえる。
恐らく、残りは乳児だろう。放っておいてもそのうち死ぬだろう。

佐助「ウゥウゥ……」シッポブンブン

佐助が尻尾をブンブンと振っている。
これは、尿意、便意が近いというサインだ。

まいったな。
猟犬の匂いがこの辺につくと、他のアライさん達に警戒される恐れがある。

どこか、便を出しても匂いが漏れないところはないだろうか…?

佐助「ハッハッ」ジョボボボボボ

佐助は、アライさんの巣穴の中へ排尿していく。
今までよほど我慢していたのだろう。すごい量だ。

「ぴいいぃいぃ!!?」

「やぁなああ!」

巣穴の中から乳児の声が聞こえるが、構うもんか。

続いて、佐助は尻を巣穴の上へ近付ける。

佐助「フゥー」ブリブリブリブリブリブリ ボトッ

佐助は、巣穴の中へ排便した。
こちらも相当我慢していたのであろう。

「びぎゃぁああああ!」

「ぴぃいいぃいぃい!!」

悲痛な叫びだ。
…俺はスコップを出すと、
土を掘って巣穴へ落としていく。

「ぎぴいぃ…」

「おがーしゃ…」

土を落としていくと、そのうち声が聞こえなくなった。

…やがて、巣穴は完全に埋まった。

これで他のアライさん共が、佐助の小便と大便のにおいに気付くことはないだろう。

俺達は、獲物の死骸を持って森を後にした。



翌日。

今日はみっちり躾直すぞ。
訓練が済んだら戦利品として、アライさんで作ったドッグフードを佐助へくれてやろう。

俺は犬小屋へ向かう。
佐助!訓練だ、起きろ!

…しかし、呼んでも佐助は出てこない。

どうした?佐助…

俺は犬小屋の中を覗く。

佐助「…ゥウゥ~…ォフゥ…」グッタリ

明らかに疲労困憊し、筋肉痛に苦しんでいる。
…あんだけの怪力で暴れたのだ。今度は回復するのはいつになるやら…



ハンター達が去った後、森の中では…。

アライさん1「うぅ、また知り合いのアライさん一家がいなくなったのだ…」ザッザッ

アライさん2「きっとヒトにやられたのだ……」ザッザッ

アライさん3「うぅ…なんでヒトはアライさん達を殺すのだ。仲良くしようとは思わないのか…」ザッザッ

??「やあやあアライさんたち。ヒトと仲良くしたいなら、いい方法があるよ」

アライさん1「!?」

突然、帽子を被った少女がアライさん達に声をかけてきた。

アライさん2「だ…誰なのだ!?」

アライさん3「この声、アライさんの仲間じゃないのだ。ヒトなのか?」

??「いーや、違うよ~。私はアライさんの友達。フレンズさ」スッ

そう言った少女は帽子を脱いだ。
黄色く大きな2つのけもみみが現れる。

??「ヒトと仲良くするなんて簡単だよ~。戸籍をとればいいんだからねー」

アライさん1「こ…こせき?」

アライさん2「なんなのだそれ?お宝なのか?」

??「うーん、ある意味お宝かな。ヒトと共存できる権利。うん、間違いなくアライさんにとってお宝だね」

アライさん3「欲しいのだ!」

アライさん1「探すのだ!どこにあるのだ?」

大きな耳のフレンズ「そうだな~。明日の朝、日が出るとき、できるだけたくさんアライさんの仲間をここへ連れてきてくれるかな?」

アライさん1「わかったのだ!」

アライさん2「アライさんにお任せなのだ!」

大きな耳のフレンズ「…」

アライさん3「みんなで宝探しなのだ、わくわくするのだ!」

大きな耳のフレンズ「…そういうところ、やっぱ君達もアライさんなんだね」

アライさん1「?何を言ってるのだ?アライさんは元々アライさんなのだ!」

大きな耳のフレンズ「うん…うん。そうだ、言っておくけど、戸籍を取得するには、とっても簡単なテストを1個だけやる必要があるよ」

アライさん1「テスト?難しいのか?」

大きな耳のフレンズ「簡単だよー。私なんて、10秒もせずテスト終わったからねー。アライさん達もすぐ終わるはずだよ」

アライさん2「戸籍を手に入れると、どうなるのだ?」

大きな耳のフレンズ「ヒトとおんなじ暮らしができるんだ。普段、ヒトがどんな美味しいもの食べてるか分かる?…野菜の丸かじりなんかより、ずっと美味しいよ」

アライさん3「楽しみなのだぁ!」

アライさん1「戸籍を取って、天下を取るのだ!」

大きな耳のフレンズ「それじゃあ、また明日ねー」スタスタ

アライさん2「待つのだ!お前の名前は何なのだ?」

大きな耳のフレンズ「…」

大きな耳のフレンズ「…キツネ。キツネって呼んでくれる?アライさん」

アライさん1「わかったのだ、キツネ!」ザッザッ

アライさん2「恩に着るのだ!」ザッザッ

アライさん3「仲間をたくさん集めてくるのだ!」ザッザッ

大きな耳のフレンズ「…」

つづく



翌朝。
約束の場所には、大小合わせて計20匹ほどのアライさん親子が集まっていた。

アライさん1「これから戸籍を取りに行くのだ!」

アライさん2「いい暮らしができるのだ!人にも襲われないのだ!」

アライさん3「天下を取るのだ!」

アライさん4「でも、大丈夫なのか?ひょっとして、嘘なんじゃ…」

アライさん3「大丈夫なのだ!話をしてきたのは人間じゃなくフレンズなのだ!」

アライさん1「そうなのだ!キツネなのだ!」

アライさん5「なら安心なのだー」

アライちゃん1「なのだー」ヨチヨチ

アライちゃん2「おかーしゃん、これからどこいくのだー?」

アライさん6「しらないのだ。ご飯いっぱいあるとこって聞いたのだ」

アライさん7「宝物があるって聞いたのだ」ゾロゾロ

キツネ「やあやあアライさん達。よく来てくれたねー」

例のフレンズが現れる。
今日も帽子を被り、大きな耳を隠している。

アライさん1「キツネなのだー!」

アライさん2「見るのだ!こんなにいっぱい連れてきたのだ!」

アライちゃん4「なのらー!」

キツネ「ふんふん、さすがアライさん。人脈も人望もあって凄いなー」

アライさん3「えっへんなのだ!」

キツネ「それじゃあ行くよー。こっちこっち~」ザッザッ

アライさん1「出発なのだー!」ザッザッ

アライさん4「戸籍を取っていい暮らしするのだ!」ザッザッ

アライさん5「ヒト達はアライさんを敬うのだ!」ザッザッ

アライさん6「ベリーカープ!」ザッザッ

アライちゃん3「なのだー!」ヨチヨチヨチヨチ

アライちゃん4「なのだー!」ヨチヨチヨチヨチ

アライちゃん5「なのだー!」ヨチヨチヨチヨチ

アライしゃん1「どこまでいくのだー?」トテトテ

アライしゃん2「おなかすいたのだー」グーギュルル

アライしゃん3「おかーしゃん、おべんとーほしーのだ。はたけによっていくのだー」クイクイ

アライさん5「畑?そうなのだ!ご飯がほしいのだ!キツネ、寄り道していくのだ!」

アライさん1「それはいいのだ!」クルッ

アライさん2「腹が減っては戦はできないのだ!」

アライさん3「栄養を取るのだ!」ザッ

アライさん4「畑はあっちなのだ!」ザッザッ

アライさん6「ベリーカープ!」ザッザッ

アライちゃん1「どっちいくのだー?」ヨチヨチヨチヨチ

アライちゃん2「こせきってたべれるのだー?」ヨチヨチヨチヨチ

アライちゃん3「えんそくなのだー」ヨチヨチヨチヨチ

アライちゃん4「こせきー」ヨチヨチヨチヨチ

アライちゃん5「ごはんー」ヨチヨチヨチヨチ

アライちゃん6「のぁー」ヨチヨチヨチヨチ

アライちゃん7「ありゅくのつかれたのら、おかーしゃん、おんぶちてほちーのら!」

アライさん2「おんぶしてやるのだ!」ヒョイ

アライちゃん8「のぁー」ヨチヨチヨチヨチ

キツネ「まあまあアライさん達、そういうだろうと思って、ご飯を用意してきたよ。はい、ジャパリまん」

キツネを名乗るフレンズは、リュックサックから食糧を取り出した。

キツネ「大人は普通のジャパリまん、子供にはひとくちジャパリまんをあげるよー」

アライさん1「なんなのだこれ?」

アライさん2「美味しそうなのだ!」

アライさん3「いただきまーす!」モグモグ

アライさん4「美味しいのだ!滅茶苦茶美味しいのだ!」ガツガツ

アライさん5「やめられない止まらないのだ!」ガツガツ

アライさん6「こんな美味しいもの初めて食べたのだ!」ガツガツ

アライしゃん1「おいしー!」モグモグ

アライしゃん2「こせきとったら、みんなまいにちこれたべられるのか?」ガツガツ

アライしゃん3「すごいのだ!」ガツガツ

アライちゃん1「はぐはぐ」ガツガツ

アライちゃん2「おいちーのらぁ!」ハムハム

アライちゃん3「あまいのらー」モムモム

アライちゃん4「きつねおねーしゃん、ありがとなのだ!」モフモフ

アライちゃん5「まんまー」モグモグ

アライちゃん6「もっとたべたいのだー」ケプ

アライちゃん7「おまえのよこすのだ!」ヒョイ

アライちゃん8「うわーんとられたのらー!あらいしゃんのごはんかえすのらー!」ビエエエエン

キツネ「今はないけど。役所で戸籍を取れば、もっと食べれるよー。さ、みんな行くよー」ザッザッ

アライさん1「戸籍ってすごいのだー!」ザッザッ

アライさん2「宝物なのだー!」ザッザッ



そうして一行は、バスの前に到着する。
古びており、あちこち錆びだらけである。
特に派手な装飾はない。廃棄寸前の安い車両という印象だ。

キツネ「これに乗ったら、しばらくウンチもおしっこもできないよー。乗る前にみんな済ませておいてねー」

アライさん3「分かったのだ!」ガサガサ

アライさん4「あっちの木陰でしてくるのだ」ガサガサ


20匹程のアライさん達が、あちこちで一斉に排泄する。

アライさん3「すっきりしたのだー」

アライさん4「葉っぱでお尻拭くのだ」フキフキ

アライさん5「チビ達、お母さんが拭いてやるのだ」フキフキ

アライちゃん1「のああぁ」プルプル

アライしゃん1「かわがあるのだー」

アライしゃん2「てをあらうのだー」バシャバシャ

アライしゃん3「おててきれーにするのだ」バシャバシャ

野生のアライグマならば、糞をした後に尻を拭くことはしないだろう。

サンドスターの意思だろうか?
水中で獲物を探す姿がものを洗うように見られたアライグマ達は、
フレンズとしての人格を与えられたとき、幾分か綺麗好きなものとしてキャラ付けされたようだ。

キツネ「それじゃ、これに乗って行くよー」

アライさん達は、バスへ乗り込む。

アライさん1「なんなのだこれ?」

アライさん2「こんなのに入ってどうするのだ」

キツネ「みんな乗ったね。それじゃ、出発しようか、運転手さん」

ロボット 「了解。出発スルヨ」

運転席のロボットが操縦席を操作すると、バスのエンジンが動き出す。
どうやらこのロボットは、自動運転の機能を持つらしい。

ロボット「行先ハ、役所デヨカッタカナ」

キツネ「いいよー」

アライさん20名とキツネを名乗るフレンズを乗せたバスは出発した。

アライさん1「わ、すごいのだ!勝手に動き出したのだ!」

アライさん2「これは何なのだ?」

アライさん3「たまに山でこれの小さいやつを見るのだ!車?なのだ!」

アライさん4「車?車っていうのか?アライさんのお母さんは、車に殺されたのだ」

アライしゃん1「おもしろいのだー!」キャッキャッ

アライしゃん2「たのしーのだ!」キャッキャッ

アライちゃん1「うぷっ…きもぢ、わるいのら…」ウプ

アライちゃん2「うっ…おろろろろろろ」ゲロロロロ

キツネ「あー!」

アライちゃん3「きちゃないのだ!」ゲシィ

アライちゃん4「えんがちょなのだ!」ゲシィ

そうして一行は、街中にやってきた。
赤信号の前で止まるバス。

アライさん1「なんで止まるのだ!」ブーブー

アライさん2「さっさと行けばいいのだ!」

キツネ「前みてよアライさん。人が通ってるでしょ?通るまで待とうよ」

アライさん3「関係ないのだ!アライさんの戸籍探しの旅を邪魔する奴らみんな邪魔なのだ!」

アライさん4「このまま進めばきっとみんなどくのだ!さっさと行くのだ!」

キツネ「…」

バスは安全運転を続ける。
やがて、大きな建物の前に到着する。
バスは駐車場にバックで入る。

ロボット「役所ニ着イタヨ」

アライさん1「ここで降りればいいのか?」

キツネ「いーや、もう少し待っててねー。一旦私だけ下りるから」

アライさん2「わかったのだ」

キツネはバスから降りていく。
中は、ロボットとアライさん達だけにまった。

アライさん1「むにゃ…なんか眠くなってきたのだ…」

アライさん2「あらいさんも…なのだ……」

アライさん3「すぴー……」zzz

アライちゃん1「すぴー…」zzz

アライちゃん8「みんなねぼすけなのだ。あらいしゃんもおひるねするのだー…すぴー…」zzz

バスの中のアライさんは、全員寝てしまった。

車載電話『全員寝たかな。それじゃ運転手さん、出発お願い』

ロボット「…出発スルヨ」

ロボットは、キツネを乗せず、アライさん達だけを乗せて走り出した。



アライさん1「むにゃ…よく寝たのだ……」ムクッ

アライさん1「?ここはどこなのだ?」キョロキョロ

アライさん1がいたのは、鉄格子の中だ。

アライさん1「うっ…なんなのだ、お腹の中がずきずきするのだ…」

アライさんは、自分の腹を見る。
下腹に、なにか火傷の痕のようなものがついていた。

『出すのだぁ!アライさんをここから出すのだぁ!』ガンガン

『うそつきなのだぁ!こせきをさっさとよこすのだぁ!』ガンガン

『おがーしゃーん!どごなのだー!おがーしゃーん!』ガンガン

アライさん1「何なのだ、ここは………」

プルルルル、と電話の着信音が鳴る。

男「はい、保健所です。はい、特定有害駆除対象フレンズ引き取り保護サービスですか?かしこまりました。ご注文をどうぞ」

アライさん1「おい、そこの人!なんでアライさんをこんなとこに閉じ込めるのだ?戸籍はどうしたのだ?」

男「はい、はい…。子供2匹と、親1匹ですね。はい…ブラウンP様ですね。かしこまりました。それでは配送します」ピッ

アライさん1「おい!無視するんじゃないのだ!なんか答えるのだ!」ガシャガシャ

男「うるせえなあ…。親は、こいつにしとくか」

アライさん1は、籠ごと車に乗せられる。

アライさん1「おい!なんか言うのだ!おいってば!」ガシャガシャ

男「大臣も面倒なサービス始めたもんだなー………」キキッ

車は走り出した。
アライさん1はどこへ向かうのだろうか…。



保健所の駐車場。
寝ているアライさんが全て下ろされた後のバス。

アライちゃんの吐瀉物が臭気を放っている。

そこへバスの扉を開け、清掃員が入ってきた。

清掃員は、デッキブラシでバスの中を清掃していく。



アライさん1は、 やがて籠ごと誰かの家に運び込まれた。

男「ちわーす。特定有害駆除対象フレンズ配送でーす。親1匹と、子供2匹持ってきました」

ブラウンP「はい、ありがとう」

ブラウンPは、男へ金を支払った。

ブラウンP「助かるよ。日中は漫画の仕事で忙しいし、猟師の知り合いもいないし。届けてくれるのは実にいいね」

男「またのご利用お待ちしておりまーす」

男はまた車に乗り走り去っていく。

アライさん1「ここがアライさんの家なのか?」

ブラウンP「君の家?…君は、どういう話を聞いてここに来たんだい。話してくれるかな」

アライさん1「いいのだ。見たとこお前もフレンズなのだ。戸籍を持ってそうなのだ」

ブラウンP「戸籍…」

アライさん1は、これまでの経緯を話した。

アライさん1「というわけなのだ…キツネはいいやつなのだ。美味しいものくれたのだ。嘘つくはずがないのだ」

ブラウンP「…あっはははっはは!彼女もまた随分面白いアライ狩りを始めたじゃないか!親友と同じ姿のフレンズにやることとは思えないな!いい漫画のネタになりそうだ!」

アライさん1「何笑ってるのだ?アライさんはまだ戸籍を貰ってないのだ」

ブラウンP「君は、戸籍をとる前に試験をやることを知ってるかい?」

アライさん1「聞いたのだ。簡単な問題をやるって。で、いつやるのだ?」

ブラウンP「もう終わってるよ」

アライさん1「え?」

ブラウンP「戸籍をとる前の試験は、ごく単純な2択問題だよ。1問題正解すればOKなんだ」

アライさん1「どんな問題なのだ?」

ブラウンP「教えてあげよう。問はこうだ…。『戸籍取得希望者は、特定有害駆除対象フレンズに含まないか』」

アライさん1「…?とく…な…なんなのだ…?」

ブラウンP「さて、お腹が減ったな。なにか料理でも作ろうっと」

アライさん1「アライさんも食べたいのだー!」





フレンズの戸籍取得に試験が追加されたのは、
『特定有害フレンズの駆除促進のための法律』が施行されたのと同じ日である。

本法律が施行されて以来、戸籍を取得したアライさんの数は、0である。



夜の保健所。

バスを清掃し終えた清掃員は、缶コーヒーを空けて飲んでいる。

キツネ「お疲れ様」

清掃員「…おつかれなの…だわ」

先程のフレンズが、清掃員の隣に腰掛ける。

キツネ「…今日もいっぱい、アライさんを保健所送りにしたよ」

清掃員「…仕事だから、仕方ないの…よ」

キツネ「…はは…」

清掃員「…きっとあいつらも、お前と話せて、浮かばれるの…です」

キツネ「…もうこんな仕事嫌だよおぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっぉおぉぉっ!!」ダキッ

キツネは清掃員に抱き付き、大声で泣く。

キツネ「みんな死ぬんだ!私が殺した!私があのアライさん達を殺したんだあああぁああああっ!!」

清掃員「…」

キツネ「あの子たちもっ!私と友達になれたかもしれないんだっ!みんなで一緒に宝探しとかしてっ!羽のついた帽子追っかけ回して!一緒に笑ったりできたかもしれないんだっ!それを私は皆殺しにしたんだっ!」

清掃員「…」ゴクゴク

清掃員「…ヒトの社会で生きるには、金がいるの…だ」

清掃員「ア…たし…達は、狭い動物園の檻の中じゃなく、自由を選んだのだ。その代償がこれなのだ」

清掃員「人間は皆、こうやって生きてたのだ。アライさん達も、そこに仲間入りしてしまったのだ…」

キツネ「うぅっ…!こんな事するくらいなら!ずっとジャパリ動物園にいればよかった!あの狭い動物園の中で、ゴロゴロしてればよかった!出てこなきゃよかった!」

清掃員「…今さら戻っても、もう美味しいゴハンの味や面白いゲームの楽しさは忘れられないのだ」

キツネ「うぅ…」

清掃員「…こっちもこっちで大変なのだ。つい頭に血が上って喧嘩することなんてしょっちゅうなのだ」

清掃員「…保健所に連れてこられたり…、畑を荒らして駆除されるアライさん達を見てると、分かるのだ」

清掃員「ア…たしも、お前や仲間達と出会わなかったら、きっとああしていたのだ」

清掃員「お前との出会いがなかったら、あたしもきっと、畑を荒らして暮らしてたのだ」

キツネ「畑…」

清掃員「ボス達の畑なのだ」

キツネ「ああ…」

清掃員「…みんなと溶け込むのが、つらいのだ」

キツネ「…」

清掃員「…お前とペパプのみんなだけが、あたしの心の支えなのだ」

キツネ「はは…。なんで人は、こんなに辛い思いして、自分も他人も傷付けて、互いに窮屈な思いしながら…」

キツネ「贅沢な暮らしをすることを選んで、その道に突き進んでいるんだろうね…」

清掃員「…けものはいないけどのけものはいる。それがヒトの社会なのだ…」

キツネ「…」

キツネ「また、あの頃に戻れたらなぁ…。大好きだった宝探しとかして、毎日ぶらついてさ…」

清掃員「宝探しなんてしなくても、ネットで調べればすぐ見つかるのだ。でも、それを買うお金も、そこに行く時間もないのだ」

キツネ「…」

清掃員「…でも、宝物は…あるのだ」

キツネ「…うん、私もだよ」

ビー、ビーとブザーが鳴る。
今夜も保健所では、捕獲された有害駆除対象フレンズの安楽死が始まるのだ。

つづく

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2017年09月13日 (水) 19:27:24   ID: mVS85CbM

サイコに最高じゃあないか

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom