・モバマスの三船美優さんのSSです
・幕張公演の美優さん(原田さん)を見て突発的に書いたので中の人要素も少しあります
・地の文多めです
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プロダクション初の全国ツアー、その後半戦である幕張でのライブもいよいよアンコール前最後のブロックの佳境に入っている。
そんな中、ステージ上では先日発表されたばかりの新曲の初披露が行われており、ファンのボルテージは最高潮だ。
「ステージ、無事に盛り上がっているみたいですね」
ステージ下のポップアップに待機しているそう語りかけると
「はい……。皆さん、特にゆかりちゃんは本当に練習していましたからね……。大丈夫ですよ。」
彼女は、自分の担当アイドルの1人である三船美優は半ば自分自身に言い聞かすように答えた。
「そうですね……」
「だって、たくさん一緒に練習しましたから」
そう、彼女は今ステージに立っている水本ゆかりと同じく、周年ライブは今回が初めてになる。
15人の出演者の中で初参加は2人だけということもあり、全体曲等は一緒に練習することも多かったゆかり。
そんなゆかりの一番の見せ場は今披露されている新曲と言っても過言ではないだろう。
そしてこの曲が終わると次はいよいよ彼女が、三船美優がセンターとして初めてステージに立つことになる。
この曲のお披露目自体は去年の秋のちょっとしたイベントで一度済ませているのだが、今思い返すとそれが彼女と自分にとって大きな転機だったのかもしれない……という思いが頭の中をよぎる。
……随分昔のような、それでいてつい最近のような、何とも不思議な感覚だ。
その時はCD面子である乃々と芳乃、そして彼女の3人でのお披露目だった。
規模はかなり小さいとはいえ、彼女にとっては正真正銘それがアイドルとしての初舞台だったわけだが
緊張のせいか表情や目線等に課題は残ったものの、歌やダンスはキャリアの長い他の2人にそこまで劣るものではなかったし、Pとして贔屓目抜きで見ても成功したと言って良い出来だったのは間違いない。
現にステージ袖に帰ってきた彼女を自分は全力の拍手で迎え入れたし、彼女自身も緊張の糸が解けたのか笑顔を浮かべてくれていた。
状況が変わったのはその少し後、反省会としてそのライブ映像を美優さんと鑑賞したのがキッカケだった。
『……私、下を向いてばかりで全然お客さんの方を向けてませんね。表情も硬いですし……』
映像を見ながら彼女はポツリと、だがはっきりとそう呟いた。
『うーん……確かに課題の一つではありますけど、初めてにしては上出来だと思いますよ?』
『そうかもしれません。けど、乃々ちゃんも芳乃ちゃんもしっかりと前を向いて笑顔で歌っています。……なのに、私だけ』
『彼女達とはキャリアが違いますから……』
『確かに、プロデューサーさんの仰る通り私は何の経験も無い新人アイドルです。……でも、それを言い訳にはしたくありません』
『美優さん……。』
『……やっぱり、向いてないんでしょうか。年齢も年齢ですし、私がアイドルなんて……』
『そんなことありません!!』
思わず立ち上がって大声を出してしまい、この後は堰を切ったように言葉が口から零れ出ていった。
『……確かに今はまだ他の2人に比べると美優さんが劣る点はあるかもしれません。でも美優さんも後半になるにつれて前を向けてますし、笑顔になっているじゃないですか。
貴女はこの1曲の間の僅か5分足らずの間にもしっかりと成長しているんですよ!……だから僕は貴女に大きな可能性を感じているんです』
『年齢なんて関係ありません。僕はこの先、トップアイドルとして輝く三船美優が見たいし、貴女にトップアイドルの景色を見せてあげたいんですよ!!』
正直、自分が彼女に対してここまで熱く意見を言うことが今まで無かったので、この時は自分自身が一番驚いたのをよく覚えている
それまでも決して手を抜いていたわけではないがこの秋のイベント以降、彼女へ対するプロデュースの熱が更に増したのは事実だ
『プロデューサーさん……』
『だからファンの為にも、僕の為にも、そして何より貴女自身の為に自分を卑下するのは止めてください。……我が儘を言って申し訳ないです』
そう言って頭を下げると美優さんは
『そんな!……ありがとうございます、プロデューサーさん。……そう言ってくださるなら私、今まで以上に頑張ってみせます』
自分の勢いに気圧されることなく、強い口調でハッキリとこちらの目を見てそう言ってくれた。
それ以降、彼女は今まで以上にレッスンに打ち込んできたし、自分もそんな彼女を可能な限りサポートしてきたつもりだ。
そして、今から彼女はセンターとして秋のイベントと比べて数倍以上のキャパである会場のステージに立とうとしている。
不安や緊張も当然あるだろう。それは表情から読み取れるし自分も同じだ。
「プロデューサーさん。……プロデューサーさん?」
「あ、すいません!どうかしましたか?」
どうやって激励しようか等と考えていたら逆に担当アイドルを不安がらせてしまうとは……我ながら情けない。
「心配していただかなくても大丈夫ですよ」
「えっ?」
「だって私には一緒にステージで歌ってくれる菜々ちゃんに未央ちゃん、見守って応援してくれている他のアイドルの皆さんにファンの方々……そして、プロデューサーさんがついていますから」
「笑顔で、自信を持って歩けます」
自然に笑うのが苦手だった彼女が、秋のステージ前には今にも重圧に押しつぶされてしまいそうな顔をしていた彼女が、本当に自然に微笑みながらを自分に伝えてくれた。
「美優さん……」
ああそうだ、自分は彼女のこの笑顔に……あの5分足らずのライブで最後に見せた笑顔に大きな可能性を感じたからここまでプロデュースしてきたんだ。
今更ながら改めてそう実感する。
「美優さん、僕からは1つだけ。初めてのセンターからの景色を楽しんでください」
以前の彼女には難題だったかもしれない。でも今の彼女なら。
「はい。いってきます!」
そう言ってポップアップからステージに飛び出た彼女の最高の笑顔を見た瞬間、それは自分の中にあったこのステージが大成功するという予感が確信に変わった瞬間だった。
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「お疲れ様です……ってどうしたんですか!?まさか怪我でも!?」
「あっ……いえ、違うんです。」
ライブ後、1人ステージに佇んでいた彼女に声をかけると涙を流していたことに驚き、思わず大声を出してしまった。
もしやステージでどこか痛めたのでは、と危惧したが幸いそうではなさそうだ。
「……何だか信じられなくて。さっきまでここにあんなに大勢の人が居て、その前で歌って踊っていたなんて。」
涙を拭いながらそう言った彼女の表情は今までで一番晴れやかに見えた
「全部、現実ですよ。美優さんの力でここまで来たんです。」
そう、ここまでこれたのは他でもない彼女自身の努力の賜物だ。
ライブでも自分の予想を遥かに超えたパフォーマンスを魅せてくれた。
彼女自身も感極まったのか曲の最後は目に涙を浮かべていたが、それでも最高の笑顔をファンに届けることが出来たと断言して良いだろう。
「……私、ファンの皆さんが見たかったアイドルの三船美優としてステージに立てたでしょうか」
「勿論です」
即答する。考えるまでもない
「なら、良かったです。……プロデューサーさん、貴方に少し言いたいことがあります。聞いてくれますか?」
「はい、何ですか?」
―――――信じて歩んできた軌跡 いつでも照らしてくれるから―――――
「ありがとうございます。プロデューサーさん」
「あの時、弱音を吐いた私にああ言ってくれて」
―――――躓きそうでも迷いそうでも 輝く気持ち忘れずにいられる―――――
「あの時プロデューサーさんにああ言ってもらえなければ、私は今ここには居ません」
―――――誰も止められない 思い描いたその景色―――――
「プロデューサーさん、トップアイドルとして輝く三船美優が見たいって仰いましたよね」
―――――きっと私が見せてあげたい―――――
「必ず、必ず私がプロデューサーさんに見せてみせます」
―――――期待しててね もっと―――――
「だから、期待していてくださいね?」
―――――誰も止められない So Happy 笑顔が溢れてる―――――
「……こちらこそありがとうございます。本当に、今の美優さんとならどこまでも行けそうです」
―――――たどり着ける自信があるから―――――
「トップアイドルの座にも僕が連れていきます。そして僕が美優さんに見せたかった景色を必ず見せてみせますよ」
―――――ちゃんと見届けてね―――――
「だから、ちゃんと見届けてください」
―――――Take me ☆ Take you―――――
「……ふふっ。2人で一緒に頑張りましょう」
「ははっ…。はい、改めてよろしくお願いします!」
―――――もっとずっと先へ―――――
「まずは来月の埼玉公演ですね。次はどんな景色が見られるんでしょうか……」
「何といってもツアー最終公演ですからね。あ、そういえばさっき連絡があってそれ以降のライブの予定が――――」
―――――覚めない夢は 始まったばかり―――――
以上です
https://www.youtube.com/watch?v=jC29YAtZn4U
幕張公演で秋の5thアニバーサリーの時と比べて物凄く成長していた原田さんを見て美優さんの中の人がこの人で良かったと本当に思いました
TMTYがCDデビューの美優さんにとっても、美優さんがほぼ声優としてのデビュー作の原田さんにとっても覚めない夢は始まったばかりなんだなと…
幕張公演を見た方もそうでない方も5thアニバーサリーのTMTYを見て原田さんの成長を感じていただけると嬉しいです
ありがとうございました
あ、最後に1つだけ
本来なら森久保と芳乃もボイス実装は美優さんと同時期だったのですが中の人のキャリア的にこのお話では先輩みたいになっています
SSAで彼女達が揃ってTMTYを披露してくれるのを楽しみですね
依頼出してきます
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