裕美「火曜シンデレラサスペンス劇場?」 (48)

――昼、商店街(ワカンセ通り)

店長「はい、補助券10枚ね。ふくびき1回分だから頑張って!」

裕美「……」ガラガラガラッ!!


カランッ!


店長「大当たりぃ~!!」チリンチリーン!!

裕美「え?」

店長「大当たりだよ嬢ちゃん! 2等の43インチ薄型テレビ、これ1本しか入ってないからね!」

裕美「……」

店長「今日はお母さんと一緒かい? これ、家のテレビも新しくなってお父さんも喜ぶんじゃないのかい?」

裕美「あの……私、寮に住んでるんですけど……」


……
…………

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――夜、女子寮(裕美の部屋)

裕美「はぁー……疲れた」

裕美「ようやくテレビの設置も終わったし……みんなに手伝ってもらちゃったけど……」

ピッ!

『さあそれでは次に登場するチャレンジャーは……!』

裕美「テレビ……大きい。部屋の中がちょっと狭くなったような」

『おおっと智絵里選手、そのまま船から落下して海に飲み込まれたー!!』

裕美「えっと、チャンネル……あ、このボタンが番組表……」ピッ

裕美「……ふうん、寮では居間でテレビ見てたから、大人の人たちが見るニュースとか、小さい子たちが見るアニメばかり流れてたけど」

裕美(色々あるんだ……野球、食レポ……どれか見ようかな……)

裕美「あっ」


『火曜シンデレラサスペンス劇場』


裕美「火曜サスペンス劇場……ドラマだよね。そういえば昨日、ユッコちゃんが……」


……
…………




裕子『聞いてください裕美ちゃん! この前ユッコたちが撮影を終わらせたドラマが明日放送するんですよ!』

裕子『サイキック美少女ユッコがなぜか主役に選ばれてしまった2時間ドラマ、是非ぜひ見てください!』

裕子『いえ、むしろユッコのサイコキネシスで裕美ちゃんがドラマを見るように明日しっかりと誘導しておきますから!』


……
…………



裕美「そんなこと言ってたような……も、もしかして今日行った商店街の福引でこのテレビが当たったのもユッコちゃんの……!」

裕美「……なーんて、でもせっかく大きなテレビが部屋に入ったし、ユッコちゃんにも見てねって言われたし……今日は、ドラマ見ようかな」

裕美「20時59分……そろそろ始まるし、チャンネル切り替えてっと……」

ピッ!


――
――――




『火曜シンデレラサスペンス劇場』



『サイキックアイドル堀裕子シリーズ 熱海温泉旅館殺人事件』




※この物語はフィクションであり実在の人物団体とは一切関係ありません


……
…………
………………
……………………





――必ず……貴方を殺します。私は……貴方を……。





……
…………

――2016年8月4日 15時36分、愛知県名古屋市中区、中警察署

「おーい早苗、連休中の引継ぎ、済ませてんのか?」

早苗「はいはい今やってますよーって……んっとに、この前の事件も終わったばかりなんですから、少しくらいゆっくりさせてくださいよ」

「つってもお前、明日から熱海行くんだろ? 前の事件の書類の後始末と、持ってる案件の引継ぎ忘れんなよ」

早苗「分かってますって。アタシは大丈夫ですけど……ま、旅行中にまた事件が起きて戻ることがないといいけど……」

「こればっかりは分かんねぇからなぁ。ま、ゆっくり休んどけよ」

早苗「了解。あ、そういえばボスは?」

「ボスなら午前中に本部に行ったよ。事件の話でちょっとあってな……んで、終わったらそのまま東京まで行くってよ」

早苗「ふーん……ま、それじゃあ休暇終わってからでいっか。焼肉連れてってくれるって話だったんですよね」

「そりゃ来週末の話だろ……ほら、いいからお前はさっさとやることやっとけ」

早苗「んっとに……ボス、アタシがオススメした店の場所、ちゃんと覚えてるのかしら……」


……
…………

――18時04分 東京都渋谷区、CGプロダクション事務所(事務室)

『愛知県名古屋市で発生した連続強盗殺人事件、先月7月18日に犯人が逮捕されてから2週間が経過し、被害者遺族の声は――』

裕子「……」

藍子「……」


P「……」カタカタカタカタッ!

prrrr!

P「はいCGプロダクションです……お世話になっております、はい、Pです」


美優「……裕子ちゃん、藍子ちゃん、コーヒー……飲みますか? 今用意していますけど」

裕子「いただきます!」

藍子「すみません、ありがとうございます」

智絵里「あ……わ、私も文香さんも……いい、ですか?」

文香「……」

美優「それじゃあ……ええと、とりあえずみんなの分、ね?」

楓「自由行動1日目のユッコちゃんたちの行き先はここ……私と美優さんの行き先は……」

裕子「むむ? 楓さん、何やってるんですか?」

楓「明日からの旅行、自由行動の日にみんなが行く予定の場所をまとめておかないと……何かあったら大変じゃないですか?」

藍子「そうですね。花火大会の時期で、私たち以外の花火を見に来るお客さんもたくさんいると思いますし」

楓「大丈夫ですよ。親水公園、結構大きいとこみたいですし混んでても花火は見えますよ、きっと」

裕子「へー……」


文香「……」

P「はい……いえ、こちらこそ申し訳リません。また次回、よろしくお願いします。はい……では、失礼します」


智絵里「……文香さん、ど、どうしたんですか?」

文香「……いえ」

智絵里「あ、あの……あ、あんまり、気にしてたら、ダメだって思って……私も、前は……」

文香「はい……私自身、理解は……しておりますので」


『魔法少女マジカルガールズが今度は映画で大暴れ! 前売り券を買うとゲームで使える劇場限定カードが1枚もらえちゃう!』


裕子「むむっ! 映画ですか……前売り券、買っておかないと!」

藍子「もらえるカード、ランダムなんですね……」



P「……こんなもんかな。そういえば、みんな明日の準備は出来てるのか?」

裕子「当然バッチリです! プロデューサー、ユッコを舐めてもらっては困りますね!」

藍子「ユッコちゃん、旅行が決まってから毎日仕事が終わったあとに買い物に行ってるんですよ? あれも必要これも必要って」

智絵里「わ、私も……昨日のうちに、バッグに着替えとか、用意しておきましたから……」

楓「私も用意してますよ。鞄に入りきらなかったお酒はどうしようかと思ってますけど……」

P「それは置いてってください」

美優「そ、そうですよ……旅館についたら、たくさんお酒も出ますし……どうぞPさん、コーヒーです」

P「ああ、すみません美優さん。いただきます」

楓「旅館で飲むのもいいですけど……せっかくの熱海の花火大会ですし、花火を見ながら外でグイッと……」

文香「……」

裕子「あははは……ま、まあ楓さんなら今さら、ですよねぇ……」

P「程々にしてくださいよ……さてと、メールも転送して……よし終わり! みんな、そろそろ事務所閉めるぞー」

藍子「もう大丈夫なんですか?」

P「休み中に仕事は入れてないし、他所への連絡も全部送ってるし大丈夫だよ。ほらほら、テレビ消して戸締り確認して帰るぞ」

裕子「ちょ、ちょっと待ってください! まだコーヒーを飲み終わってなくて……うわぁっつぁ!?」

美優「ゆ、裕子ちゃん、そんなに慌てて飲まなくても……」


……
…………

――23時45分 東京都渋谷区、CGプロダクション事務所(事務室)


P「……ええ、はい。あれから事務所に引き返して少し」

P「大丈夫です。そろそろ俺も引き上げますよ……はい、それじゃあ当日は」

P「まあ……もう決めましたからね。後は……俺次第なのか、彼女次第なのか……」


P「それじゃあ、遅い時間に電話してすみませんでした。失礼します」ピッ!


……
…………

――8月5日 13時21分 愛知県名古屋市中村区、名古屋駅(改札前)

早苗「ふわぁ……ねむ、昨日飲み過ぎたかしら……」

ピーッ! ピーッ!

早苗「んん!? 何よこの改札……あ、違った。TOICAじゃなくて乗車券だったわね……買ってたんだった。えーと、券、券……」

早苗「あった。ほれ改札君、ご所望のブツよ」ピッ!

早苗「ふぃー……えーと、熱海に着くのは……15時30分頃ね。新幹線乗ったら、ちょっと寝てようかしら」



早苗「それにしても……旅行行くなら誰か誘えばよかったわねぇ……」



……
…………

――15時18分 静岡県熱海市田原本町、熱海駅前

裕子「熱海だー! ユッコ、熱海の地に立つ!」

文香「予定通り……着きましたね。次は、旅館までの移動ですが……」

智絵里「ちょっと涼しいかも……」

藍子「海が近いですからね。ふふっ、晴れてよかったです」

P「んーと、バス停はどっちだ?」

美優「駅の案内板、どこに立ってるんでしょうか……」

裕子「探してきますか?」

楓「あ、大丈夫ですよ。さっき改札出たとき、駅の窓口脇に置いてあった旅行会社のパンフレット貰ってきちゃいましたから」

裕子「さすが楓さんですね。えーっと『熱海観光グループ ふるーる熱海バス』パンフレットにバスの停留所も書いてますね」

P「えーっと、駅から出て……商店街とは反対方向か。よし、移動するか」

裕子「海辺のあたみマルシェ、親水公園あたみビール祭りのご案内……はぁはぁなるほど、楓さんがパンフレットを取った理由はこれですか」

楓「ふふふっ……夜の花火大会、楽しみですね」

美優「ほ、程々にしてくださいね……」

……
…………

――16時02分 熱海市和田浜南町、温泉旅館『花月 花の湯』、花影館1階(受付)

裕子「ほえええええ広い……あ! 藍子ちゃん智絵里ちゃん見てください、お土産コーナーですよ!」

藍子「ゆ、ユッコちゃん待ってください……」

智絵里「お、おみやげっ! か、帰るときじゃないと荷物になっちゃう……」


楓「みんなあまり騒がないで、他のお客さんのご迷惑にならないようにしないと」

美優「海……思っていたより、近いですね……」

文香「そうですね……目の前、少し歩けばすぐのところで……」


P「はいそうです。7人で予約しているPです、二部屋続きの部屋で予約しているはずですが……」

受付「P様……はい、確認が取れました。花月館6階、605室でご予約を頂いております。お部屋までの移動についてですが……」



裕子「んー……」

智絵里「へー……」

藍子「へぇ」

楓「どうしたの? 3人揃って……あ、旅館の見取り図かしら?」

裕子「いまユッコたちのいるロビーが花影館、予約したお部屋のある場所が……」

藍子「隣の花月館の6階ですね。花影館の2階はラウンジに、3階から5階までが客室で、6階が温泉ですね。3階より上ならエレベーターでどこからでも花月館にいけるみたいです」

智絵里「花月館は、1階と2階がなくて、3階が宴会場になってて……4、5、6階が客室、6階の一部が露天風呂って書いてます」

楓「温泉も……2箇所あるのね。花湯と月湯、それぞれ入れる時間が決まってるみたいね」

藍子「男女交互にチェックインの時間が変わるみたいですね。夜に私たちが入るなら……えっと、月湯が夜中の1時まで入れるみたいですね」

智絵里「わ、忘れないようにしないと……」

裕子「なあに大丈夫ですよ! 智絵里ちゃんが忘れてもユッコのサイキックパワーで思い出させてあげますから!」

智絵里「そ、そう……」


P「おーいお前らー、受付済んだから部屋まで行くぞー」

裕子「あ、はーい!」

……
…………

――16時12分 『花月 花の湯』、花月館6階(605室)

裕子「二部屋! ふすま! 和室もいいですねぇ~」ガラッ! ガラッ!

藍子「そんなに襖動かさなくても……」

楓「テレビテレビ……」ピッ!

『8月2日に熱海市春日町で発生した殺人事件、犯人は未だ見つかっておらず……』

楓「あら……」

『被害者を刺した凶器となるナイフのみが、事件現場から500メートル先、国道135号線を越えた熱海海岸自動車道で発見されました』

藍子「怖いニュースですね……」

裕子「昨日も名古屋の事件、ニュースで流れてましたからね」

楓「そうね……さてと、私たちの荷物は置くの部屋にまとめて置いておきましょうか」



P「すみません、俺が1部屋丸ごと使っちゃって……1人だけ個室で全然良かったんですけど……」

美優「いいんですよ。事務所のお金で旅行行くんですから……みんなで楽しみませんと」

文香「……その……就寝のときには、襖も閉めますし……内風呂を使うときだけ、私たちのほうで……気に留めておきますので」

P「それはそれで気を遣ってもらって何だかな……」

智絵里「わぁ……ベランダから見える海、凄く……キレイですね」

P「ん? ああそうだなぁ……歩いてすぐのところに海があるのも、いいなぁ……」

美優「……ええと、親水公園は向こう側ですよね。旅館を出て左手側に歩いた先で」

智絵里「観光協会があるんですよね……ここからなら、歩いて10分くらいで行けそうです」

P「まあでも、ここにいる間はバスも使ったりするだろ?」

美優「自由行動の日は、買っておいたほうがよさそうですね……観光もしますし」

文香「……あれは、なんでしょうか?」

智絵里「あれ……?」

美優「空に……飛行船が飛んでますね」

P「あー、なんだっけ……そうそう、屋外用の飛行船広告だよ。夏の時期で花火大会だし力入れて宣伝もするよなぁ」

美優「海と……静かに空を移動する飛行船……絵になりますね」

藍子「あれ、みなさんベランダで何見てるんですか?」

智絵里「い、いまね、飛行船が飛んでて……白くて大きい風船みたいな……」

藍子「そうだったんですか? いいなぁ……私も見てみたかったです」

裕子「もー! みんな自分の荷物は自分で片付けてくださいよー」

智絵里「あ、ご、ゴメンねユッコちゃん……」

P「ま、そのうちまた飛ぶんじゃないか? 確か1日に2回くらい飛ばしてるって話だし」


裕子「プロデューサー! 私たちの荷物、とりあえず整理しておきましたよ!」

楓「奥の部屋の脇に寄せただけですけどね」

美優「これから、夜までどうしましょうか?」

裕子「温泉ですか! 観光ですか! それともサイキックパワーの訓練ですか!?」

P「んな訓練するかっ! っとに、プロフェスの打ち上げ旅行に来てまで何をやろうとするんだお前は……」

藍子「6月のプロダクションマッチフェスティバル、今までで一番いい順位でしたからね」

楓「みんなが頑張った結果、ですね。今回の旅行は、そのお祝いも兼ねてますから」

P「今回の旅行でしっかり疲れも取って、次の仕事も頑張らないとな」

文香「……」

裕子「というわけで、それで夜になるまではどうしますか?」

楓「夕食は夜の6時頃みたいですし……先に温泉、行っちゃいますか?」

藍子「そうですね。花火大会も20時過ぎから始まるみたいですし」

P「それじゃあみんなで風呂行くかぁ」

裕子「……覗くのはダメですよ!? サイキックガードは張っておきますけど!」

P「そんなことしたら俺のプロデューサー人生が終わるわ!」

美優「……」

智絵里「あ、あはは……そ、それじゃあ、いきますか? ふ、文香さんも……」

文香「……はい」

楓「温泉、温泉ー……♪」


美優「……プロデューサー人生、ですか」


裕子「美優さーん、早くいきましょう!」

美優「あ……は、はいっ」


……
…………

――19時13分 『花月 花の湯』、花影館1階(受付)

早苗「んー……花火、20時20分だっけ……出るの遅くなったけど、公園入れるかしら」

早苗「ま、出店でビールは買うとして……出店のほうは混んでそうだし、おつまみは先に売店で買っとこうかしら」


<ユ、ユッコチャーン……


早苗「うん?」


裕子「見てください! このお土産用の、旅館の名前が彫られている箸!」

裕子「和風ならではということでサイキックスプーン曲げではなくサイキック箸曲げをやってみせたほうが明日の宴会芸も……」

智絵里「だ、ダメですよ……ちゃ、ちゃんと買ってから曲げないと……」

藍子「そもそもお箸って木やプラスチックで出来てるから、曲がらないで割れちゃうんじゃ……」

裕子「いやいや! 割れたら割れたでサイキックパワーの証明になるのではないかと……」



早苗「……」

早苗(アホだ……アホの子がいるわ。アホの子が売店でアホみたいなことを言ってる……)

早苗「……おつまみも出店で買うかぁ」

……
…………

――20時16分 熱海市渚町『親水公園』(スカイデッキ)

裕子「も、物凄く混んでますね……」

藍子「花火を見に来るお客さん、こんなにたくさんいるんですね……人で埋まっていますし」

楓「……」ズーン……

美優「か、楓さん……元気だしてください、ね?」

智絵里「ど、どうしたんですか、楓さん……?」

文香「……ここでは、あたみビール祭りが開催されていたみたいですが……どうやら、8月1日から4日までだったようで」

裕子「あっ……」

P「ここに来る途中で買ってきたビール、もう全部飲んだからな……」

楓「ビール……ビール……うううう……」

裕子「そんな世界の終わりに立ち会ったような顔しなくてもいいと思いますけど」


P「仕方ないな……そろそろ花火始まるけど、出店まで行って買ってくるか」

美優「お、お1人で、大丈夫ですか? たくさん買うことになると思いますし……わ、私も、付いていきます」

P「まあ1杯2杯じゃ足りないか……それじゃあ行きましょうか。文香、悪いけど戻ってくるまでみんなのこと見ておいてくれ」

文香「はい……」


……
…………

――20時21分 『親水公園』(スカイデッキ)

智絵里「あっ……花火」

藍子「わぁ……」

楓「お酒……ビール……」

裕子「楓さん楓さん、花火始まりましたよ」

楓「えっ?」

藍子「綺麗ですね。やっぱり間近で見ると凄いです」

裕子「いやぁ、夏って感じしますね! ここはいつも花火大会やってるみたいですけど」

文香「……プロデューサーさんと、美優さん、花火までに戻ってきませんでしたね」

楓「え?」

智絵里「プ、プロデューサーさんたち、来る途中にあった出店に行ってビール買ってくるって……」

楓「……」

裕子「あー、ユッコたちの分のジュースもお願いすればよかったでしょうか?」

藍子「ま、まあ花火大会は21時で終わりみたいですから」

楓「……私、ちょっと様子見てこようかしら」

裕子「え?」

楓「ほら……ビール飲みたいの、私だから……Pさんたちのところに行って、荷物持ちくらいはしないとバチが当たっちゃいますし」

藍子「1人で大丈夫ですか?」

楓「出店の場所なら、さっき通ったし大丈夫。文香ちゃん、私もちょっと行って来ますね」

文香「……分かりました」

智絵里「あっ、また花火上がりましたよ」

裕子「サイキックたーまやー!」

……
…………

――20時27分 『親水公園』

楓「えっと、確か出店はこっち側に……」

楓「あ……」



P「ようやく買えそうですね……随分並んだなぁ……」

美優「そう、ですね……思っていた以上に、混んでますね」

P「行けるならムーンテラスで花火見たかったんですけどね。仕方がないか」

美優「……私も、行きたかったです。Pさんと2人で」

P「な、なんですかその言い方は……」

美優「ふふっ……何でもありません。少し、そう思っただけで……Pさんも、本当は2人きりで……ここに来たかった……とか」

P「……んぅ」

美優「す、すみません、困らせちゃいましたね……私」

P「いや、まあ……正直なことを言うと、そうですから」

美優「……花火、始まりましたね」

P「そうですね。買う物買って、早くみんなのところに戻らないと」



楓「……」


……
…………

――20時31分 『親水公園』(スカイデッキ)

P「おーい、買ってきたぞー」

裕子「おかえりなさーい」

美優「ごめんなさい、出店も凄く混んでて……」

楓「買えたからオッケーです」ゴクゴクッ!

文香「楓さんも……一緒に戻ってきたのですね」

P「店の列に並んでたら楓さんが追いかけてきたから、そのまま一緒に並んで戻ってきたよ」

智絵里「プロデューサーさん。花火、まだ続いてますよ」

P「おう。みんなの飲み物もついでに買ってきたから、後はゆっくり見てようか」

藍子「わぁ、ありがとうございます」

裕子「さすがプロデューサー! それじゃユッコはコーラで……」

文香「あ――」

美優「……あ、また花火あがりましたよ」


P「ん、そうですね。久しぶりにのんびりして花火見て観光……たまにはいいなぁ。明後日は熱海城にも行ってみたいな」

美優「ふふっ、そうですね」

楓「今日からたくさん、羽を伸ばしましょう。せっかく熱海まで来たんですから」

文香「……」

裕子「でもムーンテラスに行けなかったのは残念ですね……これだけ混んでたら仕方がないですけど、きっとあっちのほうが眺めよかったですよねぇ」

藍子「明日、私たちはサンビーチに行く予定ですし、終わって時間が余ったらムーンテラスに寄りましょうか?」

智絵里「う、うん。あ、でも帰りにみんなで行くのも……私たちだけじゃなくて、プロデューサーさんや美優さん、楓さん、文香さんも、みんなで……」

裕子「まっ、それもそうですね」

智絵里「プ、プロデューサーさん、みんなで一緒に、ムーンテラス行ってみましょうね」

P「いいぞ。イベントやってなければ空いてるみたいだしな」


――
――――

――女子寮(裕美の部屋)

裕美「あ、CM入った……」

裕美「うーん、これ絶対Pさん死ぬよね。痴情のもつれ、っていうやつ……」

裕美「犯人になりそうな人……美優さんか、楓さんか、文香さん……藍子ちゃんと智絵里ちゃんは関係なさそう」

裕美「それかPさんが誰かを殺しちゃうか……どうなるんだろ」

裕美「……でも主役はユッコちゃんだし、ユッコちゃんの活躍を楽しみにしてようかな」

裕美「そうだ」ポパピプペ

prrrr!!

裕子『はい! サイキックユッコのテレパシーにお繋ぎされた裕美ちゃん、どうしましたか!』

裕美「あ、ご、ゴメンねユッコちゃん、こんな時間に電話しちゃって」

裕子『いえいえ、今テレビ見てましたから!』

裕美「それ、もしかしてシンデレラサスペンス劇場……?」

裕子『そうです! みんなで寮の居間に集まって撮影のときの話をしながら……ハッ! もしかして裕美ちゃんも!?』

裕美「うん、新しいテレビの初仕事……昨日ユッコちゃんが話してくれたの、覚えてたから」

裕子『さすがです裕美ちゃん……! そうだ、それなら裕美ちゃんも居間で一緒に見ませんか?』

裕美「うーん……ユッコちゃんたちと一緒に見ると、犯人のネタバレとか聞いちゃいそうだし……今回は1人で見ようかなって」

裕子『そうですか! では見終わった後に感想聞かせてくださいね!』

裕美「うん。あ、そろそろCM終わりそうだから電話切るね」

裕子『はーい』

ピッ!

裕美「……うん、誰が死ぬかとか、犯人が誰か予想しながら見ようかな」


――
――――

――8月6日 7時31分 『花月 花の湯』、花月館6階(605室)

ガラッ!

裕子「おあよーございまー……ふわぁ……」

藍子「おはようございます、ユッコちゃん。髪の毛、ボサボサですよ?」

裕子「うーん……昨日は遅くまで起きてたから眠いです」

楓「内風呂か、温泉に入ってサッパリするのもいいですよ。美優さんと文香ちゃんは、今温泉のほうに行ってますけど……」

裕子「それじゃユッコも……ふわぁああああ……温泉入ってきます」

P「智絵里もまだ寝てるのか……今日はみんな自由行動だろ? ユッコ、ついでに智絵里起こして一緒に連れてってやれよ」

裕子「ふわぁぁぁはぁい……あれ、プロデューサーどうしたんですか? スーツ着てネクタイなんて締めちゃって」

P「ん? ああ、ちょっと熱海に仕事先があってな。挨拶するのに顔出しに行こうかと思って」

裕子「旅行中でもお仕事ですか……」

P「まあ挨拶も大事な仕事だよ。9時に会う約束だから俺は別で朝飯食べるけど……みんなはゆっくりしててくれ」

楓「食事処、8時30分からですしね」

藍子「プロデューサーさん、お仕事気をつけて行ってきてくださいね」

P「大丈夫だよ、昼には終わるから……戻ってくるのは午後の2時頃かな。帰ったら昼寝でもしてみんな戻ってくるの待ってるよ」

裕子「はぁーい……智絵里ちゃーん、温泉行きましょ、温泉……」

智絵里「うー……ん……」

……
…………

――11時02分 海市和田浜南町『サンレモ公園』公園前(バス停)

藍子「えっと、私と、ユッコちゃんと智絵里ちゃんの3人で行くのが……」

裕子「サンビーチで夏の期間中にやってるウォーターパークで遊んで、仲見世通りの商店街でご飯です!」

智絵里「朝ご飯と晩ご飯は海鮮料理だから……お昼は他の物、食べたいね」

美優「私たちはサンビーチの先にある、新しい水族館に行きますから……」

楓「熱海アクアパラダイス水族館ですね。毎週日曜日にやってるショーを見た後、ゆずの木っていう温泉宿の温泉に入りにいってきますから」

裕子「あー、今年の春に出来た水族館ですよね」

藍子「文香さん、私たちと一緒に行きませんか?」

文香「いえ……私は、やはり今日は、1人で……思うところが、まだ残っておりますから……」

裕子「そうですか……それじゃ明日は、みんなで熱海城に行きましょうね!」

文香「はい……では私は、ここの公園を少し散策してきますので……失礼します」


藍子「……文香さん、行っちゃいましたね」

美優「そうですね……でも、今は仕方がないのかしら……」

裕子「2週間前にダイバーシティでやったミニライブで失敗したの、まだ気にしてるんでしょうか……」

智絵里「文香さん……」

楓「文香ちゃんなら、きっと大丈夫……私たちが気にしてばかりいても、仕方がないと思うわ」

楓「だから、文香ちゃんがしっかり元気になるまで、私たちは待ってましょう?」

裕子「……はい」

……
…………

――11時27分 熱海市東海岸町『サンビーチ』(バス停)

楓「それじゃあみんな、17時頃にサンレモ公園で待ち合わせしましょうか」

裕子「はいっ! お2人も楽しんできてください!」

美優「水族館、ショーまではまだ時間ありますし……これなら水族館もゆっくり見学できそう」

智絵里「す、水族館のショー、何時からなんですか?」

楓「13時30分開始だから……2時間待ってなきゃダメね。私たち、ユッコちゃんたちよりも先に商店街見に行きますか?」

美優「そうですね」

藍子「あ、私たちのほうは12時ですね。水上アスレチックのウォーターパーク、10時から1時間ごとに入れるみたいですから」

裕子「ユッコたちは30分後ですか……早めに水着に着替えましょうか」

楓「それじゃあみんな、また後でね」

裕子「はーい!」

……
…………

――12時10分 『サンビーチ』(浜辺)

裕子「ぶー……」

藍子「ま、まあ仕方がないですよ」

智絵里「ウォーターパーク、結構混んでたもんね……もうちょっと早く来てれば、12時の回で遊べたと思うけど……」

裕子「ユッコのサイキックテレパシーでは11時半までに着けば大丈夫だと知らせてくれていたんですけど……むむむ……」

藍子「13時の回もありますから、それまでは普通に泳いで遊んでましょう?」

裕子「んー、それもそうですね。よし! それじゃあみんなで泳ぎましょうか」

裕子「藍子ちゃんも上着を脱いで、智絵里ちゃんも、ほらっ」

智絵里「せっかく海に来たんだもんね、お、泳がないと……」

藍子「はいっ、私も今日はたくさん遊んじゃいますっ! あ、丁度いいかも……ユッコちゃんと智絵里ちゃん、ちょっとそこに並んでくれますか?」

裕子「ここですか?」

藍子「はい。えへへっ、2人並んで……はい」

智絵里「あ、カメラ……」

藍子「チーズ♪」

カシャッ!

裕子「ブイッ! そういえば藍子ちゃん、いつものカメラ持ってきたんですね」

藍子「泳ぐときは置いておかなきゃダメですけど、海の思い出も大切ですからね。歩いてるときはストラップで首に掛けておけば無くさないですし」

智絵里「あとで、写真見せてくださいねっ」

藍子「上手く撮れてるといいなぁ……」

裕子「よーし、それじゃ海にいきましょー!!」


……
…………

――12時50分 熱海市東海岸町『熱海アクアパラダイス水族館』(受付)

受付「入場券をお願いします」

美優「はい……お願いします」

受付「ありがとうございます」ガチャッ!

楓「お願いします」

受付「ありがとうございます」ガチャッ!



美優「……思ってた以上に混んでますね」

楓「受付通るの、ちょっと時間掛かっちゃいましたからね」

美優「ショーも混んでるのかしら……」

楓「そういえばこれ、入場券の半券、可愛いですね」

美優「そうですね。温泉に入ってるお魚の絵と……でも、入場の時に押してもらったスタンプで絵がつぶれちゃいましたね」

楓「売店でキーホルダーとか、売ってないかしら?」

美優「売店、中を歩きながら……探しましょうか?」

楓「そうしましょうか。あっ、あそこ、さっそく水槽がありますよ」

美優「海の中を再現した水槽……中を静かに泳いでいるお魚、なんて名前なんでしょうか……?」

楓「海の中だから、シーっと静かに泳いでるんですね」

美優「……」

……
…………

――12時55分 『サンビーチ』(浜辺)

智絵里「だ、大丈夫、藍子ちゃん?」

藍子「はぁ……久しぶりに思いっきり泳いで……つ、疲れちゃいました」

裕子「大丈夫ですか? ウォーターパークに行くの、やめておきますか?」

藍子「ううん、私、休んでますから……ユッコちゃんと智絵里ちゃんは遊びに行っててください。入場料も払ってますし」

智絵里「でも……」

藍子「そこに喫茶店がありますし……私は休んでますから2人で楽しんできてください。後で浜辺から見に行きますから」

裕子「そうですか……分かりました、それじゃあ智絵里ちゃん、行きましょうか」

智絵里「うん……」

裕子「藍子ちゃんの分まで、2人で一杯遊びましょう! で、遊んだ後は商店街に行って藍子ちゃんの好きな食べ物でお昼ご飯にしましょうか」

藍子「いいんですか?」

智絵里「わ、私も大丈夫……藍子ちゃん、食べたい物、考えておいてね」

藍子「それじゃあお言葉に甘えて……お店で休んでる間、色々調べておきますね」

裕子「はい! それじゃ智絵里ちゃん、そろそろ時間ですし行きましょうか」

智絵里「は、はいっ……きゃっ! ゆ、ユッコちゃん引っ張らないで……」

藍子「楽しんできてくださいねー」



藍子「……」


……
…………

――13時25分 『熱海アクアパラダイス水族館』大ホール(入り口)

係員「ゲートを通る際には入場時の半券をお出し願いまーす! 本日は大変混み合っておりますので、押さないでくださーい!」

楓「み、美優さん……あっ、あああああっ……」

美優「ああっ、ひ、人の波に流されて……も、もしかして私が流されて……」

係員「1階が満席になりましたら2階席のみの誘導となりまーす! 1階席に入場されたお客様は、座席のレインコートをご着用して席にお座りくださーい!」

楓「み、美優さーん! 混んでますし、ショーが終わったら入り口で待ち合わせにしましょうー……」

美優「は、はいいいい……」

……
…………

――13時30分 『サンレモ公園』



文香「……」




……
…………

――14時30分 『サンビーチ』(浜辺)

裕子「藍子ちゃーん!」


藍子「はーいっ」


智絵里「ご、ごめんね、遅くなって……14時過ぎに終わってたけど、そろそろ商店街に行く時間になっちゃったから、着替えに行ってて……」

藍子「大丈夫ですよ。私ももう着替えちゃってますから」

裕子「いやー、水上アスレチックっていうのも面白いですね。滑り台も結構な高さでしたし!」

智絵里「写真で見るより、すごく大きかったもんね」

裕子「まー入場料取って1時間コースですからね。たくさん遊べないと詐欺になっちゃいますからね」

藍子「あははは……そろそろ商店街まで行きますか?」

裕子「そうですね、もうお腹も空いちゃいましたし早く行きましょうか」

……
…………

――15時14分 熱海市東海岸町、温泉宿『ゆずの木』(受付)

美優「ショー、イルカのジャンプ凄かったですね」

楓「そうですね。美優さん、水掛かって大変だったんじゃないですか?」

美優「まあ……でも、間近で見れたから凄い迫力でしたよ」

楓「受付で流されなかったら私も1階席に行けそうだったんですけど……はぁ」

美優「ま、まあ……」


早苗「はい無料券」

受付「花の湯にご宿泊頂いてるお客様ですね。ありがとうございます、ごゆっくりお楽しみください」


早苗「ん? こんにちは」

楓「どうも、こんにちは」

早苗「ご丁寧にどうも、ここで泊まってるお客さん?」

美優「いえ……私たち、ここの姉妹間の花の湯に泊まっていて……」

早苗「あっ、じゃあアタシと同じだ。こっちの温泉の無料券貰ったから行かないと勿体無いかなーって思ってね」

楓「私たちもなんですよ。無料券出してるの見て……あ、もしかしたらこの人も花の湯に泊まってるのかなって思って」

早苗「そうそう。仕事の休みで来たんだけどねー。でも1人だから暇でヒマで」

楓「そうなんですか? 私たちは……職場の同僚と来ているんですけれど……」

早苗「いいわねぇ、アタシ1人だから夜も宴会場でご飯食べれないし、部屋で1人寂しーく酒飲みながらご飯食べて寝るだけってねぇ……」

美優「……それなら、今日のお夕食、私たちと一緒に食べませんか?」

楓「出来るんでしょうか?」

美優「宿の人にお話して、部屋に料理を持ってきてもらえるか聞いてみる……とか」

早苗「あら、いいの?」

美優「ええ……他の子たちも、特に大丈夫だと思います。あ、でも一応Pさんには……」

楓「ちょっと連絡してみますか?」


早苗「Pさん?」

美優「私たちの……えっと、職場の方、なんですけど……」


prrrr! prrrr! prrrr! prrrr! prrrr! prrrr!


楓「……繋がりませんね。まだ、お仕事でしょうか」

美優「あら……でも、Pさんならきっと、大丈夫って言ってくれますよね……?」

早苗「いいの? アタシがいきなり飛び入り参加しちゃって」

楓「多分大丈夫です。Pさん、あまりそういうの気にしませんし」

早苗「あら~、悪いわね。それじゃお言葉に甘えちゃおうかしら? 夜中に部屋で飲むビール代くらいならアタシのほうで出すわ」

楓「ふふっ、ありがとうございます」

……
…………

――16時57分 『サンレモ公園』(バス停)

裕子「あ、楓さんと美優さん来ましたよ」


楓「みんなー」

美優「お待たせしました」


藍子「私たちもさっき来たところですよ。文香さんが一番乗りでしたけど」

文香「お疲れ様です……今日は、楽しかったですか?」

美優「ええ、とっても……明日は、みんなで観光しましょう」

智絵里「……あの、そちらの方は」

早苗「こんにちは」

裕子「どなたですか?」

早苗「ん? あなた……」

裕子「はい?」

早苗(このまん丸の目、半開きの口、全体的に気の抜けたような表情……このアホ面、どこかで……)



裕子『和風ならではということでサイキックスプーン曲げではなくサイキック箸曲げをやってみせたほうが明日の宴会芸も……』



早苗(き、昨日売店で見たアホの子……)

裕子「?」

他所に誤投下して迷惑を掛けてしまったのでこのスレはHTML化依頼出して落とします。
別の機会にまた投下します。

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