穂乃果「雨に唄えば」 (9)

ザァァァァァァ……

雨は嫌いだ

練習が出来なくてつまらないから
いつもはスクールアイドルの動画を見たりしてるけど、今はそんな気分でも無い
よく分からないけど心がドンヨリする感じだ

「このごろ雨ばっかりだなぁ...」

三、四日前の土日から雨は降り止まない
もどかしくなって雨やめーなんて叫んでみてもまるで天気は変わらない

天気が悪いと何だか気分も悪くなるようで────

ザァァァァァァ……

雨は嫌いだ

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雨は嫌いだ

いやな事を思い出してしまうから
小学校の遠足で山登りに行った時だ、何か行事があってもいつも晴れていたのにこの日だけは雨が降っていた

雨は止むどころか次第に激しさを増すばかりで
景色は見えないし、辛くて寒いし、楽しく無かった
海未ちゃんだけは何故か目を輝かせていたけど、私にその気持ちは分からなかった

ザァァァァァァ……
部室にこうして一人でいても、雨は止む気配も見せず、窓を静かに叩き続ける

物寂しさに耐えかねた私は、気紛れに音楽室に向かう
なにか心を晴らしてくれるような気がして

そこには、いつもと何一つ変わらない表情をした真姫ちゃんがピアノの前に座っていた


「ねぇ、真姫ちゃん」


「...何の用ですか?穂乃果先輩。」


「真姫ちゃんは雨は好き?」


すると真姫ちゃんは一瞬だけ驚いた表情を見せて、興味無さげに口を開く。


「別に、好きも嫌いもないわ」


「明日が晴れだろうと雨だろうと、私には関係無い」


「そっか...」


予想通りの返答が来て私は首を垂れる


「けど───」



「私は雨が嫌いでは無いのかもしれない」


その言葉に私は驚きを隠せなかった

「晴れは好きで雨は嫌い、そう思うのが普通の感覚なのかもしれないわね」


「けど考えてみて?」


「毎日毎日お日様が登って、雨は降らない。それって不便な事じゃないかしら?」

私は、真姫ちゃんの言っている意味が理解出来なくて、目を丸くしていた


「そうね...例えば雨が降らなかったら農家さん達はどう思うかしら?」

「それは...確かに大変だね...」

すると真姫ちゃんは足を組み替えながら再度口を開く

「そうでしょう?普通の人にとって迷惑でも、必要な人にとっては恵みの雨になるって事よ」


「うーん...」


それでも私は何処か納得がいかない


すると───


「はいコレ、貸してあげるから聞きなさい」

真姫ちゃんがICレコーダーとイヤホンを渡してきた


「これは...?」


「私の好きな曲が入ってるわ、今の先輩にはピッタリの曲よ」

そう言うと真姫ちゃんは音楽室を出ていってしまった

仕方が無いので私は音楽室を出て家に帰る事にした


「何の曲が入ってるんだろう...?」

曲を再生してみるとゆったりとどこか垢抜けた歌声が聞こえてきた


ザァァァァァァ……

雨は止まない

けれど、雨が降っていることに対する不快な気持ちはいつしか消え私はその曲を鼻歌で歌っていた

傘に落ちる雨粒の音、水たまりを踏む音、その全てが自分の知らない雨の表情を見せてくれるようでその足取りは翼が生えたようにとても軽いものだった

そして私はこんな事を考えていた

「雨の日も案外悪くないんだなぁ」と

翌日、空を見上げてみると散々降っていた雨はすっかり上がり太陽が昇っていた


私は何処か寂しさを覚えながらも「やっぱり私は晴れの方が好きだな」なんて呟きながら支度を済ませ学校に向かう


その表情は照りつける太陽の日差しように爽やかそのものだった









後日、穂乃果と真姫がアルバム曲の打ち合わせをすることになるのだがそれはまたあとのお話...






終わり

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