【ガルパン】肛門抄異聞~逸見肛門返し~ (27)

──黒森峰女学園:学生寮、エリカの自室、等身大の鏡の前──



エリカ(……ふぅん……これが私の肛門なのね……)


 くに、くに……くに……


エリカ(……。)

エリカ(師範のと、大差は無いのね)

エリカ(色だけは……少し私の方が、少し、若い? けど他はなにも変わらない……)

エリカ(……。)

エリカ(まぁ、そりゃそうか。鼻の穴だって、耳の穴だって、誰だって違いはないものね。おしりの穴だって、一緒よね)

エリカ(……。)


 ……ぐぃぃっ……


エリカ(……広げても、見えないのね。奥……)

エリカ(……。)

エリカ(……『肛門』、か……)

エリカ(……ホント、なんでこんなものが付いてんのかしらね……)

エリカ「……ふぅ……」

エリカ「……はぁ、18の娘が、鏡の前で素っ裸で──何やってんだか──」

エリカ(……。)

エリカ(……いつだったか──文芸部の友達に進められた、なんとかっていう小説──)

エリカ(物憂げなゴリマッチョが登場して八百屋で檸檬をいじる──そんな感じの、よく分からない内容だったけど……)

エリカ(……鏡の前で肛門をいじってる私……人の事は言えない、か……)





 ──────。

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──────。



 ──自室のベッド・深夜──

エリカ(……ん……)

エリカ(まだ、夜か……)

エリカ「……。」


 ……ちゅう……


エリカ「……あ」

エリカ「やだ……私ったら、また……」


 ……ちゅぽん……


エリカ(……。)

エリカ(……最近、気が付くと、指を吸いながら眠っている……そういうことがよくある……)

エリカ(……いつからだろう……。)

エリカ(……っ、白々しい、そんなの、決まってるじゃない……)

エリカ(……。)


エリカ「……ハァ、こんなんじゃ、人前で眠れないわよ……」


エリカ(……。)

エリカ(……あの夜の事はもう……──忘れなきゃいけないのに──。)



………………………………………………………………………………

………………………………………………………………………………ちゅぷっ……





──黒森峰女学園:図書室・放課後──


エリカ(『体腔動物の進化』……へぇ……こういう本を読むのは初めてだけど……意外と、おもしろいわね……)


 ぺら、ぺら、ぺら、


エリカ(……ふぅん……肛門って、大事な器官なのね……)


 ぺら、ぺら、ぺら……


エリカ「……ふぅ、もう一冊のほうは──」


 『人体解剖図説-大腸・小腸・直腸・肛門周辺』


エリカ「なかなか、興味深いわね」


 ぺら……


エリカ(え──!?)

エリカ(うぁ、グロっ……!? ……って、嘘、これ、本当の人間の……!? うわぁぁぁぁぁぁ)

エリカ(……っ……すっご……)

エリカ(えぇ……? 師範や私の身体の中も……こんな風になってるの……? わぁぁぁぁ……凄いごちゃごちゃ……)

エリカ(わぁぁぁぁぁ……)


 ──……。


 ……パタン

エリカ(──ふぅー…………)

エリカ「凄かった……」

エリカ(……。)

エリカ(あれ、けど、私が調べたかったのって、こういうことだったかしら……。)



しほ「──エリカ」

エリカ「え──」

エリカ(──っ、師範……)

 がたっ!


エリカ「師範、お疲れ様です!」

しほ「あぁ……座っていなさい。勉強をしていたのでしょう。戦車道の本?」

エリカ「え、あっ──」

エリカ(──まずい!!! って、別にまずくはない……のかしら? でも、なんだか──!)


しほ「……。ふぅん……?」

エリカ(……っ)

しほ「貴方、こういった方面にも、関心があったのね」

エリカ「え、と、……はぁ、まぁ……」

しほ「多学、大いに結構です。もちろん──戦車道をおろそかにしてもらっては困るけれど」

エリカ「そ、それは重々」

しほ「それじゃ、邪魔をしたわね。私はもう、探していた本は見つけたから」

エリカ(……あ……)

エリカ「……は、はい。お疲れ様、です……」

しほ「じゃあね」

エリカ「はい……」


 くるっ


 ……ふわぁ……



エリカ「……!」

エリカ(──。)

エリカ(……師範の、におい……。)

しほ「──。」

 すた、すた、すた、すた



エリカ(……。)

エリカ(……師範は以前と何も変わらない。……恐れ入るくらいに、ちっとも……)

エリカ(おかげで、私は時々……あれは夢だったんじゃないかと、思うことだってある……)


 ごそ……

 ……すっ、すっ……


エリカ(八ヶ岳で撮った写真、ちゃんとスマホに残ってる。大洗での写真だって、ちゃんと……だから、夢じゃ、ない……)

エリカ(……でも、あの夜の出来事は──)






 ──……っ、はあぁあ……はぁあぁっ……エリカ……エリカっ……私の、子……私の、娘……っ──






エリカ(──────ッ!!!!!)



 ……ぞくぞくぞくぞくぞくっ……!!!


エリカ(……っっっ!)

エリカ(……ああもうっ……!)

エリカ(忘れなきゃ、いけないんだってばっ……)

 ──黒森峰女学園・戦車道倉庫脇・女子トイレ──



エリカ「──ふぅ。ウォシュレット、ウォシュレット──」


 ぴっ……

 ──ウィィン──

 ──ちょぼっ……ちょぼぼぼっ……──

 ──ヴィッ……──

 ──ヴィィィィィ──


エリカ(……っ……来るっ……!)


 ──ヴィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィッ──


エリカ(……っ……)


エリカ「……ふぅ」


エリカ(……有り難いわよねぇ、ウォシュレット……)

エリカ(中学のころはまだ学校にウォシュレットが無くて──トイレした後に戦車に乗ると、やっぱりどうしても下着が汚れてた。いくら丁寧に拭いたって──特に、後ろの方なんか──)

エリカ(──はしたないとかそういう問題じゃなくて現実的な生理上の問題──普段以上にお尻をこすりつけたり、力んだり、汗ばんだりするんだもの。)

エリカ(……。)

エリカ(やっぱり、師範も──戦車乗る前は、よくウォシュレットするのかしら……。)

エリカ(……。)

エリカ(お尻に、お湯が来るときは……やっぱり師範も、身構えるのかしら……)


 ──ヴィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィッ──


エリカ(……。旦那さんにだって、そんな話はしなさそうよね……)

エリカ(じゃあ、これこそ、世界でだれも──何十億人かいるうちの誰一人──この地球上では誰も──それを知らない?……はは……)

エリカ(……。)

エリカ(……秘密、かぁ……)


 ~♪ ~♪


エリカ「あ……携帯に着信?」

エリカ(……もう、誰よこんな時に──)


 ごそ……


エリカ「……え!」


 <着信:西住 しほ>


エリカ(師範から……!)

エリカ(ええと、──とりあえずウォシュレットを止めて──)


 ぴっ

 ──ヴィィィィ…………キュィーン……──


エリカ(よし……OK──)


 ──プッ


エリカ「……はい、エリカです」

しほ『──もしもし、私です』

エリカ『お疲れ様です、師範』




 ──ちょぼ……ちょぼぼぼ……キュイイイイン──




エリカ(ッ!? ウォシュレットの起動音!? どうしてっ停止ボタンを押したはずなのに……!)


しほ『少し、話しをしても大丈夫かしら?』

エリカ「あっ……、は、はい大丈夫で──」



 ──ヴィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!!──



エリカ「……ォッ……!」


エリカ(……間違えてビデボタンを押したのか……!)


しほ『? エリカ?』

エリカ「あっ……い、いえ、なんでも、大丈夫です、どうぞ」

エリカ(──ええい、もう、気にしない! 師範の話に集中……っ)


しほ『そうですか。では、要件を伝えます。少し、急なのだけど──』


 ──ヴィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ──


エリカ「はい」

しほ『次の日曜、時間は空いている?』

エリカ「え? はい、特に予定はありません」


 ──ヴィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ──

しほ『そう。ならいいわ。日曜日に、戦車道の地区総会があるの。だから──貴方も出席なさい。』

エリカ「……え!?」

しほ『まほと私で出席するはずだったのだけれど、まほの予定が合わなくなってしまって』

エリカ「でも、よろしいのですか? 私などがご一緒させていただいて……」

しほ『貴方は黒森峰の隊長でかつ大会優勝校の隊長よ。私の付き添いになんの不足がありますか』

エリカ(……付き添い……!!)


 ──ヴィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ──


エリカ「で、では……是非! 出席させてください!」

しほ『ええ。待ち合わせ場所や当日のレジュメを、後でメールをします』

エリカ「はいっ……あ、そうだ……あの、服装はどうしましょう 私、そういう場所に出席したことがないんです」

しほ『あなたは学生なのだから、落ち着いた格好であれば、なんだって構わないわ』

エリカ「学生服では……?」

しほ『それは、さすがにあからさまが過ぎるわね。止めておきましょう』

エリカ「そうですか……では、なるべく整った普段着で……」

しほ『ええ、そうしてちょうだい。……ところで、エリカ?』

エリカ「はい……?」

しほ『貴方t、コンプレッサーか何か、つけっぱなしにしていない? 後ろでずっと音がしているけれど──大丈夫?』

エリカ「へ……? コンプレッサー……?」


 ──ヴィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ──


エリカ(あ……)

エリカ「……だ、大丈夫です大丈夫です! ちょっと、オイルポンプを作動させているだけで……!」

しほ『ふぅん? ……まぁ、いいわ。じゃあね。メール、返信をするように』

エリカ「は、はい……!」


 ──ピッ

<通話終了>


エリカ(……。)


 ──ヴィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ──


エリカ(冷た……長時間放水しすぎて……冷水になってるじゃない……)

 ──ぴっ

 ──ヴィィィィ……、……キュィーン……──

 ──…………。


エリカ(……ふぅ。)

エリカ(……。)

エリカ「……っしゃ!」


エリカ(戦車道のシンポジウム、勉強になりそうっ)

エリカ(やっぱりグダグダ考えるより、行動よ!)


エリカ(……。)

エリカ(……ありがとうございます、師範……)


 ──……。






 ──夜・エリカ自室──

まほ『シンポジウムに着ていく服か』

エリカ「はい……清潔感があればそれでいい、と言われたのですが、やっぱりちょっと、不安で……隊長は、どのような服で……?」

まほ『私は、お母様に買ってもらったのをそのまま来ていたからなぁ。でも、本当に、大して気にする必要はないと思う』

エリカ「はぁ」

まほ『そうだな、私の来ていた服の写真を送ろうか。参考になるかな』

エリカ「あ、はい! お願いします」

まほ『じゃ、すぐに送る』

エリカ「ありがとうございます!」


 ──ぷっ


エリカ「……。」


 ──ぴろんっ


エリカ「きた。……わ……これって、けっこう……フォーマルっていうのかしら、すごくしっかりしてるんじゃ……」

エリカ「……。」

エリカ(……っ!)


 ──ぷるるるるる、ぷるるるる


エリママ『──エリカ?』

エリカ「あ、お母さん! 服を買いたいからお小遣い口座にお金振り込んでお願い!」

エリママ『はぁ? そういう事はお小遣いの範囲内で──』

エリカ「そうじゃないのーー!」


 かくかくしかじか

エリママ『へぇ、なるほどねぇ』

エリカ「だから、お願い! しっかりした服を買わなきゃ。師範に恥ずかしい思いをさせたくない……」

エリママ『……。いいわ。お父さんにお願いしてあげる』

エリカ「──! ありがとう!」

エリママ『将来戦車道で稼げるように、先生方にちゃんと愛想よくしなさいね。』

エリカ「やめてよそーいうのじゃ……まぁ、とにかく……ありがとう、お母さん」

エリママ『はーい』


 ──プツっ……


エリカ「……。もう、お母さんにも師範の高潔な心を見習ってほしい……お尻も全然おっきいし……」

エリカ(……。)

エリカ(……でも、まぁ……)

エリカ(……この人のオッパイを吸って、私は大きくしてもらったのね……)

エリカ(……。)

エリカ(言えないわよねぇ……師範のオッパイを吸っただなんて……)

エリカ(……っ)

エリカ(だめだめ、忘れよ忘れよ……)


 ──……。

──日曜日・くまもと県民交流館:最上階──


 ……ざわざわ……


エリカ(……何よこれっ!)

エリカ(すごく立派な会合じゃない!)

エリカ(小さな会議室みたいな場所かと思ってたのに。豪華な結婚式場みたい……人の数も凄いし、年齢層も高いしほとんど皆スーツだし……)

エリカ(よ、よかった……ちゃんとした服を買っておいて……3万円くらいしたけど……お母さん、お父さん、ありがとう……)


しほ「──エリカ、こっちよ」

エリカ「あ、は、はい」

しほ「私達の席は──一あら、最前列……余計な気を使わないでと伝えてあるのに、もう……」

エリカ「はぁ」

エリカ「あの、ところで師範」

しほ「どうしたの」

エリカ「あの、まさか、こんなに大きな会合だとは……」

エリカ(……事前に言ってくれればいいのに……)

しほ「緊張することはないわ。。キチンと講演を聞いて、勉強をして帰りなさい」


エリカ(……うぅ、師範は慣れてるんでしょうけど……)

エリカ(だけど、とにかく──粗相があっちゃいけない。師範に恥をかかせては──)


 ──ドンっ!


エリカ(あ!?)

老紳士「お……?」

エリカ(しまった……!)


エリカ「す、すみません! ちゃんと前を見ていなくて──」

老紳士「ああいやこちらこそ──お? やぁ、しほさん」

エリカ「!?」

しほ「……あ、おはようございます。〇〇先生」

エリカ「!!」


老紳士「やぁやぁ、元気そうで良かった~~~ホニャララホニャララ」

しほ「先生も。今日はお招きいただいて本当~~~ナントカカントカ」


エリカ(……。)

エリカ(……すごい。師範、すごく自然に挨拶をしてる……。)

エリカ(……こういう場所でのふるまい方を、ちゃんと身に着けてるんだ……)

エリカ(……。)

エリカ(……本当に、私、……来てよかったのかしら……)

老紳士「。──あぁ、ところで──」


エリカ(……! 目が合った……)


老紳士「今日は、娘さんはいらっしゃらない?」

しほ「ええ。あの子は予定が合わなくて。それで──紹介がおくれってごめんなさい、この子は……」


エリカ(……!)

エリカ(挨拶くらい、自分からしなきゃッ……!!)


エリカ「あっ──い、逸見、エリカす!」


エリカ(ほぁっ!? 噛んだ!!)


しほ「……門下生の一人で、我が校の今年度の隊長をやらせています」

老紳士「あぁ、道理で見覚えが──始めまして。私は〇〇といいます。」

 すっ……

エリカ(……め、名刺!?)

エリカ「えと、ご、丁寧に、ありがとうございます。……え、と……」


エリカ(あの、どうしたら、いいでしょう師範!、私、名刺なんか──)


老紳士「?」


しほ「……すみません、こういう場は初めてなもので。」

老紳士「あぁ、なるほど」


エリカ(……ぐぅ。師範に、謝らせてしまった……っ)


老紳士「いやいや、ちゃんと自分から挨拶をできたのだから──上出来でしょう? ふはは」

しほ「……嫌ですわ。長生きをされている方は……」

老紳士「ふはは、いやぁ、年よりにとっては、昨日の出来事の様なものです」

しほ「もう……」

エリカ(?)

老紳士「さて、それでは、また後で。──逸見さん、優勝、おめでとう」

エリカ「っ、はい……ありがとうございます……」


 すた、すた、すた……


老紳士<────やぁ、○○さん!────>


エリカ(……もう別の人に挨拶をしてる……。)

しほ「ふぅ……」

エリカ「あっ……あのぅ、すみません、情けない所を……」

しほ「いいのよ。あの人は昔からヒョウキンな人なの。貴方みたいな若い子がいたから、はしゃいでるのよ」

エリカ「はぁ」

しほ「それに、こういう場では初対面の相手にはとりあえず名刺を渡すものなの。素直に受け取っておきなさい」

エリカ「あ、は、はい……!」

しほ「ええと、私達の席は──あった、あそこね。じゃあ、私はもうすこし挨拶をしてくるから、あなたは、座ってゆっくりしていなさい」

エリカ「あ、はい、わかりました──。」

 すたすたすた……


エリカ(はぁ……なんだか目が回りそう……みんな、忙しいのね……)


しほ『──どうも、ご無沙汰をしております──』

エリカ(……師範、かっこいいなぁ。堂々とした立ち振る舞いで……──)

エリカ(──……。)

エリカ(……くそう……情けない様をさらしちゃった……)




 ────────。




老紳士『──それではお集まりの皆さま、定刻となりましたので本日の会合を──』

エリカ(あ……壇上に立っている人、さっきのおじいさんだわ……やっぱり偉い人だったんだ)

エリカ(名刺もらっちゃったけど、……どうしよう……)

エリカ(……まぁいいか、あとは、大人しく座って黙って聞いていればいいのよね)

エリカ(……。)

エリカ(……ふぅ……やっとなんだか、場の雰囲気に慣れてきたかも……)



老紳士『──ところで本日は──今年度の戦車道大会においって栄えある優勝校となった、すなわち我が黒森峰女学園の──』



エリカ(……偉い人達は、こーいう場所でこーいう集まりをやってんのねぇ……大層なことだわ……)



老紳士『──その戦車道チームの隊長、逸見エリカ女史にも起こしをいただいておるしだいで──』



エリカ(……………………。)

エリカ(へ!? いま名前を呼ばれた!?)



 ──さわさわ……へぇ……どこ?……あぁ、前のほうに……さわさわ……


エリカ(ちょま、ちょちょちょちょ……っ、し、師範……っ!?)


しほ「……っ。まったく……あの人ときたら……」

エリカ(!? !?!?)


老紳士『もしもご迷惑でなければ──簡単にご挨拶などをいただいて、この会合に華を添えて頂ければとも思うのですが──いかがでしょう?』


エリカ(『いかがでしょう』じゃないわよ!!! 完全に迷惑よ!!)


老紳士『……どうでしょうかな?』


エリカ(っ……、また思いっきり目が合っちゃった……! 感じの良い人だと思ってたのにぃ……!)



 ……パチパチ……パチパチ…………



エリカ(ちょ──拍手やめて!!! あわ、あわわ、どうしよう……何も考えてないのに──)

しほ「……。やられたわねぇ──」

エリカ(え……?)


 ──スッ


エリカ(……! 師範が、立ち上がって、後ろを振り向いて──)


しほ「お集まりの皆さま──おはようございます。西住流家元、西住しほです。──『どうも、マイク、ありがとうございます──』


エリカ(師範! 私の代わりに……!)


しほ『わたくしの隣におりますのが隊長、逸見エリカでありますが──』


しほ「──エリカ、立ちなさい、お辞儀をするだけでいい。皆さまに」


エリカ(っ……ええいっ!)


 バッ……ペコリ……


 ……パチパチパチパチ……


エリカ(こ、これでいいのかしら……?)


しほ『ただ、申し訳ありません──先生のいましがたの唐突な無茶ぶりのおかげで、彼女は今──大層慌てふためいているようで──』


 ……フフ……クスクス……カワイイ……


エリカ(……っ……うぅ、顔が熱い……)


しほ『皆さまのお目にかなうような華を咲かせるには、いささか蕾が固いようですから──よろしければ、彼女に変わって、私がご挨拶を。──それで構いませんか? 先生』

老紳士『もちろん! それでは壇上へどうぞ。いや西住さん以上にこの場にふさわしい華はないでしょう。どうぞよろしくお願いいたします──』


 ……パチパチパチパチパチ……!


エリカ「あの、し、師範」

しほ「……いいのよ。あの人はよくこういうおふざけをするの。貴方はね、当て馬にされたのよ」

エリカ「あ、当て馬……?」

エリカ(???)

しほ「上着、持っておいてくれる?」

エリカ「え、あ、は、はい……っ!」

しほ「……まったく……スピーチは嫌だといったはずなのに……」



 ……すた、すた、すた……



エリカ(うぅ、師範……ありがとうございますぅ……っ)

──壇上に上がった師範のスピーチは、まったく用意されたみたいに完璧でよどみのないスピーチで──

もう、この人の肛門だなんてものは、頭の片隅にさえ、残ってはいなかった──

──私にはもう師範の毅然とした表情が全く輝いて見えて──



──だけど

──私は気づいてしまった

──多分、この場にいた誰よりも一番早く。最前列で師範を見つめていた私は気づいたと思う──。


エリカ(……え?)


師範の白いブラウスの──その乳房のふくらみに──


 ……じわぁ……


──季節外れの蕾が二つ──


エリカ「────!!!!!」

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