【ゆるゆり】櫻子「もう向日葵なんて、いらない!」 (180)



向日葵「へー、奇遇ですわね、こっちも全く同じ意見ですわ」

櫻子「むー・・・」

あかり「ま、まぁまぁ・・・」

ちなつ「な、仲良くしようよ、ね?」



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櫻子「大体さ、向日葵ってさ・・・」

櫻子「いっつも宿題やれとか勉強しろとかさ」

櫻子「私には、私のペースっつーモンがあんの!」

向日葵「そう言って、今まで自分から宿題やった事がありました?」

櫻子「う・・・」



向日葵「大体、櫻子こそ」

向日葵「宿題手伝ってあげても、いーっつも文句ばかりで」

向日葵「いいかげん、こっちも疲れましたわよ」

櫻子「・・・ふん」



向日葵「それに勉強教えたって、ちっとも覚えないで・・・」

向日葵「テスト勉強の時間を削られるこっちの身にもなって欲しいですわ」

櫻子「なにをー!」

あかり「ま、まぁまぁ櫻子ちゃん!」

ちなつ「向日葵ちゃんも、ちょっとそれ言い過ぎ・・・」



櫻子「・・・今日は、もう帰る」

あかり「ええっ?櫻子ちゃん生徒会は?」

ちなつ「行かないの?」

櫻子「向日葵ともう顔合わせたくないし、帰る」



あかり「ね、ねぇ向日葵ちゃん・・・」

ちなつ「櫻子ちゃん、帰っちゃうよ?」

向日葵「勝手にしたらいいんですわ」

向日葵「私も、櫻子の顔も見たくありませんし」

櫻子「・・・ふーん」



櫻子「よーくわかった。じゃあね」

向日葵「ええ」

あかり「ちょっと、2人とも・・・」

ちなつ「向日葵ちゃん、櫻子ちゃん・・・」


(帰り道)


櫻子「あー、イライラする!」

櫻子「大体さぁ、向日葵ってばあーしろこーしろってさぁ」

櫻子「うるさすぎなんだよいっつも・・・。私を子供扱いしてさー」

櫻子「・・・」


櫻子「・・・あんな向日葵なんて、もう知らない!」

櫻子「なんたって、私には居るんだから・・・」


(櫻子の家)


櫻子「たっだいまー!」

撫子「・・・?ずいぶん早いな」

櫻子「うん、生徒会サボった!」

撫子「サボったって・・・櫻子!」


(櫻子の部屋)


ガチャ・・・バタン

櫻子「・・・ふぅ」

櫻子「さぁて」

櫻子「お待たせ―、もう出て来てもいいよー」


(押し入れ)

ゴソゴソ・・・ガラ


向日葵?「・・・ふぅ、窮屈でしたわ」

櫻子「あっははー、ごめんね?」


櫻子「『本物』の、向日葵?」





(向日葵、帰り道)


向日葵「・・・全く、何なのよ櫻子」

向日葵「ちょっと叱れば、すーぐケンカ腰になって」

向日葵「こっちも、いいかげん愛想が尽きましたわ」

向日葵「・・・」



向日葵「あんな櫻子なんて、知りません」

向日葵「何て言っても、私には居ますもの・・・」


(向日葵の家)


向日葵「ただいま」

楓「お姉ちゃん、お帰りなさい」

向日葵「楓、お姉ちゃんの部屋に入りませんでした?」

楓「ううん、入ってないよ」

向日葵「いい子ですわね、楓は」

楓「えへへ・・・」


(向日葵の部屋)


ガチャ・・・バタン

向日葵「・・・ふぅ」

向日葵「さて」

向日葵「お待たせしました。もう出て来ても大丈夫ですわ」


(押し入れ)

ゴソゴソ・・・ガラ


櫻子?「・・・はぁ、やっと外に出れたー」

向日葵「ごめんなさいね、窮屈な思いをさせてしまって」


向日葵「『本物』の、櫻子」




(櫻子の家)


櫻子「さーって向日葵、今日は何して遊ぶ?」

向日葵?「あら、宿題は大丈夫ですの?」

櫻子「そんなの、後でやればいいじゃん。ゲームしようよゲーム!」

向日葵?「ダメですわ、櫻子。先生に怒られちゃいますわよ?」



櫻子「ぶー。『ニセモノ』の向日葵みたいな事言うなよー」

向日葵?「全く、仕方ありませんわね」

向日葵?「なら、宿題は全部私が代わりにやっておきますわ」

櫻子「え?マジ?やったー!さっすが『本物』の向日葵!」


(向日葵の家)


向日葵「さてと。宿題宿題・・・」

櫻子?「ねー向日葵?」

向日葵「ん?何ですの櫻子?」

櫻子?「私にも、向日葵の宿題手伝わせて?」



向日葵「え?櫻子が私の宿題を?」

櫻子?「うん。だって私、向日葵の役に立ちたいもん!」

櫻子?「私、向日葵のためなら苦手な勉強だって頑張るよ!」

向日葵「さ、櫻子・・・。さすが『本物』の櫻子ですわ」


(櫻子の家)


櫻子「・・・おー、さすが向日葵!宿題全部バッチリできてんじゃーん」

向日葵?「櫻子のためですもの、当然ですわ」

櫻子「じゃあ、一緒にゲームやって遊ぼー!」

向日葵?「ええ、何時まででも付き合いますわよ?」

櫻子「いえーい、そう来なくっちゃ!」



櫻子「・・・はぁ、それにしてもなー」

向日葵?「ん?どうしたんですの」

櫻子「こっちの向日葵は、こんなにいい奴なのに」

櫻子「学校行ったら、『ニセモノ』と顔合わせなきゃなんないんだよなー」

櫻子「嫌になるよ全く、はぁ・・・」

向日葵?「あら、そんな事」



向日葵?「帰ってくれば私が居るじゃありませんの」

向日葵?「学校から帰れば、私がたっぷり可愛がってあげますわよ?」

櫻子「・・・うん。それもそうだね!」



櫻子(はぁ、やっぱこっちの向日葵って最高!)

櫻子(いつもなら、ゲームばかりやってないで勉強しろとかさ・・・)

櫻子(私には、こっちの向日葵さえいればいいもん!)








(向日葵の家)


向日葵「宿題手伝ってくれて、助かりましたわ櫻子」

櫻子?「ほんと?向日葵の役に立てて良かったー」

向日葵「それじゃあ、おやつにしましょうか、クッキー焼いたんですのよ」

櫻子?「え?マジで?やったーい!」



向日葵「・・・ふぅ、それにしても」

櫻子?「ん?どしたの向日葵?」

向日葵「こっちの櫻子は、素直でいい子なんですけれど」

向日葵「明日学校行ったら、ニセモノの櫻子と顔会わせなきゃならないなんて・・・」

向日葵「ちょっと、憂鬱ですわ」

櫻子?「なんだー、そんな事」



櫻子?「向日葵には私がいるじゃん。ちょっとだけ我慢すればいいんだって!」

櫻子?「帰ってきてから、私をいっぱい可愛がってくれればいいんだからさ」

向日葵「・・・ええ、それもそうですわね、ウフフ」



向日葵(こっちの櫻子は、本当に素直で最高ですわ)

向日葵(いつもなら、私の言う事何にも聞かないですぐケンカになって・・・)

向日葵(こっちの櫻子さえ居れば、他には何も要りませんわ)








(次の日、学校)


櫻子「・・・」

向日葵「・・・」

あかり「今日、二人とも全然口きいてないね・・・」

ちなつ「本当、どうしちゃったんだろ」



あかり「朝も、いつも一緒に学校に来てたのにね」

ちなつ「別々だったよね・・・」


キーンコーン・・・



櫻子「あ、時間だ。私帰る」

向日葵「・・・」

あかり「ええっ?今日も帰っちゃうの?」

ちなつ「櫻子ちゃん、生徒会は?」



櫻子「行かない。向日葵がいるから」

向日葵「・・・ええ、櫻子が居なければ私もせいせいしますわ」

櫻子「何だって・・・?」

あかり「ちょ、ちょっと櫻子ちゃんに向日葵ちゃん!」

ちなつ「け、ケンカはダメよ?」



櫻子「・・・フン」スタスタ、ガラ

向日葵「・・・」

あかり「本当に、二人ともどうしちゃったの・・・?」

ちなつ「前まで、仲良かったのに」







(櫻子の家)


櫻子「あームカつく!腹立つー!」

櫻子「何なんだよ向日葵の奴!」

向日葵?「何か、あったんですの?」



櫻子「それがさー、向日葵が私がいなければせいせいするってさー」

向日葵?「え?そんなひどい事を?」

櫻子「こっちのセリフだよ。あんなに憎たらしいヤツだったなんて・・・」

向日葵?「・・・全く、困ったものですわねニセモノには」



櫻子「でも、私にはこっちの向日葵がいるからいいんだ!」

向日葵?「まぁ、ウフフ・・・。嬉しいですわ」ギュ

櫻子「わっぷ?・・・へ、へへ、テレ臭いな・・・」

向日葵?「遠慮しないで、もっと甘えていいんですのよ?」ナデナデ



櫻子「うん!こっちの向日葵、だーい好き!」

向日葵「うふふふ・・・」ナデナデ







(向日葵の家)


向日葵「本当に、櫻子と来たら・・・」

向日葵「どこまで、私をイライラさせる気なんですの?」

櫻子?「どーしたの?向日葵」



向日葵「あ、ああ、いえ・・・。『ニセモノ』の櫻子が、私がいるから生徒会行かないって」

櫻子?「ええっ?な、なんで?」

櫻子?「私、向日葵と一緒に生徒会行きたいのに!」

向日葵「櫻子・・・」



向日葵「・・・やっぱり、こっちの櫻子はいい子ですわ」ナデナデ

櫻子?「ほんと?えへへ・・・」

櫻子?「ねぇ向日葵、私と『ニセモノ』、どっちが好き?」

向日葵「もちろん」



向日葵「こっちの櫻子ですわ」ナデナデ

櫻子?「ほんとに?やったーあ!」







(櫻子の家)


向日葵?「・・・ところで、私にいい考えがあるんですけど」

櫻子「ん?なぁに?」

向日葵?「気分転換に、一緒に外に散歩に行きません?」

櫻子「え?そ、外に?」



向日葵?「ええ。・・・どうかしましたか?」

櫻子「そ、外はちょっと・・・」

櫻子「約束なんだ。外には連れてかないように、って」

向日葵?「え?そうなんですの・・・」



向日葵?「残念ですわ。櫻子と一緒に、外を散歩したかったのに・・・。はぁ・・・」

櫻子「・・・」







(向日葵の家)


櫻子?「ねーねー向日葵、私にいい考えがあるんだけど」

向日葵「何ですの?」

櫻子?「気分転換にさ、一緒に外散歩しに行こうよ!」

向日葵「え?そ、外・・・?」



櫻子?「ん?どーかしたの向日葵?」

向日葵「い、いえ、あの、外は・・・」

向日葵「約束がありますの。外を連れて歩かないようにって」

櫻子?「えー?マジでー?」



櫻子「はぁー、向日葵と一緒に、外、散歩したいのになー・・・」

向日葵「・・・」





(櫻子の家の玄関)


櫻子「じゃあ、靴は私の貸すから・・・」

向日葵?「ええ、お借りしますわ」


撫子「ん?ああ、来てたのひま子」



向日葵?「あ、どうも初めまして。私・・・」

櫻子「あ、ちょ、ちょっと出かけて来るね姉ちゃん!」

ガチャ、バタン


撫子「・・・?」



櫻子「はぁー、びっくりした・・・」

向日葵?「うーん、やっぱり外は最高ですわ」

向日葵?「普段、いつも押し入れに隠れてますから・・・」

櫻子「あ、ご、ごめんねー?」



向日葵?「いえ、仕方ありませんもの」

向日葵?「私と、『ニセモノ』が鉢合わせたら大変ですものね」

櫻子「うん。向日葵が二人いたらみんなビックリするしさ」



向日葵?「ところで、私の『ニセモノ』はどんな感じなんですの?」

櫻子「向日葵のニセモノ?最悪だよ!」

櫻子「何かってばすぐヒステリー起こしてさ。もう、ちょー最悪!」

向日葵?「そうですの・・・」



向日葵?「なら、私が『ニセモノ』ならできない事してあげちゃいますわ」スッ

櫻子「わっ、て、手なんて繋いで歩くの恥かしいなぁ・・・」

向日葵「何も、遠慮しなくていいんですのよ?」

櫻子「うん・・・。けど、ちょっと冷たいね」

向日葵「まぁ、それは仕方ありませんわ」







(向日葵の家の玄関)


向日葵「私の靴で、サイズ合いますかしら・・・」

櫻子?「ちょっと大きいけど、大丈夫だよ」


楓「あれー?櫻子お姉ちゃん、来てたのー?」



櫻子?「お、よう!可愛いなー。これ、向日葵の妹?」

向日葵「あ、か、楓、ちょっと出かけて来ますわね?」

ガチャ、バタン


楓「・・・?」



向日葵「ふぅ、危ない、危ない・・・」

櫻子?「あー、やっぱ外って最高!」

櫻子?「いっつも押し入れの中だからさ、最高にスッキリする!」

向日葵「あ、ええ、いつも御免なさいね」



櫻子?「まぁ、仕方ないよ。我慢我慢」

櫻子?「『ニセモノ』の私とばったり会っちゃったら、大変だものね」

向日葵「ええ、櫻子が二人並んでる所を見られたら大変ですわ」



櫻子?「私の『ニセモノ』って、どういう感じなの?」

向日葵「櫻子のニセモノですか?そりゃあもう」

向日葵「何言っても聞かないし、ワガママは言いたい放題ですし・・・」

櫻子?「へぇー、本当?それは酷いなー」



櫻子?「じゃあ、私が『ニセモノ』の分も向日葵と仲良くしちゃおー!」スッ

向日葵「あ、あら、照れくさいですわ。手なんて・・・」

櫻子?「いいからいいから!」

向日葵「・・・けど、少し冷たいんですのね、手」

櫻子「まぁ、それはしょうがないじゃん」







あかり「ん?あれ?」



櫻子「そんでさー・・・あれ?あかりちゃんじゃん」

向日葵?「あら、櫻子のお友達?初めまして」

あかり「ひ、向日葵ちゃん冗談キツイよ?」



あかり「わぁ、櫻子ちゃん、向日葵ちゃんと仲直りしたの?」

あかり「二人で、手つないで歩いて・・・」

櫻子「あ、う、うん、まぁ、ね・・・」

向日葵?「仲直り?私達はいつも仲良しですわよ」



あかり「良かったー・・・、そうしてる方がケンカしてるよりずっといいよ」

櫻子「いやぁ、私はしたくないんだけど、いっつも向こうがさー」

向日葵?「ケンカ?私と櫻子がケンカなんてありえませんわ」



あかり「とにかく、仲直りしたみたいで良かったよ本当に。
もう、二人ともケンカは・・・ん?」


向日葵「それで・・・。あら、赤座さん」

櫻子?「へぇー・・・。ん?向日葵の知り合い?」



向日葵?「・・・」

櫻子「・・・」


あかり「えっ・・・えっ??」


向日葵「・・・」

櫻子?「・・・」



向日葵?「・・・」

櫻子「・・・これは、どーゆー事だよ向日葵」


あかり「なっ、なに、これぇ!?」


向日葵「うるさいですわね。櫻子こそ」

櫻子?「・・・」



向日葵?「・・・」

櫻子「・・・そうか。そーゆー事だったんだな」


あかり「いっ、一体どうなってるの?」


向日葵「何がですの」

櫻子?「・・・」



向日葵?「・・・」

櫻子「お前も、あの変なオッサンから変な『種』貰ったんだな!」


あかり「さ、櫻子ちゃんと向日葵ちゃんが、二人・・・?」


向日葵「櫻子に答える義理はありませんわ」

櫻子?「・・・」



向日葵?「・・・」

櫻子「どーりで、何か様子が変だと思ったよ」


あかり「ゆ、夢・・・じゃないよね・・・?」


向日葵「それは、櫻子もでしょう?」

櫻子?「・・・」



向日葵?「・・・」

櫻子「・・・ふん!せいぜい、そっちの私と仲良くね」クルリ



あかり「これって、どういう事なの?ねぇ櫻子ちゃん、向日葵ちゃん!」



向日葵「ええ。櫻子こそ」クルリ

櫻子?「・・・」



あかり「ひ、向日葵ちゃん、櫻子ちゃん・・・」


あかり「今、間違いなく二人づつ居たよね?」


あかり「い、一体どういうことなの?」



あかり「・・・」


あかり「・・・櫻子ちゃん、変なおじさんに何か貰ったって言ってたけど」


あかり「こんな事できる人って、もしかしたら・・・」


あかり「・・・お家に急がないと!」ダッ


(櫻子の家)



櫻子「あーーー!もーー最悪!」

櫻子「向日葵の奴・・・。何なんだよ!」

向日葵?「ちょ、ちょっと、落ち着きなさいな櫻子」



櫻子「きっと、今ごろ『ニセモノの私』に都合のいいような事言わせてさ」

櫻子「私のこと、ボロカスに言ってるんだよ?あー、マジムカつく!」

櫻子「ニセ向日葵のバカ!アホ!暴力女!向日葵なんて、大っ嫌いだ!」

向日葵?「櫻子・・・」



向日葵?「・・・櫻子。とっても傷ついたんですのね。かわいそうに」ギュ

櫻子「あ、ひ、向日葵・・・」

向日葵?「どうです、少しは落ち着きました?」

櫻子「・・・うん」



櫻子「・・・はぁ、こっちの向日葵が本当に本物だったらいいのにな」

向日葵?「・・・なら、いい考えがありますわ」

櫻子「ん?いい考え?」

向日葵?「ええ」



向日葵?「殺しちゃえばいいんですのよ。『ニセモノ』を」

櫻子「え・・・」







(向日葵の家)



向日葵「もう、何なんですの櫻子!」

向日葵「櫻子も、まさか私と同じ・・・」

櫻子?「ひ、向日葵?ちょっと落ち着こうよ、ねぇ?」



向日葵「今ごろ、『ニセモノの私』に甘えて・・・」

向日葵「さんざん、私の悪口言ってるに決まってますわ!」

向日葵「本当に、バカで、どうしようもないニセモノの櫻子は・・・!」

櫻子?「・・・向日葵」



櫻子?「裏切られた気分なんだね・・・。わかるよ、私」

向日葵「・・・櫻子」

櫻子?「向日葵は何も悪くない。私は、何があっても向日葵の味方だからね?」

向日葵「え、ええ・・・」



向日葵「・・・ふぅ、こっちの櫻子が本当の本物だったら、どんなにいいかしら」

櫻子?「・・・じゃあさ、いい考えがあるんだけど」

向日葵「え?いい考え?」

櫻子?「うん」



櫻子?「殺しちゃえばいいんだよ、『ニセモノ』の方を」

向日葵「・・・え」







(あかりの家)


あかり「えーと、確か机の中に」ゴソゴソ

あかり「あ、あった、名刺・・・」

あかり「通じるかなぁ・・・。とりあえず、かけて見よう」ピッピッ


プルル・・・プルル・・・


あかり「・・・」

あかり「・・・。出ないみたい」



あかり「じょうがないか。また、後でかけ直し・・・」


ピッ


「はい」

あかり「あ、も、もしもし?お久しぶりです。私、赤座あかりです。覚えてますか?」

「ええ、覚えてますよ」



あかり「ふぅ良かった、通じて・・・。あの、あかりのお友達が、変な事に巻き込まれてて」

あかり「もしかして、何か心当たりがあるかなって思って電話したんですけれど・・・」

「ああ、お二人とも私のプレゼントした『種』を」

「有意義に使って頂いてるようですね」

あかり「・・・」



あかり「・・・やっぱり、あなただったんですね」





あかり「喪黒、さん」








あかり「あの、会ってお話って、できませんか・・・?」

「うん?もうこんな時間ですよ?」

「中学生が外を歩いていたら、補導されてしまうのではありませんか?」

あかり「お願いです、喪黒さん・・・」


「・・・まぁ、いいでしょ。では、あなたの通う学校の校庭でお待ちしてますよ」





(櫻子の家)


櫻子「・・・」プルル・・・プルル・・・

ピッ

「はい」



櫻子「あ、向日葵?今ちょっといい?」

「あら、珍しいですわね。櫻子から電話なんて」

櫻子「ちょっとさ、話したい事があってさ・・・」

「偶然ですわね。私も丁度櫻子に話したい事がありますの」



櫻子「ならさ、これから近所の公園に来れない?私も行くからさ」

「ええ、わかりましたわ」

ピッ








(七森地位学校・校庭)


あかり「はぁ、はぁ・・・」


あかり「喪黒・・・さん?」


あかり「誰も、いない・・・」



喪黒「私を、お探しですかな?」ヌゥ

あかり「きゃあ!も、喪黒さん・・・」

喪黒「私に会いたいとは、あなた、いい度胸してますね。
前にずい分な目に合ったでしょう?」

あかり「え、いえ・・・。あれは、あかりが悪かったから・・・。いえそれより」



あかり「喪黒さん。櫻子ちゃんと向日葵ちゃんに、何をしたんですか・・・?」

喪黒「ああ、あれですか。あれはですね・・・」

―――
――



~~~~~回想~~~~~



櫻子「もう、何でいっつもそうガミガミ言うんだよ!向日葵のバーカ!」

向日葵「あなたがちっとも進歩しないからでしょう?」

櫻子「ふん!向日葵なんて、もう知らない!」

向日葵「ええ、私も櫻子なんて知りませんわ」



櫻子「ったく、向日葵のヤツぅ~!」

櫻子「いっつもいっつも、ガミガミ怒鳴り散らして!」

櫻子「・・・まったく」

櫻子「そういうとこ、ちょこっとだけ直せばいいのにさ・・・」


喪黒「・・・あなた、心にスキマを抱えてますね?」



櫻子「う、うわ!何だ、びっくりした、おっさん誰?」

喪黒「私、セールスマンをやっておりまして。こういう者です」

櫻子「・・・心のスキマをお埋めします?喪黒・・・福造?へんな名前ー」

喪黒「ホッホッホ、ええ、たまに言われます」







向日葵「・・・それで、私に何の用なんですの?」

喪黒「ええ、最近あなたお友達とケンカばかりじゃありませんか?」

向日葵「え、ええ・・・」

喪黒「その子の嫌な所が直ればいいのに、なんて思ってますね?」

向日葵「・・・」



喪黒「なので、私はあなたに」

喪黒「一切、嫌な所のない最高のパートナーを紹介して差し上げようと思っているんです」

向日葵「最高のパートナー・・・?」







喪黒「ええ、この種です。これを、理想の相手を思い浮かべながらぎゅーっと握って・・・」

喪黒「鉢植えにでも植えてください。すぐに大きな実が成りますから、その中から・・・」

櫻子「そんなんで、本当に最高のパートナーができんの?」



喪黒「ええ、あなたが今のお友達に抱えている不満点が、一切存在しない・・・」

喪黒「正しく、ベストパートナーが生まれてきますよ」

櫻子「マジで?宿題代わりにやってくれたり?」

喪黒「ホッホッホ、もちろん」



櫻子「じゃあ、私試してみる!ありがとねー!」

喪黒「・・・ただし」

櫻子「ん?」







喪黒「いくらせがまれたからと言っても、むやみに外に連れてってはいけませんよ?」

向日葵「外に・・・?」

喪黒「ええ。部屋の中など狭い範囲に留まっている内なら問題はありませんが・・・」

喪黒「外の世界を知る事によって、だんだんと『欲』が生まれてくるかも知れません」



向日葵「欲・・・?」

喪黒「ええ。もっと、外の世界を自由に歩きたいとか・・・」

喪黒「本物になり代わりたいとか」







喪黒「なので、生まれてきたパートナーをむやみに外に連れ出してはいけませんよ?」

喪黒「約束できますか?」

櫻子「・・・うん、わかった」







喪黒「もし約束を破ったら、私はどうなっても知りませんからね?」

向日葵「・・・ええ。わかりましたわ」

―――
――


(学校の校庭)



あかり「そうだったんですか。そんな事が・・・」

喪黒「ええ。あの二人はお互いに不満を抱いていたようですから」

喪黒「私が、その不満を解消するお手伝いをさせて頂きました」



あかり「・・・あ、けれど」

喪黒「ん?どうしました?」

あかり「向日葵ちゃんも、櫻子ちゃんも、お互いがお互いの『パートナー』を
連れて歩いてた・・・」

喪黒「おやおや、私との約束を破るとは。感心しませんなぁ」



あかり「もし、約束を破ったらどうなるんですか・・・?」

喪黒「・・・そうですなぁ」



喪黒「今ごろ、とんでもない事を『パートナー』にそそのかされているか、あるいは」

喪黒「もっと、面白い事が起こっているかも知れませんね、ホッホッホ」

あかり「え・・・?」







(公園)


向日葵?「・・・」

櫻子「・・・。よう」



向日葵「・・・。ええ」

櫻子?「・・・」



向日葵(包丁は、カバンの中に持ってきてますわよね?)

櫻子「・・・。うん」



櫻子?(ほら、はやく包丁カバンから出してさ!)

向日葵「・・・」



向日葵?(どうしたんですの?ほら、早くグサーってやっちゃいなさいな。
私の『ニセモノ』を)

櫻子「・・・」


向日葵「・・・」

櫻子?(もう、何してんのさ?私の『ニセモノ』をやっつけたら、
私が本物になって学校なんかもずっと一緒に居られるんだよ?)



櫻子「・・・あのさ」

向日葵?「ん?どうしました?」


向日葵「やっぱり・・・」

櫻子?「ん?どうしたの?」



櫻子「無理だよ。いくら憎くても、向日葵を殺しちゃうなんてさ・・・」

向日葵?「な、何でですの?私より、あんなニセモノの方がいいんですの?」


向日葵「私にはできませんわ。櫻子を殺すなんて・・・」

櫻子?「な、なんでさー?私の方が好きって言ってたじゃんか!」



櫻子「だから、ごめん。私には無理」

向日葵?「櫻子・・・」


向日葵「ごめんなさいね。いくら憎くたって、殺すなんて出来ませんわ」

櫻子?「向日葵・・・」



向日葵?「・・・『ニセモノ』は、居なくなっちゃった方がいいんじゃありませんでしたの?」

櫻子「・・・」


向日葵「・・・」

櫻子?「『ニセモノ』は、いらないんだよね?」





向日葵?「・・・」

櫻子?「・・・」


向日葵?「・・・じゃあ」

櫻子?「私達が・・・」





向日葵?「あなた達を始末して、『本物』になって差し上げますわ!」ガシッ

櫻子「ぐっ!?ひ、ひまっ・・・!?く、首をっ・・・!」


櫻子?「『ニセモノ』は、要らないんだよねー?」ググ・・・

向日葵「ぐぅっ!?さくら・・・っ!く、苦しっ・・・!」








(学校の校庭)



あかり「喪黒さん!」

喪黒「ん?何でしょうか」

あかり「お願いです、二人の『パートナー』、消してくれませんか?」

喪黒「・・・やれやれ、そう来るだろうと思ってましたけど」



喪黒「ダメです。あなたは、無関係の人間です」

喪黒「他人の事に首を突っ込むと、ロクな事になりませんよ?」

あかり「あかりにできる範囲だったら、どんな事でもしますから・・・」

あかり「お金なら・・・。あんまりないですけど・・・」


喪黒「・・・なら」



喪黒「代償は、あなたの『命』です」

あかり「え・・・?」









(公園)



向日葵?「ニセモノは、最悪なんですのよね?」ググ・・・

櫻子「ぐぅ、ぅっ!」


櫻子?「だから、居なくなった方がいいんだよねー?」ググ・・・

向日葵「ぐっ・・・!すっ、すごい、力・・・!」



向日葵?「安心して下さいな。出来そこないのあなた達が居なくなったら・・・」グググ・・・

櫻子「ぐ、ぐっ・・・く、苦し・・・!」


櫻子?「ちゃーんと、私たちが完璧な人生、歩んであげるからね?
ケンカとかしないでさー」グググ・・・

向日葵「いっ、い、息が・・・」



櫻子(ひ、向日葵・・・!)グ・・・

向日葵(さ、櫻子・・・!)ググ・・・




ギュ・・・




櫻子(・・・)

向日葵(・・・)



櫻子(ああ、やっぱり・・・)

向日葵(『本物』の、手って・・・)




櫻子・向日葵((暖かい・・・))









(学校の校庭)



あかり「代償は、あかりの命・・・?」

喪黒「ええ。あなたにはできますか?いくら、親しい友達だからと言って」

喪黒「赤の他人に自分の命を捧げる、なんて事を。どうです?」

あかり「・・・」

喪黒「ほらね、出来ないでしょう?なら、余計な口出しはしない事です」



あかり「・・・」

あかり「・・・わかりました」

喪黒「ん?」



あかり「櫻子ちゃんと向日葵ちゃんが、助かるなら・・・」

あかり「・・・あかりの命、捧げます」

喪黒「・・・」



喪黒「・・・言っておきますが」

喪黒「あまり、私を甘く見ないほうがいいですよ」

あかり「え・・・」



喪黒「命を捧げる覚悟を見せれば、何にもしなくても助けてくれるだろうとか」

喪黒「本当に、命までは取らないだろうとか」

喪黒「私は、そういう甘ったるい考えをする人間が、大ッキライなんです」

あかり「・・・」



喪黒「私は、やるといったらやる男です」

喪黒「二人を助けるというのなら、嘘偽りなく、代償として」

喪黒「あなたは、命を失うことになるんですからね?」

あかり「・・・」



喪黒「これは、脅しでも何でもありません」

喪黒「本当に、その覚悟がおありでないなら」

喪黒「命を捧げる、なんて軽々しく口にするんじゃありませんよ?」

喪黒「わかりましたね?」

あかり「・・・」










(公園)



向日葵?「うふふ・・・。そろそろ、顔に血の気がなくなって来ましたわね?」グググ・・・

櫻子「う、うっ・・・」


櫻子?「なかなかしぶといなー。けど、もうちょっとかなー?」グググ・・・

向日葵「ぐ、ぐぐ・・・」



櫻子(・・・向日葵。私が、バカだったよ・・・)

櫻子(向日葵が、いっつもガミガミ言ってたのは・・・)

櫻子(私のためを、想って言っててくれたんだよね・・・?)

櫻子(それを、私は・・・)



向日葵(・・・櫻子。私がバカでしたわ)

向日葵(いつも、私の理想を押し付けてばっかりで・・・)

向日葵(私は、実物の櫻子の事をちゃんと見てなかったんですのね・・・)

向日葵(だから、櫻子は・・・)



櫻子(・・・今さら気付いても、遅すぎるけど)

向日葵(・・・でも)


櫻子(向日葵と、こうやって手をつないだままなら・・・)

向日葵(このまま、逝けるなら・・・)








櫻子(本望だよ・・・)

向日葵(悔いは、ありませんわ・・・)











櫻子(あ、だ、ダメだ・・・。い、意識が・・・)スゥ・・・

向日葵(も、もうダメみたいですわ。さ、櫻子・・・)スゥ・・・











(学校の校庭)



あかり「・・・わかりました」

あかり「捧げます。あかりの命」

喪黒「・・・」



喪黒「・・・よろしい」



喪黒「いい根性です!」指ビシ

あかり「ひっ・・・!」



喪黒「友達のために、命を捨てると言い切るとは・・・。見上げたものです」

喪黒「ただし、あなたは考えが甘すぎます」

喪黒「私が情に流されるだろう、なんて考えてるのだとしたら」

喪黒「大間違いですよ・・・」

あかり「う・・・」



喪黒「あなたは、私を舐めていますね?」

喪黒「その代償は、きっちりと支払って頂きます」

あかり「う、う・・・」


喪黒「行きますよ・・・」







喪黒「ドーーーーーーーーーーーーン!!!!!」










あかり「きゃぁぁあぁぁあぁぁーーーーーーっ!」













(公園)



向日葵?「グッ・・・!?」

櫻子?「ガガ・・・」


櫻子(!?)

向日葵(!!?)



向日葵?「イヤ・・・何で?か、体が!」ボロ・・・

櫻子?「く、崩れる・・・?」ボロ・・・


櫻子「ブハッ、ハァ、ハァ・・・」

向日葵「フゥ、フゥ・・・」



向日葵?「イッ、イヤァァーーーーッ!」ボロボロ・・・

櫻子「グガーーーーー!」ボロボロ・・・


櫻子「ひ、向日葵・・・だ、大丈夫・・・?」

向日葵「ええ、さ、櫻子こそ、ケガは・・・?」



櫻子「・・・」

櫻子「チリになって、消えちゃった・・・」

櫻子「何でだろ・・・?」

向日葵「いえ・・・。わかりませんわ・・・」



櫻子「・・・」

櫻子「・・・ごめん、向日葵。私が悪かったよ」

櫻子「向日葵は、いっつも私のこと考えて言ってたんだね?」

向日葵「いえ、私こそ・・・」



向日葵「私の理想ばかり押し付けてしまって・・・」

向日葵「ちゃんと、実物の櫻子のことを見てなかったんですわ・・・」

櫻子「向日葵・・・」



櫻子「・・・」

向日葵「・・・」

櫻子「・・・帰ろっか」

向日葵「ええ、そうですわね」



櫻子「もう、すっかり遅くなっちゃったね」

向日葵「ええ、きっとみんな心配してますわ」

櫻子「・・・ところでさ、向日葵」

向日葵「何ですの」



櫻子「い、いつまで手つないでるんだよ・・・」

向日葵「う、うるさいですわね。櫻子こそ・・・」

櫻子「ひ、向日葵が離さないから仕方なくつないでやってるんだからな?」

向日葵「そ、それはこっちのセリフですわよ。まったく、櫻子と来たら・・・」

―――
――











(学校の校庭)





あかり「う・・・?」







あかり「・・・」





あかり「生き・・・てる・・・」







あかり「・・・」





あかり「喪黒、さん・・・」







あかり「・・・」


あかり「・・・あ、いけない」

あかり「もうこんな時間、早く帰らなきゃ!」



あかり(こんな時間になっちゃった)タッタッタ・・・



あかり、お姉ちゃん、心配してるかなぁ・・・)タッタッタ・・・




(あかりの家)


ガチャ

あかり「ただいまー」

あかね「あかり?遅かったじゃない、お姉ちゃん心配し・・・」


あかね「・・・え?」



あかね「キャァァァーーーーーーーーーーーッ!」ガシャーーン


あかね「あ、あかり・・・!」




あかり「えっ、えっ・・・??」






あかね「か、髪が・・・。お団子の部分が・・・」





あかね「バッサリ、無くなっちゃってるぅーーーーー!」


あかり「え?あ、ほ、本当だ」







喪黒「・・・古来より、髪は女の命、なーんて申しましてなぁ」

喪黒「その命を人助け二人ぶん、頭のお団子ヘア二つ」

喪黒「確かに、支払って頂きました」



喪黒「やれやれ、いくら私でも」

喪黒「何もしてない少女の命を無闇に奪うわけには行かないじゃないですか」



喪黒「・・・それにしても、私を甘く見ない方がいいとかさんざん言っておきながら」

喪黒「結局、この程度で許してしまうなんて」

喪黒「私も、ずい分と丸くなったものです・・・」



喪黒「・・・これは、そろそろ」

喪黒「私も、年をとったという事なんでしょうかねぇ~、」







       「オーッホッホッホッホ・・・」






おわり


オマケ


あかり「お姉ちゃん、心配しないで。えいっ!」ポン

あかね「ふぅ、これで元通りね。一安心よ」




本当におわり


前作

【ゆるゆり×笑ゥセールスマン】あかり「理想のごらく部・・・?」
【ゆるゆり×笑ゥセールスマン】あかり「理想のごらく部・・・?」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1453364337/)

の続編の積りでした。

アニメで笑うせぇるすまんをやってるので、記念という事で・・・
読んでくれた方、コメントくれた方ありがとうございました。
依頼出してきます

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