梨子「曜ちゃん、怒らないで聞いてね」 (148)
甘くてとろける百合バス、魔王♀「食べちゃうぞー!」書いた人
ようりこですが、恐らく勢いよく胸くそなので怒らないで読んでね
曜ちゃん、怒らないで聞いてね。
梨子ちゃんが言った。
プールに清掃業者が入る日で、今日は部活が無かった。
3人でこれから帰宅する所だった。
なあに?
梨子ちゃんがそんなこと言うのが珍しくて、私は笑いながら聞き返した。
梨子ちゃんの後ろに立っていた千歌ちゃんが、遠慮がちに口を開く。
あのね、私、梨子ちゃんとお付き合いすることにしたの。
え?
私は、意味が理解できなかった。
あのね、曜ちゃん、私と千歌ちゃん付き合うことになったの。女の子同士で気持ち悪いって思うかもしれないけど、曜ちゃんにだけは知っておいて欲しくて。
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※鍵カッコないとこの話し読み難いのでつけます
「え、あ、あの」
「びっくりするよね。普通はそうよ。ねえ、千歌ちゃん、まだ早かったんじゃ」
梨子ちゃんは、そう言って、いつもと違う距離感で千歌ちゃんの腕を握っていた。
私は、そんな触り方を今まで見た事がなかった。
「そ、そうだよ! お、驚いたよーそろ……」
私は続けた。
「全然、気づかなかった! もお、言ってくれれば、お昼とか、練習の時とか、もっと遠慮したのに!」
「ごめんなさい。曜ちゃん、知ったら傷つけるんじゃないかって」
私は、梨子ちゃんの手を握る。
「そんなことないよ! この曜ちゃん、愛のキューピッドになりますぞ!」
と、私はハートマークを指作って、それを打ち抜く仕草をした。
「も、もお~曜ちゃんってば、からかわないでよ!」
千歌ちゃんが照れながら、私をぽかぽかと叩く。
「あいたた、でも、そっか……二人とも、一緒にいること多かったもんね。それに、千歌ちゃんのこと好きになっちゃう気持ちわかるよ。だって、優しいもん」
「ち、違うの曜ちゃん。私が、梨子ちゃんに惚れてもうてですね……」
千歌ちゃんが顔をさらに赤らめる。
そんな表情も、私は初めて見た。
「あ、あれ、そ、そっか。やるな、梨子ちゃん!」
「やだ、もう。別に自然と言うかなりゆきというか」
梨子ちゃんがそう言うと、千歌ちゃんが頬を膨らました。
「え~、それだと、仕方ないように聞こえるんですけども……」
「あら、そんな風に聞こえたならごめんなさい」
梨子ちゃんが笑って、千歌ちゃんの頭を撫でていた。
なんだか、二人が遠い存在のように感じられた。
「でも、私付き合ったこととか無くて、千歌ちゃん、これから色々教えてね」
「え、千歌もないし……よ、曜ちゃん~」
「待って待って、私だってないよ。だいたい、そういうのは、二人でなんとかするものでしょ」
梨子ちゃんと千歌ちゃんが顔を見合わせて、それもそっか、と呟いた。
二人の馴れ初めも私は知っていて、その後惚気話もいくつか聞かせてもらった。
その日はおめでとうヨーソローと言うことで、3人でケーキを買って千歌ちゃんの家でお祝いした。
ちょっとだけ気になったのは、二人が私に気を遣って仲間外れにしないような空気を出していたこと。
それと、私自身が、心からお祝いできなかったこと。
パーティーを終え、千歌ちゃんが間違ってお酒を飲んで酔いつぶれしまったのでそのまま寝かせておいた。
家を出て、バス停まで梨子ちゃんと二人で歩いた。
「やっぱり、曜ちゃんに言って良かった」
梨子ちゃんが言った。
「ええー、もう、それはさっきも聞いたよ」
「だって、怖かったもの。千歌ちゃんの気持ち、私ちゃんと受け止めきれてなかったから。それで、付き合うっていざなったけど、この危うい関係を誰がいいよって認めてくれるだろうって思ってた。そしたら、一番信頼できる曜ちゃんがそれを言ってくれたの。だから、本当に良かった」
梨子ちゃんは、暗がりでも笑顔なのが分かった。
私は、海の音を気にしている風を装って、海岸の方を向いた。
「そう、なんだ」
「ねえ、曜ちゃん。千歌ちゃん、取られたって思ってない?」
梨子ちゃんが言った。
「なんで……そんなこと聞くの?」
「私が、曜ちゃんだったら、そう思うよ」
「思っても、ないよ」
私は、灯台を見つめた。
暗い夜の海辺を横ぎっていく光を眺めた。
「思ってないなら、いいんだけど、ごめんね」
そんなこと思ってない。
「そりゃ、寂しい気持ちはあるにはあるけどさ、嬉しそうな二人の顔見てたら……そんなの吹き飛んじゃったよ!」
私は梨子ちゃんの正面に回った。
「ごめんね、私、ちょっと混乱してたのかも。嫌な心配させてごめんね、梨子ちゃん」
梨子ちゃんを抱きしめる。
「よ、曜ちゃん、苦しい」
「あ、千歌ちゃんに怒られちゃうね、へへえ」
「そんなことないよ。千歌ちゃんは、こんなことで怒ったりしない」
「そーかな、案外、嫉妬深いかもよ」
私は、そう言い返す。
言いながら、自分の事だと心の中で笑ってしまった。
「それにしても、教室でも怒らないでねって言ってたし、梨子ちゃんは普段私の事、どんな風に見えてるの~?」
冗談っぽく言ってみたつもりだったのに、体を離した梨子ちゃんは真面目な顔をしていた。
「友だちのこと、凄く大切に思ってくれる子ね、曜ちゃんは。私の事も、千歌ちゃんのことも、いつも楽しませてくれる。もっと前に出てもいいのに、少し後ろに立って、背中を押してくれたりするの」
「えー、すごい高評価いただいてしまいましたな。梨子ちゃん、私あげれるものないよ」
そう言われたのは素直に嬉しかった。
「だから、嫌なら嫌って言えない時もあると思う」
梨子ちゃんが私の右手を握りしめた。
恐くて、私は後ずさった。
「そういう時もあるかもね。でも、それってきっとみんな同じだよ。あ、梨子ちゃん、バス来ちゃうから行こう」
私は、そのまま梨子ちゃんの手を引いた。
「よ、曜ちゃん」
「梨子ちゃんは気にしーだな~、千歌ちゃんを見習わないと」
「私、これでも真面目に」
「うん、知ってる。梨子ちゃんて、いつも真面目。でも、なんでもかんでも真面目に考えてたら自分のやりたいことできなくなっちゃうよー」
「それは……そうだけど」
「それとも、何か迷ってることがあるの?」
梨子ちゃんが、どうしてこんなに気にするのか分からない。
それで、自分が傷ついてもいいんだろうか。
「あ、ううん……えっと」
「どっち」
「その、千歌ちゃんはちょっと、ミーハーな所があるから」
梨子ちゃんは小さくそう言って、
「曜ちゃん、良かったら、これから、アドバイス……お願いね」
「うん、任せて」
私は頷いた。
次の日は、千歌ちゃんが頭が痛いと言って机に突っ伏していた。
「千歌ちゃん、保健室行かなくても大丈夫?」
私は完全に二日酔いの千歌ちゃんに声をかける。
「ウー……で、でもなんて説明すればいいのお」
「そうねえ」
梨子ちゃんが、
「普通に風邪でいいと思うけど」
「そうだね、千歌ちゃん、連れて行くから……あ、ナース梨子ちゃんが連れて行ってくれるって」
「え、曜ちゃん?」
「ほら、千歌ちゃんがしんどそうだと私もしんどくなるから、行った行った」
私は千歌ちゃんを立ち上がらせて、梨子ちゃんの背中に貼り付けた。
「任せた。梨子ちゃん」
「え、ええ」
梨子ちゃんは、ちょっと気圧され気味に答え、教室を出て行った。
今のは、強引? それとも、わざとらしい? どっちもかな。
二人のいなくなった教室で、他の子らの話題に入っていく。
このクラスは居心地が良くて、あまりグループの壁みたいなものがない。
私も、そんなに気にする方じゃなかった。
「曜ちゃん、千歌ちゃん大丈夫?」
「うん、寝ておけば大丈夫」
「千歌ちゃん、いつも元気なのに珍しいね」
「あー、ベッドから落ちて寝てたんだよ」
「千歌ちゃんらしいね」
笑いが起こる。
ごめんね、千歌ちゃん。さすがに、二日酔いですとは言えないや。
「でも、どうしたの? 喧嘩?」
「え? なんで」
「なんでって、3人いつも一緒でしょ」
そっか。気を遣うとそういう風に取られてしまうんだ。
「そんなことないよ。あれは、梨子ちゃんが保健室に用事があるから、二人で行ってもらったの」
すらすらとそんな嘘が出た。
「なんだ。でも、3人てやっぱり仲いいよね。喧嘩とかになったりしない?」
「うーん、ちょっと前に、私が梨子ちゃんに焼きもち妬いちゃったことはあったけど」
「あ、やっぱりあったんだ!」
その子の食いつきが凄く良くて、他の子達も興味をそそられてしまったのか、
「どんなの? どんなの?」
「や、そんな大したことじゃないよ」
「えー、聞きたい!」
女の子って、こういう話好きなんだよね。
「聞いても、面白くないって」
「そんなことないって、あ、でも曜ちゃん嫌なら、今のなしで……」
迫ってから引き下がられてしまうと、本当に何かあったみたいに思われてしまう気がした。
「二人にはみんなに言ったってナイショだよ」
「うんうん!」
「了解しました!」
一人が私の真似をして、敬礼した。
「私、曜ちゃん推しだから、そういうの知りたかったの」
「実は、私も」
私はうっかり口を滑らせたことを後悔した。
「おだてても、みんなの好きな昼ドラみたいなのはありませぬぞ」
私は極力軽く、いや、もう本当にあっさりと話した。
私の心が狭くて、みんなに迷惑をかけてしまった話を。
「そっか、そうなんだ」
「曜ちゃん、そこの椅子、座って」
「え、あの」
私は無理やり座らされてしまった。
「よしよし」
頭を撫でられた。
「よく耐えたねえ」
ただでさえ癖の強い髪を、わしわしと揉まれる。
「な、なに、もお、くすぐったいよ」
頬とか首とか肩とか、良くわからない内に揉みくちゃにされた。
「わ……? ちょ……? ひえ……? まッ……」
その一連の謎の儀式から解放された頃に、梨子ちゃんが教室に戻って来た。
「曜ちゃん……何してるの?」
「ふえ……た、助けて」
「人聞きが悪いぞ、渡辺氏」
「そうだそうだ」
口々に、そう言われた。
私は梨子ちゃんの方へよろよろと近寄る。
梨子ちゃんは、ぐしゃぐしゃの頭を梳いてくれた。
「千歌ちゃん、ちょっと吐き気もあるみたい」
「え、そうなの? 大丈夫かな……」
そっか、間違って飲んだとは言え、大量に飲んでたからな。
どうしよう、私、やっぱり行った方がいいかな。
千歌ちゃん、寂しい想いしてないかな。
どうして、曜ちゃん付き添ってくれないのとか、思ってないかな。
ちょっと笑わせてあげるくらいが良かったかな。
「曜ちゃん?」
「え」
「千歌ちゃん、心配?」
「あ、いや、千歌ちゃんってほんとおっちょこちょいだよねって思って」
「そうね……曜ちゃんの方が付き合い長いから、こういう時、どうしたらいいのか分かる、よね? それで、今もやもやしたんじゃない?」
梨子ちゃんに言われて、私ははっとした。
「どうして、分かったの」
と、口に出てしまうくらいには、素直に梨子ちゃんに感心してしまった。
そして、それを聞いた梨子ちゃんは、意外にも笑っていた。
「や、やだ……曜ちゃん、顔にもすぐ出るのに……言葉にもすぐ出ちゃったら……隠し事できないよ?」
「え、わ、わ、わ」
私は手で口を塞いだ。
「もお、遅いです」
急に自分が裸になったみたいに恥ずかしくなった。
上目遣いで、梨子ちゃんを見る。
「……曜ちゃん、可愛い」
「からかわないで……」
梨子ちゃんがちょっと意地悪だ。
よく気が付くから、困る。
「ね、私、曜ちゃんのことよく見てるでしょ」
よく分からない自慢をされた。
「そうだね」
ふと、私は梨子ちゃんのことをちゃんと見ていただろうかと思った。
千歌ちゃんのことは、気にしようと思って気にしたことはない。
だって、昔から一緒だったから、どちらも分かっていることばかりで、今さら話すこともない。
まあ、それがややこしく考えてしまう原因なんだけど。
でも、梨子ちゃんは違う。梨子ちゃんのことは何も知らないわけじゃないけど、私は千歌ちゃん程、ちゃんと興味を持って梨子ちゃんを見ていただろうか。
大好きな千歌ちゃんが好きになった梨子ちゃんのこと。二人が付き合うってなって、私は初めて、梨子ちゃんをちゃんと見た。
「どうしたの? 曜ちゃん」
「梨子ちゃん、私、ちゃんと梨子ちゃんのこと見てなかった」
「そうなんだ……これからは?」
これからか。
「ちゃんと見る」
「何を?」
「何をって……あー、うーん? あ、梨子ちゃんて、けっこう睫長いよね」
「そこ?」
梨子ちゃんが小さく噴き出した。
「そういう所から。外見から」
「ありがとう」
お礼を述べる梨子ちゃんは、嬉しそうだった。
私は、もしかしたら寂しさを埋めるために、新しい切り口で自分を慰めようとしているだけなのかもしれない。
梨子ちゃんの良い所をたくさん見つければ、気が済む話なのだろうか。
それとも、その逆? どっちかな。
「私が、梨子ちゃんのこともっとちゃんと知らないと、千歌ちゃんとのアドバイスもできないしね」
「曜ちゃんが、そんなに張り切らなくても」
「そ、そうだね。二人が頑張らなきゃですな。姑化するとこでした」
「……でも、私、曜ちゃん程千歌ちゃんと一緒にいたわけじゃないから、曜ちゃんの話聞きたい」
「ヨーソロ!」
意味わからん
二人の役に立てればいいか。
この寂しさも、いつか薄らぐと思う。
「それで、日曜は千歌ちゃんに誘われてちょっと遠出するの」
持ち上がった気持ちが、すぐに叩きつけられた。
実質デートってこと。何がそんなにショックなのか、自分でも分からない。
「それで、その前に、曜ちゃんちょっと一緒に下見に言って欲しいの」
「下見、うん、いいけど……する必要ある?」
「だって、何か面白い物見つけておきたいし。それに、千歌ちゃんの話し聞くのに、地元はね、ちょっと」
「確かに、誰かに聞かれて、というか、むしろ千歌ちゃんの耳に入ったら、ややこしい」
「でしょ」
「よーし、じゃあ、先に私とデートだね」
「ええ、やった」
「やったって、喜んじゃダメだよー」
梨子ちゃん、小悪魔だ。
これは、千歌ちゃん、先が思いやられるよ。
「曜ちゃんと二人で出かけることってないじゃない。いつも、練習か部活だったし」
「そう言えば」
「私も、千歌ちゃんから聞かされた曜ちゃんの話し、たくさんあるから。それ、楽しみにしててね」
「い、いいよ、恥ずかしいし」
「でも、それ聞いて、私は曜ちゃんのことちゃんと見るようになったから」
「どういうこと?」
「……最初は……ううん、秘密。下見の時のお楽しみ」
「ほほう、やりますな」
「じゃあ、よろしくね。ちゃんと、犬がいないか調べないといけないの」
「それか……」
私は下見の意味を理解した。
今日はここまで
>>12
分かりにくい文章が得意なんですが(下手ともいう)、どのあたりですか?
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