夜、繁華街
男「あれ? 久しぶりじゃん」
男「おお! なにしてんの?」
男「バイト帰りバイト帰り」
女「知り合い?」
男「ああ、うん。高校ん時の」
女「あ、ちょっと避けなって」
男「え? あ、すんませんっす」
「あ! いえ、ごめんなさい。すいません、通りますね。すいません」
女「ちゃんと周りみなって」コソコソ
男「こんな時間にあーいうの居るって思わないだろ」コソコソ
女「それ差別じゃない?」コソコソ
男「ったく若い奴ばっかりだなぁ。通れねぇじゃねえか」
女「金曜日ですからねー」
女「あはは。係長、ちょっとのみ過ぎですよぉ」
男「痛ッ! おい、何処みて歩いてんだお前!」
「あ、すいません! すいません!」
男「すいませんじゃねぇだろって、おい」
女「部長! ほら、この人・・・・・・」
男「あぁ? なんだおい、若い癖に杖なんか持ちやがって。迷惑だろうが!」
「すいません、すいません」
女「あの、この人酔ってるので。もう大丈夫ですから行って下さい」
「・・・・・・すいません」
男「あーあー台無しだよ、馬鹿野郎」
「・・・・・・あれ、ここ何処だろう。何処まで来たんだっけ・・・・・・」
女「南4のバー行った? 前話したとこ」
女「行った行った。マスターイケてた!」
女「でしょー?」
「あの、すいません。道を」
男「フリータイムビール付き3000円でーす」
男「いや電話したって!」
「あ、あの」
女「何回も言ってるでしょ、してないって!」
男「――」
女「――」
「あ、あ」
男「―――」
女「――――!」
女「―――っ」
男「――――――」
女「―――」
男「――――――」
男「―――――」
女「―――――――――」
男「――――――」
「あ、あれ・・・・・・ああ」ヘタリ
男「なにしてんの。 修行?」
「――ッ!」ビク
男「ああ、声近かった? ここら辺うるせーから」
「あ、いや、その・・・・・・すいません」
男「今の流れで謝るとこないだろ。で、シャッターの前でなにしてんの」
「あの、道が分からなくて」
男「何処行くの」
「・・・・・・南5西3の、ビルです」
男「その白い杖引けばいいの?」
「え?」
男「杖? 手? 後ろから押す?」
「あ、案内してくれるんですか?」
男「うん。で、どっち?」
「つ、杖を!」ヨタタ
男「うん。引く」グイ
「は、はい!」
男「そこ段差ある」
「きゃッ!」
男「あーごめん」
「あ、大丈夫です。すいません」
男「うん、ごめん」
夜、繁華街の奥
案内の人「ここら辺だと思う。なんてビルだっけ」
「あ、敬和ビルってところの地下2階です。すいません」
案内の人「・・・・・・」チラ
「あれ? あ、あの」
案内の人「なにしに行くの?」
「あ、仕事の面接で。あの、紹介して貰って」
案内の人「・・・・・・なんの仕事?」
「えっと、書類整理? って聞いてます。私でも出来るみたいで」
案内の人「ふーん」
「・・・・・・あ、あの。着きましたか?」
案内の人「・・・・・・うん。どうだろ」
「え? あ、すいません。私、住所間違えたかも」
案内の人「いや、合ってる」
「あれ? じゃあもうこの近くなんですか?」
案内の人「うん。いや」
「な、なんですか?」
案内の人「誰の紹介? その店」
「店? あ、叔母です」
案内の人「ふーん。お前なんで一人なの?」
「あ、一人で行けると思って。すいません」
案内の人「行けてないじゃん。で、なんで一人なの?」
「叔母は今日忙しいみたいで、それで」
案内の人「ふーん」
「・・・・・・」
案内の人「・・・・・・」
「・・・・・・あ、あの、すいません。・・・・・・お金ですか?」
怖い人「はあ?」
「あ、すいません! あの、道案内のお金! 払った方がいいのかなと! すいません」
怖い人「じゃあ、お前俺とキス出来る?」
「えぇ!?」
変態の人「出来るの? 出来ないの?」
「あ、いや、その、それは! その・・・・・・すいません、許して下さい」
変態の人「そっか」
「あの、多くはないけど、払えますから。・・・・・・お願いします、教えて下さい」
変態の人「なんでそこまで行きたいの?」
「・・・・・・私、こんなんですから。色んな人に迷惑かけていて。
・・・・・・今からいく所は私でもちゃんと稼げる職場らしいんです。だから、あの」
変態の人「でもキス出来ないんでしょ?」
「で・・・・・・あ・・・・・・出来ない、です」
変態の人「じゃあやめとけって。そういう店だぞ、そこ」
「・・・・・・え?」
変態の人「だから、知らない奴とキスとかする店だぞ、そこ」
「・・・・・・いや、だって、書類整理って」
変態の人「あのビルはそういう店しか入ってない」
「じゃ、じゃあ私がビルの名前間違えたのかも!」
変態の人「つーか会社の名前も聞かされてないっておかしいだろ」
「・・・・・・」
変態の人「あれだろ、邪魔だから風俗店に売っちまおうぜ、みたいな」
「ち、違います! 失礼なこと言わないで下さい!!」
失礼な人「いや、そうだろ」
男「あれ? 君かな? 面接の子って」
「ッ! あ、はい!」
男「遅かったから心配したよぉ。とりあえず会社行こうか」グイ
「は、はい! よろしくお願いします」
失礼な人「おい」
会社の人「んー? 誰かな、君。この子の友達?」
失礼な人「お前、風俗店の奴だろ」
会社の人「違うよー? ほら、行こうか」グイ
失礼な人「おいってば」ガシ
会社の人「・・・・・・なんだお前?」
失礼な人「だから、お前は風俗店の奴だろって」
会社の人「ごちゃごちゃうるせーなぁ。だったらなんだよ」
男「ほら」
「・・・・・・あ、あの。離して下さい」グイ
危ない人「・・・・・・はあ?」
男「お前の店には入らないってさ」
危ない人「おいおいおいおい、それはないでしょ。責任問題だよ、これ」
男「責任って?」
危ない人「はあ? ドタキャンした責任だろうが」
男「じゃあ裁判起こせ。ほら、行くぞ」グイ
「は、離して下さい!」
男「俺だ馬鹿。手が嫌なら早く白い杖出せよ」
「あ、すいません・・・・・・」
危ない人「・・・・・・待てや。断ってはい終わりで済む訳ねえだろ!!」
男「でかい声だすなよ。警察呼ぶぞ」
ヤクザの人?「そんなもんで手引くと思ってんのか!?」
男「110番、あとは通話ボタン押すだけだぞ。お互いこんなことで揉めても仕方ないだろ」
ヤクザの人?「・・・・・・」
男「行くぞ」
「あ、はい・・・・・・」
書き溜め以上です。
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