梨子(やっぱり、今思うと…私って浮いてたのかもしれないわね) (15)

――…秋葉原~、秋葉原~。お降りの方は―…。

梨子「懐かしいなぁ、秋葉原。って言っても前も、Aqoursの皆と来たばかりだっけ…。」

梨子(いつもなら千歌ちゃんが書いた歌詞が出来上がってから曲を作るんだけど)

梨子(今回の曲は私が千歌ちゃんに我儘言って、先にメロディーを作らせて欲しいって言っちゃったのよね…)

梨子「勢いでらしくない事言っちゃったけど、良いメロディーが思い浮かばないなぁ」

どうしてあんな事を言ってしまったのか、自分でもよくわからないけど
今思い返すと、その時の私はそうせずには居られなかったんだと思う。
千歌ちゃんがスクールアイドルに、μ'sに惹かれて、自分からスクールアイドルを始めたように
私だって自分から何かを生み出したい作ってみたい。――Aqoursの活動の中で、そう思った。

梨子(それで、曲作りの良い刺激になるかもと思って選んだ場所が、秋葉原だった。)

秋葉原に戻ると、自分が音ノ木坂学院の生徒だった事を思い出す。音ノ木坂に居た頃の私は
ピアノが全てで、自分の事で精一杯で誰かと深く関わる余裕なんて無かった。
勿論、音ノ木坂の生徒は良い子たちばかりだからこんな私に話し掛けてくれるクラスメイトも居たし

でも、今思うと…。

梨子(やっぱり、今思うと…私って浮いてたのかもしれないわね)

千歌ちゃんたちと一緒に居る時間が、Aqoursのメンバーで居る事が、浦の星の生徒で居る事が
いつの間にか私の中で当たり前になっていた。
友達がそばに居るってこんなにも楽しくてこんなにも心強い気持ちになる事を、千歌ちゃんたちが私に教えてくれた。

それでもやっぱり、ここに戻ると私は音ノ木坂の生徒だったんだと実感してしまう。

梨子「音ノ木坂の生徒たちとももう少し仲良くすれば良かったかな…なーんて、今更思っても、もう遅いけどね」

???「まだ遅くないよ」

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梨子「え?!…誰?」

希「あ…ごめんなぁ。貴方、悩んでる感じやったからつい話しかけてしもうたんよ」

希「ウチ、この辺を拠点に占い師をやってて、名前は…nozomiって言うん。」

梨子「はぁ…nozomiさん、ですか…。」

そう言って、nozomiさんは私に名刺を差し出す。

============
スピリチュアル占い師:nozomi

℡:090-x*xx-x*xx

mail:sp***-*9*n*@mu-**.ne.jp
=============

梨子(スピリチュアル占い師?なんか胡散臭い…。)

希「ふふっ、今うさんくさいなーって思った?」

梨子「?!いえっ、そんなこと…ごめんなさい、凄く胡散臭いと思いました。」

希「いいんよそれで。ウチも胡散臭いなって思う時あるもん」

梨子「ええっ?!占い師なのに?」

希「案外そんなもんよ占いって。ウチも変に信者が付かれたりしたら困るから」

梨子「それは、そうですけど…。」

希「そうや、ウチが声掛けてしまったお詫びに占ってあげる」

梨子「…もしかしてお金取るんですか?」

希「あはは、料金は発生せんよ。占いはウチが趣味でやってる事やから」

梨子「良かった…。」

希「じゃあ…貴方の下の名前と生年月日をこの紙に書いて」

梨子「はい。」カキカキ

希「梨子ちゃんか…可愛い名前やね」

梨子「あ、ありがとうございます。」

希「9月生まれの乙女座…乙女座の人って星座の名の通り性格も乙女でロマンチストな人が多いんよ?」

梨子「ええ?!自覚ないんですけど…」

希「まぁ、大抵の人はそう言うんよね。後は―…芸術的な事は好き?」

梨子「ピアノをずっとやってて後は、絵も少し…」

希「ピアノ、か…。それじゃあ次は、手を見せて」

梨子「手ですか?…はい」

希「ふふふ、綺麗な手しとるね」

梨子「そう、ですか??」

希「うん。それに凄くすべすべしててしなやかで―…」

梨子「…何か、触り方が段々怪しくなって来てるんですけど?」

希「あ、ごめんごめん。触り心地が良くてつい」

梨子「はぁ…」

希「昔な、ウチの後輩に梨子ちゃんと同じで誰よりもピアノが大好きな女の子がおって」

希「その子の手も、こんな感じやったなぁってなんか懐かしくなったんよ。それでつい」

梨子「…手でわかるものなんですか?」

希「うん。触った感じで大体…と言っても、殆ど勘みたいなもんやから適当に聞き流してええよ」

希「そう言えばさっき、今更思っても、もう遅いみたいな事言ってたけど…。友達か…もしかして、恋人の事?」

梨子「?!こ、恋人なんて生まれて一度も出来た事ないです!と言うかやっぱり聞かれてたんだ…。」

希「梨子ちゃんこんなに美人さんやのになぁ…。ウチがもう少し若ければ絶対口説いて彼女にするのに」

梨子「?!?!///何を言って…//ってnozomiさんも私とそんなに歳離れてないですよね?」

希「まぁ、ウチの事より梨子ちゃん事もっと教えてよ。どうして遅いと思ったん?」

梨子「それは…え、と……実は、私、昔この辺りに住んでたんです。それでここの近くの高校に通ってて。今は、違う高校なんですけど」

希「前通ってた学校の子と喧嘩でもしたん?」

梨子「いえ、寧ろ喧嘩するまで踏み込める仲の友達が今まで居なかったと言うか…。」

梨子「でも、転校先で私に熱心に話しかけてくれるクラスメイトが居てその子たちと友達になって。今、凄く楽しくて」

希「そっか、良かったやん。」

梨子「はい。でも、初めて大切な友達が出来てから気づいたんです。仲間が居る事ってこんなにも素敵なんだなって」

梨子「だから、前の高校の生徒たちとも、もっと仲良くすれば良かったかな…って」

希「でも、今から連絡取ったりとか会いに行ったりは出来るんと違う?」

梨子「そう…なんですけど。何か今更、気まずくて…。」

希「まだ会う準備が出来ないんやったら、その分今居る仲間と、楽しい思い出を沢山作ったらいいんやない?」

希「だって、次会う時は今より、出来るだけ笑顔で居たいやん?」

梨子「…何か、占って貰うと言うよりは…。人生相談みたいになっちゃいましたね」

希「占い師を尋ねて来る人は、家族や友達に言いにくい悩み事を聞いて欲しいから占い師の所に来るんよ」

梨子「言いにくい、事…。」

希「だから占って貰う――と言うよりは、人生相談乗って欲しいって事の方が本命なん。」

希「占いの結果が当たってるかハズれてるかは、本当はどっちでもいいのかもしれない」

希「要は、本人の気持ちと行動次第で未来は変わっていくから。」

梨子「今日は、色々聞いて貰って何だかスッキリしました」

希「そう言って貰えてウチ嬉しいわぁ。ウチも久々に若くて綺麗な女の子とお話出来て楽しかった」

梨子「褒めても何も出ませんし、しませんよ?」

希「うーん…。それはとっても残念やわ。」

梨子(どこまでが冗談でどこまでが本気なのかわからない人だなぁ…)

希「じゃ、ウチこれから行くとこがあるから」

梨子「御免なさい、忙しいのに女子高生の相談何かに付き合ってもらって」

希「ううん。声掛けたのはウチの方やから。…会えるといいね。」

梨子「はい。」

希「それじゃあ、えっと…。」

梨子「??」

希「――またね。」

梨子「はい、また。」

私に優しく微笑みながらnozomiさんが手を振るから私も振り返す。
お互い背中を向け、歩き出した所でふと、違和感を覚える。名前がnozomi、どこかわざとらしい関西弁、占いが好き…。
この前千歌ちゃんに無理矢理見せられたμ'sのライブDVDとnozomiさんの声と姿が重なる。

梨子「あのっ!nozomiさんってもしかして」

……。

梨子「あれ?……居ない…。」


梨子(結局あの人は何者なの?凄く、不思議な人だったな…)

nozomiさんが居なくなった後、私は特に行く当ても無く秋葉の街を散策していた。

秋葉で突然不思議な占い師に声を掛けられた事、私の悩みを聞いて貰った事
音ノ木坂での私の日々、そして、Aqoursのみんなの事…。
今までの事と今日あった事を思い出しながら、頭の中で音を探す。

梨子(後少しで、何か掴めそうなのに…)

何か足りない気持ちのまま、私は帰りの駅へ向かう。
何処か名残惜しい想いで改札を通るのを躊躇っていると、また誰かが私に声を掛けて来た
今回はnozomiさんじゃなく、振り返るとそれは意外な相手だった。

「あれっ?もしかして…桜内さん?」

梨子「え?…あっ!もしかして…!」

私に声を掛けて来たその人は、私が居た音ノ木坂の生徒で同じクラスメイトだった―…。

「まさか、ここで桜内さんに再会するなんて思わなかったよ。ホント、びっくりした…」

梨子「うん、私も正直驚いちゃった…かな。」

「こっちに戻って来てるなら連絡してくれれば良かったのに」

梨子「う、うん…。でも転校してから全然連絡取ってなかったから」

梨子「正直、私の事なんて忘れられてるかもしれないと思って連絡し辛くて…」

「忘れる訳ないよ。寧ろ、私の方が忘れられちゃったかなー。なーんて!」

梨子「もう、それは絶対にないよ」

「ほっ、良かったー…。そう言えば、新しい学校には慣れた?」

梨子「うん。転校先で友達も出来て、毎日楽しいよ。」

「そっか!桜内さんって音ノ木に居た時はいつも音楽室に居たから新しい学校に馴染めるのか、それが心配だったんだ。」

「って今思えば、余計なお世話だったみたいだね。」

梨子「ふふ、ありがとう、心配してくれて。」

「ううん。でも、安心した。桜内さん、前より活き活きしてるから」

梨子「活き活き?そんな風に見えてるんだ…?」

「うん。何かピアノ弾いてる時より楽しそうに見えるよ。何か良い事でもあった?」

梨子「ええっ?うーん、不思議な出会いが沢山あった、かなぁ…?」

「あはは、桜内さんって面白い人だったんだね。」

梨子「面白い…?私が?」

「あ、そうだ!またいつでも音ノ木に顔出してよ。皆桜内さんに会いたがってるから。」

梨子「本当に?じゃあ…またお邪魔しちゃおうかな。」

「うん!いつでも待ってるから。」

梨子「じゃあ、私…そろそろ行くね。」

「うん。桜内さんが向こうに帰ったら、またいっぱいメールも電話もしようね。」

梨子「…うん!」

梨子(会ってみると案外、普通に話せるんだ…。)

帰りの電車の中で、今日あった事を思い出す。
nozomiさんと声を掛けられ、nozomiさんと別れた後に、偶然音ノ木坂のクラスメイトと再会したり。

梨子(本当、今日はよく声を掛けられる日だったな、それにしてもこんな偶然って)

梨子(こう言うのってまさに、ほら、なんだっけ…。)

梨子(ふふっ。…あ!そうだ!この感じをメロディーで表現出来れば…!!)

家に帰って早速、ピアノの前に座り頭の中でずっと鳴り響いていた音を奏でる。

梨子(大体こんな感じかな。忘れないように譜面に起こしておいて…)



……。

梨子「よし、出来た!!」

『おかけになった電話番号は現在使われて――……。』

梨子「はぁ…やっぱり。」

nozomiさんから貰った名刺に載っている番号に掛けてみたけど、案の定繋がらなかった。
念の為、メールも送ってみたけどエラーメールが返って来ただけ

梨子「あの子とも再会出来たし、電話でお礼くらい言いたかったな」

梨子「本当、不思議な人…。」

ちょっぴり寂しい気持ちになっていると、メールの着信音が鳴った。
きっと千歌ちゃんか曜ちゃん辺りかな?

梨子「―あ…。」

メールを開くと、差出人は、再会した音ノ木坂のクラスメイトだった。

梨子「また会おうね…か。ふふっ」

梨子「私もまた会いたい。っと」


梨子(nozomiさん、私の願い事、一つ叶ったよ。)

千歌「もう曲が出来たの?!」

梨子「うん♪」

千歌「すごーい!梨子ちゃん、早く千歌に聴かせてよっ」

曜「あ!千歌ちゃんだけズルいよ!私も梨子ちゃんの作った新曲聴きたい!」

梨子「イヤホンを片方ずつつけて聴けばいいんじゃないかな?」

千歌・曜「あ、そっか~」

言われた通り、千歌ちゃんと曜ちゃんはイヤホンを片方づつ耳に付けて
私の作った新曲を聴く。

梨子「ど、どうかな?」

千歌「なんか今までと違う曲調で、千歌はこう言う感じも好きだよ」

梨子「作詞、大丈夫そう?」

千歌「うん!千歌も今までと違う感じの歌詞に挑戦してみようかな」

曜「リズムとか、メロディーが不思議な感じだよね。」

千歌「千歌もそれ思ったー」

梨子「不思議、か…。確かにそうかもね」

曜「違う言葉で例えると~…うーん、何て言えばいいんだろ?」

千歌「曜ちゃん、あれだよ、あれ!」

曜「あ~、あれかな?」

梨子「ふふっ、あれって?」

千歌・曜「せーのっ」

千歌・曜「スピリチュアル!」


おわり。

G's梨子・アニメ梨子「私が二人?!?!」
G's梨子・アニメ梨子「私が二人?!?!」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1484253372/)

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