大臣「あーあ、また失言しちゃった……」 (15)


記者「貧困層の救済については、どうお考えですか?」

大臣「ふむ……」

大臣「もちろん出来る限りのことはするつもりだが」

大臣「貧乏な人たちも自分で頑張ってもらいたいものだねえ」

大臣「餓死したくなければね」

記者「あっ、今の発言、まるで貧乏な人は努力してない、みたいな言い方ですね!」

大臣「え……!?」

記者「失言だー! 失言だーっ!」


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大臣「あーあ、また失言しちゃった……」

秘書「まったく、大臣はどうもうっかり発言が多いですね」

秘書「他の人たちのように当たり障りのない発言をすればよろしいのに」

大臣「そんなこといったってなぁ」

大臣「貧しい人も頑張れってのは別に間違ってはいないだろ」

秘書「間違ってないことをいうのが常に間違っていない、とは限らないですわ」

秘書「いつも正直でいなければならない、は正論の一種といえるでしょうが」

秘書「じゃあ常に本音で話す人がいたとして、その人がどうなるかは察しがつきますよね?」

大臣「ろくなことにならんだろうなぁ」


大臣「にしても、マスコミもマスコミだ! 見ろ、この新聞を!」



『またまた大臣問題発言! 貧乏人は餓死しろ!』

『貧乏人は努力をしてない……失言王、またやらかす!』

『貧しい人は我が国にいらない! 大臣、貧困層切り捨て宣言!』



大臣「貧乏人は餓死しろとか、努力してないとか……」

大臣「こんなこと一言もいってないからね!? 歪曲にも程がある!」

秘書「マスコミとはえてしてそういうものですわ」


大臣「しかし、このままじゃまずい」

大臣「総理からも、いい加減かばいきれねえよ、って釘刺されちゃったし」

大臣「だけど、ついつい失言しちゃうんだよなぁ……」

大臣「どうすればいいと思う?」

秘書「そうですわね……」


秘書「失言という言葉を辞書で調べると、こうあります」

秘書「『言ってはいけないことを不注意で言ってしまうこと』であると」

大臣「うん、うっかりミスってやつだな」

秘書「ならば、いっそ――」


大臣「大臣の給料が高すぎる? 悔しかったら大臣になってみやがれ!」

大臣「投票所にバニーガールがいれば、投票率上がるんじゃないか?」

大臣「労働環境が悪い? 昔はもっと悪かったんだよ! ちったぁ我慢しやがれ!」

大臣「保育園に通わせられないなら、幼稚園に通わせればいいじゃない」

大臣「我が国も核武装すべきだ! 一家に一個核ミサイル!」


大臣「我が国は神の国! みんな神様!」

大臣「女は産む機械! どんどんどんどん産みまくれ!」

大臣「年増女の羊水は腐ってやがる……結婚が遅すぎたんだ!」

大臣「裏方の仕事やってる奴って、絶対仕方なくやってる奴ばかりだよねー」

大臣「文句がある奴はかかってきやがれ! バカヤローッ!!!」


秘書「大臣の人気がうなぎ上りですわ」

大臣「これも君のアイディアのおかげだ」

大臣「まともな発言をしつつたまに問題発言をすると、それは“失言”になってしまうが」

大臣「常にわざと問題発言ばかりしていれば、それは“失言”にならない……逆転の発想だな」

大臣「とはいえ、いくらなんでも上手くいきすぎな気もするが」

秘書「世の中、毒舌芸人がウケることもありますから、毒舌大臣がウケてもおかしくはありませんわ」

大臣「そういうものかな……」


大臣「――で、今日の予定は?」

秘書「先日発生した大地震の被災者の方々のお見舞いです」

大臣「死者は出なかったとはいえ、かなり大きい地震だったからな……」

大臣(さすがに今回ばかりは真面目にやらないとまずいだろうな)


被災地――

大臣「えー……被災された皆さま」


市民A「……」

市民B「……」

市民C「……」

記者「……」


大臣「このたびは誠にご愁傷様でございました」

大臣「崩れた建物も多く、元通りにするのは並大抵のことではありませんが」

大臣「私、この地域の復興に全力を注ぐ所存でございます」


ブーブーッ! ブーブーッ!

市民A「もっと毒吐いてくれるのを期待してたのにふざけんな!!!」

市民B「地震が起きるところに住んでた奴が悪い、くらいいってくれよ!!!」

市民C「何いわれるか楽しみにしてたのに……辞任しろーっ!!!」

記者「こりゃあ大失言だ。明日の一面は決まりだな……」


大臣「ええええええええ!!?」









― 終 ―

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