冥土帰し「んん?僕だって医療ミスくらいするよ?」上条「 」 (53)




・なんでも許せる人向け








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~とある第七学区の病院~



冥土「やれやれ…君は本当にここが好きだね?」

上条「好きで来てるんじゃないです」

冥土「もうここに住むかい?」

上条「好きで来てるんじゃないです」

冥土「…まさか…やはり僕と同じ…ナース好きだからかい…?」ゴクリ

上条「好きで来てるんじゃないです」





冥土「冗談はさておき、君はあと二、三日はゆっくり点滴に添い寝してもらうんだね?」

上条「ふぇーい…ああまた入院費がかさむ…」

冥土「イヤなら怪我をしないでほしいね?」

上条「…」

上条「…にしても先生はやっぱり凄いですよね」

冥土「ん?」

上条「どんな怪我でも治して、どんな瀕死でも死の淵から呼び戻して」

上条「どれだけぐちゃぐちゃになっても綺麗に元通りにしたりとか」

上条「その患者に必要なものは全て揃えるとか」

上条「院長とかでもないのに。技術だけじゃなくて『人を救う』仕事に対する熱意っていうか、」

上条「ほら、一介の医師ならそこまでやらないじゃないですか」

冥土「…そうだね?」



上条「なんでそこまでやるんですか?」

冥土「うーん…」

冥土「まぁ僕も”プロ”だからね?」

上条「プロ、ですか。」

冥土「うん。”プロ”だ。」


冥土「…これはどんな仕事にでも言える事だけどね?」

冥土「自分の仕事を間違いなく遂行するだとか、死力を尽くしてあたるとか、理不尽や己の未熟と戦い、患者や客の気持ちや立場に立って考えて行動するのは当たり前なんだね?」

冥土「病院経営的思考から言えば僕みたいにこういう1人の患者にかける時間とか手間は極力削るべきだけど」

冥土「自分が逆の立場だとしたならどうして欲しいか、と思うべきだね?」

冥土「…まぁたまに論外ないい加減なプロもいるけど」

冥土「そういう人の仕事はきっと、”仕事”じゃなくて趣味のようなものだね?」

冥土「仮に技術にそれほど差がない人間を2人並べたって、最終的に出す結果が異なるのはその人の心がけとか意識の差だ」



冥土「君が将来どんな仕事をするかは分からないけど、どんな仕事でも決して驕らず、謙虚にプライド持って一生懸命やりなさい」

上条「はい!」



上条「…そういえば先生」

冥土「なんだい?」

上条「先生でも患者を救えなかった事があるんですか」

冥土「あるよ。君だね?」

冥土「前にも言ったが、君の記憶喪失は記憶媒体ごと消滅したのと同じだし」

冥土「彼女の件については…あの時は命を助ける代わりに記憶の呼び出し経路の破損で」

上条「それ以外でですよ。俺以外で」

冥土「……、…無いよ。一応は」

上条「え?言い澱んだって事はそれに近いことはあったんですか?」

冥土「…」









冥土「随分、昔の話だけどね?」






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20年前。


「大変だ!大型トラックが薬品研究施設に突っ込んだ!」

「爆発するぞーー!!!」「キャーーー!!!」



「うわぁあああ!!!」「大変だ!今の爆風で交通事故も起きてる!」「オイ!まだ生きてる子がいるぞー!」


「病院へ運べ!」「どこの!?」

「第七学区のだ!」「どうして?」「そりゃあおめぇ、」



「そこなら現実版ブラックジャックが居るからさ」








~とある病院~



冥土(若)「くそっ、次から次へと…、はー…ようやくひと段落かよ?」

薬味(若)「何よ、あんたもうへばったの?ダラシないわねぇ」




薬味「こりゃ十代にして『医学界の革命児』とか、『現実版ブラックジャック』なんて呼び名がある…なんてのはただの噂だけだったのかしらね?」

冥土「あんただってけっこう内心キツイんじゃないの?テメェの年考えろよ若作りクソババア?」

薬味「しばくぞクソガキ」





「先生!また急患です!」

冥土「やれやれ…おちおち口喧嘩も出来ねぇのかよ?」ガタッ

薬味「ボヤいてないで支度しな」





冥土「クランケの容態は?!」

「はい!大人2人はまだ生存してはいますが間も無く亡くなります!ほぼ即死状態!7歳の子供が1人まだ生存!」

「ただ子供も臓器の損傷が激しく…!胃も肺も肝臓も潰れてます!」

冥土「…、大人2人はもう見捨てるしかないか…子供用代替機械臓器のストックは?!」

薬味「もう無いよ!さっきので使い切った!」

冥土「…、子供の親の臓器はまだ使えるか?」

「…恐らくは、可能かと」

冥土「よし。なら使おう。とにかく死人よりまだ生きられる生存者の延命措置が最優先だ!」

冥土「親の死も無駄にはしない!」

冥土「これより親の臓器で子供の破損した臓器を修復する!!」



冥土「緊急オペ準備!!」

「はい!!」





・・・・・。



数週間後。



冥土「えー…と、このクランケの途中経過も順調順調、っと。」ペラ…ペラ…

冥土「…一応巡回でこの前の事故の子、直接見とくか…ん?」

薬味「あら」

冥土「おう」


薬味「あんたも今から巡回?」

冥土「おう」

薬味「そ。」

薬味「…」

冥土「…なんか用か?」

薬味「別に。」プイ

冥土「だったら人の顔ジロジロ見ないでくれないか?」

薬味「…あんたさ、」

冥土「ああ?」

薬味「…なんでもない」

冥土「言えよ」

薬味「あんたさ、」


薬味「あんた、患者救えなかった事ある?」

冥土「ハッ、それがねぇから『現実版ブラックジャック』だ」

薬味「…そうね」

冥土「で?」

薬味「別に。ただ、ひょっとしたら」

薬味「それ故に『本当の意味で救えなかった』事が起きたら…あんた折れちゃわないかってちょっと心配しただけ」

冥土「テメェの医療ミスの心配でもしてろよクソババア」

薬味「…そうね」

薬味「じゃ、行くわ。」ヒラヒラ

冥土「…?」


冥土(んだよ、調子狂うな)


冥土(フン!心配しなくても全員キッチリ救ったっつーの)

冥土(その患者が生きていて、助かる見込みがある奴ならば。僕に救えない命はない)ニヤッ



冥土「っと、ここだここだ」


ガラッ。



女の子「…」

冥土「やあお嬢さん。気分はいいかい?」ニコッ






女の子「…」

冥土「…」

女の子「パパと、ママは?」

冥土「…」


冥土(さて、どうしたもんかな?)

冥土(…隠してもいずれはわかる事だよな?)

冥土(答えるのを逃げて誰かに押し付けてもいいが…そりゃ無責任か)

冥土(それに…ここいらで僕の粋な計らいってヤツを魅せてやろうかな?)

冥土(ふっふっふ。これは感動だぞー?泣いちゃうかな?)


冥土「…残念だが…君のパパとママはあの事故で亡くなったんだね?」

女の子「!?」




冥土「けどね、」



冥土「君のパパとママは君の中にいる」

女の子「…?」

冥土「君を助けるにはいくつか体の1部が必要だったんだけど」

冥土「君のパパとママからそれらを少しづつ貰ったんだ。」

女の子「…」

冥土「確かに君のパパとママは亡くなった。けどね、」

冥土「君のパパとママは君を助けて亡くなった。」

冥土「いつでも君の傍にいるよ?」

冥土「だから…そんなに悲しまなくても大丈夫。」ニコッ

女の子「…」




冥土(どーよ?この感動シーン!イイハナシダナー?)

冥土(はい、これでこの事将来本とかに載るんじゃね?)

冥土(きっとこの後この子は『パパ…!ママ…!』と自分の身体を抱きしめて…はいもう超感動だよね?)



パシッ。



冥土「……えっ?」

女の子「…っ、…っ、」ポロポロ



冥土「えっ、ちょっ、なんで僕が叩かれなくちゃ、」

女の子「要らなかったッッッ!!!!!」

冥土「へ?」

女の子「どうして!!?どうしてパパとママから体の1部盗ったの!!!!」ガシッ

冥土「いや、だからそれは、」

女の子「私!!!そんなの要らなかったのに!!!」

女の子「パパとママが死んじゃうなら!!私なんて死んで良かった!!!!」

女の子「お前がパパとママから盗ったから!!!パパとママが死んじゃったんでしょ!!!」

冥土「いやそれはちがっ、」

女の子「返してきてよッッ!!!パパとママに体の1部返してきて!!!」



冥土「~っ、あのなぁ!!僕は世界一凄い医者だ!!」

冥土「その僕でも!!既に死んだ奴を生き返らせるのは無理なんだ!!!」

冥土「ついでに!助かる見込みもないぐらい死の淵まで行っちまったヤツもな!」

女の子「ヤブ医者!!!人殺し!!!」ペシッ!ペシッ!

冥土「おまっ、言うに事欠いて僕が人殺しだと?ヤブ医者だと!?」

冥土「僕がヤブなら世の中の医者全員ヤブだっての!」

女の子「返してきてよ…私、どうなってもいいから…!」

冥土「…」

女の子「ヤブって言ったの謝るから…パパとママを…助けてよ…!」

冥土「…」



冥土「…悪いけど、それは無理だね?」

女の子「…っ、」ダッ

冥土「んあ?…オイッ!何する気だ!!」


女の子「だったら…こんな命、要らない…!」



冥土「バカ待て!窓開けんな!!オイッ!やめっーーーーーーーーーーーー




とっ、




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーューーーーーっ………










くしゃっ。









…報せるべきじゃ、なかった。

彼女はまだ幼かった。

大事な人の死に耐えられない可能性をもっと考慮するべきだった。

…もっと慎重になるべきだった。



僕は、青く、思い上がっていた。



僕は死ぬほどバカだった。





僕は人を救える。人より多くを。

奇跡が起こせる。

漫画のキャラクターの様に、どんなに難しい手術でも治療でもできる。


どんな理不尽な病魔とも戦い、勝利する。



この世の全ての病気を叩き潰す事ができる最強のドクター。



ーーーーーーーーーそう、死んでさえいなければ。どんな人間でも。
















女の子「」

冥土「…だから…死んじゃったら、ダメだろ…!そんなのっ…僕だって助けられないじゃないか…っ」


何が医者だ。

何が『医学界の革命児』だ。

何が『現実版ブラックジャック』だ。

何が最強のドクターだ。



身体を救っても、心も救えなければ意味なんてないじゃないか。



僕は薬味久子が言っていた言葉を思い出した。



『それ故に『本当の意味で救えなかった』事が起きたら…あんた折れちゃわないかってちょっと心配しただけ」』



…僕は、その場から逃げてしまった。





数週間後。


薬味「…あら。久しぶりね」

冥土「…」

薬味「…気持ちは理解出来ないわけじゃないわ。けど無断欠勤はダメ。仕事はしなさい」

薬味「あなたが居なかったこの数週間、どれだけ救えたかもしれない命があったと思うの」

冥土「…すみません…」

薬味「…ごめんなさい。イジワル言ったわね。」

薬味「安心なさい。誰も死んでないから」

冥土「…」





薬味「言葉としては軽いけど。あなたに出来ることは『今度から気をつける』しか出来ないわ。」

冥土「…」

薬味「ねぇ、たぶん忘れてたんじゃない?今まで失敗がなかったから。」


薬味「私達が扱うのは、『命』だってこと。」


薬味「『命』ってね、身体だけじゃないのよ」

薬味「…いえ、これはあなたの方が。…私以上によくわかってるだろうから、これ以上は言わないけど。」

冥土「…」



薬味「…ごめんなさい。話、変わるけど」

薬味「あんたの腕が『世間に認められすぎて』本名を名乗るのマズイんだってさ」

冥土「ついこの前に…1人、テメェで救って、テメェで死なせたのにか…?」

薬味「…こう言うのはなんだけど、命を多く救った医者はその分、人より多く殺してるわ。」

薬味「あなただけじゃない。ましてやあの一件は医療ミスや故意ではないもの」

冥土「けど!」

薬味「話、戻すわよ?だからあなたが狙われないように。誰かに拐われて囲われないように。」

薬味「あなたがいなくなることで救えなくなる命がでないように。」



薬味「自分のコードネームを決めろってさ」

冥土「…」






冥土「…なら、今…決めた…」

薬味「あら早いわね。言ってみて?」

冥土「…」















             ヘヴンキャンセラ-
            「”冥土帰し”。」













冥土「今はまだ無理でも…っ、」

冥土「いつか。亡くなってしまったと認定された人でも死の淵からこっちに帰ってこさせるぐらいに…っ」

冥土「その人の身体だけじゃなくて、魂だけじゃなくて、」

冥土「キチンと、”その人”を丸ごと救えるぐらいに、」

冥土「僕はっ…!」グスッ...!


冥土「僕は、いつかそんな医者になってみせるから…っ!」

薬味「そう…期待してるわね。」




   ヘヴンキャンセラ-
薬味「”冥土帰し”くん。」









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冥土「…」

上条「…」




冥土「きっと…君は僕に対して言いたい事はあるだろうね?」

冥土「言い訳だけど…まぁ…僕も青く…若かったんだね?」

上条「…」

冥土「さっき、僕は『自分が”プロ”だから』とは言ったけどね?」

冥土「すまない。僕は嘘をついたね?」

冥土「結局は…またあの時の女の子や…君の時みたいな思いをしたくないからだ」



冥土「もう、救えたモノが救えないのがイヤなんだ。」

冥土「だから…僕は死力を尽くすんだね?」

冥土「身体だけじゃない。心も救うために。」

上条「先生…」








冥土「だからね?」

上条「はい」























冥土「君の右手をちょっとズラしてくっつけてしまったのも必ず死力を尽くして治すからどうか訴えないでほしいんだね?」ゲザ

上条「ほんと頼みますよ…先生ェ…」









おしまい。こんだけ連載してて冥土帰しメインのSSがないのもなって。


設定等、けっこう捏造したからそのおつもりで。

依頼出してきまーす。




え…?薄めたカルピスは美味いし、むしろ褒め言葉じゃね…?

ちなみに>>1はチームバチスタシリーズはジェネラルルージュが好きです。


訂正。

×
『それ故に『本当の意味で救えなかった』事が起きたら…あんた折れちゃわないかってちょっと心配しただけ」』


『それ故に『本当の意味で救えなかった』事が起きたら…あんた折れちゃわないかってちょっと心配しただけ』





上条「…」

姫神「…」




上条「…わかった」

姫神「?」




あれ?なんでこのスレ飛んだ?誤爆誤爆ーテヘペロー(ゝ。∂)

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