・単発小ネタ短編です
・キャラ崩れ注意
・あぶきた百合ネタではないので、その手のを期待した人は栗田ターンを華麗に決めてお戻り下さい
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――大事なのは、下準備。
街に出て、手頃なシャンプーを捜す。
小さめな容器で、良い香りのやつがいいんだよねぇ。格安なら、なおのこと良し。
……おっ、いいねえ、ちょうどいい案配のやつ、発見!
何本か買って帰らなきゃ。
・・・
浴槽に目を向ける。
川内と鬼怒からOKサイン。
早速、阿武隈の横に腰を下ろし、話しかける。
「あれ~、阿武隈、なにキョロキョロしてんのさ? 髪、洗わないの?」
「えっと、その、シャンプーが見当たらなくて……」
――そりゃそうだ、あらかじめ隠しておいたんだから。
「これ、使いなよ。あたしはもう髪洗ったからさ」
「えっ、いいんですか? なんか親切過ぎてあやし……あっ、いえ、ありがとうございます」
「あ、ただし……」
「ただし?」
「香りが良くて泡立ちがいいんだけど、そのぶん、めちゃくちゃ泡切れが悪いんだよねえ。しっかりすすぎなよ~」
阿武隈は頷くと、渡したシャンプーを使い始めた。
しばらくしたところで、タイミングを見計らって大声を出す。
「あっ、こら!」
頭を泡だらけにしながらビクッとなる阿武隈。
「ふえっ?」
「あんた! 一滴か二滴ってボトルにあるの、読まなかったの?」
「えっ?」
早寝、早食い、早風呂が習い性になってるあたし達だ。
シャンプーのボトルの裏の細かい文字など読むわけはなく、そもそも適量の部分はわざとラベルを剥がしてある。
当然、嘘だ。
「かなりすすがないと、このシャンプー残るよ。あーぁ」
「えぇっ……」
阿武隈は急いですすぎ始める。
背後に忍び寄る川内。
手には予備のシャンプー。
冷たいとバレるので、浴槽で温度調節済みだ。
勢いよくすすいでる阿武隈の、その頭にシャンプー液をふりかける。
阿武隈はすすぎ終わったと思い、シャワーを止める。
あたしは阿武隈の髪をクシャクシャとして、泡をたてて見せる。
「あーぁ、ほらっ」
阿武隈は髪に手をやると、ギョッとして、再び、すすぎ始める。
今度は背後に鬼怒。
手にはやっぱりシャンプー。
3本以上用意してるんだから、まだまだ序の口だ。
すすぐ阿武隈。
ふりかけられるシャンプー。
クシャクシャ泡だつ頭。
阿武隈の頭はずっとあぶくがぶっくぶく。
あぶくまだけにね(笑)
「……ふえぇん、なんでえ? 嘘でしょおぉっ!?」
湯船の中では他の艦娘たちがにやにやしたり、口元を抑えて必死に笑いをこらえたりしてる。
面白がって、かわりばんこに背後に忍び寄ってはシャンプーの液をふりかけていく者も増えていく。
大浴場の使用時間ぎりぎりまで延々と繰り返す、滑稽なルーティン。
……しっかし、こいつもいい加減、気づかないもんかねえ?
・・・
・・
――その日の夜、風呂上がりの阿武隈は、一晩中、甘い薔薇の薫りに包まれていた。
笑えたのは、駆逐艦のチビ達が阿武隈の周りに寄ってたかって香りを嗅ぎたがって、あいつがちょっとした人気者扱いになってたこと。
きっと阿武隈は、この時の、自分がチビ達に囲まれてる照れくさげなニヤけ顔の写真を、今でも持ってるはずだ。
まあ、もちろん、あいつの人気は……
一夜限りのバブルだったんだけどね。(ドヤア)
『北上さまの悪戯』
fin.
以上、完結です
お目汚し失礼しました
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