-アイドルに興味はありませんか?-
-そうですね…今とは全く違う世界が見られると思いますよ-
-少なくとも、そんな退屈そうな顔をする暇も無いんじゃあないかな?-
時子「…ふぅ」
時子「違う世界、ね…」
ガチャッ
モバP(以降P表記っす)「なんだ、こんなところに居たのか」
時子「チッ…来なくていいわよ。鬱陶しい」
P「今日の主役が早々にこっそり抜けてどうするんだよ。法子が探し回ってたぞ」
時子「放っておきなさい。どうせドーナツ押し付けてくるだけでしょうが」
P「良いじゃないか。それだけ慕われてるって証拠なんだし。しかしまぁこんな大勢集まるとは流石に思わなかったよ」
時子「ハッ、暇を持て余しているのがゴロゴロいるって事じゃない?」
P「事務所のドア開けた途端クラッカー鳴らされて目ぇ丸くしてたクセに」
時子「アァ?」ギロッ
P「いいじゃないか、誕生日ぐらい素直に祝われろよ。大人になって誕生日を他人に祝ってもらうってのはハードル高いんだからな?」
時子「誰も頼んでいないわよ。帰ろうとしたらこんな騒ぎに巻き込まれて…つくづく賑やかしい事務所ね」
P「ハハッ、でも退屈はしないだろ?」
時子「…」
P「時子?」
時子「そうね…良呆れはするけど退屈する暇は無いわ」
P「そりゃ何より。ま、無理強いはしないけど戻って顔見せてやってくれよ。みんな時子の誕生祝いに来てるんだし」
時子「どうだか。大方大騒ぎする名目が欲しいだけにも見えたけど」
P「否定できねぇ」
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時子「それで、貴方までお祭り騒ぎから抜け出して良かったのかしら」
P「俺は今日の主役を探しに来ただけだよ。ま、確かにみんなちょっとテンション上がりすぎてる感じがするし、もう少し1人で黄昏ていたいっていうなら構わないけどさ」
時子「誰が黄昏てるのよ。蘭子や飛鳥じゃるまいし」
P「窓に頬杖ついて遠い目ぇして意味深に溜息ついてたクセに」
時子「豚ァ!」パシン!
P「超痛い!」
P「くぅ……早速プレゼントを有効活用しやがって…尻割れたじゃねぇか」
時子「もとから割れてるわよ。…それにしてもプレゼントの8割が鞭ってどういう了見なのよ」
P「時子=鞭、鞭=時子ってのがこの業界の共通認識では無いのか」
時子「アァン?」
P「やめてくださいごめんなさい。だからその振り上げたイバラの鞭を降ろして。流石にソレはキツい」
時子「こんな大量に、どうしろっていうのかしら…」
P「多分もう一生鞭には困りそうにないな」
時子「そうね。ならこれからはもう少し頻繁に聞き分けのない豚に振るう事にするわ」
P「ハハッ、最近すっかり業務用女王様の化けの皮が剥がれてきてるクセに」
時子「豚ァ!」パシィッ!
P「白羽取りぃ!」
P「手ぇ超痛ぇ!!」
時子「この駄豚は耳障りな軽口を叩かずには無駄な呼吸すら出来ないポンコツなのかしら?」
P「ユーモア溢れる大人の余裕と言ってくれ。おー、手痛い…」ヒリヒリ
時子「良い歳した大人が勤務時間中にプラモデル作ったりゲームしたりする訳無いでしょうが」
P「仕事終わらせてから遊んでるからいいんだよ」
時子「だったら自分で別の仕事を見つけなさいこの豚!」バシッ!
P「最もなご意見だけど時子に言われると何か理不尽感!」
P「いてて…、何かここにいるとボロボロにされるから時子お誕生日会場に戻るよ…」
時子「やめなさい、その不愉快な言い方」
時子「…豚」
P「メタボじゃねぇよ。なんだ?」
時子「…」フリフリ
P「…?」フリフリ
時子「違うわよ」
P「えっ?バイバイ、じゃなかったのか?」
時子「グラス、空なのだけれど?」
P「せやね」
時子「ハァ…、耳と頭だけじゃあ飽き足らず、目玉も粗悪品なのかしら?」
P「ああ、「おかわりもってきてほしいです」か」
時子「都合のいい翻訳をしないで頂戴。気色の悪い」
P「お前もそのうち副音声つきそうだね」
時子「ついてたまるもんですか」
P「はいはい。んで、何がいい?ファンタか?三ツ矢サイダーか?」
時子「アァン?」
P「へいへい、いつものね」
P「あ、ついでに何か食べるものも持ってくるか?」
時子「どうでもいいわ。勝手になさい」
P「了解。んじゃ取りあえずあの異彩を放つ等身大時子ドーナツを…」スタスタ
時子「待ちなさいドーナツ以外よ!ドーナツ持ってきたら…しばくわよ豚!!」
-凄い歓声ですね。ほら…あそこにいる人達は全、員時子さんの為に集まったんですよ?-
-当たり前だって?はは、何とも頼もしいお言葉で。あぁ、はいはい。時子様でしたね-
-ご機嫌取りのつもりなんて無いんだけど…お気に召さないと言うなら、お言葉に甘えて…-
-これからもよろしく。時子-
時子「…何で今更、こんなつまらない事を思い出すのかしらね」
P「何がつまらないって?楓さんのダジャレ?」
時子「気配を消して近づくなって言ってるでしょうが!」バシッ!
P「平手で背中とか地味に痛い!」
時子「本当に、この豚は何度躾けても一向に学習しないわね…家畜より物覚えが悪いのかしら」
P「いてて…危うく零すとこだったじゃないかよ…ほれ、秩父錦。冷やでいいんだろ?」
時子「フン、ご主人様の趣向ぐらいはその粗末な頭でも記憶出来ているのね」
P「どっちかと言うとご主人様って呼ばれたい派なんだけどなぁ。首輪よりリードの方が生々しさがあると思わないか?」
時子「私はそれに対して何て答えればいいのよ。知らないわよ、豚の性癖なんて」
P「んで、こっちが適当に見繕ってきたおつまみな」
時子「まぁ、ギリギリ及第点かしらね」
P「そりゃどうも」
時子「…」
P「どうした?俺の顔に何かついてる?」
時子「薄汚い目玉と鼻と口がついてるわよ」
P「え、マジで?…取れた?」ゴシゴシ
時子「ほら、こっちを向きなさい。取ってあげるわ」
P「いひゃいいひゃいいひゃい」グニーッ
P「…何かさ」
時子「あ?」
P「こうして、時子と2人だけで事務所にいると昔を思い出すなぁ、って」
時子「…チッ」
P「思えば時子と組んで随分経つんだよな……あれ、何年だっけ?…なんでだろ、年月の概念がいまいち思い出せない…」
時子(…………思い出せない)
P「…まぁいいや。まぁ、売り出す自信はあったけど正直ここまで大人気アイドルに上り詰めるなんてな。流石はトキコサマ」
時子「やめなさい。貴方今レイナサマと同じアクセントで言ったでしょ」
P「すんません時子様」
時子「…それもやめなさい」
P「え?」
時子「貴方に様付けされると気色が悪いのよ。背筋が痒くなるわ」
P「ボロクソですな…」クスン
P「まぁ、確かに様付けしてた頃は俺もめっちゃ猫被ってたしなぁ」
時子「うすら寒いセリフを薄っぺらいニヤけ顔で吐いていたわね。その辺の有象無象と同じように」
P「ボロカスですな…」クスン
P「ま、今は御覧の通り開き直ってやりたい放題だけどな」
時子「豚、そこの卵焼き取りなさい」
P「はいよ」
時子「……悪くないわ」モキュモキュ
P「そっか。あ、厚焼きと出汁巻きとメキシカンチョリソーもあるからな」
時子「卵ばっかり取ってくるんじゃないわよ」
P「あむあむ…うん、この煮豚も美味い。でもやっぱり時子の作った物の方が一味違うんだよなぁ…」
時子「…」ゲシッ
P「食べてる最中にローキックはやめて!」
時子「突然脳が沸いたようなセリフを吐き散らすんじゃ無いわよ」
P「ズタボロですな…」クスン
明日には終わらせる、社畜頑張る、げふっ
出会いの頃からやろうと思ったけどそんな時間も気力も足りないだろうと時子の走馬燈にてお送りしますオヤスミー!
-…と言うわけで、俺は来月から別部門のプロデュースを担当することになる-
-心配しなくても、すぐに引き継ぎのプロデューサーが付いてくれるだろうから……は?お前も異動する?何を言ってるんだよ-
-…放り捨てて逃げる訳じゃないだろ!順調にファンもついてきているのに無駄な波風は立てないほうが………、時子…?-
時子「…頭が痛いわ」
P「お疲れさん。愛されてるなぁトッキーは」
時子「今度その呼び方をしたら抉るわよ」
P「ハハッ、超怖ぇ」ガクガク
時子「チッ…結局騒ぐ名目が欲しかっただけじゃないの」
P「正確には「時子と一緒に」、だな」
時子「お陰で最悪の気分よ…飲みたくもないものを飲まされて、食べたくもないものを食べさせられて、歌いたくもないものを歌わされて…」
P「めっちゃ好評だったじゃないか。次はお前がCDデビューするか?」
時子「…アァ?」
P「ほんとに調子悪そうだな。キレが無いぞ」
P「どうする?帰るなら送ってくぞ」
時子「余計なお世話よ」
P「もう他のみんなも解散したみたいだし。楓さん達は二次会いったけど」
時子「…」
時子「ちょっと顔貸しなさい」
P「すぐ返してくれよ?」スポッ
時子「いらないわよ、こんな薄汚い被り物」ポイッ
P「プロデューサーの宝具であるPヘッドに何てことを!」
P「ちょっと面貸せって言うから体育館の裏にでも連れていかれるかと思ったら」
時子「本当に軽口の減らない豚ね」
P「うん、こずえにもよく言われる」
時子「思いも寄らない娘の名前が出たわね」
P「うるせぇー…だまれぇー…、てな感じで」
時子「その顔で本人そっくりの声出すのやめてくれるかしら。耳が腐りそうになるわ」
P「うぅ寒っ。最近昼間は暖かくなってきたけどやっぱ夜はまだまだ冷え込むな…」
P「それにしても、こんな時間に屋上に上がるのは久しぶりだな」
時子「日中は色々と騒がしいのがウロチョロしているものね」
P「んで、なんでまたここに?突き落とすのは勘弁な。流石に捻挫しちまう」
時子「飛び降りたいなら一人で勝手になさいな」
時子「…特に理由は無いわ。何、一人前に文句でもあるのかしら」
P「アリマセン」
時子「…チッ」
P(時子と2人きりで事務所の屋上…)
時子「くだらないことを思い出してる顔になってるわよ、豚」
P「どういう顔だよ」
P「いや、そりゃ嫌でも思い出すだろ…」
P(時子の涙を見た、最初で最後の場所なんだし…)
時子「…そうよね。忘れられる筈が無いわよね」
時子「調子の良い言葉を並べてこの私をこんな騒々しいばっかりの業界に引きずり込んでおいて、自分1人逃げ出そうとしたのだから」
P「…」
時子「なんて顔よ、みっともない。勘違いしないで。別に怒ってなんていないわよ?叱って貰えるとでも思ったかしら」
P「そっちの趣味は無いです」
時子「……まぁいいわ。ここに連れて来たのはただの憂さ晴らしよ」
時子「今日は1日中色んなのに纏わりつかれて辟易していたけれど、久しぶりに豚の滑稽な卑しい顔でほんの少しだけ気が晴れたわ」
P「お役に立てたようで何よりですよ時子様」
時子「クックッ、今更取り繕っても遅いわよ。なけなしのプライドが傷ついたかしら?」
P「ご機嫌ですね時子様や。珍しく饒舌なことで」
時子「ご主人様が話しかけてあげているのよ?鳴き声を挟むんじゃないわよ」ギロリ
P「ブヒィ」
時子「貴方、図々しくも初対面の私にこう言ったわよね」
時子「退屈そうだ、新しい世界を見せてやる。なんて随分と偉そうに」
時子「そうね…以前と比べればマシ、ってところかしら。相も変わらずどこにいても下種の視線は付きまとうし、くだらない連中ばかりでうんざりするのは変わらないけれど」
時子「事務所は事務所で頭のネジを忘れてきたような小娘ばかり。しかも私に向かって馴れ馴れしいったらありゃしないわ」
時子「…本当に不愉快だけど貴方の言う通りにはなったわね。認めてあげるわよ。確かに、この世界は退屈しないわ」
P「時子…」
時子「鳴き声を挟むなって言ったのが理解できないの」
P「…」
時子「でも貴方、何か大きな勘違いをしてるんじゃあないの?」
グイッ
P「…っ!?」
時子「まさかとは思うけど、これで自分の役目は終わった。なんてふざけた事を考えてないでしょうねぇ」ギロッ
時子「この私が、わざわざ下賤な豚の口車に乗ってあげたのよ。新しい世界と言うなら誠心誠意駆けずり回って見せ続けなさい」
時子「この私が、二度と退屈しないように地べたを這い蹲ってでも楽しませなさい」
時子「…ああ、それとさっき「怒っていない」と言ったけれど、それも勘違いするんじゃあないわよ」
グッ
時子「私は一生、絶対に許さないわ」
時子「その足りないオツムじゃあ学習能力にも期待は出来ないでしょうけど、よく覚えておきなさい」
時子「…また、自分1人で逃げ出そうとしたら」
時子「家畜の分際でご主人様の元から逃げ出そうとしたら」
時子「覚悟しなさい」
時子「死んだ方がマシ…なんて生易しい目には合わせてあげないから」
時子「……」
時子「理解できたかしら」
P「時子、俺は…」
時子「理解できたかしら、と聞いたのだけれど」
P「…ああ、覚えとくよ」
時子「フン、少しはスッキリしたわ」
P「時子は怖いなぁ」
時子「アァン?誰の許可を得て吠えてるのかしら」ガシッ
P「んぶぶっ」
時子「クックッ、無様な顔ね」
P(時子が楽しそうで何よりです)
P「…あ、そうだ思い出した」
時子「だから勝手に汚い口を開くんじゃないわよ」
P「いや一言。一言だけでいいから」
時子「却下よ」
P「んな理不尽な。まぁいいや勝手に言ってやる」
時子「黙りなさいな」
P「えっとだな」
時子「聞こえないの?黙りなさい」
P「時子、誕生日おめ………むぐっ!?」
時子「…まだ耳障りな鳴き声を聞かせるつもりかしら」
P「」フルフル
時子「ハッ、最初からそうやって言う通りにしていればいいのよ」
P「」コクコク
時子「クックッ…悪くないわよ、今の間抜け面」
時子「そうね、豚のそんな顔が見られたのだから」
時子「それなりに、つまらなくはない誕生日だったわ」
と、言うわけで時子サマ誕生日SSでした。時子しか出てこなかったりネタ系封印したりと普段とは色々と毛色の違う内容ですな。
時子も意外と書いてて難しい娘ですよね、ブヒれば良いってもんじゃあないし、かと言って時子がブヒったら宇宙の法則が乱れるし…でも書いてて楽しい娘ではあります。
良くこの変人Pと時子の組み合わせが好きだと奇特…もとい有難いコメントを頂いております。まぁ、とりあえず色々とぼかしたままにしておきますけど。
さぁ次はキングオブ普通、島村卯月の誕生日ですな。多分こっちはいつも通りのスチャラカな内容になると思いますけど許してください。
オツカーレ
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