的場梨沙「私のプロデューサーは、ロリコンです」 (13)

私はアイドルをやっています。アイドルには、プロデューサーという大人がついています。
プロデューサーは、アイドルにお仕事を持ってくるのが役目です。

そして、私のプロデューサーはロリコンなのです。ロリコンというのは、年下の女の子をヘンタイな目つきで見る人のことです。本人は違うと言っていますが、私の目はごまかせません。いくら私がセクシーでミリョク的だからといっても、衣装姿を熱っぽい視線で見つめてくるのはどうかと思います。
いつか警察に逮捕されないか心配なので、私はいつも「このヘンタイ! そういう目つきやめなさいよね」と注意してあげています。

ちなみに、プロデューサーは年下の子だけが好きなわけではありません。ちひろさんとか、シュガーハートさん(26才・日本人)が近づくと、なんだか鼻の下が伸びているような気がします。やっぱりヘンタイだと思います。私のパパを見習って、しゃきっと男らしくしていてほしいです。


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そんなロリコンのプロデューサーは、ロリコンなのに私を子ども扱いしてきます。私をほめる時に、頭をなでてくるのです。
大きな手が頭の上にぽんと置かれると、なんだか下に見られている気がしてもやもやします。
そのもやもやを伝えると、プロデューサーはしゃがんで目線を合わせながら頭をなでるようになりました。もやもやしなくなったので、許してあげようと思いました。
最近はなで方が上手になってきたので、ちょっとだけほめてあげようと思います。ニヤニヤしだしたら、また注意してあげるつもりです。

プロデューサーは、かっこいいパパと違って、なんだかへらへらしています。頼りないわけじゃないんだけど、バカっぽい顔をしていることも多いです。

でも、レッスンやお仕事がうまくいかなかったとき、いつもと変わらないバカっぽい顔を見ると、なんとなく安心します。なので、ずっとそういう顔をしていてほしいと思います。

アイドルって、思った以上に大変です。好きなことだけしていればいいわけじゃなくて、しんどいレッスンとか、ビラ配りのお仕事とか、そういう目立たなくて疲れることがたくさんあります。
いくらパパのためとはいっても、我慢できないって思ったことも何度かありました。

でも、そういう時はプロデューサーがいつの間にか隣に座っていて、おしゃべりをしようと言ってきます。私がお仕事やレッスンへの文句を言うと、プロデューサーはうんうんとうなずいてから、このお仕事の意味はこうだ、とか、レッスンの先に何があるか、とかをひとつひとつ説明してくれます。
話を聞いているうちに、私はこの人がちゃんと考えて『私に合った仕事』を持ってきてくれていることを知ります。だから私は、プロデューサーが持ってきたお仕事なら受けてあげようって思えるようになりました。向こうが頑張ってくれているんだから、私も頑張ってあげないとって。

こういうのを、パートナーとか相棒っていうそうです。

お仕事の終わりが遅くなった時とか、たまにプロデューサーが家まで車で送ってくれる時があります。私は助手席に座って、おしゃべりをしたり、音楽を聞いたり、ぼーっと外の景色を見ていたりしています。
ハンドルを握るプロデューサーの手は、私の手よりずっと大きくてごつごつしています。パパとどっちが大きいのかなって、考えたりします。

いつもみんながいてにぎやかな事務所と違って、車の中はふたりきりで、とても静かです。だから、いろいろ考え事をしたりします。

私がトップアイドルになるまで、あと何回この車に乗るんだろう、とか。
私が中学生になって、高校生になって、そして大人になった時も、プロデューサーはロリコンのままなのかな、とか。

最近は、パパとプロデューサーは、どっちも頭文字が同じ「P」だということを知って、それについて考えていました。メアリーというアイドル仲間から教えてもらったことです。
「Papa」と「Producer」。どっちも同じPだけど、違うPでもあります。片方がもう片方になることはできなくて、だけどどちらも大切なものです。私はパパが一番好きだけど、プロデューサーはプロデューサーで、代わりなんていないと思っています。
プロデューサーががんばるから、私もがんばる。私ががんばるから、プロデューサーもがんばる。はじめはパパのためだけにアイドルになったんだけど、今はプロデューサーとか、ファンの人とか、アイドル仲間とか、たくさんの人のためにがんばろうって思うようになりました。理由がたくさんあると、そのぶん大変なことも増えるけど……楽しいことは、もっともっと増えます。

だから、それを教えてくれたプロデューサーには感謝しています。これからも一緒に、トップアイドルへの道を走ってくれると信じています。
だから私は、家に着いて、車を降りる時にいつもこう言います。

「また明日! がんばりましょ!」

………

……



「梨沙。学校で、作文の内容を褒められたそうだね」

「そうなの! パパも読んでくれる? 自分では、なんか書きたいことが多すぎてごちゃごちゃしちゃったなって思ったんだけど」

「プロデューサーさんについて書いたんだろう? それなら当然、書きたいことも多くなるだろうな」

「それ、どういう意味?」

「いや、なんでもないよ。さあ、早速梨沙の作文を読ませてもらおう」

「うん! あ、でもひとつだけ約束して。この内容、ぜーったいプロデューサーには秘密にしてね」

「どうして?」

「どうしても! お願いっ!」

「ははは、わかったわかった。どれどれ、一行目はタイトルか」

「タイトルは、先生が決めたから全員同じなの」

「なるほど」

「ここに書いてあること伝えたら、あいつ絶対キモい顔するに違いないわ……」

「なになに? 『私の尊敬する人』。6年2組、的場梨沙――」



おしまい

おわりです。お付き合いいただきありがとうございます
最近漫画にも登場している的場梨沙ちゃん、非常に魅力的な子なので、ぜひ総選挙で清き一票をいただけるとうれしいです。清くない一票でもうれしいです。

過去作
的場梨沙「アタシがオトナになったら」
的場梨沙「セーラー服を着てみたいのよ」 二宮飛鳥「へえ」

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