モバP「アイドル達が喋れなくなった?」 (75)
晶葉「ああ。アイドルだけに感染する謎のウイルスが蔓延しているようだ」シュコオオ
晶葉「ただ喋れないだけでなく、紙に文字を書いたりメールに文字を打ち込むこともできないようだ」シュコオオ
モバP「謎過ぎるだろ……ていうか、晶葉は感染してないのか?」
晶葉「このウイルスは空気感染するようでな。なんとか自分に感染する前にガスマスクを装着することができた」シュコオオ
P「だからガスマスクを……」
P(新手のファッションかと思った)
P(白衣にマスク……結構いいな。セーラー服に機関銃、みたいな感じで)
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1491712761
晶葉「現在急ピッチでワクチンを開発中だ。恐らく今日明日中には完成するだろう」シュコオオ
P「晶葉ちゃんマジ有能。イエーイめっちゃジーニアス!」ナデナデ
晶葉「ば、ばかっ、乱暴に頭を撫でるなっ」シュコオオオオオオオ
P(ガスマスク姿で照れる晶葉……なんか変な属性に目覚めそう)
P(しかし、こんな状況じゃ、アイドル達とまともにコミニュケーションがとれない……)
P(俺の仕事であり、一番の趣味であるアイドルとのコミニュケーションがとれない)
P(最悪だ。何てことだ。みくにゃんのファンやめます)
P(――普通のプロデューサーならそう思うだろう)
P(だが俺は敏腕プロデューサー)
P(伊達にこの事務所のアイドル全員をプロデュースしてない)
P(言葉によるコミニュケーションが出来ないくらいなんだ)
P(言葉だけがコミニュケーションツールじゃないことを教えてやる)
P「なあそうだろ……晶葉ッ!!!」
晶葉「へ? あ、いや……うん」
晶葉「よ、よく分からんが頑張れ」
幸子「……!」タッタッタ
P「おお幸子か。元気か?」
幸子「……」フフーン
幸子「……!」フフフーン
P(このドヤ顔は……)
幸子「……! ……? ……!!」フンフンフフーン
幸子「…………!!!!!」フフーン!!!
幸子「……?」フフーン?
P「ふむふむ成程」
P「……」
P「学校のテストで全教科の平均点が90点を超えたのか」
P「凄いな幸子!」ナデナデ
幸子「……♪」
美世「……!」
P「おっす美世」
美世「……」グイグイ
P「ん? 何だなんだ?どうした? どこに連れて行くんだ?」
P「駐車場? これお前の車だよな」
美世「……」バタン
美世「……」スチャ
美世「……」カチ
美世「……」
美世『ブオオオオオオオオオオオン』
美世『ブルォオオオオオンン!!! ブオンブオン! ブオオオオオオオオオオオオ!!!』
美世『ブオオブオオオ! ブオオオオオオオオン!』
美世『……ブオン』
美世「……」
P「このエンジン音……なるほど」
P「……」
P「来週の日曜日だな? 分かった、空けとくよ」
美世「……♪」
芳乃「……」ペタペタ
P「お、ヨッシーノ」
芳乃「……!」プクゥ
P「ダメか。いいあだ名だと思うんだけど。ウルフって感じで」
芳乃「……」ジー
P「どうした? 何か伝えたいのか?」
芳乃「……」コクン
芳乃「……」スッ
P「ほら貝か」
芳乃「……」スゥゥゥ
芳乃『ブオオオオオオオオオオオン』
芳乃『ブルォオオオオオンン!!! ブオンブオン! ブオオオオオオオオオオオオ!!!』
芳乃『ブオオブオオオ! ブオオオオオオオオン!』
芳乃『……ブオン』
芳乃「……」
P「……なるほど」
P「アイドル達が喋れないこの状況で、悪しきことを考えてる輩がいる、か」
P「しかもそいつはこの事務所のアイドル」
P「教えてくれてありがとな」ナデナデ
芳乃「……♪」
P「あの後ろ姿は……蘭子か」
蘭子「……!」
蘭子「……」
蘭子「……」モジモジ
P「どうかしたのか?」
蘭子「……」モジモジ
蘭子「……」グッ
蘭子「……」スゥゥ
蘭子「……!」バッ
蘭子「……! ……!」ババッ
蘭子「……、……? ……!」ババッ カサクルン
蘭子「……!!!」キッ
蘭子「……ッ!」ビシッ
P「なるほど……」
蘭子「……」ドキドキ
P「時は来たれり!(遂に今日ですね!)」
P「永劫の時を経て、降臨するは約束の日!(約束したこの日が来るのずっと待ってました!)」
P「今宵の供物は何か!(今日の夜はどこに連れて行ってくれるんですか?)」
P「生贄の集合体を望む!(ハンバーグ? ハンバーグですか!)」
P「すっごい楽しみです!(すっごい楽しみです!)」ビシッ
P「こんな感じか?」
蘭子「……!」パチパチパチ
P「ははは、俺も楽しみにしてるよ」
蘭子「……♪」
杏「……」アシパタパタ
杏「……」グデーン
P「おい杏。いつまでゴロゴロしてんだよ。そろそろレッスンの時間だろ」
杏「……?」
杏「……」ニヤニヤ
P「その顔は……」
P「『あー、そういえばそうだった。もうすぐでボイスレッスンの時間だった―』」
P「『でもどーしよー。杏ってば今日喋れないしなー、これじゃレッスンいけないなー』」
P「『残念だなー。今日杏ってばすっごいやる気満々なのになー。もう3時間ぶっ通しでレッスンできるくらいなのになー』」
P「『でも喋れないからしょうがない。こうなったらダラダラするしかないよねー、いやだなー。はー、困った困った』」
P「こう思ってる顔だな!?」
杏「……」ニコッ
杏「……」ニヤニヤ
P「確かに杏の言う通りだ……こんな状況でボイストレーニングなんて出来ない」
杏「……♪」ニシシ
P「仕方ない。今日はゆっくりだらだらしとけ――とでも言うと思ったか?」
杏「……!?」
P「こんな事もあると思って、ボイスレッスンとダンスレッスンを入れ替えておいたぞ」
杏「……っ」ガバッ
杏「……ッ!」ダダダッ
P「エスケープなどさせるものか」
P「ヘーイ!」パチン
ガチャ
きらり「……」ヌッ
きらり「…………」ニコニコ
きらり「…………」ニコニコニコ
杏「……!!!」
きらり「……」ニコニコニコニコ
P「頼むきらり。杏をレッスン室まで」
きらり「……♪」ビシッ
きらり「……」ガバッ
杏「……! ……!」ジタバタ
きらり「……♪」フリフリ
ガチャ
P「これで万事OKだわ」
P「しかし……」
P(無言のきらりは何かこう……圧が凄いな)
亜季「……!」ケイレイッ
P「お、亜季」
亜季「……」シー
P(何だ? 静かに?)
亜季「……!」バッ ババッ
P(ハンドシグナルか。よし)
亜季「……! ……! ……!!」ババッ シュババッ
P「……」サッ ササッ
亜季「……!」バッ サッ サササッ
P「……?」スッ
亜季「…………!」サッ
P「……!?」シュババッ
亜季「……」コクン
P「……」グッ
亜季「……♪」ケイレイッ
亜季「……」スタタタタッ
P「なるほど……」
P「声が出せないこの状況をいい事に、アイドル達の胸を揉みまくっている不埒な輩がいると」
P「亜季は現在、そいつを追跡していると」
P「一体誰なんだその犯人は……」
楓「~~♪」ゴクゴク
P「ちょっと楓さん! 何昼間っから酒飲んでるんですか! つーかこの間の健康診断で控えるように言われたでしょうが!」
楓「……」プクー
楓「……」
楓「……!」ピコーン
P「え、何ですか?」
楓「……」コトン
P「酒瓶を床に置いて?」
楓「……」スタスタ
P「離れる」
楓「……」スタスタ
P「で、床に置いた酒瓶に向かって歩く」
楓「……」スタスタ
コトン
P「酒瓶にぶつかって、酒瓶が倒れる」
楓「……♪」ドヤァ
P「は?」
P「お酒にぶつかって? 意味が……」
楓「……」ニコニコ
P「……」
P「お酒にぶつかる……避けられない……」
P「おさけはさけられない?」
楓「……♪」パチパチパチ
P「あー、なるほどなるほど。楓さんは面白いなー」
楓「……」テヘヘ
P「はい没収」バッ
楓「……!?」
友紀「……」ポンポン
P「お、友紀。どうした?」
友紀「……」スッ
P「キャッチャーミット? 俺に構えろって?」
友紀「……」コクコク
P「よく分からんが……任せろ」バッ
友紀「……っ」ニコッ
友紀「……」ザザッ
P(ボールを持った友紀がマウンドに上がった)
P(ちなみにここは事務所の中だ。アイドルのあらゆるニーズにこたえる為に、この事務所には色々な用途の部屋がある。この部屋もその一環だ)
友紀「……」
P「……」サインスッ
友紀「……」ブンブン
P(こっちか?)スッ
友紀「…………」ブンブン
P(ということは……ここか)スッ
友紀「……」コクン
P「よし来い!」
友紀「……!」サッ
友紀「……ッ!」シュッ
パシーン
P「ナイスボール!」
P「なるほど……今のボールで友紀が何が言いたいか分かった」
P「来週の月曜日、キャッツの試合観戦に一緒に行って、そのあと焼き鳥が美味しい居酒屋に行きたい……か」
P「そのあと、俺の部屋で飲み直したい」
P「……」
友紀「……」ドキドキ
P「……」
P「アウト!」ビシッ
友紀「……!?」ガクリ
P「俺の部屋で飲むのはダメ。それ以外はいいぞ」
友紀「……!」パァァ
友紀「……♪」ニコッ
雪美「……」トテトテ
P「よっす雪美」
雪美「……」ジー
P「どうかしたか?」
雪美「……」ジー
雪美「……」ジー
P「……」
雪美「……」ジー
P「……」
雪美「……」ジー
P「……膝に乗りたいのか?」
雪美「……」コクン
P「ああ、いいとも。ほらおいで」ポンポン
雪美「……♪」ピョン
P「雪美は本当に膝が好きだなぁ」
雪美「……」スリスリ
P「雪美はもともと無口だから、こんな状況になってもコミニュケーションに問題ないな」
雪美「……♪」
ペロ「……」ジー
P「ん? どうしたペロ?」
ペロ「……」
P「……もしかして、お前も喋れない、つーか鳴けないのか?」
ペロ「……」コクン
P「そうなのか……。まあ、ペロも事務所のアイドルみたいなもんだしな」
P「しかし流石に猫の言いたいことなんて……」
ペロ「……」ジー
ペロ「……」ジー
P「うーん」
P「もしかしてだけどペロ……」
P「にゃにゃにゃー、にゃーん、にゃーにゃー?」
雪美「……!?」
P「まーおまーお! ふにゃにゃにゃ! フシッ! シッ! シャッ!」
P「……にゃにゃ、ごろーにゃーごろ?」
P「って感じのことを言いたいのか?」
ペロ「……」コクコク
P「お、合ってたか」
雪美「……!?」
P「了解。次の雪美のライブに導入できるか演出家と話しとくよ。うん、ペロの読み通りなら、すごい盛り上がるはずだ」
ペロ「……♪」コクン
雪美「……!? ……!?」
P「ペロは賢いなぁ」ナデナデ
ペロ「……♪」スリスリ
夏樹「……!」タッタッタ
P「おう夏樹。何か用か?」
夏樹「……」スッ
P「ギター? ここで演奏するのか?」
夏樹「……!」ギュイイイイン
夏樹「……! ……!」ギュオオオオン
夏樹「……ッ!」ギュオオオオン
夏樹「……ッ!!!」ジャジャン
夏樹「……」フゥ
P「なるほど……言いたいことが音楽にしっかり乗って伝わってきた」
P「オッケー分かった。かなり挑戦的な演出だけど……うん、面白い」
P「でもかなり難しいぞ? 少しでもミスったらライブも大失敗だ」
夏樹「……」ニヤリ
P「その方が燃えるって顔だな。オッケーそれで行こう」
P「失敗したときのフォローは俺に任せろ。夏樹は好きなように弾いてくれ。お前らしく、な」
夏樹「……♪」ギュオオオン
李衣菜「~~♪」ニコニコ
P「どうした李衣菜。何か俺に用か?」
李衣菜「……」スッ
P「ギターを……なるほど、お前も音楽に乗せて伝えるのか」
P「よし、来い」
李衣菜「……」ニヤリ
李衣菜「……!」ギュイイイイン
李衣菜「……! ……!」ギュオオオオン
李衣菜「……ッ!」ギュオオオオン
李衣菜「……ッ!!!」ジャジャン
李衣菜「……」フゥ
李衣菜「……♪」ドヤァ
P「ほー……なるほどなるほど。次のライブでそんな演出を……」
李衣菜「……ッ」コクコク
P「いやぁ、何つーか……滅茶苦茶ロックだ」
李衣菜「……!」パアア
P「正直かなりリスクは高いが……ロックの前にはリスクなんてかなぐり捨てるべきだよな」
P「命短し燃やせよロック。昔の人はいい事言ったもんだ」
李衣菜「……?」
李衣菜「……」コ、コクン
P「オッケー任せろ。お前が考えたロック、俺が実現してやる」
李衣菜「……!」ギュッ
P「ははは、嬉しいか」ナデナデ
P「よし、さっさと準備に取り掛からないとな!」
P「まずは小型飛行機をチャーターしないと」
李衣菜「……?」
P「高度8000メートルからの空中落下生演奏ライブ……ほんと、ロックだよお前ってヤツは」
李衣菜「……!?」ギョギョッ
李衣菜「……! ……!」ギュオン‼ ギュオオオン‼
P「なに!? パラシュートは使わない!? お、お前……マジか……」ワナワナ
李衣菜「……ッ!!!」ギャイイイイイン
P「みくと2人でならどんな無茶だって出来る? そうか……お前ら本当ロックだよ。阿吽だ、ロック界の阿吽。アイドル界に吹き抜ける阿吽(ロック)旋風……」
P「俺は今、伝説の始まりを目にしてるのかもしれないな……」
李衣菜「……!」ブルブルブル
春菜「……!」プンスコ
P「どうした春菜。何か怒ってるみたいだけど、何かあったのか?」
春菜「……」コクコク
春菜「……」バッ
春菜「……!」バタバタ
春菜「……!!」ジダンダ
春菜「……ッ!」キリッ
P「す、すまん。何が言いたいのかサッパリ分からん」
春菜「……」ムゥー
春菜「……!」ピコーン
春菜「……」スッ
P「え、眼鏡? これがどうした? 着ければいいのか?」
P「何で眼鏡を……ま、まあいいけど」スッ
P「……!?」
キュイイイイン
P「な、なんだ!? 眼鏡が急に光って……!? 何の光ィ!?」
春菜「……!!!」キュイイイン
P「春菜の眼鏡も!? こ、これは……眼鏡同士の共振とでもいうのか!?」
キュイイイイイン
P「これは……眼鏡を通して……春菜の想いが伝わってくる……」
キュイイイイイン
P「そうか……なるほど」
P「トイレから出て手を洗っている時に、突然誰かに胸を揉まれたのか」
春菜「……」コクコク
P「だからあんなに怒ってたのか。顔とかは見てないのか?」
春菜「……」フルフル
P「見てない、か。その代わり髪型は見えた、と。なるほど……お団子が2つ」
P「服も少女趣味の可愛らしいものだった、と」
春菜「……」コクコク
P「オッケーありがとう。参考になったよ。任せておけ、下手人は俺が何とかする」
P「しかし凄いな眼鏡って。こんな風に想いを伝える事も出来るなんて」
春菜「……!」ニコニコ
P「え、何だって? ……眼鏡は口ほどに物を言う?」
春菜「……」ドヤァ
P「お前、それが言いたかっただけじゃないのか?」
P「しかしアイドルが喋れなくなるこの状況で、胸を揉んで回るなんて恐ろしいヤツだな」
P「捕まえたら酷い目に合わせてやる」
P「具体的には思いつかないけど……一生忘れられないような恐ろしい罰を与えてやる」
スン……スンスン……
P「何だ? 泣き声……つーか、鼻を啜る音?」
P「事務室の方からか」
ガチャン
P「一体どこから……」
スンスン……
P「俺の机の下……ということは」
乃々「……」スンスン
P「やっぱり乃々か。どうした?」
乃々「……!? ……!」ガバッ
P「おっとっと」ギュッ
P「どうした乃々? 何があったんだ? レッスンでミスったか?」
乃々「……」フルフル
P「うーん。よし、こっち見ろ乃々」
乃々「……?」
P「今まで何百回も乃々の困り顔を見たからな、顔を見れば何があったか分かる」ジー
乃々「……」モジモジ
P「……」ジー
乃々「……」カァァァ
P「……なるほど」
P「いつも通り事務所に来て、俺の机の下でくつろいでたら、いきなり誰かが入って来て胸を触られた、と」
乃々「……」コクコク
P「しかも、机の裏側に張り付けて隠してあったポエムノートが見つかって、それを目の前で朗読されながら……だと」
P「お、恐ろしい……何て恐ろしいことを……悪魔かよ」
乃々「……」グスン
P「よしよし、もう大丈夫だぞ」ナデナデ
P「その誰かなんだが、何かこう……特徴とか無かったか?」
乃々「……」フルフル
P「胸を触られたショックで目の前が真っ暗になった、かー」
乃々「……」ピコーン
P「ん? 笑い声? ……うひひ?」
乃々「……」コクコク
P「……それ、輝子じゃないか?」
ガタン
輝子「……」モソモソ
P「居たのか輝子」
輝子「……」ブンブン
P「笑い声は自分じゃない? そうか……」
P「つーかお前は大丈夫だったのか?」
輝子「……」ブンブン
P「ということは輝子も犯人に……」
輝子「…………」ブンブン
P「え? どっちなんだよ?」
輝子「……」ゴソゴソ
輝子「……」スッ
P「ご立派な椎茸が2本生えた鉢植えがどうした」
輝子「……」ピタッ
P「椎茸に額を当てて……え? 俺も?」
P「……」ピタッ
P(うわぁ……凄くヒンヤリしてる)
P「で?」
P「これに何の意味が……ん? な、なんだ頭の中に何かが……!」
キノコオオオオオン‼
P「キノコを通して輝子の言葉が伝わってくる……!」
P(そうか……そうだったのか)
P(乃々を襲った犯人は恐るべき嗅覚で、隠れていた輝子を捕捉した)
P(そのまま輝子は襲われる……その瞬間、この椎茸を盾にした)
P(ご立派な椎茸を揉む犯人)
P(暫く揉んで満足した犯人は立ち去った、か)
P「よかったな輝子。親友が身を挺して守ってくれたんだな」
輝子「……♪」フヒヒ
P「そろそろ腹が減ったな……」
ドドドドド
P「ん? 何の音だ?」
ドドドドドド
P「近くで工事でもしてんのか? また晶葉がウサちゃんを使って研究室の拡張でも…って、今ワクチン作るのでそれどころじゃないか。それにこの間、拡張しすぎて常務の部屋まで貫通して滅茶苦茶怒られてたしな、流石に自重してるだろ」
ドドドドドドドド
P「しかし、この音……徐々に近づいてきてるような」
ドドドドドドドドドドド
P「あの曲がり角の向こうか? こっちに向かって音が……」
茜「……」ドドドドドドドドドッ
P「な!? 茜!?」
茜「……!」パアア
茜「……! ……!!」ブンブンブン
茜「……ッ!!!」ドドドドドドドドッ
P(この音、茜のランニング音だったのか!)
茜「……ッ!!!!!」ドドドドドドドドドッ
P(こ、こっちに来る……!)
P(不味い……このパターンは……!?)
茜「……ッッ」ギュムッ
P(地面を踏みしめた……! アレが来る……!)
P(これは間違いない――タックルの態勢!)
茜「……ッ!!!」フッ
茜「……ッッッ!!!!」ドワォ‼
P(タックルが来たッ!!!)
P「くっ!」
P(この距離は不味い! 近すぎる!)
P(普段だったらタックル前にバカみたいに元気な掛け声で突っ込んで来るのに、今日に限って……!)
P(俺の準備が出来てない! 心も体も! こんな状態で茜のタックルを受けたら……! アバラの何本かは持ってかれるぞ……!)
茜「……ッ♪」ゴォォォォォ‼
P(強……! 速…避……無理! 可哀そう! 受け止める…無事で!? 出来る!? 否 死)
P(直撃の瞬間にバックステップで衝撃を逃がす……いや)
P(退けば老いる、臆せば死ぬ!)
P(いつだってアイドル達とは真正面からぶつかってきた。それが俺のプロデュースだ!)
P(ここは正面から……受け止めるッッ!!)
P(アバラの2、3本くらいくれてやるッッ!!!)
P「来い茜ッ!」ザッ
茜「……ッッッ!!!!!」ズトォォォォ゙ンッッッ‼
P「カハッ!? ぬうう!」ズンッ‼ ズサァッ‼
P「おおおおお!!!!」ズザザザザ
P「ぐうううううう!!!!!」ズザザザザ
P「むーりぃぃぃぃぃ!!!!!!」ズザザザザザ
P「が、頑張りまあああああす!!!!!!」ズザザザ ザザザ ザザ
P「んああああああああああああ!!!!!!!」ザザザザ ザザザ ザザ
ザザザザ……ピタァ
P「……はぁはぁ。と、止まった……」
茜「……♪」ギュッ
P「あ、茜、きょ、今日も元気だな……はぁはぁ」
茜「……ッッ!!!!!」ビシッ
茜「~~~~~~ッ♪」ニコッ
P「そ、そうだな、お疲れ様」
茜「……!」ポン
茜「……」ゴソゴソ
茜「……」スッ
P「ん? おにぎり?」
茜「……!!」コクコク
茜「…………ッッッ!!!!」バッ シュバッ
茜「……ッ! ……ッッ!!」グッ ビシッ
P「なるほど。朝からおにぎり握ってたら楽しくなって作り過ぎてしまった。せっかくだから俺にも食べてもらいたくて持ってきてくれた、と」
茜「……ッ!!!!????」
P「いや、エスパーじゃないから。ほら、茜は顔に出やすいから、顔見てるだけで何が言いたいか分かるんだよ」
茜「……?」パチクリ
P「ああ、本当だ。今だって茜が何考えてるか、リアルタイムで伝わって来てるぞ」
茜「……♪」エヘヘ
茜「……」
茜「……?」クビカシゲ
茜「……ッッッ!!???」バッ
P「なぜ急に顔を隠すんだ?」
茜「…………ッッッ!!!!!!」ブンブンブン
P「だ、大丈夫か? 尋常じゃないくらい顔赤いぞ?」
茜「ッ! ……ッッ!!」ブンブンブン
茜「……ッッッッ!!!!!!!!!」バッ ドドドドドドッ‼
P「あ、おい茜! 行ってしまった……」
P「しかし相変わらず元気が全力疾走してるみたいなヤツだなぁ」
P「一切喋ってないはずなのに、何か耳がキーンとするぞ」
ちひろ「ふんふんふふーん」カタカタ
P「あ、お疲れ様です。ちひろさん」
ちひろ「あ、プロデューサーさん? お疲れ様です♪」
ちひろ「何だか今日は事務所の中が静かですねー」
P「あはは、確かに」
ちひろ「喋れなくなるウイルス? でしたっけ?」
P「そうそう。アイドルだけに……って、あれ? 何でちひろさんは喋れるんですか?」
ちひろ「はい? 何でって……何言ってるんですかプロデューサーさん。私はアイドルじゃないですよ」クスクス
P「でもちひろさん可愛いし、事務所のアイドル的存在じゃないですか」
ちひろ「も、もー! ま、またそうやって真顔でお世辞言っちゃうんですから!」アセアセ
P「いや、別にお世辞とかではなく。前から思ってたんですけど、やっぱりちひろさんもデビューしませんか? ほら、去年みたいにお遊びじゃなくて、本格的に。俺あの時、舞台で歌って踊るちひろさんを見て、他のアイドルと同じ……こう、輝きみたいなもんを感じたんですよ」
ちひろ「い、いえいえ! 私は裏方で十分ですから! も、もうっ、何ですかプロデューサーさん! 私を持ち上げても何も出ないですよ? そういうのはアイドルの子達に言ってあげてください」カァァ
P「そうですか……残念。ちひろさん、声も凄い綺麗だし、一気に人気アイドルになれると思うんですけど」
ちひろ「だ、だから褒め過ぎですってば……」モジモジ
ちひろ「……うう、もう」
ちひろ「これあげますから、お仕事(アイドルの勧誘)でもしてきて下さい!」ペラ
P「あ、どうも」
P(スカウトチケットを手に入れたぞ)
ちひろ「……」
ちひろ「……ふふっ」ニヤニヤ
奏「……」チョイチョイ
P「お、どうした奏。こっちに来いって?」
奏「……」チョイチョイ
P「もっと近く?」
奏「……」チョイチョイ
P「ち、近くないか? で、何か用か?」
奏「……」スッ
P「屈めって? ……よいしょ」スッ
奏「……」スッ
P「今度は目を瞑れって? これでいいか」スッ
奏「……」
P「それで次は何をすればいいんだ?」
奏「……♪」クスッ
奏「……」
奏「……」ンー
奏「……」ンンー
P「……何を、しようと、している?」パチッ
奏「……」ンンンー
P「おまっ、やめろ! 構わずキスしようとするのやめ!」ササッ
奏「……」チッ
奏「……」ムゥー
P「何むくれてんだよ。え? 喋れないから、キスで言いたいことを伝えようとした?」
奏「……」コクコク
奏「……」ンンー
P「だからやめい!」
P「そもそも、付き合いの長い奏の言いたいことくらい、キスなんてしなくても目を見れば分かるわ!」
奏「……」フム
奏「……」ニヤ
奏「……」スッ
P(こいつ……目を閉じやがった……)
P(流石にこれじゃ、何も分からんぞ)
奏「……」ンー
P「はぁ……仕方ない」
奏「……♪」ンンー
奏「……」ンンー
奏「……」ンンー
奏「……?」ンンー?
奏「……」パチリ
奏「……?」キロキョロ
奏「……」
奏「……」
奏「……」ジトー
P「お、裕子」
裕子「……♪」ニコニコ
P「喋れないと大変だろ。何か困ってることないか? ん? 何か言いたそうだな」
裕子「……」コクコク
P「そうか。しかしどうしたもんか。何か伝える手段は……」
裕子「……」フッフッフ
P「何だその不敵な笑みは。……任せろって?」
裕子「……!」スッ
P「スプーンなんて取り出して何を……お前、まさか」
裕子「……」ニヤリ
裕子「……っ!」グググ
裕子「……っっ!!!」ムムム
P「テレパシーで伝える気か!?」
P「いや、でもテレパシーなんてそうそう上手くいくはず……」
裕子「……ッッッ!!!!」ムムムッ‼
『ザザ……ザザザ……』
P「っ」
P(何だ……あ、頭に何かノイズが……)
『ザザ……ザザ、ザザザ……む……』
P(これって……テレパシーか!?)
P(裕子の心の声が伝わって来てるのか!?)
裕子「……ッッ!!」ムムッ‼
P(一体何だ、何を伝えたいんだ裕子!)
裕子「……ッ」
裕子「……ッ!!!!」カッ
『むむっ、むむむむ! むむむむーん! むむぅっ、むむむむ~むむっ!!』
裕子「……」フゥ
裕子「……?」
P「いや、確かに伝わってきたけど……何かこう思ってたのと……」
裕子「……っ! ……♪」ピョンピョン
P「うん、まあ……上手くいってよかったな」
タッタッタッタッタ
P「誰か走ってくるな。あれは……早苗さんか」
早苗「……!」
P「何か怖い顔してるけど……嫌な予感が」
早苗「……っ!」ダッ
P(飛んだ!)
早苗「……っ」ガシ
P(そのまま俺の右腕を掴んで……)
早苗「……ッ!!」ミシィ
P「いってええ!?」
P(こ、これは飛びつき腕十字固め!)
早苗「……! ……ッ!」グイ グイ
P「いたたた! 痛いって早苗さん! 右腕が! 右腕がオシャカになる!」
P(な、何だかよく分からんが、このままじゃ不味い)
P(くそ、どうすれば……)
P(そうだ! 集中するんだ。この十字固めに籠った感情を読み取るんだ!)
早苗「っ! っ!」ミシミシ
P「ぐぅ……!」
P「……っ」
P(そうか、分かったぞ!)
P(さっきまで早苗さんは楓さんと一緒に昼間っから事務所で酒を飲んでいた)
P(いい感じに酔っぱらってウトウトしてたところ、突然誰かが背後から忍び寄って来て、思い切り胸を揉まれた)
P(酔いの為、反応が遅れてしまい犯人を確かめることができず、慌てて追いかけてきた)
P(すると犯人が逃げた先に俺がいたので、思わず飛び掛かって腕十字を極めた、と)
P「違います早苗さん! 犯人は俺じゃないです!」
早苗「……ッ!」メキキ
P「いや、言い逃れとじゃなく……ギブ! マジでギブ! 折れる! 折れちゃうからぁ!」パンパン
パンパン……ムニュン
早苗「……!?」
P「あ、いや、今のは違います! タップ! タップでたまたま胸に手が当たってだけですから!」
早苗「……」
P(あ、ダメだ。折られる。利き腕が使えなくなったら不便そうだなぁ。飯とか風呂とか。まゆ辺りは喜んで世話してくれそうだけど)
早苗「……」
P「……あ、あれ?」
早苗「……」スッ
P「え、腕十字を外して……早苗さん?」
早苗「……」ペコ
P「いや、そんな急に謝られても……一体何がなんだか」
早苗「……」
P「え? さっきの胸の揉み方が? 犯人のそれとは違った?」
早苗「……」ウンウン
P「俺のは童貞臭い揉み方だったけど、犯人はその道を究めた熟練者のそれだった。……って、ど、ど童貞ちゃうわ!」
早苗「……」ペコペコ
早苗「……」スッ
P「誤認逮捕のお詫びに好きなだけ揉んでいい? い、いや大丈夫です」
早苗「……?」
P「もう腕十字の時点で十分堪能……いや、とにかく大丈夫です」
P「あ。その犯人なんですけど、他のアイドルも被害に合っていて」
早苗「……!?」
早苗「……ッ!!」グッ
P(あ、早苗さんの正義感に火が吐いた)
早苗「……!!!」タッタッタ
P「行ってしまった。しかし、早苗さんが動いた以上、犯人も直に捕まる、か」
P「あんまり無茶しないように、俺もついていこう」
P「しかし、関節技でもコミニュケーションってとれるんだなぁ。肉体言語ってマジであったんだ……」
P「何だあの扉の前。人が集まってるけど」
P「おーい、どうしたー……ってうお!?」
あい「……」
のあ「……」
清良「……」
クラリス「……」
早苗「……」
時子「……」
拓海「……」
P「え? 何この面子? 一体何が始まるんです?」
亜季「……!」ビシィ
P「あ、亜季か。これは一体……」
亜季「……! ……!」スッ サッ シュッ
亜季「……ッ!」グッ ササッ
P「なるほど……」
P(例の犯人の被害にあったアイドル達が、協力して犯人をこの扉……倉庫の中に追い詰めたのか)
P(つーかこの犯人、節操無さすぎだろ)
あい「……」
のあ「……」
清良「……」
クラリス「……」
早苗「……」
時子「……」
拓海「……」
P(オイオイオイ、死ぬわ犯人)
P(今にも突入して血祭にあげそうな雰囲気だわ)
P「あー皆さん。先に俺が入らせてもらっていいでしょうか?」
時子「……?」アァン?
P「いや、流石にやり過ぎて漏れなく前科が付きそうなので……」
クラリス「……」ニコニコ
P「というのは冗談で、えっと……ほら、追い詰められた犯人が何するか分からないし。みんなにケガとかさせるわけにはいかないし」
拓海「…………」ポリポリ
あい「……」コクン
P(よし)
P「ところで、犯人の顔見た人いる?」
のあ「……」コクリ
P「のあさん見たんですね。誰でした?」
のあ「……」ブンブン
P「見たことない、と。本当に? 見覚えのあるアイドルとかじゃありませんでした?」
のあ「……」ブンブン
清良「……?」
P「ですよねー。この事務所にアイドルの胸を揉み歩くようなヤツいませんよねぇ」
P「……」
P(でも芳乃は確かに、この事務所のアイドルだって言ったよな)
P(どういうことだ?)
☆倉庫☆
ガチャ
P「……」
P(さて、この中にアイドル達の胸を揉み歩いた犯人がいるはずなんだけど……)
ガタッ
P「そこに誰かいるのか!?」
ガタッ
?「ひぃっ!? ご、ごめんなさいごめんなさい!」ガタガタ
?「ゴ、ゴム手袋は! ゴム手袋だけは勘弁して! 何でもするからぁ!」ガタガタ
P「……」
P(部屋の隅で震える少女)
P(こいつが犯人なのか)
P「お前は……」
P「誰だ?」
?「へ? あれ? 鬼の形相で追いかけてきた女の人達じゃない……」
?「あ、あなたは?」
P「俺はこの事務所で働いてるプロデューサーだ」
P「で、お前は誰だ? この事務所のアイドルじゃないよな?」
P(お団子ヘアーに可愛らしい服。目撃証言と一緒だ。しかし、こんな子をウチの事務所で見かけたことはない)
?「あ、あたしは……ただの登山家だよ。名乗るほどの名はないよ」スッ
P「は? と、とにかく……お前がアイドル達の胸を揉みまくった犯人でいいんだな?」
?「違うよ! あたしがやったのは登山! 女の子のやーらかいお山を登っただけ! そこを勘違いしないでほしいね!」
P(何を言っているんだこいつは……)
P「……まあいい。地下の調教室送りにする前に聞いておくけど……何でこんな事をしたんだ?」
?「調教室!? 警察に突き出すとかじゃなくて!? あたし何されんの!?」ガタガタガタ
P「それ相応のことをされる、とだけ言っておこう。お前は手を出しちゃいけない人たちに手を出してしまったんだ」
?「うぅ……か、覚悟してたとはいえ、怖いよぉ……」ビクビク
P「いいからこんな事をした理由を話してみろ。理由によっては、命だけは助かる可能性もないとは言えなくもないような気がする」
?「うわぁ……あたしの命の行方、あやふや過ぎ……」
P(そして少女は語り始めた)
P(今回こんなことを仕出かしたその理由を。そして――己のサガを)
?「あたしね。物心ついた時から、女の子のやーらかい部分……お山に人並ならぬ興味があったの」
?「3大欲求ってあるでしょ? 食欲、睡眠欲、せ……性欲。……あたしにはね、それらと同じくらい、お山への興味があったの」
?「そんなあたしが身近なお山に登り始めるのは、そう遅くはなかった」
?「最初は家族、そしてクラスメイト、先生、他のクラスの生徒、上級生下級生。その次はいつも回覧板を持って来るおばちゃん、駄菓子屋のお祖母ちゃん、隣に住んでるラクロス好きな美人大学生、近所の古本屋さんにいる無口なおねーさん、メイド喫茶のメイドさん……そういえば、あのメイドさん最近見ないかも」
?「とにかく!」
?「身の回りにあるお山にとにかく登った。登って登って登りつくした」
?「素晴らしかったよ。これほどに楽しいことはなかった。あたしが生きる意味はここにあるんだって、お山を登っている時にヒシヒシ感じるんだ」
?「それでね。ある日……元アイドルのお山に登る機会があったんだ。すんごい声の大きい娘さんがいる昔アイドルやってた美人ママ」
?「もうね、すごかった。お山に貴賤はない、それは分かってるけど……それでもあたしにとって衝撃的だった。今までのお山が霞んじゃうくらい、センセーショナルな体験だった」
?「アイドルという偶像を汚す背徳感か、神聖な物に触れる高揚感か、それは分からないけど……とにかくもんのすごかった!」
?「それで思ったの。……現役のアイドルなら、もっとすごいんじゃないかって」
?「そう思ってしまったら、あたしは本能のままに動くしかなかった」
?「なけなしのお小遣いをはたいて、この事務所に辿り着いて」
P「それで犯行に及んだのか」
?「うん。あたしもね、1人や2人、多くても3人くらい登れれば御の字かなぁって思ってたんだけど」
?「誰も悲鳴あげたり、助けを呼んだりしないの。不思議なことに」
?「で、これは神様がくれたチャンスだと思った。後は本能に任せた登って登って登りまくった」
?「うひひっ、思い出すだけでも顔がニヤケちゃうよ……」
?「大きいお山、小さいお山、引き締まったお山にちょっとだらしないお山。素直に慣れないお山やこっちに身を預けて来るデレデレなお山。神秘的なお山、宇宙を感じるお山、何か椎茸みたいなお山、登ってるだけで頑張りたくなる気持ちがわいてくるお山、適当なお山……いっぱいいーっぱい、おもちゃ箱みたいをひっくり返したみたいに色んなお山があって、あたしここに来て本当によかった」
?「もうね、悔いはないよ。アイドルの山という山を登りつくしたあたしに、一切の悔いはない!」
?「我が登山人生に一片の悔いなしッ!」グッ
?「登ったさ……お腹いっぱいだよ……うひひ」
P「それは……素直に投降するってことでいいんだな?」
?「……うん。話してスッキリしたよ。覚悟はできてる」
?「あたしはね、禁断の果実に触れたの」
?「本来なら決して触れてはいけない、アイドルという偶像に」
?「エデンのリンゴを食べたアダムとイブは楽園を追い出された……あたしも、それ相応の罰を受けなきゃいけないよね」
?「……」
?「で、でも……あのナース服着た人だけには引き渡さないで! よ、よく分からないけど、あの人だけは何か本能的に怖い!」ガタガタガタ
P(ふむ)
P「どんな罰でも受ける……何でもするって言ったよな?」
?「う、うん」
P「だったらさ。君……アイドルやってみないか?」
?「……」
?「……」
?「……へ?」
?「ん。今あたしにアイドルがどうとか、聞こえたような……」
P「その通りだよ。アイドル、やってみないか? アレだ、いわゆるスカウトってやつだ」
?「はぁぁぁ!? な、何で!? この流れでアイドル!?」
P「何でもするんだろ?」
?「で、でもアイドルとか……あたしがなれるはずないじゃん!」
P「いや、なれる。輝きを持つ女の子なら、誰でもアイドルになれる」
P「おっぱい……いや、お山か。お山について語る君からは、確かに輝きを感じた」
P「他のアイドル達と同じくらい、いや……それ以上の輝きを」
?「いや、確かにお山に関しては誰にも負けない自負はあるけど……」
P「それに容姿もかなり高レベルだしな」
?「ふぇ!?」
P「可愛いってことだよ」
?「いや、い、意味は……分かるけど……」ゴニュゴニョ
P(あまり手ごたえがないな……そうだ)
P「もう満足した、登りつくしたって言ったよな」
?「え? う、うん」
P「今日何人の山に登った?」
?「聞きたい? さっきまでの時点では人」
P(即答かよ)
P「そうか。だがこの事務所には……150人以上のアイドルがいる」
?「え!?」
P「ちなみにその人数に対してプロデューサーは俺1人だけど……それはまあいい」
P「まだまだお前が登っていないアイドルの山はあるわけだ」
P「言っておくけど、お前が今日登った以上にデカい、それもお前が想像している以上のお山を持つアイドルもいるぞ」
?「嘘ぉ!? あの子猫を可愛がってる隙に奇襲をしたヤンキーみたいなお姉ちゃん以上の!?」
P「ああ、アレ以上がいる。他にも触ってるだけで幸運になるお山や、世界レベルのお山、カリスマ山、社長山、サンタ山……まだまだたくさんあるぞ」
?「しゅ、しゅごい……聞いてるだけで胸が高鳴ってくるよぉ……」ギュッ
訂正です。
?「聞きたい? さっきまでの時点では人」
⇒?「聞きたい? さっきまでの時点では23人」
?「ほわぁ……」
?「……はっ」
?「……」
?「ね、ねぇ、あたしって本当に、その……可愛いの?」
P「ああ俺が保証する。容姿でいえば、俺が見てきた中でも中でもかなりのレベルだ。服のセンスもいいしな」
?「……じゃ、じゃあ……やる」
?「あたし、アイドルやるよ!」
P「おお!」
?「あ、でも……扉の外の人達が……」
P「一緒に謝るよ。それに同じアイドル、仲間なら……きっと許してくれるさ」
P「もし、許してくれなかったら……うん、まあ、お、俺も半分罰を受ける」ガタガタガタ
?「そこほんとヨロシク」ガタガガタ
?「……あ゛!?」
P「まだ何かあんの?」
?「う、うん。あのね、アイドル以外にも……物凄くえらそうな女の人のお山も登っちゃったんだけど……」
P「もしかして……すごいキツそうなオーラの女の人?」
?「う、うん。物凄く怒られて『貴様の存在を白紙にしてやるッ!』みたいな事言われたんだけど……」
P「お前、マジで節操無さ過ぎ」
P(う、うーん、不味いな。流石にあの人の印象が悪いと……)
P「……」
P「あ」
P「これ使えばいいじゃん」スッ
?「なにそれ?」
P「スカウトチケット。これ使えば、常務だって拒否はできないだろう」
?「と、いうことは……」
P「ああ。お前は問題なくアイドルになれる」
?「やった! えへへ! よろしくね!」
P「ん。そういえば、名前を聞いてなかったな」
?「あ、そうだったね。あたしの名前は……」
?「……クシュン!」
P「どうした風邪か?」
?「う、うん。そうかも。えっと、あたしの名前はね、棟方……ヒクッ、あつ……むなかた、あつ……ヘクシュッ!」
P「お、おい」
?「…………!?」パクパク
?「……! ……!!」キョロキョロ
P「一体何が……って、ああ! もしかして喋れないのか!?」
?「……!」コクコク
P(そうか。アイドルになったから、例のウイルスに感染したのか)
P(ん? なるほど……そういうことか。芳乃が言ってたことは正しかったな。確かに犯人は事務所のアイドルだった)
P(芳乃にとっては、今アイドルでもこの先アイドルになる存在でも一緒か。見ている視点が違うんだな)
P「落ち着け。大丈夫だ、すぐに喋れるようになる」
?「……?」
P「ああ、俺を信じろ」
?「……」コクン
P「じゃあ、これからよろしく頼むよ」
P「ムナ・カ・ターツ」
ムナ「……ッ!?」
P「変わった名前だな。ハーフなのか? まあ、大丈夫だ。この事務所にはハーフどころかモノホンの外国生まれがいるからな。すぐに慣れるよ」
ムナ「……! ……!」ブンブン
P(暫くして宣言通り、晶葉がワクチンを完成させた)
P(こうして、新しいアイドルを仲間に加えて、謎のウイルス騒動は終わりを告げた)
P(いつもの騒がしい事務所が戻ってくる)
P(やっぱりこの騒がしさが一番だ)
P(もう謎のウイルスは勘弁してほしい)
バタン
晶葉「大変だ助手!」シュコオオオオ
P「どうした晶葉!」
晶葉「今度はアイドルがお喋りになるウイルスが広がっているッ!」
P「ンモー!」
バタン
雪美「P。お膝、お膝に乗っていい? いいよね? ううん、聞かなくても分かる。だって私とP、心が繋がってるから。だから乗る。はい乗った。温かい。やっぱり一番ここが落ち着く。うん……もう、ずっとここがいい。ここでご飯食べて、このままお風呂に入って、歯磨きして、眠りたい。朝起きて一番最初に見るのがPの顔……すごくいい。最高。Pもそう思う? ね? そうしよう? ペロもそう言ってるよ?」
ペロ「にゃにゃなーにゃ! なー! ごろごろー! うなー! しゃー! ニャーニャーミャー! にゃーん! うなななー! にゃんごろにゃーん! にゃにゃにゃー!」
バタン
茜「おっはようございますっ!!!! 今日も元気な日野茜です!!!! ボンバー!!!! 今日はいつにもましてボンバーしたくなりますね!!!! もう一回ボンバー!!!!!! 何だか今日は事務所が騒がしいですね!!!!! ワサワサしてます!!!!! 無性に走りたくなりますね! いつものことですけど!!!!! ああ、ボンバー!!!! いつもより多めにボンバーしてますッ!!!! そういえばムナさんも今日はいつもより多めにお山を登ってましたよ! ああ、もう何だか喋ってないと死んでしまいそうです!!!! アレですね! 今の私はマグロみたいですね!!!! マグロは泳いでないと死んでしまう、私は喋ってないと死んでしまう」
バタン
裕子「……」
裕子(むむむむーん! 聞こえますか!? 今Pさんの心に直接話しかけていますよー! もちろんテレパシーで! サイキック! ミラクル! テレパシーで! 聞こえてますよね! ええ、もう聞こえてますとも! そのはずです! ああ、そういえば今日事務所に来る前にお祖母ちゃんを助けたんですよ! 重い荷物を抱えて信号前で困ってるお祖母ちゃんを! サイキックおんぶで! サイキック輸送ですよ! お礼に飴をもらっちゃいました! 私いいことをしましたよね!? 聞こえてたら、サイキックナデナデをしてほしいです! とどけー! サイキックとどけー! 目の前にいるPさんにとどけー!)
P「……」
P「……」
P「今度から出勤してすぐに、手洗いうがい、ガスマスク着用を義務付けるか……」
バタン
晶葉「大変だ助手!」シュコオオオオ
P「どうした晶葉!」
晶葉「今度はアイドルがお喋りになるウイルスが広がっているッ!」
P「ンモー!」
バタン
雪美「P。お膝、お膝に乗っていい? いいよね? ううん、聞かなくても分かる。だって私とP、心が繋がってるから。だから乗る。はい乗った。温かい。やっぱり一番ここが落ち着く。うん……もう、ずっとここがいい。ここでご飯食べて、このままお風呂に入って、歯磨きして、眠りたい。朝起きて一番最初に見るのがPの顔……すごくいい。最高。Pもそう思う? ね? そうしよう? ペロもそう言ってるよ?」
ペロ「にゃにゃなーにゃ! なー! ごろごろー! うなー! しゃー! ニャーニャーミャー! にゃーん! うなななー! にゃんごろにゃーん! にゃにゃにゃー!」
バタン
茜「おっはようございますっ!!!! 今日も元気な日野茜です!!!! ボンバー!!!! 今日はいつにもましてボンバーしたくなりますね!!!! もう一回ボンバー!!!!!! 何だか今日は事務所が騒がしいですね!!!!! ワサワサしてます!!!!! 無性に走りたくなりますね! いつものことですけど!!!!! ああ、ボンバー!!!! いつもより多めにボンバーしてますッ!!!! そういえばムナさんも今日はいつもより多めにお山を登ってましたよ! ああ、もう何だか喋ってないと死んでしまいそうです!!!! アレですね! 今の私はマグロみたいですね!!!! マグロは泳いでないと死んでしまう、私は喋ってないと死んでしまう!!!!! 私はマグロ!!!! マグロ茜!!!! 日野マグロ!!! 日野マグロをよろしくお願いします!!!! ボンバー!!!!!」
バタン
裕子「……」
裕子(むむむむーん! 聞こえますか!? 今Pさんの心に直接話しかけていますよー! もちろんテレパシーで! サイキック! ミラクル! テレパシーで! 聞こえてますよね! ええ、もう聞こえてますとも! そのはずです! ああ、そういえば今日事務所に来る前にお祖母ちゃんを助けたんですよ! 重い荷物を抱えて信号前で困ってるお祖母ちゃんを! サイキックおんぶで! サイキック輸送ですよ! お礼に飴をもらっちゃいました! 私いいことをしましたよね!? 聞こえてたら、サイキックナデナデをしてほしいです! とどけー! サイキックとどけー! 目の前にいるPさんにとどけー!)
P「……」
P「……」
P「今度から出勤してすぐに、手洗いうがい、ガスマスク着用を義務付けるか……」
おしまい。
読んでいただき、ありがとうございました。
次は昔落としてしまったもりくぼクローンのSSを投稿します。
このSSまとめへのコメント
このSSまとめにはまだコメントがありません