【乃木坂46】初恋の人を今でも【曲SS】 (12)

以下の注意点をお読みの上、このSSを読んでいただけますと幸いです。

・このSSは乃木坂46の『初恋の人は今でも』という曲をベースに書いたssです。
・歌詞を強引に自己解釈している部分があります。ご容赦下さい。
・僕自陣の文章についての、批判や感想等は頂けますと大変有り難いです。
しかし、曲や乃木坂46に対する批判等はこのスレではどうかご遠慮下さい。

参考動画
https://youtu.be/1NVvyk8U5tM

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1491171555


「じゃあね」 

彼女は短い一言を残して電車へ乗り込んだ。
爽やかな花の香りが、風で消えた。

あの日以来、僕は彼女を探し続けている。


彼女は親父さんに似て頑固だ。
高3の秋、東京で芸術家になりたいと彼女は言った。
その為に、東京でアルバイトをしながらどこかのアトリエへ入ることを目指す、とも。
彼女は彼女なりに色々分かっていたし、考えていたのだろう。
百万は超えている通帳を見せ、彼女の両親を説得にかかった。
でも結局、喧嘩別れをして彼女は東京へ向かった。
幼い頃から共に育った僕だけに、引越し先の住所を預けて。

「あんたにこれ、預けとく。何かあったら手紙頂戴。もう他の誰とも連絡は取れないから」

男前な彼女らしい、決意表明だったのだろうか。

そんな彼女に、恋をしていると気付いたのは小学校の時まで遡る。

彼女は、昔から工作とかの類が好きだった。
僕は、いつも彼女が工作する様を眺めていた。
最初は工作が目当てで彼女の近くにいたが、いつの間にか彼女が目当てになっていた。
いつからかはなんとも言い難いが、いざ気づくとあっさりと認められた。
彼女が好きなんだ、と。
こうして、彼女は僕にとって初恋の人になった。
中学も一緒に進んだ。
小さな学校だったから三クラスしかなく、なんとか同じクラスを引き当てた。
幼稚園からの腐れ縁だね、なんて彼女は笑っていた。
幸い僕は絵を書くのが好きだったから、彼女と同じ美術部に入った。
中学三年間、僕は彼女に好きだと言えなかった。
高校でも同じだった。
成績が似通っていた僕達が、同じ学校なのは必然だろう。
それでも嬉しかった。
でも、臆病な僕は彼女の隣はずっとキープしつつも何も好意を伝えられなかった。

今までも、告白しようと思ったことは何度でもある。
なにせ、彼女は整った顔立ちをしていた。
それに、高校生になったら髪を伸ばし始めた。
その伸ばした黒髪がまたなんとも美しく、彼女をより一層引き立てた。

幾度となく彼女は告白されていたが、彼女は誰とも付き合わなかった。
そんな彼女の隣に入れることに優越感を感じていた。
けど僕は、彼女との関係を変えることに更に臆病になった。

だか、進路選択が近づくにつれの中に焦りが生まれた。 
彼女の進路は聞いていないし、僕は実家を継ぐことが分かっていたからだ。 
ずっと彼女の隣にいたけれど、もう隣にいられなくなるかもしれない。

そう思うと、覚悟を決めることができた。
そして、ようやく踏み出そうとした日。

「「ねぇ」」

こういう時ほど間が悪い。
目で彼女に先を譲る。

「私、東京へ行く」
 
驚いて、彼女の目を見た。
本気の目だった。
ようやく決めた覚悟が、バラバラになったような気がした。
僕は、もう彼女への思いを伝えられないかもしれないなんて思った。
きっと、彼女は遠い人になってしまうから。

いつの間にか、彼女が東京へ行ってから三年が経っていた。
友人達と時々会うが、他の人の噂は聞いても彼女のは全く聞かない。 
彼女の両親もそれは一緒らしく、大層心配していた。
たくさんの食べ物を半年に一回程彼女の住所へ送っている。
彼女の両親に頼まれて、僕名義でだけど。
それから一年前に一度だけ、中学の同窓会の知らせに便乗する形で自分からの手紙を送った。

"君は君のままでいいよ。だから、辛ければ一度帰っておいで。"

色々と僕らしくどうでも良いことを長々と書いたけど、結局伝えたかったのはこういうことだった。
彼女は周りの人間から、優秀であるという印象を持たれていた。
だから、余計成功するまで帰りづらいのかもしれない。
そう思って、手紙を書いた。
でも、彼女の決意を踏みにじる言葉だったかもしれない。
その事に、送ってから気付いた。

彼女は怒ったかもしれない。 
傷付いただろう。
身勝手な思いでしかない。
でも、分かっていても彼女に伝えたかった。
結局、返事は無かったし同窓会も欠席だった。
だから、彼女へあの手紙が届いているかどうかも分からない。
でも、結局は分かっていた。
彼女は、自分の夢を叶えるまで帰ってこないだろう。

だけど、長々と続いた初恋だ。
そう簡単に諦められる訳もない。
心配症の彼女の事だから、こっそり両親の様子を見に帰ってきているかもしれない。
そしたら、ばったり彼女に会えるかもしれない。
なんて、女々しい僕は考えて彼女を探して町を歩く様になった。
何度もふらふらと町を歩いてみたけど、彼女は見つからない。
小さな頃は大して人の居なかったこの町も、再開発のお陰で人が溢れるようになった。
人混みの中で彼女を探し、今日もあてもなく歩く。
いつの間にか、夕方だ。
夕焼けの眩しさが目に刺さる。

ふと、涙が出そうになった。

僕は意気地なしだからこうなったのか。
彼女に思いを伝えていれば、引き止められたのではないか。
住所が分かっているのだから、探しに行けば良いのではないか。 
でも、それも怖くて出来ない。
今行けば、彼女に拒絶されてしまいそうだからだ。

だから、臆病な僕は子供じみた期待を胸に町を歩く。
彼女に会ったら、昨日会った様に気さくに声をかけようなんて考えながら。

「そろそろ夕方だ。帰らなくちゃ…」

自宅へ向けて、人混みの中を通り抜けていく。
何故か、一瞬爽やかな花の香りがした気がして僕は振り向いた。

以上で終わりです。

感想や批評等、色々頂けますと幸いです。

また質問等ございましたらどうぞ。

因みに僕はかなりん押しです。 

最後まで読んで頂きありがとうございました。


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