そこに漢はいない (Fate 原作再構成) (8)

子供の頃。
俺はじいさんに、いつも言って聞かされていた。

「女はね、とっても狂暴な生き物なんだ」

悲しいような苦しんでいるような、何とも言えない表情をしながらそう言う。
ボケた老人のように何度も。

子供ながらにも、俺はじいさんが女性関係で悩んでいるのだと気付いていた。
だから俺は、じいさんが呪うようにその言葉を紡ぎ出したら、黙って聞いてやることにしていた。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1490869729

身よりのない俺を引き取ってくれた養父だ。
役に立てるなら、これぐらいのことはしてやらないと。
そう思っていた。


ある夜、俺はどうにも寝つけなくて、縁側に腰掛けて月を見上げていた。

ロマンを感じる。
少し大人になった気分だった。

そんな風に優越感に浸っていたら、当然のようにじいさんが現われて、俺の横に座りこんだ。
はっきり言って邪魔だったが、まあ黙っていることにした。
さっきも言った通り俺って養子だし、立場的になかなか言えないこともある。

「―――」

月を見上げる俺とは対照的に、じいさんは俯いたまま黙っている。
心なしかつらそうだった。

しかしそれも一瞬。
顔を上げて、ゆっくりと俺に語りかけた。
また女の恐ろしさをつらつらと語るのだろう、そう覚悟した矢先だった。

「ねえ士郎。君は女という生き物をどう思う?」

いつもとニュアンスが違っていた。
質問系だった。

「……じいさんがいつも言ってることだろ。恐い生き物じゃないのか?」

「そうだね。とてもとても恐い生き物だ」

じいさんは静かに目を閉じ、何かを悔やむような顔をした。

「僕は正義の味方になんてならなければよかったのかもしれない。」

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom