「完璧すぎる兄は〇〇である」 (3)
朝、誰にでも来る朝は相変わらず私の睡眠の邪魔をする。
どんなことであれ、起きなければならない。
家族でさえ、敬語を使うあの人に挨拶を済ませなければならないからだ。
妹「おはよう…ございます」
早速だった。廊下には新品と思えるような制服を身に纏い。
そのまま学校に行けるほど準備を終えた兄がいた。
反面、私は寝起きの髪に顔を洗っていないだらしない格好。ついでに言えばパジャマに黒縁の安いくダサい眼鏡。
クラスの男子が見たらさぞかし幻滅するだろう。見てる人なんているとは思えないけど。
兄「ああ、おはよう」
何か言いたげだった。当たり前だ、こんな完璧な人の前でだらしない格好の妹が居たら注意もしたくなるだろう。
ごめんなさい。心の中では素直にいえよう。ただ、この人の前にして言葉では謝るのは嫌だった。
兄「遅れるぞ」
たった一言を告げると、兄は何事もなかったかのように廊下の先にある階段を下りていった。
朝から鬱だ、どうして廊下で会うんだろう?もう少し準備をしてから会えれば特にあんな顔されずに済んだのに。
小さくため息をついてから重い足取りで階段を下りていく。
それから簡単に学校の準備を済ませ、兄が先に行った後をわざと遅らせてから、重い足取りで家を出た。
?「おはうー」
気の抜けるような挨拶とともに、親友と呼んでいいのか未だに迷っている友人(仮)が満面の笑みで挨拶をしてくれた。
天使のような彼女の笑顔は参考にできるならしたい程の完璧な笑顔だ。心なしかキラキラしている。
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妹「うん、おはよう」
友人(仮)「いま、軽く馬鹿にしたでしょー!」
速攻でバレた。油断できない。
彼女は小学生から高校一年までずっと一緒にいる。親友というよりは幼馴染が一番合ってるだろう。
私よりも長い髪にムカつくぐらい整った顔、可愛い?なにそれ、羨ましい。
天使が居るなら彼女のことを言うんだろう。クラスの男子にも人気な彼女だ。ああ、そうです。
…羨ましかった。
「みーちゃんだって可愛いのに」
私のあだ名を言いながら余裕の一言。正直に言えよ、私のほうが絶対に可愛いって。襲ってやるから。
友人(仮)「怒らないでよぉー」
私はわざと歩く速度を上げて、幼馴染(笑)を置いて行く、負けたくない。負けたくないんだよ。
必死に追いつこうと小走りに歩く彼女の顔は少しだけ赤くなり、登校する男子どもの顔をだらしなくする。
ちょっとだけ涙目の彼女は萌えを体現しているのだろう。だってすれ違う男子共の声を聞いて欲しい。
「やっぱ可愛いよな静琉さん」「ああ、天使だよな」
彼女は有名だ。下の名前で呼ばれているのは珍しいが全校生徒の前で名前で呼んで欲しいと言ったのだから当然だ。
生徒副会長、一年生なのに何故か副会長になってしまったのは、家柄なのかそれとも可愛けりゃなんでもいいのかこの学校。
校長は話が短くて好きだけど、生徒の意見を尊重するというのは若干にしてクレバーだと思う。悪く言えば適当。
私は耳を両手でふさぎつつ、聞こえないふりしながら学校に着いた。勝ち負けは、私のボロ負けだ。ボロの意味知ってる?私知らない。
幼馴染(笑)「あ、お兄さんじゃない?」
静琉さん、貴女は気がつかなくて良い事を気がついてしまったね。残念よ。ここでさよなら。
親友(静琉以下親友)「ちょ!苦しいよぉ」
気がついたら首を絞めていた。
暗殺者も唸らせることができると思うほど静かに、息を殺して幼馴染の後ろに回り込み、腕を首にそのまま体重を掛ければという感じに、極めていた。
兄「何をしている、危ないことをするんじゃない」
おおう、お兄様、違うんです。こやつが貴方に気づいてしまったので口封じするためにこんな事をしてしまったんです。
言い訳を考えるだけで、どっと冷や汗が全身から出てくるのを感じる。気づかれた上に注意された。普通のことなのに、何か言いようのない嫌なものを全身で感じる。
そんな気持ちを知ってか知らずか、兄の目は細くなり、質問に答えなければいけない気がした。
怒っているのか、それとも呆れているのか。
妹「ただじゃれてるだけです」
苦しい言い訳だった。そう言うと同時に親友の首を開放した。
親友は何か言いたげにこちらを見るが、兄に用事があったのかすぐに兄と話し始める。
兄も私に興味を無くしたのか静流と会話をする。
私は特に用事がなかったのですぐにその場から離れた。ばれないように静かに、ダンボールで侵入するあの人のように気づかれず。後で教えられたのだけど、兄は私の奇行をずっと見ていたらしい。
…本気で怒ってたんですか?不安になるじゃないですか。
結局、幼馴染なのか親友なのか静琉の立ち位置がよく分からない。私自身が一番に混乱している。
そんな意味のない自問自答で、つまらない授業をやり過ごし。
やはり幼馴染は男の子だったらそうしようと、わけのわからない結論を出すと同時に、昼休みになっていた。
妹「詰んだ」
親友「え?何が??」
キョトンと首をかしげる姿がナチュラル過ぎて襲いそうだった。可愛い。小動物ですか貴女は。
しかしそんなことを行っているほど今の状況は危うい、昼休みにする事といえばまず最初に食事だろう、その後に読書、運動、昼寝。
何をしたっていい、でも最小限にすることは決まっている。食事なんだ。でも私の前にはなにもない空間だけがただ虚しく広がる。
親友「机の上を見たって何もないよ?」
うん、言われなくても分かってる。そうじゃないの親友。私ね、大切なもの忘れてしまったの。
親友 「もしかして…お弁当忘れちゃった?」
はい、その通りです。親友は少し困った様な顔で私に問いかけた。ついでに半分個する?と心優しい事まで言ってきてくれる。
しかし私はそれを丁重に断り、腕を組むとどうしたものかと悩む。一つ二つ三つ、買いに行くしかないな。
結論は出た。凛と立ち上がり。教室から出ようとした。引き戸のノブに手を掛け、クラスのみんなが見ていないことをいいことに爽やかな笑顔で勢いよく開く。
妹「行ってきます」ガラガラ
兄「…どこにだ?」
妹「帰ります」
兄「今から家にか?」
oh...ええ、そうです。この教室に用事がないはずの兄が立っていました。私との距離、約数センチ。
目眩がする、顔から血の気が引いていく。地球上のありとあらゆる物を凍らせてしまいそうな兄の目線。それが私を捉えている。
エターナルなんとか?終わり?死ぬの?
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