栗原ネネ「腕相撲ですか?」 (20)
スーパーにて
ネネ「ふう……あとは、お菓子をいくつか買って帰ろうかしら」
亜季「む? そこにいるのはネネ殿?」
ネネ「あ、亜季さん。こんにちは」
星花「奇遇ですわね」
ネネ「星花さんも。おふたりで買い物ですか?」
亜季「私はプロテインの調達に。ここのお店は、スーパーにしては珍しく品揃えがよいのであります」
星花「わたくしは、興味があったのでついてきただけですわ」
ネネ「なるほど」
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亜季「ネネ殿は……ずいぶん大荷物のようで」
ネネ「事務所の飲み物が切れかけなので、コーヒーや紅茶を買いに来たんです。ついでに、お菓子とかそのあたりの必要になりそうなものも」
星花「P様にお願いされたのですか?」
ネネ「そういうわけではないですけど、ちょうど時間が余っていたから」
星花「まあ! さすがはネネさんですわね」
ネネ「さすがって……そこまで言われるようなことじゃ」
亜季「いえいえ。ネネ殿のそういった心遣いには、いつも助けられていますから。なかなかできることではないであります」
ネネ「そこまで言われると、照れちゃいますね。えへへ」
星花「そうですわ。ですから、たまにはわたくしたちもお手伝いをしなければ……カゴ、貸してくださいまし」
ネネ「え?」
星花「いっぱいになっていますし、わたくしがレジまでお持ちいたしますわ」
ネネ「いいんですか? いっぱい入れちゃったから、結構重いですよ?」
星花「心配いりませんわ♪ わたくし、これでもアイドルになってから鍛えられていますから!」
亜季「ここは甘えておくべきですよ、ネネ殿」
ネネ「そうですか? それなら、お願いしちゃおうかな」
星花「はい、お願いされました♪」
ネネ「じゃあ、どうぞ」
星花「はい」
ずしんっ
星花「うぐぐっ!? お、おもっ! 思ったより重いですわこれ!」
ネネ「わわっ、大丈夫ですか!?」
亜季「ははは、仕方ありませんな。ここは私が代わりに運ぶであります」
星花「ご、ごめんなさい……自分で言っておいて情けありませんわ……」
ネネ「お気持ちだけで十分ですよ。ありがとうございます」
星花「ネネさん……! 今度、何か素敵なお菓子をご馳走いたしますわ」
ネネ「は、はあ……お値段は、抑えめでお願いしますね」
亜季「さて、では星花殿。荷物を預かります」
星花「お、お願いします……」
ずしんっ!
亜季「むっ……」
亜季(え、割と本気で重い……)
星花「ふーっ、生き返りましたわ………亜季さん?」
亜季「い、いえっ! なんでもありませんマム」
星花「は、はあ……」
ネネ「亜季さんは身体鍛えてますもんね」
亜季「そ、そうでありますな! プロテインバンザイ!」
亜季(お、重いとか言えない空気だ……ネネ殿、さっきまで平気な顔で持ってたし)
亜季(というか、この重いカゴを、手に持つのではなくて腕にぶら下げる形で運んでいたような……もしや)
亜季「ときにネネ殿。こういった荷物を運ぶことには慣れているのでありますか?」
ネネ「そうですね。小さいころから、おつかいとかよくやっていたから……カゴいっぱいの商品を運ぶことにも慣れました」
亜季「やはりそうでありますか……」
ネネ「?」
亜季(ネネ殿、意外と怪力なのでは……?)
星花「わたくしも、プロテインに挑戦してみようかしら……」
事務所に戻って
亜季「というわけで! 『チキチキ・ネネ殿の腕力計測のための腕相撲大会!』を始めるであります!」
星花「わー♪」パチパチパチ
ネネ「え?」
亜季「今回は特別に、その辺にいた選りすぐりの対戦相手を5人そろえてきたであります!」
星花「わー♪」
星花(その辺にいたという時点で選りすぐりではないような)
ネネ「あの、これはいったい」
亜季「先ほどの買い物の様子を見て、ネネ殿は腕っぷしが強いのではないかと。ひょっとすると力こぶムキムキなのではないかと」
ネネ「まってちがう」
亜季「違うかどうかを確かめるための腕相撲であります。どうかお付き合いいただければ」
ネネ「……まあ、腕相撲をやるだけなら。どうせすぐに負けちゃいますし」
亜季「感謝するであります! それでは許可をもらったところで、第一試合の相手、カモン!」
星花「ドコドコドコドコ……」
ネネ「星花さん、BGM担当なんですか?」
夏樹「腕相撲か。なんだか子どものころに戻ったみたいでワクワクするな」
亜季「最初の相手は夏樹殿であります」
ネネ「強そう……」
夏樹「ははは、遊びなんだから緊張しなくてもいいって。アタシ、利き腕じゃないほうでやるからさ」
星花「そういえば、夏樹さんは左利きでしたね」
ネネ「それなら、まあ……よろしくお願いします」
夏樹「ああ、ヨロシク」
亜季「それでは両者、構えて!」
ネネ「………」
夏樹「………」
亜季「ファイッ!!」
ネネ「でやっ!」
夏樹「うおっ!?」
バシーン!
亜季「おっと決まったー!! 開始1秒で決着! ネネ殿圧勝だーー!」
星花「じゃんじゃかじゃーん♪」
ネネ「あ、あれ?」
夏樹「はは、参ったな……かわいい顔してやるね。アタシが右利きでも勝てたかどうか」
ネネ「あ、ありがとうございます……?」
夏樹「頑張りな。アンタなら、てっぺんとれるぜ」
ネネ「いえ、別にてっぺんとるつもりはないんですけど……」
亜季「さあさあ続いて第二試合! 対戦相手はこの方!」
星花「ででん!」
涼「腕相撲か。子どものころは……アタシの場合、あんまりやってなかったな。環境的に」
ネネ「涼さん……は、確か右利きですよね」
涼「ああ。今度はお互い、利き腕同士で勝負になるね」
亜季「それでは両者構えて!」
星花「デレデレデレデレデレ~~」
ネネ「星花さん、だんだんBGMを流すタイミングが増えてませんか?」
星花「うふふ、楽しくなってきちゃいました♪」
亜季「ファイッ!!」
涼「ふんっ!」
ネネ「わわっ!?」
亜季「おっと! 会話に気を取られていたネネ殿、スタートで出遅れた! このまま涼殿が押し切るのかー!」
ネネ「んっ……あっ……」
亜季(なんだか喘ぎ声が官能的)
ネネ「ふんぬっ!」
涼「うわっ」
ばしーん!
亜季「おおーっ! 形勢逆転から一気に押し切った! ネネ殿、二連勝!」
星花「ぱっぱらー」
涼「いてて……はは、強いな。アタシももうちょっと鍛えないとダメか」
ネネ「か、勝ってしまいました……」
亜季「さてさて、時間も押していることですし第三試合に向かうであります! 次の相手は強敵――」
星花「どどーん!」
拓海「腕相撲か。まあ、腕っぷしには自信あるぜ」
ネネ「む、無理です無理です! さすがに拓海さんには勝てませんっ」
亜季「おっとネネ殿、ここにきて戦意喪失かー!?」
拓海「? やらないのか?」
ネネ「だ、だって。私、そんな武闘派じゃないですし……」
拓海「武闘派かどうかと、勝負から逃げるかどうかは別だろ。ネネも漢なら、ガッツリ向かってこい!」
ネネ「拓海さん……」
ネネ「そうですよね。アイドル活動だって、逃げてばかりじゃうまくいきません。だったら、ちゃんと立ち向かわないと」メラメラ
星花「ネネさん、女の子では……?」
亜季「男と漢は違うであります。漢は女でもなれるのであります」
星花「なるほど。奥が深いですわね……」
ネネ「がんばります!」
拓海「よし、来い!」
亜季「両者構えて………ファイッ!!」
ネネ「ふんぬっ!」グググ
拓海「オラぁっ!!」グググ
亜季「おおー! これはすごい! 両者一歩も譲らなーい!!」
拓海「んぐぐ……!!」
ネネ「う~~~っ!!」
拓海(声かわいいな、こいつ……)
ネネ「! ていっ!!」
拓海「あ、しまっ――」
ばしーん!!
亜季「決まったーー!! 拓海殿、一瞬力が弱まったか! その隙をネネ殿が見逃さなかった!!」
星花「すごいですわ! ……あ、ぱっぱらー♪」
亜季「今BGM忘れていましたね」
拓海「ちっ、次は負けねえぞ、煉祢(ネネ)!」
ネネ「なんだか強そうな文字をあてられてる!?」
亜季「さあ! いよいよ終盤、第四試合! お相手は!」
里奈「ちょりーっす☆」
ネネ「里奈さん……なんとなく察しはついていましたけど、炎陣の人達が揃っていたんですね」
亜季「里奈殿は強いであります。土方仕事で鍛えた腕力はホンモノ!」
里奈「気楽にいくぽよ~」
星花「構えに緊張感が一切ありませんわ……これは、今までの方々とは違います」
亜季「星花殿、BGM役に飽きて解説役に移ったでありますな」
ネネ「……いきます」
里奈「およ、なんか目が据わってるね」
亜季「連戦連勝を通して、自分の腕力に自信を持ち始めた証拠では」
里奈「んー、これはアタシも本気でやる系かな?」
亜季「両者構えて………ファイッ!!」
ネネ「ふんっ!!」
里奈「ふっ!!」
ググググッ
亜季「おっとまたも均衡状態! 先に傾くのはどちらか!」
ネネ「ぐぬぬぬ」
里奈「ぬぬぬぬ」
星花「おふたりとも、アイドルがしてはいけない顔になりかけているような……」
亜季「そこは気にしてはいけないであります」
ネネ「ん~~~っ!!!」
里奈「あっ、押され……」
ばしーん!!
ネネ「はあ、はあ……」
里奈「ありゃりゃ、負けちった☆」
亜季「き、決まったー!! 数分の競り合いの末、勝ったのはネネ殿! これで無傷の4連勝!」
星花「感動いたしましたわ、わたくし……!」
里奈「おつぽよ、ネネちゃん」
ネネ「は、はいっ。汗をかくのって、気持ちいいですね!」
亜季「というわけで、ネネ殿がここまで勝ち進んできたわけでありますが」
星花「亜季さん、確か最初に5人お相手を集めたとおっしゃっていましたよね」
ネネ「ということは、次が最後……いったい、誰が」
亜季「最後の相手。それは……」
亜季「この私、大和亜季であります!」バーン!!
星花「な、なんと!」
亜季「そう、私こそ炎陣最後のひとり! このまま負けるわけにはいかないのであります!」
亜季「……と、言いたいところでありますが」
ネネ「?」
亜季「すっかり失念していたのですが、私左利きで、つまりネネ殿と利き腕が違うであります」
亜季「これでは正当な勝負は難しい……うっかりしていたであります」
星花「あら……それは残念ですわ」
ネネ「………」
ネネ「あの、私は左でもかまいませんよ」
亜季「いえ、しかし」
ネネ「さっきまでの試合で、右腕はへとへとですし。それに」
ネネ「買い物のときはたいてい左腕で荷物を抱えるから、どちらかというと左のほうが力だけなら強いですし」
亜季「………」
亜季「え?」
ばしーん!!!
亜季「いやあ……完敗でありました」
星花「本当に左のほうが強かったんですね……」
ネネ「まさか全員に勝っちゃうなんて……もっと自分の腕力に自信を持っていいのかも」
亜季「むしろ持ってもらわないと我々の立場がないでありますよ」
ネネ「あはは……じゃあ、自信持っちゃいます♪」フンス
星花(かわいいですわ)
亜季(かわいい)
ガチャリ
P「ただいまー。お、みんななにやってるんだ?」
ネネ「あ、Pさん。おかえりなさい」
亜季「今、ネネ殿と腕相撲をしていたであります」
星花「ネネさん、すっごくお強いんですよ。炎陣の皆さんを次々倒して」
P「へえ、それは意外だな。俺もちょっと勝負してみようか」
亜季「おお、P殿とネネ殿の対決でありますか!」
星花「楽しみですね♪」
ネネ「Pさんと腕相撲……」
P「いいかな?」
ネネ「は、はい。もちろんっ」
亜季「では、両者構えて」
P「よし」ジッ
ネネ「………」
亜季「ファイッ!!」
へにょっ
P「おっ?」
ネネ「あっ」
ぱたん
P「……普通に勝ってしまった」
星花「あら?」
亜季「ネネ殿? 先ほどまでとは明らかに力の強さが違いましたが」
星花「ひょっとして、連戦でお疲れなのでは」
ネネ「えっと。それもあるんですけど」
星花「あるんですけど?」
ネネ「………」
ネネ「Pさんに真剣な顔で見つめられると、なんだか力が入らなくて……」カアァ
亜季「………」
星花「………」
亜季・星花(乙女だーーー!!)
おしまい
おわりです。お付き合いいただきありがとうございます
ネネさんの二年以上ぶりのSR、しかも23コスということで勢いで書きました。ほんとにかわいい。
過去作
栗原ネネ「まってちがう」
などもよろしくお願いします
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