ガタ ガタガタッ
「……」
ガタガタガタッ
「……」
「……ふぅ」
男「――しょうがねえヤツらだな、まったく」
男「俺一人をイジるのに馬鹿みてーな数で集まりやがって」
男「おまけに何をするのかと思えば……ふん、まだ殴る蹴るのほうがわかりやすくていいぜ」
男「やっぱクズには他者をいたぶるセンスすらないってわけか。哀れな」
ガタガタガタッ
男「……」
ガタガタガタッ
男「……ちっ、マジかよ何で開かねーんだ」
男「ふんっ!!」ガンッ
シーーーーン
男「……」
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男「ふっ……戯れもここまで幼稚だと逆に笑いが零れちまう。
幼稚園児ならまだしも、この歳で閉所に閉じ込められたくらいで誰がうろたえるっつーんだ」
男「まさか俺が泣き叫ぶとでも思ったのか? 俺が闇を恐れるとでも?」
男「馬鹿馬鹿しい」
男「抵抗する素振りを見せたのもそのほうがお前らアホの歓喜を湧かせることができるからだ。
愚者が他人の嫌がる様で口から下卑た笑いを垂れ流すのはこちらの世界でも同じのようだからなぁ」
男「俺はお前らの限りある時間を無意味に費やすという人生においてもっとも愚かで非生産的な行為にあえて付き合ってやっただけだ。
……どうだ、楽しかったか? 満足したか?」
男「もういいだろう。俺は――」
男「そろそろ本気を出すぜ?」
男「終わりだ。お前らとのお遊びもここまd」
ガラッ
女子生徒「暑っつーーーい! あーもう疲れたぁーーー!!」
男(いぃーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!?)
女子生徒「だっるぅ~、いまどき男女混合とかありえねんだけどぉ」
女子生徒「ねー、たしかに意外すぎたわ」
男(え、ええっ!? えええええ!?)
女子生徒「しかもさぁ、このあと普通に授業あるとか信じられる? 汗かきまくり」パタパタ
女子生徒「ん~良い香りがしますぞ~」
女子生徒「うぃーす、お疲れー」
「「お疲れ~」」
ガヤガヤ
男「……!」
男(ええ……う、ウソでしょおい早すぎんだろ戻ってくんの……!)
男(チャイムはまだ鳴っていない教師は何をやってるんだーーー何を!!)
女子生徒「ま、ウチらだけ早めに終わらせてくれたし。その辺り気ぃ利かせてくれたんじゃない?」
女子生徒「んなことまで考えてたら逆にキモいって」
キャッキャッ
男「あばっ、あばばばばばば」ガタガタ
男(や、ヤバすぎる……! 続々と女子たちが集まってきたぁバレたら殺されりゅううう)
男(なんて日だ、なんてことしやがるあの低脳ドクズども。世の中やって良いことと悪いことってあるだろぉ……っ!
よりにもよって女子更衣室のロッカーに閉じ込めるなんてお戯れが過ぎるんだよどんだけ頭悪いんだ)
男(もっと暗くて薄汚い場所なら他にもあるだろ
前みたいにトイレの用具入れとか校舎裏の使ってない焼却炉に押し込めときゃいいんだばかばかばか!!!)
男「なんで……どうしてお前らは新たな趣向に挑戦しようとするんだぁ……」ズルズル
男(俺がお前らの人生に何かしたか。頼むからもう二度と俺に関わらないでくれ。
そして頼むから今のこの状況から俺を助けて下さい神様)
女子生徒「うわ、アンタまーたでかくなった?」
女子生徒「ちょ、ちょっと!///」
男「……」ピク
女子生徒「ねえ見てよ。コイツ彼氏出来たとたん急にコレですよ、コレ」モミモミ
女子生徒「ほーーう、乳ですか」
女子生徒「さ、触んないでよ。もう!///」
男「……ふむ」
男(どれどれ)ゴソゴソ
女子生徒「そーいうアンタだってぇ、随分エッチな下着履いてるじゃ~ん。今日はあの彼氏クンの家?」
男(うお!? ホントにでけえ! なにアレおっぱい!?)
女子生徒「は、はあ?/// 別にそんなんじゃないし。いつもこんな感じだっつーの///」
男(こっちは紐!! あれが噂の紐パン!? しかも布面積せっま! 初めて見た)
女子生徒「ほらほらさっさと着替えなよー。制汗スプレーかけちゃうぞー?」
男(あ、あっちはクラス委員長の……すごい、意外とスタイル良いんだな。しかも下着姿でハシャぐ一面があったなんて驚きだ)
女子生徒「そーれ♪」プシュー
女子生徒「あ~~れ~~♪」クルクル
男(あれは隣の席の女の子。一度も会話をしたことがないけどあんな可愛い声出すんだ。
回るたびに揺れるおっぱいも中々……目に焼き付けておこう)
キャッキャッ
男(……すごい。こんな時間にこんな場所にいる俺もすごいが彼女たちの肌色はもっとすごい)
男「女の子ってすごいんだな。なんて素晴らしい光景なんだ神様ありがとう」
男(あとは彼女たちが俺の存在に気づかないまま部屋を出てくれることを祈るばかりだ)ギュッ
キャッキャッ
男「……ん?」
キャッキャッ
男(あれ、待てよ。そういえば……)
ガラッ
女子生徒「あ……」
女「……」
シーーーーーーン
男(やっぱり……この人の姿が見えないと思ってたけど、ちゃんと授業には出てたのか)
女子生徒「あ、お、女さん。後片付けありがとうね」
女子生徒「あ、ありがとう。ごめんね、女さん一人にやらせるなんて」
女「……いいです。私がやると言ったので」
女子生徒「そ、そう」
シーーーーーーン
男「……うわぁ」ゴクリ
男(一気に空気が変わったよ。さすがは女さん。相変わらずすげえ重いオーラを発してんな)
男(俺まで思わず姿勢を正してしまった)
女子生徒「じゃ、じゃあさ、ウチらもう行くね」
女子生徒「あ、待ってよ! 私もすぐ着替えるから!」アセアセ
女「……」
男(同じクラスメートの女さん……半年ほど前に俺たちと同じ『一般棟』へ移動してきたばかりの才媛であり、校内のちょっとした有名人だ)
男(スポーツ・学業ともに何をやらせても成績抜群。その上あの眉目秀麗な容姿を兼ね備えているとくれば当然生徒の間で話題にもなるだろう)
男(なんでも彼女は――以前にいた『武棟』でも上級生にまでその名を知られていたと聞く)
女子生徒「はやく、はやくしてよ」ヒソヒソ
女子生徒「わかってるって」ヒソヒソ
女「……」
男(けど、そんな女さんは未だ女子の間に馴染めていないみたいだ)
男(彼女の生真面目な性格・立ち振る舞いがそうさせるのか、とにかく近寄りがたい雰囲気を纏う彼女は周囲の人間から恐れられている。
……女子だけでなく、男子にも)
男「ふ……わかってねえな」
男(そこがいいんじゃないか。そこが彼女の魅力なんだよ。理解しているのは恐らく俺だけだろう)
男(まあもっとも、アイツらが女さんを忌避する理由は他にもあるけどな……)
女「……」ジーッ
男「ん?」
女「……」ジーッ
男「おわっ!? ――っ、(しまった声が……!)」
女子生徒「……え? お、女さん……? いま何か言った?」
男「……!」
女「……いえ、何も」
男(な、ななななな何で女さんが俺のロッカーの前に立ってるんだいま完全に目が合ったぞ!?)
女「……」ジーッ
男(ま、まさか……!)
女子生徒「女さん、着替えないの? 制服そのロッカーの中でしょ?」
男(やっぱそうだったぁああああ! ここ女さんのロッカーかよぉおおおお!?)
男(ハッ、つまり俺が手に握っているこの布は……)モミモミ
男「女さんの制服」
男「……」
スンスン
男「……なるほど///」
男(なんてやってる場合じゃない! このままじゃ俺の人生詰んじまう!)
男(し、しかもよりによって女さんの……憧れの女子のロッカーに入り込んだ変態として
その無様な姿を晒されるというのか冗談じゃないぞー!俺は断固拒否する!)
男(俺は変態なんかじゃありませんよ頭の悪い連中に無理やり押し込まれただけなんです。狭いので土下座は出来ませんが
こうして頭を扉にこすり付けてますだから今日はもう体操着のままでいて下さいそのほうが新鮮で素敵ですよー、女さん!)
男(お願いですから開けないでーーーーーーーーーーーーーー!!)
女「……」ジーッ
男「!」
男(そうだ、どうして女さんはさっきからロッカーの前で突っ立ったままなんだ?)
男(まさか同性の目の前ですら着替えるのは恥ずかしいと……いや、女さんに限ってそんなことはないだろう。
むしろ周りの視線など頓着せずに堂々とその綺麗な肌を露にするに違いない)
男(と、なると……)
女「……」ジーッ
男(……完全に俺に気づいてるよねコレwwめっちゃ見られてるwwww)
女子生徒「じゃ、じゃあ私たち先に教室に戻ってるね。女さんも、また後で」
女「……」
男(! そういうことか。女さん……キミって人は)
男(思えばあの時もそうだった。俺が教室のカーテンで首吊りの真似事をさせられてた時……)
男(女さんが窓のそばに近づいただけで蜘蛛の子を散らすかのようにヤツらが逃げていったことがあった。
そのあと何事もなかったかのように外の景色を眺めていたけど……あれは女さん、さりげなく俺を……)
男(やはり俺だけが知っている。女さんの魅力はこういう所にも――)
ガチャ
男「あん」ドサッ
女子生徒「……へ?」
男「……」
女子生徒「……」
女「……」
男「……こ」
男「ここは一体……? 俺は今まで授業で校庭に……まさか、また転生……? うっ、頭が」
女子生徒「――っ」
「キャーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!」
男「うわーーーっ!? なんで開けるの女さーーーーーーーーん!!」
女「……? 扉を開けないと着替えることが出来ません」
男「んんww答えも優等生!ww」
男「じゃなくて!」
女「貴方こそここで何を? 男子はまだ後片づけをしているはずですが」
男「い、いや、あの、その」
女子生徒「イヤーーーーーーーっ! 男が女子の更衣室にいるんだけどーーーっ!」
男「あまり叫ばないで頂けますか!? 仲間を呼び寄せないで!?」
女子生徒「ギャーーーーーー! 皆来てーーーーーーー!」
男「」
女「いつからここに? ずっとロッカーの中にいたのですか?」
男「……!」
女「良く更衣室に忍び込めましたね。しかもこんな狭い空間に……」ジーッ
女「もしかして男くん、暗い場所が好きなのですか?」
男「……っ、ふ、ふくく。その通り」
男「耐え難きを耐え、忍び難きを忍ぶのが我がモットー。俺の歩む人生は――」
女子生徒「男子も戻ってきた! 男が覗きしてたこと早く言わなきゃ!」
男「……」
女「……人生は?」
男「人生は……」
男子生徒「何ぃ!? あのクソ野郎……! ぶっ殺してやる!」┣¨┣¨┣¨┣¨
男「できればもう一度リセットしたいです。はい」
ここまで
速報は久しぶりです
______________
ガヤガヤ
教師「――では次。えー、教科書の31ページから」
ヒソヒソ
男「……」
教師「ここからちょっと難しい式が出てくるぞ。しっかり聞いておくように」
ヒソヒソ 「よく学校来れるわね」 「どういう神経……」 ヒソヒソ
男「……」
男(視線が痛い。耳も……痛いほど周りが俺のことを影で噂しているのがわかる)
男(あれ以来、このクラスのみならず、学年全体で俺の名は一躍有名になってしまった)
男(女子更衣室に忍び込んだ根暗のキモ男……)
ヒソヒソ 「うわ、こっち見た」 「ヤベ、あいつ本物だろ」 ヒソヒソ
男「く……っ!」
男(本物ってどういう意味だ……クソっ! なんで俺がこんな扱いを受けなきゃなんねーんだ……っ!)
男(楽しそうにおっぱい揺らしてた隣の席の子も、もはや隣と呼んでいいのかわからないくらいに席離れてるしっ!)
男(てか教師も気付けよ! 俺の周りだけミサイル打ち込まれたみてーに不自然な空間できてんじゃねーか! どう見てもおかしいだろ!)
教師「ん? どうした男、何か質問か?」
男「え? あ、いえ……何でも」
教師「? そうか」
ヒソヒソ「喋んな」「[ピーーー]」ヒソヒソ
男「ぐ、く……っ」ギリッ
男(ダメだもう耐えられない。ただでさえクソみたいな日常が続いてたっつーのに、地獄がさらに深まってしまった)
男(何故だ、どうして俺はいつもこんな目に……これじゃあ前のアカデミーにいた時のがまだマシだ)
男「……」
男「やっぱ……転生なんてするんじゃなかったな」ボソッ
教師「――では、この例題を……女」
女「はい」
男(! 女さん……)
女「……」
男(相変わらず凛とした佇まい)
男(女さんも、やっぱり俺のことを軽蔑してるんだろうか……)
教師「うん、さすが女。正解だ」
女「……」
男(俺が閉じ込められていたのは紛れもなく女さんのロッカーだ)
男(駆けつけた生徒たちから私物を盗まれていないかたずねられていた女さんは、
特に何も答えることなくいつの間にか更衣室から姿を消してたっけ……)
男(あの後は色んな意味で袋叩きだった……正直、我ながら情けない声で許しを請う俺の姿を女さんに見られなくて良かったとすら思えるくらいに)
男「はぁ……」
男(事情だけでも説明したい。他のヤツらはどうでもいいが、彼女にだけは何があったのかを釈明してもう一度謝りたい。そして出来ることなら許して欲しい)
男「……」
男「……ていうか」
男(そうなると、まだ女さんにだけ謝ってなかったことになるな……)
教師「――とこ! おい、男!」
男「は、はい!?」ギクッ
教師「……何度呼べば気づく。ボーッとするな。次はお前だぞ」
男「へ?」
教師「へ、じゃない。この問題を解くんだ。ほら前に出ろ」
男「う……」
ヒソヒソ
男「……」
男(や、ヤバイ……まったく授業を聞いてなかった。どの問題だ? まさかあのわけのわからん数式を解きに来いと?
待ってくれ無理だ……解けないとわかっていて前に出るのはわざわざ恥をかきに行くようなもんじゃないか。これ以上嘲笑われるのは正直……)
教師「どうした。さっさと出て来い」
男「あの、わか、わかりません」
教師「はぁ? おいおい男ぉ~、ちゃんと話を聞いてたのか? お前な、これは単純に数字を当てはめるだけの基本中の基本だぞ?
そもそも答えは教科書に載っている」
男「え」
教師「ちゃんと途中の式を書けるかどうかの問題だったんだがな。分からないんだったらそれなりに人の話を聞いて、他の子の答えをしっかり見てろこの覗き魔が」
プー クスクス
男「っ!///」
女「…………」
ここまで
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