ガヴリール「ドロップアウト」 (111)
---A---
今まで本当に欲しいものなんてなかった
もしかしたら欲しいと思ったことがなかったのかもしれない
だからこの感情をどう処理していいのか分からない
はじめて出会った時に欲しいと思った
俗に言う一目惚れだと思う
最初は一緒に居るだけで、遊ぶだけで満足していたのに気持ちは大きくなっていく
「どうしても手に入れたい」その感情が私を苦しめる
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1489682830
---1---
「起きなさい!ガヴ!」
いつからガヴを起こすようになったのだろう
天使なんだからしっかりはして欲しいのだけど、ダメダメなところを見ると今のままでもいいのかなって思ってしまうのだから不思議なものね
それにしても相変わらず汚い部屋……掃除をしてもほんとすぐに汚くしちゃうのよね
いったいどんな生活を送ればこんなことになるのかしら……
「ん~……あれ?ヴィーネ?なんで家にいるの?」
「あんたを起こしに来たのよ!今日学校よ。ほら早く起きなさい」
「えーヤダよ……今日学校休みって聞いたし」
「誰から聞いたのよ……朝ごはん用意してあげるから顔洗ってきなさい」
「はぁー仕方ないなー」
いつも起こしに来てあげているのにほんとひどい態度なのよね
じゃあ起こしに来なければいいだけなんだけど……
ガヴの寝顔がかわいいのよね
普段からかわいいとは思うんだけれど生意気なのがねー
やっぱり冷蔵庫に何も入ってないわね……
パンを買って来て正解ね
「ヴィーネ、ごはん」
「はいはい」
「ん、ありがとう」
ガヴはなんだかんだお礼を言うのよね
こういうところを見ると天使なんだって実感する
お礼を言うのは天使悪魔関係なしに当たり前のことなんだけど
「ヴィーネは食べないの?」
「家で食べてきたのよ」
「ふーん。ねぇヴィーネ。また勝手に入ってきたの?」
「勝手にって?」
「また合鍵使って入ってきたの?」
「そうよ」
「友達だからって勝手に合鍵作るのも部屋はいるのもどうかって思うけどな」
「仕方ないじゃない。直接じゃないとあなた起きないし、開けてくれないこともあるんだから」
「はぁーまあいいけどさ。ヴィーネって変なところだけ悪魔っぽいよね」
「どういう意味よ!」
失礼なことを言う。確かに悪魔っぽくないってよく言われるけど私はれっきとした悪魔なんだから!
たしかに勝手に合鍵作ったり家に入るのは悪いことだとは思うけど……ガヴのためなんだし……
……?ん?なにか違和感が……?
「おーいヴィーネ?どうした?」
「え?ああいや何も」
「腹も膨れたし出るかー」
あれ?もうそんな時間?今日は余裕をもって来たと思ったんだけど……
「どうした?行かないの?」
「え、あー行きましょうか」
---B---
時間が経つにつれて私の欲求は大きくなる
もう一緒に居るだけでは、ただただ遊ぶだけでは全然満足ができない
もっと私を見てほしい……私だけを見てほしい
なぜ彼女は私のものになってくれないのだろう
強引に私のものにしようと何度考えたことか
無理やり手に入れても彼女の心は私に向かない
そうだ、私に気持ちが、心が向かないと意味がないのだ
ああ、どうしたらよいのだろう
この欲求を満たすにはどうしたらよいのだろう
---2---
「おはよう、サターニャ」
「おはよう!ヴィネット、ガヴリール」
「あーおはよう」
「あんたたちいつも一緒に来るわね」
「そうか?」
「たまに別々な日もありはするけど、ほとんど一緒じゃないの」
「ああ、ヴィーネってお節介だからよく私を起こしに来るんだよ」
「えぇヴィネットそんなことしてるの……?」
「だって放っておくとガヴ学校に来ないじゃない」
「たしかにそうだけど、普通そこまでする?ヴィネットが甘やかすからこんなんになるんじゃないの」
「うっさいなー」
「うーん言われてみればそうね。もしかしたら、私がガヴをダメにしてる……?」
「でもやるわね。ヴィネットは全然悪魔っぽくないと思っていたけ」
「ちょ!ヴィーネ!数学の宿題やるの忘れてた!見せてくれ!」
「ちょっとガヴリール!私が話してるとちゅ」
「おいサターニャは宿題終わらせたのか?またグラサンに立たされるぞ」
「なっ……コホン。ふふふ、この大悪魔サタニキア様がそんなことでおびえるとでも思っているの!もちろん宿題はやってないわ!!」
「おいおい。まだそんなこと言ってるのかよ」
「はいはい、もう。宿題見せはしないけど教えてあげるからサターニャも一緒にやりましょう?」
「……仕方ないわねー私に教えさせてあげるわ!感謝しなさい!」
「ははは……」
私がガヴをダメしているか……そんな気がするわね
でも、ガヴを起こしに行かないってことをやめることはできないのよね
寝ているガヴがかわいいし、それにあの時間が私は好きだから……
そういえばサターニャ何を言おうとしてたのかしら?
---C---
いつも彼女のことを考えていた私には彼女のことを考えない時間が欲しかった
ある日偶然見つけた「それ」はそんな私にはぴったりだったのだ
「それ」をやっているときは彼女を忘れることができる
ただただ、そう考えていた
--間1---
「ちょっとヴィネット?ヴィネット?」
前からたまにヴィーネさんから天使の力を感じることがありました
いつもガヴちゃんの近くにいますし、ヴィーネさん自身天使みたいな悪魔でしたから特に気にはしていなかったのですが……
今回は明らかにおかしいですね
ヴィーネさんから天使の気配がものすごく感じられます
これはヴィーネさんに何か天使の術がかけられていますね
「ちょっとラフィエル!ヴィネットが……!」
「落ち着いてください、私の家までヴィーネさんを運びましょう」
「え、ええ分かったわ」
ヴィーネさんにかかわりのある天使はおそらく三人……
私とガヴちゃんとタプちゃん
考えるまでもありませんね……
ガヴちゃん……いったい何を……
「ねえ、ラフィエル?ヴィネットはどういう状態なの?」
「なんで私に聞くんですか?」
「あんたって想定外のことや理解できないことには弱いじゃない?それなのにあんた落ち着いてる。どういう状態かはわかっているんじゃないかしら?」
普段私のことを見てなさそうなのに結構見ていてくれているのですね……うれしいです
「そうですね……おそらくヴィーネさんには天使の術がかけられています」
「天使の術?」
「そうです。天使には天使にしか使えない力があるんです。例えば前にガヴちゃんのパンツやスカートだけが学校に来たことがあったと思います。それも天使の神足通という力です」
「パンツやスカートだけを飛ばす力なの?何に使うか分からないわね……」
「いえ、本来は瞬間移動みたいなものです」
「へぇー便利なものね」
「そして、そんな天使の力がヴィーネさんにかけられているんです」
「誰がそんなことをしたのよ?」
「ヴィーネさんは天使の知り合いはどれほどいたか分かります?」
「いや、分からないわね。でも多分ガヴリールとラフィエルとタプリスの三人だけだと思うわ」
「ですよね。その三人だけだと考えるならヴィーネさんに術をかけた方はすぐに分かります」
「え、なんで?」
「今ヴィーネさんにかかっている術は結構高度なものなんです。タプちゃんにはかけられないレベルのです。そして私ではないことから……」
「ガヴリールって訳ね……でも、おかしくないかしら?その神足通?をあんたの説明だとガヴリールは失敗してるってことでしょ」
「今はああなってますけどガヴちゃんは天使学校主席ですよ?本来失敗することの方がおかしいんです。おそらく、ヴィーネさんにかけてる術に力を多く持っていかれているからだと思います」
「なるほどねー。それでヴィネットは治るのかしら?」
「私が解析して解除します」
「そんなことができるの?」
「一応私は天使学校次席ですよ。できないってことはないと思います」
「そう。ならヴィネットをお願いね。私はガヴリールに会ってくる」
「待ってください……ガヴちゃんがこんなことした理由があると思うんです。だからせめてヴィーネさんにかかっている術を解除してからヴィーネさんと話し合いませんか?」
「……分かったわ。だったら早くあんたの家に行きましょう」
本当は大体の理由を推測することができます
もし、この推測があっているのなら、ガヴちゃんと話すべきはヴィーネさんだと思うんです……
---F---
記憶の改竄と軽い催眠
元来捕らえた悪魔を尋問するときに使っていた術らしい
現在、もしもの時として教わりはしているが、もちろんこんなことに使ってはいけない
しかし、仕方ない
彼女が、ヴィーネが私から離れようとするのだから
私はもう離さないと決めたんだ
絶対に離さないと……
そのためになら私は悪魔にだってなってやろう
---5---
あれ?ここはどこかしら?
私の部屋じゃないわよね……
「あ!ヴィネット!目が覚めた!」
「サターニャ?ここってサターニャの家?」
「違いますよー私の家です」
「ラフィ……あの、私なんでラフィの家で寝ているの?」
「覚えてませんか?下校中にいきなり気を失ったんですよ」
「うーん……覚えてないわ……ありがとう。迷惑かけたわね」
「いえいえ、ところでヴィーネさん確認したいことがあります」
「え、ええ」
「友人の家の合鍵を持つことは普通ですか?」
「え、それは流石に普通じゃないわね……」
親しき仲にも礼儀ありっていうものね
流石に鍵を持つのは友達関係だとしてもやりすぎな気がするわ
「相手がガヴちゃんでも同じことが言えますか?」
「相手がガヴだって関係ないわよ……親友だからこそそこはしっかりしないと」
「ですが、ヴィーネさんはガヴちゃんの家の合鍵をお持ちですよね?」
「え……そんなの持ってないわよ!」
「でも毎日ガヴちゃんを起こしに行ってますよね」
「そうだけど……?あれ?どういうこと?」
考えてみれば確かに私はガヴの家の鍵を持ってる……
でもなんで?私はなんで鍵を持ってるの……?
「……よかったです……解除はできたみたいですね……まだ少し天使の気配が残っている気がして不安だったんですけど」
「よくやったわ!ラフィエル!」
「え?何?なんのこと?」
「ヴィネット!あんたガヴリールに変な術をかけられていたらしいのよ!」
「変な術?」
「あーえっとですね。説明させていただきますね」
「え、ええお願い」
「前からなんですけど、ヴィーネさんから天使の気配を感じることがあったんです」
「もちろんヴィーネさんは天使じゃありませんし、そんな気配を感じられるのはおかしいですよね」
「そうね」
「そこで先ほど調べてみたところどうやら天使の術がかけられていることが分かったんです」
「先ほどのヴィーネさんの反応を見る限り、常識を改変させる術だったみたいですね」
「それをガヴがかけていたってこと?」
「そうです」
……
言いたいことは分かるけど納得がいかない
だって、ガヴがなんでそんなことをしたか分からないし
私にそんな術をかけてガヴに何のメリットがあるのかしら……
ガヴが私にそんなことをしたなんて信じたくない……
「納得いかないって顔をしてますね」
「だって……ガヴがなんで私にそんな術をかけたか分からないじゃない」
「もしかしたら、違う天使がやったってことも……」
「ヴィネットはガヴリール、ラフィエル、タプリス以外に天使の知り合いがいるの?」
「い、居ないけど……タプちゃんがやったって可能性も」
「残念ながらそれはないんです……この術は結構高度なものでタプちゃんには使うことができません」
「だったら、私の知らない天使がやったって可能性が」
「ヴィネット……それこそやる理由がないじゃない」
「で、でも……」
「信じたくない気持ちも分かります……でも、ガヴちゃんがやったって考えると納得がいくんです」
「下校の中、サターニャさんとヴィーネさんは何の話をされていたか覚えていますか?」
「えーと……ごめんなさい」
「ヴィネットの仕送りの話よね」
「そうです。実はその話をしているときから後ろにいたんです」
「ガヴちゃんを堕落させた原因がヴィーネさんのお世話だって話をしていましたよね」
「魔界の制度はよく知りませんけど、悪魔的な行為を行うと仕送り金額が上がるってことでよろしいですか?」
「ええ、その通りよ」
「でしたら、ガヴちゃんをあの状態にしたのがヴィーネさんのお世話だと考えると仕送り金額は上がるはずです」
「天使学校の主席をあんな状態にしたら悪魔的じゃないですか」
「でも実際はヴィーネさんの仕送り金額は上がっていない」
「つまり、ヴィーネさんはガヴちゃんを堕落させたわけじゃないんです」
「……?それってガヴリールが勝手に落ちぶれたってこと?」
「そういうことです。ヴィーネさんのお世話が原因で落ちぶれたのではなくて、ヴィーネさんにお世話をしてもらうために落ちぶれたと考えられます」
「ちょっと待ちなさいよ!ガヴリールがネトゲにハマって落ちぶれて、ヴィネットを体の良い労働力にしようと考えただけかもしれないじゃない」
「それはあり得ません。理由は二つあります。まず一つ目はヴィーネさんの性格です。世話をして欲しいだけなら術をかける必要がないんです。ヴィーネさんは何も言わずとも勝手にお世話をすると思いませんか」
それは確かにそうね……
自分のことだからよく分かる……だらけ始めたガヴをほっとくことはできないかも
「もうひとつの理由はですね。鍵を渡す必要がないんです。鍵を渡してしまうとヴィーネさんが何時でも来られることになってしまいます。他人にあまり干渉したがらないガヴちゃんですよ。考えられますか?」
「それに、もし見られたくないことがあったときにヴィーネさんが来てしまうかもしれません。それはかなりリスキーじゃないですか?」
「だから、ヴィーネさんにお世話をしてもらうために落ちぶれたって考えられるんです」
「おそらく、常識の改変は鍵を渡すときに使ったんだと思います。鍵を渡したのは、ヴィーネさんが何時でも家に来られるように……」
「これがどういうことかヴィーネさんにはお分かりですよね?」
「え、ええ……」
そういうことだったのガヴ?
私と一緒に居たいからこんなことをしたの……
もしかしてガヴも私のことを好きなの……?
ガヴに会って確認しなくちゃ
そして、私もガヴのこと好きだって伝えたい!
「私、ガヴに会ってくる!」
「ええ、いってらっしゃい、頑張ってくださいね!」
「ありがとう!ラフィ、サターニャ!」
---間2---
「ねぇ、ラフィエル?ヴィネットには分かるってどういうこと?」
「私には分からないんだけど……」
「サターニャさんはまだまだ子供ですね」
「なによ!失礼ね!」
サターニャさんにはまだ恋愛は早いのでしょうか?
はぁ、相手が鈍感だとつらいものですね……
「私もガヴちゃんみたいにサターニャさんに術でもかけましょうか……」
「えっ……ラフィエル?今なんて……」
「も、もしかして声に出てました……」
「い、いや、こっち来ないで……怖い、こわい」
「あ、あの冗談ですよ?誤解ですよ?」
「あー逃げないでくださーい!」
今回はここまで
次回で最後かな
書いてると細かいところも気になって量が増える不思議……
前の作品で初投稿って書いたけどよく考えたら初投稿じゃなかったっていうね……
再開します
今回最後の方で選択肢が出てくる予定
---6---
本当にガヴが私のことを思ってくれているのなら……
早くあなたに会って私の気持ちを伝えたい
もちろんガヴがやったことはいけないことだし、許せない気持ちもあるけど
私は、私はガヴと一緒に居たい!
「はぁ……はぁ……」
走ってきたから呼吸が乱れてる……
早くガヴに会いたい……
インターホンを鳴らすのももどかしい
ああ、鍵を持っていてよかった
「ガヴ!」
家の中にはいつものようにだらけてるガヴが居て少しほおが緩む
「な、なに?ヴィーネどうしたの?そんなにあわて」
……?ガヴが私の顔を見た瞬間に固まった
何かついてるのかしら……?
ついてたら嫌だな、恥ずかしい
「……」
「あれ?ガヴどうしたの?」
ふらっと立ち上がったガヴが私の顔を見ながら近づいてくる
なんか様子がおかしいんだけど……
「……」
「ガ、ガヴどうしたの?何か言ってよ……いたっ……」
無言で無表情で寄ってくるガヴが怖く後ずさると何かを踏んで転んでしまった……
ガヴが私に目線の高さを合わしのぞき込んでくる
「……おかしいな」
「えっ?」
「なんで解除されてるの……」
「……ラフィのやつか」
「お、落ち着いてガヴ!そのことを話に来たのよ」
「へぇ……何?また私から離れたいだの、もう面倒見切れないだの言いに来たの」
「えっ……な、何言ってるの?」
「何って前にヴィーネが言ったことだろ……ん?あーそうか記憶の改竄は解けてないのか」
「記憶の……改竄?」
「ラフィ、腕が鈍ったのかな。まだ微かに天使の力が感じられるのに……」
そう言えば、「……よかったです……解除はできたみたいですね……まだ少し天使の気配が残っている気がして不安だったんですけど」って
「何も覚えてないヴィーネちゃんに教えてあげるよ」
ガヴが、いつも表情をあまり出さないガヴが、見たこともないような歪んだ笑みで私を見つめている……
「ヴィーネはね。私を捨てたんだよ」
「ひどいよなー私のことを面倒見てくれるって、私のことを見てくれるって、私のことを一番に考えてくれるって、そう思っていたのにさー」
「私にはもう無理って何?なんで?どうして?おかしいよね?おかしいよね!」
「やっと相思相愛になれたと思ったのに……ヴィーネが私から離れていく……」
「せっかく術を使ってでも私だけを見てもらえていたのに……」
「ひどいなーヴィーネそんなに私から離れたいの?」
「でもね……でもね!もう離さないって決めたから!何があってもヴィーネは私のものだから!ね?ヴィーネもそれでいいでしょ?」
怖い怖い怖い……
今私の前に居るのはいったい誰?
ガヴ?いや、ガヴじゃない……!
ガヴはあんなこと言わない……ガヴはあんな顔をしない!
じゃあ、あいつはだれ?
そうだ……そうなんだ。こいつは、こいつが「悪魔」なんだ……
「い、嫌よ!あんたは誰よ!私の知ってるガヴを返してよ!この悪魔!」
「へぇーそんなこと言うんだ……ひどいなー」
「それに悪魔って」
「ヴィーネは面白いことを言うね」
「悪魔はヴィーネでしょ」
「それにね、ヴィーネ。良いことを教えてあげる」
「悪魔ってね、サタンってね、元々は天使なんだよ」
「だから、私が悪魔だからって何にもおかしくない。そうだろ?」
「そ、それって……」
「そう、堕天したの。もちろん『駄』天使じゃなくて『堕』天使ね」
「ほら、頭の輪っかも真っ黒でしょ?」
ガヴがいつものように天使の格好をする
天使の衣装に白い翼、そして真っ黒になった天使の輪
嘘だ……嘘だ……
信じない……そうだ、こいつはガヴじゃない!
「嘘だ!あんたなんかガヴじゃない!」
「だからひどいなーそうだ、こうしたら分かってくれるかな?今までお世話してくれたヴィーネだったら分かってくれるよね?」
ガヴに抱きしめられた……
ああ、この匂いが、温かさが、柔らかさが、ガヴだって語り掛ける……
どうして?なんでガヴは堕天なんかしたの……
嫌だよ……いつものガヴに戻ってよ……
「ほらね?私は本物のガヴリールだよ。理解できた?」
「……うん」
私の返答を聞きガヴがうれしそうに羽を動かす
きれいな、本当にきれいな真っ白い羽……
しろい……はね?
堕天使の悪魔の羽って何色だったっけ?
……!
そうだ、だったらまだガヴは堕天しきってないはず
まだ、天使のガヴに戻ってもらえるんじゃ……!
「ねえ?ガヴ?」
「ん?なに」
「私、実はガヴのことが好きだったんだ……」
「いつもやる気のなさそうな顔、だらしない恰好、いたずらをしてる時の笑顔」
「全部、全部が好きだった……」
「それにね、もしかしたらガヴに仕組まれてたのかもしれないけど、毎朝ガヴを起こしに行くの楽しみにしてたんだよ」
「ガヴの寝顔が見られるのが楽しみだった……」
「ガヴが朝ごはん食べてる姿が愛おしかった……」
「覚えてないけど、過去の私はガヴにひどいことを言ったのかもしれない」
「でもね、でも今の私はガヴを好きだって、愛してるって言える!」
「ガヴが私のことでどれだけ悩んでいたかは分からない……」
「だから、今日みたいに言ってよ!」
「二人でさ……二人で互いの望み合う形を作っていきましょう」
「それにまだガヴは堕天しきってないんでしょ?」
「……なんでそう思うの?」
「だってガヴの翼とってもきれいじゃない」
「穢れを知らない真っ白な羽、そんな羽を持ってるガヴが悪魔だなんて、堕天使だなんてそんなのありえない」
「ね?まだ戻れるの……二人で頑張って新しく関係を築いていこ?」
「……ヴィーネは私がしたことを許してくれるの?」
「たくさんひどいことをした、術をかけて思い通りにしようとした……」
「それでも、それでもヴィーネは私のこと許してくれる?」
1:「馬鹿ね?当たり前でしょ、許してあげる」
2:「……そうね、絶対に許さないわ」
>>85
まで多数決で
1
今日中には集まるとは思ってなかった
1が4票
2が3票
なので1をやります
何気に接戦で驚いた
「馬鹿ね?当たり前でしょ、許してあげる」
「ヴィーネ……!」
「ありがとう!ヴィーネ!」
「じゃあこれからも許してくれるよね?」
「えっ……」
---7---
「起きなさい!ガヴ!」
今日もガヴを起こす朝から一日が始まる
ガヴの寝顔はかわいいからいつまでも見ていたいけど、そうは言ってられないわよね
「ん~……ヴィーネ?おはよう」
「うん、おはよう」
「朝ごはんの用意するから顔洗ってきなさい」
「はーい」
いつも憎まれ口を叩くのに寝起きは素直でかわいいわね
たしかに冷蔵庫には……うん、ちゃんとそろってる
昨日一緒に買い物行ったんだから当たり前か……
「ヴィーネ、ごはん」
「はいはい」
「ん、ありがとう」
ガヴのお礼を聞くとぽかぽかするのよね
天使の力なのかしら?
「ヴィーネは食べないの?」
「えっ、食べるわよ!ガヴとの朝ご飯を毎日の楽しみにしてるんだから」
「ふふ、私も一緒!今日は何する?」
「んーそうね、映画でも借りてきましょうか」
「映画だったら映画館がいいな」
「昔はほぼ引きこもりだったのに最近は外に出るようになったわね」
「うん、だってヴィーネと一緒だから」
「ふふ、嬉しいこと言ってくれるわね」
「だってヴィーネが大好きだから」
「ありがとう。私も大好きよ」
「うん、知ってる」
「そうなの?」
「うん。あ、そうだヴィーネ!」
「何?」
ガヴがうれしそうに羽を動かしながら言う
「もう絶対離さないから」
きれいな、本当にきれいな真っ黒な羽を
終わり
以上です
キャラクター動かすのって難しいね
そして書いていて気付いた、自分はガヴ→ヴィーネが好きなんだと……
このSSまとめへのコメント
このSSまとめにはまだコメントがありません