シンデレラガールズのSS
白菊ほたる「あなたの『不幸』をプロデュースしますから…!」
白菊ほたる「あなたの『不幸』をプロデュースしますから…!」 - SSまとめ速報
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後日談になります
先にお読みいただいた方がよりわかりやすいかも知れません
上記に続いて、刺激の強いシーンがありますので注意
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1489494975
「お疲れサマです、プロデューサーさん」
「はい、可愛い可愛いアシスタントですよ」
「…なんて、失礼しました」
「プロデューサーさんにとって、可愛いと想えるものは」
「夢中になってる、ほたるちゃんだけですよね」
「そう、ご自身の担当している、アイドルだけ…」
「私なぞ、出る幕ではありませんでしたね?」
「…ふふッ」
「とは言っても」
「今日くらいは、良いじゃないですか」
「何と言っても、今日はバレンタインデー」
「女の子のお祭りみたいなものですから」
「…あ、いま失礼なコトを考えませんでしたか?」
「もう、デリカシーがありませんねえ」
「でも、それほどまでに、ほたるちゃんが可愛いのですよね」
「まだ13歳でしかない娘が、とっても」
「…なんて、知ってますけど♪」
「それはそれとして」
「はい、プロデューサーさん」
「私からもチョコをプレゼントしましょう」
「大丈夫、毒なんて入ってませんから」
「今日、プロデューサーさんが貰ったうちの」
「ただ1つとしてカウントしていただければ」
「…ま、プロデューサーさんにとっては」
「蛍の歌じゃありませんが」
「こっちの水は、苦いかも知れませんね」
「なーんて、少しイジワルが過ぎました?」
「ふふッ」
「っと、あんまり長く引き留めてもいけませんね」
「ほら、今日も」
「ほたるちゃんが、待ってくれていますよ」
「…いつもの仮眠室で」
「うふふふ…ッ」
「良くも悪くも、いつも通り、ですね」
「慣れ親しんだ日常には、まだサヨナラは早いですよね」
「さあ、プロデューサーさん」
「早く」
「『幸せ』にならないと」
「…じゃ、なかった、ですね」
「『不幸』になるために」
「…くくッ!」
「さあ、早く」
「こんなところで前かがみになってないで」
「行ってあげてください」
「いつもの仮眠室に」
「ほたるちゃんのところに…!」
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「…ふふ」
「お待ちしてました、プロデューサーさん」
「えへへッ」
「…今日もまた、不幸をお届けしますね」
「ほたる印の、不幸を」
「あなたのための、不幸を」
「…うふふ」
「さあ、それでは座ってください」
「いつも通りに…♪」
「今日の、幸せだったことは…」
「…」
「…そうですね」
「今日は、バレンタインデーですね」
「プロデューサーさんも、いっぱいチョコを貰ったんですね」
「こんなに、いっぱい、…いっぱい」
「信頼も、愛情も、たくさん…」
「これは今までにないくらいの」
「『幸せ』ですね」
「…」
「その…」
「…はい、プロデューサーさん」
「これ…」
「わ、私からも、贈らせてください」
「…」
「…チョコ」
「受け取って、…もらえます、か?」
「…良かったぁ…」
「えへへ…」
「プロデューサーさんには、お世話になってますから…」
「それに、こんな私でも、…恩を返せるんだって」
「それが嬉しいんです」
「…何よりも」
「ふふ…」
「…それで、プロデューサーさんは」
「どう、ですか」
「私からのチョコを受け取って、…幸せ、ですか?」
「…!」
「…わあ…ッ」
「ありがとうございますッ!」
「嬉しい、です」
「…えへへへッ!」
「お、おかしいですね…」
「プロデューサーさんが幸せにならないように」
「私の不幸で、調整しているのに」
「…『幸せ』は、『不幸』の前兆」
「登り詰めた後は、ただ墜ちるだけですから」
「だから…こうして」
「幸せの芽を、芽である間に刈り取るために」
「不幸で打ち消してるのに」
「私のチョコで、幸せにさせちゃって」
「幸せに、なってもらって」
「…でも、それが、…嬉しくって」
「ふあッ…」
「…えへへ…やっぱり、プロデューサーさんに撫でてもらうの」
「すごく…安心できますね」
「…♪」
「…さあ」
「それでは、そろそろ始めましょうか」
「今日は、いつも以上に幸せなのですから」
「いつも通りではいけませんね」
「私が幸せにしちゃった分も、数えて」
「そうですね…」
「『圧し掛かり』と『深呼吸』の合わせ技でいきましょう」
「それも、いつも以上に、長く、…永く」
「ねえ、プロデューサーさん?」
「ふふッ…」
「さあ、それでは決まったところで」
「仰向けに、寝てください」
「今日も、…プロデューサーさん、あなたの」
「あなたの『不幸』をプロデュースしますから…!」
「…」
「ふふ」
「プロデューサーさんの笑顔、私やっぱり…好きです」
「不幸の塊でしかない、私のスカートを」
「フタの開いたパンドラの箱を、ひっくり返すようにして」
「その中を見せつけても」
「笑顔を跨いで、それでも、笑顔でいてくれる」
「『女の子のパンツを見ちゃうコト』が、嫌いなあなたに」
「その嫌いなものをこんなに見せつけて、こんなに『不幸』にしながらも」
「…笑顔で」
「不幸な時ほど、笑顔で居てくれて…」
「その笑顔で、…しっかりと受け止めてくれる」
「そんな、笑顔が」
「そんな、プロデューサーさんが」
「私は…」
「…えへへ」
「私は、ずっと、その笑顔を見ていたいんです」
「私を想って、私に向けてくれる、その笑顔を」
「だから、そのために」
「あなたを『不幸』にするために」
「一旦、笑顔を隠しますね」
「こうして」
「…んッ…」
「パンドラの箱を、かぶせるように」
「私の、スカートの中へ…」
「…ふふッ」
「見ちゃうだけで不幸になる、女の子のが」
「あなたの大嫌いなものが」
「…こんなに、こんなに、お顔の近くに」
「でも、まだ、ここから」
「今日の不幸のために」
「今日は、いつも以上に、…ぎゅうってしますね」
「仕方ないですよね」
「いつも以上に、幸せだったのですから」
「えい」
「ぎゅむぅぅぅ…っと」
「…」
「…ッ」
「ぷ…」
「…ん…ッ」
「ぷろ…でゅーさーさん…!」
「…ぅ…ん…」
「…」
「…ふふ」
「ちゃんと、深呼吸、してくれてますね…」
「わかります」
「…感じてます」
「…温かい、です…」
「うふふ…」
「…」
「…ッ…」
「…」
「まだ…」
「まだ、かな…」
「…」
「…もっと」
「まだ、足りな…ッ」
「…ん…」
「………」
「……」
「…」
「…ふぅ…」
「…」
「…うふふ」
「これくらい、かな?」
「ねえ、プロデューサーさん」
「不幸になってくれましたか?」
「今日も私は、不幸を届けられましたか?」
「…えへへ」
「良かったです♪」
「でも、今日は」
「これだけじゃあ、ダメなんです」
「だって、今日の『幸せ』は、まだ残ってますから」
「一旦、立ち上がりますね」
「よいしょ…」
「それでは、プロデューサーさん」
「少しだけ待っていてもらえますか?」
「大丈夫です、私はどこにも行きませんよ」
「私は、ずっと居ますから」
「白菊ほたるは、未来永劫、…あなたのそばに」
「…なんて、えへへッ」
「でもいまは、ちょっとだけ、準備をさせて欲しいんです」
「…ね」
「だから、座って待っててください」
「バッグは、どこに置いたかな…」
「あ、あったあった」
「この中に…」
「…うん、良かった」
「無事に、準備できてた」
「あとは…」
「…」
「…んしょ…ッ」
「…」
「…よし」
「お待たせしました」
「はい、それではプロデューサーさん」
「もう1度、このまま」
「スカートの、中へ」
「さあ、どうぞ」
「…えいッ」
「…ん」
「プロデューサーさん」
「…見えます、か?」
「えへへ…」
「さっきのとは、ちょっと違うでしょう」
「さっきのが、少し派手めの、クリームとイチゴの重ね焼きなら」
「今度はシンプルなバニラ、ですね、…なんて」
「少し、変化をつけてみました」
「…味も香りも、保証はできませんが」
「バレンタインで、愛情が込められたチョコ」
「貰うだけで、幸せになれますよね」」
「それなら」
「食べたら、また、幸せになっちゃいますよね」
「それなら、また、不幸にならないと、いけませんよね」
「…ね、プロデューサーさん♪」
「だから」
「チョコ、食べてください」
「いま、ここで」
「私の、…スカートの中で」
「…えへへ」
「何といっても、今日はバレンタインですから」
「きっと今日は、幸せいっぱいだろうなと想ってたんです」
「このために、スカートも大きめのを履いてきたんですよ」
「プロデューサーさんが、この中で、食べられるように」
「だから、プロデューサーさん」
「私のを、間近で見ながら」
「愛情いっぱいのチョコを頬張る、その幸せを」
「この不幸で、…打ち消しながら」
「…ふふッ」
「最初に、私のを食べてくれるんですね」
「嬉しいです」
「美味しいですか?」
「良かった」
「…へへ」
「…」
「…んふッ…」
「…プロデューサーさん」
「ふふ…ッ」
「…」
「チョコの、幸せを」
「打ち消せていますか」
「私の不幸は」
「…」
「…♪」
「…ぜんぶ、全員分、…食べ終わりですね」
「貰ったチョコで」
「いっぱい、いっぱい、幸せになれましたね」
「それで」
「私のスカートの中で」
「いっぱい、いっぱい、不幸になれましたね」
「へへへ…」
「今日も、無事に、不幸をプロデュースできました」
「…嬉しいです」
「それでは」
「チョコを食べたら、お口を拭かなきゃ、いけませんよね」
「えい」
「…よいしょ、っと」
「ふぅ…」
「お口の周り、キレイになりましたか?」
「ふふ、良かった」
「…?」
「汚れちゃった?」
「ああ、バニラがチョコマーブルに…」
「それなら大丈夫ですよ」
「…今日は、私も不幸にならないといけませんでしたから」
「プロデューサーさんに、チョコを受け取ってもらって」
「プロデューサーさんに、幸せって言って貰えて」
「私も、…幸せになっちゃいました」
「うふふふ…ッ」
「その分、私も、幸せを打ち消さなきゃ、と」
「そう、想っていたんです」
「だから、この汚れは、私の幸せを打ち消す不幸ですね」
「洗濯しても落ちないかもしれない」
「もう履けなくなるかもしれない、この汚れが」
「これが、私に必要な、…不幸」
「…ふふ」
「良かった♪」
「さあ、それではプロデューサーさん」
「今日はもう、帰りましょう」
「明日もまた、お仕事がありますからね」
「えへへッ」
「明日の私は、テレビ番組の雛壇、ですね」
「いろんな事務所から集められたうちの、1人に、…私が」
「プロデューサーさんが、せっかくとってきてくれたお仕事ですから」
「アイドル白菊ほたる、頑張ります!」
「なんて、へへへ…」
「はい、それではプロデューサーさん」
「また、明日に…!」
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「あ…」
「は、はい、お疲れサマです…プロデューサーさん」
「…」
「はい、私は大丈夫です」
「撮影も、…うまくできました」
「ミスや撮り直しはありません」
「そうですね…もうお仕事は終わりましたし」
「…帰りましょう」
「…」
「プロデューサーさん、…あの」
「…」
「…いえ、何でも」
「あ…」
「…」
「…だ、ダメです」
「頭を撫でられる資格なんて、私に…」
「…」
「………」
「……」
「…」
「…ごめんなさい」
「何か、失敗した…というものでは、ないんです…」
「ただ、…その」
「今回、ご一緒させてもらった中に」
「居たんです」
「私の、前の事務所で、…一緒だった子が」
「大きなケガをしちゃって、お仕事が流れちゃった子」
「よくお仕事を一緒にさせてもらってた子」
「私が、…不幸にしちゃった子」
「…」
「あの子は、私を覚えてました」
「覚えてくれていました」
「…でも」
「…」
「…いえ、何でもありません」
「そのことがあって、気まずかったなあ、と」
「ええ、すみません」
「心配おかけして、ごめんなさい…」
「さ、帰りましょう、プロデューサーさん」
「ね?」
「ほら、今日も早く、不幸にならなくちゃ」
「…ね?」
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「お疲れサマです、プロデューサーさん」
「はい、可愛い可愛いアシスタント…」
「って、このくだりはもう不要ですね」
「それで、どうされたんです?」
「ほたるちゃんが帰った途端に、PCにかじりついてますが」
「そんな、無名の新参事務所や、倒産した事務所なんて調べて」
「あ、もしかして引き抜きですか?」
「とうとう、ほたるちゃんに飽きて、次をお探しに…ッ!?」
「さっきまでの不幸じゃ、物足りなくなっちゃいましたかあ…」
「…なーんて、そんなわけないですよね」
「あら、それ」
「ほたるちゃんが以前に所属していたトコロ、ですね」
「不幸を乗りこなせなかった、残念な舵取りさん達の」
「もう倒産しちゃって、みんな散り散りになったようですが」
「…あら?」
「その新参事務所に居る子、さっきの、倒産した残念事務所に…」
「ということは、ほたるちゃんの同期だった子、ですか」
「へえ、頑張ってるんですねえ」
「…くくッ」
「まさか、ホントに引き抜きを考えてます?」
「ほたるちゃんの、モチベーションのために」
「同期と意外な再会からの研鑚し合うお互いを目指して…とか」
「あら、違いましたか」
「ふーん、では…」
「…」
「今日のお仕事が終わってから、ほたるちゃんに元気がなかったのは」
「それに関わること、…ですか」
「プロデューサーさん、ほたるちゃんから何か言われてませんか」
「…」
「そうですか」
「…ほたるちゃんが、不幸にさせちゃった子、ですか…」
「…馬鹿馬鹿しい、とは想いますけどね」
「あの子が不幸を呼び込んだ、など」
「…」
「けど、実際、…『そう』なのですからね」
「ケガが原因で仕事が流れた、と」
「よくあることと言えば、そうなのでしょうけど」
「『不幸』の実例を見ていますし、ウソを吐く娘でもないですしね」
「何よりプロデューサーさんが、…よく知ってるかとは想いますが」
「ほたるちゃんの考えが、そのまま具現する」
「あの子が『不幸』を想像すると、それが現実に受胎して襲い来る」
「ウソのような、ホントの話」
「…でも」
「進んで他者の不幸を望むなど、以前のほたるちゃんでは考えられませんから」
「どうしようもない、不幸を想起させる何かがあったとは想います」
「まあそれは、もちろん、いまでも」
「誰かの不幸を呼び願う、そんな娘ではないですけどね」
「健気で優しい娘ですから」
「プロデューサーさんのように、『不幸』にする正当な理由がない限りは…」
「…まあ、そう、ですね」
「今日はもう遅いですし」
「プロデューサーさんも、いつも通り『不幸』になりましたし」
「…ねえ?」
「うふふ…ッ」
「さ、戸締りをして、帰りましょうか」
「プロデューサーさん♪」
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「お、おはようございます、プロデューサーさん…」
「はい、今日もほたるん元気です♪」
「なんて…」
「…」
「あ、あの!」
「昨日は、すみませんでした」
「気持ちの切り替えがうまくいかなくて」
「お、お見苦しい姿を…」
「あふん…」
「…」
「…へへ、えへへ」
「やっぱり、プロデューサーさんに、ナデナデしてもらうと」
「これが1番、許して貰えたんだって、実感できちゃいます」
「はい、今後は気を付けます」
「約束します」
「それで、ですね…プロデューサーさん」
「今日は、これから、レッスンだけでしたよね、私」
「その、レッスンに行く前に、…おまじないと言いますか、その…」
「…」
「…1つ、お願いしても」
「良い、…でしょうか」
「その」
「…」
「私…」
「プロデューサーさんに」
「キスしても、…良いですか?」
「…キス、させてもらえませんか?」
「…ほんの」
「ほんの、少しで良いんです」
「少し、チュッて、するだけで…」
「…ダメ、ですか?」
「…あ、その」
「こここ、この仮眠室なら」
「しっかり、きっちり、ガードが届いてるんで」
「…スキャンダルなんかは、大丈夫とは、想うんです…」
「ですから…」
「…」
「…」
「…ッ…!」
「い…」
「良いんですか?」
「ほ、ホントですかッ!?」
「…ゎあ…ッ…」
「んふふ…♪」
「…ありがとうございます!」
「え、えへへ」
「想った通り…」
「こういうとき、…私が変なコト言い出しても」
「プロデューサーさんは、きっと、笑顔で受け止めてくれる」
「そうして、優しく、頭をナデナデしてくれる…」
「…」
「うふふふ…♪」
「それでは…!」
「………」
「……」
「…」
「…ッ…」
「…」
「あ…ッ」
「プロデューサーさん、その顔…」
「すごく、引きつった、笑顔…」
「すごく」
「すごく…」
「…」
「…それ」
「私が、初めて」
「私の意志で、あなたに見せて」
「私の意志で、あなたを不幸にしたときの」
「あのときと、同じ…」
「そ、そう…ですよね…私なんかじゃ…」
「いえ、言わずともわかります!」
「わかります…」
「あ…また頭を…」
「優しいんですね、プロデューサーさんは」
「…」
「…実は、少し、心配していたんです」
「最近のプロデューサーさんは…」
「笑顔が、とても自然でしたから」
「不幸な時ほど、笑顔で居てくれるあなたが」
「きっと、私の不幸に、耐性がついてきていたんだと想います」
「見て、押し当てて、呼吸するくらいでは、もう…」
「…毎日でしたから、仕方ないと言えばそうなのですが」
「でも、ホントに、どうしようか悩んでたんですよ?」
「…だから」
「だから、…いま、キスして」
「そんな顔をしてくれるのは、喜ばしいことなんです」
「きっと、きっと」
「…ふふ」
「まだ、お役に立てると、わかりましたから」
「それだけで、充分なんです」
「…」
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「お疲れサマで…って、あら」
「…ふふ」
「お疲れサマです、プロデューサーさん」
「リップだなんて、女装でも始めたのですか?」
「それともまさか、新手のオシャレですか」
「うふふふッ」
「いえ、何も言わなくとも大丈夫ですよ」
「慣れないリップ…ええ、口紅って、大変でしたでしょうね」
「でも、ねえ、プロデューサーさん」
「口紅って、そんな乱暴に使うものじゃないんですよね」
「ほら、ちゃんと鏡を見てくださいな」
「非道いお顔が映りますよ?」
「まるで」
「まるで、唇を模したスタンプを」
「何度も何度もメチャクチャに押して、押し続けて!」
「顔中をぐっちゃぐちゃにしたようなッ!」
「あははははッッ!!」
「さっき早足でレッスンに向かったほたるちゃんに」
「何か関係あるのでしょうかね?」
「13歳の娘といっしょに、メークの練習でもされてたんです?」
「それで、その非道いお顔に笑いを堪え切れなくなって」
「真っ赤になりながらも、あんなにもイイ笑顔で…」
「というところでしょうかねえ?」
「…なーんて」
「…く、ふくくくッ…!」
「ほら、プロデューサーさん」
「そこで前かがみになってないで、まずはお顔を拭きましょう」
「いま、来客でもあったら」
「大変なコトに、なっちゃいますからね」
「はい、タオルをどうぞ」
「…名残が惜しいかも知れませんけど♪」
「ふふ、ふふふふッ…」
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「お待たせしました」
「お疲れサマです、プロデューサーさん」
「レッスン、すごくうまくできました!」
「プロデューサーさんのおかげで…」
「元気を、いただいちゃいましたから」
「えへへ…♪」
「プロデューサーさんは、どうでしたか」
「今日は、もう、私が、…その」
「…キスで、不幸に、…しちゃいましたけど…」
「何か、幸せだったことは…あ」
「今日もまた、こんなに…印刷された紙に、端から端まで…」
「…いえ、私は何も問題ないですから!」
「さあ、それじゃあ今日もまた」
「不幸にならないと」
「プロデューサーさん」
「今日も、この中で、不幸になりますか?」
「それとも」
「今日は、…キスで、不幸になりますか?」
「プロデューサーさんの、お好きな方を」
「選んで、ください…♪」
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「プロデューサーさん、お疲れサマです」
「はい、メークにうるさいアシスタントです」
「くく…ッ」
「まだ、リップの使い方に慣れてないみたいですね」
「はい、鏡をどうぞ♪」
「ほたるちゃんのリップも、ずいぶんと乱れてましたしねえ」
「なかなか、大変ですね」
「でも」
「あんな非道い顔なのに、同時に、すごくイイ顔だったんですよね」
「もう帰っちゃいましたけど、訊いてみちゃえば良かったなあ」
「…いったい、どんな理由があったのやら」
「ふふ…ッ」
「…ん、今朝とはまた違いますね」
「まるで、ぐちゃぐちゃにした後に、何かで拭いたような」
「…拭いた?」
「ああ、そういうことですか…」
「言わずともわかります」
「そうですよね」
「拭けるような布を、ほたるちゃんも持ってますよね」
「身に着けてますよね」
「プロデューサーさんの大ッ嫌いなのが、ありましたっけ…ねえ」
「それにしても」
「ずいぶんと、大胆に出ましたね」
「プロデューサーさんも」
「…ほたるちゃんも」
「いえ、スキャンダルさえなければ、大丈夫なのですが」
「…」
「…まあ、私の介入するトコロではありませんね」
「そちらはプロデューサーさんに任せます」
「私は私で、やるべき為すべきを遂行するのみですから」
「では、プロデューサーさん」
「また、明日に」
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「お疲れサマです、プロデューサーさん!」
「えへへッ」
「さあ、いつもの通り」
「今日の締めの、不幸になるときが、やってきましたね」
「今日は、どっちで、不幸になりますか?」
「はい、私はどちらでも大丈夫です」
「どちらを選んでも、プロデューサーさんが、不幸になれるなら」
「どちらを選んでも、私もいっしょに…」
「…うふッ」
「…」
「…ゅ…んッ…」
「ぅむぅ…」
「…」
「…ッ…ぅ…」
「…んん…」
「…」
「…ふふ」
「プロデューサーさん」
「私の、大好きなプロデューサーさん…」
「今日も、不幸になれましたか?」
「今日も、私は、不幸にできましたか?」
「…ふふ、良かったです」
「んふ…ナデナデ、くすぐったくて、…嬉しい、です」
「…えへへへ」
「それが、こうして、また引きつった笑顔に」
「こんなにも、不幸にできました」
「私の、…キスで」
「ふふふ…」
「嬉しい、です」
「キス、受けてもらえて」
「プロデューサーさんが、こんなにも、不幸になってくれて」
「そして、私も、こんなにも…」
「…」
「プロデューサーさん…♪」
「…ふふ」
「はい、私は大丈夫ですから」
「安心していてください」
「私が、ずっと」
「私が居る間は、ずっと」
「あなたの、不幸を…」
「…こう、やって」
「んゅ…ッ」
「…ふおゆーふ、…ん…、ぷろでゅーす、しまふはや…!」
「…んッ…」
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「おはようございます、プロデューサーさん」
「ほたるちゃんの、今日のスケジュールは」
「午前に、週刊誌用の写真撮影があるだけ、ですか」
「では、少しだけお時間をいただけますか」
「ええ、他ならぬ、ほたるちゃんのことでお話が」
「さきほど事務所から出ていくのを見ましたから」
「レッスンが終わるまでは、戻って来ないでしょう」
「…ええ、そうです」
「できれば、ほたるちゃんの居ないところでしたいような」
「そんな、お話です」
「これを見ていただけますか」
「そう、日誌みたいなもんです」
「ほら、ほたるちゃんが以前に所属していた、例の残念事務所」
「そこで、何が起こっていたのか」
「気になることが、ありまして」
「調べてみていたんです」
「ほたるちゃんが所属してから」
「大なり小なり、不幸なトラブルが起こっていたようですね」
「そのうちの、いくつか…」
「アイドル活動を続けられなくなるほどの、後遺症を伴う交通事故」
「作曲家の不正が発覚し、目前に控えていたCDデビューが流れる」
「関係者が舞台装置の大型歯車に巻き込まれ、社会人としても復帰不可に」
「先日に共演した子も、そのうちの1人ですね」
「この子は事務所の階段から落ちて、両足を骨折」
「そのせいで、ドラマのメインキャストから外されてます」
「それから、こちらを」
「近隣ショップの売上品をリスト化したものです」
「ほたるちゃんが、どの時期に、どんなものを購入したか、の」
「…データの入手方法なんかは、眼を瞑っていただければ」
「まあ、そんなことはどうでも良いんです」
「ほら、ほたるちゃんが購入したものを見てください」
「火鉢」
「炭と着火剤」
「ガムテープ」
「縄と踏み台」
「カッターナイフ」
「酸性とアルカリ性の洗剤をそれぞれ」
「…これらが、何を意味するか、…わかりますよね」
「ええ、考えたくはないですが」
「かつての、あの娘は、…命を絶とうと、していたんです」
「それで、購入した時期なんですが」
「例の事務所で『不幸』が起こった時期と」
「ちょうど、重なるんですよ」
「もう少し言えば、…不幸が起こった、その直後なんです」
「ほたるちゃんが、これらを購入してるのは」
「もちろん、毎回に同じモノを購入していたわけではないですね」
「例えば、ほら」
「最初は火鉢と炭と着火剤と、でしたが」
「次は着火剤と、あ、このオガクズもそうですね」
「消耗品を買い足したようです」
「カッターナイフも同じく、2回目からは替刃の購入」
「あの娘の想像したことが、実際に起こってしまう」
「不幸を想像して、不幸が発動し、不幸に陥る」
「きっと、ずっと、試みて、…失敗していたんでしょうね」
「消耗品の買い足しがあるということは、想い留まったのではなく」
「先に進んだうえでの、失敗、ということでしょうから」
「ぶつけたり落としたりして、急にカッターの刃がダメになったりとか」
「なぜかガムテープが剥がれて、部屋が換気されちゃったりとか」
「まあ、成功しちゃってたら、ここには居ないのですが…」
「失敗してしまう、満足に死ぬことすらできない」
「そんな『不幸』を、想像して、結果的に助かってしまったのか」
「それとも」
「…無意識の奥底で、生きていたいと願って、助かり続けたのか」
「…」
「どちらにせよ、…不憫な話ですね」
「それに、うちに来てからも何度か購入してるようです」
「まあ、最初のうちだけ、ですけどね」
「最近に買ったものは、こういう…って」
「プロデューサーさんなら、知ってますよね」
「何せ、ほたるちゃんが購入したものを」
「直に見たり、触れたりしているんですから」
「…リスト上の文字だけで前かがみになるくらいには、ご存知ですね」
「…話を戻しましょうか」
「プロデューサーさん」
「キスの話は、どちらから切り出したんですか」
「…何をそんなに驚いて…」
「まさか、バレてないと、本気で想っていたのですか…?」
「…」
「まあ、それは良いでしょう」
「…」
「推測ですが」
「ほたるちゃんじゃ、ないですか」
「ほたるちゃんから、キスをせがまれたのでは、ないですか」
「…やっぱり」
「あ、別にプロデューサーさんに、そんな甲斐性があるわけないとか」
「そんなのを根拠としたものじゃないですよ?」
「その…って、あら、電話ですか」
「はい、どうぞ出てください」
「………」
「……」
「…」
「どうしたんです、そんなに慌てて」
「…現場で事故?」
「ほたるちゃんの撮影中に!?」
「…」
「…ひとまずは無事なんですね?」
「わかりました」
「行ってあげてください、プロデューサーさん」
「…」
「お気を、付けて」
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「…」
「…あ、プロデューサーさん!」
「ごめんなさい、…せっかくの、撮影なのに」
「突然、機材がガシャンと倒れてきて…」
「ええ、ケガらしいケガはしてないんです」
「なので、復旧次第にまた撮影に戻れます」
「私、がんばりますから…!」
「…でも、少し、心苦しいですね」
「私の『不幸』で、機材をダメにしちゃって」
「ケガなんてしていないのに」
「大事をとって、車内で待機だなんて」
「いっぱい、いっぱい、迷惑を…」
「あッ」
「…ふふ」
「…はい、頭も打ったりしてませんから」
「撫でても、大丈夫…です」
「あ、でも、撮影があるので、わしゃわしゃは厳禁…うふ」
「…♪」
「…」
「心苦しくて」
「それでいて、それなのに」
「…嬉しい、です」
「こうして、プロデューサーさんと」
「また、2人きりで、居られて」
「…」
「…?」
「プロデューサー、さん?」
「…私の顔に、何か」
「ッ!」
「…ゅ…ん…」
「んぅ…」
「………」
「……」
「…」
「…ふぁ…」
「ど、どうしたんです、こんなところで、急に…」
「…は、恥ずかしいです…」
「…」
「…えへへ♪」
「…ごめんなさい」
「実は、少し、期待してました」
「こうなったら、良いなあ…と」
「その」
「プロデューサーさんと、…キス、したいな、なんて」
「…」
「だから、いま、それが叶っちゃって」
「…叶えて、もらっちゃって」
「夢、みたいです…!」
「…ホント、おかしい、ですよね」
「私はアイドルで、あなたはプロデューサーさんで」
「私はお仕事を続けながら、合間であなたを不幸にするだけ、なのに」
「それを越えては、いけないのに」
「身の丈に合わない高嶺の花を、こんなにも、望んでしまって」
「なのに…」
「…」
「…あ」
「もう、撮影の準備ができたんですね…」
「はい、私は大丈夫ですから」
「お仕事に、戻りますね」
「…」
「あ、あの…プロデューサーさん」
「…」
「も…」
「もう、1回、…だけ」
「…ん…」
「ッ…」
「…え、えへへ」
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「お疲れサマです、プロデューサーさん」
「…そう、ほたるちゃんは無事でしたか」
「…」
「いえ、無事ならば何よりです」
「無事にお仕事が再開できたのなら、もっと良し、ですね」
「…ところで、プロデューサーさん」
「ほたるちゃんのお仕事が終わるのも、迎えに行くのも」
「まだ、時間がありますよね」
「少しだけ、お話がありまして」
「良いでしょうか」
「いま、ほたるちゃんと会って」
「もしかして、2人きりになって」
「キス、…しませんでしたか?」
「ええ、ですよね」
「なんとなく、そうじゃないかと」
「…って、プロデューサーさんの方から…ッ!?」
「それは、なんでしょう」
「私が、あなたにそんな甲斐性は、なんて言ったせいですか」
「その印象を覆すためにムキになった、というわけでは」
「あ、そうではないのですね」
「吸い込まれるように、気付いたらキスを…?」
「それ、ともすれば犯罪者のそれですよ?」
「しかし…」
「…」
「プロデューサーさん」
「『あなたが明確な意思を持って、ほたるちゃんにキスをした』」
「そうではない、…ということ、ですね?」
「…わかりました」
「プロデューサーさん」
「お願いがあります」
「あなたにしか、できないことです」
「…」
「ほたるちゃんを」
「どうか、ほたるちゃんを、…『不幸』にしてください」
「順を追って説明します」
「以前に何度も、ほたるちゃんは命を絶とうとしていた」
「自らのもたらす『不幸』に心を痛めて」
「でも、できなかった」
「理由はどうあれ、成功しなかった」
「そうして落ち着いて、また前を向けるようになる」
「その繰り返しだった」
「そこまでは、大丈夫ですね?」
「それで、今のほたるちゃんですが」
「…」
「ほたるちゃん、言ってたんですよね?」
「『幸せは、不幸の前兆』と」
「幸せからの転落を間近でいくつも見たから、そう考えるに至った」
「そうですね?」
「…ならば」
「ほたるちゃんは」
「ほたるちゃんは、やっぱり、…命を絶つ気でいる」
「今更ですけど、あの娘、あなたが好きなんですよ」
「もちろん、知ってますよね?」
「お仕事パートナーとしてではなく、頼れるお兄さんとしてでもなく」
「ただ1人の、男性として」
「そんなあなたに、キスをせがんだ」
「あなたは応えた」
「それが、どういうことかわかりますか」
「ええ、想い出したあなたが前かがみになれる他に」
「そう」
「ほたるちゃんが『幸せ』になるんです」
「幸せを、不幸の前兆だと忌避していたあの娘が」
「『不幸な時ほど、笑え』との教えを」
「決して幸せになるな、と曲解するほどの、あの娘が」
「いま、自ら望んで『幸せ』になろうとしているんです」
「今日のキスも、その1つ」
「恐らく、現場でほたるちゃんが願った、あるいは想像したのでしょう」
「あなたが現場に来て、2人きりのシチュエーションで、キスをしてくれる」
「そんなシーンを」
「でも、自分に会うためだけに、突然に来てくれるハズがない」
「あの娘の自己評価では、きっと、そう考える」
「なら、どういうときにプロデューサーさんが来てくれるか」
「…現場で、トラブルが起これば良い」
「そうした思考の連鎖が、今日の出来事に至ったのではないでしょうか」
「だから、プロデューサーさんも」
「自身の意思を越えて、キスをするに至った」
「そうして、あの娘は、…幸せになった」
「そう、きっと」
「どれだけ望んでも、命を絶つには至らない、至れない」
「だから」
「だから、幸せになって」
「『幸せ』から転げ落ちる、その『不幸』を求めれば良いと気付いた」
「それゆえ、幸せを求めるようになった」
「…私は、そう、考えています」
「だから、プロデューサーさん」
「ほたるちゃんを、不幸にしてください」
「…あの娘が、あなたにしていることと、同じです」
「あの娘が幸せになるのを、不幸を持って打ち消してあげてください」
「不幸の断頭台に続く、幸せという階段を、先んじて崩してください」
「どんな方法でも…とまでは言いません」
「あの娘のアイドルとしての将来、事務所の未来」
「それに、あなた自身も」
「何かを犠牲に捧げることなく、不幸にする」
「…そんな、都合の良いお手軽な不幸があるのか、わかりませんが」
「何か、心当たりはありませんか?」
「ほたるちゃんが、何を自身の不幸と認識していたのか」
「何か、聴いていませんか?」
「…そろそろ、ほたるちゃんを迎えに行く時間、ですか」
「わかりました」
「私も、何か方法がないか考えてみます」
「…」
「プロデューサーさん」
「どうか、今度はあなたが…」
「あなたが、あの娘の『不幸』を、プロデュースしてあげてください」
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「お疲れサマでした、プロデューサーさん」
「はい、あの後は特に問題もなく、撮影が終わりました」
「か、可愛いさに機材が嫉妬したんだよ、なんて言われちゃいまして」
「…へへッ」
「…」
「…プロデューサーさんも」
「私を、可愛いって、…想ってくれてたら」
「そしたら、嬉しいです、なんて」
「えへへへへッ」
「それじゃあプロデューサーさん」
「今日もまた、『不幸』になりましょう」
「仮眠室の女王が命令します」
「…なんて、えへへ」
「さあ、今日は、…どっちにします?」
「と、訊かずとも答えは決まってますよね」
「以前と同じ」
「ずっと同じ」
「『どっちもだよ』、…ですね♪」
「…」
「…んふ…ッ…」
「…」
「んん…ゅ」
「………」
「……」
「…」
「…ぷふぁあ…ッ」
「…」
「ふふ…」
「…プロデューサーさん、私…」
「…」
「うふふッ♪」
「…ん…」
「ぅふう…」
「…さあ、プロデューサーさん」
「次は、こっちで、ですね」
「はい、お身体を倒して、仰向けに…」
「…それは」
「チョコ、レート?」
「時期外れの、バレンタイン、…ですか」
「…それじゃあ、仕方ないですね」
「また、この中で食べていただかないと」
「よい、しょ」
「ふふッ」
「でも、大丈夫ですか?」
「仰向けだと、食べ辛いと想うのですが…」
「そうですよね、気管に入って、むせちゃうかも」
「…わかりました」
「じゃあ、それでお口からこぼさないように」
「私が押さえていれば、良いんですね」
「では」
「…ッ…」
「ど、どうでしょう、プロデューサーさん」
「ちゃんと、食べられていますか?」
「んんッ…」
「か、噛むのに合わせて、お顔が動いて」
「…な、何だか、変な感じですね…」
「で、でも…キライじゃない、です…♪」
「あ、ああッ!」
「ほら、やっぱり気管にッ」
「だ、大丈夫で…きゃッ」
「どうして何で脚を掴ん…こ、これじゃ動けな…!」
「…!」
「わ、わかりました」
「そうですよね、当初の通り」
「フタの役目を担います…!」
「…」
「お、落ち着きました…か?」
「ごめんなさい、飛ばされないように、飛んじゃわないように」
「また、ぎゅうッてしてましたけど…」
「く、苦しかったですよね…?」
「ごめんなさい…」
「…」
「チョコ、こぼれてはいませんよね?」
「よかった、ちゃんとフタになれました」
「…そうですね、その、いま履いてるのが」
「むせちゃった分のチョコで、ちょっと汚れちゃったかもしれません」
「…?」
「そう、ですね」
「汚れちゃった分は、私の『不幸』かもしれませんね…♪」
「でも」
「…これくらいなら、安いものです」
「どんな役割であろうと」
「ちゃんと、プロデューサーさんの、…お役に立てたのですから」
「…だって、私は」
「私では、誰も『幸せ』にできませんから」
「せめて」
「せめて、僅かであっても、役にくらい立ちたい」
「だから、…こうして、プロデューサーさんのために」
「あなたの望む役割を、果たせる」
「それが、何より、嬉しいんです」
「…私」
「あの日、かつての私が『不幸』にしちゃった子に」
「言われちゃったんです」
「私は…」
「『白菊ほたるは、誰も幸せになんてできない』…って」
「…仕方、ないですよね」
「私、こんなですから」
「わかって、いました」
「わかって、いたんです」
「わかって、…いたのに…ッ」
「い、いままで、ずっと、…そうだったのに」
「眼を、背けていたんです」
「背けたかったんです」
「『不幸』にしてしまうことは、見ても」
「『不幸』に落ちてしまった、人達から」
「…それで、私、考えたんです」
「私は、何ができるだろう」
「どうすべきなんだろう、と」
「…」
「…やっぱり、私は」
「裁かれなければ、いけない」
「いっぱい、いっぱい、みんなを、不幸にしちゃった分を」
「私のちっぽけな命をもってして、償わなければいけない」
「だから…」
「プロデューサーさん」
「私、プロデューサーさんが、好きです」
「あなたが、…好きなんです」
「だから」
「私の唇で、チュッてさせてもらうのも」
「この中に、バサッと引き込んで、見てもらうのも」
「その顔へ、ギュッて乗っかるのも」
「すごく…すごく、幸せなんです」
「幸せに、なれるんです…!」
「だから、せめて、ずっと一緒に居させてください」
「ずっと、あなたを不幸にさせてください」
「それで」
「それで、私を、…幸せにさせてください」
「どうか、…どうか」
「私は、誰かを幸せにできなくとも」
「…こうして、不幸にできますから」
「大丈夫、安心してください」
「…プロデューサーさんは、私が」
「私が責任をもって」
「『不幸』にします」
「私がもし、居なくなったとしても」
「幸せに、なってしまわないように」
「不幸にして、…いきますから」
「そばに居られる間は、ずっと、ずっと」
「ずっと、一緒に居て」
「こうやって、不幸にしますから」
「…」
「プロデューサー…さん?」
「あッ、な、涙が…」
「やっぱり、チョコでむせたの、苦しかったんじゃないですか…!」
「すぐ、どきますッ」
「ふあ…」
「も、もう…頭を撫でてる場合じゃ、ないですよ…」
「早く、飲み物か何かを…」
「…んひゅッ…!」
「ぅんん…」
「…」
「…ふぅ…」
「…ありがとうございます」
「ふふ」
「…これでまた、私は、…幸せになれました」
「プロデューサーさんも、不幸になれましたか?」
「でも、そんなに慌ててキスしなくても大丈夫ですよ…?」
「私も、きっと、まだ、もちますから」
「私は、…どこにも逃げませんから」
「いつだって、キスだって、何だって…」
「…?」
「…ゎあ…」
「ふふ」
「抱きしめてもらうのも、…幸せ、です…」
「あったかくて…安心できます…」
「…うふぅ…♪」
「…」
「…」
「…えッ…」
「何を言ってるんですか、プロデューサーさん」
「私じゃ」
「私なんかじゃ、誰かを、幸せにだなんて…」
「…」
「…ぷ、プロデューサーさん…?」
「い、いま、何て…」
「私の、聴き間違いじゃ」
「…」
「…ッ…」
「そんな」
「…そんな…ッ!」
「ホントは、ずっと幸せだった…?」
「見るのも、触れるのも、嬉しかった…?」
「って、ことは」
「ずっと」
「ずっと、不幸に、なってなかった?」
「不幸に、できていなかった…?」
「私、いままで、プロデューサーさんを…幸せに?」
「ッッ!!」
「な、なんで…」
「なんでそんな、ウソを…ウソを吐いていたんですか」
「ずっと、幸せにしちゃってたなんて」
「そんな、私、…私…ッ!」
「なんでッ!」
「プロデューサーさんが、幸せになったら…」
「ダメじゃないですか!」
「だって、幸せになったら…」
「幸せになったら、不幸になっちゃうんですよ!?」
「私が…」
「私が…こんなにッ!」
「こんなに…幸せにしちゃった…!」
「じゃ、じゃあ」
「こうして私を、抱き締めてる、いま」
「…幸せ、なんですか…?」
「…ッ!」
「だめ…!」
「は、放して…離れてくださいッ!」
「嫌…!」
「私、プロデューサーさんを…幸せにしたくないッ!」
「お願い、離れてくださいッ!」
「私で…」
「私なんかで、幸せにならないでくださいッ!」
「お願い、します…!」
「ほら、私ですよ?」
「不幸な不幸な、きっと誰も幸せにできない、私なんですよ…!?」
「ッ!」
「だ、ダメです!」
「なんで、また、首を突っ込んでくるんですか!」
「スカートにお顔を突っ込んだら…!」
「見ちゃダメ…ダメぇッ!」
「ダメです!」
「プロデューサーさんが」
「プロデューサーさんが、幸せになっちゃいますから…!」
「そしたら、プロデューサーさんが…」
「不幸になって…」
「不幸…」
「プロデューサーさんの、不幸…」
「私のを、見ちゃうこと?」
「あれ、でも、ホントは幸せで、…あれ?」
「………」
「……」
「…」
「…んゃんッ…!」
「だ、ダメ、鼻が、当たって…」
「そんなこと、しちゃったら、プロデューサーさんが」
「幸せに、なっちゃって」
「不幸に、なっちゃって」
「もっともっと、見ちゃって、幸せになって、不幸に…」
「あ、あれ…あれ…?」
「プロデューサーさ…んんッ!?」
「ん…と、吐息が…」
「…」
「な、なんで、こんなことを…」
「んッ…!」
「プロデューサーさん…」
「わ、私は幸せで、…でも、プロデューサーさんは」
「あ…あれ…ッ?」
「…んはッ…!」
「そ、そこは…」
「ぷ、プロデューサーさんッ!」
「…や、…ゃん…!」
「…ッ…!!」
「………」
「……」
「…」
「…は…」
「はふ…ぅ…」
「…」
「あ…」
「…プロデューサー…さん」
「あ、ああ…ごめんなさい…」
「お顔が、こんなにも、びしょびしょに…」
「…」
「わ、私のせいで…」
「…あ…」
「…こんな、ときも…」
「頭を…頭、撫でて…くれて」
「…」
「その…落ち着き、ます…」
「…」
「…プロデューサーさん…」
「…」
「『幸せ』って」
「なんでしたっけ」
「『不幸』って」
「なんでしたっけ…」
「私…」
「何が、何だか」
「わかんなく、なって」
「頭の中が、ぐっちゃぐちゃに、なって」
「それで」
「それでも」
「スカートの中に、プロデューサーさんが、居てくれる」
「それが、浮かんで」
「でも、それはプロデューサーさんの」
「不幸だと言っていたのに、幸せだとわかって」
「それを、避けたかったのに、…他に何も、浮かばなくて」
「…プロデューサーさん…」
「幸せって、不幸って、なんでした…んッ」
「…ゅん…ん…」
「…」
「…この」
「キスも、幸せ…?」
「私は…でも、プロデューサーさんは…」
「…」
「プロデューサーさんにも、わからないんですか?」
「…」
「わかるのは」
「プロデューサーさんにとって、何が、幸せで」
「プロデューサーさんにとって、何が、不幸か」
「それだけ、ですか…」
「…」
「私は」
「幸せに、なりたいです」
「幸せに、ならなくちゃいけないんです」
「不幸になるために、幸せにならないと」
「…」
「プロデューサーさんを、…これ以上、巻き込んじゃったら」
「…」
「…えッ…」
「一緒に…」
「一緒に、幸せに…?」
「私が、…私と、プロデューサーさんとで…?」
「…ダメ、ですよ…」
「私は、幸せにはできませんし」
「プロデューサーさんを、道連れには…」
「んッ…」
「…」
「…そうやって、口を塞ぐの、…ズルいです」
「…一緒に」
「一緒に」
「幸せに、なって」
「…」
「なれる、のかな」
「私、幸せに、できるのかな…」
「プロデューサーさんを」
「プロデューサーさんと」
「幸せに、なっても、…良いのかな」
「…」
「…あ」
「ふふ…」
「想い返せば」
「こうやって、頭を撫でてもらえる」
「それだけで」
「私は、幸せだったのかも、知れません」
「プロデューサーさんは…」
「…あなたも、私の頭を撫でて」
「幸せ、でしたか…?」
「…ありがとう、ございます…♪」
「…」
「…プロデューサーさん」
「その」
「…プロデューサーさんの、脚の上に」
「座らせてもらっても、良いですか?」
「へへ…」
「ありがとうございます」
「…よいしょ」
「…?」
「向きが、おかしい?」
「どうしたんです、プロデューサーさん」
「だって」
「こっち向きじゃないと」
「…ん…」
「お顔が、見えないじゃないですか」
「こっち向きじゃないと」
「…ゅ…」
「キス、できないじゃないですか」
「こっち向きじゃないと」
「…ッ…」
「…幸せに、なれないじゃないですか」
「…ねえ」
「ねえ」
「ねえ…」
「ね、プロデューサーさん…♪」
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「お疲れサマです、プロデューサーさん」
「はい、おなじみアシスタントです」
「ほたるちゃんのCD、順調ですね」
「この分だと、今週もランキング1位を独走できそうです」
「ふふッ」
「でも、油断は禁物ですから」
「なんて、プロデューサーさんも、よくわかってられますよね」
「じっくり、ゆっくり」
「1歩ずつ、幸せになっていかないと」
「嬉しいことは、日常の中にたくさん潜んでいますから」
「あんまり早足だと、見落としちゃうかも知れませんからね」
「少しずつで、良いんです」
「ちょっとずつ、ちょっとずつ」
「幸せに、幸せに」
「…ふふ」
「さあ、では」
「今日もそろそろ、仮眠室へ行く時間、ですよね」
「ほたるちゃん、もう来てますよ」
「今日も、あなたを『不幸』にするために」
「…じゃなくて」
「今日も、あなたと『幸せ』になるために」
「羨ましいですね…ふふッ」
「では、あまり足止めをしてもいけないので」
「行ってらっしゃいませ♪」
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「あッ、プロデューサーさん」
「…えへへッ」
「待って、ました」
「ふふ」
「…んゅ…」
「…うふ♪」
「はい、私は、幸せです」
「今日も、幸せ…♪」
「私のCD、みんな買ってくれてるみたいですね」
「な、なんだか恥ずかしい気もします」
「…なんて」
「恥ずかしい、なんて言っていたら…失礼ですよね」
「買ってくれた、みんなに」
「頑張ってくれた、プロデューサーさんに」
「…この、幸せに」
「はい、私はアイドルですから」
「…えへへッ」
「ん…それは」
「ああ、そっか」
「今日は、ホワイトデー、でしたっけ」
「覚えてて、…お返しまで、用意してもらって」
「えへへ」
「また1つ、幸せに、なっちゃいました」
「それじゃあ、プロデューサーさん」
「一緒に、食べましょう」
「…一緒、…に♪」
「…ん…」
「チョコ…おいひいれふ…♪」
「えへへ…!」
「…」
「ねえ、プロデューサーさん…」
「こんな」
「こんな風に、キスをしてもらいながら」
「幸せにして、もらいながら」
「あなたを幸せに、…してしまいながら」
「今更かも知れませんけど」
「私、やっぱり、…答えが、出せていません」
「私の、幸せに」
「不幸に続くための、幸せに」
「あなたを巻き込んでしまうこと」
「これが、ホントに、良いのか」
「…」
「…でも」
「あなたが私を…望んでくれること」
「一緒にと手を取って、口付けをして、お顔を貸してくれて」
「そんな毎日を、約束してくれて」
「続いていくこと」
「それは、とても、…とても、嬉しいこと」
「あの日、あのとき、言ってくれた言葉」
「それが、いまの私を」
「幸せにしてくれている」
「…」
「この先」
「どんな幸せが、待っていて」
「どんな不幸に、堕ちゆくか」
「わからない…わかりませんが」
「でも」
「…ずっと」
「ずっと、一緒に、…2人で…!」
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「…あら、こんな時間に電話なんて」
「プロデューサーさんは仮眠室ですし…」
「アシスタントでも、わかる話であれば良いのですが」
「はい、こちら…」
「ああ、…あなたでしたか」
「はい、こちらは順調ですよ」
「すべて無事にカタがつきました」
「ご心配なく」
「ほたるちゃん、ですか?」
「あの娘は、いま、仮眠室ですよ」
「あの娘のプロデューサーさんと、一緒に」
「ええ」
「『幸せ』に、なっている最中ですね」
「…くくッ」
「大丈夫ですよ、何も心配は要りません」
「解決もしましたし、それに」
「ほたるちゃんとも、プロデューサーさんとも」
「きっちり、お話をしましたから」
「だから」
「だから、もう大丈夫と安心しているんです」
「…ええ、あのプロデューサーさんは、予想以上の働きをしてくれました」
「期待をしていなかったわけでは、ありませんが」
「ほたるちゃんが、プロデューサーさんを不幸にするように」
「プロデューサーさんも、ほたるちゃんを不幸にする」
「そうやって、どちらも幸せになれない」
「石を積んでその度に崩される、賽の河原のように」
「お互いに『幸せ』を『不幸』で打ち消しあう」
「…と、錯覚させ合う」
「そんな風にして、存続させていけば…」
「そう、考えていたんですけどね」
「…くふふふッ!」
「プロデューサーさんが、まさかの、オトコを見せてくれまして」
「『誰も幸せになんて、できない』」
「…その言葉だけは、認めたくなかったとのことです」
「そして」
「ウソを吐いていた分、自身も裁かれなければいけないから」
「一緒に…」
「一緒に、幸せになろうと」
「一緒に、幸せになって、一緒に、不幸に堕ちようと!」
「そう、提案したそうです」
「…ね」
「予想以上、でしょう?」
「それで、ほたるちゃんも、すっかりその気になってくれたようで」
「プロデューサーさんを巻き込むことに、まだ迷いながら」
「それでも、一緒に」
「…『幸せ』になろうと、していますよ」
「ふふ…健気、ですよね?」
「…くく…」
「だから、ほたるちゃんとプロデューサーさんに」
「私から言葉を贈ったんです」
「『幸せを焦ってはいけない』と」
「一足跳びに幸せを求めていたら」
「いずれ、求める幸せがインフレを起こしてしまうから」
「日常の幸せを、大切にするように」
「すべてに感謝し、ゆっくり、少しずつ」
「『幸せ』になってください、と…」
「そうそう、それに」
「更に訊いてみたんですよ」
「どこまで幸せになるのか、と」
「そうしたら、…ふふ、ほたるちゃん、何て言ったと想います?」
「『どこまでも、なれるところまで』だそうです」
「幸せの階段を登って、登り詰めて」
「今まで以上に、幸せになれたなら」
「そうしたら」
「想像もできない不幸が、訪れるハズ」
「いっぱい不幸にしちゃった分だけ、自分も、自分達も、不幸になるべき」
「だから、その不幸に見合うだけの幸せにまで、登り詰める」
「…そう、考えているようです」
「…笑っちゃいますよねえ?」
「だって」
「ふふ…ッ」
「『幸せは、不幸の前兆』」
「その前提が、まず間違っているというのに!」
「プロデューサーさんにも、私、伝えたんですけどねえ」
「幸せが不幸の前兆というのは、ほたるちゃんがそう錯覚しているだけで」
「実際は、ほたるちゃんの想像が、現実となる」
「ただそれだけだというのに」
「過去だって、幸せを見せ付けられて」
「それが引き金となって、悪い想像をしてしまって」
「結果的に、現実に『不幸』が起こってしまった」
「ただ、…それだけだというのに!」
「当人が『幸せ』だったか否かなど、これっぽっちも関係ないのにッ!」
「…あははッ!」
「ええ、言ったように」
「ほたるちゃんと、プロデューサーさんは、いまも」
「幸せ、ですよ」
「幸せに、なっていますよ」
「2人で、一緒に!」
「罪悪感から、不幸へ逃げるために!」
「お互い、舐め合いながら!」
「不幸なんて」
「幸せから堕ちゆく先に、不幸なんてないのに!」
「そもそも、堕ちることさえないのに!」
「想像がそのまま現実になるのだから」
「『不幸』を想像できなければ、起こることはないのに…」
「その『不幸』を求めて!」
「…起こりもしない『不幸』が、裁いてくれると信じて!」
「そこに、救いを求めて!」
「あの2人は、『幸せ』になりますよ!」
「これから、一生をかけて、ゆっくり、ゆっくりとッ!!」
「あははははははッッッ!!!」
「…もしかしたら」
「例えば、自身に自信を持てなかった、あの娘が」
「不幸に振り回されることなく、活動をしていたら」
「例えば同じように、自信を持てない子達が居たとして」
「一緒に、歩いていける、そんな仲間を創れていたら」
「違う結果になっていたかも、知れませんね」
「不幸に正面から立ち向かえるような、強い意志を持った娘に」
「それこそ日常の小さな幸せに、気付けるような娘に」
「そんな姿が、見られたかもしれませんね?」
「くくくくッ!」
「まあ、でも、良いじゃないですか」
「ふふッ」
「だって」
「だって、誰も」
「『誰も、損をしていない』じゃないですか」
「ねえ」
「…うふふッ♪」
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「ん…ッ」
「うふッ…」
「プロデューサー、さん」
「じゃあ、そのまま、寝転がってください」
「また、いままでみたいに」
「幸せに、しますから」
「幸せに、してください」
「ふふ…」
「ん…」
「お口の周りに、チョコが?」
「…大丈夫ですよ」
「プロデューサーさんがくれたの、ホワイトチョコじゃないですか」
「ほら、見てください」
「…今日のは、白地ですから」
「それくらいなら、大丈夫です」
「それくらいなら、不幸になんて、なりませんから」
「えへへッ」
「だから、安心して、…受け止めてください」
「…えいッ♪」
「ふふッ」
「プロデューサーさんの、呼吸が、伝わって」
「ぎゅッてして、動きも、ぜんぶ、わかって」
「すごく、すごく、あったかくて」
「…幸せ」
「幸せ、です♪」
でも、まだ、足りません」
「いっぱい、いっぱい、幸せになるために」
「いっぱい、いっぱい、いろんなことをしましょう」
「いろんな幸せを、探しましょう」
「2人、一緒に…!」
「そうですね…」
「せっかくだから、向きを変えてみますね」
「よいしょ」
「ん?」
「ああ、そうなんです」
「これ、後ろに黒猫さんが居てくれるんです♪」
「可愛いでしょう」
「このあいだ、雪美ちゃんと一緒に、お買い物に行きまして」
「雪美ちゃんが気に入ったみたいで、つい私も」
「お揃いなんですよ、これ」
「うふふッ」
「…黒猫さんが横切っちゃうと、不幸になる」
「迷信でよく言われますね」
「でも、安心してください」
「この黒猫さんは、不幸を連れてきませんよ」
「だって」
「横切ったりしないで、ここに、どっしりと居座りますから」
「ほら、こんな風に、…ぎゅうううッて」
「なんて…へへへッ」
「あ…ッ」
「私、こっちの向きの方が、好きかも知れません」
「だって」
「プロデューサーさんが、幸せになってくれてるのが」
「眼に見えるんですから」
「仰向けで、私がお顔を押さえている以上」
「…いつもみたいに、前かがみには、…なれませんからね」
「えへへへへッ」
「ね、プロデューサーさん」
「プロデューサーさんのこと、もっと、知りたいです」
「プロデューサーさんの幸せを、もっと、もっと」
「そうして、幸せにして」
「私も、幸せにしてもらって」
「…ね、ね、プロデューサーさん」
「これからも、ずっと」
「私は、プロデューサーさんの『幸せ』を」
「プロデューサーさんは、私の『幸せ』を」
「2人で、ずっと、一緒に…」
「ずっと、ずぅっと…!」
「お互いに『幸せ』をプロデュースしましょうね…!」
以上で終了です
お読みいただき、ありがとうございました
html化の依頼してきます
以前に書いたもの
佐久間まゆ「記憶喪失のプロデューサーさん…♪」
佐久間まゆ「記憶喪失のプロデューサーさん…♪」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1440581074/)
佐久間まゆ「記憶喪失のまゆと、一緒に…♪」
佐久間まゆ「記憶喪失のまゆと、一緒に…♪」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1440870874/)
こちらもお読みいただけると幸いです
このSSまとめへのコメント
このSSまとめにはまだコメントがありません