狐娘「いや、生贄とかいらんから」 (58)
※昔某所に上げた物のリメイクです
狐娘「油揚げ持って来い油揚げを」
狐娘「だいたいお前らここんとこの日照りがこのワシのせいみたいに言うがワシ別に何もしとらんからな。わかっとるんかこのボンクラ共が」
村人「しかし…最近の日照りで作物は育たずわしらにはもう生贄位しか…」
狐娘「しょうがないのう…雨降らせてやるから必ず油揚げ持ってくるんじゃぞ…まったく」
村人達「ほ、本当ですか!」 「たすかったぞ!」 「よかったなぁ」
狐娘「で?一体どこの村じゃ?ワシは基本的にこのあばら家から離れんから人間の生活圏の事は最近疎くての」
村人「へぇ、ここから山五つ超えた集落でさぁ」
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狐娘「…また随分遠いなオイ…正直行くの面倒じゃの…」
村人「そ、そんな!そこを何とか…!何卒…」
狐娘「嫌とは言ったが行かんとは言っとらんじゃろうが。せっかちは貰いが少ないぞ?かかか」
狐娘「ま、近いうちに雨乞いに出向く。お前らのとこの長に話を通しておくのじゃぞ。色々ややこしく準備が要るが…まぁ早ければ一週間後には行けるじゃろ。」
村人「有難うごぜえやす!」
狐娘「貸しじゃぞ。忘れるでないぞ」
狐娘「それと」
狐娘「次にまた童を贄に寄越す様な下らん真似してみろ、今度はワシの祟りが待っているからの。ワシは六尾の半端者じゃが集落の人間共をねじり[ピーーー]くらい造作もない事よ。心しておく事じゃ、決して楽には殺さんからな」ギロリ
村人「は、ははーっ」
狐娘「うむ、わかればよいのじゃ。二度とするでないぞ。まぁ茶でも飲んでいけ、せんべいもあるでな」
────────────
────────
────
──
‐数日後 村‐
狐娘「…」
狐娘「………仰ギ願ワクハ コノムラスベテノ人々ノ罪ト過チトヲ赦シ給イテ 大神ノ愛ノ潤イヲ天降シタマイテ 乾ケル土地ヲ潤シ給イ 枯レナントスル田ノモノ 畑ノモノヲ救ケタマエト希ミ奉ル由ヲ 聞コシ召シ相諾イ給イテ
住吉ノ大神 水火土ノ大神ノ傘下ニマシマス スベテノ龍神 水神 スベテノ水クマリノ神ヲ動員シ給イテ ユタカニ雨降ラシ給エト畏ミ畏ミ申ス…」バッ バッ バッ
狐娘「…」カッ
ポツ ポツ ザァァァァァ
狐娘「…ふぅ。どうやら上手く運んだようじゃな」
村人たち「あ、雨だ!」「やった!」「助かった!」ワーワー
村長「おおお…何とお礼を申し上げたらよいのか…」
狐娘「カカッ、言ったろ。ワシにかかればこの程度朝飯前よ」フンス
村人たち「バンザーイ!お稲荷様バンザーイ!」ワイノワイノ
狐娘「かかか!もっと褒めろもっと褒めろ!」
────────────
────────
────
──
‐それから数十年後‐
狐娘「…あーそういえばそんな事あったな…完全に忘れとったわ…」
狐娘「あれからめっきり音沙汰無いが、まぁ油揚げ位ぐらい貰ってもバチはあたらんじゃろ」
狐娘「ちょっと村に催促に行くか…確か山を五つ…」ウワ メンドクセ
狐娘「正直流しても良いんじゃが…ううむ、約束は約束じゃしな…」ヨッコイセ
数日後
狐娘「…なんじゃ?やけに道が荒れとるのぅ」テクテク
狐娘「む?地蔵が倒れとるじゃないか。バチ当たりな連中め…よいしょ」
狐娘「」ナムナム
狐娘「催促ついでに説教しないといかんの」テクテク
狐娘「そろっと村に着くはずなんじゃがな…」テクテク
狐娘「はて…この辺に見張り矢倉があったはずじゃが…まぁ良いか」キョロキョロ
狐娘「……」テクテク
狐娘「なんじゃこれは…まるっきり廃墟じゃ…」
狐娘「よく見たらあちこち骸だらけじゃ…」
狐娘「人の気配がまるで感じられん」
狐娘「なんじゃ…戦でもあったのか…?」テクテク
狐娘「む?人間の臭い…」スンスン
狐娘「こっちか…」テクテク
狐娘「この家じゃな」
狐娘「邪魔するぞ!誰ぞ居らぬか?」ガラッ
弟「!」ビクッ
兄「……」 ゴホゴホ ガハッ
狐娘「童が二人だけか…親はどうした」
弟「も、もしかして神様!?」
狐娘「ん、んー…まぁ似たようなもんじゃ」
弟「お願いします!兄ちゃんを助けて!」
弟「お願いだよぅ…兄ちゃんが死んじゃうよぉ…」グスッ
狐娘「どれ…見せてみろ…」スッ
狐娘 (結核の末期か…村もこれで全滅か。何にせよ、こいつはもう駄目じゃな)
狐娘「オイ、落ち着いてよく聞くんじゃ」
狐娘「お前のアニキはもう助からん」
弟「ウッ…うわぁぁ…うぇぇ…」メソメソ
狐娘「泣くな!!!」ギロリ
弟「ひっ」
狐娘「あまりグズグスやかましい様ならワシがこの場で食い[ピーーー]ぞ。男なら泣くな…わかったか」
弟「うぐぐ…ひっく…」
狐娘 (ワシに尻尾があと三本あればあるいは助けてやれたかも知れぬが…すまぬ…)
兄「…神様」
狐娘「なんじゃ」
兄「アイツの…面倒…見てもらえませんか…」
狐娘「ワシがか…」
兄「後生です…!どうか…ゲホッゴホ」
狐娘「…わかった…もう喋るな…」
弟「ヒック…グスッ…兄ちゃん…」
兄「強く…生きろ…」ガクッ
‐数時間後‐
狐娘「最後の別れは済んだか?」
ショタ「…」
狐娘「ワシはもう帰るぞ じきに日も暮れる」
ショタ「……」グスッ
狐娘「…ここに居たいなら止めはせんがの、童一人残った所で妖の飯になるだけじゃぞ」ザッザッザッ
ショタ「グスッグスッ」
ショタ「グスッ…スン」トコトコ
書くの忘れてましたがいつまでも「弟」表記では何かアレなので今後はショタという事で
‐数時間後、山道‐
狐娘「」ザッザッ
ショタ「ハァ…ハァ…」フラフラ
ショタ「…」ドサッ
ショタ「…」
狐娘 「」ミミピクリ
狐娘「…」チラリ
狐娘「」ザッザッ
狐娘「熱は…無いの」オデコクッツケ
狐娘「童にこの山道はきつかったか…もう深夜じゃしな」
狐娘「仕方がない奴じゃ…よっこいせっと」オンブ
ショタ「すう…すう…」
狐娘「くく、呑気なもんじゃな」
ショタ「すう…グスッ」
狐娘「しかしのう…この年で天涯孤独か…別段珍しい話でもないが…憐れじゃなぁ」
‐狐娘宅前‐
狐娘「コレ、起きんか 着いたぞ」ユッサユッサ
ショタ「…?」
ショタ「!?ごっごめんなさい!ボクいつの間に…」アタフタ
狐娘「構わん、それより寝るんなら飯を食ってからじゃ。童を腹っぺかしで寝かせる訳にはいかん」
ショタ「あ、あの…」
狐娘「なんじゃ?早く降りんか」
ショタ「一旦屈んでください…」
狐娘「ああ、すまんの」シャガミ
ショタ「ごめんなさい…」
狐娘「まぁともかく中に入れ。話はそれからじゃ」
狐娘「まぁ座れ」
ショタ「っはい、失礼します…」
狐娘「暗くてすまんな。今囲炉裏に火を出す…」ボッ パチパチ
狐娘「普段は火打ち石を使うんじゃがな。まぁたまには妖術も捨てたモンではないの…かか」
狐娘「朝の雑炊の残りじゃ。多目に作っといて正解じゃったわ」
狐娘「直に温まる、しばし待て」グツグツ
ショタ「……」
狐娘「なんじゃオイ、シケた面じゃな。え?」ククク
ショタ「こんなごちそう…良いんですか?」オドオド
狐娘「ごちそうて…油揚げも入ってない山菜雑炊じゃぞ…」グツグツ
狐娘「……ここ数日何を食っておった?」
ショタ「木の皮とか…柔らかい草をよく煮て食べてました」
ショタ「兄ちゃんが動ける日はネズミを捕ったり…」
狐娘「…………」
狐娘「ホレ…雑炊…腹一杯食え」グスッ
ショタ「いただきます…」ゴクリ
ショタ「おいしい…おいしいよぉ…」パクパク
ショタ「………」
狐娘「どうした遠慮するでないわ」
狐娘「そうじゃ、ぬか漬けも出してやろうかの!今度漬け方を教えてやろう」
ショタ「いいのかな…?」グスッ
狐娘「なんじゃ漬物くらいで大袈裟な」
ショタ「ぼくだけこんな…ごはん食べたり…」グスッ
ショタ「兄ちゃんを差し置いて…」グスッ
ショタ「いいのかなぁ…?」メソメソ
狐娘「!」
狐娘「そんなもん…」フルフル
狐娘「いいに決まっとるじゃろうがァ!!!」ガタッ
ショタ「」ビクッ
狐娘「お主の兄貴は何よりも先ずお主の幸せを考えとったわ!」
ショタ「でも…ぼくが居ると神様にめいわ」
狐娘「迷惑じゃと!?ふざけるなよ!お主はもうワシの子じゃあ!子を迷惑に思う親など何処の国にも居らんわァ!このたわけが!!」
ショタ「!」
狐娘「子の幸せを願わん親など居はせんのじゃ…」ギュッ
ショタ「うぐぅぅ…」
狐娘「よしよし…我慢せんでもよい食ったりせんわ」ナデナデ
ショタ「うわぁぁぁぁん!」
狐娘「お主の兄貴の霊は何時もお主と共にある。それに何より、ワシも居る。」
ショタ「グスッ ヒック」
狐娘「お主は独りでは無い。忘れるでないぞ」
ショタ「……スゥ」
狐娘「泣き疲れて寝おったか…」ナデナデ
狐娘「とりあえず布団敷いてやるかの…」
‐翌日早朝‐
ショタ (…?いい匂い…母ちゃん…?)
ショタ「はっ!?」ガバッ
ショタ「……」キョロキョロ
ショタ「神様…?どこ…?」キョロキョロ
ショタ「家の中には誰も居ない…」
ショタ「外に居るのかな…」トコトコ ガラッ
ショタ「うわ…まだ暗いや…」
ショタ「神様…?」
シーン
ショタ (もしかしてぼく捨てられたんじゃ…?)
ショタ「兄ちゃん…一人はこわいよ…神様…!」
ヒュゥゥゥゥゥゥ-
ズドォォォォォォォン!
ショタ「うわぁっ!?」
狐娘「おーなんじゃずいぶん早いの。危うく踏みつぶすとこじゃったわ」シュゥゥゥ
ショタ「」
狐娘「かか、驚かせてしまったのう」ケラケラ
ショタ「ど、どこから」
狐娘「上じゃ、上。」
狐娘「走りよりこっちのが速いんでな。横着したんじゃ」
ショタ「すごいんですね…」
狐娘「ふふん、ワシにとってこの程度朝飯前じゃ、もっと誉めてよいぞ!」フンス
ショタ「スゴイ!!さすが神様!」
狐娘「ん…あー…ずっと言おうと思っとったんじゃが…」
ショタ「?」
狐娘「神様はよせ、そう呼んでくる連中も居なくは無いが、そんな大層なモンじゃない」
狐娘「実際、お主の前に現れたのがワシでなく神だったら…」
狐娘「お主の兄貴は死んどらん」
ショタ「…」
狐娘「そうじゃな…ワシの事は"狐娘様"と呼べ」
狐娘「ワシは妖狐じゃ」
狐娘「それも…尾の数も九に満たない半端者じゃ」
狐娘「…どうじゃ、幻滅したろう」
ショタ「そ…そんなこと無い…!」
狐娘「!」
ショタ「狐娘様は…ぼくを助けてくれました!」
ショタ「神様と違って…ぼく達の前に来てくれた!」
ショタ「ぼくは神様より狐娘様の方が好きです!!」
狐娘「くくく…かかかかっ!」
狐娘「こやつめ!嬉しい事を言ってくれるわ!かっかっか!」グリグリ
ショタ「うぅー痛いですよ、狐娘様!」
ショタ「所で…その大きな風呂敷は…」
狐娘「おお!よくぞ聞いてくれたの!」
狐娘「まぁ中で見せてやる!」フンス
狐娘「お主はここで暮らしていく事になるからの、夜の内に色々仕入れに行っておったのじゃ」
ショタ「そうだったんですか…」
狐娘「まずは布団じゃ。コイツは結構奮発したんじゃぞ!なんせ一番いい綿じゃ。ワシのペラ布団よりもよっぽど寝心地はよいと思うぞ」 ポムポム
狐娘「次に着物じゃ。流石にいつまでもそのボロを着させて置くわけにもいかんからの。」 スッ
狐娘「それと茶碗、湯飲み、箸じゃ。ついでに皿も何枚か買った」 カチャカチャ
狐娘「まぁ、ざっとこんな所じゃな」
狐娘「あとは雑貨やら、ちょっとした菓子やら、ワシの日用品やら何やら…」
ショタ「日用品?」
狐娘「…お主にひとつ良いことを教えてやろう」ジト
ショタ「はい?何でしょう?」
狐娘「女子が何を買ったか深く詮索するのはあまり賢いとは言えん」
ショタ「…?何でですか?」キョトン
狐娘「…何でもじゃ」
ショタ「わかりました、狐娘様が何をお買いになったのかちょっぴり気になりますけど…」
狐娘「お…お主にはまだ早いわ!」
ショタ「?」
ショタ「あ…そうだ、このお布団は狐娘様がお使い下さい!」
狐娘「なにを言うか、遠慮など必要無いのじゃぞ」
ショタ「そうじゃなくて…ぼく狐娘様が使っていたお布団で寝たいです」
狐娘「あんなボロ布団でよいのか?」
ショタ「何だかあのお布団、いい匂いがして落ち着くんです」
狐娘「そうか?こっちの方がよく寝れると思うんじゃがなぁ…本当によいのか?」
狐娘「ならばワシは今日からこっちで寝るが…換えたくなったらいつでも言うんじゃぞ?」
ショタ「はい!」
狐娘「さて、そろそろいい時間じゃし飯にするかの」ヨッコラセ
ショタ「あ、ぼく釜戸に火を起こして来ますね」
狐娘「出来るのか?」
ショタ「はい、それくらいなら!」
狐娘「そうか、なら頼むぞ。気を付けるんじゃぞワシは畑から野菜を取ってくるからの」
ショタ「はい!」トテトテ
ショタ「フーッフーッ」パチパチ メラメラ
狐娘「ほう、もう火が大きくなったのか?なかなか手際が良いではないか」
ショタ「えへへ、ありがとうございます」
狐娘「せっかくじゃし包丁の扱い方を教えてやろうか?」
ショタ「はい!教えて下さい!」
狐娘「ようし!じゃあまず包丁を持ってみい」
ショタ「はい!」ニギリ
狐娘「そんなんじゃ切れんぞ」
狐娘「包丁は…この辺を…こうして…持つんじゃ」スッ ニギッ クイッ
ショタ「ん…」(狐娘様の手…温かくて柔らかいな…)
狐娘「その状態で…大根菜を切り落としてみろ。おっと、左は軽く握るんじゃぞ。」
ショタ「はい!」ザクッザクッ
狐娘「よし、まぁこんなモンじゃろ」
狐娘「お主はこのオロシガネで大根おろしを作ってくれ」
狐娘「ワシは味噌汁に入れる分を切るからの」
ショタ「はい!」ジャリジャリ
ショタ「」ジャリジャリジャリジャリ
狐娘「楽しそうじゃな?」トントン
ショタ「えへへ」ジャリジャリガリッ
狐娘「あ」
ショタ「っつ…」ポタポタ
狐娘「結構深くやったな…ちょっと見せてみい」スッ
狐娘「」チュパ
ショタ「!?狐娘様!そんな、舐めちゃ汚いですから!」
狐娘「」チュパチュパ
ショタ「あっ…」ゾクゾク
狐娘「」チュポン
狐娘「男の癖に変な声出すでないわ」
狐娘「血は止まったじゃろ?」
ショタ「ほんとだ…」
狐娘「まぁ止血しただけじゃから包帯は巻くぞ、こっちじゃ」
狐娘「消毒用の強い酒じゃ、ちとしみるぞ」トクトクトク
ショタ「いい゛っ!?うぅぅ」ビクッ
狐娘「泣くな!」フキフキ
ショタ「くうっ…」
狐娘「ようし、よく耐えた」クルクル
狐娘「これでよし、後の飯支度はワシがやるからお主ここで休んでおれ」ポンポン
ショタ「すいません…」
ー一時間後ー
狐娘「おーい飯が出来たぞ」
ショタ「あっ運ぶの手伝います」
狐娘「熱いぞ、気を付けるんじゃ」
ショタ「はい!」ソロ?リソロ?リ
狐娘「くくっ猿回しの猿みたいな動きじゃ」トコトコ
狐娘「今度お盆を買ってやろう」
狐娘「頂きつかまつる」スッ
ショタ「いただき…つかまつる!」スッ
狐娘「マネするでないわ」モグモグ
ショタ「えへへ」モグモグ
ショタ「ご飯食べたら何かお手伝いすることありませんか?」パクパク
狐娘「まぁそう急くな…そうじゃな、食休みしたら畑仕事を手伝って貰おうかの」パリパリ
ショタ「はい!」パリパリ
ー食後ー
狐娘「フー 食ったのぅ」
ショタ「…」ブルッ
狐娘「ん?寒いか?」
ショタ「はい…少し」
狐娘「ふむ…じゃあ囲炉裏に薪を足すか…ちょっと待っとれ」
ショタ「すみません…」
狐娘「あれ…薪が切れとる」
狐娘「すまん…忘れとった」
ショタ「あはは…じゃあ午後は薪割りですね」
狐娘「そうじゃな…」
狐娘「!おう、もっと近う寄れ」
ショタ「?はい」スッ
狐娘「それ」ブワッ
ショタ「わぷっ」モフ
狐娘「どうじゃ?なかなか温いじゃろ」モフモフ
ショタ「もふもふですね」モフモフ
狐娘「くく、誉めても何も出んぞ」モフモフ
狐娘「よし、そろっとやろうかの」
ショタ「頑張ります!」フンス
狐娘「まぁお主は怪我もあるし今日はそこまでの力仕事は無いんじゃがな」
ショタ「あ、そうなんですか」
狐娘「残ってる大根全部抜いてくれ」
狐娘「全部と言っても十数本じゃ、大した事は無い」
狐娘「ワシは隣の畑で新しいウネを作っとるから何かあったら呼ぶんじゃぞ」
ショタ「はい!」
ショタ「結構広いなぁ」トコトコ
ショタ「あ、これかな?」
ショタ「ふんっ!んんんん!」ズボッ
ショタ「うわぁ!?」ドサッ
ショタ「いてて…」
ショタ「楽しい…」
ショタ「…そういえば狐娘様ってあんまり神通力使わないよね…」ズボッ
ショタ「なんでだろ?」
ショタ「神通力があれば多分色々一瞬で終わっちゃうのに」ズボッ
ショタ「あっこれで最後か」
ショタ「よっと」ズボ
ショタ「狐娘様ー!終わりましたー!」
狐娘「おっ、ご苦労じゃったな」
ショタ「大根どこに置きます?」
狐娘「そうじゃな、とりあえず台所に運ぶかのう…手伝ってくれ」
ショタ「はい!」
狐娘「お主、泥だらけじゃな」ククク
ショタ「あ、本当だ」
狐娘「薪割りが終わったら風呂に入らんとな」
ショタ「良いんですか!?ありがとうございます!」
狐娘「当然じゃ。楽しみにしてるがよいぞ」
ショタ「あの、ひとつお聞きしたい事があるんですけど…」
狐娘「ん。なんじゃ?」
ショタ「狐娘様はどうしてあまり神通力とかを使わないんですか?」
狐娘「そうじゃなー」
ショタ「どうして使わないんですか?畑仕事なんて一瞬で終わりそうじゃないですか」
狐娘「んー」
狐娘「お主大根抜いてみてどうじゃった?」
ショタ「すごく楽しかったです!時間がたつのがあっという間で…」
狐娘「じゃろ?楽しかったじゃろ?」
狐娘「そんな楽しい事を力使って一瞬って恐ろしく勿体無いとは思わんか?」
ショタ「はいボクもそう思います。」
狐娘「うむ。お主なら解ってくれると思っとったぞ。聡い子じゃ」ナデナデ
狐娘「何でもかんでも妖力におんぶに抱っこじゃいかんのじゃ」
狐娘「そういう奴は必ず手痛いしっぺ返しを食らう羽目になる」
狐娘「必ずな…」
狐娘「まぁ、偉そうな事言ってもワシだって妖力使うぞ」
ショタ「あ、そうなんですか?」
狐娘「うむ、食い物の保冷とかにな。夏場は必須じゃぞ」
ショタ「やっぱり便利ですね」
狐娘「くくく、そうじゃな」
ー夕方ー
ショタ「薪割り疲れました?」
狐娘「薪割り勝負なんか言い出すからじゃ…ワシに勝とうなんざ八千年早いわ」
ショタ「…指の怪我が無ければ解りませんでしたよ」
狐娘「くく、たわけ」
ショタ「しっぽ使うのはずるいですよ!木があんな、豆腐みたいに切れるなんて…」
狐娘「真剣勝負で手抜きはワシの信念に反するわ」
狐娘「まぁワシがちろっと本気だしたら薪が勝手に割れていくぞ」
>>32訂正
ー夕方ー
ショタ「薪割り疲れました…」
狐娘「薪割り勝負なんか言い出すからじゃ…ワシに勝とうなんざ八千年早いわ」
ショタ「…指の怪我が無ければ解りませんでしたよ」
狐娘「くく、たわけ」
ショタ「しっぽ使うのはずるいですよ!木があんな、豆腐みたいに切れるなんて…」
狐娘「真剣勝負で手抜きはワシの信念に反するわ」
狐娘「まぁワシがちろっと本気だしたら薪が勝手に割れていくぞ」
ー数時間後ー
狐娘「おう風呂が沸いたぞ」
ショタ「あ、狐娘様お先どうぞ」
狐娘「何を言っとる親子なんじゃから一緒に入るぞ。背中を流してやろう」
ショタ「え?ええ!?一人で入れますよ!」
狐娘「恥ずかしがるでないわ!ホレいくぞ!」グイグイ
ショタ「ひぇぇ」
ー風呂場ー
狐娘「ホレお湯掛けるぞ、耳塞げ」
ショタ「」ザバァ
狐娘「背中流してやろうかのう」
狐娘「その椅子に座るのじゃ」
狐娘「お主…まるで骨と皮じゃなあ…」スッ
狐娘「これから沢山食ってちっと肉を着けんといかんな」ゴシゴシ
狐娘「よし、次はワシの背中流してくれ」
ショタ「はい!」ゴシゴシ
狐娘「そら!もっと力込めて!」
ショタ「はい!」ゴッシゴッシ
狐娘「あ~いいぞ~上手いじゃないか」
ショタ (しっぽも洗った方が良いのかな?)
ショタ「しっぽも洗います?」
狐娘「おー頼むぞ」
ショタ (じゃあ根本から…)クイ
狐娘「ただし根ッ!?きゅいっ!?」ビクッ
ショタ「!?どうしました!?」ビクッ
狐娘「根本は…その…感じるから…」
ショタ「感じる?」
狐娘「あー…くすぐったいから…」
ショタ「わかりました。根本は触らないよう気を付けますね」
狐娘「はー…びっくりしたぞ」カポーン
ショタ「すいません…気を付けてはいたんですけど…」カポーン
狐娘「構わん…わざとでは無いのじゃろ?」
ショタ「手拭いの端が触れただけでもくすぐったいんですね…」
狐娘「うむ…まあな…」
狐娘「それはそうと…ちゃんと百まで数えるのじゃぞ」
ショタ「………」
狐娘「なんじゃ黙りこくって」
ショタ「…ボク数は十までしかわかんなくて…その…ひゃく…とか……が凄く大きい数って事はわかるんですけど…」
狐娘「そうかそうか…じゃあワシと一緒に数えればよいぞ。一からな」
狐娘「いーち…」
ショタ「いーち」
狐娘「きゅうじゅはーち」
ショタ「きゅうじゅはーち」
狐娘「きゅうじゅきゅーう」
ショタ「きゅうじゅきゅーう」
狐娘「ひゃーくっと」
ショタ「ひゃーく」
狐娘「よし、あがるかの」ザバァ
ショタ「」ザバァ
狐娘「ホレ、体拭いてやろう」
狐娘「バンザーイしろ、バンザーイ」
ショタ「」バンザーイ
狐娘「いやーいい湯じゃった」フキフキ
ショタ「」
狐娘「そら、又ひらけ」
ショタ「」カイキャク
狐娘「明日はヨモギでも取ってきてヨモギ風呂何てのもよいな~」フキフキ
狐娘「これでよし」ペシッ
狐娘「着替えはそこにまとめてあるからの、好きなの着るがよいぞ」
ショタ「」コクコク
ショタ「」トコトコ
狐娘「何か反応が虚ろじゃが大丈夫か」
ショタ「」フラッ
狐娘「!?イカンっ」ヒュバッ
狐娘「フゥ…間一髪…じゃ」オヒメサマダッコ
ショタ「」ポー
狐娘「すっかりのぼせおって」
狐娘「とりあえず居間に寝かせておくかの」テクテク
狐娘「…すーすーするわ」テクテク
ショタ「」
‐一時間後ー
ショタ「ウーン…」
狐娘「お、気付いたか」ヒザマクラ
ショタ「確か…お風呂で…」
狐娘「うむ、見事にのぼせとった」
狐娘「所でお主随分と耳の中が汚れてるようじゃな」
狐娘「ちょうど膝枕じゃしワシが耳かきしてやる」
狐娘「中耳炎なんぞになったら大事じゃ」
狐娘「ホレ横向け」
ショタ「痛くしないで下さいね?」ゴソゴソ
狐娘「任せておくがよい」
狐娘 (股ぐらの上でごそごそされると何かこそばゆいのう)ミミピクピク
狐娘「じゃ、入れるぞ」スッ
ショタ「ん…」ビクッ
狐娘「これ、動いちゃイカン」
狐娘「痛かったら言うんじゃぞー」コリコリ
ショタ「ふぁい…」ゾクゾク
狐娘「むっ…これは大物じゃな…」クリクリ
ショタ「ふぁぁ…」ゾクゾク
狐娘「よし、両方綺麗になったな」フーッ
ショタ「おぉ…何かいつもより音が大きい気がします…!」
狐娘「これからは定期的にしてやろう」
狐娘「さて…まだ晩飯には時間があるのう…」
狐娘「晩のおかずを調達に行くか…」
ショタ「畑ですか?」
狐娘「いや、山じゃ」
狐娘「とかくお主は痩せすぎじゃ」
狐娘「米や野菜も大事じゃが肉や魚を食わねばイカン」
狐娘「一緒に来るか?」
ショタ「はい!」
狐娘「そう来なくてはの」ニッ
‐山中、川前‐
狐娘「お主にはここで魚を釣って貰うぞ」
ショタ「何かコツとか…」
狐娘「慣れろ」
狐娘「ワシは獣を狩ってくるからしばらくここを離れるが何かあったら思いきり叫べ、すぐに戻る。」
狐娘「しばらく後、ここで落ち合おうぞ」ザッザッザッ
ショタ「行っちゃった…」ポツン
ショタ「まだ日はあるから恐くは無いけど…」ソワソワ
ショタ「……」
ショタ「よし…頑張って狐娘様にお魚食べて貰おう!」
ショタ「餌を付けて…」
ショタ「よっ」ヒュッ
チャプン
ショタ「そういえば狐娘様武器とか持ってなかったよね…」
ショタ「大丈夫…なのかな…」
ショタ「いや…大丈夫か…」ピクッ ビクビクビク
ショタ「うわっ!?かかった!」グイッ
パシャ
魚「」ビチビチビチ
ショタ「やった…!この調子で沢山釣るぞ…!」ニコニコ
‐しばらく後‐
狐娘「おーい戻ったぞ」ノシノシ
ショタ「うわぁ、凄くでかいイノシシですね…」
狐娘「いやー途中で火縄銃を忘れた事に気付いてな。ちょっと取りに戻ろうとしたんじゃが…」
ショタ「やっぱり忘れてたんですか…」
狐娘「いやー完全に油断しとったわ 藪からいきなりこいつが飛び出して来てな」
ショタ「油断って…お怪我とかされたんですか!?」
狐娘「ちょっと驚いただけじゃ」
ショタ「そうですか」ホッ
ショタ「所でそんなお化けイノシシどうやって倒したんですか?」
狐娘「突進してきたからちょっと軽く蹴っただけなんじゃが…」
イノシシ「」チミドロ
狐娘「やはりどうも加減がわからぬな。火縄銃が一番じゃ」
狐娘「そっちはどうじゃった?」
狐娘 (この間ここで一日粘ってもてんで駄目じゃったからなぁ…)
狐娘「まぁお主は初心者じゃし、こうして肉も手に入ったからボウズでも気を落とさ」
ショタ「三匹!三匹釣りましたよ!」ミテミテ
狐娘「な、なに?」
ショタ「大きいの二匹とちっこいの一匹です」
狐娘「ま、まぁ及第点、じゃな。悪くないんじゃないか?」
ショタ「えへへ」
狐娘「どれ、ちょっとビクを見せてみろ」
ショタ「はい!」
狐娘「ニジマス二匹に…ほう、カジカを釣ったのか!でかしたぞ」
ショタ「カジカ?このちっこいのですか?」
狐娘「いやはや天晴よ!流石ワシの子じゃ!」ナデナデ
‐狐娘宅‐
狐娘「飯じゃ!」ウキウキ
狐娘「ぼたん鍋に焼いたニジマス!」
狐娘「それに加え焼き油揚げ!」
狐娘「おまけにカジカ酒!」
狐娘「まさに究極の献立じゃ!」
ショタ「カジカ酒…ってお酒に入れたんですか?」
狐娘「うむ、見た目はアレじゃが極めて美味」
狐娘「ちっと飲んでみるかの?」
ショタ「じゃあ…ちょっと」
狐娘「ちょっとじゃぞ」
ショタ「!」ペロッ
ショタ「からい!」
狐娘「かっかっか!お前にはまだこのうまさはわからんかな?」チビリ
ショタ「多分一生わかりません…」ヒリヒリ
狐娘「くくく、酒と食う焼き油揚げがまた最高に…」ハフハフ
狐娘「くぅ?っ うまい!」パアアア
ショタ「イノシシの肉って歯応えがあって美味しいです!」モグモグ
狐娘「ほう、ボタン肉のうまさがわかるとはお主 酒呑みの素質あるぞ」
ショタ「えー?本当ですかぁ?」
狐娘「うむ、ワシの知り合いでボタン肉好きに下戸はおらんな」
ショタ「じゃあきっとボクが下戸1号ですね!」
狐娘「かかか、言いよるわ」チビリ
ショタ「あ、お酌します」スッ
狐娘「おっすまんな」スッ
‐一時間後‐
狐娘「いやー食ったのう!」マンプク
ショタ「もう食べられません」マンプク
狐娘「残ったボタン鍋は明日の朝雑炊にでもするかの」
ショタ「わぁ、美味しそうですね」
狐娘「そうじゃ、ひとつ腹ごなしにお主に読み書きを教えてやろうかの」
ショタ「えっ良いんですか!?」ガバッ
狐娘「うむ、これからの時代、読み書きソロバンぐらい出来んとな」
ショタ「すごいや!まさか狐娘様から勉強まで教えて貰えるなんて!」
狐娘「この辺に寺子屋なんてないからのう、ワシが直々に手解きしてやる」
狐娘「では早速始めるかの」
ショタ「はい!お願いします!」
狐娘「とりあえず今日はかな文字から初めてみるかの」
ショタ「かな文字?」
狐娘「まぁ見ておれ…」スラスラ
狐娘「…」スラスラ
狐娘「コレ何と書いてあるか読めるかの?」
[いろはにほへと]
ショタ「う…ん、わかりません…」
狐娘「これは上から下へ、[いろはにほへと] と読むのじゃ」
狐娘「いろは歌、という歌の一節じゃな。一応意味もあるのじゃが、まぁそれはもう少し慣れてからでよいじゃろ」
狐娘「取り敢えず、ワシの手本を見ながらでよいから声に出して十回書いてみい」
ショタ「はい!」
ショタ「い…ろ…は…」カキカキ
狐娘「そうじゃ、少しずつ文字の特徴を捉えてゆけばよい」
狐娘「よし、今日はここまでじゃ」
ショタ「ふぅ…なかなか狐娘様みたいにかっこよくスラスラ書くのは難しいです」
狐娘「初めから上手く出来る者などそう居りはせんのじゃ」
狐娘「これから毎日寝る前に少しずつ練習していくのじゃ」
狐娘「功を焦ってもロクな事には成らん、ただし毎日コツコツと。よいな?」
ショタ「はい!」
狐娘「さて、布団も敷いたし、寝るかの」
狐娘「火を消すぞ~」
ショタ「はい」
狐娘「」フッ
ショタ「うわ、真っ暗…」
狐娘「寝てしまえば暗さなど…ふわぁぁ…関係無いのじゃ…むにゃ」
ショタ「あ…おやすみなさい…」
狐娘「ん~おやすみ」
‐深夜‐
ショタ (眠れないや…)
狐娘「スーッスーッ ンン… アブラケ…」
ショタ (母ちゃんや兄ちゃんが居たときは子守唄を歌って貰ったっけ…)
ショタ「うぅ…母ちゃん…兄ちゃん…」グスッ
ショタ「ウグッ エグッ うぇぇぇん」
狐娘「」ミミピク
狐娘 (…泣いとるのか…気丈に振る舞っていてもやはりまだ母や兄が恋しいのか…)
狐娘「なんじゃ…男がメソメソと情けないのう…」
ショタ「ひっく、狐、娘、さま…」
狐娘「はぁ…しょうがないのう…ほれ…こっちの布団に来い」
ショタ「ひっく、ひっく」ゴソゴソ
ショタ「うぇぇぇぇん」ギューッ
狐娘「泣くな…お主がそんなでは…兄貴が心配するぞ…?」
ショタ「ひっく、ぐすっ」
狐娘「どれ…子守唄でも歌ってやろうな…」
狐娘「ねんねんころりよ おころりよ」
ショタ「グスッ」
狐娘「ぼうやはよい子だ ねんねしな」
狐娘「ぼうやのお守りは どこへ行った あの山こえて 里へ行った」
ショタ「」ウツラウツラ
狐娘「里のみやげに 何もろうた」
狐娘「でんでん太鼓に 笙の」
ショタ「すう…すう…」
狐娘「なんじゃ… もう寝たか…」
狐娘「くく…無邪気な寝顔じゃな…」
狐娘「いくら春先と言ってもまだまだ肌寒かろう」
狐娘「ワシの尾で包んでやろう」シュルシュルモフモフ
ショタ「すう…すう…」ヌクヌク
狐娘「昔はワシの尾も九本あったんじゃがな…」
狐娘「今はまぁ…色々あってたったの六本じゃ」
狐娘「じゃが…それだけあればこうしてお主をすっぽり包んでやれるのじゃ」
狐娘「ワシはそれだけで満足じゃ」
ショタ「むにゃ…狐娘さま…」
狐娘「ん…?」
ショタ「だいすき…」ムニャムニャ
狐娘「くく…ワシもじゃよ…」
とりあえず完
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