【ガルパン】エリカ「私は西住まほを超える!」 (93)

・逸見エリカメインのシリアスss

・黒森峰の登場人物フル出演

・名前なしの方は詳細不明の為、勝手に学年と名前を設定。
 2年…直下さん(直下さん、ナオさん)
 3年…げし子(げし子)、Ⅲ号さん(佐子さん)、マウス車長さん(マコさん)

・モブキャラを無理やり引っ張り出してるので、色々とキャラ相違あるのはご勘弁を。

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――黒森峰女学院

生徒「仰げば 尊し わが師の 恩――」

教師「はい。今日の予行演習はこれで終了です」

教師「本番は来週だから、今日やったことをきちんと覚えておくように」

生徒「はーい」


――練習場

DOOOOM!! DOOOOM!!

エリカ「3号車! 5号車! 隊列から外れているぞ!」

エリカ「1号車! 行進間射撃でもその距離なら確実に当てろ!」

車長『は、はい!』


………
……


エリカ「では、これにて本日の練習は終了!」

一同「ありがとうございました!」

エリカ「引き続いて、副隊長より今週末の予定の確認を行う」

小梅「はい、今週末の予定は先日から連絡している通り、卒業する3年生を交えた恒例の『追い出し祭』となっています」

小梅「金曜日の夜7:00から迎賓館で3年生を交えた食事会、翌土曜日に卒業生対在校生の試合となります」

小梅「進行委員の人はこの後残って、直下さんと最終打ち合わせを行うように」

直下「15分後に第一会議室に集合だぞ! 遅れんなよ!」

一同「はーい!」

小梅「整備班の人は、先輩の分の戦車もきちんと整備しておいてね。私からは以上」

エリカ「では、解散!!」


小梅「待ってー、エリカさん!」

エリカ「ん、小梅か?」

小梅「練習お疲れ様、今日はもう帰るの?」

エリカ「いや、まだやることがあるから… 小梅は?」

小梅「私も。追い出し祭の最終準備とかあるから」

エリカ「あぁ…、ごめんねそっちに関しては任せっぱなしで」

小梅「うぅん、私が言い出したことだし良いって」

エリカ「しかし、『追い出し祭』かー」

小梅「黒森峰女学園戦車道部伝統行事『追い出し祭』」

小梅「卒業生対在校生での交流戦だけど、卒業生が乗るのは中戦車以下で主力戦車は在校生が乗る」

小梅「勿論結果は在校生の圧勝」

小梅「在校生は日ごろ募らせていた鬱憤を発散させてスッキリ。卒業生も恨みを持ち越されることなく、心置きなく卒業できる」


小梅「誰が思いついたんだろうね、こんな行事」

エリカ「って、それ俗説じゃない」

エリカ「本当は在校生の練度がどの程度なのかを図るための報告会」

エリカ「だから当日はギャラリーとして生徒や学園艦関係者、はては西住流関係者迄呼ぶんじゃない」

小梅「確かに、下手な練習試合よりもギャラリー集まるもんね」

エリカ「全く、確かに戦車道は色々な人の力で運営されているのは分かるけど、こう試されるようなことは好きじゃないわ」

小梅「でもここでしっかり力を見せないと、後で西住流のOGさんが煩いからね」

小梅「だから今日も気合い入れてたわけでしょ」

エリカ「……」

エリカ「泥まみれの背中に、野次を飛ばされるのが癪なだけよ」

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1年A「……そうそう」

1年B「だよねぇ…」

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小梅「…あれ、倉庫の中に誰かいる」

エリカ「もしかして追い出し祭の役員か? おーい…」

----

1年A「……でさぁ」

1年B「…ていうか、最近本当に練習厳しいよねー」

1年C「逸見隊長気合い入れすぎなのよ」

1年D「ま、西住隊長の後だからねー」

1年B「あー、みほ先輩が居たらもっと優しかったんだろうなー」

1年C「確かに!」

1年B「私も大洗に転校しちゃおっかなー!」

1年A「えぇ、じゃあ私もー!」

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エリカ「……」

小梅「…私たちの事に気付いてなかったみたいだね」

エリカ「じゃなきゃあんな会話しないでしょ」

エリカ「…別に気を使ってくれなくても大丈夫」

エリカ「そういうのも込みで隊長やってるんだから」

エリカ「じゃ、私は用事があるから、また金曜日ね」

小梅「あ、エリカさん…」


………
……


??(今年も決勝で黒森峰は敗退かー、弱くなったわね黒森峰も)
??(ていうか、西住まほが居てすら勝てないようじゃ、来年はもっとキツイんじゃない?)
??(逸見エリカだっけ? 西住まほの腰巾着が次の隊長でしょ?)


??(はー、私西住隊長に憧れて戦車道はいったのに)
??(逸見隊長って威張り散らしてるだけでしょ? 大した実力無さそう)
??(せめてみほ先輩が残っててくれたらなー)


??(逸見さん? 私もこういう事言いたくはないんだけど)
??(ほら、みほさんとお友達なんでしょ? 黒森峰に戻って戦車道やってもらえないか説得してみてくれない?)
??(貴方だって、不相応の身分を与えられるのは嫌でしょ?)





…煩い 

…煩い…煩い

煩い、煩い、煩い、煩い、煩い!


エリカ「うるさい!!!」

まほ「うわ!」

エリカ「あ! た、隊長!?」

まほ「驚いた…、すまない驚かせるつもりはなかったんだ」

エリカ「いえ、此方こそ… 少し考え事をしていました」

エリカ「しかし、隊長は何故学校に? 今日は登校日って訳でもないのに?」

まほ「ちょっとした野暮用だ。それよりも…」

まほ「もう私は隊長ではないぞ、逸見隊長?」

エリカ「あ…、すみません、西住…先輩」

まほ「それでいい」


まほ「それよりどうだ、新生黒森峰女学園戦車道部は?」

エリカ「そうですね、まぁ… 私なりに頑張っています」

エリカ「でもやっぱり、西住た…先輩みたいには上手くみんなを引っ張っていけません」

エリカ「今日だって…」

まほ「…そうか」

まほ「まぁ私も、隊長になった頃はそうやって悩んだものだ」

エリカ「西住隊長が!?」

まほ「先輩」

エリカ「あ、はい…先輩」

エリカ「ですが西住先輩が悩んでたなんて、あんなに堂々と指揮を振られていらっしゃったのに」

まほ「そう言ってもらえると嬉しいな」


まほ「だが、試合で指揮を行うだけが隊長の仕事じゃない」

まほ「それが黒森峰の隊長を背負うとなれば尚更だ」

エリカ「…そうですね」

まほ「そうだな、それでは逸見隊長に、一つこんな言葉を送ろう」

まほ「『真のリーダーというのは「希望を配る人」のことだ』」

エリカ「…誰の言葉ですか?」

まほ「私も知らない。昔何処かの英国かぶれの格言好きから聞いた言葉だ」

まほ「じゃあ今週末の追い出し祭楽しみにしているぞ」

まほ「私を撃つ権利はエリカ、お前にくれてやるさ」

エリカ「わ、私も楽しみにしてます!!!」


……
………


エリカ(……『希望を配る人』、か)


エリカ(それは私にとって西住隊長、貴方の事だったのに)


――迎賓館

司会「では、3年生の今後の更なるご健勝をお祈りしまして、乾杯!!」

一同「乾杯!!!」


1年達「西住隊長!!!」キャーキャー


小梅「相変わらず西住先輩は人気だね」

エリカ「まぁ、今の1年は完全に西住先輩狙いで入ってきたしね」

エリカ(それは私も含めてだけど)


??「お、エリカじゃーん! おっひさー」

エリカ「あぁ、げし子先輩ですか」

げし子「あ゛ぁ! げし子じゃないし! 重森だし!」

エリカ「今更重森先輩っていうのもちょっと…」

げし子「ほんと、隊長になっても可愛気のない奴ねあんたは! ちょっとは赤星を見習いなさいよ!」

エリカ「はいはい。すいませーん、げし子先輩」

げし子「こいつは!」

??「はいはい」

??「いつものコントは終わり」

小梅「佐子先輩に、マチ先輩!」


Ⅲ号(以下佐子)「いや~久しぶり、元気してた赤星副隊長」

マウス車長(以下マチ)「相変わらずげっしーはエリカと仲がいいな」

げし子「げっしーじゃないし! 森重だし!」

げし子「なんかエリカが真面目な顔してるから、茶化してやろうかと思っただけだし」

エリカ「先輩がフザけた顔してるだけですよ」

げし子「んだとぉ! やんのかエリカァ!」

小梅「え、エリカさん!」

マチ「お前ら最後まで仲がいいな」

佐子「ある意味羨ましいねぇ」

げし子「全然仲良くねーし!!」


マチ「いやしかし、相変わらず凄い人数だね」

小梅「そうですね、各学年で整備半含めれば50人弱はいますし、今回は学園艦関係者の他にもOGや西住流の方も招いていますから」

小梅「まぁ合計200人、というところでしょうか」

マチ「大変だったでしょ、準備」

小梅「まぁそれなりに。ナオ(直下)も手伝ってくれましたし」

マチ「ふぅん、まぁ1・2年もいい感じにまとまってきたってトコかな」

小梅「…だといいんですけど」

マチ「ん? どうかしたか?」

小梅「い、いえ…」


マチ「そういや、追い出し祭の編成は決まってるのか?」

マチ「マウスは出るのか!?」

小梅「さ、流石にマウスは出ませんよ… 今回のフィールドも平野と森林地帯がメインなので、マウスは必要ないかなと」

マチ「なーんだ、マウスは出ないのか」

マチ「一度マウスと正面切って戦ってみたかったんだよなぁ」

小梅「マチ先輩は乗るばっかりでしたからね」

マチ「そうそう、実際闘ってみて初めて分かるものもあるんだけどね」

マチ「しかし、明日は久しぶりにマウス以外に乗れるから張り切っちゃうよ」

小梅「マチ先輩は三号戦車の車長でしたね」

マチ「そうそう、久々だよあんな小さな戦車に乗るのは」

小梅「佐子先輩が聞いたら怒りそうですね」


---

げし子「しっかし、追い出し祭かー」

エリカ「心配ですか? そんな心配しなくても、げし子先輩は私がきちんと撃ち取ってあげますよ」

げし子「うっせーし! そういうんじゃないし!」

げし子「ただまぁ、去年私たちがやった側だから何とも言えないが」

げし子「一方的にやられるのは性に合わないな!」

佐子「はいはい、そういうこと3年生が言わない」

げし子「いやそう言われてもね」

げし子「こっちの卒業生チームは、まほのフラッグ車がⅣ号戦車だってこと以外は、Ⅲ号かⅡ号しかないんだぜ?」

げし子「かたや在校生はティーガーⅠ・Ⅱにエレファント、突撃砲だってヤークトティーガーがいるんだぜ?」

げし子「せめてⅢ突が居れば状況を覆せるんだけどなぁ」

佐子「それじゃ趣旨に反するでしょ」

エリカ「やめてくださいよ、あんまり戦力差詰められたらこっちが勝てなくなりますよ」

げし子「そうか?」

エリカ「え?」

げし子「私は、そうは思わないけどな」

エリカ「? それってどういう……」


司会「えーー、盛り上がっている最中に恐縮ですが、ここで黒森峰女学園戦車道OG会、磯崎会長様からご挨拶があります」

司会「皆様、拍手でお出迎え下さい!」


ワーパチパチパチ


磯崎「えぇ、3年生の皆さんご卒業おめでとうございます」

磯崎「栄光ある黒森峰女学園戦車道履修者の皆様の新たなる門出を、こうして祝福できることを光栄に思います」

磯崎「そもそも黒森峰女学園戦車道とは……」


げし子「うわ、まーた磯崎のオバサンか」

佐子「話長いんだよねー」

エリカ「……」



……
………


磯崎(逸見さん? 私もこういう事言いたくはないんだけど)

磯崎(ほら、みほさんとお友達なんでしょ? 黒森峰に戻って戦車道やってもらえないか説得してみてくれない?)

磯崎(貴方だって、不相応の身分を与えられるのは嫌でしょ?)


………
……




エリカ(…嫌な事を思い出した)


磯崎「……というわけであります」

磯崎「…とまぁ、ここまではお祝いの言葉です」

磯崎「本来であれば、この様な席ではここで終わるべきではあるかと思いますが、OG会を代表するものとしては一言言わねばなりません」

磯崎「そう、2年連続準優勝に終わった件に関してです」



ザワザワザワ
げし子「あー、始まったか」

佐子「お説教? こんな場所で…」



磯崎「しかし私はここで過去の事をお話しするつもりはありません」

磯崎「私が言いたいのは、2年連続で負けた次の世代である在校生、貴方たちに対してです」


小梅「私たち?」

エリカ「…」


磯崎「今壇上を見上げ、不思議な顔をしている貴方たちです」

磯崎「はっきり言いましょう、3年連続で優勝を逃すのは黒森峰OG会としては断固許すことが出来ないという事」

磯崎「しかしながら、見れば見る程在校生の方から、今年は勝つぞという気力が見られない」

磯崎「こんな事では、今年の結果は見えているでしょう」


ザワザワザワ
エーナニソレ ヒドクナイ?




磯崎「そこでOG会からいい案が御座います」


磯崎「実は私たちOG会の持つ広いネットワークで、海外の優秀な戦車道の選手に声をかけ、黒森峰でその手腕をふるってもらえるように説得してまいりました」

磯崎「そして来学期から約20名、優秀な戦車乗りが特別強化生として黒森峰にやってきます」

磯崎「夫々が各国代表に選ばれるほどの実力の持ち主です」

磯崎「在校生の皆さまは、彼女らの指揮下で戦車を動かしてもらいます」

磯崎「心配は要りません。スカウトした方々は全て海外の西住流戦車教室で腕を磨いた者たち! 言葉は通じずとも、ドクトリンは皆様と一緒」

磯崎「ただ彼女らの指示を信頼し、戦車を動かせば間違いなく優勝の道が開けるのです!」



1年A「え、ど…どういうこと?」

1年B「私たちに、誰かも知らない強化選手の下で戦車道しろってこと?」

2年A「ていうか、20人も来たらレギュラー落ちる人も…」

2年B「せっかく車長になったのに!」

小梅「え…どういうこと、エリカさん知ってる?」

エリカ「そんなの、私が知ってるわけないでしょ!」


エリカ「磯崎会長!」

磯崎「あら、逸見さん」

エリカ「流石にその方針は、OG会の権限を超えていると思われます」

エリカ「自主自立を促す学園艦活動である黒森峰戦車道部は、そのようなことは断じて拒否させて頂きます!」

磯崎「あらあら、別に黒森峰にとっても悪い話ではないでしょう?」

磯崎「それに、みほさんが戻ってくるという話なら、こんな事はしなくてもよかったの」

エリカ「それは…」

磯崎「貴方じゃ黒森峰の看板を背負うのに力不足だと言っているのよ」

エリカ「…ッ!」


まほ「磯崎会長、流石に少し言葉が過ぎるのでは?」

エリカ「西住先輩!」

磯崎「あら、まほさん」

磯崎「確かに厳しい言葉かもしれないけど、私は『黒森峰の為に』あえてそう言っているのよ?」

磯崎「もしも逸見さんの率いる黒森峰が、まほさんの時よりも強ければ、こんな事は言わないわ」

エリカ(何が『黒森峰の為』だ!)

エリカ(所詮は自分の『黒森峰OG』というブランド価値を落としたくないだけでしょ!)

まほ「…成程」

まほ「つまり、要は私の率いる黒森峰より逸見の率いる黒森峰が強ければ、そんなことをする必要は無い、とおっしゃりたいのですね?」

磯崎「? ま、まぁそうね…」




まほ「ならばこうしましょう」


まほ「明日の追い出し祭、そこで行われる在校生対卒業生の練習試合」

まほ「そこで在校生が勝てば、先ほどの話は撤回! 在校生が負ければ、その条件を全て飲む!」



まほ「…というのは?」

磯崎「それは…! いえしかし、戦車のレベルが違いすぎて…」

まほ「だったら、同じなら」

磯崎「!?」

まほ「戦車は両者全く同じ編成で行う、ならば問題はないでしょう?」

まほ「同じく、私達卒業生が在校生に手を抜いていると思われたら、その時点で在校生側を負けとしてもいいでしょう」

まほ「どうです? それくらいなら、彼女らにチャンスを与えてもいいのでは?」

まほ「エリカも、それならいいだろ?」

エリカ「そ、それは…」

磯崎「……いいでしょう」

磯崎「正し、在校生側が負けた場合は有無を言わさず私の提案に従ってもらうわよ!」



エリカ「…分かりました」

エリカ「この勝負受けて立ちます!」


司会「な、ななんと! これは驚愕の事態になりました!」

司会「明日の追い出し祭は、まさかの在校生対卒業生の真剣勝負へ変更!」

司会「在校生が負ければ磯崎会長のいう通り、海外からの特別強化生を中心とした全く新しい黒森峰への変化を余儀なくされます!」

司会「果たしてどうなるのか! 一気に注目度が高まったこの試合! 勝つのは何方だ!!!」




エリカ「…西住先輩!」

まほ「……」



……
……… 翌日

実況「さーて始まりました、黒森峰女学園戦車道部恒例の在校生対卒業生戦車道戦!」

実況「例年であればただの追い出し祭だったこの戦いですが、今年は一味違います!!!」

実況「詳しい経緯は分かりませんが、今回両者の使用戦車はほぼ同一のものを使用するとのこと」

実況「どうやら昨日の迎賓館での送別会が原因との情報も入っていますが、とにかく前代未聞の黒森峰vs黒森峰の真剣勝負が見れるとのことです」


実況「なお、今回は解説席に聖グロリアーナ女学園からダージリンさん、アンツィオ高校からアンチョビさんをお呼びしています」

ダージリン「よろしくお願いいたします」

アンチョビ「お手柔らかに頼むぞ」

実況「ダージリンさん、今回のこのガチバトル、どの様なことが要因になると思いますか?」

ダージリン「さぁ、私そういう下世話なお話はあまり好みませんの」

ダージリン「ですが…」

実況「ですが?」

ダージリン「久しぶりに面白い試合が見られるのは間違いない、そう思いますわ」

実況「それには私も納得です!」

実況「おっと、両者の準備が整った模様です」

実況「果たして、シュバルツバルトの女神は何方に栄光をもたらすのか!!?」


………
……


審判「両隊長、副隊長前へ!」



エリカ「…」

まほ「表情が硬いぞ、エリカ」

げし子「硬い硬い!」

エリカ「…げし子先輩が副隊長なんですか、似合いませんね」

げし子「んだとこらぁ! 消し炭にすんぞエリカァ!」

エリカ「クスッ 冗談ですよ」

エリカ「変なことに巻き込んでしまって、本当に申し訳ありません西住先輩、重森先輩」

エリカ「ですが部の為、ここは負けるわけにはいきません」

エリカ「この試合、勝たせてもらいます」

まほ「当然だ」

まほ「だが此方も手加減はしない。そういう約束だからな」

まほ「全力で来い、エリカ」

エリカ「はい!」



審判「一同、礼!!」


一同「よろしくお願いします!!!」


 

エリカ「さて…とだ」

小梅「向こうの編成はどう来ると思う?」

エリカ「どうって、とりあえずどう考えてもフラッグ車はティーガーⅡで、西住先輩でしょうね」

エリカ「多分マコ先輩と佐子先輩がティーガーⅠ、エレファントはげし子先輩でしょ」

小梅「3年生の4強だもんね」

エリカ「西住先輩は言うまでもなく、あの3人も戦車乗りとしては一流」

エリカ「苦戦するのは間違いないだろう」

直下「おーい、エリカ! 小梅! 二人の戦車のメンテも終わらせといたぞ!」

エリカ「ありがとう、ナオ」

直下「しっかし、本当にいいのか? フラッグはエリカのティーガーⅡで」

直下「西住先輩はいつもそうだったから言いづらかったけど、マシントラブルの多いティーガーⅡにフラッグを付けるのはあまり得策とは言えないぞ?」


エリカ「いや、それでいい」

エリカ「これは、特に今回は、私が背負うべきものだから」

エリカ「それより、全員今回の作戦は理解できてそうか?」

直下「あぁ、まぁ一応は…」

直下「だけど、昨日の出来事で大分動揺している子も多いみたいだから」

直下「後は、逸見隊長の手腕次第、ってとこかな」

エリカ「言ってくれるわね」

直下「信頼してるのよ」

ターンターン!


エリカ「開始1分前の合図ね」

エリカ「では全員戦車乗車!」



エリカ「この戦い、勝つわよ!!!」


 


実況「さーて、始まりました在校生対卒業生の真剣試合」

実況「今回の両陣営の使用車両を確認してみましょう」

実況「今回の使用車両は1台を除きすべて同じ」

実況「ティーガーⅡ1輌、ティーガーⅠ2輌、パンター6両、ラング3輌、Ⅲ突2輌」

実況「そして在校生側にヤークトパンター1輌、卒業生側にエレファント1輌がそれぞれ配備されています」

実況「今回は随分と突撃砲が多いように感じますが、何か理由あってでしょうか」

アンチョビ「それは当然、整備のしやすさで選んだんだろうな」

実況「といいますと?」

アンチョビ「突撃砲は戦車よりもつくりが単純だから、整備にかかる時間や労力が少なくて済むんだ」

アンチョビ「聞くところによれば、この真剣勝負は昨日決まったって聞いたからな」

アンチョビ「少ない時間で大量の車両をそろえようかと思えば、必然的に突撃砲の優先度が高くなるって事さ」

アンチョビ「とはいえ、これだけの量の戦車を突然整備できるんだから、黒森峰の底力恐ろしやって奴だな」

実況「成程。これが今回の試合に与える影響はどの様なものでしょうか?」

ダージリン「そうですわね… こんな言葉を知ってる?」

ダージリン「『運命がカードを混ぜ、我々が勝負する』」

アンチョビ「何だそれ?」

実況「何なんでしょうね?」

ダージリン(…ペコを連れてくるべきでした)



ターン!


実況「ここで試合開始の合図!」

実況「各車両、パンツァーフォー!!」

 


――在校生側


エリカ「全車! パンツァーフォー!」

一同「Ja!!」

エリカ(さぁ、どう作戦を練っていいものやら)

エリカ(はっきり言って、平地戦での正面突破は分が悪すぎるし)

エリカ(楔を打っての浸透戦略をするにも隙が無い)

エリカ(ホント、味方なら頼もしいのに、敵に回れば厄介ね)

エリカ(なら私が取るべき道は、これしかない――!)


――卒業生側

まほ「全車、パンツァーフォー!」

一同「Ja!!」

まほ「前者フラッグ車を中心に隊列を組め!」

まほ「これよりB6地点まで前進する。索敵を怠るな!」

マチ『隊長、エリカの奴どんな作戦で来ると思う?』

まほ「どうだろうな… まぁ、私たち相手に正面突破は仕掛けては来ないだろう」

まほ「戦車の質・量は同程度だとしても、彼方は1・2年の混合チーム」

まほ「方や我々は受験でブランクがあるとしても、3年生の単独チーム」

まほ「経験や能力、今までの連携といった面でも我々に分があるのはエリカだって分かる筈だ」

げし子『んじゃなんだ、奇襲か?』

まほ「恐らくは」


まほ「エリカのドクトリンは浸透戦術に基礎をおいている」

まほ「即ち、敵の弱点を見つけたら、そこをひたすらに突いて指揮系統を崩壊させる戦術だ」

マチ『ドイツ電撃戦の基礎となった戦法だな』

まほ「エリカはああ見えて猪突猛進じゃなく、頭を使う指揮官だ。状況をよく理解した上で動くだろう」

まほ「逆に言えば、今の様な平原でこのレベルの強固な隊列を組んだ中で、下手に仕掛けてくる事は無い」

まほ「奇襲か、もしくは隊列が伸びきったところを狙うか」

マチ『隊列が伸びるか、ならB4の森林地帯で待ち伏せ攻撃かしら』

まほ「大いにあり得るな」

まほ(となれば、そろそろアレが来る頃だ――)

マチ『隊長、間もなくB6地点に到達するよ!』

まほ「了解した」

まほ(なだらかではあるが緩急のある丘陵地帯に、所々林のような木々の密集地帯)

まほ(我々の視線を遮る分には十分といえるが)


DOOOM!! DOOOM!!


佐子『敵襲! 11時の方向にティーガーⅠ1輌! パンター2輌! ラング1輌』

まほ(成程、ここで仕掛けてくるか!)

まほ「全車応戦しろ! 砲撃開始!」



DOOM!! DOOM!!


 


-----


実況「おっと! ここで初めての砲撃戦だ!」

実況「先に仕掛けたのは在校生側! 卒業生チームの側面を突いた鋭い砲撃だ!」

実況「しかしこれに負けてない卒業生チーム! 全く隊列を乱すことのなく砲撃を開始!」

ダージリン「威力偵察というより… 陽動かしら?」


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DOOOOM!! DOOOM!!


マチ『攻撃していた4輌が撤退するよー』

マチ『方角はB4方面の森林地帯! こりゃ隊長のいう通り、待ち伏せは確実かな?』

げし子『よっしゃ! 追撃だ追撃!!』

佐子『ちょっと待って! 西住隊長どうしますか!?』

まほ「危険は承知だが追撃を行う」



まほ(確かに此処からでもB4地点へ誘い出すことは可能だろう)

まほ(だが、少し距離がある)

まほ(ティーガーとパンターを出してまでの陽動なら、私なら車両の生存率を上げるためにもう少し森に近い場所で仕掛けるが)

まほ(そうでない、ということであれば――)


 


まほ「アーディ3! 南南西の小高い丘があるのは分かるか?」

アーディ3『見えます隊長!』

まほ「あそこから現在のフィールドを見渡して現状を確認してくれ」

まほ「特に――の可能性がありそうな場所をだ」

アーディ3『了解!』


……



??(は~、さっきは凄い砲撃戦だったな)

??(3年生の15輌を相手に、直下先輩達4輌でよく対抗できるよ、本当に)

??(こうなったら私も頑張らないと…!)

??(…見えた! 西住隊長のティーガーⅡ!)

??(あれを撃破できればこっちの勝利… って、あれ?)



1年「な、何でアンブッシュで隠れてるはずの私たちに砲塔が向けられてるの…?」





DOOOOMM!! シュポッ!


 


----


実況「おおっと! ここで初めての撃破車両が出ました!」

実況「撃破されたのは在校生側のⅢ突ですね。木々を上手く利用して隠れていましたが、西住まほ選手の一撃により射貫かれました!」

アンチョビ「いや、あのアンブッシュはイマイチ未完成だったな」

実況「そうなのですか?」

アンチョビ「突貫工事でやったはいいが、違和感がイマイチ拭いきれていないな」

アンチョビ「まぁ、黒森峰でアンブッシュなんて聞いたことないから、付け焼刃の戦法って所か?」

実況「成程、やはりここで卒業生と在校生との実力差が出たというところでしょうか」

ダージリン「それはどうかしら?」

アンチョビ「ん?」

ダージリン「卵というものは、割ってからでないと中身が分からないものよ」


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まほ「アーディ3、他に怪しい所は無いか?」

アーディ3『アンブッシュと思われる個所は先ほどの1点だけですね』

まほ「了解した。アーディ3は隊列に復帰してくれ」

アーディ3『了解しました!』

まほ(森に入る前に幾つかでも車輌を減らす作戦か)

まほ(となれば、森の中にも様々なトラップを用いている可能性が高い)

まほ(…迂闊に飛び込めばハチの巣だな)


まほ「佐子!」

佐子『何、西住隊長』

まほ「今からパンター2輌とラング2輌を率いて、B6からB4へ抜ける迂回路を南進してほしい」

まほ「恐らくエリカの本隊はB4地点で此方を待ち構えているはずだ」

まほ「直進する本隊と佐子の分隊2方面からの攻撃を行い、A3地点の崖まで追い詰める」

佐子『成程ね、了解!』

佐子『アーディ1・2と、ベアテ1・2は私に続いて!』

乗務員『Ja!!』


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直下『逸見隊長! 卒業生チームが二手に分かれました』

直下『本隊はB4森林地帯へ直進、ティーガーⅠ以下5輌の分隊は側道方向へ南進を図るようです』

エリカ「分かった、ありがとうナオ」

エリカ「でももうちょっと敵を引き付けておいてくれない」

直下『私たち4輌じゃ何時まで持つか分からないよ』

エリカ「10分、いい10分持たせてくれない?」

エリカ「貴方なら出来るって信じてるから」

直下『…言ってくれるじゃない』

直下『分かった、10分だけは持たせてみせるから』

直下『遅れたら承知しないぞ!』

エリカ「分かってるわよ」


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DOOOOM!! DOOOOM!!



マチ『まーた前面から4輌、砲撃を開始したよ』

げし子『あっちのティーガーに乗ってるのは誰だ! 直下か!?』

げし子『あんなへっぴり腰の砲撃じゃ当たんねーぞ!』

マチ『確かに… 動き回ってのあの狙いじゃ、此方への直撃は無さそうね』

まほ「此方への誘い込みと時間稼ぎだろう」

まほ「まぁいい、佐子の分隊が迂回するにも時間が掛かる」

まほ「此方も適度に迎撃しつつ、距離を詰めていくぞ」

げし子『了解!』

げし子『まったく在校生の奴らも驚くだろうな』

げし子『まさか時間を稼いでるつもりが、逆にこちらの時間稼ぎに利用されている、なんてさ』

まほ「そうだな…」


まほ(…)

まほ(…時間稼ぎを、逆に利用されている?)

まほ(不慣れなアンブッシュ、4輌と多い陽動部隊、へっぴり腰の砲撃――)

まほ(まさか――)

佐子『西住隊長!』

まほ「佐子か! 丁度良かった、いいか今直ぐそこから撤退――」

佐子『すみませんやられました!』




佐子『佐子以下5輌、在校生側待ち伏せに遭い全車両大破! 全滅です!』


 


----遡る事試合前

エリカ「フィールドには廃墟、平原、森林、岸壁地帯」

エリカ「私たちのフィールドに近いのはB3の森林地帯」

エリカ「小梅、貴方がこのチームの指揮を執るとしたら、どう戦略を練る?」

小梅「そうね、私なら森林地帯に身をひそめるかなぁ」

小梅「正直平原で3年生チームと正面切って戦っても分が悪いと思うし」

小梅「廃墟っていう手もあるけど、位置的にそこに陣取るには時間もかかる」

小梅「アンブッシュを効果的に用いながら、森林地帯に入ってきた卒業生チームを各個撃破、というのが定石じゃないのかな?」

エリカ「そうね、私もそう思う」

小梅「なら、その戦略をとるの?」

エリカ「いや、そう思うからこそこの作戦は取らない」

エリカ「私程度が思いつく戦法なら、西住先輩も思いついて、その先を行くはずだ」

エリカ「だから、私はそれに賭けたいと思う」


エリカ「まずは森林地方へ誘導するために罠を張る」

エリカ「これにはナオの分隊5車輌で誘導、森に私たちが潜んでいると錯覚させると同時に、時間を稼いでもらう」

エリカ「上手く誘導できれば、必ず西住隊長は分隊をB6からB4へ抜けるこの側道に目を付ける」

エリカ「この側道を南進すれば、森の中の部隊を本隊と分隊で挟撃できるからな」

エリカ「だから、敢えて私はこの『側道』に本隊を潜ませる」

エリカ「そして分隊を撃破後は同じく側道を北進、卒業生側チームをナオの分隊と共に挟撃する」

小梅「挟撃しようとする策を利用して、逆に挟撃するのね」



エリカ「そう、金ヶ崎の退き口を、今まさにここでやってみせるのよ!」


 


----現在


エリカ(…と考えたものの、よくもまぁ上手くハマってくれたものね)

エリカ「あと30秒で森を抜けるわよ! 抜けたら直ぐ南進して挟撃する!」

直下『逸見隊長!』

エリカ「ナオか、もう少しでこちらも森を抜ける! それから一気に――」

直下『逸見隊長、逃げてくれ!』

直下『ティーガーⅠ以下5輌、壊滅だ!』



DOOOOOMM!! DOOOOMM!!



赤星『前方に着弾!』

エリカ「!? 全車停止!!」

エリカ(…侮っていた)

赤星『逸見隊長、前方に敵車輌発見しました』



赤星『車輛数10輌、卒業生チーム本隊です!』


 


----


実況「圧巻、まさに圧巻の一言です西住まほ!」

実況「一度は在校生チームにしてやられた卒業生チームでしたが、そこからは鬼の反撃!」

実況「陽動を取っていた4輌を瞬く間に撃ち取ると、踵を返して在校生チームを迎え撃った!」

アンチョビ「こりゃ驚いた」

アンチョビ「この戦い、在校生チームが金ヶ崎の退き口をやるのかと思ったが、蓋を開けたら卒業生チームの中国大返しじゃないか」

アンチョビ「しかし、これで戦局は大きく卒業生側に傾いたな」

実況「そうでしょうか、数でいえば何方も10輌、変わらないように思えますが」

ダージリン「気持ちの持ち方が全く違いますわ」


ダージリン「逸見さんとしては、経験に勝る3年生との正面衝突は避けたかった所」

ダージリン「だからこそこのような策を張り巡らせたにも関わらず、結果は御覧の通り」

アンチョビ「策というのは、上手くハマれば頼もしいが破られると脆い」

アンチョビ「まるで女心のようなものなのさ」ドヤッ

実況「な、成程そうですか」

実況「しかしここで決断を迫られた在校生チーム! 次はどんな手に出るのか!!」


----


----


エリカ(次、次はどうす逸見エリカ!)

エリカ(このまま正面から迎え撃つか?)

エリカ(いや正面切っての戦闘で私たちが勝てる可能性はとても低い。その上、此方の策が破られて士気が低下している今なら尚更)

エリカ(ならばもう一度森に引き返して待ち伏せか?)

エリカ(いや、そんなことをする時間はない。下手な待ち伏せをしても、かかる前にやられるのが落ちだ)

赤星『逸見隊長!』

エリカ「…小梅」

エリカ「どうしよう、やっぱり私じゃ駄目だったみたい」

エリカ「あの磯崎会長のいう通り、やっぱり私なんか隊長の器じゃなかったのよ」

エリカ「西住先輩や… みほがいないと、駄目だったの」

エリカ「私なんかじゃ、黒森峰を導くなんて出来やしないのよ」


赤星『諦めちゃだめだよ! 逸見隊長!』

エリカ「!?」

赤星『絶対に諦めちゃ駄目!』

赤星『私知ってるよ、逸見隊長がいつも夜遅くまで残って戦車道の戦術の勉強をしている事』

赤星『皆の苦手な分野や得意な分野を調べて、それに合った練習方法を考えてる事』

赤星『私は、そんな隊長だから、エリカちゃんがいたから副隊長になったの』

赤星『それをこんなところで、勝負もつかないうちに諦めることなんて出来ない! 出来るはずがない!!』

エリカ「小梅…」

エリカ「…いつもとキャラ、違いすぎるでしょ」

赤星『それを言うなら、弱音を吐く逸見隊長もキャラ違うよ』

赤星『大丈夫、チャンスは私が作るから』

赤星『もしもの時のプランB、ここで私が実行に移してみせる!』

エリカ「…分かったわ、私もそれに賭けてみる」



エリカ「小梅、私は貴方に賭ける!」


 


マチ『西住隊長! 在校生側に動きがあります』

マチ『これは…森を伝って北方へ移動している模様』

まほ「北方…、彼方には廃墟があるが」

げし子『市街地戦をやろうってのか!?』

まほ「私たちも北進するぞ!」


----


実況「さて! ここでまた試合が動き始めました!」

実況「会場は平原と森林地帯から、北方の廃墟群へと移り変わる模様!」

実況「ここが最後の決戦の場となるのか!!」

 


----廃墟群


まほ(追撃の途中に、パンター1輌とラング1輌を撃ち取った)

まほ(これで此方が10輌に、相手は8輌)

まほ(数的有利は此方にあるが、問題は市街地戦だな)

まほ(廃墟となっているが、全体的な雰囲気としては先日訪れた大洗町と似たような構造だ)

まほ(狭い路地に、密集した住宅地)

まほ(C5地点に4階建てのビルがある以外は、さして目立つような建造物もない)

まほ(戦車が隠れるにはうってつけの場所だが…)

マチ『エリカは市街地で遭遇戦をやりたかったんだろうけど、詰めが甘いわね』

げし子『自分たちがさっきまで何処走ってたか忘れたのか』

げし子『森の中走ってた時についた泥が、行先を全部教えてるじゃないか』

まほ「…確かに、その通りだな」


マチ『かといって、これが誘い込む罠という可能性も考えられますけどね』

げし子『十分な時間があったさっきと違って、駆けずりこんだ今そんな余裕は無いだろ!』

まほ「それも一理ある」

まほ「数的優位はこちらにあるし、キャタピラの跡からして全車同じ方向へ進んでいる」

まほ「先頭はマチのティーガーⅠ、それに重森のエレファント、突撃砲、パンターと続き殿は私が務める」

まほ「各自キャタピラの跡とアンブッシュに気を付けながら進むぞ」

一同『Ja!!』



赤星(先輩たちが入ってきた)

赤星「皆! ラストスパートだけど頑張って!」

赤星「何としてでも先輩たちをC5地点に誘き出すよ!」


----


実況「さーてどうやらここが最後の戦場になりそうです!」

実況「集団で陣形を組みながら進む卒業生側に、突発的な攻撃を仕掛ける在校生側!」

実況「市街地に入り戦況は拮抗状態! これまでにお互い3輌が撃破されました!」

実況「卒業生チームはフラッグであるティーガーⅡ1輌、ティーガーⅠ1輌、エレファント1輌、パンター4輌の計7輌が残っています」

実況「一方在校生チームは同じくフラッグのティーガーⅡ1輌、ティーガーⅠ1輌、ヤークトパンター1輌、パンター1輌、Ⅲ突1輌の合計5輌!」

実況「数字上は厳しい在校生チーム、逆転の目はあるのか!?」


-----


マチ『ここがC5地点ですね』

げし子『ふーん、ボロっちいビルも立ってるしこの辺りが街の中心地になるのか』

げし子『そろそろキャタピラの跡も消えかかってるし、この辺りに潜んでいると思って間違いなさそうだな』

げし子『さっきからの散発的な攻撃で戦力削ってきてるが、こっちは主力戦車ほぼ残してるんだ』

げし子『このままじゃ数で押し切りも可能だぞ』

まほ(だがそれは向うも分かってるはず)

まほ(このままで終わるほど、あいつは諦めの良い女じゃない)



DOOOOMM!! DOOOMM!!



マチ『砲撃翌来ました! 敵車輌3時の方向! ティーガーⅠ、パンター、ヤークトパンター、Ⅲ突です!』

げし子『ティーガー! 赤星か!』



DOOOOMM!! DOOOOMMM!!


げし子『全然あたらねぇぞ! 何処狙ってるんだ赤星!』

マチ『ちょっと待って… これって狙ってるのは…』


....GOGOGOGOGOGO


マチ『に、西住隊長! ビ、ビルが倒れます!』

まほ「全車散開しろ!!」

マチ『散開!!』

げし子『に、逃げろ!!』



DOWWWWWWWMMMMMM....



………
……


まほ「みんな、大丈夫か!?」

マチ『大丈夫です! ですが…』

まほ「…分断作戦か」

マチ『ビルを挟んで東側、つまりこっちには私のティーガーⅠと重森のエレファント、それにパンター3輌』

まほ「西側は私とパンター1輌だ」

マチ『隊長! ここはまず合流を最優先に考えましょう!』

マチ『ここから迂回路を取りC4地点へ向かえば、合流出来ると――』



DOOOMM!! DOOOMM!!



げし子『マチ! ティーガーⅠが攻撃を仕掛けてくるぞ! 応戦する!』

マチ『と、とにかく隊長はC4地点へ移動して下さい!』

マチ『私たちもティーガーを迎撃次第合流します!』


まほ「分かった、頼むぞ!」

まほ「アーディ3! 今から合流の為C4地点へ向かうぞ!」

アーディ3『りょ、りょうか――』



DOOOMM!! シュポッ



アーディ3『や、やられた!? 誰が!?』


まほ「…」

まほ「…そうだろうな、そうでなければここで仕掛ける意味がない」

まほ「ならば、ここで決着をつけるぞ! エリカ!」





エリカ「…はい!!!」



 


----


実況「こ、これは面白いことになってきました!」

実況「ビルの倒壊により2つに分かれた卒業生チーム!」

実況「ビルを挟んで西側では、卒業生チームと在校生チームの総力戦!」

実況「一方で東側では、フラッグ車同士が相対する形となりました!」

実況「これで勝負は五分と五分!! 果たして最後に笑うのは何方か!!」


----



DOOOMM!! DOOOOMM!!


エリカ(っく! 流石西住先輩!)

エリカ(行進間射撃とは思えないほど精密な射撃! こんな超高校級を相手に五分五分なんておかしな話よ!)

エリカ(…あのバカ、こんな状況で良く勝てたわね!)


DOOOOMM!! DOOOOMM!!


まほ(あと一歩のところで上手く砲撃をかわしてくる)

まほ(車体の重いティーガーⅡであれだけの動きが出来るようになったとは)

まほ(随分と練習したに違いないな)


----応援席


1年A「…やっぱり圧されてるね、逸見隊長」

1年B「相手が西住隊長だもん。仕方ないよ」

1年C「ここまでやれただけで凄かったけど、本気の3年生相手に勝てるわけないよ」

1年D「うん、最初から勝つことなんて無理だったんだよ」

1年A「諦めて、あの会長さんのいう通りにするしかないよね…」

??「ばっかやろう!!!」

1年B「え!!? な、直下先輩!?」

直下「隊長が頑張ってるのに、あんたたちが先に諦めてどうすんのよ!!」

1年C「だって、西住隊長に1対1で勝てたことなんて今の一度もないじゃないですか」

直下「確かにそうだな」

1年D「だ、だったら!」


直下「だったら、今の一度も無かったことを、今ここで起こせばいいんだ!」

直下「今あの場所にいる誰もがそう思ってる、小梅も、逸見隊長も!」

直下「だったら、それを私達が信じなくてどうするんだ!」



1年A「…」

1年B「…」

1年C「…が、頑張れ!!」

1年D「頑張れ!! 逸見隊長!!」

1年A「負けるな逸見隊長!!」

1年B「勝ってください!! 隊長!!」



応援席「頑張れー! 負けるなー! 逸見隊長ーーー!!!」

 
 


----


実況「おおっと! ここに来て在校生側の応援席から高らかな応援が上がってきました!」

ダージリン「…こんな言葉を知ってる?」

ダージリン「『真のリーダーというのは「希望を配る人」のことだ』」

アンチョビ「お、ナポレオンか?」

ダージリン「…エリカさん。貴方は今正に、真のリーダーになったのかもしれませんね」


----



DOOOOMM!! DOOOOMM!!


エリカ(…もう弾丸が残り少ない!)

赤星『逸見隊長!』

エリカ「小梅! そっちは!?」

赤星『ごめんなさい! 此方は全滅、卒業生側はマチ先輩のティーガーがそっちに向かってる!』

エリカ「!? 分かった、ありがとう小梅」

赤星『隊長!』

エリカ「なに?」

赤星『…絶対に勝ってね!!』

エリカ「… 当たり前でしょ!!」



DOOOMM!! DOOOMM!!


まほ(此方の弾数も残り少ないか)

マチ『西住隊長! 遅れましたが在校生側の車輌を一掃しました』

マチ『あと5分持たせて頂ければ、そちらに合流します』

まほ「そうか…」

まほ(だが、恐らく合流は無理だ)



まほ(この戦いの決着は恐らく――)

エリカ(次の路地を曲がった瞬間――)





まほ&エリカ(   そこで決まる!!!!!  )




 

1年「逸見隊長!!」

直下「エリカ!!!!」

赤星「エリカさん!!!!」

サーコ「西住隊長!!」

げし子「隊長!!」

マチ「西住隊長!!!」



実況「両者路地を曲がりました!!」




まほ&エリカ「撃てぇぇぇぇぇ!!!!!!!」

DOOOOOOOOOOOOOOOOOOMMMMM

………
……






シュポッ!
 


実況「…き、決まりました!! しょ、勝者は…」



実況「在校生チーム!!! 逸見エリカ、西住まほを破りました!!!」



1年A「やった! 私たち勝ったんだね!!!」

1年B「うん! これでこれからも私たちの戦車道が出来るんだ!!」

直下「…エリカ、やったな」


サーコ「西住隊長が1対1で負けた?」

げし子「嘘だろ…エリカ、やりやがったなあいつ!!」

マチ「…全く、あの人は」

マチ(西住隊長なら、私が到着するまで時間を稼げたでしょうに)

マチ「ホント、見かけによらず熱い人なんだから」


----特別席

磯崎「あ、あり得ないわ…」

磯崎「あの逸見エリカが西住まほ率いる3年に打ち勝つなんて、あり得ない!!」

磯崎「そうよ! きっと西住まほが手加減したに違いないわ!!」

磯崎「ならこの試合、在校生側の負けよ!!」

??「まほが何をしたと仰いまして、磯崎会長」

磯崎「それは在校生側に手加減を――!! あ、貴方は! 西住師範!」

しほ「ご無沙汰していますわ、磯崎会長」

磯崎「お、お忙しい師範が何故このような場所に…」

しほ「あら、娘の晴れ舞台を見に来くる親が珍しいと仰りたいのかしら?」

しほ「それに、今日は他にもやることがありまして…」

磯崎「他に、と仰いますと?」



しほ「どうやら、私の名前を勝手に使って、外国の選手を黒森峰に留学させようとした方がいらっしゃると伺いまして」

 


磯崎「!! そ、それは…」

しほ「西住流戦車道とは勝利を約束された存在でなければならない」

しほ「しかしながら彼女らは学園艦の女学生、その心は自主自立をモットーとするもの」

しほ「下手な補強はその主義に反しますし、私たち黒森峰OGはそうやって自分の力で勝利をもぎ取ってきました」

しほ「それが分からない人に、OG会会長が務まるとお思いでしょうか?」

磯崎「そ、それは!! 理由がありまして…」

しほ「ゲスの言う理由を聞く耳は私にはありません」

しほ「磯崎! 貴方は本日をもって西住流を破門! 加えて、OG会会長の座を降りて頂きます!」

磯崎「そ、そんな…」

しほ「代わりにOG会会長はしばらくの間私が務めさせて頂きます」





しほ「…でも、安心しなさい」

しほ「貴方が気にかけていた黒森峰の優勝、今年はきっと――」

 


----卒業式当日

1年A「もう少ししたらカメラマンさん来るみたいでーす」

1年B「記念撮影までもう少しお待ちください!」


直下「は~、しかし驚きましたよ」

直下「私たち戦車道部の未来が掛かってのに、3年生の皆さんは本当に全力で戦ってくるんですから」

佐子「そりゃ私たちも悪いとは思ってるわよ」

マチ「最初は何とかして貴方達を勝たせてあげようと思ったの」

マチ「でも、まほが『大丈夫だから思いっきりやれ』って言うのよ」

マチ「どうしてって聞くと、『磯崎会長は叩けば埃が出るから、お母様に頼めばこんな話帳消しにできる』って言うのよ」

赤星「それってつまり…」

げし子「私たちは勝っても負けても、この話が無しになるって知ってたって事」

直下「そういう話なら、事前に教えてくれても良かったじゃないですかー!!」

直下「私たち本当に磯崎会長に戦車道が乗っ取られるとヒヤヒヤしてたんですよ!!」

マチ「ごめんなさいね。でも…」

赤星「でも?」



マチ&佐子&げし子「追い出し祭で、ボコボコにされるのは嫌だったから」



赤星&直下「は、はぁ?」

げし子「だってあれは嫌だよなぁ、一方的にやられるの」

佐子「そうそう、何で私たちが貴方達に一方的にボコられないといけないのよ」

マチ「知らないと思うけど、Ⅱ号戦車でヤークトティーガーの主砲を直撃すると、車体が3回転するのよ」

マチ「私、ああいう目にだけは逢いたくなくて…」

げし子「それに、勝負するっていうなら真剣勝負だろ!」

げし子「丁度受験で鈍ってたし、大学はいる前に感を取り戻したかったんだよなー!」

マチ「いい練習になったわ」

佐子「貴方達が結構やるってのも分かったしね」

直下「はぁ…全く」

赤星「この人たちは…」


1年A「カメラマンさん来ましたー!」

1年B「じゃあ皆さん中央によってください!」

1年C「あ、西住先輩と逸見隊長は真ん中で!!」

エリカ「え? 私が中央に入るの?」

1年C「お願いしまーす!」



まほ「…やぁ、エリカ」

エリカ「西住先輩…」

エリカ「…先日の戦い、ありがとうございました」

エリカ「でも一つだけ、確かめておきたいことがあるんです」

まほ「なんだ?」

エリカ「先輩は最後のあの場面、私と勝負に出ずともマチ先輩を待つ手もありました」

エリカ「そうなればきっと、いや絶対に私は負けていました」

エリカ「何故あの時、勝負に出たんですか?」


まほ「…そうだな」

まほ「それは、エリカ。お前との約束を果たすためだよ」

エリカ「約束?」

まほ「言っただろ、試合の数日前に『私を撃つ権利はエリカ、お前にくれてやる』とな」

エリカ「あ…あの時の言葉、覚えてたんですか!?」

まほ「勿論」

まほ「まぁ、だからと言って手を抜いたわけではない。私も正面からやって勝てると思っていたし、あの場面で背中を見せれば逆にやられる可能性もあった」

まほ「私はただ、どうせ決着をつけるのなら、エリカとの約束を果たしたいと思っただけさ」

エリカ「そうだったんですか…」


まほ「…エリカ」

エリカ「はい?」

まほ「いい顔になったな。やはりエリカは、自信に満ちたその顔が良い」

まほ「約束だ。来年は必ず勝って、黒森峰を優勝に導いてくれ。エリカになら出来る」

エリカ「…はい!!」




1年A「準備整いました! 皆さん撮りますよーー!」

1年A「3・2・1―――」




----END

これにて終了です。
エリカさんは2年生で黒森峰の副隊長やってるんだから
催眠音声とハンバーグだけのポンコツじゃないんだぞ、という感じで書きました。
それにしても戦車戦をSSの台詞だけで描写するのは限界がありますね。
また似たような卒業物を書きたいと思います。

では御読了、ありがとうございました。

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