優花里「尊敬する選手は西住まほ殿です」 (56)

沙織「あ~、やっと来たんだこれ!」

麻子「どうしたんだ急に、雑誌掲げて騒いだりして」

華「はて、今月のゼクシィの発売はまだ先立ったと思ったのですが」

沙織「もう、ゼクシィじゃないし!」

沙織「ちゃんと見てよ、これを!」

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麻子「何だ、よく見れば月刊戦車道じゃないか。これがどうかしたのか?」

華「そうですね、特に変わった所はないように思いますが、、、あっ」

麻子「?どうかしたか?」

華「これ、来週発売の刊じゃないですか。どうやって手に入れたんですか?」

麻子「市場に出回ってない物をどうやって?沙織、お前風紀委員に捕まるぞ」

沙織「別にやましい事してないから捕まらないし!」

沙織「ていうか、二人共忘れたの?先週私達、取材受けたじゃん!」

麻子「そう言えば、生徒会の依頼でインタビューを受けたな。あれは月刊戦車道の記者だったのか」

華「と言うことはそれは?」

沙織「私達の事が記事になったから一足先に見本が届いたのよ!」

沙織「ホラホラ、見てよ~。私の写真がこんなに大きく写ってる!」

麻子「お前一人じゃなく、アンコウチームも写ってるがな」

華「それよりも彼氏募集中!の大きなピンクの文字が気になります」

麻子「奥ゆかしさの欠片もないな」

沙織「待ってても王子様は来ないんだから、これからの時代は女から攻めなきゃ!」

沙織「世間に向かってどんどんアピールしなきゃね!」

麻子「沙織、その雑誌の主な読者層は女子だぞ」

沙織「ん~、写りの悪い写真が間違って載ってないかちゃんとチェックしなきゃね。未来の旦那様に変な写真は見せたくないし!」

華「聞こえていませんね。」

麻子「そっとしておいてやろう。それがきっと優しさなのだろう」

沙織「ん~」じ~

華「随分、真剣に見ていますね」

麻子「本に穴が開くぞ」

沙織「…して」

麻子「ん?」

沙織「どうしてぇ!?」

華「!?」ビクっ

麻子「ど、どうしたんだ沙織?」

沙織「どうもこうもないわよ!私のインタビュー記事がページ半分しかないし!」

沙織「家事全般が得意とか、旦那には尽くすタイプとかインタビュー内容がほとんどカットされてるし!」

麻子「何だそんなことか」

華「むしろカットされて良かったのでは?」

沙織「何でよ!?」

華「だって…」

麻子「戦車道のインタビューでそんな事答えてたらドン引きってレベルじゃないぞ」

沙織「う~」

麻子「その本を貸してみろ」ヒョイッ

沙織「あっ」

麻子「見ろ、隊長である西住さんの記事が殆どだ」

華「優花里さんの記事もページ数が多いですね」

麻子「秋山さんは戦車に対する熱意や知識がずば抜けているからな」

華「なるほど、記事にする事柄には事欠きそうに有りませんね」

麻子「戦車道の雑誌で結婚願望語ってもカットされて然るべきだろ。わかったか、沙織」

沙織「う~」

沙織「あ~あ~!良いなぁ、みぽりんはこんなに大きく紹介されて!」

麻子「完全に妬みだな」

華「でもみほさんの事はたしかに羨ましいですね」

麻子「何がだ?」

華「記事の中のみほさん、毅然とした受け応えて溌剌としています。本当にカッコイイです」

麻子「どれどれ…。たしかにそうだな」

麻子「普段の姿からかけ離れているな。まるで戦車に乗っている時のようだ」

華「みほさん、戦車道の家元の御息女ですから、こういうの慣れているのかも知れませんね」

麻子「ああ、そうかもな」

沙織「あ~あ~、ゆかりんも良いなぁ!みぽりんの次にページを割いてもらえて!」

華「今度は優花里さんですか」

麻子「もはや八つ当たりの領域だな」

華「優花里さんのインタビュー記事ですが……これは、ふふっ」

麻子「……インタビューの内容が途中で脱線しているな。戦車について語りまくってる」

華「優花里さんらしいですね。戦車のことになると夢中になってしまうのは」

華「とても可愛らしいと思います」

沙織「記事にもそう書いてあるぅ。ゆかりんだけズルいよ!」

麻子「ズルくはないだろ……」

華「インタビューの最後はキレイに締めていますね『尊敬する西住まほ選手に近付けるよう努力していきたい』優花里さんらしいです」

麻子「秋山さんは本当に西住さんが好きなんだな」

沙織「私もイケメン男子からそれ位想われた~い!」

麻子「お前はそればっかりだな」

華「あら?」

麻子「どうかしたか?」

華「今の記事何かおかしかったような……」

沙織「私の魅力が伝えきれてないところ?」

麻子「それはもういい」

華「確か記事の最後に……」

優花里『尊敬する西住まほ選手』

華「!?」

華「皆さん、これを!」

麻子「ん、どれどれ……?」

沙織「ちょっと、私にも見せてよ!」

麻子「これは……」

華「どういう事でしょうか?」

沙織「ゆかりんの尊敬するする人がみぽりんのお姉さん?二人って接点あったけ?」

麻子「無いな、私の知る限りは」

華「単なる誤植でしょうか?みほさんとまほさん一字違いですし」

沙織「お姉さん有名人だしゆかりんなら前から知っててもおかしくないけど……」

麻子「……」

華「……」

沙織「……」

沙織「ま、まぁ!ゆかりんの尊敬する人がお姉さんでも何か問題があるわけじゃないし!」

麻子「そ、そうだな!西住さんのお姉さんは有名な選手だしむしろ尊敬するのは自然だしな!」

華「そ、そもそも!誤植の可能性だってある訳ですし、騒ぐ事ではないですよね!」

沙織「そうよね!」

麻子「そうだな!」

華「そうですよ!」

沙織(……なのに、何故)

麻子(……こんなにも)

華(……嫌な予感がするのでしょうか)

「おーい!」

三人「!!!」

優花里「皆さん、おはようございますぅ!」

みほ「おはよう。みんな早いね」

沙織「お、おはよう二人共」

華「お、おはようございます」

優花里「お二人ともどうかしましたか?様子が少し変ですが……」

麻子「そ、そんな事はないぞ!」

優花里「冷泉殿も変でありますぅ。西住殿、これは何かあるのでは?」

沙織「そ、そんな事無いってば!」バサッ

華「あっ」

みほ「沙織さん、何か落としたよ」

麻子「それは……」

優花里「月刊戦車道の見本であります!」

みほ「あぁ、私達のインタビューが載っているっていう……」

優花里「もう!三人だけ先に見るなんてズルいで有ります!」ヒョイッ

みほ「優花里さん、私にも見せて」

麻子「あぁ……」

沙織(これは……)

華(まずいでしょうか……?)

優花里「おぉ!西住殿の凛々しい御姿が見開きで!」

みほ「えぇっ!?嘘!?恥ずかしいよう……」

優花里「いえいえ!どこに出しても恥ずかしくないですよ、これは!」

みほ「うぅ、本当?優花里さん」

優花里「もちろんであります!」

沙織「こうして見るとゆかりんってホントにみぽりんが好きに見えるんだけどなぁ」ヒソヒソ

麻子「実際、そこは間違いないと思うぞ」ヒソヒソ

優花里「西住殿のインタビュー記事……。おぉ、全国大会優勝チームの隊長として重みある言葉を仰られていますね」

みほ「そ、そんなにまじまじと読まないでぇ」

優花里「私の戦車道を見つけた、とありますね」

優花里「数々の苦難を乗り越え大洗を救い、自身の進む道を見つける。う~ん、感動的であります!」

みほ「お、おおげさだよぉ」

優花里「むふー!月刊戦車道のこの号はまさに西住殿特集と言って差し支えないかと!秋山コレクションの永久保存版に加えるであります!」

麻子「秋山コレクション……」

華「そんなものがあったのですね……」

沙織「ゆかりん、いきいきしてるなぁ」

みほ「もう、優花里さんったら」

みほ「やっぱり恥ずかしいよぉ。私なんかが、こんな風に持ち上げられるなんて」

優花里「西住殿は謙遜がすぎるでありますよ!」

華「その点については、私も優香里さんと同意見です」

麻子「成し遂げたことを考えれば、西住さんはもっと胸を張っていいと思うぞ」

沙織「まぁ、それがみぽりんの良いところで魅力なんだけどね!」

みほ「みんな……」


みほ「みんながそう言ってくれるのは嬉しいけど、やっぱり私は周りが言うほど凄い人間じゃないよ」

みほ「全国大会だってチームの皆にすごく助けられたし、私一人じゃ諦めてたかもしれない」

みほ「私の戦車道なんて生意気なこと言ったけど、ホントは私達みんなの戦車道だって思ってる」

みほ「だから、皆に『ありがとう』って伝えたいってずっと思ってたんだ」

みほ「皆がいたから私は頑張れたから」

優香里「西住殿……!」ジ~ン

優香里「不肖、秋山優香里!一生、西住殿に付いていきます~!」ダキッ

みほ「ちょ!優香里さん、くすぐったいよぉ」

沙織「みぽり~ん、私までウルッときたよぉ」

麻子「沙織じゃないがまぁ、悪い気はしないな」

華「ふふっ、頬が緩んでいますよ?」

華「しかし、優香里さんの様子を見ていると記事はやはり誤植でしょうね」ヒソヒソ

麻子「それか、『選手として尊敬しているのがまほさん』というニュアンスかもな。あくまで好きなのは西住さんで」

華「そうですね」


優香里「西住殿~!」ギュ~

みほ「もう、優香里さん。みんな見てるから~」

沙織「二人共仲いいなぁ。私も彼氏見つけなきゃ!」

みほ「やっと離してくれた」

優香里「すいません。少し昂ぶってしまって」

沙織「わかる~。愛しの彼の前じゃつい、昂ぶっちゃうよね」

華「沙織さん、彼氏いませんよね」

みほ「じゃあ、記事の続きを読もうかな」

麻子「あっ」

みほ「次は優香里さんの記事だね。あ、見て。優香里さんの写真も大きいよ」

優香里「え~。私の記事なんて、どうでも良いじゃないですか」

みほ「そんなこと言って、恥ずかしいんでしょ?駄目だよ、優香里さんも私の記事読んだんだから」

優香里「うぅ、そう言われると何も言えません」

みほ「ふふっ、どれどれ……」

秋山優香里『尊敬する西住まほ選手』

みほ「……」

みほ「……へぇ?」

優香里「西住殿?どうかしたでありますか?」

華(あぁ……)

麻子(ヤバイか……?)

みほ「……ううん!何でもないよ!」

優香里「そうですか?それにしては様子が……」

みほ「優香里さんのインタビューが少し可笑しかったから。いつもの優香里さんで面白かったよ」

優香里「ど、どういう意味ですか、西住殿!?」

沙織「あ、あれ?」ヒソヒソ

華「大丈夫そうですね?」ヒソヒソ

麻子「まだわからないぞ」ヒソヒソ

みほ「あ、もうこんな時間だね。授業に遅れるから急がなきゃ」

優花里「あ、ホントですね。いつの間にか、もうこんなに時間がたっていたであります」

みほ「続きは放課後だね」

優花里「では、西住殿!また後ほど宜しくであります!」タッタッタッ

みほ「じゃあ、私達も行こうか」

沙織「う、うん」

沙織「……ねぇ、みぽりん」

みほ「うん、何?」

華「その雑誌の優花里さんの記事なのですが……」

みほ「あぁ、それなら大丈夫だよ」

麻子「いや、多分それは編集が誤s」

みほ「うん、大丈夫だよ」

沙織「み、みぽりん?」

みほ「大丈夫だよ」

麻子「……」

みほ「大丈夫だよ?」

麻子「……絶対、大丈夫じゃないぞ西住さん」ヒソヒソ

華「沙織さん、よろしくお願いします」ヒソヒソ

沙織「無理!まだ彼氏も出来てないのに特攻とか無理!」ヒソヒソ

みほ「やってやる やってやる やってやるぜ~♪」

沙織「歌いだしたよ!?」ヒソヒソ

華「沙織さん、ほらはやく!」ヒソヒソ

麻子「いや、もうそっとしといた方が良いだろう。ヤブヘビだぞ」ヒソヒソ

みほ「勝ってやる 勝ってやる 勝ってやるぜ~♪」

ーーー放課後!

優花里「ヒヤッホォォォウ!戦車道の時間だぜぇぇぇ!」

エルヴィン「グデーリアンは今日も元気だな」

おりょう「3年生が引退した今、ムードメーカーは貴重ぜよ」

カエサル「しかし、カメさんとレオポン、カモさんが欠けたのは大きいぞ」

左衛門佐「来年度に新入生が入るまでは苦しい戦いが続きそうだな」

みほ「大丈夫です」

優花里「あっ、西住殿~」

エルヴィン「隊長!?」

カエサル「いつの間に……」

左衛門佐「全然気が付かなかったぞ」

おりょう「何が大丈夫なんぜよ?」

みほ「皆を集めてください。新しいチーム編成を発表します」

沙織「みぽりんいきなり全員招集なんて、何をするつもりだろう」

麻子「朝の様子を思うと不安しかないな」

優花里「えっ、何か変でしたっけ?」

華「知らぬが仏とはこういう事を言うのでしょうか」

みほ「皆さん聞いてください」

あや「何なに、何が始まるの~?」

優季「サプライズパーティとか~?」

梓「絶対違うよ」

ねこにゃー「皆集まったぞなもし」

みほ「では新しいチーム編成を発表します」

みほ「みなさんも知っての通り、3年生が引退して大洗の戦力は減少しました」

みほ「ただでさえ他の学校との戦力差があるので、戦車の稼働率は得策ではありません」

みほ「ですので今あるチームを細分化させ、3年生の抜けた穴を埋めることにします」

優花里「なるほど、たしかにヘッツァーやポルシェティーガーを置物にしておくのはもったいなさ過ぎです」

みほ「まずはウサギさんチームは半分に別れ、ヘッツァーに乗って頂きます」

みほ「三人で戦車を動かすのは大変ですが頑張ってください」

優季「わたしたちウサギとカメのコンビになるんだ~」

梓「呑気に言ってないで!」

みほ「次にソド子さんの抜けたカモさんチームですが、風紀委員からの人員の補充をお願いします」

ゴモヨ「ソド子が抜けても戦車道は続くのね」

パゾ美「風紀委員代表として頑張るよ、ゴモヨ」

みほ「そして、最後に現在ツチヤさん一人しかいないポルシェティーガーですが……」

みほ「ティーガーを動かすのに最低あと二人人員が必要なので、まず歴女チームからエルヴィンさんに移動してもらいます」

エルヴィン「む、私か。まぁティーガーならやりがいは有るな」

左衛門佐「カッコつけてるけど大丈夫か?」

おりょう「三突とは勝手が違うぜよ」

エルヴィン「同じドイツ戦車だ。問題は無い」

エルヴィン「そんな単純じゃないだろ」

みほ「そしてもう一人、」

みほ「……ⅳ号から優花里さんに移動してもらいます」

沙織「えぇ!?」

優花里「じ、自分がですか!?」

みほ「優花里さんにはティーガーの車長をお願いします」

沙織「待ってよ、みぽりん!」

みほ「なんですか、沙織さん。優花里さんがⅳ号を降りることに何か問題が?」

沙織「問題がって…そんなの……!」

華「沙織さん、待って下さい」

麻子「ⅳ号は今、一番人員が多いからうちから人を出すのは自然だろう」

みほ「カバさんチームやウサギさんチームも、人員を、変更しています。アンコウだけ例外には出来ません」

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