少女 「大好きです」 男 「俺もだ」 (10)
男 (広い真っ白な空間……)
男 (そして女の子が1人)
少女 「こんにちは、男さん」
男 「……ここは?」
少女 「どう見たって楽しい遊園地ですよ」
男 (!? さっきまで何もなかったはずじゃ……)
少女 「男さん! あそこ行きましょう!」
男 「お化け屋敷? 今はそれどころじゃ……それに財布も持ってないぞ」
少女 「大丈夫ですよ、入りましょう」
少女 「ちゃんと手を握っててくださいね?」
男 「いきなりそんな……そもそも君は……」
少女 「君じゃなくて少女です、何回言わせるんですか?」
男 「何回もなにも1回目だろ?」
少女 「さ、行きますよ」グイグイ
男 「あっおい!」
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少女 「作り物とはいえ雰囲気ありますね……」
男 「……止まるなら置いてくぞ」
少女 「ちゃんと手握っててくださいよ!」
コンニャクピシャー
少女 「きゃああ!!」
男 「まだ何も出てないぞ」
少女 「これです! これが首筋に!!」
男 「コンニャク……? ずいぶん古典的だな…」
ガコッ
男 「うわああああ!?!?」
ドサッ
男 「全く……落とし穴なんてアリかよ」
少女 「いてて……入らなければ良かったですね」
男 「無事ならさっさと俺から降りてくれ」
少女 「……重いですか?」
男 「……別にそういう訳じゃない」
少女 「ならもう少しだけ」
男 「……なんでだ」
少女 「そうしたいんです」
男 「ったく……ここは森か?」
男 (いよいよどうなってるんだここは)
少女 「あ、あっちです」
男 「なら行くぞ、降りろ」
少女 「あと5分」
男 「ダメだ」
少女 「男さんのけちー」
男 「おお……」
少女 「どうですか? きれいな夕日でしょう?」
少女 「田園風景もなかなかいいものです」
男 (初めて来たのに……どこか懐かしい気分だ)
少女 「私の思い出の場所なんです……とっても大切な」
男 「どんな思い出なんだ?」
少女 「……内緒です」
男 「少女のけちー」
少女 「もとはといえば男さんが悪いんですよ」
男 「それはどういう……」
少女 「それも内緒です」
男 「なんだよそれ」
…………………………
……………………
………………
…………
男 「だいぶ歩き回ったな」
少女 「疲れました? チョコあげますよ、男さん好きでしょう?」
男 「ありがとう……ってなんで俺の好みを知ってるんだよ」
少女 「私には分かるんですよー」
男 「なんだそりゃ」
少女 「他に好きなものってあります? 料理でもいいですよ」
男 「ハンバーグかな、子供みたいでおかしいだろ?」
少女 「そんなことありませんよ」
少女 「楽しかったですか?」
男 「……ああ」
男 「訳分からなかったけど、なんか気分が軽くなった」
少女 「……なら良かったです」
男 「ん、なんか急に眠気が……」
少女 「……! もうお別れみたいですね」
男 「どう……いう」
男 「まだ……俺は」
男 (俺は……何だ?)
少女 「明日また来てくれますか?」
男 「もちろんだ……!」
少女 「……良かった」
少女 「……男さん、大好きです」
男 (意識が遠のく……)
男 「俺……もだ……」
男 (…………)
ジリリリリリ ジリリリリリ ジリリリリリ
男 「ん……朝か……」
男 (頭が痛い……寝不足か?)
男 (なんか忘れてるような……この喪失感はなんだ)
男 (分からない……)
男 「仕事……行かないと」
続きます
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