【モバマス】幸子「もっとボクを、ボクだけを見てください。」【百合注意】 (21)

 赤いリボンであなたのハートを蝶結び♡、佐久間まゆです。いまはベッドと手首が固結び♡
 ……はい、いまはそんなに冷静ではありません。皆さんも目がさめて起き上がろうとしたら腕が固定されてて動けない。なんて状況になれば私と同じくらい動揺すると思いますよ。
 さて、何度か深呼吸すると、まゆが今居るのは私の知り合いの部屋だと気がつきました。確か、昨晩はその知り合いの家にお泊まりしていたはずです。

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 輿水幸子ちゃん、私より二つ年下の女の子ですが私よりも先にプロダクションに所属しているアイドルで、芸歴はまゆの方が長いのですがアイドルとしては先輩になります。
 私がこのプロダクションに移籍してからはいつもお仕事に同伴させてもらえて、行く先々でいろんな人にまゆのことを紹介してくれました。
 もちろん厳しいとこもあります。初めてお仕事に連れて行って貰った日にノートを一冊渡され、今日貰った名刺の内容をURLまで書き写して、ブログやSNSがあれば、直近の仕事や趣味まで記入して、少なくとも顔と名前が一致するまで暗記するように言い渡されました。
 最初の内は覚え切れずに前日にあった人に「初めまして」なんて挨拶をしてしまって後で幸子ちゃんにお説教される事もありましたが、名刺ノートがプロデューサーさんの観察日記の冊数を超える頃には、一度しかあったことのない人でも相手の趣味にあった話を振れるようになりました
 干されても仕方が無いような前のプロダクションとの別れ方をしたまゆが、こうしてアイドルとして皆さんの前に立てるのも彼女のおかげだと感謝しています。

 しかし、プロデューサーさんのことになれば話は別です。彼女はいつもプロデューサーさんのそばにいて、時間があれば営業にまでついて行くほど四六時中べったりで、プロダクションの一番の稼ぎ頭ということもあってかプロデューサーさんからもほかのアイドルと比べて特別に気に入られてるように思えます。プロデューサーさんに近くためにこのプロダクションに移ったまゆとしては、たとえお世話になった先輩でも見過ごす訳にはいきません。
 幸い、先日に『プロデューサーさんと幸子ちゃんが最近不仲だ』というウワサを聞きつけて、今回の二人っきりのお泊まり会を幸子ちゃんに持ちかけました。そして、お風呂から上がったあと、お茶を飲みながらおしゃべりするときに話題の中にそこはとなくプロデューサーさんの話を織り交ぜて話しました。
 こうすることで、気の回る幸子ちゃんにまゆがプロデューサーさんに好意を寄せている事を察して貰い、自然と身を引いて貰うか、あわよくば応援して貰おうという魂胆です。
 我ながら少し卑怯な手段だと思いますが、お世話になった先輩である手前、できれば穏便に済ませたいんです。

 と、そんな事を考えながら幸子ちゃんとのおしゃべりを楽しんでからベッドに潜ったのが昨日の晩。この時幸子ちゃんはベッドを私に譲ってくれて、幸子ちゃんは横にお布団を敷いて眠りました。
 私は慌ててベッドの横を見ます。いまのまゆはベッドに縛られて動けない状況です。もしかしたら私たちが寝ている間に悪い人が入ってきて、まゆを縛ったあとで幸子ちゃんが酷い目にあってるんじゃないかと思ったんです。
 ところが、ベッドの横に敷いてあったはずの布団は片づけられていて、辺りを見渡しても荒らされた形跡はありませんでした

「やっと目が覚めたようですね。」
 その時、寝室の扉が開き、聞き慣れた声がまゆに話しかけました。扉の向こうには寝る前と同じパジャマ姿の幸子ちゃんが立っていました。
「よかった、無事だったんですね。」
 まゆはとても安心しました。一度は最悪の事態も想像した相手が何事も無かったのですから。
 ですが、次に彼女の口から出た言葉にまゆの頭は凍り付きます。
「まゆさんは優しいんですね、寝ている間にベッドに縛り付けるような人を心配してくれるなんて。」
 ……今さっき聴いたばかりの台詞を何度も頭の中で反芻します。『ベッドに縛り付ける』?どんなに解釈を変えても私には彼女の言葉が理解出来ませんでした。まゆは仕方なく台詞の主に確認を取ります。
「あの……その言い方だと幸子ちゃんがまゆをベッドに縛り付けたように聞こえるんですが。」
「はい、ボクがまゆさんをベッドに縛り付けました。この家にはボクとまゆさんしかいませんよ。」
 ああ、まゆの言語能力は正常だったようです。だったらなぜ、幸子ちゃんはまゆを縛っているんでしょうか。ベッドが軋み、幸子ちゃんがまゆが仰向けに寝そべっているマットの上にあがってきます。
「まゆは何か、幸子ちゃんを怒らせるようなことをしましたか?」
「はい、ボクはカンカンに怒っています。」
 優しい口調でそう返すと幸子ちゃんが膝立ちでまゆの上に跨がりその前覆い被さるようにまゆの頭の横に右手をつき左手をまゆの頰に這わせます。その顔はとてもおだやかで、目を反らせなくなるほど魅力的に思えました。

 どうしてまゆは幸子ちゃんを怒らせてしまったのでしょう。昨日のおしゃべりの内容を思い出します。
「もしかして、幸子ちゃんはまゆがプロデューサーさひゃひゃひゃ!」
 言い終わる前に頰を抓られてしまいました。
「またです、あなたはいつでもプロデューサーさんのことばかり。今まゆさんの目の前に居るのはボクなんですよ。」
 眉を寄せてまゆの目をのぞき込む瞳を前にまゆはもう何もいえません。
「まゆさん、あなたはプロデューサーさんに遇った日のことを覚えていますか?」
 そう幸子ちゃんに問われて、あの日のことを思い起こしてみます。実はまゆはプロデューサーさんに巡り逢った日のことをあまり覚えていません。あの人に遇った瞬間にすべて頭の中から抜け落ちてあの人のことで埋め尽くされてしまったのですから。
「あの日、ボクもその場に居たんですよ?」
「え?」
 まゆは慌てて頭の中を引っ掻き回します。
「やっぱり覚えていませんね、あなたはプロデューサーさんしか見てませんでしたからね。」

「あの日、プロデューサーさんはボクの付き添いであの場に居たんです。あなたとのモデルのお仕事のために。」
「地方でのお仕事ですからね、さすがに中学生を一人で向かわせることはできませんから。」
「ボクはまゆさんのことをよく覚えていますよ。」
「どこかずうっと遠くの方を見ていて、儚げな表情を浮かべて、とても綺麗な人だと思いました。」
「手を繋いだり抱き合うようなポーズも取ったんですよ?ボクずっとドキドキしてて、まゆさんに見とれててカメラマンさんに注意されたこともありましたね。」
「そんなあなたが前のプロダクションを辞めてこのプロダクションに来た時は飛び上がって躍り出したくなるぐらいうれしかったんですよ?」
「ボクを追いかけて来てくれたんだと思ってましたから。」
「ボクも人の人生に影響を与えられるようなアイドルになったんだって。」
「だからボクはボクに出来ることを全力であなたに注ぎ込みました。」
「といっても、発言力のある大御所さんやディレクターさんに紹介したり営業回りの時にまゆさんを売り込んだ程度なんですけどね。」
「とにかくボクの持てるコネクションを全部使ってあなたが自由にアイドルとして活躍できるようにしました。」
「なんてったってボクがカワイイと思ったアイドルなんですから。」

「そういえばまゆさん、ボクの家に鏡が一つもないことにきがつきましたか?」
「こんなに自分のことをカワイイって言ってる子の部屋に鏡が無いなんておかしいと思いません?」
「まゆさんの本当の気持ちに気がついたとき。ボクはお腹抱えてのたうち回って笑い転げました。」
「その勢いで家中の鏡を叩き割ってしまったんですよ。おかげで毎朝不便でしかたありません。」
「だって滑稽でしょ?自分が人生に大きく関わったと思った相手が実は顔すら覚えていなくて。」
「しかもボクを引き立てるために居るプロデューサーさんに魅力で負けるなんて。」
「こんなにおもしろいことがほかにありますか!」

「……あの、ごめんなさい。」
 まゆは満面の笑みを浮かべてとても楽しげに私への想いを語る彼女にただただ謝ることしかできませんでした。
「謝らないでくださいよ……惨めな気分になるじゃないですか。」
 そう言って幸子ちゃんはまゆの上にのしかかり、
「プロデューサーさんにも酷く当たり散らしてしまいましたからね、ちょっとお仕事にも影響が出てるんです。」
 まゆの首に腕を回して
「ですから今からボクの方がプロデューサーさんよりも魅力的だって証明します。」
 舌で唇をこじ開けられ口の中を舐め回されました。
幸子ちゃんの顔が離れるとまゆの唇と幸子ちゃんの唇が銀の糸で繋がってるのがわかりました。まゆはその糸が切れるのが嫌で縛られた手首が痛むのも気にせず起き上がろうとします。
「そんなに焦らなくても大丈夫ですよ。」
 幸子ちゃんが状態を起こして自分のパジャマをパット付きのキャミソールごと脱ぎ捨て、
「ボクは目の前に居るんですから。」
 まゆのパジャマのボタンを首元から下へ一つずつ順番に外していきます。
「もっとボクを、ボクだけを見てください。」

以上です
Twitterの書き込みと他板のスレッドの書き込みから着想を得ました
ご清覧ありがとうございました

 理性から抜け出したボクは思いのほか狡猾で、まず目を覚ましたときに抵抗されないようにヘッドボードに、古紙回収用の紐で彼女の両手を縛り付け、今度は自分の口をまゆさんの口にくっつけました。
 ボクの舌が彼女の唇に触れると、さっきの親指のようにまゆさんは舌に吸いつきボクの舌を甘噛みしながら自分の舌で上顎に押し付けるながら扱きます。
 試しに彼女の口の中を舐め回そうとすると、すぐにまゆさんの舌に取り押さえ定位置に連行され再び何かを絞り出すかのようにボクの舌の根元の方から先端へ向かってまゆさんの舌が動きます。
 ボクが舌に沿わせて唾液を流すとまゆさんの咽が動くのがわかりました。
 しばらく、まゆさんに自分の唾液を飲ませていると、視界の脇で上下する彼女の胸元がパジャマの薄い布一枚だけしか纏っていない事に気がつきました。
 まゆさん、寝るときは上の下着付けないんですね。
 ボクはそっと布一枚で隔たれたそれに手を伸ばして、
「痛っ……」
 触れる直前に舌に噛み付かれ思わず仰け反ります。その隙をついてやっと両手がボクの首根っこを引っ掴みました。
 ボクはそのまま寝室から飛び出し洗面台に頭を突っ込んで蛇口から直前水を浴びます。そして蛇口の髪の毛から流れる水が排水口に滑り落ちるのを息を荒げて睨みつけます。
 なんてことをしてるんでしょう、これじゃまるで強姦じゃないですか!
 しばらく頭を冷やした後蛇口の水を止め、タオル掛けのタオルを引き抜いてタオル越しに自分の頭を掻き毟りその場でうずくまりました。
 ……そうだ、手首解かなきゃ。
 ボクは何度か深呼吸をして覚悟を決め、まゆさんの元に戻ることにしました。
 できるかぎりまゆさんを見ないようにしよう。
 そう心に決めて寝室の扉を開くと、その覚悟が全部無駄になったのがすぐにわかりました。
「よかった、無事だったんですね。」
 暗い寝室のわずかな光を反射するまゆさんの眼と目が合ってしまいました。

誤爆

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